JPH0352549B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

この発明は、フイン材と管材とをろう付けする
ことにより熱交換器を製造するに際して、ろう付
け時の加熱に対してすぐれた耐垂下性を示す高温
強度を有し、かつろう付け後の管材に対してすぐ
れた犠牲陽極効果を発揮する熱交換器用Al合金
製複合フイン材に関するものである。 一般に、Al合金は軽くて、熱伝導性にすぐれ、
かつ耐食性にもすぐれていることから、例えば自
動車のラジエータなどの熱交換器の製造に広く用
いられている。この熱交換器は、例えば、Al−
Mn系合金を芯材とし、この芯材の片面にAl−Si
系合金のろう材をクラツドしたものからなるブレ
ージングシートで構成された管材と、Al−Mn系
合金のフイン材とを組合せ、この組合せ体を、真
空中あるいは不活性ガス中でフラツクスなしでろ
う付けするか、あるいは低圧大気中でフラツクス
を用いてろう付けすることによつて製造されてい
る。 したがつて、熱交換器のフイン材には、ろう付
け時におけるろう材の溶融温度以上の加熱に対し
て変形しない十分な耐垂下性、すなわち高温強度
が要求されることは勿論のこと、特に実用に際し
て管材に対して十分満足するすぐれた犠牲陽極効
果を発揮することが要求される。 しかし、上記のAl−Mn系合金製フイン材にお
いては、管材に対して電気化学的に十分卑でない
ために、満足な犠牲陽極効果の発揮を期待するこ
とはできない。 かかる点から、熱交換器用フイン材として、
Al−Mn系合金に１〜２％程度のZnを含有させて
電気科学的に卑にし、もつて管材に対する犠牲陽
極効果を十分に発揮せしめるようにしたAl−Mn
−Zn系合金が提案され、確かに、このAl−Mn−
Zn系合金製フイン材においては、熱交換器が不
活性ガス雰囲気中、あるいは大気中でのろう付け
により製造された場合には、すぐれた犠牲陽極効
果を発揮したが、高温強度の劣るものであり、さ
らにこれを用いて真空中でのろう付けにより熱交
換器を製造した場合には、Znの含有量が高く、
かつZnは蒸気圧の高いものであるため、ろう付
け中にフイン材中のZnが多く蒸発し、残留量が
少なくなつて管材に対する犠牲陽極効果は低いも
のとなり、またZnの蒸発による炉の汚染などの
問題が生じるものであつた。 そこで、本発明者等は、上述のような観点か
ら、単一材にて高温強度と犠牲陽極効果を具備し
たフイン材を構成することはきわめて困難である
との認識に立ち、これらの両特性を複合材にて構
成することにより確保すべく研究を行なつた結
果、熱交換器用フイン材を、重量％で（以下％は
重量％を示す）、 Mn：0.1〜1.5％、 Zn：0.01〜0.5％、 を含有し、さらに必要に応じて、 Mg：0.01〜１％、 Cu：0.01〜0.2％、 Zr：0.02〜0.2％、 Cr：0.02〜0.3％、 のうちの１種または２種以上を含有し、残りが
Alと不可避不純物からなる組成を有するAl合金
製芯材の両面に、 Sn：0.03〜0.12％、 Zn：0.01〜0.3％、 を含有し、さらに必要に応じて、 Mg：0.01〜１％、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組
成物を有するAl合金製皮材をクラツドしたもの
からなるAl合金製複合材で構成すると、上記芯
材によつてすぐれた耐垂下性（高温強度）が確保
され、かつ上記皮材においては、Zn含有量が相
対的に低いので、真空ろう付け時におけるZnの
蒸発は極力抑制されるようになると共に、Snと
の共存によつて電気化学的に十分卑となることか
ら、この皮材によつてすぐれた犠牲陽極効果が確
保されるという知見を得たのである。 この発明は、上記知見にもとづいてなされたも
のであつて、以下に芯材および皮材の成分組成を
上記の通りに限定した理由を説明する。 Ａ 芯材 (a) Mn Mn成分には、Alと化合物を形成し、素地
中に微細に分散析出して合金の再結晶温度を
著しく上昇させ、この結果ろう付け加熱時に
再結晶粒が粗大化し、もつてろう付け時の耐
垂下性（高温強度）を向上させる作用がある
が、その含有量が0.1％未満では前記作用に
所望の効果が得られず、一方1.5％を越えて
含有させても一層の向上効果が得られないば
かりでなく、溶解鋳造時に巨大晶を形成して
