JPH0328183Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 本考案は合成樹脂スラスト軸受、とくに四輪自
動車におけるストラツトスラスト型サスペンシヨ
ン（マクフアーソン式）に組込まれて好適な合成
樹脂スラスト軸受に関するものである。 （従来技術） 一般にストラツト型サスペンシヨンは主として
四輪自動車の前輪に用いられ、主軸と一体となつ
た外筒の中に油圧式シヨツクアブソーバを内蔵し
たストラツトアツセンブリにコイルバネを組合わ
せたサスペンシヨンである。上記サスペンシヨン
には、ステアリング操作によりストラツトアツセ
ンブリがコイルバネとともに回るさい、該アツセ
ンブリのピストンロツドが回るものと、該ピスト
ンロツドが回らない型式のものとがあるが、いず
れの型式においてもストラツトアツセンブリの回
動を円滑に許容するべく車体の取付部材とコイル
バネの上部バネ座シートとの間に軸受が必要とさ
れる。 そして、従来よりこの個所の軸受にはボールあ
るいはニードルを使用した転がり軸受あるいは合
成樹脂製すべり軸受が使用されている。 しかるに従来使用されている合成樹脂製すべり
軸受は、摺動面への塵埃等の侵入を防止する目的
としてスラスト軸受の外周面にゴム弾性体からな
るダストシールが装着されており、ダストシール
は回転する摺動面間に密に摺接させて配されるた
め、ステアリング操作時にはその摺動摩擦力が高
く操舵力を増大させるという欠点がある。 本考案者は上述した従来の欠点を解決するべ
く、先に、ゴム弾性体からなるダストシールを使
用することなく摺動面への塵埃等の侵入を防止
し、ステアリング操作時の操舵力の増大を防止で
きる合成樹脂スラスト軸受（以下先行技術とい
う）を提案した。 第７図は先行技術の合成樹脂スラスト軸受を示
す縦断面図である。 図において、該合成樹脂スラスト軸受１は、内
面に挿通孔を有する円筒部２と該円筒部の外周面
に該円筒部の一部を突出させて一体に形成された
幅広鍔部３と該鍔部外周縁に一体に形成された環
状突出部４と該環状突出部の外周面に形成された
係合部５とを備えた合成樹脂製ケース６と、円筒
部７と該円筒部の内周面上端に形成された鍔部８
と該円筒部の外周面上端に形成された平面部９と
該平面部の周縁部に形成された環状垂下部１０と
該垂下部の下端に形成された係合フツク部１１と
を備えた合成樹脂軸受体１２とからなり、該軸受
体１２は円筒部７下面を前記ケース６の幅広鍔部
３上面に摺接させ、環状垂下部１０の係合フツク
部１１をケース６の係合部５に弾性装着させて相
対回転可能に組合わされているとともに該弾性装
着部に密封部が形成されて構成されている。 （考案が解決しようとする問題点） 上述した先行技術は、従来の合成樹脂製すべり
軸受の欠点、特にステアリング操作時の操舵力の
増大を防止することができ、円滑な操舵力を長期
間にわたつて維持することができたが、塵埃等の
侵入に対し、弾性装着部に形成された密封部だけ
では不十分で、当該密封部および軸受内周面側か
ら塵埃等の侵入が起こり、摺動特性に影響をもた
らすことがその後の実験により確認された。 本考案は、上述した先行技術の欠点を解決する
べくなされたもので、ゴム弾性体からなるダスト
シールを使用することなく摺動面への塵埃等の侵
入を防止し、ステアリング操作時の操舵力の増大
を防止できる合成樹脂スラスト軸受を得ることを
目的とするものである。 （問題点を解決するための手段） 上述した目的を達成するべく本考案は以下の技
術的手段、すなわち構成をとる。 合成樹脂製ケースと該ケースに摺接嵌合される
合成樹脂軸受体とからなり、該ケースは内面に挿
通孔を有する円筒部と該円筒部の上端面に該挿通
