JPH035488Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は車両緊急時に乗員拘束用ウエビングへ
緊張力を与えてウエビングを乗員へ密着させるウ
エビング緊張装置に関する。

車両緊急時の乗員保護用であるシートベルト装
置では、一端が巻取装置へ巻取られたウエビング
を乗員が装着し、車両緊急時にこのウエビングで
乗員を拘束するようになつている。

このウエビングを巻取つている巻取装置はウエ
ビングへ所定張力を付与しているが、乗員へ圧迫
感を与えないために巻取力は比較的弱くしたり、
あるいは全く無くしているため、ウエビングが乗
員との間に若干の隙間を有している。従つて車両
緊急時に巻取装置のウエビング引出しが停止され
た後に乗員がウエビングで確実に拘束される迄に
乗員がこの隙間量だけ衝突方向へ移動することが
予想される。

このため従来、車両緊急時にぜんまいばね等の
弾性力をウエビング巻取軸へ伝えてウエビングへ
緊張力を与える装置が提案されている。この装置
ではぜんまいばね等の弾性力を受ける作動リング
へポウルが噛合つており、車両緊急時にソレノイ
ドの励磁力でポウルを作動リングから離間し作動
リングが受けている弾性力をウエビング巻取軸へ
伝えるようになつている。

この従来の緊張装置では、作動リングに形成し
た切欠のポウルとの噛合部が作動リングの放射方
向とされており、ぜんまいばねによる作動リング
の回転力がポウルをポウルの支軸方向へ押圧する
力となつて作用することにより作動リングとポウ
ルとの噛合状態を維持している。従つて車両走行
時の振動、ドア開閉時の振動等によりポウルが作
動リングとの噛合を解除する偶発作動が生じ易い
不具合を有している。

また、このような不具合を防止するためには、
ソレノイドの励磁力を大きくすると共にこの励磁
力をポウルが作動リングへ噛合う方向の作用させ
る等の対策が必要であり、必然的にソレノイド等
が大型化してしまう。

本考案は上記事実を考慮し、車両振動等により
偶発作動の生ずることがなく、かつ車両緊急時に
は確実に作動できるウエビング緊張装置を得るこ
とが目的である。

本考案に係るウエビング緊張装置は作動リング
に係合可能に配置され、係合状態では作動リング
の回転を阻止する回動ポウルと、支軸によつて回
転可能に支持され、通常時には前記回動ポウルに
当接して回動ポウルを保持し作動リングに係合さ
せると共にこの係合状態を維持し、かつ、前記支
軸周りに回転することにより前記回動ポウルの保
持を解除し作動リングとの係合を解除させるカム
と、車両緊急時に前記カムを前記支軸周りに回動
させる回動手段と、を備えたことを特徴としてお
り、作動リングの回転で巻取軸へウエビング巻取
力を付与するようになつている。

以下本考案の実施例を図面に従い説明する。

第１図には本考案に係る緊張装置がウエビング
巻取装置１０へ一体的に組込まれた構造が示され
ている。

ウエビング巻取装置１０はフレーム１２がボル
ト１４で車体１６へ固着されている。このフレー
ム１２の両側部からは一対の脚板１８，２０が互
に平行に延長されており、巻取軸２２の中間部が
軸支されている。この巻取軸２２の中間部には乗
員拘束用ウエビング２４の一端が係止されてお
り、ウエビング２４の他端には図示しないタング
プレートが取付けられている。このタングプレー
トを図示しないバツクル装置へ係合することによ
り乗員はウエビング２４の中間部を装着すること
ができる。以上の構成は従来ののウエビング巻取
装置と同様である。

脚板１８から突出した巻取軸２２の端部に穿設
された矩形孔には小径軸２６の矩形部２７が挿入
されて小径軸２６が巻取軸２２と同軸的に連結さ
れており、この小径軸２６の先端に刻設されるス
リツト２８には小ぜんまいばね３０の内端が係止
されている。この小ぜんまいばね３０は小ばねケ
ース３２内へ収容されると共に外端がこの小ばね
ケース３２へ係止されている。小ばねケース３２
は大ばねケース３４及び脚板２０へ密着されるシ
ート３５を介して脚板２０へ固着されている。こ
れにより小ぜんまいばね３０は巻取軸２２をウエ
ビング巻取方向（第２，３図矢印Ａ方向）に弱く
付勢して層状に巻取つており、乗員がウエビング
２４を装着した場合にウエビング２４を乗員へ軽
く接触させる役目を有している。

