JP4646163B2 - ボトル型缶の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属薄板から胴部と肩部と口頸部が一体成形されたボトル型缶を製造するための方法に関し、特に、金属薄板から一体成形した有底缶の缶底側を更に肩部と口頸部に成形したタイプで、その胴部外面に印刷デザインが施されているボトル型缶を製造するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種の清涼飲料水やジュースやビール等を内容物とする飲料缶詰では、アルミニウム合金板や表面処理鋼板等の金属薄板から、絞り・しごき加工や絞り・再絞り加工や絞り・再絞り及びストレッチ加工等の適宜の方法により、胴部(側壁部)と底部(端壁部)を一体成形した2ピース缶が、内容物を充填・密封するための容器の本体として一般的に使用されており、そのような2ピース缶では、耐圧力向上のためにドーム状に形成された底部と薄肉化された胴部が一体成形され、胴部の上端部分がネックイン加工により胴部よりも小径のネック部に縮径され、ネック部の上端開口部がフランジ加工によりフランジ部に形成されている。
【0003】
そのような2ピース缶は、缶内に飲料を充填してから、缶の胴部外径より小径のイージーオープンエンド(簡易開封缶蓋)を缶のフランジ部に巻き締めて密封することで、飲料缶詰として出荷されており、この飲料缶詰は、それを購入した消費者が、イージーオープンエンドに固着されているタブを操作することで、缶詰を開封して内容物の飲料を飲用するようになっている。
【0004】
一方、各種の清涼飲料水やジュースやお茶やコーヒーを内容物とする飲料用容器として、近年、ポリエチレンテレフタレート樹脂製で2軸延伸成形によるPETボトルが製造されており、このPETボトルに飲料を充填してネジ付きキャップ(スクリューキャップ)により密封した状態で、キャップによる再密封が可能なボトル入り飲料として大量に生産され、販売されている。
【0005】
そのようなPETボトル入り飲料は、上記のような2ピース缶を使用した飲料缶詰と比べて、飲み残してもキャップにより再密封できるという利点はあるものの、使用済みの容器を回収して資源にリサイクルする率が現時点ではかなり低い状態にある。そのため、資源のリサイクル率が高く且つ遮光性や耐気体透過性や急速冷却性に優れた金属製の缶容器について、キャップで再密封できる機能を付加することにより利便性を高めるということが検討されている。
【0006】
そのようなネジ付きキャップにより再密封が可能な金属製の缶として、ボトル形状を有するDI缶(絞り・しごき加工が施された缶)、即ち、ネジ付きキャップのネジと螺合するネジを設けた小径の口頸部と、その下方に続く傾斜面の肩部とを備えたDI缶について、特表平10−509095号公報には、幾つかの異なるタイプのボトル型DI缶の構造およびその成形方法が開示されている。
【0007】
すなわち、上記の引用公報中には、ボトル型のDI缶として、有底缶の胴部の上端開口部に巻き締める蓋板に対して肩部と口頸部を一体成形したタイプや、有底缶の胴部の上端開口側をネックイン加工により段階的に縮径していく(開口端に近づくに従ってより小径となるように縮径する)ことで肩部と口頸部を一体成形したタイプや、絞り加工により成形したカップの底部側に多段工程の絞り加工を施すことで口頸部と肩部を成形してから、カップの胴部を絞り加工としごき加工により薄肉化して、胴部の開口端部に別体の底蓋を巻き締めて固定するタイプ等がそれぞれ開示されている。
【0008】
また、特開昭64−62233号公報には、絞り・しごき加工により成形されたDI缶に対して、その缶底側をプレス加工(絞り加工)することで、小径円筒状の口頸部と円錐台状の肩部を成形して、口頸部の先端部をトリミングした後、缶の内外面に付着している潤滑剤を脱脂・洗浄し、缶の内外面を化成処理して乾燥させてから、缶の内面側を内面用塗料でスプレー塗装し、缶の胴部外面側に印刷や塗装を施して乾燥させた後、口頸部とは反対側の胴部開口端に缶蓋を巻き締めて固着してから、口頸部に樹脂製のネジ付き筒部を嵌着するか、又は、口頸部に直接ネジを刻設するということが開示されている。
【0009】
上記のようなネジ付きキャップによる再密封が可能なボトル型缶の各タイプについて更に説明すると、有底缶の胴部の上端開口部に巻き締める蓋板に対して肩部と口頸部を一体成形したタイプのボトル型缶では、絞り・しごき加工によるDI缶、或いは、絞り加工と曲げ伸ばし加工(ストレッチ加工)によるDTRD缶や、絞り加工と曲げ伸ばし加工(ストレッチ加工)としごき加工による缶のように、缶本体を有底缶として成形しておき、そのような缶本体に内容物の飲料を充填してから、ネジ付き口頸部と肩部を一体成形した缶蓋を、缶本体の胴部の開口端部に巻き締めて密封している。
【0010】
このタイプのボトル型缶は、缶本体の形状が従来から一般的な有底円筒状の2ピース缶と略同じであることから、缶容器に飲料を充填・密封して飲料缶詰を製造するに際して、充填設備を変更する必要がなく、設備費用を抑制できるという利点があるものの、缶容器の上部に蓋板の巻き締め部分があるため、この巻き締め部分が突出して外観の見栄えが悪いというだけでなく、巻き締め部分の内側の凹部に埃やゴミが溜まりやすいという問題がある。
【0011】
一方、有底缶の胴部の上端開口側をネックイン加工により段階的に縮径していくことで肩部と口頸部を一体成形したタイプのボトル型缶では、缶本体の絞りしごき加工又は曲げ伸ばし加工により、缶本体の上端部も同様に薄く伸ばして加工硬化させているものの、通常は、後工程での口頸部の加工を考慮して、缶本体の上端部については、それより下方の部分よりも材料の伸びが少なくなる(加工硬化の程度を小さくする)ように加工を施して、相対的には厚肉となるようにしている。
【0012】
