JP4229650B2 - ボトル型缶 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、しごき加工により胴部が薄肉化された有底円筒缶の中間成形品から、その缶底側が小径の口頸部と傾斜した肩部に成形され、その胴部の開口端付近がネック部に成形され、ネック部の開口端縁に成形されたフランジ部に別体の底蓋が巻締め固着されるボトル型缶に関し、特に、そのようなボトル型缶における胴部の壁厚構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、絞りしごき加工等により胴部が薄肉化されたシームレス缶(側面無継目缶)による飲料用の缶容器として、リシール(再封鎖)が可能なようにキャップが装着されるネジ付きで小径の口頸部を有し、口頸部と胴部の間が滑らかなドーム状の肩部に成形されて、胴部の下端側(即ち、胴部の下端開口付近をネック部に成形し、ネック部の下端開口縁をフランジ部に成形した、そのフランジ部)に別体の底蓋が巻締め固着されたボトル型缶が、本出願人により既に商品化されて市場を賑わすようになっている。
【0003】
そのようなボトル型缶の製造については、例えば、予め金属板(アルミニウム合金板)の両面に保護被膜となる熱可塑性樹脂層をラミネートした樹脂被覆金属板を材料として、樹脂被覆金属板のブランクからカップ状を経て側壁部(胴部)が薄肉化された有底円筒缶の中間成形品に一体成形してから、その缶底側を小径の口頸部と傾斜した肩部に一体成形し、更に、口頸部にカール部やネジ部を成形すると共に、その胴部(中間成形品の側壁部)の開口端付近にネックイン加工とフランジ加工を施してネック部とフランジ部を成形した後、別体の底蓋をフランジ部に巻締め固着することで、キャップが装着される前のボトル型缶を形成している(特開2001−158436号公報,特開2001−162344号公報等参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のように製造されるボトル型缶では、ネック・フランジ加工(ネックイン加工とフランジ加工)を施したり、底蓋を巻締め固着する際に、缶体に対して垂直方向(軸方向)で大きな荷重が作用することになる。すなわち、口頸部や肩部が成形された後で、胴部(中間成形品の側壁部)の開口端付近にネック・フランジ加工を施したり、フランジ部と底蓋を巻締め固着したりするためには、口頸部の側を下にして保持部材により肩部を保持した状態で行わなければならないが、その際に、具体的には、ネック・フランジ加工を施す際には約1200Nの成形荷重が缶体の軸方向に作用し、底蓋を巻締める際には約800Nの巻締め荷重が缶体の軸方向に作用することとなる。
【0005】
そのため、そのような口頸部の側を下にした加工の際に、図4に示すように、傾斜面となっている肩部を保持部材60により保持した状態では、荷重が作用する方向に対して缶体の軸線Xを垂直に保持することが難しく、缶体の芯ずれを起こし易くなって、その結果、荷重方向に対して缶体が垂直方向からずれていると、偏荷重が作用して、胴部と肩部の間の変曲部で挫屈したり、缶体が傾いて保持部材が胴部に接触した部分でデント(凹み)が発生したりする虞がある。
【0006】
また、多数のボトル型缶を連続的に搬送するような際に、缶体同士が接触することによって、胴部の上端付近(肩部に近接する部分)でデントが発生する虞があって、そのように缶体の胴部にデントが発生していると、内容物を充填してからキャップを装着する際に、口頸部の側を上にした状態で上方から約1100Nの軸方向荷重が作用することから、デントが発生している部分で挫屈が起きる虞がある。なお、デントの発生については、それが挫屈にまで至らなくても、缶の美観を損ねることで商品価値を落とす要因となっている。
【0007】
缶体同士の接触により胴部の上端付近でデントが発生する理由について説明すると、絞りしごき加工により胴部を引き伸ばして薄肉化したDI缶では、一般的に、引き伸ばされた胴部の中央部が内方に収縮して外径が小さくなる(円筒状に極めて近い鼓状になる)傾向があることが判っており、ボトル型缶の場合にも同様の現象が見られることから、多数のボトル型缶を連続的に搬送するような際には、円筒状の胴部の上下両端付近(肩部やネック部の近傍)で缶体同士が接触することとなる。
【0008】
その結果、口頸部や肩部が成形された後で、底蓋が巻締められる前の缶体の搬送時には、缶体の下端部は未だ開口された状態にあるため、この付近で缶体同士が接触しても、缶体が撓んで弾性変形するためにデントは発生し難いが、胴部上端の肩部近傍では、肩部が成形を受けて剛性を有しているため、缶体同士が接触するとデントが発生する虞がある。なお、底蓋を巻締めた後の缶体の搬送時では、缶体の下端部付近で撓み変形ができなくなるため、胴部下端のネック部近傍でも、缶体同士の接触によってデントが発生する虞がある。
【0009】
また、底蓋が巻締められる前の缶体の搬送時では、底蓋を巻締めた後の搬送時と比較して、缶体の重心が高い位置にあって缶体が傾き易いため、一方の缶体の肩部と他方の缶体の胴部上端の肩部近傍とが接触し易く、それが胴部の上端付近でデントが発生し易い要因にもなっており、特に、肩部が半球面状のドーム形状に成形されている場合には、接触部が略点状となって接触面積が小さいため、部分的に缶体が受ける応力が大きくなってデントが発生し易くなる。
【0010】
