JPH021532Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 本考案は合成樹脂スラスト軸受、とくに四輪自
動車におけるストラツトスラスト型サスペンシヨ
ン（マクフアーソン式）に組込まれて好適な合成
樹脂スラスト軸受に関するものである。 （従来技術） 一般にストラツト型サスペンシヨンは主として
四輪自動車の前輪に用いられ、主軸と一体となつ
た外筒の中に油圧式シヨツクアブソーバを内蔵し
たストラツトアツセンブリにコイルバネを組合わ
せたサスペンシヨンである。上記サスペンシヨン
には、ステアリング操作によりストラツトアツセ
ンブリがコイルバネとともに回るさい、該アツセ
ンブリのピストンロツドが回るものと、該ピスト
ンロツドが回らない型式のものとがあるが、いず
れの型式においてもストラツトアツセンブリの回
動を円滑に許容するべく車体の取付部材とコイル
バネの上部バネ座シートとの間に軸受が必要とさ
れる。 そして、従来よりこの個所の軸受にはボールあ
るいはニードルを使用した転がり軸受あるいは合
成樹脂製すべり軸受が使用されている。 しかるに、従来使用されている合成樹脂すべり
軸受は、摺動面への塵埃等の侵入を防止する目的
としてスラスト軸受の外周面にゴム弾性体からな
るダストシールが装着されており、ダストシール
は回転する摺動面間に密に摺接させて配されるた
め、ステアリング操作時にはその摺動摩擦力が高
く操舵力を増大させるという欠点がある。 本考案者は上述した従来の欠点を解決するべ
く、先に、ゴム弾性体からなるダストシールを使
用することなく摺動面への塵埃等の侵入を防止
し、ステアリング操作時の操舵力の増大を防止で
きる合成樹脂スラスト軸受（以下先行技術とい
う）を提案した。 第４図は先行技術の合成樹脂スラスト軸受を示
す縦断面図である。 図において、該合成樹脂スラスト軸受１は、内
面に挿通孔を有する円筒部２と該円筒部の外周面
に該円筒部の一部を突出させて一体に形成された
幅広鍔部３と該鍔部外周縁に一体に形成された環
状突出部４と該環状突出部の外周面に形成された
係合部５とを備えた合成樹脂製の下部ケース６
と、円板状の平面部７と該平面部の中央に形成さ
れた円孔８と該平面部の外周縁に一体に形成され
た環状垂下部９と該垂下部の下端に形成された係
合フツク部１０とを備えた上部ケース１１と、該
下部ケースの円筒部２外径より大きい内径を有し
環状突出部４の内径より小さい外径を有する板状
の合成樹脂軸受片１２とからなり、該上部ケース
１１は環状垂下部９の係合フツク部１０を前記下
部ケース６の係合部５に弾性装着させて相対回転
可能に組合わされているとともに該弾性装着部に
密封部が形成されており、該上・下部ケース６，
１１内には合成樹脂軸受片１２が端面を該上部ケ
ース１１の平面部７下面と下部ケース６の幅広鍔
部３上面にそれぞれ摺接させて配されて構成され
ている。 （考案が解決しようとする問題点） 上述した先行技術は、従来の合成樹脂製すべり
軸受の欠点、特にステアリング操作時の操舵力の
増大を防止し、円滑な操舵力を長期間にわたつて
維持することができたが、塵埃等の侵入に対し、
弾性装着部に形成された密封部だけでは、不十分
で、当該密封部から塵埃等の侵入が起こり、摺動
特性に影響をもたらすことがその後の実験により
確認された。 本考案は、上述した先行技術の欠点を解決する
べくなされたもので、ゴム弾性体からなるダスト
シールを使用することなく摺動面への塵埃等の侵
入を防止し、ステアリング操作時の操舵力の増大
を防止できる合成樹脂スラスト軸受を得ることを
目的とするものである。 （問題点を解決するための手段） 上述した目的を達成するべく本考案は以下の技
術的手段、すなわち構成をとる。 合成樹脂製の下部ケースと上部ケースと該上・
下部ケース内に配される合成樹脂軸受片とからな
り、該下部ケースは内面に挿通孔を有する円筒部
と該円筒部の端部外周面に該円筒部の一部を突出
させて一体に形成された幅広鍔部と該鍔部外周縁
に一体に形成された環状突出部と該環状突出部の
外周面に形成された係合部と該鍔部の上面に該挿
通孔と同心状に形成され該円筒部の一部突出部と
で環状凹溝を画定する環状下リツプ部を備え、該
上部ケースは中央部に円孔を有する円板状部と該
円板状部の外周縁に一体に形成された環状垂下部
と該垂下部の下端に形成された係合フツク部と該
円板状部の下面に該円孔と同心状に形成された環
状上リツプ部を備え、該上部ケースは環状垂下部