そのようにしても、缶本体の胴部と比べて口頸部はかなり小径であって、口頸部を成形するための縮径率が大きくなることから、口頸部の成形に際して、一回の絞り量を大きくして縮径加工の回数を少なくしようとすると、胴部の上端部にシワが発生したり、割れが発生するという問題が生じるため、一回の絞り量を小さくして多数回の縮径加工を繰り返して施すことが必要となる。
【0013】
しかも、材料コストを削減するために小さなキャップを使用したり、消費者が口頸部から直接に中身の飲料をこぼすことなく飲めるようにするためには、通常の大きさの缶では、口頸部の径を胴部の径よりもかなり大きく縮径させることが必要となり、そのような要望に応えるためには、缶本体の上端部をネックイン加工で絞って口頸部を成形する際の縮径率を更に大きくする必要があることから、数十回にも及ぶ多段のネックイン加工が必要となって、生産効率が著しく低下することとなる。
【0014】
具体的には、例えば、ビール等の飲料缶に比較的多く使用される缶胴直径が約66mm(所謂211径)の缶の場合、そのような缶の口頸部を直径25.4mmまでネックインするためには、20〜30回のネッキング工程が必要となることから、缶本体の上端部を縮径して口頸部を形成するタイプのボトル型缶では、多くのネッキング加工用成形機が必要となって設備費用が嵩んだり、加工工程数の増加に伴って、生産効率が低下するだけでなく、傷付きや変形の発生する機会が多くなって品質が低下する虞もある。
【0015】
これに対して、有底缶(カップや有底円筒缶)の缶底側に肩部と口頸部を成形したタイプのボトル型缶では、肩部と口頸部に成形される缶底部分が、缶の成形に際して殆ど加工の影響を受けない部分であり、加工硬化がなく、厚みも元のブランクの板厚と略同じであるため、上記のような缶胴の上部をネックイン加工して口頸部を成形する場合と比べて、一回の絞り量を大きくして一回の工程で大きく縮径することができて、口頸部の成形に要する工程数を大幅に減らすことができ、しかも、缶底側に絞り加工を施す場合には、シワ押さえした状態で縮径することができる。また、そのようにして成形されたボトル型缶は、缶の上部に巻き締め部がなく、店頭に陳列中に埃やゴミが溜まる凹部もないため、外観性も良いものとなっている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ボトル型容器の胴部外面に文字や装飾模様等の印刷デザインを付与しようとする場合、PETボトルでは、その胴部が、非円形であったり、凹凸部が形成されていたり、非常に肉薄になっていることで、ボトル本体の全周に直接印刷したり、印刷済みの樹脂フィルムを熱接着したりすることが事実上できないため、印刷済みの熱収縮性フィルムをボトル本体にシュリンク包装することで印刷デザインを付与している。
【0017】
これに対して、上記のように有底缶の缶底側を肩部と口頸部を成形して胴部の下端開口部を底蓋の巻き締め固着により閉鎖するタイプのボトル型缶では、底蓋固着前に胴部の下端開口部をネックイン加工するまでは、胴部と同一径の開口部を有していることから、従来から一般的な有底円筒状の2ピース缶の場合と同様に、缶の胴部外面に直接印刷したり印刷済みの樹脂フィルムを熱貼着したりすることが可能であって、そうすることによりPETボトルとは異なる外観性を得ることができて商品の差別化を図ることができる。
【0018】
この点に関して、既に述べたように、特開昭64−62233号公報には、絞り・しごき加工により円筒状の有底缶を成形した後、その缶底側をプレス加工(絞り加工)して小径円筒状の口頸部と円錐台状の肩部を成形し、その口頸部の先端部を切断して取り除いてから、缶の内外面に脱脂処理と化成処理を施した後、缶の内面側に保護被膜を塗装し、缶の外面側に印刷や塗装を施すということが開示されている。
【0019】
しかしながら、そのような方法では、口頸部の先端部を切断・除去した後で、缶の外面側に印刷を施すようにしていることで、ボトル型でない通常の2ピース缶の場合に使用されている印刷装置(例えば、ドライオフセット印刷機等)に対して、後で述べるように大幅な改造をしなければ、該装置を転用することができないこととなり、そのために設備コストが高くなるという問題がある。
【0020】
なお、特表平10−509095号公報中に開示されている有底缶(カップ)の缶底側が肩部と口頸部に成形されるタイプのボトル型缶についても、該公報中には、胴部外面の印刷については特に記載されていないものの、絞り加工により成形したカップに口頸部(小径円筒部)と肩部とを成形した後、口頸部の先端部を切断して開口させ、その後、開口させた口頸部の先端部をカール加工すると共にネジ部を成形し、さらに、再絞り加工としごき加工によりカップの胴部を薄肉化して長く伸ばしてから、保護塗装を施す、という旨の記載がなされていることから見て、胴部外面への印刷は、カップの胴部をしごき加工で長く伸ばした後であり、口頸部の先端部を切断して取り除いた後であることから、上記のような特開昭64−62233号公報に開示されたボトル型缶が持つ問題と同様な問題がある。
【0021】
すなわち、従来の有底円筒状の2ピース缶の胴部外面に印刷デザインを施す(直接印刷するか、又は印刷済みの樹脂フィルムを熱貼着する)場合には、装置(印刷装置又はフィルム貼着装置)のマンドレル等に対して缶を供給・排出するための移送手段として、バキューム及び加圧空気噴出機構を利用した移送手段が一般的に使用されている(直接印刷する場合については、例えば、特開昭48−58905号公報,特開昭52−41083号公報,特開昭54−92810号公報,特開昭57−170758号公報,特開昭57−178754号公報等参照、また、印刷済み樹脂フィルムを貼着する場合については、例えば、特開平9−295636号公報,特開平8−1778号公報,特開平10−683号公報等参照)。
【0022】