なお、搬送時の缶体の傾きについて、従来の2ピース缶では、缶体を直立状態で搬送する場合に、缶体が傾いて転倒することを防止する目的で、缶体の上端開口部の上方に平板状のガイドを設けることがあって、そのように開口部の直上に所定の隙間を空けて平板状のガイドを設けた場合、開口部の直径が大きいため、比較的僅かな傾きで、傾いた缶体の開口部がガイドに接触して、傾いた缶体は直立状態に戻るため、缶体の転倒が防止される。
【0011】
これに対して、ボトル型缶の場合には、上端開口部(口頸部上端)の直径が小さく、傾きによる高さの変化が小さいため、缶体の上方に平板状のガイドを設けて傾いた缶体をガイドに接触させようとすると、ガイドと口頸部上端との隙間を非常に小さくすることが必要となることから、ガイドを設置する際の高さの管理が難しく、しかも、ボトル型缶では缶体の重心が高い位置にあるため、缶体が傾いた状態で口頸部がガイドに接触すると、逆に缶体の転倒を誘発することになる。そのため、従来から2ピース缶で使用されているような転倒防止用のガイドは、設置が難しく且つ効果も薄いことから使用されないことが多く、従って、ボトル型缶の場合には、搬送中に傾いた缶体がそのまま周囲の缶体に接触することが多くなり、このこともボトル型缶においてデントの発生を増加させる一因となっている。
【0012】
上記のようなデントや挫屈の発生に対して、材料として使用する金属板を厚くしてボトル型缶の成形を行えば、成形された缶体の胴部の壁厚が一様に増加して強度が向上することから、デントや挫屈の発生を防止できるものの、壁厚の変更によって一缶当たりに必要な金属量が増加するため、製造コストが高くなるという新たな問題が生じることになる。
【0013】
この点に関して、通常、大量に消費される飲料用の容器では、一缶当たりで数グラム、金額にして数十銭の材料コスト削減は、大きな製造費用の合理化となるため、缶体としての性能を維持しながら、できるだけ少ない金属量で缶体を製造することが要求されており、ボトル型缶においても、その製造工程や求められる性能を充分に考慮した上で、缶体の壁厚を適正化し、経済性の高い製品を製造することが求められている。
【0014】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、口頸部と肩部と胴部とネック部(及びフランジ部)が一体成形されるボトル型缶において、肩部やネック部よりも薄肉化される胴部を、少ない金属量で効果的に強化できるようにすることを課題とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、しごき加工により胴部が薄肉化された有底円筒缶の中間成形品から、その缶底側が小径の口頸部と傾斜した肩部に成形され、その胴部の開口端付近がネック部に成形され、ネック部の開口端縁に成形されたフランジ部に別体の底蓋が巻締め固着されるボトル型缶において、肩部やネック部よりも壁厚が薄くなっている円筒状の胴部の肩部に近い上端近傍部分で、肩部の下端から下方に少なくとも7mm以上で20mmまでの範囲の胴部では、〔(範囲開始位置での壁厚−範囲終了位置の壁厚)/範囲の缶体高さ方向の距離〕×100によって求められる壁厚減少率が約0.1%となるように、肩部の下端の壁厚と比べて壁厚を大きく減少させることなく、その範囲を過ぎてから壁厚を急激に薄壁部分にまで減少させており、この壁厚が急激に減少している範囲の胴部では、〔(範囲開始位置での壁厚−範囲終了位置の壁厚)/範囲の缶体高さ方向の距離〕×100によって求められる壁厚減少率が0.2%以上となっていることを特徴とするものである。
【0016】
上記のような構成によれば、胴部の全体を一様に厚肉化するのではなく、肩部に近い胴部の上端近傍部分で、特にデントや挫屈が発生し易い所定の範囲だけを厚肉化して、その他をできる限り薄壁部分としているため、胴部の肩部近傍でのデントや挫屈の発生を防止できると共に、胴部の上端近傍部分で厚肉化のために使用する金属量をできる限り削減することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のボトル型缶の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の一実施形態に係るボトル型缶について、図1は、外観形状を示し、図2は、製造工程の全体を概略的に示し、図3は、トップドーム成形工程で口頸部と肩部を成形する状態を示し、図4は、ネック・フランジ成形工程や缶蓋巻締工程での缶体の保持状態を示し、図5は、実施例での壁厚分布を示し、図6は、カップから中間成形品(有底円筒缶)を成形する際に使用するパンチの形状を示し、図7は、実施例の中間成形品(有底円筒缶)での壁厚分布を示すものである。また、図8は、ボトル型缶の従来例での壁厚分布を示し、図9は、従来例の中間成形品(有底円筒缶)での壁厚分布を示すものである。
【0018】
本実施形態のボトル型缶1では、図1に示すように、大径円筒状の胴部4から上方に、縦断面が円弧状のドーム形状(外方に突出する半球面状)の肩部3を介して、小径円筒状の口頸部2が一体的に成形されており、胴部4の円筒下端部に続くネック部5の下端(ネック部5の下端開口縁に形成されたフランジ部)には、金属製で別部材の底蓋6が巻き締め固着されていて、ネジが形成された口頸部2には、図示していないが、缶内に飲料が充填された後で、周知のキャップ装着装置(キャッパー)によって、金属製で別部品のキャップがリシール(再封鎖)可能なように装着される。
