JPH0348504B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は電子写真感光体、特に表面保護層を有
する電子写真感光体及びその製造方法に関する。 従来用いられている電子写真感光体は導電性基
板上に感光層としてSe、Se−Te合金、Se−As合
金等を蒸着して形成したもの、あるいはPVK（ポ
リビニルカルバゾール）−TNF（２，４，７−ト
リニトロフルオレノン）のような有機光導電体等
を塗布したものが代表的なものである。しかしこ
れらはいずれも感光体を繰り返し使用するとき転
写紙の剥離あるいは残留トナーのクリーニング等
で損傷を受け易く、又感光層が摩耗しやすく、特
性劣化以前の比較的早い時期に感光体を交換しな
ければならなかつた。この点を改良するために感
光体表面に表面層を設けることが知られている。
この表面層の一つは比較的電気絶縁性の高い材料
からなる絶縁層である。この絶縁層は膜厚を厚く
でき、又機械的強度の高いものを選び得る利点を
有するが、この種の感光体を繰り返し使用するた
めには、例えば第１次帯電→逆極性第２次帯電→
像露光あるいは第１次帯電→第２次帯電同時像露
光→一様露光等といつた特殊な潜像形成プロセス
を必要とし、又これらのプロセスは１回の複写の
工程において、２回以上の帯電工程を必要とし、
このための装置の複雑化とそれに伴なう特性の不
安定さやコスト高を生じる。又前述の特殊な潜像
形成プロセスを必要とせず、帯電→像露光のいわ
ゆるカールソンプロセスで用いる得る表面層とし
ての保護層がある。この保護層は低絶縁化して保
護層表面あるいは内部への電荷の蓄積を防ぐ必要
がある。これまで採用されてきた方法は第４級ア
ンモニウム塩等を保護層に添加するものである
が、これらの材料は一般に吸湿によつて導電率が
大巾に変動し、乾燥時には保護層の導電性が下が
つて電荷が蓄積するため画像にカブリを生じ、ま
た高湿時には必要以上に導電性が上がつて横方向
への電荷の移動が起こつて画像にボケを生じる。
更に従来の保護層はカールソンプロセスに用いる
ためには、膜厚が数μ以下といつた比較的薄いも
のでなければならず、機械的強度の点で満足し難
いものであり、又低絶縁化のために加えられる物
質により保護層が着色し、感光体の分光感度に好
ましくない影響を与えるものであつた。 そこで本発明はこれら欠点を解消したカールソ
ンプロセスに用いられる表面保護層を有する電子
写真感光体及びその製造方法を提供することを目
的とするものである。 本発明の目的は基板、感光層及び結着樹脂と電
子供与性物質との電荷移動錯体を含む保護層とを
順次積層した電子写真感光体、及び電子供与性物
質とこの電子供与性物質と電荷移動錯体形成可能
な結着樹脂とを溶媒に混合溶解して、この溶液中
で電子供与性物質と結着樹脂との間で電荷移動錯
体形成反応をさせた後、この電荷移動錯体含有溶
液を感光層上に塗布乾燥して保護層を形成する電
子写真感光体の製造方法により達成することがで
きる。 本発明に用いられる保護層は、結着樹脂と電子
供与性物質とを含み、この結着樹脂と電子供与性
物質との間に予め電荷移動錯体を形成してなる点
に特徴を有する。 電子供与性物質としては、例えば、トリフエニ
ルメタン、トリフエニルアミン、ピラゾリン、オ
キサジアゾール、ヒドラゾン、カルバゾール、フ
エナジン、ナフタセン、アントラセン、ナフタリ
ン、ピレン、フエナントレン、ビオラントレン、
キノキサリン、アクリジン、クプロイン、ネオク
プロイン、トリアゾール、テトラゾール、チアジ
アゾール、バソクプロイン、バソフエナントロリ
ン、ビキノリン、トリアジン、ニグロシン、ピロ
ール、フエロセン、チタノセン、コバルトセン等
のメタロセン類及びこれらの誘導体、例えばこれ
らの電子供与性物質に脂肪族、芳香族などの置換
基のついたもの、あるいは含まれている窒素が４
