JPH0153842B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 本発明は、切り花用延命液及び開花液に関す
る。詳しくは、延命液及び開花液の濃厚液調製
後、沈殿物を生ぜず長期にわたり安定した状態で
効力を維持する切り花用延命液及び開花液に関す
る。 （従来の技術） 植物体より切り取られた花、すなわち、切り花
に対して、切り花をいける水中や切り口での病原
菌の増殖を抑制し、切り花自身から発生して切り
花の過熱、追熱、老化等を促進するエチレンガス
の生合成を抑制し、気孔からの水分の蒸散量を少
なくし、あるいは栄養剤を補給する等の処置を施
すことにより、切り花の寿命を有意に伸ばし得る
こと（延命効果）が従来より知られている。 銀化合物あるいは銀イオンは、その殺菌作用に
より、かつ、植物体内でのエチレン生合成の抑制
により、切り花に対して延命効果を有することが
知られ、従来より切り花の延命液及び開花液の多
くに含有されてきた。特に、ビス（チオスルフア
ト）銀酸ナトリウム等のチオスルフアト銀酸錯塩
は、溶液中で銀が負の電荷を帯びた錯イオン、例
えば〔Ag（S₂O₃）₂〕^3-、を形成しているため、植
物体の導管内をすみやかに移行し、植物体のエチ
レン生合成を効果的に抑制するとともに、植物体
への有害な作用も少ないことから、近年注目され
ている延命剤である。 このビス（チオスルフアト）銀酸ナトリウム等
のチオスルフアト銀酸錯塩溶液は、通常、硝酸銀
及びチオ硫酸ナトリウム等の濃厚溶液、例えば
各々100mM、をつくり、褐色ビンに入れて冷暗
所に保存し、使用直前に混合及び希釈して調製さ
れ使われている。しかしながら、こうして調製さ
れたチオスルフアト銀酸錯塩溶液は、放置してお
くと硫化銀の黒色沈殿物を生じ、切り花用延命液
及び開花液としての効力が激減する。特に、夏期
においては沈殿物の生成が著しく、数日乃至10数
日で黒色沈殿物が生じる。このため、一旦調製し
た切り花用延命液及び開花液は、通常一週間以内
に使用し、その期間を経過したものは捨てる必要
がある。 （発明の目的） 本発明は、上記した従来のチオスルフアト銀酸
錯塩溶液の放置した際の不安定さに鑑み、チオス
ルフアト銀酸錯塩溶液調製後も、長期にわたり沈
殿物をつくらず、安定した効力を維持できる切り
花用延命液及び開花液を提供することを目的とす
る。 （発明の構成） 本発明の切り花用延命液及び開花液は、水溶性
の銀塩100重量部について、水溶性のチオ硫酸塩
400〜1000重量部並びに亜硫酸塩及び亜硫酸水素
塩から選ばれる少なくとも１種10〜10000重量部
を含有させたことを特徴とする。 本発明の切り花用延命液及び開花液に使用され
る銀塩及びチオ硫酸塩は、水溶液中で両化合物に
よりチオスルフアト銀酸錯イオンを形成する水溶
性の塩であれば特に制限されないが、通常、銀塩
としては硝酸銀或いは酢酸銀が、チオ硫酸塩とし
てはチオ硫酸ナトリウムあるいはチオ硫酸アンモ
ニウムが好ましく使われる。 また、本発明の切り花用延命液及び開花液に含
有される亜硫酸塩及び亜硫酸水素塩は、水に可溶
のものであれば特に制限されず、例えば、亜硫酸
塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム
あるいは亜硫酸アンモニウム等のアルカリ金属塩
及びアンモニウム塩が挙げられ、亜硫酸水素塩と
しては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリ
ウム、メタ亜硫酸カリウムあるいは亜硫酸水素ア
ンモニウム等のアルカリ金属塩及びアンモニウム
塩が挙げられる。 次に、本発明の切り花用延命液及び開花液の好
ましい調製法を以下に示す。水溶性の銀塩100重
量部に対して、水溶性のチオ硫酸塩400〜1000重
量部並びに亜硫酸塩及び亜硫酸水素塩の単独又は
混合物10〜10000重量部を塩素を含まない水に溶
解し、十分撹拌しながら混合して、適宜の濃度の
保存液とする。なお、上記チオ硫酸塩にチオ硫酸
ナトリウムを用いるときは、その水和物
Na₂S₂O₃・5H₂Oによる重量部とする。上記した
各塩は、各々を適当な濃度の水溶液として混合す
るが、銀塩水溶液とチオ硫酸塩水溶液を混合する
際には、チオ硫酸塩水溶液中へ銀塩水溶液を、よ
