JPH0237327Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ａ 考案の目的 （産業上の利用分野） この考案に係るメタルシリンダヘツドガスケツ
トは、内燃機関のシリンダヘツド下面とシリンダ
ブロツク上面との間に挾持し、両面間の気密およ
び液密を保持するのに利用する。

（従来の技術） 内燃機関のシリンダヘツド下面とシリンダブロ
ツク上面との間にはシリンダヘツドガスケツトを
挾持して、シリンダ内で発生する高圧の燃焼ガ
ス、或はシリンダブロツクとシリンダヘツドとの
間を流通する冷却水や潤滑油が外部に漏洩するの
を防止している。

第２図はこのようなシリンダヘツドガスケツト
１の１例を示している。このシリンダヘツドガス
ケツト１には、シリンダ頂部の開口形状に合せた
円形のボア孔２，２、シリンダヘツドをシリンダ
ブロツクに固定するためのボルトを挿通する小円
孔３，３、冷却水や潤滑油を通すための透孔４，
４が穿設されている。５は各ボア孔２，２の内周
縁部に装着した金属薄板製のグロメツトである。

このようなシリンダヘツドガスケツト１は、従
来はフツク付鉄板或は金網のような芯材の表裏面
に、アスベスト或は炭素等を主成分とするコンパ
ウンドを塗布したり、或はこれらのシートを貼着
して造つていた。ところが、近年ターボチヤージ
ヤの普及等により、エンジンの熱負荷が高くなる
傾向が強くなつて耐熱性の良好なメタルシリンダ
ヘツドガスケツトを使用する場合が多くなつた。
メタルシリンダヘツドガスケツトは、ボア孔等を
打ち抜き形成した亜鉛メツキ鋼板、ステンレス鋼
板等の金属薄板６〜１０を、第３図に示すように
３枚以上（第３図の例では５枚）重ね合せ、ボア
孔２の内周縁部に装着したグロメツト５と透孔４
の内周縁部に装着した鳩目１１とによりこれら複
数の金属薄板６〜１０を束ねて構成されている。
但し、グロメツト５や鳩目１１は、各金属薄板６
〜１０と別体とする代りに、表面又は裏面の金属
薄板６又は１０と一体とする場合も多い。

更に、中間の金属薄板７〜９のうちのいずれか
の金属薄板９には、第３図に示すように上記ボア
孔２と透孔４との周囲を囲む突条１２，１３を形
成し、メタルシリンダヘツドガスケツトをシリン
ダブロツク上面とシリンダヘツド下面との間で強
く挾持した場合にボア孔２と透孔４との周囲部分
の当接圧力が高くなり、この部分の気密、液密が
良好に保たれるようにしている。

（考案が解決しようとする問題点） ところが、上述のように構成され使用されるメ
タルシリンダヘツドガスケツトに於いては、次に
述べるような不都合を生じる。

即ち、シリンダヘツドガスケツト１に於いて
は、使用時にエンジンの振動により、各突条１
２，１３がシリンダブロツク上面とシリンダヘツ
ド下面との間で叩かれる。特に高度の気密性を要
求されるボア孔２の周囲部分は、グロメツト５の
板厚を、鳩目１１の板厚や、中間部でこのグロメ
ツト５と重畳しない金属薄板７，８の板厚よりも
厚くすることで、他の部分より厚くし、このボア
孔２の周囲部分の当接圧力を他の部分よりも十分
に大きくしているため、上述のようにシリンダブ
ロツク上面とシリンダヘツド下面との間で叩かれ
ても、この部分の気密性が損なわれることはない
が、透孔４の周囲は特に他の部分よりも厚くする
ことはせず、単に突条１３の弾性によつてこの透
孔４の周囲の液密保持を図つているため、この突
条１３がエンジンの振動に伴つて叩かれると、透
孔４の周囲の液密保持が不完全となつてしまう。

実開昭55−122558号公報には、３枚の金属薄板
を積層したメタルシリンダヘツドガスケツトが開
示されているが、上述の様な問題を解決する手段
は講じられてはいない。