小径軸２６の外周には作動リング３６の円筒部
３６Ａが遊嵌されており巻取軸２２と相対回転可
能となつている。この円筒部３６Ａには大ぜんま
いばね３８の内端が係止されており、この大ぜん
まいばね３８の外端は大ばねケース３４の内周へ
係止されている。

この大ぜんまいばね３８は小ぜんまいばね３０
よりも大きな付勢力を作動リング３６へ付与して
いるが、作動リング３６はトリガ手段４０によつ
て車両通常走行状態ではそのウエビング巻取方向
回転が阻止され、車両緊急時にのみウエビング巻
取方向への回転が可能となつている。

第３，４図に示される如く、トリガ手段４０は
回動ポウル４２とカム板４３及び脚板２０へ固着
された回動手段としてのソレノイド４４で駆動さ
れるプランジヤ４５を有している。

回動ポウル４２は作動リング３６の軸心と平行
なピン４６により脚板２０へ軸支されて作動リン
グ３６のノツチ４８と噛合い、カム板４３は作動
リング３６の軸心と平行な支軸としてのピン４７
により脚板２０へ回動可能に軸支されてカム４３
Ａが作動リング３６と反対側の回動ポウル４２の
表面へ当接している。プランジヤ４５の軸心は作
動リング３６の軸心と直角とされており、先端部
がピン４９によりカム板４３へ軸支されている。

カム板４３は第３図に示される如く車両通常時
に脚板２０へ立設されたストツパ４７Ａへ当接し
て回動ポウル４２と作動リング３６との噛合を維
持している。しかしソレノイド４４の作動時には
プランジヤ４５からの駆動力を受けて回動し、回
動ポウル４２を作動リング３６のノツチ４８から
離間可能としている。

回動ポウル４２はカム板４３からの力を受けな
い状態で、作動リング３６の回転力によつてノツ
チ４８から離間する噛合関係となつている。即ち
回動ポウル４２と作動リング３６の噛合法線（作
動リング３６が大ぜんまいばね３８の付勢力で回
動ポウル４２へ加える回転力の垂直線）が作動リ
ング３６の放射方向線となす角θは、作動リング
３６の回転力によつて回動ポウル４２を作動リン
グ３６から離間させる方向に移動させる角度（θ
＞Ｏ）となつている。したがつて、この状態で
は、作動リング３６の回転力による回動ポウル４
２が作動リング３６から離間する力は、ピン４７
に作用し、このピン４７によつて、回動ポウル４
２が保持されている。

なおソレノイド４４は第４図に示される如く大
ばねケース３４とともに取付ねじ３４ａで脚板２
０へ固着されており、車両緊急状態で図示しない
加速度センサ等によつて通電される結線であり、
プランジヤ４５にはリタンスプリング４５Ａが介
在されてプランジヤ４５がソレノイド４４から突
出する方向に付勢されている。

作動リング３６と巻取軸２２との間にはクラツ
チ手段５０が介在されて車両通常走行状態では作
動リング３６と巻取軸２２とを分離しているが、
車両緊急時にのみ作動リング３６の回転を巻取軸
２２へ伝達するようになつている。このクラツチ
手段としては、巻取軸２２の端部外周へギヤホイ
ル５２が固着されており、このギヤホイル５２の
外周に複数個の凹凸が形成されている。このギヤ
ホイル５２の外周と対応してフリクシヨンプレー
ト５３のピン５４へ軸支されたレバー５６が設け
られている。

このフリクシヨンプレート５３はギヤホイル５
２へ軸支されてギヤホイル５２と相対回転可能と
なつているが、一体的に形成されたレバー５３Ａ
がシート３５へ接触することにより回転時に摩擦
抵抗力を受けるようになつている。

