JPH0316207B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、ネツクイン缶の製造方法に関する。

従来の技術 缶胴端部を縮径して缶胴内径よりも小さいチヤ
ツクウオール外径を有する缶蓋を缶胴に二重巻締
したいわゆるネツクイン缶は、缶蓋材料費が節減
されてコスト安になる点、巻締部が缶胴より外方
に出張らないので箱詰スペースが節約できる点、
および緊密な積重ねができる点等の利点を有し、
従来多く採用されてきている。

従来、上記ネツクイン缶の製造は、予め缶胴に
ネツキング装置のロール又はダイスによりネツキ
ング加工を施してからフランジ加工を行ない、し
かるのち通常の方法で缶蓋の２重巻締を行なうこ
とによりなされている。そのため、ネツクイン缶
の製造ラインは、通常の缶製造ラインよりもネツ
キング加工装置が余分に必要であり、その分設備
費が嵩むと共に、製造工程が長くなる等の問題点
があつた。

該問題点を解決するために、近時、ネツキング
装置で缶胴に予めネツキング加工を施すことな
く、缶蓋を２重巻締する巻締工程で巻締ロールに
よつて巻締と同時にネツキング加工を施してネツ
クイン缶を得ようとすることが提案されている
（例えば、特開昭56−17137号公報、特開昭58−
35027号公報）。

発明が解決しようとする問題点 巻締時にネツキング加工を同時に行なう上記提
案の方法は、特別なネツキング装置を必要としな
い利点を有している。ところが、この方法でネツ
クイン缶を製造すると、ネツク部にしわが発生し
易く、その結果ネツク部内外面の塗膜を損傷させ
塗膜剥離やERV不良が起るという問題が生じる
と共に、巻締不良が生じ易く、未だ満足のいくも
のではなかつた。

本発明は、上記実情に鑑み創案されたものであ
つて、巻締と同時にネツキング加工を行なつて
も、ネツク部にしわが発生することなく、塗膜に
は悪影響を及ぼさないで良好な巻締ができるよう
なネツクイン缶の製造方法を提供することを目的
とするものである。

問題点を解決するための手段 本発明者は、上記従来提案されているネツクイ
ン缶の製造方法における缶ネツク部のしわの発生
及び巻締不良の発生の原因について種々実験を行
なつた結果、それらの問題は、(イ)缶胴ネツク部の
縮径率および縮径量、(ロ)缶蓋のカールオープニン
グ径と缶胴フランジ外径との差、(ハ)フランジの形
状、(ニ)シーミングロールの形状、(ホ)シーミングチ
ヤツク高さ等に起因することが判明し、これらを
改善することによつて、巻締と同時にネツキング
加工を行なつても、良好なネツクイン缶が得られ
ることを知得した。

さらに詳述すると、上記(イ)の点は、缶胴板厚及
び缶胴径により多少変化するが、通常の金属缶の
缶胴板厚である0.14〜0.24mmの範囲では、第１図
に示す缶胴の外径Ａに対するネツク部外径Ｂの縮
径率が５％以内で巻締した場合、しわの発生がな
く良好な巻締ができることが確認された。縮径率
が５％を超えると、しわおよび塗膜剥離を発生し
た。また縮径量が3.5mm以上になると、巻締時に
ネツキング成形する際の良好な成形性が得られる
フランジ幅（FlL）1.5〜2.2mmでは缶蓋が缶胴フ
ランジ部に被嵌することがむずかしく、事実上成
形が不可能であつた。

上記(ロ)の点は、第２図に示すように、巻締前の
缶蓋１が缶胴２のフランジ３に被嵌された状態で
の缶蓋のカールオープニング径CODと缶胴のフ
ランジ外径FlDとの関係を示すもので、その差も
0.2mm以下では、シーマーでの蓋１と缶胴２のセ
ンターリング精度がきびしくなり蓋１と缶胴２の
寸法のバラツキが直接影響を及ぼし、蓋１が缶胴
２のフランジ３に被嵌できず多々巻締不良が発生
した。一方、その差が大き過ぎると即ちCODが
大き過ぎると、巻締めに必要なエンドフランジ部
１′の寸法はほぼ一定のため、蓋１のチヤツクウ
オール部１″と缶胴内径との差が小となり、巻締
めネツキング後の巻締部が缶胴よりも凸出する。
従つて巻締時に良好なネツキングを得るために
は、（COD−FlD）は0.2mm以上望しくは0.5mm以上
が必要であり、上限は3.2mm以下であることが良
い。