の係合フツク部を前記下部ケースの係合部に弾性
装着させ、環状上リツプ部の端部を環状下リツプ
部と径方向に重畳させて相対回転可能に組合わさ
れているとともに該弾性装着部および上・下リツ
プ部にラビリンス作用による密封部が形成されて
おり、該上・下部ケース内には合成樹脂軸受片が
該鍔部上面の環状凹溝内に配されるとともに端面
を該上部ケースの円板状部下面と該環状凹溝の底
面にそれぞれ摺接させて配されていることを特徴
とする合成樹脂スラスト軸受である。 上述した構成において、上・下部ケースを構成
する合成樹脂は、耐摩耗性、耐衝撃性、耐クリー
プ性などの機械的特性に優れていることが必要で
あり、また上・下部ケース内に配される合成樹脂
軸受片にはとくに自己潤滑性を有するものが好ま
しく、例えばポリアセタール樹脂、ポリアミド樹
脂、ポリブチレンテレフタレート（PBT）など
のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピ
レンなどのポリオレフイン樹脂などが良好に使用
され、このほかポリカーボネート樹脂なども使用
し得る。 上・下部ケースには、上記軸受片と同様の合成
樹脂が使用されるが、とくに該軸受片に使用され
る合成樹脂と摩擦特性の良好な組合わせであつ
て、しかも比較的剛性の高い合成樹脂材料である
ことが望ましい。 その望ましい組合わせについて例示すると下表
のとおりである。

〔試験条件〕

スラスト荷重：350Kg、揺動角度：±35゜、揺動
速度：60cpm、潤滑：始動時シリコングリースを
摺動面に塗布 なお、摩耗量は、上記試験を100万サイクル行
つた後の軸受片の寸法変化量（mm）を示す。 また、軸受摺動面、即ち合成樹脂軸受片の上・
下面と該上・下面と摺接する上部ケースの円板状
部下面および下部ケースの環状凹溝底面は、該環
状上・下リツプ部の径方向重畳部および上・下部
ケースの弾性装着部にそれぞれ形成されたラビリ
ンス作用による密封部により、塵埃等の侵入から
保護される。 （実施例） 以下、本考案をその実施例を示す添付図面の第
１図乃至第２図によつて詳細に説明する。 ２０は合成樹脂スラスト軸受であり、該スラス
ト軸受２０は合成樹脂下部ケース２１と、合成樹
脂上部ケース２２と該上・下部ケース２２，２１
内に配される合成樹脂軸受片２３とからなる。 該下部ケース２１は、内面に挿通孔２４を有す
る円筒部２５と、該円筒部２５の端部外周面に該
円筒部の一部２５ａを突出させて一体に形成され
た幅広鍔部２６と、該鍔部２６の外周縁に一体に
形成された環状突出部２７と、該突出部２７の外
周面に形成された係合部２８と、該幅広鍔部２６
の上面に該挿通孔２４と同心円状に形成され、該
円筒部の一部２５ａとで環状凹溝２９を画定する
環状下リツプ部３０を備えている。 該係合部２８は該環状突出部２７の外周面から
該幅広鍔部２６の下面にかけて形成されたテーパ
ー面部２８ａと、該テーパー面部２８ａと連続し
該鍔部２６下面に連なる円筒面部２８ｂとからな
る。 該上部ケース２２は、中央部に前記下部ケース
２１の挿通孔２４と同径の円孔３１を有する円板
状部３２と、該円板状部３２の外周縁に一体に形
成された環状垂下部３３と、該垂下部３３の下端
に形成された係合フツク部３４と、該円板状部３
２の下面に該円孔３１と同心状に形成され、前記
下部ケース２１の鍔部２６上面に形成された環状
下リツプ部３０より大きな内径をもつた環状上リ
ツプ部３５を備えている。該係合フツク部３４は
前記下部ケース２１の係合部２８を構成するテー
パー面部２８ａに対応するテーパー面部３４ａ
と、該テーパー面部３４ａと連続し該係合部２８
の円筒面部２８ｂに対応する円筒面部３４ｂとか
らなる。該上部ケース２２は環状垂下部３３の係
合フツク部３４を該下部ケース２１の係合部２８
に弾性装着させ、環状上リツプ部３５の端部を下
部ケース２１の環状下リツプ部３０と径方向に重
畳させて相対回転可能に組合わされており、該弾
性装着部および上・下リツプ部においてラビリン
ス作用による密封部が形成されている。 合成樹脂軸受片２３は前記下部ケース２１の円
筒突出部２５ａの外径より大きい内径を有する内
孔２３ａと、該下部ケース２１の環状下リツプ部
３０の内径より小さい外径を有する円板状からな
る。 該軸受片２３の両端面には該内孔２３ａから外
周面にかけて放射状に複数個の凹溝２３ｂが周方
向に30度の位相差をもつてそれぞれ形成されてお
り、該凹溝２３ｂはグリースなどの潤滑油の溜ま