レバー５６は先端部に係合ピン５８を有してお
り、この係合ピン５８は作動リング３６の端面へ
形成された長孔６０内へその先端部が収容されて
いる。この長孔６０は作動リング３６がポウル４
２と噛合した状態では係合ピン５８をギヤホイル
５２から離間して配置しているが、ポウル４２の
噛合が解除し作動リング３６が回転すると係合ピ
ン５８をギヤホイル５２へ噛合わせ、ギヤホイル
５２及び巻取軸２２を作動リング３６と共に回転
させるようになつている。

脚板１８から突出する巻取軸２２の端部には脚
板１８との間にイナーシヤロツク機構６６（詳細
構造は図示省略）が設けられており、車両緊急時
に巻取軸２２のウエビング巻出方向回転が阻止さ
れるようになつている。

このように構成された本実施例の作動を説明す
る。乗員はウエビング２４を巻取軸２２から引出
して装着することができ、ウエビング２４には小
ぜんまいばね３０の付勢力が作用しているのでウ
エビングが乗員へ軽く接触する。通常運動状態で
はイナーシヤロツク機構６６が作用していないの
で乗員は任意に運転姿勢を変更可能である。

このような車両通常状態でカム板４３は回動ポ
ウル４２の作動リング３６から離間方向の回動を
阻止しており、作動リング３６の回転力によつて
生ずる回動ポウル４２の回転力はカム４３Ａをピ
ン４７方向へ押圧する力となつて作用し、カム板
４３を回動させることはないので、車両振動等に
よつて偶発的に作動リング３６が回転することは
ない。またこの状態では、回動ポウル４２の作動
リング３６から離間する方向の回転力はピン４７
に作用してこれに支持されているため、カム板４
３に連結されたプランジヤ４５及びソレノイド４
４がこの荷重を受けることがない。

車両が衝突等の緊急状態に陥ると、図示しない
加速度センサーの作動でソレノイド４４が通電さ
れる。これによつてプランジヤ４５が吸引されて
軸方向に移動しカム板４３がピン４７回りに回動
する。

従つてカム４３Ａはそのリフトの小さな部分が
回動ポウル４２に対応して回動ポウル４２が作動
リング３６から離間する方向の移動を可能とす
る。このため大ぜんまいばね３８の付勢力を受け
ている作動リング３６はノツチ４８が回動ポウル
４２をピン４６回りに回動して噛合を解除させな
がら回転する。

この場合、カム板４３に作用する荷重はピン４
７によつて支持されプランジヤ４５に伝達される
ことがないため、ソレノイド４４の小さな力で確
実にプランジヤ４５を吸引してカム板４３を回動
させることができる。

作動リング３６が回転すると、長孔６０がレバ
ー５６のピン５８をピン５４回りに回転させてギ
アホイル５２と噛合せることになる。これによつ
て作動リング３６はギアホイル５２と連結し、大
ぜんまいばねの付勢力が巻取軸２２へ加わる。な
お作動リング３６とギアホイル５２との連結後は
フリクシヨンプレート５３も作動リングと共に回
転する。

この結果巻取軸２２はウエビング２４を巻取つ
てウエビング２４へ緊張力を与え、ウエビング２
４と乗員との間の隙間が解消する。

一方これと同時にイナーシヤーロツク機構６６
は巻取軸２２のウエビング引出し回転を瞬時に停
止させるので乗員はウエビング２４によつて緊密
に拘束され安全が保証できる。

次に第５図には本考案の第２実施例が示されて
おり、前記実施例のカム板４３に代えてカム板６
２が設けられている。このカム板６２は前記実施
例のカムと同様な輪郭を有するカム６２Ａを有し
ており、回動ポウル４２へ立設された受力ピン６
４が接触するようになつている。

この実施例のカム板６２はカム６２Ａと平行な
輪郭を有するカム６２Ｂが形成されたフレーム６
６が固着されており、これによつて受力ピン６４
を収容する長孔が穿設された確動カムとなつてい
る。