【0019】
このボトル型缶1の口頸部2と肩部3と胴部4とネック部5(及びフランジ部)は、金属板の両面に保護被膜となる熱可塑性樹脂層が形成された樹脂被覆金属板から一体成形されており、そのような樹脂被覆金属板としては、厚さが0.22〜0.35mmのアルミニウム合金板の両面に、厚さが8〜30μmのポリエステル樹脂,ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂フィルムが予めラミネートされた樹脂被覆アルミニウム合金板を使用することができる。
【0020】
なお、樹脂被覆金属板の基材となるアルミニウム合金板としては、通常の缶の製造に用いるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、日本工業規格(JIS)に規定する3004系アルミ合金,3104系アルミ合金等を使用することができる。また、金属板の両面で保護被膜となる熱可塑性樹脂についても、通常の缶体の製造に用いるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、耐熱性,耐内容物性が良好で、缶の用途に適した熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムを使用することができる。
【0021】
樹脂被覆金属板の基材となるアルミニウム合金板の板厚については、0.35mm以上にしても、必要以上に無駄な材料コストが増えるだけであり、一方、0.22mm以下にすると、缶体を成形する段階での肩部のシワや胴部のデント等による不良缶の発生が増加して逆にコストの増加に繋がってしまうことから、0.22〜0.35mmの範囲内とするのが適当である。また、金属板の両面で保護被膜となる熱可塑性樹脂層の厚さについては、材料コストの点からは薄いほど好ましいが、その厚さが8μmを下回ると被覆性能が低下して、特に、缶内面側では、内容物を充填した際に、内容物が樹脂層に浸透して金属板を腐食させる虞があることから、コスト面を考慮すると、8〜30μmの範囲内とするのが適当である。
【0022】
そのような観点から、ボトル型缶の製造に好適に使用される樹脂被覆金属板について、その具体的な一例を挙げると、厚さ0.32mmのアルミニウム合金板に対して、その缶外面側に厚さ12μmの熱可塑性樹脂フィルムをラミネートし、その缶内面側に厚さ25μmの熱可塑性樹脂フィルムをラミネートした樹脂被覆アルミニウム合金板がある。
【0023】
そのような樹脂被覆金属板からボトル型缶を製造するための製造工程の一例について説明すると、先ず、缶の成形に入る前に、樹脂被覆金属板の両面に熱可塑性樹脂層の上から、例えば、ノルマルブチルステアレート,流動パラフィン,ペトロラタム,ポリエチレンワックス等の適宜の潤滑剤を予め塗布しておいてから、図2に示すように、カップ成形工程で、樹脂被覆金属板を円板状に打ち抜いたブランクを絞り加工してカップ形状に成形し、缶胴成形工程で、カップに絞りしごき加工を施す(少なくとも一回以上の再絞り加工やストレッチ加工の後でしごき加工を施す、或いは、2回の再絞り加工のうちの1回でストレッチ加工を施し、その後、しごき加工を施す)ことで、カップよりも胴部が小径で薄肉化された有底円筒状の缶を中間成形品として製造する。
【0024】
次いで、中間成形品である有底円筒缶に対して、トップドーム成形工程で、その缶底側を複数回の絞り加工によって肩部と未開口の口頸部に成形する。このトップドーム成形工程について詳しく説明すると、本実施形態では、図3に示すように、中間成形品の有底円筒缶に対して、その缶底側を上にした状態で、先ず、缶底コーナー部を肩部曲面(肩部の下部となる曲面)31に予備成形してから、この肩部曲面をダイ51とプッシャー52によるシワ押さえ工具によってシワ押さえした状態で、平坦な缶底21をパンチ53により有底円筒缶の側壁部(胴部4)よりも小径の有底円筒状に絞り成形する。
【0025】
なお、缶底コーナー部を肩部曲面(肩部の下部)に予備成形する方法としては、缶胴成形工程で有底円筒缶の中間成形品に成形した後で、その缶底コーナー部をトップドーム成形工程の前に再成形するようにしても良く、また、缶胴成形工程で有底円筒缶を成形する際に、缶胴成形用パンチの先端の周辺形状を縦断面円弧状とすることで、缶胴成形と同時に成形するようにしても良い。更には、肩部の成形性に問題がなければ、そのような予備成形を行うことなく、トップドーム成形工程で、ダイとプッシャーによるシワ押さえ工具によって肩部曲面を成形すると共に、そのままの状態でパンチにより缶底を小径の有底円筒状に絞り成形するようにしても良い。
【0026】
次いで、新たに絞り成形された有底円筒部22について、予備成形された肩部曲面(肩部の下部)31に続く仮想曲面の断面円弧に近似した断面直線形状のテーパー面を持つシワ押さえ工具(ダイ54とプッシャー55)により、有底円筒部の底コーナー部をシワ押さえした状態で、パンチ56により更に小径の有底円筒状に絞り成形し、そのような絞り加工をもう1度繰り返すことで、有底円筒部23の径を口頸部2の径と略同じになるまで縮径してから、絞り加工の繰り返しにより当初の肩部曲面(肩部の下部)31に続いて形成された肩部の複数のテーパー面32,33を、肩部曲面31から延びる仮想曲面の形状を持つ一対の成形工具(ダイ57とプッシャー58)により押し延ばしすることで、連続した滑らかな曲面に再成形(リフォーム)する。