く撹拌しながら加えるようにするのが好ましい。
また、溶解、希釈及び混合の操作に際しては、金
属製の容器を使用しないことが好ましい。 また、切り花用延命液及び開花液の液性として
は一般に酸性が好ましいが、本発明の切り花用延
命液及び開花液の液性は、主として亜硫酸ナトリ
ウムあるいは亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩
及び亜硫酸水素塩の配合量に依存し、それらの配
合により塩基性が強くなるときは、液性を調製す
るため、必要に応じ、無機酸、有機酸あるいはそ
れらの塩を適宜量配合する。 更に、本発明の切り花用延命液及び開花液は、
必要に応じて、導管の閉鎖を少なくし、気孔の閉
鎖を多くするとともに殺菌効果を有する８−ハイ
ドロキシキノリンのクエン酸塩（８−HQC）あ
るいは硫酸塩（８−HQS）等、及び蔗糖のよう
な栄養剤等を適宜含有してよいのはもちろんであ
る。 このようにして、調製された本発明の切り花用
延命液及び開花液の使用法は、通常用いられる方
法でよく、切り花用延命液として使用するとき
は、例えば硝酸銀を銀塩として用いる場合には、
その濃度が50〜500ppmになるように調製し、切
り花用開花液として使用するときは、その約10分
の１程度の濃度に希釈して、各々数十分から24時
間程度切り花を処理する。また、本発明の切り花
用延命液及び開花液は、切り花の延命液及び開花
液として使用されるほか、鉢物にも適用でき、成
長の適当な時期に適宜量の散布により、開花率を
高めたり、落花及び落らいを抑制する等に効果が
ある。 （発明の効果） 本発明の切り花用延命液及び開花液は、有効成
分であるチオスルフアト銀酸錯塩の溶液に亜硫酸
塩又は／及び亜硫酸水素塩を溶解させて、溶液を
安定化させるため、従来の不安定なチオスルフア
ト銀酸錯塩溶液による延命液及び開花液とは異な
り、使用直前に混合して調製する必要がなく、一
旦調製した溶液は長期間にわたり沈殿物を生ぜ
ず、その効果を持続させることができる。従つ
て、本発明の切り花用延命液及び開花液は、長期
間の保存が可能であり、使用の際はその目的に応
じて適宜希釈するだけで、切り花等の延命液及び
開花液として用いることができる。 （実施例） 以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施
例に限定されものではない。 次表に示す各化合物を各々、水又は酸性水溶液
（８−HQの場合。）に溶解し、よく撹拌しな

【表】

【表】 (注) 沈殿物の生成量 ◎：沈殿物なし。○：痕跡量
の沈殿物が生成。△：多量の沈殿物が生成。
×：極めて多量の沈殿物が生成。
がら混合して本発明の切り花用延命液及び開花液
の保存液（実施例１乃至16）を得た。表中の値は
保存液中の各成分の調製後の濃度（ppm）を表
す。なお、クエン酸及び亜硫酸アンモニウムに
は、１水塩の結晶を用いた。 比較のために、各実施例と同じ種類及び濃度の
銀塩及びチオ硫酸塩を含有し、他の成分は含有し
ない水溶液を調製して、各実施例に対応する比較
例（比較例１乃至16）とした。ただし、比較例11
においては、調製後の液がアルカリ性となつたた
め、濃硫酸（97％）を500ppmになるように加え
て液を酸性とした。 上記実施例及び比較例の各水溶液について、放
置した際の安定性試験を行つた。試験は加速試験
とするため、各試料を、60℃で24時間放置し、沈
殿物の生成量を比較した。 結果を表に示す。本発明の切り花用延命液及び
開花液によれば、いずれも長時間にわたつて実質
的に沈殿物を生じなかつたが、各比較例の溶液は
いずれも安定で、多量の黒色沈殿物が生じた。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 硝酸銀又は酢酸銀100重量部について、チオ
   硫酸アルカリ金属塩又はチオ硫酸アンモニウム
   400〜1000重量部並びに水溶性亜硫酸アルカリ金
   属塩、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アルカリ
   金属塩及び亜硫酸水素アンモニウムから選ばれる
   少なくとも１種10〜10000重量部を含有させたこ
   とを特徴とする切り花用延命液及び開花液。