JPH036875Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は斜板式圧縮機におけシヤフトシール室
潤滑機構、更に詳しくは吸入フランジを経て斜板
室に送り込まれた吸入ガスを吸入室内に送り込む
過程において同吸入ガスの一部をバイパスさせて
シヤフトシール室に供給する様に設けられるシヤ
フトシール室の潤滑機構に関する。

従来の技術 一般に斜板式の圧縮機にあつては斜板を揺動回
転自在に軸架するドライブシヤフトの一端に同ド
ライブシヤフトとフロントハウジングとの間に生
ずる隙間をシールする必要上シヤフトシール室が
設けられる。

そして従来このシヤフトシール室を潤滑する方
法としてはシヤフトシール室に吸入ガスを送り込
み、同吸入ガス中に混入しているオイルによつて
その潤滑を行なう方法が提案されている。

第３図はその具体的構造を表わす図面であつ
て、フロントシリンダーブロツクに複数の供給通
路２４がその一端を斜板室に連通させて貫設され
る。そしてこの複数の供給通路２４の内その一つ
の供給通路２４ａを除いて他の供給通路２４は吸
入室１３Ｆに対してダイレクトに連通する如く設
けられる一方、上記もう一つの供給通路２４ａは
シヤフトシール室２２を経由するバイパス通路２
６Ａ，２６Ｂを介して吸入室１３Ｆと連通する如
く設けられる。即ち、吸入ガスの一部は供給通路
２４ａよりバイパス通路２６Ａを経てシヤフトシ
ール室２２に送り込まれ、同吸入ガス中に混入す
るオイルによつてシヤフトシール室２２の潤滑を
行なうと共に残りの吸入ガスはバイパス通路２６
Ｂを経て吸入室１３Ｆに送り込む様に設けられ
る。

考案が解決しようとする問題点 しかして上記の様な潤滑方法にあつては、シヤ
フトシール室の潤滑を円滑に行なう事が出来ない
点に問題点を有する。即ち、上記潤滑方法にあつ
ては各シリンダーボアの吸入作用を介して吸入室
側と供給通路側に生ずる圧力差（差圧作用）によ
つてシヤフトシール室に吸入ガスを送り込む様に
設けられるのであるが、吸入室は各シリンダーボ
アに対して相互に連通させて設けられている事に
加えて各シリンダーボアの吸入作用は斜板の揺動
回転を介して多少の時間差を存して連続的に得ら
れる様に設けられている事により、換言すれば吸
入室内の圧力は流動状態にある事により、バイパ
ス通路の吸入室側の開口部において常時負圧状態
（供給通路側より低い圧力状態）を維持する事が
出来ないという不具合を生ずる事となる。更に具
体的には、バイパス通路の開口部に近接するシリ
ンダーボアが吸入行程にある状態においては差圧
作用が得られるもののバイパス通路の開口部より
遠く離れたシリンダーボアが吸入行程にある状態
においては差圧作用が得られないためにこの間シ
ヤフトシール室内に吸入ガスが滞留してしまうと
いう不具合を生ずる事となる。そしてこの様にシ
ヤフトシール室に対する吸入ガスの供給作用が円
滑に得られない事により、特に高速回転時におい
てシートリングと従動リングとの摺擦面の温度が
上昇して同摺擦面における油膜が不安定となる事
に起因して摺擦面（カーボン面）に面荒れを生
じ、同部におけシール機能が損われてしまうとい
う不具合を招来する事となるのである。

又、特開昭59−25096号に開示される様に、バ
イパス通路の吸入室側の開口部が存する吸入室部
分と、同部に連通する吸入室に開口する近接の供
給通路の開口部分との間に吸入室を縮小する絞り
部を形成して、同供給通路より前記吸入室部分へ
流れる吸入ガス量を制限する事により、バイパス
通路の開口部における負圧状態を維持し、同開口
部からの吸入ガスの流入（吸引）を期待する試み
がなされているが、バイパス通路はシヤフトシー
ル室を経由し、然も管路が長いためにその流動抵
抗が極めて大きいのに対して、上記絞り部による
流動抵抗は僅かなものであるため、実際には同絞
部による吸入ガスの制限作用は大して得られず、
吸入ガスはバイパス通路の開口部からよりも絞り
部を経て近接の供給通路の開口部から上記吸入室
部分へ流れてしまい、特に低速回転時にはその傾
向が一層顕著となつて、バイパス通路の吸入ガス
によるシヤフトシール室の潤滑が円滑に行なわれ
ないのが実状である。

