JPH0240146B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は金属ガスケツトに係り、燃焼室周り
のデツキ面間隙の拡縮を防止し、また、燃焼室周
りに設ける補償部およびビードの損壊を防止する
とともにスペーサ部材によりシール面圧を高くし
且つ二次シール効果によつてシール性の向上を図
り得る金属ガスケツトに関する。

〔従来の技術〕

内燃機関を構成する被接合部材であるシリンダ
ヘツドとシリンダブロツクとの接合部には、金属
ガスケツトが利用されている。金属ガスケツト
は、シリンダヘツドのデツキ面とシリンダブロツ
クのデツキ面間の接合部をシールすべく形成され
たビードを有し、このビードがシリンダヘツドと
シリンダブロツクとを接合する締結手段である締
結ボルトの締結力により夫々デツキ面に弾性的な
シール線を形成し、シールを果すものである。金
属ガスケツトとしては、例えば、本出願人によ
り、実開昭60−12653号公報、実願昭57−175510
号に開示されている。実開昭60−12653号公報の
金属ガスケツトは、ビード切れを防止すべくシリ
ンダボアを囲繞する内側ビードと孔ビードを包含
する外側ビードとが接触しないように構成されて
いる。また、実願昭57−175510号の金属ガスケツ
トは、接合部に熱歪みが生ずるのを防止すべく高
温シール部を低温シール部よりも熱軟化性の小な
る金属材料によつて形成されている。

〔発明が解決しようとする問題点〕

ところて、従来、金属ガスケツトを介してシリ
ンダブロツクにシリンダヘツドを締結用ボルトに
よつて締結した際に、ボルト締結力によつてシリ
ンダヘツドが湾曲し、特に燃焼室周りの間隙が大
となり、歪みが生ずるものである。このため、こ
れらの歪みを生じた箇所から燃焼ガスがリークし
て、接合部に介装されている金属ガスケツトを汚
損したり、含有した物質の堆積により、シール性
が低下するという不都合があつた。また、使用時
に例えば燃焼ガス圧力や機関熱の影響で燃焼室周
りのデツキ面間隙、つまり接合部の間隙が拡縮す
ることにより、金属ガスケツトのビードに交番荷
重によつてへたりが生ずるとともに、この交番荷
重が締結用ボルトにも作用して締結用ボルトやこ
の締結用ボルトの係合するシリンダヘツド部位を
損壊させるおそれがあり、さらには締結用ボルト
の締結力を減少させて金属ガスケツトのシール効
果低減させるという不都合がある。

また、副板の燃焼室孔側端縁を燃焼室孔外方に
折返して折返し部を形成し、この折返し部内に基
板の燃焼室側端縁を単に位置させた構成の実願昭
57−175510号の金属ガスケツトにおいては、締結
力により基板のビードが圧縮形成された際に、基
板の端縁の端面が迫り出して副板の折返し部に当
接し、過大な押圧力が折返し部に作用するので、
折返し部が損傷して破壊するおそれがあり、ま
た、この部分の強度が低下して使用寿命が短くな
る不都合があつた。

〔発明の目的〕

そこでこの発明の目的は、上述の不都合を除去
し、被接合部材締結時に生ずる燃焼室周りのデツ
キ面間隙をスペーサ部材が設けられた補償部によ
り補償し得て、金属ガスケツトの汚損やシール効
果の低減を防止し安定したシールを果し得るとと
もに、補償部およびビードが損壊するのを防止し
て使用寿命を長くし、しかも、二次シール効果に
よつてシール性を向上し得る金属ガスケツトを実
現することにある。

〔発明が解決しようとする問題点〕 この目的を達成するためにこの発明は、弾性金
属板からなる基板に燃焼室孔とこの燃焼室孔を囲
繞するビードを設けてシールを果す金属ガスケツ
トにおいて、前記基板に副板を積層して設け、こ
の副板の前記燃焼室孔側端縁を前記ビードの頂部
側の前記基板面上で且つ前記燃焼室孔外方に折返
して折返し部を形成し、前記副板の端縁を前記ビ
ードに重合させずに前記基板の端縁面上に重合し
て設け、前記折返し部内において該折返し部の内
周面に接して前記基板の厚さよりも大なる厚さの
スペーサ部材を抱持させて所定厚さの補償部を構
成し、前記ビードが高さを低減して圧縮変形され
た際に前記基板の端縁の端面が前記スペーサ部材
近傍に位置すべく前記基板の端縁の端面を前記ス
ペーサ部材から離間した位置に設けたことを特徴
とする。