本考案のメタルシリンダヘツドガスケツトは、
上述のような不都合を解消するものである。

ｂ 考案の構成 （問題を解決するための手段） 本考案のメタルヘツドガスケツトは、最低３枚
の金属薄板を積層することで構成されている。

上記３枚の金属薄板の内第一の金属薄板は、ボ
ア孔と透孔とを有し、ボア孔の周縁部を断面をＵ
字形に折り返すことによりグロメツトし、透孔の
周縁部を断面Ｕ字形に折り返すことにより鳩目と
している。

この第一の金属薄板に重ね合わされる第二、第
三の金属薄板の内、第二の金属薄板には前記ボア
孔と整合しその内径がグロメツトの折り返し部分
の外径よりも大きな第一の円孔と、前記透孔と整
合しその内径が鳩目の折り返し部分の外径よりも
小さな第二の円孔とが設けられている。

又、残りの第三の金属薄板には前記ボア孔と整
合し、その内径がグロメツトの折り返し部分の外
径よりも小さな第三の円孔と、前記透孔と整合し
その内径が鳩目の折り返し部分の外径よりも大き
な第四の円孔とを設けている。

上記第一〜第三の３枚の金属薄板の厚さは、第
一の金属薄板と第三の金属薄板との厚さを等し
く、第一、第三の両金属薄板の厚さを第二の金属
薄板の厚さよりも大きくなるように定めている。

更に、上記第三の金属薄板に設けた第三の円孔
と第四の円孔との周囲には、各円孔の全周を囲む
閉鎖環状の突条を形成して、上記各円孔の周囲部
分の押圧力が、突条の変形に伴なう弾性分だけ他
の部分の押圧力よりも大きくなる様にしている。

この様に各金属薄板の厚さを定めた為、３枚の
金属薄板を積層して成るメタルシリンダヘツドガ
スケツトをシリンダブロツクの上面とシリンダヘ
ツドの下面との間で強く押圧し、上記各突条を弾
性的に押し潰して、各金属薄板を隙間なく密接さ
せた場合に、ボア孔の周囲部分の厚さと、透孔の
周囲部分の厚さと、それ以外の部分の厚さとの関
係が、ボア孔周囲の厚さが最も大きく、他の部分
の厚さが等しくなる様な関係となる。

（作用） 上述の通り構成される本考案のメタルシリンダ
ヘツドガスケツトは、従来のシリンダヘツドガス
ケツトと同様に、エンジンのシリンダブロツク上
面とシリンダヘツド下面との間に挾持し、両面間
で強く押圧して使用するが、このシリンダヘツド
ガスケツトが受ける押圧力は、ボア孔の周囲部分
が板厚の大きい分だけ大きくなる。又、このボア
孔の周囲以外の部分は厚さが均一であるために、
シリンダブロツクの上面とシリンダヘツドの下面
とにほぼ均一に当接し、両面間の気密及び液密を
保持する。

特にボア孔と透孔との周囲部分の押圧力は、各
孔を囲む様にして設けた閉鎖環状の突条の弾性分
だけ他の部分に比べて大きくなる為、ボア孔と透
孔との周囲部分の気密及びの液密は十分に保持さ
れる。

（実施例） 次に、図示の実施例を説明しつつ、本考案を更
に詳しく説明する。

この実施例として挙げたメタルシリンダヘツド
ガスケツトは、第１図に示すように、４枚の金属
薄板１４〜１７を積層することで構成されてい
る。

第一の金属薄板１４に形成したボア孔２の周縁
部は断面Ｕ字形に折り返すことによりグロメツト
５を構成し、同じくこの第一の金属薄板１４に形
成した透孔４の周縁部は断面Ｕ字形に折り返すこ
とにより鳩目１１を構成している。残りの３枚の
金属薄板１５〜１７のそれぞれボア孔２、透孔４
に整合する部分には、それぞれ円孔１８〜２３が
穿設されており、上記グロメツト５と鳩目１１と
は、各円孔１８〜２３の内側で折り返して、４枚
の金属薄板１４〜１７を不離に結合している。