又、上記の様に一つの供給通路はシヤフトシー
ル室を経由するバイパス通路を介して吸入室に連
通させる様に設けられているにも拘らず、同バイ
パス通路からの吸入室に対する吸入ガスの供給が
十分に行なわれない事により、同吸入室の吸入ガ
スの必要量が不足して各シリンダーボアに対する
供給量が減少するという不具合が生じる事とな
る。即ち、斜板室から吸入室へ吸入ガスを供給す
る供給通路は通常、各シリンダーボアに均等に供
給が行なわれる様に、ボアと同数で各ボア間に等
間隔で配設されているのであるが、上記の様に一
つの供給通路からのガス供給が十分行なわれない
事に起因するガス不足によつて圧縮ガスの吐出量
も減少し、その結果、冷房能力の低下を招く事と
なり、特に低速回転時においては時間当りの吐出
量も少ないため、大きな影響を受ける事となるの
である。

本考案は上記の様な問題点を解決する為にその
改善を試みたものであつて、シヤフトシール室に
対して吸入ガスを円滑に供給する事が出来る様に
する点にその解決すべき問題点を有する。そして
上記問題点を解決する為のその具体的な手段と作
用は次の通りである。

問題点を解決するための手段 複数のシリンダーボアに対して相互に連通可能
に形成する吸入室の一部に一つのシリンダーボア
と連通する吸入室を区画形成し、同吸入室に対し
てドライブシヤフトの一端に形成するシヤフトシ
ール室を経由して斜板室側より延設するバイパス
通路の一端を連通させる。

作 用 バイパス通路の吸入室側の開口部を確実に負圧
状態に維持する事が出来る。即ち、斜板室側の開
口部との間に常時圧力差を生じさせる事が出来、
此によりシヤフトシール室に対して吸入ガスをス
ームズに供給する作用を得る事が出来る。

実施例 以下に本考案の具体的な実施例を例示の図面に
ついて説明する。第１図と第２図の両図面におい
て、１はシリンダーブロツクを示す。同シリンダ
ーブロツク１はフロントシリンダーブロツク１Ｆ
とリヤシリンダーブロツク１Ｒより成り、同シリ
ンダーブロツク１のフロントシリンダーブロツク
１Ｆ側の開口部にはフロントハウジング２Ｆが接
合され、その接合部にはフロントバルブプレート
３Ｆが介装される。又、リヤシリンダーブロツク
１Ｒ側の開口部にはリヤハウジング２Ｒが接合さ
れ、その接合部にはリヤバルブプレート３Ｒが介
装される。そして上記両ハウジング２Ｆ，２Ｒと
両シリンダーブロツク１Ｆ，１Ｒは複数本の通し
ボルト４を介して一体に締結される。上記両シリ
ンダーブロツク１Ｆ，１Ｒにはその中心部に位置
して軸孔５′が貫設され、同軸孔５′にはラジアル
軸受け６，６を介してドライブシヤフト５が回転
自在に支承される。同ドライブシヤフト５の両端
部は上記フロントハウジング２Ｆ及びリヤハウジ
ング２Ｒ内に突出する如く設けられる。そして同
ドライブシヤフト５のフロントハウジング２Ｆ側
の突出端には電磁クラツチ（図示省略）が設けら
れ、同電磁クラツチの断続を介してエンジン（図
示省略）の駆動力をドライブシヤフト５に伝える
事が可能な如く設けられる。又、シリンダーブロ
ツク１Ｆ，１Ｒの上記軸孔５′の外周部には適数
のシリンダーボア７が同軸孔５′を囲繞する如く
穿設される。対向する各ボア７は斜板室８を間に
存して前後一対を成す様に分割して設けられ、各
ボア７内には両頭式ピストン９が進退自在に嵌挿
される。そして上記ドライブシヤフト５には斜板
室８と相対応して斜板１０が揺動回転自在に軸架
され、同斜板１０のボス部前後両面には斜板室８
の内壁面との間にスラスト軸受け１１，１１が介
装される。