そこで、ボトル型缶の円筒状の胴部に対して印刷デザインを施す(直接印刷するか、又は印刷済み樹脂フィルムの貼着する)場合についても、上記のような従来から普通の2ピース缶で使用している装置をできるだけそのまま転用したいのであるが、上記の特開昭64−62233号公報や特表平10−509095号公報に開示されている方法では、胴部外面に印刷デザインを施そうとする段階で、缶の両端(口頸部の上端と胴部の下端)が開口された状態となっていることから、装置のマンドレルに対して缶を供給・排出する時に、バキューム及び加圧空気噴出機構を利用した移送手段を使用することができない。
【0023】
したがって、ボトル型缶を機械的に掴むことで装置のマンドレルに対して缶を確実に供給・排出できるような機構を新たに取り付けることが必要となり、その結果、缶の供給・排出機構の改造に伴って多額の設備費用が必要になると共に、個々のボトル型缶を一々機械的に掴んでマンドレルに供給・排出することで、当該部分での移送に時間が掛かることとなり、従来の2ピース缶の場合と比べて、印刷(或いはフィルム貼着)の高速処理が不可能となって、製缶コストをかなり上昇させてしまうという問題が生じることとなる。
【0024】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、有底缶の缶底側に口頸部と肩部を成形したタイプで胴部外面に印刷デザインが施されているボトル型缶を製造するに際して、印刷デザインを施すための工程で、従来から2ピース缶で一般的に使用されているバキューム及び加圧空気噴出機構による移送手段を大幅に改造することなく転用できるようにすることを課題とするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような課題を解決するために、小径の口頸部と傾斜面を有する肩部と大径の胴部とが一体成形され、胴部の外面に印刷デザインが施され、胴部の下端部には底蓋が固着されるボトル型缶を製造するための方法において、金属薄板の両面に潤滑剤を塗布した後、金属薄板を打ち抜いてカップ状に成形する工程と、カップ状の成形品から更に胴部が小径化され薄肉化された有底円筒状の缶に成形する工程と、有底円筒状の缶の底部側を肩部と未開口の口頸部に成形する工程を経ることで、胴部よりも小径の口頸部が未開口で胴部の末端が開口されたボトル形状に成形された缶に対して、缶の内外面から潤滑剤を除去して化成処理を施す脱脂・化成処理工程よりも後で、缶の胴部外面に印刷デザインを施す工程と、缶の内外面に塗装を施す工程を行うと共に、両工程のうちの少なくとも缶の胴部外面に印刷デザインを施す工程を、未開口の口頸部を開口させてカール部やネジ部を形成する工程よりも前に行うようにしたことを特徴とするものである。
【0026】
上記のようなボトル型缶の製造方法によれば、缶の胴部外面に印刷デザインを施す(胴部外面に直接印刷するか又は印刷済み樹脂フィルムを貼着する)ための工程を、缶の内外面から潤滑剤を除去して化成処理を施す脱脂・化成処理工程よりも後で行うことにより、良好な状態で印刷又は印刷済み樹脂フィルムの貼着を行うことができる。
【0027】
そして、缶の胴部外面に印刷デザインを施すための工程を、未開口の口頸部が開口される前に行うことにより、従来から2ピース缶で一般的に使用されている装置(印刷装置又はフィルム貼着装置)について、缶を挿着させるマンドレルの形状の一部分や缶を吸着するバキュームパッドの内面形状の一部分を缶の肩部形状に合致させる程度の簡単な改造をするだけで、該装置に装備されているバキューム及び加圧空気噴出機構による移送手段を使用してマンドレルに対する缶の供給・排出を行うことができて、その結果、缶を一々機械的に掴んで供給・排出する移送手段を採用するような場合と比べて、かなりの高速で印刷デザインの付与を行うことができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のボトル型缶の製造方法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、図1は、本発明の方法により製造されるボトル型缶の一例を示し、図2は、図1に示したボトル型缶を製造するための製造工程の一例を概略的に示し、図3は、そのトップドーム成形工程において口頸部と肩部を成形する過程を示し、図4(A),(B)は、その印刷・塗装において装置のマンドレルに対する缶の供給手段と缶の排出手段をそれぞれ示すものである。また、図5(A),(B)は、本発明の方法により製造されるボトル型缶について形状が異なる各例をそれぞれ示し、図6(A),(B)は、本発明の方法により製造されるボトル型缶の口頸部について構造が異なる各例(A),(B)をそれぞれ示すものである。
【0029】
本発明のボトル型缶の製造方法の一実施形態について以下に説明すると、製造されるボトル型缶は、図1に示すように、大径円筒状の胴部2から上方に、縦断面が円弧状のドーム形状の肩部3を介して、小径円筒状のネジ付き口頸部4が一体的に成形され、胴部2の下端開口部が底蓋5の巻き締め固着により密閉されているものであって、胴部2の外面には、斜線で示した円筒状の部分が印刷範囲となるように、所望の印刷デザイン(文字や装飾模様等)が施されている。
【0030】
このボトル型缶の製造工程の概略については、図2に示すように、潤滑剤が塗布された金属薄板を材料として、先ず、カップ成形工程で、金属薄板を円板状に打ち抜いたブランクを絞り加工してカップ形状に成形してから、次の缶胴成形工程で、このカップに対して少なくとも一回以上の再絞り加工とストレッチ加工又はしごき加工を行って胴部が小径で薄肉化された有底円筒状の缶に成形する(なお、しごき加工に際しては潤滑剤を吹きつけながら行う)。
【0031】