上記(ハ)のフランジの形状は、缶胴のフランジ幅
FlL（第３図参照）が短かいとフランジの成形時
にフランジングダイに沿いにくいため寸法や形状
のバラツキが出やすくなり、巻締後のボデイフツ
クのバラツキが大きくなる。一方、長過ぎるとフ
ランジに蓋が嵌まらなくなる。また、フランジ湾
曲部の曲率半径Ｒも巻締形状に影響を及ぼし、Ｒ
が小さければFlLが短かくてもフランジ形状が決
まりやすくバラツキも小さくなり、さらにフラン
ジハイトも小さくなるので巻締が安定する。この
ようなことから、FlLは1.2mm以上2.6mm以下望ま
しくは上記した1.5〜2.2mmの範囲、Ｒ＝1.6mm以下
の範囲で良好に巻締ができることが確認された。

上記(ニ)のシーミングロールの形状について、ネ
ツキング成形は、第１シーミングロールの下顎で
略所望の縮径率近くまで行ない、次いで第２シー
ミングロールで仕上げを行なう。従つて、第１シ
ーミングロール及び第２シーミングロールの下顎
の位置が異なると成形跡が２本になる。この現象
は、下頌の接触部のＲを0.8mm以上に大きくする
こと、第１シーミングロール５と第２シーミング
ロール６の接触部７，８の位置を同じにするこ
と、第２シーミングロールの接触部の形状を変更
することにより解消することができた（第４図参
照）。

さらに、上記(ホ)のシーミングチヤツク高さは、
従来のように巻締後の缶高さを基準にして算出す
ると、巻締とネツキング加工を同時に行なう場合
の缶胴は従来よりフランジ高さが高いため、リフ
タースプリングのクツシヨン量が大きくなり、巻
締部に無理な荷重が加わり、巻込み不良や、メタ
ルヘヤー、蓋の巻締め切れ等が発生していた。こ
の問題は、巻締前の缶高さを仮の巻締後の缶高さ
とし、それをもとにシーミングチヤツク高さを算
出することによつて、解消することができ、良好
な巻締が得られた。

以上、詳述した(イ)〜(ホ)の事項は、すべて同時に
備えることが望ましいが、必ずしも全て備えなく
ても前記目的は達成することができる。本発明
は、前記事項の内最も大きな影響を及ぼす前記(イ)
及び(ロ)の点に着目して成し遂げられたものであ
る。

即ち、本発明のネツクイン缶の製造方法は、缶
胴に、該缶胴の内径よりも小さいチヤツクウオー
ル外径を有する缶蓋を被嵌させて第１シーミング
ロール及び第２シーミングロールにより二重巻締
を行なうと同時に、前記第１シーミングロール及
び第２シーミングロールの下顎部でネツキング加
工を行なうネツクイン缶の製造方法において、前
記缶蓋のカールオープニング径と前記缶胴のフラ
ンジ外径との差が0.2mm乃至3.2mmの範囲内であ
り、且つ前記缶胴のフランジの曲率半径が1.6mm
以下であり、そして前記第１シーミングロール及
第２シーミングロールの下顎の接触部が同一高さ
位置に曲率半径0.8mm以上に形成されており、前
記ネツキング加工部の縮径率を缶胴の外径に対し
て５％以内でかつ縮径量が3.5mm未満となるよう
に巻締と同時にネツキング加工を行なうことを特
徴とする構成を採用することによつて、上記問題
点を解決したものである。

作 用 本発明の作用を第５図を参照しながら説明す
る。第１巻締ロール５のグループ９で第１次巻締
を行なうと同時に、下顎部１０が次第に缶胴頭部
を押圧してネツキング加工を行なう。第１次巻締
終了時までに、缶胴フランジ部が缶蓋チヤツクウ
オール部外径に略接するまでネツキング加工が施
される。次いで第２シーミングチヤツク８によつ
て第２次巻締を行なうと共に、該シーミングロー
ルの下顎部１１でさらに前記ネツキング加工部を
押圧して、ネツクイン部の縮径率５％以内かつ縮
径量3.5mm未満でネツキング加工を行なう。本発
明は縮径率５％以内かつ縮径率3.5mm未満でネツ
キング加工を行なうことによつて、無理なく縮径
できかつ充分なフランジ幅を得ることができて、
ネツク部にしわを発生させることなく均一なネツ
キング加工ができると共に、緊密な巻締ができ
る。かつ、蓋のカールオープニング径と缶胴フラ
ンジ外径との差を0.2mm以上にしたので、フラン
ジの成形時の寸法や形状に多少のバラツキがあつ
ても巻締不良を起すことなく良好に巻締ができ
る。そして、フランジ曲率半径を従来採用されて
いる2.03mm〜2.29mmの範囲よりも短い1.6mm以下に
してあるために、缶胴フランジとエンドフランジ
部との接触面が増大して安定した巻締ができる。
さらに、第１シーミングロール及び第２シーミン
グロールは、その下顎の接触部の曲率半径が0.8
mm以上で且つ接触部が同一高さ位置になるように
形成されているので、ネツイン加工の成形跡が２
本になることがない。そして、第１巻締から第２
巻締に移行時の成形もスムーズにでき良好にネツ
キング加工ができる。