級化して塩の形になつたもの等が挙げられ、中で
もフエロセン類、特にメチルフエロセン、エチル
フエロセン、ブチルフエロセン、プロピルフエロ
セン、アミルフエロセン、ジメチルフエロセン、
デカメチルフエロセン等のアルキル基で置換され
たフエロセンが、保護層としたとき比較的透明性
が高く、かつ電気伝導度の安定したものが得られ
るので好ましい。 これら電子供与性物質は１種もしくは２種以上
混合して用いられ、保護層全体に対し、１〜50重
量％含有して用いる。 保護層に電子供与性物質と共に用いられる結着
樹脂としては、前述の電子供与性物質との間に電
荷移動錯体を形成することのできる樹脂であり、
また像露光に用いる光の波長に実質的に透明であ
り、電気絶縁性が比較的高く、耐摩耗性等の機械
的強度の高い樹脂が挙げられる。 この様な結着樹脂としては、例えば、ポリエス
テル、ポリカーボネート、ポリウレタン等を挙げ
ることができる。 特にポリエステルとしては、一般式 〔式中、ｎは20〜200の整数であり、R₁及びR₂
はそれぞれ互に独立したものであつて、水素原
子、炭素数１〜10個のアルキル基あるいは置換ア
ルキル基、又はフエニル、ナフチル基などのアリ
ール基あるいはそれらアリール基のハロゲン原
子、炭素数１〜５個のアルキル基による置換体を
表わし、R₃，R₄及びR₅はそれぞれ互に独立した
ものであつて、水素原子、ハロゲン原子、炭素数
１〜５個のアルキル基あるいはそれらアルキル基
のハロゲン置換体を表わす。〕 で示されるものが好ましい。 この結着樹脂は１種もしくは２種以上混合して
用いられ、保護層全体に対し50〜99重量％含有さ
せて用いる。 本発明に係る保護層は、前述の電子供与性物質
と結着樹脂とを単に混合状態で含有するものでは
なく、電子供与性物質と結着樹脂との電荷移動錯
体を含有するものである。更に電子供与性物質と
結着樹脂との間の電荷移動錯体形成反応がほぼ終
了した状態の電子供与性物質と結着樹脂とを含有
するものである。 この電荷移動錯体の形成は色の変化により確認
できる。電子供与性物質と結着樹脂とを溶剤に溶
解した溶液は電荷移動錯体形成反応の進行につれ
て色が変化し、この反応がほぼ終了すると色の変
化も停止する。 従つて、溶解直後の溶液の色と比較することに
よつて電荷移動錯体の形成が確認できる。 電子供与性物質と結着樹脂との間に電荷移動錯
体が形成された保護層は、電子供与性物質とこの
電子供与性物質と電荷移動錯体形成可能な結着樹
脂とを溶剤に溶解混合して溶液を作成し、この溶
液中で後述する如く電荷移動錯体を形成せしめ、
溶液の色変化停止により反応終了を確認した後、
電荷移動錯体溶液を感光層上に塗布乾燥すること
により形成できる。 この感光体の製造方法を更に詳述すると、まず
電子供与性物質と結着樹脂とを所定量用意し、こ
れら両者を溶剤に溶解し均一な混合溶液を作成す
る。次にこの混合溶液を40℃〜80℃程度の温度で
数時間加熱撹拌して電子供与性物質と結着樹脂と
の間に反応を行わせ電子供与性物質と結着樹脂と
の電荷移動錯体を含む溶液を得る。この際溶剤の
揮散を防止する為、密閉容器中で行なうのが好ま
しい。錯体形成反応の終了は前述の如く溶液の色
変化の停止により確認する。尚、この錯体形成反
応は加熱せずに紫外線等のエネルギー線の照射下
で行なつても良い。また室温中に24〜48時間以上
放置してこの反応を行なわせることもできるが、
長時間を要すので好ましいものでない。次いでこ
の電荷移動錯体形成溶液をそのままあるいは粘度
調節後感光層上あるいは後述する中間層上に塗布
し、乾燥して保護層とする。この塗布は公知の塗
布方法、例えば浸漬法、スプレー法、ロール、バ
ーコート法、カーテン法等を用いて塗布すること
ができる。乾燥は風乾でも加熱乾燥でも良い。 本発明に係る保護層中に電子親和力の大きない
わゆる電子受容性物質を前記電子供与性物質１モ