次いで、トップドーム成形工程で、有底円筒状の缶の缶底側に対して絞り加工を複数回行うことで肩部と未開口の口頸部に成形してから、トリミング工程で、口頸部とは反対側の胴部の開口端側をトリミングして缶を所定の長さにした後、脱脂・化成処理工程において、例えば、胴部の開口端側を下にした状態でネットコンベアに載置した有底円筒状の缶の内外面に対して、脱脂処理液、洗浄水、化成処理液、洗浄水を順次噴霧することで、缶の内外面の潤滑剤を除去すると共に缶の内外面に化成処理を施してから、缶を加熱して乾燥させた後、印刷・塗装工程に向けて送り出す。
【0032】
口頸部の上端が未開口で胴部の下端が開口されている缶に対して、印刷・塗装工程では、その円筒状の胴部に対して所望のデザイン(文字や装飾模様等)の印刷を施した後、その上に印刷インキ層の保護のための透明なトップコートを塗布ロールで塗布してから、印刷インキ層やトップコート層を充分に乾燥させた後、更に、内外面塗装工程で、缶の内面側に内面保護用の塗料をスプレー塗装すると共に、缶の外面側の印刷・塗装を施さなかった部分、即ち、肩部と口頸部に外面保護用の塗料をスプレー塗装して、これらの塗膜を乾燥させてから、ネジ・カール成形工程に送りこむ。
【0033】
ネジ・カール成形工程では、先ず、未開口の口頸部の先端閉鎖部をトリミングすることで口頸部を開口させてから、その開口端部を外巻きで環状のカール部に成形し、次に、カール部の下方の円筒状周壁にキャップ螺合用のネジを成形し、ネジ形成部分の下方にビード部を形成する。
【0034】
次いで、ネック・フランジ成形工程で、口頸部とは反対側の胴部下端開口端部に対してネックイン加工とフランジ加工を順次施してから、図示していない底蓋巻締工程において、シーマー(缶蓋巻締機)により、金属薄板材からなる別部材の底蓋を、胴部の下端開口部に形成されたフランジ部に二重巻き締め法により一体的に固着することで、図1に示したようなボトル型缶が完成する。
【0035】
上記のような製造工程による本実施形態のボトル型缶の製造方法について、更に詳しく具体的に説明すると、原材料となる金属板としては、例えば、錫メッキ鋼板,ニッケルメッキ鋼板,亜鉛メッキ鋼板等の表面処理鋼板、或いは、アルミニウム合金板のような適宜の製缶用金属板で、厚さが0.1〜0.4mmである金属薄板が使用されており、その具体的な一例としては、厚さが0.315mmの3004H191アルミニウム合金板が使用されている。
【0036】
そのような金属薄板に対して、その両面に、例えば、「ユニプレスCP−B」(商品名 日本石油〔株〕製)や「700−NFK−1」(商品名 日本クェーカーケミカル〔株〕製)等のような水に不溶性の潤滑油を、絞り成形用潤滑剤としてグラビアロールにより塗布してから、カップ成形工程において、これを一缶毎のブランクに打ち抜いて絞り加工によりカップ状に成形しており、その具体的な一例としては、直径170mmの円板に打ち抜いたブランクを高さが48.3mmで外径100mmのカップ形状に絞り加工している。
【0037】
そのように成形されたカップに対し、缶胴成形工程では、更に、2回の再絞り加工を施すと共にそのうちの1回で曲げ伸ばし加工(ストレッチ加工)を施し、その後、周知の水溶性のしごき加工用潤滑剤を吹き付けながらしごき加工を施すことにより、元のカップ形状よりも小径で高さが高く胴部が薄肉化された有底円筒状の缶に成形しており、その具体的な一例としては、高さが48.3mmで外径100mmのカップを、高さが171.5mm以上で外径65.9mmの有底円筒状の缶に成形している。
【0038】
そして、トップドーム成形工程において、本実施形態では、先ず、有底円筒状の缶の缶底コーナー部(底部及び底部近傍の胴部)を縦断面が円弧状の肩部曲面(後で肩部の一部となる曲面)に予備成形してから、図3に示す(説明の都合上、缶底側を上にして示す)ように、肩部曲面31に予備成形された缶底コーナー部に囲まれた平坦な缶底41を、肩部曲面31に密着する表面形状(肩部曲面と略同じ曲面の表面形状)をそれぞれ先端部に備えた絞り用ダイ51とシワ押さえ用プッシャー52とによりシワ押さえした状態で、絞り用パンチ53により胴部2よりも小径の有底円筒状42に絞り成形している。
【0039】
なお、缶底コーナー部を肩部曲面31に予備成形するという点について、予備成形される肩部曲面31がトップドームの一部となるものであることから、図2ではトップドーム成形工程に入れているが、実際上は、缶胴成形工程で有底円筒状の缶を成形した後、その缶底コーナー部を再成形することで肩部曲面に予備成形しても良いし、或いは、缶胴成形工程において、しごき加工のパンチスリーブとして先端部の外面形状が縦断面円弧状となったものを使用することにより、しごき加工と同時に缶底コーナー部に肩部曲面に予備成形するようにしても良いものである。また、この缶底コーナー部を肩部曲面とする予備成形は、場合によっては省略しても良いものである。
【0040】
そのような絞り成形により、小径の有底円筒部42の下方に肩部曲面31が略予備成形された形状を維持して再成形されている状態から、更に、新たに絞り成形された小径の有底円筒部42を、肩部曲面31に続く仮想曲面の縦断面円弧の接線に近似した縦断面が略直線状のテーパー面をそれぞれ先端部に備えた再絞り用ダイ54とシワ押さえ用プッシャー55とを用いてシワ押さえした状態で、再絞り用パンチ56により更に小径の有底円筒状43に再絞り成形している。
【0041】
そして、そのような再絞り加工をもう一度繰り返す(ここで使用する再絞り用ダイ54とシワ押さえ用プッシャー55のテーパー面は、缶軸に対する傾斜角度を一回目の再絞り成形用よりも大きくする)ことで、有底円筒部の径を口頸部4の径と略同じ(例えば、約28mm)になるまで縮径した後、そのような絞り加工と再絞り加工の繰り返しにより元の肩部曲面31とこれから上に続く2個のテーパー面32,33が形成された状態の肩部を、最終的に予定している肩部曲面の表面形状を有する一対の再成形工具(ダイ57とプッシャー58)により押し延ばしすることで、連続した滑らかな曲面の肩部3に再成形(リフォーム)している。
【0042】