加工性が損なわれるようなり、さらに熱伝導
性も低下するようになることから、その含有
量を0.1〜1.5％と定めた。 (b) Zn 芯材中のZn成分は、真空ろう付加熱に際
して、皮材から少量蒸発するZnを補給する
目的で含有されるものであり、したがつてそ
の含有量が0.01％未満ではろう付け加熱時に
おける皮材へのZn補給を満足に行なうこと
ができず、一方0.5％を越えた含有は、皮材
を介してのZnの多量の蒸発を招くことから、
その含有量を0.01〜0.5％と定めた。 (c) MgおよびCu これらの成分には、素地に固溶して、これ
を強化する作用があるので、特に強度が要求
される場合に必要に応じて含有されるが、そ
の含有量が、それぞれMg：0.01％未満およ
びCu：0.01％未満では所望の強度向上効果が
得られず、一方Mgについては１％を越えて
含有させると耐垂下性（高温強度）の低下が
著しくなり、またCuについては0.2％を越え
て含有させると、電気化学的に著しく貴にな
つて、管材に対する犠牲陽極効果を失うよう
になることから、その含有量を、それぞれ
Mg：0.01〜１％、Cu：0.01〜0.2％と定め
た。 (d) ZrおよびCr これらの成分には、Mnとの共存におい
て、Alと化合物を形成し、素地中に微細に
分散析出して合金の再結晶温度を一段と上昇
させ、もつてろう付け加熱時に再結晶粒を粗
大化して耐垂下性を向上させる作用があるの
で、特により一層の耐垂下性が要求される場
合に必要に応じて含有されるが、その含有量
が、それぞれZr：0.02％未満およびCr：0.02
％未満では所望の耐垂下性改善効果が得られ
ず、一方Cr：0.3％およびZr：0.2％を越えて
含有させると、溶解時に巨大晶を形成し易く
なつて加工性が低下するようになり、かつ耐
垂下性により一層の向上効果も現われないこ
とから、その含有量をZr：0.02〜0.2％、
Cr：0.02〜0.3％と定めた。 Ｂ 皮材 (a) SnおよびZn これらの成分には、両成分共存において、
皮材を電気化学的に卑にし、もつてすぐれた
犠牲陽極効果を付与せしめる作用があるほ
か、耐食性を向上させる作用がある。したが
つて、Snの含有量が0.03％未満でも、また
Znの含有量が0.01％未満でもすぐれた犠牲陽
極効果および耐食性を確保することができな
いものであり、一方Sn：0.12％およびZn：
0.3％を越えて含有させても前記作用に所望
の向上効果が得られないばかりでなく、加工
性が劣化するようになることから、その含有
量を、Sn：0.03〜0.12％、Zn：0.01〜0.3％と
定めた。 (b) Mg Mg成分には、皮材の電気化学的性質をほ
とんど変えることなく、皮材の耐食性を向上
させる作用があるので、特に耐食性が要求さ
れる場合に必要に応じて含有されるが、その
含有量が0.01％未満では所望の耐食性向上効
果が得られず、一方１％を越えて含有させて
もより一層の向上効果が得られないばかりで
なく、加工性の劣化をきたすようになること
から、その含有量を0.01〜１％と定めた。 つぎに、この発明の複合フイン材を実施例によ
り具体的に説明する。 実施例 通常の溶解法により、それぞれ第１表に示され
る最終成分組成をもつた芯材用Al合金と皮材用
Al合金を溶製し、鋳造して鋳塊とした後、通常
の条件で均質化処理を施し、ついでこれらのAl
合金鋳塊のうち芯材用Al合金には通常の条件で
熱間圧延を施して板厚：８mmの熱延板とし、さら
に皮材用Al合金にも同様に通常の条件で熱間圧
延を施して板厚：５mmの熱延板とし、引続いてこ
れに冷間圧延を施して板厚：１mmの冷延板とし、
つぎにこのようにして形成された板厚：８mmの芯
材用Al合金熱延板と板厚：１mmの皮材用Al合金
冷延板とを同じく第１表に示される組合せにおい
て、前記芯材用Al合金熱延板の両面に前記皮材
用Al合金冷延板を重ね合わせ、この重ね合せ体
に通常の条件で熱間圧延を施すことによつてクラ
ツドして板厚：３mmとし、引続いてこれに適宜中
間焼鈍を加えながら冷間圧延（最終冷間加工率：
30％）を施して板厚：0.5mmおよび0.16mmの２種
の本発明Al合金製複合フイン材１〜27をそれぞ
れ製造した。 また、比較の目的で、同じく第１表に示される
最終成分組成をもつたAl合金を溶接し、鋳造し、
均質化処理した後、これに通常の条件で熱間圧延