【0027】
更に、図2に示すように、肩部を再成形(リフォーム)した後のトップドーム成形工程の最終段階で、有底円筒状に成形された口頸部に対して2回の口絞り成形を施した後、潤滑剤除去工程で、口頸部が未開口で胴部下端が開口された缶の少なくとも外面から潤滑剤を除去し、トリミング工程で、口頸部とは反対側の胴部の開口端側をトリミングして缶を所定の長さにしてから、印刷・塗装工程で、円筒状の胴部に対して所望のデザイン(文字や装飾模様等)を印刷した上からトップコートを塗布し、乾燥工程で、印刷インキ層やトップコート層を充分に乾燥させると共に、保護被膜の熱可塑性樹脂層を非晶質化しておく。
【0028】
なお、ボトル型缶の円筒状の胴部に対して所望のデザイン(文字や装飾模様等)を付与するための工程については、上記のような胴部の外面に直接に印刷と塗装を順次に施すような印刷・塗装工程に限らず、予め印刷インキ層やトップコート層が形成された印刷済みの樹脂フィルムを熱接着による貼着で胴部外面にラミネートするような印刷済み樹脂フィルム貼着工程としても良い。
【0029】
次いで、ネジ・カール成形工程において、先ず、未開口の口頸部の先端閉鎖部をトリミングすることで口頸部を開口させてから、その開口端部を外巻きで環状のカール部に成形し、その円筒状周壁にキャップ螺合用のネジを成形し、ネジ形成部分の下方にビード部を形成する。次いで、図4に示すように、口頸部の側を下にして肩部を保持部材60により保持した状態で、ネック・フランジ成形工程において、図示していないが、口頸部とは反対側となる胴部(中間成形品の側壁部)の開口端付近に対してネック・フランジ加工(ネックイン加工とフランジ加工)を施すことで、胴部の円筒下端部に続くようにネック部(図1に示した形状に限らず、多段形状のネック部に形成しても良い)とフランジ部を形成する。
【0030】
そして、底蓋巻締工程において、図示していないが、シーマー(缶蓋巻締機)により、ネック・フランジ成形の場合と同様に、口頸部の側を下にして肩部を保持した状態で、樹脂被覆金属板からなる別部材の底蓋を、胴部の円筒下端部に続くネック部の下端開口縁に成形されたフランジ部に対して、二重巻き締め法により一体的に固着することで、図1に示すようなキャップ(図示せず)が装着される前のボトル型缶(胴部の印刷デザインは省略)が製造される。
【0031】
なお、上記のように製造されたボトル型缶では、通常、缶内に飲料を充填した後で、周知のキャップ装着装置(キャッパー)により、金属製で別部品のキャップを口頸部に装着しているが、このキャップ装着(キャッピング)については、一般的には、キャップを口頸部に被せて上から押さえ付けながらキャップの側壁を口頸部のネジ部にロールで半径方向に押し付けて変形させることでキャップにネジ部を成形しながら装着している。(そのようなキャップの装着時には、口頸部の上方から最大で約1100N程度の垂直荷重が作用することになる。)
【0032】
ところで、上記のように製造されるボトル型缶については、製造時の成形性という観点から、缶体の各部分の壁厚を元板厚(成形前の樹脂被覆金属板の板厚)からどの程度まで薄くできるかということが検討されており、その結果、以下のようなことが既に判っている。
【0033】
口頸部については、中間成形品である有底円筒缶の缶底部(元板厚と略同じ厚さ)から複数回の絞り加工により縮径されているため、口頸部の壁厚は、縮径により壁厚が増加する効果と、パンチで軸方向に引き伸ばされて壁厚が減少する効果との両方によって決まることになるが、縮径による壁厚増加の効果の方が比較的大きいため、中間成形品である有底円筒缶の缶底部の壁厚(元板厚と略同じ)と略等しくなるか、又は、それよりも少し厚くなる。
【0034】
胴部については、カップ形状から有底円筒缶の中間成形品に成形される際に、しごき加工によって薄肉化されるが、両面に熱可塑性樹脂層がラミネートされた樹脂被覆金属板をしごき加工する場合、しごき加工による加工率を高くして一定の壁厚以下に薄肉化すると、表面にラミネートされた熱可塑性樹脂層が損傷してしまう虞がある。使用する熱可塑性樹脂の種類にもよるが、一般的には、胴部の壁厚を元板厚に対して32%以下に薄くすると、熱可塑性樹脂層の損傷が激しくなって製品として不適当なものとなる。
【0035】
肩部については、中間成形品である有底円筒缶において、しごき加工を受けて薄肉化された側壁部(有底円筒缶の胴部)のうちの缶底部に近い部分を肩部曲面(その後の工程で肩部の下部となる部分)に予備成形しているが、この部分の壁厚は、缶底部の壁厚(元板厚と略同じ厚さ)の60%以上の厚さを有することが必要であって、元板厚の60%以上の厚みがないとシワが発生するということが本発明者らの研究により判っている。
【0036】
すなわち、肩部は、ダイとプッシャーによるシワ押さえ工具によりシワ押さえした状態で、再絞り用ポンチによる絞り加工と再絞り加工を繰り返すことにより成形されることから、そのような絞り加工を受ける前の中間成形品の有底円筒缶において、缶底部に近い部分の側壁部(肩部曲面に成形される部分)の壁厚と缶底部の板厚との差が大きい場合、ダイとプッシャーは板厚の大きい缶底部のみを押さえつけることとなり、シワ押さえが有効に働かず、板厚の薄い側壁部でシワが発生し易くなる。
【0037】