口頸部4と肩部3を成形する際のそれぞれの再絞り成形については、その前の絞り成形により形成された小径の有底円筒部と肩部曲面の境界線部分Lが、再絞り用ダイ54とシワ押さえ用プッシャー55との間に引き込まれるまで、再絞り成形を続行することが、肩部を滑らかなドーム状の曲面とするためには重要であって、そうすることで、境界線部分Lに形成されている急激な屈曲部が、互いに反対方向に加圧されている再絞り用ダイ54とシワ押さえ用プッシャー55との間に引き込まれて、該屈曲部がその屈曲の程度を浅くされるか又は殆ど消滅させられるので、その後、一対の再成形工具(ダイ57とプッシャー58)により肩部の再成形を行った時に、肩部3に残った浅い屈曲部を痕跡を残さず完全に消滅させて滑らかに成形することができる。
【0043】
なお、口頸部と肩部を成形する際の再絞り成形について、本実施形態では、再絞り加工を2回行っているが、形成しようとする口頸部の外径が缶の胴部外径の約1/2以上である場合には、絞り加工で成形した小径の有底円筒部を更に小径の有底円筒部に再絞りする再絞り加工は1回でも良く、例えば、缶の胴部外径が65.9mmであって、予定している口頸部の外径が38mm程度である場合には、再絞り加工は1回だけで良い。
【0044】
上記のように複数回の絞り加工で口頸部と肩部を成形した後、トップドーム成形工程の後半では、図3には示していないが、有底円筒状に成形された口頸部に対して2回の口絞り成形(口頸部の上半分の縮径と口頸部の上4分の1の縮径)を施している。
【0045】
上記のようにトップドーム成形された缶に対して、脱脂・化成処理工程では、缶の内外両面に塗布されている水に不溶性の潤滑剤、及び、加工の際に吹き付けられた水溶性の潤滑剤を除去するために、周知の脱脂剤と洗浄水を缶の内外面に噴霧してから、缶の内外両面を化成処理するために、周知の化成処理液と洗浄水を缶の内外面に噴霧しており、そのために、従来から一般的なDI缶の脱脂・化成処理工程で採用されている周知の方法と同様に、缶の開口端部を下にした状態で周知のネットコンベアの上に載置して、周知のキャンウォッシャーを使用して上下から脱脂液や洗浄水や化成処理液をスプレーしている。
【0046】
なお、脱脂・化成処理工程の後の缶の乾燥については、そのまま缶を開口端部を下にした状態でネットコンベア上に載置して搬送しながら、上方から缶に熱風を吹き付ければ良いし、或いは、缶の口頸部を上方から吸着しながら缶を搬送している間に、缶の下方から熱風を吹き付けて缶を乾燥するようにしても良い。
【0047】
脱脂・化成処理が施された缶が送り込まれる印刷・塗装工程について、本実施形態では、従来から2ピース缶の胴部外面に印刷・塗装を連続的に施すために使用されている適宜の印刷・塗装装置を使用しており、この印刷・塗装装置(ドライオフセット印刷・塗装装置等)は、図示していないが、装置本体に配備された回転体の周辺部に等間隔で取り付けられているマンドレルに缶を冠着させて、該回転体の回転に連れて円周方向に移動するマンドレルにより缶を搬送しながら、円筒状の缶の胴部外面に対して印刷・塗装を連続的に施すような適宜の印刷・塗装装置(例えば、特開昭48−58905号公報,特開昭54−92810号公報,特開昭57−170758号公報,特開昭57−178754号公報等参照)の転用によるものである。
【0048】
図4は、そのような印刷・塗装装置のマンドレルに対する缶の供給・排出の状態を示すもので、缶の供給ステーションでは、図示していないが、適宜の姿勢で連続的に送られてくる缶(底蓋は未だ固着されていない)をスクリュー等の適宜の手段で所定の間隔に整列させて、ターレットのポケットに一缶ずつ収容させてから、図4(A)に示すように、ガイド63によって缶1をマンドレル61に接近させて、押圧具(図示せず)により缶1を一缶ずつマンドレル61側に間欠的に押圧して(或いは、タイミングをとって噴出する加圧空気を噴出させて缶を押圧しても良い)、缶1をマンドレル61に冠着させてから、マンドレル61の中心軸の孔61aを真空源に連通させることで、缶をマンドレル61に吸引させて完全に冠着させている。
【0049】
また、缶の排出ステーションでは、図4(B)に示すように、マンドレル61に冠着された状態で印刷・塗装が施された後の各缶1について、缶6を冠着させたマンドレル61に対面する側の内面形状が缶の肩部形状に合致した形状のバキュームパッド62を接近させ、マンドレル61の中心軸の孔61aから加圧空気を噴出させることで缶1をマンドレル61からバキュームパッド62側に移動させると同時に、バキュームパッド62で缶を吸引することにより、缶1をバキュームパッド62により吸着させてマンドレル61から取り外している。
【0050】
なお、上記のようなバキューム及び加圧空気噴出機構による缶の供給・排出について、中心軸に空気流通用の孔を設けたマンドレルとバキュームパッドによる基本的な構造自体は、従来から一般的な2ピース缶の印刷・塗装装置の場合と同様であるが、図4(A),(B)に示すように、マンドレル61とバキュームパッド62の具体的な形状については、ボトル型缶1の形状に合致するように若干設計変更されていて、マンドレル61は、その先端部が缶1の肩部内面の下部に当接するような形状とされ、バキュームパッド62は、その内面形状が缶1の肩部と密着して缶1を吸着できるようになっている。
【0051】
印刷が施されトップコートが塗布された缶は、印刷・塗装装置からバキュームパッド62により適宜の搬送手段(デコピンチェーンと言われるピンコンベアや多数の孔を備えた平ベルト又はネットコンベア等)に移送され、該搬送手段によって缶を送り込んだ乾燥装置(オーブン等)の内部において、搬送手段がピンコンベアの場合には、ピンを缶内に挿入して缶を支持するコンベアを上下方向に蛇行させるように搬送しながら、或いは、搬送手段がネットコンベア(又は多孔の平ベルト)の場合には、水平方向に移動するコンベア上に開口部側を下にして載置された缶の上方から熱風を吹き付けることにより、缶の印刷インキ層やトップコート層を充分に乾燥させている。