このためこの実施例のカム板６２はソレノイド
４４の作動時に回動すると、カム６２Ｂが受力ピ
ン６４と係合して強制的に回動ポウル４２を作動
リング３６から離間する方向に回転するようにな
つている。

この結果この実施例は前記実施例と同様に車両
通常時に回動ポウル４２と作動リング３６との噛
合を維持し、車両緊急時には迅速且つ確実に回動
ポウル４２を作動リング３６から離間して噛合を
解除させることが可能となつている。

この実施例においても、回動ポウル４２が作動
リング３６から離間する方向の回転力は、ピン４
７に作用してこれに支持されているため、プラン
ジヤ４５及びソレノイド４４がこの荷重を受ける
ことがなく、ソレノイド４４の小さな力で確実に
回動ポウル４２を回転させることができる。

なお上記各実施例は本考案の一例であり、他に
各種の変形例が考えられる。例えば作動リング３
６の回転を車両緊急時にのみ巻取軸へ伝達するク
ラツチ手段は上記実施例の如くギアホイル５２と
ピン５８との組合せに限らず、一対の対向した歯
車を作動リングの回動時にのみ噛合せることによ
り巻取軸へ回転力を伝達する構造等が採用可能で
ある。また回動ポウル４２を作動リング３６との
噛合解除方向に付勢する弾性体を設けてもよい。

以上説明した如く本考案に係るウエビング緊張
装置では、作動リングに係合可能に配置され、係
合状態では作動リングの回転を阻止する回動ポウ
ルと、支軸によつて回転可能に支持され、通常時
には前記回動ポウルに当接して回動ポウルを保持
し作動リングに係合させると共にこの係合状態を
維持し、かつ、前記軸支周りに回転することによ
り前記回転ポウルの保持を解除し作動リングとの
係合を解除させるカムと、車両緊急時に前記カム
を前記軸支周りに回動させる回動手段と、を備え
ているので、車両振動等により偶発作動が生ずる
ことがなく、車両緊急時にのみ確実に作動リング
の回転を可能として乗員の拘束性を向上すること
ができる優れた効果を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るウエビング緊張装置の第
１実施例を示す断面図、第２図は第１図−線
断面図、第３図は第１図−線断面図、第４図
は本実施例の分解斜視図、第５図は本考案の第２
実施例を示す第３図に相当する断面図である。 １０……巻取装置、２２……巻取軸、２４……
ウエビング、３０……小ぜんまいばね、３６……
作動リング、３８……大ぜんまいばね、４０……
トリガ手段、４２……回動ポウル、４３……カム
板、４３Ａ……カム、４４……ソレノイド、６２
……カム板、６２Ａ，６２Ｂ……カム、６４……
受力ピン。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 乗員拘束用ウエビングが巻取られる巻取軸を
   小弾性体の付勢力でウエビング巻取方向へ付勢
   し、大弾性体の付勢力が作用する作動リングの
   ウエビング巻取方向回転を通常時に阻止し車両
   緊急時に回転可能として大弾性体の付勢力を巻
   取軸へ伝えるウエビング緊張装置において、 前記作動リングに係合可能に配置され、係合
   状態では作動リングの回転を阻止する回動ポウ
   ルと、 支軸によつて回動可能に支持され、通常時に
   は前記回動ポウルに当接して回動ポウルを保持
   し作動リングに係合させると共にこの係合状態
   を維持し、かつ、前記支軸周りに回動すること
   により前記回動ポウルの保持を解除し作動リン
   グとの係合を解除させるカムと、 車両緊急時に前記カムを前記支軸周りに回動
   させる回動手段と、 を備えたことを特徴とするウエビング緊張装
   置。 (2) 前記カムは回動時に回動ポウルを作動リング
   から強制的に離間させる確動カムであることを
   特徴とした前記実用新案登録請求の範囲第１項
   に記載のウエビング緊張装置。 (3) 前記回動ポウルはカムからの力を受けない場
   合に、作動リングの回転力で作動リングとの噛
   合が解除する方向に回転力を受ける噛合関係と
   されることを特徴とした前記実用新案登録請求
   の範囲第１項又は第２項に記載のウエビング緊
   張装置。