上記した残り３枚の金属薄板１５〜１７のボア
孔２に整合する部分に穿設した３個の円孔１８〜
２０のうち、グロメツト５の折り返し部分５ａと
当接する第四の金属薄板１７に穿設した第五の円
孔２０の内径R₁は、上記グロメツト５の折り返
し部分５ａの外径R₂よりも十分に小さく（R₁＜
R₂）形成して、上記折り返し部分５ａによつて、
第五の円孔２０の周縁部を抑えられるようにして
いる。中間に位置する残り２枚の金属薄板１５，
１６のボア孔２に整合する部分に穿設した第一、
第三の円孔１８，１９のうち、一方の金属薄板１
６に穿設した第三の円孔１９の内径は、前述した
第五の円孔２０の内径R₁とほぼ同じとしており、
他方の金属薄板１５に穿設した第一の円孔１８の
内径R₃は、前記したグロメツト５の折り返し部
分５ａの外径R₂よりも大きく（R₃＞R₂）して、
この折り返し部分５ａと第二の金属薄板１５とが
重畳しないようにしている。

又、前記した残り３枚の金属薄板１５〜１７の
透孔４に整合する部分に穿設した３個の円孔２１
〜２３のうち、鳩目１１の折り返し部分１１ａと
当接する第四の金属薄板１７に穿設した第六の円
孔２３の内径r₁は、上記鳩目１１の折り返し部分
１１ａの外径r₂よりも十分に小さく（r₁＜r₂）形
成して、上記折り返し部分１１ａによつて、第六
の円孔２３の周縁部を抑えられるようにしてい
る。中間に位置する残り２枚の金属薄板１５，１
６の透孔４に整合する部分に穿設した第二、第四
の円孔２１，２２のうち、一方の金属薄板１５に
穿設した第二の円孔２１の内径は、前述した第六
の円孔２３の内径r₁とほぼ同じとしており、他方
の金属薄板１６に穿設した第四の円孔２２の内径
r₃は、前記した鳩目１１の折り返し部分１１ａの
外径r₂よりも大きくして、第三の金属薄板１６と
上記折り返し部分１１ａとが重畳しないようにし
ている。

第一〜第四の金属薄板１４〜１７の板厚t₁〜t₄
のうち、第一の金属薄板１４の板厚t₁と第三の金
属薄板の板厚t₃とを等しく（t₁＝t₃）、第一、第三
の両金属薄板１４，１６の板厚t₁を第二の金属薄
板１５の板厚t₂よりも大きく（t₃＝t₁＞t₂）して
いる。第四の金属薄板１７の板厚t₄は、全面に亘
つて均一であれば特に定める必要はない。

上記第一〜第四の金属薄板１４〜１７の内、第
三の金属薄板１６に設けたボア孔２と整合する第
三の円孔１９の周囲にはこの第三の円孔１９の全
周を囲む閉鎖環状の突条１２を、透孔４と整合す
る第四の円孔２２の周囲にはこの第四の円孔２２
の全周を囲む閉鎖環状の突条１３を形成してい
る。

このため、４枚の金属薄板１４〜１７を積層し
て成るメタルシリンダヘツドガスケツトをシリン
ダブロツクの上面とシリンダヘツドの下面との間
で強く押圧し、第三の金属薄板１６の第三、第の
円孔１９，２２の周囲部分に形成した突条１２，
１３を弾性的に押し潰して、各金属薄板１４〜１
７を隙間なく密接させた場合には、ボア孔２の周
囲部分の厚さT₁（＝2t₁＋t₃＋t₄）と、透孔４の周
囲部分の厚さT₂（＝2t₁＋t₂＋t₄）と、それ以外の
部分の厚さT₃（＝t₁＋t₂＋t₃＋t₄）との関係は、ボ
ア孔周囲の厚さT₁が最も大きく、他の部分の厚
さT₂，T₃が等しく（T₁＞T₂＝T₃）なる。

但しこの状態に於いては、上記各突条１２，１
３は、弾性的に復元しようとして、この突条形成
部分の押圧力を突条を設けていない部分よりも各
突条の弾性的復元力分だけ大きくする。