【0052】
缶の胴部外面に直接に施された印刷インキ層やトップコート層を充分に乾燥させてから、更に、内外面塗装工程で、缶の内面側に内面保護用の塗料をスプレー塗装すると共に、缶の外面側の印刷・塗装を施さなかった部分、即ち、肩部と口頸部に外面保護用の塗料をスプレー塗装して、これらの熱硬化性樹脂,紫外線硬化性樹脂,電子硬化性樹脂,熱可塑性樹脂等の適宜の樹脂を主成分とする保護塗膜を乾燥させた後、ネジ・カール成形工程では、先ず、口頸部の上端小径部をトリミングすることで口頸部を開口させてから、開口された口頸部を、図6(A)に示すように、外巻きカール部11,傾斜壁12,ネジ部13,ビード部14および小径筒部15を備えた形状に成形している。
【0053】
すなわち、図示していないが、口頸部4の上端小径部をトリミングして開口させた後、その開口端縁を僅かに外方にプレカールさせてから、上端周縁に縦断面円弧状の曲面を備えた金型を口頸部の内側に挿入した状態で、上方からカール成形パンチを押し下げることにより、口頸部の上端開口縁に外巻きのカール部11を成形すると共に、それから下方の傾斜壁12を縦断面が外方に膨らんだ円弧形となる曲面に成形している。
【0054】
そして、カール部11の下方の傾斜壁12に続く円筒状周壁にネジ部13を直接成形するのであるが、その際のネジ山とネジ谷の成形方法については、口頸部の内側に雌型を挿入して外側からロールを押し付けて成形する方法や、口頸部の内側からロールを押し付けて形成させる方法等があって、適宜の方法でネジ部13を成形した後、ネジ部13の下方を所定の幅だけ残した状態で、その下方をロールを外側から押し付けて小径筒部15とすることで、ネジ部13の下方が環状のビード部14となるように成形している。
【0055】
なお、ビード部14とその下方の小径筒部15については、キャッパーにより金属製のピルファープルーフキャップを口頸部4に装着する場合、小径筒部15にキャッパーのローラーが入り込み、キャップの下端壁(破断用ミシン目の下方の帯状部下端)を変形させて、キャップの下端壁をビード部14の下側壁(下方段部)に押し付けることで、口頸部4にキャップをピルファープルーフの状態(開封された場合にはミシン目が破断されることで外観上その事実が判るようになっている状態)で装着させるためのものである。
【0056】
上記のようにネジ・カール成形工程で口頸部4に直接にネジ部13を成形している本実施形態の方法では、ネジ部13を成形するために口頸部4が厳しい加工を受けることから、既に塗装が施されて缶の内外面に形成されている保護塗膜がネジ部13の成形加工によって損傷している虞があり、その結果、缶に充填する内容物が腐食性の高い飲料である場合には、塗膜の損傷部分で金属が腐食する虞があることから、ネジ・カール成形工程の後で、少なくとも口頸部4の内面側に内面塗料をスプレー塗装して乾燥させることで、内面塗膜を補修しておくことが好ましい。また、口頸部4の外面側についても、同様に外面塗料をスプレー塗装して乾燥させることが好ましい。
【0057】
上記のように口頸部の成形が完了した缶について、ネック・フランジ成形工程で、口頸部とは反対側の胴部の下端開口端部に対してネックイン加工とフランジ加工を順次施してから、底蓋巻締工程において、缶の下端開口部に形成されたフランジ部に別部材の底蓋をシーマー(缶蓋巻締機)で二重巻き締めして固着することにより、内容物の充填が可能なボトル型缶となる。
【0058】
なお、缶の下端開口部に固着する底蓋の具体的な一例としては、両面に0.02mm厚のポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂との混合樹脂フィルムを熱融着させたアルミニウム合金(5182−H39)製で板厚が0.285mm,直径が62.6mmの底蓋を使用している。
【0059】
以上に述べたような本実施形態のボトル型缶の製造方法によれば、金属薄板から薄肉化された胴部と傾斜面を有する肩部と未開口の口頸部を一体成形加工する際に、加工工具との摩擦によって金属表面を傷付けることがないように、金属薄板に対して予め潤滑剤を塗布し、又、加工中に潤滑剤を吹き付けているが、缶の胴部外面に印刷デザインを施すための工程(本実施形態では、缶の胴部外面に直接印刷してトップコートを施す印刷・塗装工程)を、缶の内外面から潤滑剤を除去して化成処理を施す脱脂・化成処理工程よりも後で行っていることから、缶の胴部外面に対して良好な状態で印刷デザイン(本実施形態では、直接印刷)を施すことができる。
【0060】
また、缶の胴部外面に印刷デザインを施すための工程(印刷・塗装工程)を、口頸部が未開口の状態で行っていることから、従来から2ピース缶で一般的に使用されている印刷・塗装装置について、缶を冠着させるマンドレルの形状の一部分や缶を吸着するバキュームパッドの内面形状の一部分を缶の肩部形状に合致させる程度の簡単な改造をするだけで、該装置に装備されているバキューム及び加圧空気噴出機構による移送手段を使用してマンドレルに対する缶の供給・排出を行うことができる。
【0061】
その結果、ボトル型缶を機械的に掴むことで供給・排出するような機構を新たに取り付けることなく、簡単な改造だけで従来からの装置(印刷・塗装装置)を使用することができて、設備費用の増加を抑えることができると共に、個々のボトル型缶を一々機械的に掴んでマンドレルに供給・排出する必要がないため、従来の有底円筒状の2ピース缶の場合と同様に、印刷を高速で処理することができて、製缶コストの上昇を抑えることができる。
【0062】