ルに対して0.001モル〜２モル程度の範囲で添加
させても良い。ここでいう電子受容性物質とは、
例えば、フタル酸、テトラクロルフタル酸などの
無水物、１，３，５−トリシアノベンゼン、ピク
リルクロライド、２，４−ジニトロクロルベンゼ
ン、２，４−ジニトロブロモベンゼン、４−ニト
ロビフエニル、４，４−ジニトロビフエニル、
２，４，６−トリニトロアニソール、トリクロロ
トリニトロベンゼン、トリニトロ−ｏ−トルエ
ン、４，６−ジクロロ−１，３−ジニトロベンゼ
ン、Ｐ−ジニトロベンゼン、クロラニル、ブロマ
ニル、テトラシアノエチレン、ヘキサシアノブタ
ジエン、テトラシアノキノジメタン、ベンゾキノ
ン及びそのハロゲンあるいはシアノ置換化合物、
あるいはニトロ基（−NO₂）、スルフオネート基
（−SO₃−）、カルボキシル基（−COOH）、シア
ノ基（−CN）などで一部が置換された芳香族あ
るいはヘテロ環状化合物、あるいは２，４，７−
トリニトロ−９−フルオレノン、２，４，５，７
−テトラニトロフルオレノン、トリニトロアント
ラセン、ジニトロアクリジン、テトラシアノピレ
ン、ジニトロアントラキノンのモノマー及びこれ
らのポリマーなどが挙げられる。これら電子受容
性物質を混合して用いる場合でも、電子供与性物
質と結着樹脂との間に電荷移動錯体を形成するよ
うにする。 また、例えば、感光層との接着性を改善するた
めの接着剤あるいは表面を平滑にするレベリング
剤等の種々の添加剤を保護層中に加えても良い。 本発明では、保護層を感光層上に直接形成して
もよいし、中間層を介して形成してもよい。保護
層の膜厚としては、１〜20μ、好ましくは３〜
15μであり、1μよりうすいと耐久性が劣り、また
20μより厚いと解像力が低下し、また背景部汚れ
が増大する。 感光層は、光照射による電荷発生能と電荷輸送
能とを併せ持つ層であり、単層でもあるいは２層
以上の積層であつても良い。 感光層を形成する光導電性物質としては、例え
ばセレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、セレ
ン−テルル−ヒ素、酸化亜鉛、酸化チタン、硫化
カドミウム、セレン化カドミウム、硫化亜鉛、無
定形シリコンなどの無機物質、また有機ポリビニ
ルカルバゾール及びその誘導体、芳香族アミン
類、アゾ顔料、フタロシアニン、オキサゾール、
トリアゾール、イミダゾール、ブロムピレンなど
の有機物質が挙げられる。この感光層は公知の方
法により形成される。 保護層と感光層との間に中間層を設けても良
い。この中間層としては保護層と感光層との接着
性を改善する接着層あるいは保護層表面の電荷が
感光層中に注入されるのを阻止する電荷注入阻止
層がある。 本発明に用いられる基板としては、例えばアル
ミニウム、亜鉛、しんちゆう、銅、スズ、ニツケ
ル、ステンレス、またはポリビニルアルコールな
どの導電性物質、あるいは上記導電性物質と紙、
プラスチツク、ガラスなどと組合わせた複合体な
どの材料を用いることができ、シート状、ベルト
状あるいはドラム状にして用いられる。感光層と
基板との間に酸化アルミニウムの薄層あるいはプ
ラスチツクの薄層などから成るバリヤー層を設け
ても良い。 本発明に係わる電子写真感光体及びその製造方
法は種々の利点を有する。即ち、形成された保護
層中では、電荷移動錯体がほぼ飽和状態にまで形
成されており、保護層の電気伝導度が非常に安定
し、湿度等の環境条件の変化によつて電気伝導度
が変化することはない。単に電子供与性物質を混
合したものでは、例えば混合条件、塗布条件等の
製造条件のわずかな違いにより保護層としての電
気特性に変化が生じてしまうが、本発明感光体の
保護層では予め電荷移動錯体が形成されており、
混合条件、塗布条件等の製造条件の違いがあつて
も保護層としての電気特性に変化をきたすことは
ない。また単に電子供与性物質を混合したものに