そして同斜板１０の斜面部に対しては前記ピス
トン９がシユー１２を介して係留され、斜板１０
の揺動回転は各ピストン９に対して往復動として
伝達される。

一方、前記両ハウジング２Ｆ，２Ｒには前記各
ボア７と相対応して吸入室１３Ｆ，１３Ｒと吐出
室１４Ｆ，１４Ｒが環状の隔壁１５を間に存して
同心円状に設けられる。そしてフロントバルブプ
レート３Ｆ及びリヤバルブプレート３Ｒには上記
吸入室１３Ｆ，１３Ｒと相対応して吸入口１６
Ｆ，１６Ｒが、又、吐出室１４Ｆ，１４Ｒと相対
応して吐出口１７Ｆ，１７Ｒが夫々開口される。
そして又、吸入口１６Ｆ，１６Ｒにはボア７側に
位置して吸入弁１８Ｆ，１８Ｒがピストン９の吸
入行程を介して開閉自在な如く設けられ、又、吐
出口１７Ｆ，１７Ｒには吐出室１４Ｆ，１４Ｒ側
に位置して吐出弁１９Ｆ，１９Ｒがピストン９の
排気行程を介して開閉自在な如く設けられる。そ
して上記吸入室１３Ｆには仕切り壁２０を介して
独立した吸入室１３ａが区画形成され、同吸入室
１３ａはフロントシリンダーブロツク１Ｆに穿設
する複数のシリンダーボア７の内その一つのボア
７ａと連通する如く設けられる。又、フロントハ
ウジング２Ｆの中心部には隔壁２１を介してシヤ
フトシール室２２が形成され、同シヤフトシール
室２２にはメカニカルシール２３が内装される。
同メカニカルシール２３はフロントハウジング２
Ｆ側に固定するシートリング２３ａとドライブシ
ヤフト５側にスラスト自在に軸架する従動リング
２３ｂとの組合せより成り、同従動リング２３ｂ
はばね受け座２３ｄと同従動リング２３ｂ間に介
装するばね２３ｃを介してシートリング２３ａに
圧接する方向に付勢された状態にある様に設けら
れる。

一方、フロントシリンダーブロツク１Ｆとリヤ
シリンダーブロツク１Ｒには吸入ガスの供給通路
２４を穿設するに同吸入ガスの供給通路２４は前
述の通しボルト４の通し孔を兼ねて穿設され、そ
の一方の開口部は斜板室８と連通し、もう一方の
開口部はフロントシリンダーブロツク１Ｆに穿設
する一つの供給通路２４ａを除いて吸入室１３
Ｆ，１３Ｒと連通する如く設けられる。上記供給
通路２４ａのもう一方の開口部はフロントハウジ
ング２Ｆに形成する吸入ポート２５と連通する如
く設けられる。そして同ポート２５からはバイパ
ス通路２６Ａが延設されその先端部は前述のシヤ
フトシール室２２に臨む如く設けられる。そして
又、同シヤフトシール室２２からは更にバイパス
通路２６Ｂが延設され、その先端部は前述の独立
した吸入室１３ａに臨む如く設けられる。その他
２７は吸入フランジを示す。

次にその作用について説明する。

ドライブシヤフト５の一端に設けられる電磁ク
ラツチ（図示省略）を接続操作させる事によりエ
ンジンの駆動力がドライブシヤフト５に伝えら
れ、同ドライブシヤフト５が回転する状態が得ら
れる。そしてこの様にドライブシヤフト５が回転
する事により、シヤフトシール室２２において従
動リング２３ｂがシートリング２３ａに摺擦し乍
らドライブシヤフト５と同行回転する状態、即ち
同ドライブシヤフト５のフロント側の一端におい
てシール作用が得られた状態が得られる。そして
又、このドライブシヤフト５の回転は斜板１０に
伝えられて同斜板１０が斜板室８において揺動回
転する状態が得られる。そして同斜板１０に対し
てはシユー１２を介して各ピストン９が係留され
ている事により、斜板１０の揺動回転は更にシユ
ー１２を介して各ピストン９に伝達されて各ピス
トン９が各シリンダーボア７内において連続的に
往復動を繰り返す状態が得られる。そしてこの様
に各シリンダーボア７内においてピストン９が連
続的に往復動を繰り返すことにより、その吸入行
程において生ずる負圧作用を介して吸入室１３
Ｆ，１３Ｒと斜板室８間に圧力差が生じ、この圧
力差を介して斜板室８内の吸入ガスを各供給通路
２４を経て吸入室１３Ｆ，１３Ｒ内に吸引する作
用が得れられる。そしてこの様な吸引作用は吸入
室１３Ｆと独立して設けられる吸入室１３ａにお
いても得られる。即ち斜板室８内の吸入ガスを供
給通路２４ａ、吸入ポート２５、バイパス通路２
６Ａの各部を経てシヤフトシール室２２に送り込
み、同吸入ガス中に混入するオイルを介してメカ
ニカルシール２３を潤滑する作用、即ちシートリ
ング２３ａと従動リング２３ｂの摺擦面に対して
オイルを供給する作用が得られ、且つその他の吸
入ガスをバイパス通路２６Ｂを経て吸入室１３ａ
に送り込む作用が得られるのであるが、吸入室１
３ａは吸入室１３Ｆと独立させて設けられている
事により、同吸入室１３ａ内をピストン９の吸入
行程において得られた負圧状態に維持する事が出
来る。即ち吸入室１３ａと斜板室８間に圧力差を
確保する事が出来、斜板室８内の吸入ガスをシヤ
フトシール室２２に対してスムーズに供給する作
用を得る事が出来る。