り部となる。該軸受片２３は下部ケース２１の該
鍔部２６上面に形成された環状凹溝２９内に位置
せしめられるとともに、両端面をそれぞれ上部ケ
ース２２の円板状部３２下面および該下部ケース
２１の環状凹溝２９の底面に摺接させて上・下部
ケース２２，２１内に配されている。 該軸受片２３の上・下面と該上・下面と摺接す
る上部ケース２２の円板状部３２下面および下部
ケース２１の環状凹溝２９とで構成される軸受摺
動面は、上・下部ケース２２，２１の弾性装着部
および上・下部ケースの環状上・下リツプ部３
５，３０の重畳部に形成されたラビリンス作用に
よる密封部により塵埃等の侵入から保護される。 第３図は上述した構成からなる合成樹脂スラス
ト軸受をストラツトアツセンブリＡに適用した例
を示すものである。 すなわち、下部ケース２１の円筒部２５の挿通
孔２４と上部ケース２２の円板状部３２の円孔３
１をストラツト３６のピストンロツド３７の外周
面に挿通し、該下部ケース２１の円筒部２５外周
面を上部バネ座シート３８の孔に嵌合するととも
に該下部ケースの鍔部２６下面を該シート３８の
平面部に当接させ、上部ケース２２の円板状部３
２上面を車体側取付部材３９に当接させて配置す
るものである。 （効果） 上述した構成からなる本考案の合成樹脂スラス
ト軸受は以下に述べる特有の効果を有する。 上部ケースの係合部と下部ケースの係合フツ
ク部との弾性装着部および環状上・下リツプ部
にラビリンス作用による二重の密封部が形成さ
れ、該密封部によつて軸受摺動面は保護されて
いるので、軸受摺動面への塵埃等の侵入は完全
に防止されるばかりでなく従来のゴム弾性体か
らなるダストシールは不要で、ダストシールに
起因するステアリング操作時の操舵力の増大は
なく、長期間にわたつて円滑なステアリング操
作を行うことができる。 摺動面は自己潤滑性に優れた合成樹脂同志の
組合わせによつて形成されているので摩擦係数
が小さく、安定した操舵力が長期間にわたつて
維持される。 上部ケースと下部ケースとは弾性装着により
組合わされるので、その作業が極めて簡単であ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の合成樹脂スラスト軸受を示す
縦断面図、第２図は合成樹脂軸受片の平面図、第
３図は該軸受をストラツトアツセンブリに適用し
た例を示す縦断面図、第４図は従来の合成樹脂ス
ラスト軸受を示す縦断面図である。 ２１……合成樹脂下部ケース、２２……合成樹
脂上部ケース、２３……合成樹脂軸受片、２５…
…円筒部、２６……幅広鍔部、２７……環状突出
部、２８……係合部、２９……環状凹溝、３０…
…環状下リツプ部、３１……円孔、３２……円板
状部、３３……環状垂下部、３４……係合フツク
部、３５……環状上リツプ部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 合成樹脂製の下部ケース２１と上部ケース２２
   と該上・下部ケース内に配される合成樹脂軸受片
   ２３とからなり、該下部ケース２１は内面に挿通
   孔２４を有する円筒部２５と該円筒部の端部外周
   面に該円筒部の一部２５ａを突出させて一体に形
   成された幅広鍔部２６と該鍔部外周縁に一体に形
   成された環状突出部２７と該環状突出部の外周面
   に形成された係合部２８と該鍔部の上面に該挿通
   孔と同心状に形成され該円筒部の一部突出部とで
   環状凹溝２９を画定する環状下リツプ部３０を備
   え、該上部ケース２２は中央部に円孔３１を有す
   る円板状部３２と該円板状部の外周縁に一体に形
   成された環状垂下部３３と該垂下部の下端に形成
   された係合フツク部３４と該円板状部の下面に該
   円孔と同心状に形成された環状上リツプ部３５を
   備え、該上部ケース２２は環状垂下部３３の係合
   フツク部３４を前記下部ケース２１の係合部２８
   に弾性装着させ、環状上リツプ部の端部を環状下
   リツプ部と径方向に重畳させて相対回転可能に組
   合わされているとともに該弾性装着部および上・
   下リツプ部にラビリンス作用による密封部が形成
   されており、該上・下部ケース内には合成樹脂軸
   受片２３が該鍔部上面の環状凹溝２９内に配され
   るとともに端面を該上部ケース２２の円板状部３
   ２下面と該環状凹溝２９の底面にそれぞれ摺接さ
   せて配されていることを特徴とする合成樹脂スラ
   スト軸受。