比べ、同じ量の電子供与性物質を添加した場合に
保護層の電気伝導度が高くなり、厚い皮膜とする
ことができ、逆に所定の電気伝導度にした場合に
は少量の電子供与性物質で済み、保護層中での電
子供与性物質が析出するといつた問題を生じな
い。このような感光体を用いてカールソンプロセ
スにより複写を行うと、残留電位の上昇が殆んど
なく、背景部に汚れが少なく、解像力の高い画像
を得ることができ、又感光体の寿命を著るしく向
上することができる。 以下本発明を実施例を用いて説明する。 実施例 １ アルミパイプ基板上にセレンを真空蒸着して厚
さ60μの感光層を形成した。フエロセン20ｇとポ
リカーボネート樹脂80ｇをクロロホルムに溶解し
た。この溶液を密閉容器に入れ、50℃に加熱し３
時間撹拌しフエロセンとポリカーボネート樹脂と
の間に錯体形成反応を行なわせた。 溶解直後の溶液は橙赤色を呈していたが、加熱
するにつれて色が変化し、３時間加熱後は褐色と
なりそれ以上変化しなかつた。この錯体形成反応
を行なわせた溶液を、上記感光層上に浸漬法によ
り塗布し、風乾したして厚さ15μの保護層を形成
した。この様に作成された感光体を試料−１とし
た。 比較試料として、フエロセン20ｇとポリカーボ
ネート樹脂80ｇをクロロホルムに溶解し、錯体形
成反応を行なわせることなく感光層上に塗布した
こと以外は試料−１と同様の方法で感光体を作成
し、比較試料−１とした。 この試料−１及び比較試料−１を用いて一様帯
電、像露光、磁気ブラシ現像、転写、除電、クリ
ーニングを繰返し行なつた。この工程の１サイク
ル目及び5000サイクル目における初期帯電電位、
残留電位、画像濃度、背景部濃度は次表１及び２
の通りであつた。

【表】

【表】 この結果から明らかな通り、本発明に係る感光
体は電気特性、画像特性共に良好なものであつ
た。 また試料−１を用い、環境湿度を30％及び90％
にして試験し、ほぼ前述と同様の結果を得た。 このことから、本発明に係わる感光体は、湿度
条件の変化に対しても安定なものであることが確
認された。 実施例 ２ 製造安定性を調べる為、実施例１と同様の方法
で本発明の感光体及び比較用感光体を各々５本づ
つ作成した。これら感光体を用いて感光体間の残
留電位のバラツキを調べた。 本発明の感光体の残留電位の平均は195V、最
大値と最小値の差は10Vであつた。 又比較用感光体についてはそれぞれ510V，
100Vであつた。 この結果から明らかな通り、本発明に係る感光
体は感光体間の電気特性のバラツキが少なく、製
造性が安定している。 実施例 ３ 保護層の材料としてジメチルフエロセン20ｇと
ポリカーボネート80ｇとをクロロホルムに溶解し
た溶液を用いたこと以外は、実施例１と同様の方
法で感光体を作成し試料−２とした。溶解直後の
溶液は赤燈色であつたが、反応後は茶色を呈して
いた。この試料−２の残留電位は30Vであつた。 実施例 ４ 保護層の材料としてデカメチルフエロセン10ｇ
とポリアリレート樹脂90ｇとを塩化メチレンに溶
解した。この溶液を密閉容器に入れ35℃に加熱
し、３時間撹拌し、デカメチルフエロセンとポリ
カーボネート樹脂との間で錯体形成反応を行なわ
せた。 溶解直後の溶液は黄燈色であつたが反応後は緑
色を呈した。 実施例１と同様の方法で感光体を作成し試料−
３とした。この試料の残留電位は40Vであつた。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 電子供与性物質と、この電子供与性物質と電
   荷移動錯体形成可能な結着樹脂とを溶媒に混合溶
   解して、この溶液中で電子供与性物質と結着樹脂
   との間で電荷移動錯体形成反応をさせた後、この
   電荷移動錯体含有溶液を感光層上に塗布し、乾燥
   して保護層を形成することを特徴とする電子写真
   感光体の製造方法。