さらに、本実施形態の方法では、肩部と口頸部(未開口)に成形するために、缶の缶底コーナー部を肩部曲面に予備成形してから、底部を有底円筒状に成形して、予備成形された肩部曲面に続く仮想曲面の縦断面円弧に引いた接線に近似した断面直線形状のテーパー面を持つシワ押さえ工具を用いて、有底円筒状に成形した底部に絞り成形を繰り返すことで小径の口頸部(未開口)を成形し、その後、曲面に近似して形成された肩部の複数のテーパー面を連続した滑らかな曲面に押し延ばし再成形していることから、成形痕を残すようなことなく肩部を滑らかで綺麗なドーム状の曲面に形成することができて、通常のPETボトルに類似した形状のボトル型缶を綺麗に製造することができる。
【0063】
以上、本発明のボトル型缶の製造方法の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に示したような具体的な方法に限られるものではなく、有底缶の缶底側に肩部と口頸部を成形するタイプで缶胴外面に印刷デザインが施されるボトル型缶を製造する方法である限りにおいて、適宜変更可能なものであることは言うまでもない。
【0064】
すなわち、例えば、その製造工程について、缶の長さを揃えるためのトリミング工程は、上記の実施形態に示したようなトップドーム成形の後に限らず、缶胴成形工程により有底缶に成形した後からネック・フランジ成形工程で胴部の下端を加工するまでの間であれば良く、また、缶内外面塗装工程は、上記の実施形態に示したようなネジ・カール成形の前に限らず、ネジ・カール成形の後であっても良い等、適宜変更可能なものである。
【0065】
また、ボトル型缶の胴部外面に施す印刷デザインについて、上記の実施形態では缶の胴部外面に直接印刷することで印刷デザインを施しているが、そのような方法に限らず、印刷済みの樹脂フィルムを胴部外面に熱貼着することで印刷デザインを施すようにしても良く、その場合でも、脱脂・化成処理工程よりも後ではフィルムの貼着を良好な状態で行うことができ、フィルム貼着装置に対する缶の供給・排出をバキューム機構による移送手段によって行うことができるという点において、胴部外面に直接印刷する場合と効果的に相違するものではない。
【0066】
すなわち、印刷済み樹脂フィルムの貼着方法および装置についても、基本的には、例えば、特開平8−1778号公報,特開平9−295639号公報,特開平10−683号公報等の記載により従来から公知であって、上記の各公報中には、装置に配備された回転体の周辺部に等間隔で取り付けられているマンドレルに対して、缶供給部で加圧空気を缶の底部に吹き付けることによりマンドレルに缶を冠着させると共に、マンドレルの空気孔からバキュームで吸引することにより缶を所定位置に移動させて、該装置の回転体の回転に連れて円周方向に移動するマンドレルにより缶を搬送しながら、貼り付けロールと加圧ロールにより印刷済み樹脂フィルムのシートを円筒状の缶の胴部外面に熱接着で貼着させた後、マンドレルの空気孔から加圧空気を噴出させて缶をマンドレルから排出コンベアに向けて排出し、排出コンベアでは缶をマグネット又はバキューム吸着によりコンベアに吸着させて搬送するということが開示されており、このような装置を簡単に転用することができる。
【0067】
ボトル型缶に対して上記のような印刷済み樹脂フィルムの貼着による方法を採用した場合には、缶の胴部外面に直接にドライオフセット印刷を施す場合と比べて、印刷の鮮明度が高くグラデーションの表現に優れているグラビア印刷が使用できることから(缶の胴部外面に直接にグラビア印刷を施すことは実際上困難である)、深みのある豪華な印刷デザインが付与されたボトル型缶を得ることができる。
【0068】
また、ボトル型缶の全体形状やその具体的な成形手段等について、上記の実施形態では、通常のPETボトルに類似した形状とするために肩部を滑らかで綺麗なドーム状の曲面に形成しており、そのために、特に請求項6に記載したような成形方法を採用しているが、本発明の製造方法の対象となるボトル型缶は、肩部が滑らかなドーム状の曲面であるものに限らず、例えば、図5(A)に示すような肩部が直線的な円錐面(円錐台形状)に成形されたボトル型缶や、図5(B)に示すような肩部が段状に成形されたボトル型缶等、有底缶の缶底側を肩部と口頸部に成形したタイプのものである限りにおいて、適宜の形状のボトル型缶を対象とするものであり、口頸部や肩部の成形方法についても、上記の実施形態に示した成形方法に限らず、ボトル型缶の具体的な形状に合わせて適宜の成形方法を選択して実施することが可能なものである。
【0069】
さらに、ボトル型缶の部分的な構造についても、例えば、口頸部の構造について、上記の実施形態では、図6(A)に示すように、口頸部4に直接にネジ部13を成形しているが、そのような構造に限らず、図6(B)に示すように、口頸部4に合成樹脂製のネジ付き筒状体20を外挿して固定するようにしても良い。その場合でも、筒状体20を口頸部4に固定した後に、口頸部4の内面側にスプレー塗装をしておくことが望ましい。
【0070】
なお、図6(B)に示した具体的な構造について説明すると、射出成型法等によりポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の樹脂で予め成形された筒状体20には、キャップを螺着するためのネジ部21と、内容物の充填工程等で缶を保持するための保持リング22と、口頸部4と筒状体20の相対回動を防止するための内面側凹部23とが形成されていて、上端をトリミングして開口させた口頸部4に筒状体20を外挿させた後、口頸部4の開口縁をかなり外方にプレカールさせてから、上方からカール成形パンチを押し下げて外巻きにカールさせることで、カール部17の先端を筒状体20の上端外周面に喰い込ませて筒状体20の上端を固定し、その後、口頸部4の中央付近に内側から液圧又は弾性圧を加えて、筒状体20の内面側凹部23に対応する位置の口頸部4の側壁部分を張り出させて凸部18を形成することで、筒状体20を口頸部4に対して回動しないように固定している。
【0071】
