JPH0227724Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の目的〕 本考案は、回転機器の軸封を行なうメカニカル
シールの抜け止め機構に関し、ことに回転側摺動
環の脱落防止を目的としてなされたものである。

第２図はメカニカルシールの一例を示すもの
で、符号１は機器のハウジング、２は該ハウジン
グ１に固着された内方フランジ部材、３はハウジ
ング１内周空間内にあつて内方フランジ部材２の
軸方向部２′外周に気密的に装着され、コイルス
プリング４およびノツクピン５によりリテーナ６
を介して押圧付勢および回り止めされてなる非回
転の固定側摺動環、７は外周に筒状のスリーブ８
が一体的にかつ気密的に外装固定され、ハウジン
グ１および内方フランジ部材２の内周に回転自在
に遊貫された回転軸、９は該回転軸７側に固着さ
れて一体的に回転し、外径部にフラツシング用の
インペラー１０が形成されてなるカラー、１１は
スリーブ８外周に気密的に嵌着されるとともに後
背面１１ａおよび外周面１１ｂをカラー９の段部
１２内壁によつて支承され、該段部１２に植設さ
れたドライブピン１３によつて回転トルクが伝達
され、回転軸７、スリーブ８およびカラー９と一
体となつて回転する回転側摺動環で、該回転側摺
動環１１と前記固定側摺動環３はそれぞれの対向
面においてコイルスプリング４の弾発力により互
いに密接摺動し、該摺動面をもつて機器内の流体
の密封をなすものである。しかしながらこの種の
メカニカルシールにおける回転側摺動環１１は、
後背側（図上右側）への脱落がカラー９によつて
阻止されているとはいえ、前面側（図上左側）へ
の脱落防止手段は施されておらず、したがつて被
装着機器がポンプ等のように圧力変動を伴なうも
のである場合には、ハウジング１内周が負圧にな
ると回転側摺動環１１が該負圧によつてカラー９
の段部１２内から抜き出されるごとく前面側へ移
動せんとするため、これらの部材間に介装された
Ｏリング１４，１５等による密封性が不安定とな
り、漏洩の一因となることが少なくない。また当
該メカニカルシールの装着作業の際にも、固定側
摺動環３等ハウジング１側部材の組付け以前の状
態においては回転側摺動環１１の前面側への脱落
阻止手段が皆無であるため、装着不良が起こり易
く、作業能率の向上にも支障を来たしていた。

本考案は、メカニカルシールに回転側摺動環の
抜け止め機構を付加することにより上記した問題
点を一掃せんとしてなされたものである。

〔考案の構成〕

この目的を達成するため、本考案は、回転軸の
スリーブに気密的に外挿固着され、後背部がカラ
ー等の部材によつて支承されて前記回転軸ととも
に回転する回転側摺動環の、固定側摺動環との摺
動面を有する前面内周端に、環状切欠を形成する
一方、スリーブ外周面に、前記環状切欠内に収容
されて該環状切欠前面に当接係合する環状突起を
形成した構造のメカニカルシールの抜け止め機構
を提供するものである。

すなわち本考案によると、回転側摺動環は前記
カラー等の部材とスリーブの環状突起に挟持され
て軸方向への変位を阻止される。そして前記環状
突起は、回転側摺動環の前面内周端に形成した環
状切欠内に収容されていて、固定側摺動環との摺
動面の内周側空間に突出するものではないので、
前記摺動面から内周空間への摺動熱の放出を妨げ
ることがなく、また、摺動面の摩耗に伴ない回転
側摺動環へ向けて進出して来る固定側摺動環との
干渉も起こらない。

〔実施例〕

つぎに、本考案の具体的な構成を、第１図の実
施例にもとづいて説明する。

同図は、既述した第２図に示すものと同型のメ
カニカルシールについて本考案を適用した例を示
しており、すなわち、回転側摺動環１１の前面部
内周に環状切欠１６を形設するとともに、スリー
ブ８の外周の回転側摺動環１１装着部における前
記環状切欠１６と対応する部位に環状突起１７を
突設形成したもので、カラー９の段部１２内にあ
つて後背側（図上右側）への脱落を阻止されてな
る回転側摺動環１１は、前記環状切欠１６と前記
環状突起１７との掛合により、該環状突起１７と
前記カラー９との間に挾持されるごとくなるた
め、ハウジング１の内周空間が負圧となつた場合
および当該メカニカルシールの装着作業の際にお
ける回転側摺動環１１の前面側（図上左側）への
移動脱落を防止することができる。

また、前記環状突起１７は環状切欠１６内に完
全に収容されており、固定側摺動環３と回転側摺
動環１１の摺動面内周空間に突出しないので、該
内周空間が十分な大きさに確保され、前記摺動面
で発生する摺動熱の大気中への放散を妨げない。
さらに、固定側摺動環３は、摺動面が摩耗するに
つれて図中右側、すなわち回転側摺動環１１へ向
けて変位するが、この場合、固定側摺動環３の内
周面が環状突起１７と干渉して作動性を阻害され
るようなこともない。なお、本実施例においては
スリーブに形成した突起を環状としたが、実用新
案登録請求の範囲はこれを限定するものではな
く、たとえば複数の突起を周方向等配突設した形
状としてもよいことは言うまでもない。

〔考案の効果〕

以上の説明で明らかなように、本考案によれ
ば、ハウジング内周空間の負圧時およびメカニカ
ルシールの組込み時等における回転側摺動環の軸
方向への移動脱落が確実に阻止されるため、シー
ル性の安定化に寄与するとともに組込み作業の能
率向上、装着ミスの防止も図ることができ、こと
に原子力プラント等の危険区域内における機器へ
の装着も簡易迅速に行なえるようになり、しかも
抜け止め用の環状突起が摺動面内周に突出しない
構造になるので、摺動熱が前記環状突起によつて
蓄積されてしまうことがなく、かつ固定側摺動環
との干渉が起こることもないものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示す縦断面図、第
２図は従来のメカニカルシールの一例を示す縦断
面図である。 １……ハウジング、３……固定側摺動環、７…
…回転軸、８……スリーブ、９……カラー、１１
……回転側摺動環、１２……段部、１６……環状
切欠、１７……環状突起。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 回転軸のスリーブに気密的に外挿固着され、後
   背部がカラー等の部材によつて支承されて前記回
   転軸とともに回転する回転側摺動環の、固定側摺
   動環との摺動面を有する前面内周端に、環状の切
   欠を形成する一方、スリーブ外周面に、前記切欠
   内に収容されて該切欠前面に当接係合する突起を
   形成したことを特徴とするメカニカルシールの抜
   け止め機構。