ネック部(及びフランジ部)については、しごき加工を受けて薄肉化された中間成形品の側壁部(有底円筒缶の胴部)の開口端付近にネックイン加工(及びフランジ加工)を施すことにより成形されるものであり、中間成形品の側壁部(有底円筒缶の胴部)において、その開口端付近のネック成形部(ネックイン加工とフランジ加工が施される部分)は、その後に施されるネックイン加工やフランジ加工の際にシワや割れが発生しない壁厚が必要である。
【0038】
そのため、中間成形品の側壁部(有底円筒缶の胴部)のうちのネック成形部については、その他の部分(ボトル型缶で円筒状の胴部として残る部分)と比べて、薄肉化の程度を小さくする(壁厚を厚くする)ことが必要である。このネック成形部の壁厚は、0.16mm以上の厚さがあれば、ネック・フランジ加工の際にシワや割れが発生しないような良好な成形性が得られる。
【0039】
上記のように製造時の成形性の観点から各部分の壁厚が検討された上で製造されるボトル型缶について、従来のボトル型缶では、ネック・フランジ加工が施される前の状態で、各部分の壁厚分布は、図8に示すように、元板厚と同じ(又は僅かに厚い)壁厚の口頸部から下方に続く肩部では、その壁厚が肩部の上端(口頸部との接続部)から下端(胴部との接続部)に向けて徐々に薄くなり、肩部の下端に続く胴部では、肩部の下端から急激に壁厚が減少して薄壁部分になってからネック成形部まで壁厚が殆ど変わることなく、ネック成形部では、壁厚が漸増する部分を経てから肩部の下端よりも僅かに厚い壁厚となっている。
【0040】
なお、図8に示した従来例は、具体的には、厚さが0.32mmのアルミニウム合金板の内外両面に、外面で厚さが12μmとなり内面で厚さが25μmとなるように、それぞれ熱可塑性樹脂層をラミネートした樹脂被覆アルミニウム合金板(元板厚は0.357mm)から缶体(底蓋の部分を除く)が一体成形された、内容量が500mlのボトル型缶によるものである。
【0041】
そのような壁厚分布を有する従来のボトル型缶では、既に述べたように、ネック・フランジ加工や底蓋巻締めの際に、胴部の肩部に近い部分でデントや挫屈が発生したり、或いは、底蓋巻締め前の缶体の搬送中に、缶体同士の接触によって胴部の肩部に近い部分でデントが発生したりする虞があり、更に、底蓋巻締め後の缶体の搬送中には、胴部のネック部に近い部分でもデントが発生するという問題がある。
【0042】
これに対して、本実施形態のボトル型缶では、上記の従来例と同じ材料で同じ大きさに製造されるボトル型缶による実施例において、ネック・フランジ加工が施される前の状態で、各部分の壁厚分布は、図5に示すようなものとなっている。すなわち、胴部の肩部に近い上端近傍部分において、図8に示した従来例のボトル型缶では、肩部の下端から直ちに薄壁部分にまで急激に壁厚が減少しているのに対して、図5に示した実施例のボトル型缶では、肩部の下端から下方に所定の範囲までは壁厚が大きく減少することなく、その範囲を過ぎてから壁厚が急激に薄壁部分にまで減少している。
【0043】
また、胴部の中央付近から下方の部分において、図8に示した従来例のボトル型缶では、ネック成形部(ネック・フランジ加工が施される部分)まで壁厚が殆ど変わることなく薄壁部分が続いていて、ネック成形部に入ってから壁厚が急激に増加しているのに対して、図5に示した実施例のボトル型缶では、薄壁部分からネック成形部に向けて壁厚が徐々に厚くなっている。
【0044】
なお、上記のようにボトル型缶の各部分を所定の壁厚分布とするための手段については、例えば、中間成形品である有底円筒缶をカップから成形するための絞りしごき加工において、各部分の壁厚分布に対応した形状を備えたパンチを使用することで、その後の成形を経て製造されるボトル型缶の各部分を所定の壁厚分布とすることができる。
【0045】
すなわち、本実施形態のボトル型缶を製造する場合には、カップから中間成形品の有底円筒缶を成形する際に使用するパンチを、図6に示すような形状としており(図示した形状は、実際の寸法関係に基づくものではなく、極端な形で模式的に示すものである)、そのような形状のパンチを使用して、図7に示すような壁厚分布を有する中間成形品(有底円筒缶)を製造すれば、その後の成形加工(トップドーム成形加工)を施すことで、図5に示すような壁厚分布を有する実施例のボトル型缶を製造することができる。なお、図8に示すような壁厚分布を有する従来例のボトル型缶では、その中間成形品(有底円筒缶)の壁厚分布は、図9に示すようなものとなっている。
【0046】
上記のような壁厚分布を有する本実施形態のボトル型缶によれば、肩部に近い胴部の上端近傍部分で、特にデントや挫屈が発生し易い所定の範囲だけを厚肉化して、それ以外の部分を直ちに薄壁部分としていることから、胴部の全体を一様に厚肉化する場合と比べて、胴部で使用する金属量を削減することができるのは勿論のこと、例えば、肩部の下端から胴部の中央に向けて壁厚を徐々に薄くするような場合と比べても、胴部の上端近傍部分で厚肉化のために使用する金属量をできる限り削減することができて、しかも、胴部の肩部近傍でデントや挫屈が発生するのを防止するのに充分な強度を得ることができる。
【0047】
また、本実施形態のボトル型缶によれば、中間成形品の側壁部のうちの底部に近い部分における板厚を元板厚に対して60%以上に維持することで、肩部の成形性を良好に保っていると共に、外方に突出する半球面状のドーム形状に形成された肩部の壁厚を、口頸部との接続部分で最大となり、胴部との接続部分で最小となり、その中間の領域では最大壁厚部から最小壁厚部へ向けて徐々に壁厚が薄くなるようにしていることから、少ない材料で経済的に効率良く肩部の強度を維持することができる。