上述の通り構成される本考案のメタルシリンダ
ヘツドガスケツト１をエンジンのシリンダブロツ
ク上面とシリンダヘツド下面との間に挾持し、両
面間で強く押圧た場合、このシリンダヘツドガス
ケツト１が受ける押圧力は、ボア孔２の周囲部分
が、この部分の板厚T₁が他の部分の板厚T₂，T₃
よりも大きい分だけ大きくなる。

又、ボア孔２の周囲以外の部分の板厚T₂，T₃
は均一である為、このボア孔２の周囲以外の部分
がシリンダブロツクの上面とシリンダヘツドの下
面とにほぼ均一に当接し、両面間の気密及び液密
を保持する。

更にボア孔２と透孔４との周囲部分の押圧力
は、前述した通り、突条１２，１３を設けた分だ
け他の部分に比べて大きくなる為、ボア孔２と透
孔４との周囲の気密及び液密も十分に保持され、
エンジンの振動に伴つてこの保持力が損なわれる
ことがない。

尚、本考案の対象となる様なメタルシリンダヘ
ツドガスケツトをアルミニウム製のシリンダヘツ
ドを有するエンジンのシリンダブロツク上面とシ
リンダヘツド下面との間に装着する場合、鳩目１
１やグロメツト５の折り返し部分が存在する面
（第１図の下面）をシリンダブロツクの上面に対
向させる事が好ましい。

これは、アルミニウム製シリンダヘツドを有す
るエンジンを運転した場合、鋳鉄製のシリンダブ
ロツクに比べてアルミニウム製のシリンダヘツド
の熱変形量が大きくなる為、上記折り返し部分を
シリンダヘツドの下面に当接させた場合に、エン
ジンの運転、停止の繰り返しに伴なうシリンダヘ
ツド下面と折り返し部分との摩擦によつてこの折
り返し部分が破損し、気密及び液密を保持出来な
くなる恐れが在る為である。

ｃ 考案の効果 本考案のメタルシリンダヘツドガスケツトは、
以上の述べた通り構成され作用するので、エンジ
ンのシリンダブロツク上面とシリンダヘツド下面
との間の気密及び液密を常に十分に保持すること
ができて、エンジンの性能を安定して発揮させる
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案のメタルシリンダヘツドガスケ
ツトを示す、第２図のＡ−Ａ断面に相当する図、
第２図はシリンダヘツドガスケツトの１例を示す
平面図、第３図は第２図のＡ−Ａ断面図である。 １：シリンダヘツドガスケツト、２：ボア孔、
３：小円孔、４：透孔、５：グロメツト、５ａ：
折り返し部分、６，７，８，９，１０：金属薄
板、１１：鳩目、１２，１３：突条、１４，１
５，１６，１７：金属薄板、１８，１９，２０，
２１，２２，２３：円孔。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ボア孔２と透孔４とを有し、ボア孔２の周縁部
   を断面をＵ字形に折り返すことによりグロメツト
   とし、透孔４の周縁部を断面Ｕ字形に折り返すこ
   とにより鳩目とする第一の金属薄板１４と、この
   第一の金属薄板１４に重ね合わされる第二、第三
   の金属薄板１５，１６とから成り、第二の金属薄
   板１５には前記ボア孔２と整合しその内径がグロ
   メツトの折り返し部分の外径よりも大きな第一の
   円孔１８と前記透孔４と整合しその内径が鳩目の
   折り返し部分の外径よりも小さな第二の円孔２１
   とを設け、第三の金属薄板１６には前記ボア孔２
   と整合し、その内径がグロメツトの折り返し部分
   の外径よりも小さな第三の円孔１９と、前記透孔
   ４と整合しその内径が鳩目の折り返し部分の外径
   よりも大きな第四の円孔２２とを設け、第一〜第
   三の３枚の金属薄板１４，１５，１６の厚さを、
   第一の金属薄板１４と第三の金属薄板１６との厚
   さを等しく、第一、第三の両金属薄板１４，１６
   の厚さを第二の金属薄板１５の厚さよりも大きく
   なるように定め、上記第三の金属板１６に設けた
   第三の円孔１９と第四の円孔２２との周囲には、
   各円孔１９，２２の全周を囲む閉鎖環状の突条を
   形成して成るメタルシリンダヘツドガスケツト。