〔作用〕

この発明の構成によれば、被接合部材締結時に
生ずる燃焼室周りのデツ面間隙を補償するため
に、燃焼室孔を囲繞して設けたビードのビード部
位よりも燃焼室孔側にスペーサ部材が設けられた
所定厚さの補償部を形成している。この補償部に
よつて燃焼室周りに形成される大なるデツキ面間
隙を補償し、燃焼ガス圧力や機関熱の影響により
デツキ面間隙が拡縮するのを防止し、ビードへの
交番荷重の作用を弱化させてビードのへたりを防
止する。また、燃焼室周りは補償部とビード部位
との双方によつて二重に囲繞され、二次シール効
果によつて燃焼ガスのリークを効率良く防止す
る。更に、締結力により基板のビードが圧縮変形
された際に、スペーサ部材を設けたことにより基
板の端縁の端面が副板の折返し部に当接すること
がなく、折返し部が損傷して破壊するのを防止し
且つ補償部の強度を大とし、しかも、基板の端縁
の端面がスペーサ部材近傍に位置することによ
り、スペーサ部材と基板の端縁の端面間の隙間を
小さくしてヒートスポツトの発生を阻止し、補償
部が過熱によつて焼損するのを未然に防止して使
用寿命を長くする。

〔発明の実施例〕

以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且
つ具体的に説明する。

第１〜３図は、この発明の実施例を示すもので
ある。図において、２は金属ガスケツトである。
この金属ガスケツト２は、弾性金属板からなり厚
さt₁を有する基板４とこの基板４に積層する副板
６とにより構成される。この副板６は、前記基板
４の厚さt₁よりも大なる厚さt₂に形成されてい
る。前記基板４には、燃焼室孔８が形成されてい
るとともに、この燃焼室孔８の周辺に複数のボル
ト孔１０が形成されている。また、前記基板４に
は、燃焼室孔８周りを囲繞するビード１２が形成
されている。

また、前記基板４に形成した燃焼室孔８側の副
板６の端縁６ａは、曲げ加工等により前記基板４
のビード１２の頂部側の面に折返される。これに
より、副板６には、折返し部６ｂが形成される。
このとき、副板６の折返し部６ｂの内周面６ｃに
接し、前記基板４の厚さt₁よりも大なる厚さ、つ
まり厚さt₁よりも大なる直径Ｄで硬質のスペーサ
部材１４が抱持される。また、副板６の端縁６ａ
は、基板４の端縁４ａ面上に重合して位置する。
これにより、金属ガスケツト２には、燃焼室孔８
周りで上述のビード部位よりも燃焼室孔８側に所
定厚さＴの補償部１６が形成される。この補償部
１６は、副板６の厚さt₂と例えばワイヤリングか
らなるスペーサ部材１４の厚さである直径Ｄと副
板６の端縁６ａの厚さt₂とによつて他の箇所より
も大なる厚さＴを有し、シリンダヘツド１８の締
結時に生ずるデツキ面間隙を補償し、デツキ面間
隙の拡縮を防止するものである。また、補償部１
６のスペーサ部材１４の外周部位には、スペーサ
部材１４の外周面から所定距離だけ離間する基板
４の端縁４ａの端面４ｃが位置する。つまり、締
結用ボルト（図示せず）の締結時において、ビー
ド１２が高さを低減して圧縮変形された際に、基
板４の端縁４ａの端面４ｃが副板６の折返し部６
ｂに直接当接するのをスペーサ部材１４によつて
防止させるとともに、基板４の端面４ｃをスペー
サ部材１４近傍に位置させて折返し部６ｂと基板
４の端面４ｃ間の隙間を減少し、ヒートスポツト
の発生を未然に阻止し、補償部１６の損壊を防止
するものである。

また、第３図において、１８，２０は内燃機関
を構成するシリンダヘツド、シリンダブロツクで
あり、このシリンダヘツド１８とシリンダブロツ
ク２０とのデツキ面間の接合部２２にこの発明の
金属ガスケツト２を介装し、図示しない締結用ボ
ルトにより締結する。なお、符号２４は燃焼室、
２６はピストン、Ｓはシリンダヘツド１８とシリ
ンダブロツク２０との間の燃焼室２４周りのデツ
キ面間隙である。

以下、この実施例の作用を説明する。

シリンダヘツド１８とシリンダブロツク２０と
の接合部２２に介装された金属ガスケツト２は、
締結用ボルトの締結力により圧縮され、これによ
り基板４のビード１２が高さを低減して圧縮変形
される。この圧縮変形されたビード１２の弾性復
元力により、シールを果す。締結用ボルトの締結
時には、第３図に示す如く、シリンダヘツド１８
が湾曲して歪みを生じ、特に燃焼室２４周りのデ
ツキ面の空隙Ｓが大となる問題がある。しかし、
前述の如く、ビード部位よりも燃焼室孔８側に所
定厚さＴで且つスペーサ部材１４が設けられた補
償部１６を構成したことにより、この補償部１６
の厚さＴによつてシリンダヘツド１８の歪みに起
因する大なる間隙Ｓを補償することができる。ま
た、硬質のスペーサ部材１４を折返し部６ｂ内に
設けたことにより、補償部１６のシール面圧を高
くし得る。