孔と段部をもつて拡径する内径を有する第１の環
状下リツプ部と該円筒部の端部外周面に一体に形
成された幅広鍔部と該鍔部外周縁に一体に形成さ
れた環状突出部と該環状突出部の外周面に形成さ
れた係合部と該鍔部の上面に該挿通孔と同心状に
形成され該第１の環状下リツプ部とで環状凹溝を
画定する第２の環状下リツプ部を備え、該軸受体
は円筒軸受部と該円筒軸受部の内周面上端に一体
に形成された環状鍔部と該環状鍔部の周縁部に一
体に形成された下方に延びる第１の環状上リツプ
部と該円筒軸受部の外周面上端に一体に形成され
た平面部と該平面部の周縁に一体に形成された環
状垂下部と該垂下部の下端に形成された係合フツ
ク部と該平面部の下面に該円筒軸受部と同心状に
形成された第２の環状上リツプ部を備え、該軸受
体は環状垂下部の係合フツク部を前記ケースの係
合部に弾性装着させ、第１・第２の環状上リツプ
部の端部をそれぞれケースの第１・第２の環状下
リツプ部と径方向に重畳させて相対回転可能に組
合わされているとともに該弾性装着部および第
１・第２の環状上・下リツプ部にそれぞれラビリ
ンス作用による密封部が形成されており、該ケー
ス内には軸受体の円筒軸受部が下面を環状凹溝の
底面に摺接させて配されていることを特徴とする
合成樹脂スラスト軸受である。 上述した構成において、ケースを構成する合成
樹脂は、耐摩耗性、耐衝撃性、耐クリープ性など
の機械的特性に優れていることが必要であり、ま
たケースに摺接嵌合される軸受体にはとくに自己
潤滑性を有するものが好ましく、例えばポリアセ
タール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレ
フタレート（PBT）などのポリエステル樹脂、
ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフ
イン樹脂などが良好に使用され、このほかポリカ
ーボネート樹脂なども使用し得る。 ケースには、上記軸受体と同様の合成樹脂が使
用されるが、とくに該軸受体に使用される合成樹
脂と摩擦特性の良好な組合わせであつて、しかも
比較的剛性の高い合成樹脂材料であることが望ま
しい。 その望ましい組合わせについて例示すると次表
のとおりである。

〔試験条件〕

スラスト荷重：350Kg、揺動角度：±35゜ 揺動速度：60cpm、 潤滑：始動時シリコングリースを摺動面に塗布 なお、摩耗量は、上記試験を100万サイクル行
つた後の軸受片の寸法変化量（mm）を示す。 また、軸受摺動面、即ち軸受体の円筒部下面
と、該下面と摺接するケースの環状凹溝底面は、
弾性装着部および第１・第２の環状下リツプ部と
第１・第２の環状上リツプ部との重畳部にそれぞ
れ形成されたラビリンス作用による密封部によ
り、軸受内・外周面からの塵埃等の侵入から保護
される。 （実施例） 以下、本考案をその実施例を示す添付図面の第
１図乃至第４図によつて詳細に説明する。 ２０は合成樹脂スラスト軸受であり、該スラス
ト軸受２０は合成樹脂製ケース２１と該ケース２
１に摺接嵌合される合成樹脂軸受体２２とからな
る。 該ケース２１は、内面に挿通孔２３を有する円
筒部２４と、該円筒部２４の上端面に該挿通孔２
３と段部をもつて拡径する内径を有する第１の環
状下リツプ部２５と、該円筒部２４の端部外周面
に一体に形成された幅広鍔部２６と、該鍔部２６
の外周縁に一体に形成された環状突出部２７と、
該突出部２７の外周面に形成された係合部２８
と、該幅広鍔部２６の上面に該挿通孔２３と同心
状に形成され、第１の環状下リツプ部２５とで環
状凹溝２９を画定する第２の環状下リツプ部３０
を備えている。 該係合部２８は該環状突出部２７の外周面から
該幅広鍔部２６の下面にかけて形成されたテーパ