を施して板厚：５mmの熱厚：５mmの熱延板とし、
引続いて適宜

【表】

【表】 中間焼鈍を加えながら冷間圧延（最終冷間加工
率：30％）を施すことによつて板厚：0.5mmおよ
び0.16mmを有する２種類の従来Al合金製フイン材
を製造した。 つぎに、板厚：0.16mmを有する本発明Al合金製
複合フイン材１〜27および従来Al合金製フイン
材を用い、高温強度を評価する目的で耐垂不性試
験を行なつた。耐垂化性試験は、試片として、
幅：30mm×長さ：140mmの寸法をもつたものを用
い、この試片の長さ方向の一端から30mmの部分を
水平保持した状態で、約10^-4torrの真空中、温
度：620℃に５分間保持の条件で行ない、先端部
の垂下高さを測定した。 また、耐垂下性試験後の試片を用い、犠牲陽極
効果を評価する目的で、１規定の食塩水での孔食
発生電位（飽和カロメル基準）を測定した。 さらに、上記の板厚：0.5mmの本発明Al合金製
複合フイン材１〜27および従来Al合金製フイン
材より幅：20mm×長さ：50mmの寸法をもつた試片
を切出し、この試片を、別途用意した幅：40mm×
長さ：50mm×板厚：１mmの寸法をもち、Mn：
1.21％、Alおよび不可避不純物：残りからなる組
成を有する厚さ：0.9mmの芯材の片面に、Si：9.50
％、Mg：1.53％、Alおよび不可避不純物：残り
からなる組成を有するろう材を厚さ：0.1mmでク
ラツドしたものからなる。通常管材として用いら
れているAl合金板材の長さ方向中心線上に直角
に立設保持し、この状態で、真空中、温度：620
℃に５分間保持の条件でろう付け処理を施し、こ
の結果のろう付け後の組立て体について、1ppm
のCu⁺⁺イオン含有の温度：40℃の水道水中に30
日間浸漬の水道水浸漬試験、並びに30日間の
CASS試験を行ない、試験後の通常管材として用
いられる前記Al合金板材における孔食発生数お
よび最大孔食深さを測定した。これらの測定結果
を第１表に合せて示した。 第１表に示される結果から、Mn含有量がほぼ
同一の本発明Al合金製複合フイン材５と従来Al
合金製フイン材との比較から明らかなように、本
発明Al合金製複合フイン材１〜27は、いずれも
従来Al合金製フイン材と同等のすぐれた耐垂下
性（高温強度）を有し、一方犠牲陽極効果につい
ては、従来Al合金製フイン材に比して一段とす
ぐれた結果を示している。 なお、第１表に示される各種とAl合金は、い
ずれも不可避不純物としてMn：0.01％以下、
Cu：0.01％以下、Cr：0.01％以下、Zr：0.01％以
下、Si：0.3％以下、Fe：0.4％以下を含有するも
のであつた。 上述のように、この発明のAl合金製複合フイ
ン材は、すぐれた高温強度（耐垂下性）を有して
いるので、熱交換器の製造に際して適用されるろ
う付け処理において、“へたり”などの発生がな
く、したがつて良好なろう付けを行なうことがで
きるばかりでなく、これがろう付けされる管材に
対して電気化学的に十分卑な電気的特製を有して
いるので、管材に対して十分な犠牲陽極効果を発
揮し、すぐれた耐食性を具備することと合まつ
て、熱交換器の著しい延命化を可能とするのどの
工業上有用な特性を有するのである。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ Mn：0.1〜1.5％、 Zn：0.01〜0.5％、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組
   成を有するAl合金製芯材の両面に、 Sn：0.03〜0.12％、 Zn：0.01〜0.3％、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組
   成（以上重量％）を有するAl合金製良材をクラ
   ツドしてなる高温強度および犠牲陽極効果のすぐ
   れた熱交換器用Al合金製複合フイン材。 ２ Mn：0.1〜1.5％、 Zn：0.01〜0.5％、 を含有し、さらに、 Mg：0.01〜１％、 Cu：0.01〜0.2％、 のうちの１種または２種を含有し、残りがAlと
   不可避不純物からなる組成を有するAl合金製芯