【0048】
また、本実施形態のボトル型缶によれば、胴部の中央付近から下方で、胴部の薄壁部分からネック部に向けて徐々に壁厚を厚くしていることで、胴部のネック部近傍が厚肉化されていることから、底蓋巻締め後の缶体の搬送中に缶体同士が接触しても、缶体同士の接触による胴部のネック部近傍でのデントの発生を経済的且つ効果的に防止することができる。
【0049】
この点について、肩部に近い胴部の上端近傍部分では、剛性の高い肩部との接触によるデントの発生を防止するために比較的厚い壁厚が必要であり、しかも、デントの発生箇所が比較的狭い範囲であるため、胴部上端側(肩部から下方)の厚肉部をなだらかなテーパー状に形成すると、不必要な部分まで壁厚を増加させることになり、また、肩部近傍でのデントは、底蓋が巻締められる前の不安定な状態で搬送された時に発生することが多く、できるだけ缶体上部の重量を増加させないようにする必要があることから、胴部の上端近傍部分(肩部近傍)の厚肉部については、なだらかなテーパー状に形成するのは適切でなく、既に述べたように、デントや挫屈が発生し易い所定の範囲だけを厚肉化して、それ以外の部分を直ちに薄壁部分とするのが効果的である。
【0050】
これに対して、底蓋巻締め後には、缶体下部の開口端が底蓋の巻締めにより固定されるため、缶体下部が剛性を有するようになり、そのような状態では、缶体の安定性が増すため、搬送時に胴部の上端近傍部分(肩部近傍)におけるデントの発生は少なくなり、逆に、缶体下部が剛性を有するようになることで、缶体同士の接触や搬送経路のガイド等との接触により、胴部の中央付近から下方の比較的広い領域でデントが発生し易くなる。
【0051】
そのような胴部の中央付近から下方の領域において、胴部の下端付近(ネック部近傍)では、巻締められた底蓋との接触によりデントが発生するため、その防止のために比較的壁厚を厚くする必要があるが、それから上方に胴部中央付近までは、底蓋との接触は殆どなく、缶体の胴部同士が互いに接触したり、搬送経路のガイドと接触したりすることでデントが発生するため、その発生を防止するために必要な壁厚は比較的小さくて良いことから、本実施形態では、上記のように胴部の中央付近から下方で、胴部の薄壁部分からネック部に向けて徐々に壁厚を厚くしており、そのようにすることが、缶重量の軽減や缶体成形の容易さを考慮すると、デントの発生を防止する上で最も経済的且つ効果的であると言える。
【0052】
ところで、上記のような本実施形態のボトル型缶について、胴部の肩部近傍でデントが発生するのを防止できるという点に関して、具体的な実施例と従来例とにより効果の違いを確認するための実験を行った。
【0053】
すなわち、ボトル型缶の缶体材料となる樹脂被覆アルミニウム合金板については、製缶上の問題や耐腐食性や材料コスト等の観点から、アルミニウム合金板の厚さは0.22〜0.35mmの範囲が適当であり、また、保護被膜として被覆する熱可塑性樹脂層の厚さは8〜30μmの範囲が適当であることは既に述べた通りであるが、そのような樹脂被覆アルミニウム合金板の範囲内で、アルミニウム合金板の厚さが異なる材料から製造された各実施例(1〜3)と各従来例(1〜3)のボトル型缶(缶容量500ml)のそれぞれ(各例毎に500缶ずつ)について実験を行った。
【0054】
各実施例(1〜3)については、図5に示すようなパターン(各実施例で壁厚の具体的な数値は異なる)の壁厚分布を有するものであって、各実施例(1〜3)の何れにおいても、肩部の下端(肩部と胴部の境界位置)での壁厚が、成形前の樹脂被覆金属板の板厚の53%の厚さとなり、肩部の下端から下方に10mmまでの範囲の壁厚の平均値が、成形前の樹脂被覆金属板の板厚の50%となっていて、その範囲を過ぎてから壁厚が急激に減少して、胴部の薄壁部分での壁厚は、成形前の樹脂被覆金属板の板厚の38%の厚さとなっている。
【0055】
なお、肩部の下端から下方に10mmまでの範囲(壁厚の平均値が成形前の樹脂被覆金属板の板厚の50%となっている厚肉部)では、壁厚が僅かずつ徐々に薄くなっているが、この範囲の開始位置での壁厚が、樹脂被覆金属板の板厚の53%であり、この範囲の終了位置での壁厚が、樹脂被覆金属板の板厚の49%であって、この範囲の缶体高さ方向の距離が10mmであることから、壁厚減少率(%)を、〔(範囲開始位置での壁厚−範囲終了位置の壁厚)/範囲の缶体高さ方向の距離〕×100の式によって求めると、壁厚減少率は約0.1%となっている。
【0056】
これに対して、肩部下端から下方に10mmの位置から薄壁部分までの急激に壁厚が減少する範囲では、この範囲の開始位置での壁厚が、樹脂被覆金属板の板厚の49%であり、この範囲の終了位置での壁厚が、樹脂被覆金属板の板厚の38%であって、この範囲の缶体高さ方向の距離が8mmであることから、上記のような式によって求められる壁厚減少率(%)は約0.5%となっており、肩部の下端から下方に10mmまでの範囲(厚肉部)での壁厚減少率(約0.1%)と比較して約5倍の大きさとなっていて、壁厚の減少が急激になっている。
【0057】
各従来例(1〜3)については、図8に示すようなパターン(各従来例で壁厚の具体的な数値は異なる)の壁厚分布を有するものであって、各従来例(1〜3)の何れにおいても、肩部の下端(肩部と胴部の境界位置)での壁厚が、成形前の樹脂被覆金属板の板厚の49%の厚さとなり、肩部の下端から直接的に壁厚が急激に減少して、胴部の薄壁部分での壁厚は、成形前の樹脂被覆金属板の板厚の38%の厚さとなっている。そのため、肩部の下端から下方に7mmまでの範囲の壁厚の平均値は、成形前の樹脂被覆金属板の板厚の42%となっている。