実施例 以下、本発明の実施例を説明する。

本実施例では、フランジ幅FlLが1.5mm、湾曲部
の半径Ｒが1.5mmにフランジ加工されたブリキ缶
胴に、該缶胴内径よりも小径のチヤツクウオール
外径を有し、カールオープニング径CODと缶胴
フランジ外径FlDとの差が1.0mmになるように成
形したブリキ製蓋を、接触部の曲率半径が1.0mm
に下顎の付いた第１シーミングロールで略缶胴外
径に対して約４％近くまでネツキング加工を行な
うと共に第１次巻締を行ない、下顎の接触部の曲
率半径を1.0mmに大きくして第１シーミングロー
ルと接触部の位置を同じにした第２シーミングロ
ールでネツキング加工の成形仕上げ加工をして約
４％のネツキング加工を行なうと共に第２次巻締
を行なつた。その際の、シーミングチヤツク高さ
SCHは、巻締前の缶高さを仮の巻締後の缶高さ
とし、それを基準に設定した。

このようにして得られたネツクイン缶のERV
を測定したがほとんど０であり、塗膜剥離や
ERV不良はなく、ネツク部へのしわの発生もな
かつた。また、蓋パネル部でのメタルヘヤー蓋の
巻締め切れの発生もなく、巻締形状も良好で、良
好なネツクイン缶を得ることができた。

比較例として、上記の条件で缶胴の外径に対す
る縮径率が５％以上である縮径量3.6mmで巻締と
同時にネツキングを行なつた結果、第１シーミン
グロールでの成形でしわが目立つてきて、第２シ
ーミングロールでの成形終了時には塗膜剥離が発
生した。

効 果 以上のように、本発明によれば、巻締と同時に
ネツキングを行なつても、ネツク部にしわが発生
することなく、塗膜にもダメージを与えないで良
好なネツキング加工ができると共に完全な巻締が
でき、従来提案されていた巻締と同時にネツキン
グ加工を行なう方法の問題点を解消することがで
き、ネツクイン缶製造技術の飛躍的向上を図るこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第３図は本発明に係るネツクイン缶
の要部を示し、第１図は製造後のネツクイン缶の
要部断面図、第２図は巻締前の要部断面図、第３
図は缶胴フランジ部の断面図、第４図ａ，ｂはシ
ーミングロールの断面概略図、第５図ａ〜ｃはネ
ツキング加工の流れ図である。 １：缶蓋、２：缶胴、３：フランジ、５：第１
シーミングロール、６：第２シーミングロール、
７，８：接触部、１０，１１：下顎部。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 缶胴に、該缶胴の内径よりも小さいチヤツク
   ウオール外径を有する缶蓋を被嵌させて第１シー
   ミングロール及び第２シーミングロールにより二
   重巻締を行なうと同時に、前記第１シーミングロ
   ール及び第２シーミングロールの下顎部でネツキ
   ング加工を行なうネツクイン缶の製造方法におい
   て、前記缶蓋のカールオープニング径と前記缶胴
   のフランジ外径との差が0.2mm乃至3.2mmの範囲内
   であり、且つ前記缶胴のフランジの曲率半径が
   1.6mm以下であり、そして前記第１シーミングロ
   ール及第２シーミングロールの下顎の接触部が同
   一高さ位置に曲率半径0.8mm以上に形成されてお
   り、前記ネツキング加工部の縮径率を缶胴の外径
   に対して５％以内でかつ縮径量が3.5mm未満とな
   るように巻締と同時にネツキング加工を行なうこ
   とを特徴とするネツクイン缶の製造方法。