上記のような樹脂製の筒状体20を口頸部4に使用することで、筒状体20に形成された保持リング22により、ボトル型缶を従来のPETボトルと同様に搬送することができて、従来のPETボトルによる飲料充填ラインをそのまま使用して、ボトル型缶への飲料の充填を行うことができるようになる。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したような本発明の印刷済みボトル型缶の製造方法によれば、直接印刷や印刷済み樹脂フィルムの貼着による胴部外面への印刷デザインの付与を、潤滑剤を除去して化成処理を施した後の良好な状態で施すことができると共に、印刷デザインを施すための工程で、移送手段としてバキューム及び加圧空気噴出機構を用いた従来から使用されている2ピース缶用の装置を、大きな改造を加えることなく転用することができて、その結果、設備費用の増加を抑えることができ、また、従来の有底円筒状の2ピース缶の場合と同様の高速処理が可能となって、製缶コストの上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法により製造されるボトル型缶の一例を示す部分断面側面図。
【図2】図1に示したボトル型缶を製造するための本発明の方法の一実施形態について、その製造工程を概略的に示す側面説明図。
【図3】図2に示したボトル型缶の製造工程のトップドーム成形工程における口頸部と肩部の成形の過程を示す側面および断面説明図。
【図4】図2に示したボトル型の製造工程の印刷・塗装工程において、印刷・塗装装置(或いは印刷済み樹脂フィルム貼着装置)のマンドレルに対してバキューム及び加圧空気噴出機構により缶の供給・排出を行うための手段を示す(A)缶の供給ステーション,および(B)缶の排出ステーションについての上面説明図。
【図5】本発明の方法により製造されるボトル型缶の他の各例(A),(B)をそれぞれ示す側面図。
【図6】本発明の方法により製造されるボトル型缶の口頸部について、(A)口頸部に直接ネジ部を形成した例を示す部分断面側面図、および(B)口頸部に外挿される樹脂製筒状体にネジ部を形成した例を示す縦断面図。
【符号の説明】
1 ボトル型缶
2 胴部
3 肩部
4 口頸部
11 カール部
13 ネジ部
20 樹脂製の筒状体
22 保持リング
51 絞り用ダイ
52 (絞り用ダイと対になる)シワ押さえプッシャー
53 絞り用パンチ
54 再絞り用ダイ
55 (再絞り用ダイと対になる)シワ押さえプッシャー
56 再絞り用パンチ
57 再成形工具(ダイ)
58 再成形工具(プッシャー)
Claims (6)
- 小径の口頸部と傾斜面を有する肩部と大径の胴部とが一体成形され、胴部の外面に印刷デザインが施され、胴部の下端部には底蓋が固着されるボトル型缶を製造するための方法において、金属薄板の両面に潤滑剤を塗布した後、金属薄板を打ち抜いてカップ状に成形する工程と、カップ状の成形品から更に胴部が小径化され薄肉化された有底円筒状の缶に成形する工程と、有底円筒状の缶の底部側を肩部と未開口の口頸部に成形する工程を経ることで、胴部よりも小径の口頸部が未開口で胴部の末端が開口されたボトル形状に成形された缶に対して、缶の内外面から潤滑剤を除去して化成処理を施す脱脂・化成処理工程よりも後で、缶の胴部外面に印刷デザインを施す工程と、缶の内外面に塗装を施す工程を行うと共に、両工程のうちの少なくとも缶の胴部外面に印刷デザインを施す工程を、未開口の口頸部を開口させてカール部やネジ部を形成する工程よりも前に行うようにしたことを特徴とするボトル型缶の製造方法。
- 未開口の口頸部を開口させてカール部やネジ部を形成する工程において、開口された口頸部の先端部分を外方又は内方にカールさせ、このカール部よりも下方の口頸部に直接にネジ部を成形することを特徴とする請求項1に記載のボトル型缶の製造方法。
- 未開口の口頸部を開口させてカール部やネジ部を形成する工程よりも後で、少なくともネジ部の内面側に塗装を施すことを特徴とする請求項2に記載のボトル型缶の製造方法。
- 未開口の口頸部を開口させてカール部やネジ部を形成する工程において、開口された口頸部に予めネジ部が形成された樹脂製の筒状体を外挿してから、口頸部の先端部分を外方にカールさせて樹脂製の筒状体に係合させることを特徴とする請求項1に記載のボトル型缶の製造方法。
- 開口された口頸部に外挿される予めネジ部が形成された樹脂製の筒状体に対して、ボトル型缶を保持して搬送するための外方に突出した保持リングを、ネジ部よりも下方に形成しておくことを特徴とする請求項4に記載のボトル型缶の製造方法。
- 有底円筒状の缶の底部側を肩部と未開口の口頸部に成形する工程において、缶底コーナー部が縦断面円弧状の肩部曲面に予備成形された缶に対して、該肩部曲面に密着する曲面を有する一対の絞り用ダイとシワ押さえプッシャーとにより該肩部曲面をシワ押さえした状態で、絞り用パンチを用いて該缶の底部を胴部よりも小径の有底円筒状に絞り成形した後、予備成形された肩部曲面に続く仮想曲面の縦断面円弧に引いた接線に近似した縦断面が略直線状のテーパー面を有する一対の再絞り用ダイとシワ押さえプッシャーとにより、絞り成形で形成された小径の有底円筒部の底コーナー部をシワ押さえした状態で、再絞り用パンチを用いて該有底円筒部を更に小径の有底円筒状に再絞り成形し、この再絞り成形を有底円筒部の径が口頸部の径と略同じになるまで必要に応じて一回又は二回以上行なってから、そのような絞り成形と再絞り成形により曲面に近似して形成された肩部の一又は二以上のテーパー面を、最終的に予定している肩部曲面の表面形状を有する一対の再成形工具により、連続した滑らかな曲面に押し延ばし再成形することで、肩部の形状をドーム状の曲面にするようにしたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のボトル型缶の製造方法。
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