【0058】
上記のように壁厚分布のパターンが異なる実施例と従来例の、成形前の樹脂被覆金属板のアルミニウム合金板の厚さが異なる1〜3の各例のそれぞれ(各例毎に500缶)について、実際に製造ライン上で搬送させて、胴部の肩部近傍でデントが発生した缶(不良缶)の有無を調べた結果、以下の表1に示すように、各従来例(1〜3)では、胴部の肩部近傍でデントが発生した缶(不良缶)が見られたのに対して、各実施例(1〜3)では、胴部の肩部近傍でデントが発生した缶(不良缶)は全く見られなかった。なお、表1において、(A)は、アルミニウム合金板の厚さを示し、(B)は、熱可塑性樹脂層の厚さを示し、(A+B)は、樹脂被覆アルミニウム合金板の板厚を示すものである。
【0059】
【表1】
【0060】
上記の表1に示した各実施例(1〜3)については、成形前の樹脂被覆金属板のアルミニウム合金板の厚さ(0.25〜0.35mm)がそれぞれ異なっているものの、それぞれの樹脂被覆金属板の板厚(元板厚)に対して、肩部の下端(肩部と胴部の境界位置)から下方に10mmまでの範囲の壁厚の平均値を元板厚の50%としていることによって、何れの実施例(1〜3)においても、従来例(1〜3)と比べて僅かに缶質量を大きくするだけで、胴部の肩部近傍が充分に強化されて当該部分でデントが発生しないものとなっている。
【0061】
さらに、上記のようなボトル型アルミ缶だけでなく、ボトル型スチール缶についても、以下のような実施例と従来例のそれぞれ(各例毎に500缶ずつ)について、上記のアルミ缶の場合と同様の実験を行った(なお、何れも缶容量500mlで、樹脂被膜の厚さや、実施例における肩部の下端から下方に続く厚肉部の範囲については上記のアルミ缶の場合と同様である)。
【0062】
〔実施例〕
成形前の樹脂被覆金属板の元板厚が0.266mm、肩部下端(肩部と胴部の境界位置)での壁厚が141μm(元板厚の53%)、肩部の下端から下方に続く厚肉部での壁厚の平均値が133μm(元板厚の50%)、胴部の薄壁部分での壁厚が103μm(元板厚の39%)、缶質量が43.9g。
〔比較例〕
成形前の樹脂被覆金属板の元板厚が0.266mm、肩部下端(肩部と胴部の境界位置)での壁厚が112μm(元板厚の42%)、胴部の薄壁部分での壁厚が103μm(元板厚の39%)、缶質量が42.6g。
上記のような実施例と従来例による実験の結果、実施例では不良缶の発生がなかったのに対して、従来例では、3缶の不良缶が発生した。
【0063】
なお、肩部の下端の壁厚を元板厚に対してどの程度の割合にするか、胴部の上端近傍部分で、肩部の下端から下方にどれだけの範囲を厚肉部にするか、また、その範囲(厚肉部)での壁厚を元板厚に対してどの程度の割合にするか等については、上記の具体的な数値が一応の目安になるものの、それに限定されるものではなく、若干の幅があるものであって、その幅についても、成形前の樹脂被覆金属板の板厚(金属板の厚さ)や金属材質の違いによって、若干の相違があるものと考えられる。
【0064】
この点に関して、例えば、厚さが0.32mmのアルミニウム合金板の内外両面に、外面で厚さが12μmとなり内面で厚さが25μmとなるように、それぞれ熱可塑性樹脂層をラミネートした樹脂被覆アルミニウム合金板(従来から広く使用されている元板厚が0.357mmの樹脂被覆アルミニウム合金板)から製造されるボトル型缶について、更に詳しく検討した結果、そのようなボトル型缶に限っては以下のようなことが判った。
【0065】
すなわち、肩部の下端から下方に20mmの範囲で、肩部下端からの壁厚の平均値が元板厚の45%以上(コスト上からは45〜55%)であれば問題はないが、肩部下端からの壁厚の平均値が元板厚の45%以下(具体的な実験例では43%)であると、胴部の肩部近傍でデントが発生する虞があることが判った。
【0066】
また、肩部の下端から下方に続く厚肉部(肩部下端から下方に所定の範囲の胴部)の壁厚平均値が元板厚の50%となるようにした場合でも、肩部の下端から下方に7mm以上(コスト上からは7〜20mm)の範囲まで厚肉部となっていれば問題はないが、厚肉部の範囲が肩部の下端から6mm以下(具体的な実験例では6mm)であると、胴部の肩部近傍でデントが発生する虞があることが判った。
【0067】
また、肩部の下端から下方に7mm以上の範囲まで厚肉部となるようにした場合でも、肩部下端から下方に続く厚肉部(肩部下端から下方に所定の範囲の胴部)の壁厚の平均値が元板厚の45%以上となっていれば問題はないが、この厚肉部の壁厚の平均値が元板厚の45%以下(具体的な実験例では43%)であると、胴部の肩部近傍でデントが発生する虞があることが判った。
【0068】
そのようなことから、厚さが0.32mmのアルミニウム合金板に対して、その外面で厚さが12μmとなり、その内面で厚さが25μmとなるように熱可塑性樹脂層をラミネートした樹脂被覆アルミニウム合金板(元板厚が0.357mm)から製造されるボトル型缶、或いは、これに近い板厚の樹脂被覆アルミニウム合金板から製造されるボトル型缶については、肩部の下端から下方に7〜20mmまでの範囲で、その壁厚の平均値を元板厚の45%以上として、その範囲を過ぎてから壁厚を急激に薄壁部分にまで減少させることで、材料コストをできるだけ削減した上で、胴部の肩部近傍でデントが発生するのを確実に防止することができるものと考えられる。