考案の効果 本考案は以上の様に構成されるものであつて、
上記の様に吸入室の一部に一つのシリンダーボア
のみと連通させて独立した吸入室を区画形成し、
同独立の吸入室に対してバイパス通路を連通させ
る様にした事により、同バイパス通路の吸入室側
の開口部と斜板室側の開口部との間に常時圧力差
を生じている状態を得ることが可能となり、此に
よりシヤフトシール室に対してスムーズに吸入ガ
スを供給する事が出来るに至つた。即ちシヤフト
シール室に於ける潤滑効果を著しく高める事が出
来るに至つた。

尚本出願人において測定を試みた処メカニカル
シールに於けるシートリングと従動リングの摺擦
面温度は、従来のバイパス通路にあつては約158
℃であつたのが、本発明のバイパス通路にあつて
は約134℃と約24℃下げる事が出来た。即ち、同
摺擦面の油膜を安定させる事が出来、此によりメ
カニカルシールの同摺擦面に於けるシール性と耐
久性を高める事が出来た。

更に本考案にあつては、上記の様に一つのシリ
ンダーボアと連通させて独立した吸入室を区画形
成し、同独立の吸入室に対して一つの供給通路を
シヤフトシール室を経由するバイパス通路を介し
て連通させる様にした事により、同供給通路から
独立の吸入室へ対して確実に吸入ガスを供給する
事が出来、これにより従来の様に他の吸入室の吸
入ガス量が減少する事に起因する冷房能力の低下
を防止する事が出来るに至つた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る潤滑機構を具備する斜板
式圧縮機の全体を表わす断面図、第２図は同フロ
ントハウジング部分の断面図（第１図に於けるＡ
−Ａ線断面図）、第３図は従来の潤滑構造を表わ
すフロントハウジング部分の断面図である。 １……シリンダーブロツク、１Ｆ……フロント
シリンダーブロツク、１Ｒ……リヤシリンダーブ
ロツク、２Ｆ……フロントハウジング、２Ｒ……
リヤハウジング、３Ｆ……フロントバルブプレー
ト、３Ｒ……リヤバルブプレート、４……通しボ
ルト、５……ドライブシヤフト、５′……軸孔、
６……ラジアルベアリング、７……シリンダーボ
ア、７ａ……シリンダーボア、８……斜板室、９
……ピストン、１０……斜板、１１……スラスト
軸受け、１２……シユー、１３Ｆ，１３Ｒ……吸
入室、１３ａ……吸入室、１４Ｆ，１４Ｒ……吐
出室、１５……隔壁、１６Ｆ，１６Ｒ……吸入
口、１７Ｆ，１７Ｒ……吐出口、１８Ｆ，１８Ｒ
……吸入弁、１９Ｆ，１９Ｒ……吐出弁、２０…
…仕切り壁、２１……隔壁、２２……シヤフトシ
ール室、２３……メカニカルシール、２３ａ……
シートリング、２３ｂ……従動リング、２３ｃ…
…ばね、２３ｄ……ばね受け座、２４……供給通
路、２４ａ……供給通路、２５……吸入ポート、
２６Ａ，２６Ｂ……バイパス通路、２７……吸入
フランジ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ドライブシヤフトを囲繞する如く配置する複数
   のシリンダーボアに対して相互に連通可能に形成
   する吸入室と斜板室間を複数の供給通路を介して
   連通させて設けるにその一つの供給通路をドライ
   ブシヤフトの一端に形成するシヤフトシール室を
   経由するバイパス通路を介して吸入室に連通させ
   て成る斜板式圧縮機において、上記吸入室の一部
   に一つのシリンダーボアのみと連通する独立吸入
   室を区画形成し、同独立吸入室に前記バイパス通
   路の一端を連通させて成る斜板式圧縮機における
   シヤフトシール室潤滑機構。