   材の両面に、 Sn：0.03〜0.12％、 Zn：0.01〜0.3％、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組
   成（以上重量％）を有するAl合金製皮材をクラ
   ツドしてなる高温強度および犠牲陽極効果のすぐ
   れた熱交換器用Al合金製複合フイン材。 ３ Mn：0.1〜1.5％、 Zn：0.01〜0.5％、 を含有し、さらに Zr：0.02〜0.2％、 Cr：0.02〜0.3％、 のうちの１種または２種を含有し、残りがAlと
   不可避不純物からなる組成を有するAl合金製芯
   材の両面に、 Sn：0.03〜0.12％、 Zn：0.01〜0.3％、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組
   成（以上重量％）を有するAl合金製皮材をクラ
   ツドしてなる高温強度および犠牲陽極効果のすぐ
   れた熱交換器用Al合金製複合フイン材。 ４ Mn：0.1〜1.5％、 Zn：0.01〜0.5％、 を含有し、さらに、 Mg：0.01〜１％、 Cu：0.01〜0.2％、 のうちの１種または２種と、 Zr：0.02〜0.2％、 Cr：0.02〜0.3％、 のうちの１種または２種を含有し、残りがAlと
   不可避不純物からなる組成を有するAl合金製芯
   材の両面に、 Sn：0.03〜0.12％、 Zn：0.01〜0.3％、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組
   成（以上重量％）を有するAl合金製皮材をクラ
   ツドしてなる高温強度および犠牲陽極効果のすぐ
   れた熱交換器用Al合金製複合フイン材。 ５ Mn：0.1〜1.5％、 Zn：0.01〜0.5％、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組
   成を有するAl合金製芯材の両面に、 Sn：0.03〜0.12％、 Zn：0.01〜0.3％、 Mg：0.01〜１％、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組
   成（以上重量％）を有するAl合金製皮材をクラ
   ツドしてなる高温強度および犠牲陽極効果のすぐ
   れた熱交換器用Al合金製複合フイン材。 ６ Mn：0.1〜1.5％、 Zn：0.01〜0.5％、 を含有し、さらに、 Mg：0.01〜１％、 Cu：0.01〜0.2％、 のうちの１種または２種を含有し、残りがAlと
   不可避不純物からなる組成を有するAl合金製芯
   材の両面に、 Sn：0.03〜0.12％、 Zn：0.01〜0.3％、 Mg：0.01〜１％、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組
   成（以上重量％）を有するAl合金製皮材をクラ
   ツドしてなる高温強度および犠牲陽極効果のすぐ
   れた熱交換器用Al合金製複合フイン材。 ７ Mn：0.1〜1.5％、 Zn：0.01〜0.5％、 を含有し、さらに Zr：0.02〜0.2％、 Cr：0.02〜0.3％、 のうちの１種または２種を含有し、残りがAlと
   不可避不純物からなる組成を有するAl合金製芯
   材の両面に、 Sn：0.03〜0.12％、 Zn：0.01〜0.3％、 Mg：0.01〜１％、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組
   成（以上重量％）を有するAl合金製皮材をクラ
   ツドしてなる高温強度および犠牲陽極効果のすぐ
   れた熱交換器用Al合金製複合フイン材。 ８ Mn：0.1〜1.5％、 Zn：0.01〜0.5％、 を含有し、さらに、 Mg：0.01〜１％、 Cu：0.01〜0.2％、 のうちの１種または２種と、 Zr：0.02〜0.2％、 Cr：0.02〜0.3％、 のうちの１種または２種を含有し、残りがAlと
   不可避不純物からなる組成を有するAl合金製芯
   材の両面に、 Sn：0.03〜0.12％、 Zn：0.01〜0.3％、 Mg：0.01〜１％、 を含有し、残りがAlと不可避不純物からなる組
   成（以上重量％）を有するAl合金製皮材をクラ
   ツドしてなる高温強度および犠牲陽極効果のすぐ
   れた熱交換器用Al合金製複合フイン材。