【0069】
なお、胴部における肩部近傍の厚肉部(肩部下端から下方に続く厚肉部)と薄肉部分との間の、壁厚が急激に減少する範囲においては、壁厚減少率が小さすぎる(壁厚の減少が緩やかである)と、デントの発生し易い部分のみを厚肉化することで缶体に使用する金属量をできる限り減らすという本発明の目的からして、その作用効果が小さくなることから、この範囲における壁厚減少率(%)、即ち、〔(範囲開始位置での壁厚−範囲終了位置の壁厚)/範囲の缶体高さ方向の距離〕×100については、0.2%以上にすることが必要である。
【0070】
以上、本発明のボトル型缶の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、例えば、材料となる金属板材については、上記の実施形態に示したような樹脂被覆アルミニウム合金板に限らず、従来から知られた製缶用の適宜の金属板材による場合でも適用可能であり、肩部の形状や成形方法についても、上記の実施形態に示したような肩部全体を半球面状のドーム形状に成形するような場合に限らず、適宜の成形方法により適宜の形状(例えば、肩部に段部が形成された形状等)に成形して実施することも可能である等、適宜設計変更可能なものであることは言うまでもない。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したような本発明のボトル型缶によれば、缶体の製造時や搬送時に、薄肉化された胴部の肩部近傍でデントや挫屈が発生するのを、胴部に使用する金属量をできるだけ削減した上で、効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ボトル型缶の外観形状を示す部分切欠き側面図。
【図2】図1に示したボトル型缶を製造するための製造工程の一例を概略的に示す説明図。
【図3】図2に示した製造工程のトップドーム成形工程での口頸部と肩部の成形状態を示す側面と断面による説明図。
【図4】図2に示した製造工程のネック・フランジ成形工程や缶蓋巻締工程での缶体の保持状態を示す部分断面側面図。
【図5】本発明のボトル型缶の一実施例について、ネック・フランジ加工が施される前の状態での各部分の壁厚分布を示すグラフ。
【図6】本発明のボトル型缶について、カップから中間成形品(有底円筒缶)を成形する際に使用するパンチの形状を模式的に示す側面図。
【図7】図5に示した壁厚分布を有する実施例のボトル型缶について、その中間成形品(有底円筒缶)での各部分の壁厚分布を示すグラフ。
【図8】ボトル型缶の従来例について、ネック・フランジ加工が施される前の状態での各部分の壁厚分布を示すグラフ。
【図9】図8に示した壁厚分布を有する従来例のボトル型缶について、その中間成形品(有底円筒缶)での各部分の壁厚分布を示すグラフ。
【符号の説明】
1 ボトル型缶
2 口頸部
3 肩部
4 胴部
5 ネック部
Claims (4)
- しごき加工により胴部が薄肉化された有底円筒缶の中間成形品から、その缶底側が小径の口頸部と傾斜した肩部に成形され、その胴部の開口端付近がネック部に成形され、ネック部の開口端縁に成形されたフランジ部に別体の底蓋が巻締め固着されるボトル型缶において、肩部やネック部よりも壁厚が薄くなっている円筒状の胴部の肩部に近い上端近傍部分で、肩部の下端から下方に少なくとも7mm以上で20mmまでの範囲の胴部では、〔(範囲開始位置での壁厚−範囲終了位置の壁厚)/範囲の缶体高さ方向の距離〕×100によって求められる壁厚減少率が約0.1%となるように、肩部の下端の壁厚と比べて壁厚が大きく減少することなく、その範囲を過ぎてから壁厚が急激に薄壁部分にまで減少しており、この壁厚が急激に減少している範囲の胴部では、〔(範囲開始位置での壁厚−範囲終了位置の壁厚)/範囲の缶体高さ方向の距離〕×100によって求められる壁厚減少率が0.2%以上となっていることを特徴とするボトル型缶。
- 肩部が、外方に突出する半球面状のドーム形状に形成されていて、ドーム形状に傾斜した肩部での壁厚が、口頸部と接続する肩部の上端で最大となり、円筒状の胴部と接続する肩部の下端で最小となり、その中間の領域では上端から下端に向けて徐々に薄くなっていることを特徴とする請求項1に記載のボトル型缶。
- 缶体の底蓋を除く部分が、金属板の両面に熱可塑性樹脂層をラミネートした樹脂被覆金属板から一体成形されていて、胴部の中央付近から下方で、胴部の薄壁部分からネック部に向けて徐々に壁厚が厚くなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のボトル型缶。
- 缶体の底蓋を除く部分が、厚さが0.22〜0.35mmのアルミニウム合金板の両面にそれぞれ厚さが8〜30μmの熱可塑性樹脂層をラミネートした樹脂被覆金属板から一体成形されており、胴部の薄壁部分での壁厚が、成形前の樹脂被覆金属板の板厚の32〜44%の厚さとなり、肩部の下端から下方に少なくとも7mm以上で20mmまでの範囲における胴部の壁厚の平均値が、成形前の樹脂被覆金属板の板厚の45〜55%の厚さとなっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のボトル型缶。
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