これにより、間隙Ｓからの燃焼ガスのリークを
確実に防止することが可能となる。また、燃焼ガ
ス圧力や機関熱の影響によりデツキ面間隙が拡縮
するのを防止し、ビード１２に作用する交番荷重
を補償部１６によつて弱化させ、ビード１２のへ
たりを防止して使用寿命を長くし、締結用ボルト
やこの締結用ボルトの係合するシリンダヘツド１
８部位の損壊を防止し得るとともに、締結用ボル
トの締結力の低下を防止でき、シール効果の低減
を防止し得る。

また、締結用ボルトの締結時に、基板４のビー
ド１２が高さを低減して圧縮変形された際に、基
板４の端縁４ａの端面４ｃが副板６の折返し部６
ｂに当接することがなく、しかも、基板４の端面
４ｃがスペーサ部材１４近傍に位置することによ
つて基板４の端面４ｃと折返し部６ｂ間に形成さ
れる隙間を減少させ、ヒートスポツトの発生を阻
止させ、これにより、基板４の端面４ｃの迫り出
しやヒートスポツトによる過熱によつて折返し部
６ｂが焼損して補償部１６が破壊するのを防止し
且つ補償部１６の強度を大とし得て、金属ガスケ
ツト２の使用寿命を長くする。

更に、燃焼室２４周りにおいては、補償部１６
とビード１２が位置するビード部位とに二重にシ
ールをすることができ、二次シール効果によつて
シール性をさらに向上させることができる。

〔発明の効果〕

以上詳細な説明から明らかなようにこの発明に
よれば、基板に副板を積層して設け、副板の燃焼
室孔側端縁をビードの頂部側の基板側上で且つ燃
焼室孔外方に折返して折返し部を形成し、副板の
端縁をビードに重合させずに基板の端縁面上に重
合して設け、折返し部内において折返し部の内周
面に接して基板の厚さよりも大なる厚さのスペー
サ部材を抱持させて所定厚さの補償部を構成し、
ビードが高さを低減して圧縮変形された際に基板
の端縁の端面がスペーサ部材近傍に位置すべく基
板の端縁の端面をスペーサ部材から離間した位置
に設けたことにより、燃焼ガス圧力や機関熱の影
響により燃焼室周りのデツキ面間隙が拡縮するの
を防止し、これにより燃焼室周りからの燃焼ガス
のリークを防止できる。

また、リークした燃焼ガスによる金属ガスケツ
トの汚損や含有した物質の堆積によるシール効果
の低減を防止し得る。

更に、ビードに作用する交番荷重を弱化させて
ビードのへたりを防止して使用寿命を長くし、締
結用ボルトや締結用ボルトの係合するシリンダヘ
ツド部位の損壊を防止し得るとともに、締結用ボ
ルトの締結力の低下を防止し得て、安定したシー
ル効果を得ることができる。

また、締結用ボルトの締結時に、基板のビード
が高さを低減して圧縮変形された際に、基板の端
縁の端面が副板の折返し部に当接することがな
く、しかも、基板の端面がスペーサ部材近傍に位
置することによつて基板の端面と折返し部間に形
成される隙間を減少させ、ヒートスポツトの発生
を阻止させ、これにより、基板の端面の迫り出し
やヒートスポツトによる過熱によつて、折返し部
が損傷して補償部が破壊するのを防止し且つ補償
部の強度を大とし得て、金属ガスケツトの使用寿
命を長くし得る。

更に、補償部にスペーサ部材を設けたことによ
り、シール面圧を高くしてシール効果を大とし、
燃焼ガスのリークを確実に防止し得る。

更にまた、燃焼室周りにおいては、補償部とビ
ードが位置するビード部位とに二重にシールをす
ることができ、二次シール効果によつてシール性
を更に向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

第１〜３図はこの発明の実施例を示し、第１図
は金属ガスケツトの平面図、第２図は第１図の
−線による金属ガスケツトの要部拡大断面図、
第３図は金属ガスケツトを内燃機関の接合部に介
装して圧縮変形させたときの一部省略した要部断
面図である。 図において、２は金属ガスケツト、４は基板、
６は副板、８は燃焼室孔、１２は基板のビード、
１４はスペーサ部材、１６は補償部、２２は接合
部、そして２４は燃焼室である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 弾性金属板からなる基板に燃焼室孔とこの燃
   焼室孔を囲繞するビードを設けてシールを果す金
   属ガスケツトにおいて、前記基板に副板を積層し
   て設け、この副板の前記燃焼室孔側端縁を前記ビ
   ードの頂部側の前記基板面上で且つ前記燃焼室孔
   外方に折返して折返し部を形成し、前記副板の端
   縁を前記ビードに重合させずに前記基板の端縁面
   上に重合して設け、前記折返し部内において該折
   返し部の内周面に接して前記基板の厚さよりも大
   なる厚さのスペーサ部材を抱持させて所定厚さの
   補償部を構成し、前記ビードが高さを低減して圧
   縮変形された際に前記基板の端縁の端面が前記ス
   ペーサ部材近傍に位置すべく前記基板の端縁の端
   面を前記スペーサ部材から離間した位置に設けた
   ことを特徴とする金属ガスケツト。