ー面部２８ａと該テーパー面部２８ａと連続し該
鍔部２６下面に連なる円筒面部２８ｂとからな
る。 該合成樹脂軸受体２２は、円筒軸受部３１と、
該円筒軸受部３１の内周面上端に一体に形成され
た環状鍔部３２と、該鍔部３２の内周縁に連続し
て下方に突出し、前記ケース２１の挿通孔２３と
同径の内径をもち、前記第１の環状下リツプ部２
５の内径より小さい外径をもつ第１の環状上リツ
プ部３３と、該円筒軸受部３１の外周面上端に一
体に形成された平面部３４と、該平面部３４の外
周縁に一体に形成された環状垂下部３５と、該垂
下部３５の下端に形成された係合フツク部３６
と、該平面部３４の下面に該円筒軸受部３１と同
心状に形成され、前記ケース２１の鍔部２６上面
に形成された第２の環状下リツプ部３０の外径よ
り大きな内径をもつた第２の環状上リツプ部３７
を備えている。 該係合フツク部３６は前記ケース２１の係合部
２８を構成するテーパー面部２８ａに対応するテ
ーパー面部３６ａと該テーパー面部３６ａと連続
し該係合部２８の円筒面部２８ｂに対応する円筒
面部３６ｂとからなる。 該軸受体２２は環状垂下部３５の係合フツク部
３６を該ケース２１の係合部２８に弾性装着さ
せ、第１・第２の環状上リツプ部３３，３７の端
部をそれぞれ合成樹脂製ケース２１の第１・第２
の環状下リツプ部２５，３０と径方向に重畳させ
て相対回転可能に組合わされており、該弾性装着
部および第１・第２の環状上・下リツプ部におい
てラビリンス作用による密封部が形成されてい
る。 合成樹脂軸受体２２の円筒軸受部３１の上面に
は放射状に複数個の中空部３８が形成されてお
り、該中空部３８により該軸受体２２はその肉厚
が可及的に均一に形成されている。 該軸受体２２の下面には該内周面から外周面に
かけて放射状に複数個の凹溝３９が周方向に形成
されており、該凹溝３９はグリースなどの潤滑油
の溜まり部となる。該軸受体２２は円筒軸受部３
１下面をケース２１の幅広鍔部２６上面に摺接さ
せてケース２１の環状凹溝２９内に配置されてい
る。 該軸受体２２の円筒軸受部３１下面と該下面と
摺接するケース２１の環状凹溝２９底面とで構成
される軸受摺動面は、弾性装着部、第１の環状
上・下リツプ部３３，２５の重畳部および第２の
環状上・下リツプ部３７，３０の重畳部にそれぞ
れ形成されたラビリンス作用による密封部によ
り、該スラスト軸受２０の内・外周面からの塵埃
等の侵入から保護される。 第５図は本考案の他の実施例を示す縦断面図で
ある。 すなわち、この実施例は上述した実施例の合成
樹脂製ケース２１に形成された第１の環状下リツ
プ部２５内周面に係合部４０を形成し、合成樹脂
軸受体２２の第１の環状上リツプ部３３の外周面
に係合フツク部４１を形成したもので、両者を弾
性装着させて相対回転可能に組合わせたものであ
る。 第６図は上述した第１の実施例からなる合成樹
脂スラスト軸受２０をストラツトアツセンブリＡ
に適用した例を示すものである。 すなわち、ケース２１の円筒部２４の挿通孔２
３をストラツト４２のピストンロツド４３の外周
面に挿通し、該ケース２１の円筒部２４外周面を
上部バネ座シート４４の孔に嵌合するとともに該
ケースの幅広鍔部２６下面を該シート４４の平面
部に当接させ、合成樹脂軸受体２２の上面を車体
側取付部材４５に当接させて配置するものであ
る。 （効果） 上述した構成からなる本考案の合成樹脂スラス
ト軸受は以下に述べる特有の効果を有する。 合成樹脂製ケースの係合部と合成樹脂軸受体
の係合フツク部との弾性装着部、第１の環状
上・下リツプ部の重畳部および第２の環状上・
下リツプ部の重畳部に、それぞれラビリンス作
用による密封部が形成され、該密封部によつて
軸受摺動面はその内・外周面から保護されてい
るので、軸受摺動面への塵埃等の侵入は完全に
防止されるばかりでなく従来のゴム弾性体から
なるダストシールは不要で、ダストシールに起
因するステアリング操作時の操舵力の増大はな
く、長期間にわたつて円滑なステアリング操作
を行うことができる。 摺動面は自己潤滑性に優れた合成樹脂同志の
組合わせによつて形成されているので摩擦係数
が小さく、安定した操舵力が長期間にわたつて
維持される。 ケースと軸受体とは弾性装着により組合わさ
れるので、製作作業が極めて簡単である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の合成樹脂スラスト軸受を示す
縦断面図、第２図は合成樹脂軸受体の平面図、第
３図は合成樹脂軸受体の底面図、第４図はケース
と軸受体の弾性装着部を示す部分拡大断面図、第
５図は本考案の他の実施例を示す縦断面図、第６
図は該軸受をストラツトアツセンブリに適用した
例を示す縦断面図、第７図は先行技術の合成樹脂
スラスト軸受を示す縦断面図である。 ２１……合成樹脂製ケース、２２……合成樹脂
軸受体、２４……円筒部、２５……第１の環状下
リツプ部、２６……幅広鍔部、２７……環状突出
部、２８……係合部、２９……環状凹溝、３０…
…第２の環状下リツプ部、３１……円筒軸受部、
３２……環状鍔部、３３……第１の環状上リツプ
部、３４……平面部、３５……環状垂下部、３６
……係合フツク部、３７……第２の環状上リツプ
部。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 合成樹脂製ケース２１と該ケースに摺接嵌合
   される合成樹脂軸受体２２とからなり、該ケー
   ス２１は内面に挿通孔２３を有する円筒部２４
   と該円筒部の上端面に該挿通孔と段部をもつて
   拡径する内径を有する第１の環状下リツプ部２
   ５と該円筒部の端部外周面に一体に形成された
   幅広鍔部２６と該鍔部外周縁に一体に形成され
   た環状突出部２７と該環状突出部の外周面に形
   成された係合部２８と該鍔部の上面に該挿通孔
   と同心状に形成され該第１の環状下リツプ部と
   で環状凹溝２９を画定する第２の環状下リツプ
   部３０を備え、該軸受体２２は円筒軸受部３１
   と該円筒軸受部の内周面上端に一体に形成され
   た環状鍔部３２と該環状鍔部の周縁部に一体に
   形成された下方に延びる第１の環状上リツプ部
   ３３と該円筒軸受部の外周面上端に一体に形成
   された平面部３４と該平面部の周縁に一体に形
   成された環状垂下部３５と該垂下部の下端に形
   成された係合フツク部３６と該平面部３４の下
   面に該円筒軸受部と同心状に形成された第２の
   環状上リツプ部３７を備え、該軸受体２２は環
   状垂下部３５の係合フツク部３６を前記ケース
   ２１の係合部２８に弾性装着させ、第１・第２
   の環状上リツプ部の端部をそれぞれケースの第
   １・第２の環状下リツプ部と径方向に重畳させ
   て相対回転可能に組合わされているとともに該
   弾性装着部および第１・第２の環状上・下リツ
   プ部にそれぞれラビリンス作用による密封部が
   形成されており、該ケース内には軸受体の円筒
   軸受部３１が下面を環状凹溝２９の底面に摺接
   させて配されていることを特徴とする合成樹脂
   スラスト軸受。 ２ 軸受体の第１の環状上リツプ部３３の端部に
   は係合フツク部４１が、ケースの第１の環状下
   リツプ部２５の内周面には係合部４０が形成さ
   れており、両者は弾性装着されて相対回転可能
   に組合わされている実用新案登録請求の範囲第
   １項に記載の合成樹脂スラスト軸受。