JP3826968B2 - 液状カルシウム肥料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、植物に葉面散布でカルシウムを補給するための液状カルシウム肥料に関する。
【0002】
【従来の技術】
カルシウムは植物体内で移動しにくいために、トマトの尻腐れをはじめ、根から遠い部分での欠乏症が報告されている。その予防対策として、塩化カルシウムや硝酸カルシウム等のカルシウム肥料を水溶液とし、植物の葉面や果面に散布する方法が行われてきた。
【0003】
一方、塩化カルシウムや硝酸カルシウムは植物、特にリンゴなどで薬害を起こしやすかった。そこで、薬害発生の起きやすい場合には、塩素イオンや硝酸イオンのないギ酸カルシウム等の有機酸カルシウムが使用されはじめてきた。
【0004】
例えば、特開昭59−137384号公報には、ギ酸カルシウムを有効成分とする植物の葉面散布肥料が開示されている。
【0005】
特開昭60−260487号公報には、酢酸カルシウムを有効成分とする植物の葉面散布肥料が開示されている。
【0006】
また、特開平4−202080号公報には、プロピオン酸カルシウムを有効成分とする植物の葉面散布肥料が開示されている。
【0007】
さらに、特開平3−97686号公報には、カルシウム及びグルコン酸又はグルコン酸を生成する化合物を含有してなる液の安定性に優れた肥料又は培養液が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
最近、塩化カルシウムのような薬害がなく、溶解と小分け計量のしやすい液状カルシウムの葉面散布肥料が要望されている。
【0009】
表1に各種カルシウム塩のカルシウム含量、飽和濃度、飽和液のカルシウム濃度を調べた結果を示した。
【0010】
【表1】
Figure 0003826968
【0011】
塩化カルシウムは、薬害発生の問題があるが、水に良く溶け、カルシウム含量が高く、表1に示す通り、飽和液中のカルシウム濃度はCaO換算で約22%にもなり、カルシウム化合物の中で群を抜いている。またソーダ工業から大量に安価に入手でき、液状カルシウム剤の原料としては最も好ましいものである。
【0012】
有機酸カルシウムは、薬害発生が軽減される点では優れているが、表1に示すとおり、溶解度及びカルシウム含量ともに塩化カルシウムより低く、各々の単独での水溶液としてはカルシウム約9%が限度であり、CaO10%以上の高濃度液ができない欠点を持っている。また、一般に有機酸カルシウムは塩化カルシウムよりも高く、かなりコスト高になる。
【0013】
一方、塩化カルシウムや有機酸カルシウムを水に溶かして高濃度カルシウム含有液を作成すると、保存中に結晶が析出したり、空気中の炭酸ガスを吸収して不溶性の炭酸カルシウムを生成する問題がある。このため、カルシウム肥料は粉体で流通し、ユーザーが水に溶かして使用するものが大部分である。
【0014】
本発明が解決すべき課題は、薬害が少なく、カルシウム含量が高く、保存安定性がよく、コストができる限り安く、望ましくはカルシウムの効果の高い、等の条件を兼ね備えた液状カルシウム肥料の開発である。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来は使用すると薬害があるとされた塩化カルシウムと有機酸カルシウムの組み合わせについて薬害の低減と保存安定性の向上を検討した。その結果、水溶性有機酸、塩化カルシウム、消石灰及び/又は生石灰を水に混合反応溶解した液状組成物で、塩化カルシウム由来のカルシウム濃度が全カルシウム濃度の45〜65%、pH3〜4.5にすることによって、上記課題を解決できることがわかった。
【0016】
ここで使用される有機酸は水溶性カルシウム塩を形成するものであればよい。しかし、オキシカルボン酸であるグルコン酸と乳酸との併用は液性の安定化に特に優れた効果を示すので使用することが好ましい。また、CaO11%以上の高濃度製剤を作る上では酢酸の使用が好ましい。ギ酸及びプロピオン酸は、これらと組み合わせて高濃度製剤を作ることができ、原液の酢酸臭の低減に役立つ。
【0017】
これらの液状組成物は、使用濃度に希釈した時にpH5〜6前後の微酸性であり、薬害の発現が実用上問題のないレベルにあり、液の安定性も良い。このように独特の組成と散布時のpHにより、カルシウムの肥効が他のカルシウム塩単用よりも高いレベルにある。
【0018】
本発明では、消石灰及び/又は生石灰と有機酸とは、水中においては各々から生成する水酸イオンと水素イオンとの中和反応が起こり、カルシウムイオンと有機酸イオンが生成してその一部は有機酸カルシウムとなり、この中で塩化カルシウムが溶解した形となる。一方、有機酸カルシウムと塩化カルシウム及び少量の有機酸を組み合わせることで化学的組成において本発明と同等のものを作ることは可能であるが、出来上がった液状カルシウム肥料の安定性が悪くなる。このことは、液中での化学平衡状態が異なり、本発明の方法による液状カルシウム肥料が独特で、その効果が高い所以であると考えられる。
【0019】
以上の方法により、液中のカルシウム濃度はCaO11〜14%に高められる。これは市販多用されているギ酸カルシウムの飽和濃度の約1.5〜2倍に相当し、流通面でのコストメリットがあるほか、購入するときも少ない量ですむため便利である。
【0020】
好ましい組成を具体的に示すと、グルコン酸1〜3%、乳酸1〜5%、酢酸5%以上、pH3〜4.5好ましくはpH3.5〜4.1、カルシウム含量CaO換算11%以上好ましくは12〜14%、全カルシウム含量中の塩化カルシウム由来のカルシウムの割合45〜65%である。グルコン酸、乳酸、酢酸以外の有機酸を配合する場合には、ギ酸、プロピオン酸が安定になりやすく好ましい。
【0021】
さらに、塩化カルシウムの一部を硝酸カルシウムに変えることも可能である。この場合は、カルシウムと同時に窒素分も補給されるため、使用される時期、作物等が限定される。
【0022】
【作用】
作用機構の詳細については不明であるが、概略次のように考えられる。遊離の有機酸イオンがカルシウムをキレート安定化する。特にオキシカルボン酸であるグルコン酸と乳酸は安定性の高い水溶性キレートを形成する。植物体に対しては、塩化カルシウムに有機酸が配合されたものが吸収しやすく、さらに有機酸はカルシウムの不動体化を防ぎ植物体内での移動を助ける。また、有機酸イオンが塩素イオンに対して一定割合以上存在することで、塩素イオンに拮抗して塩素イオンの薬害発生を妨げる。また塩化カルシウムの割合が一定以上あることで、安定な高濃度の液が作成される。
【0023】
【実施例】
(実施例1)〜(実施例10)
表2に示す配合割合で、水に消石灰、各種有機酸及び塩化カルシウムを混合溶解し、液状カルシウム肥料を製造した。
【0024】
【表2】
Figure 0003826968
【0025】
(実施例11)
実施例1について消石灰の代わりに、CaO換算で相当量の生石灰を使用して液状カルシウム肥料を製造した。
【0026】
(比較例1)〜(比較例4)
表3に示す配合割合で、水に消石灰、各種有機酸及び塩化カルシウムを混合溶解し、液状カルシウム肥料を製造した。
【0027】
【表3】
Figure 0003826968
【0028】
(試験例1)
実施例及び比較例の液状カルシウム肥料を40℃で保管し、液の濁り、沈澱生成の有無により液の安定性を判定した。結果を表4に示した。
【0029】
【表4】
Figure 0003826968
【0030】
(試験例2)
リンゴ(王林、10年生)に、落花10日目より10日間隔で3回、所定濃度に水で溶解したカルシウム肥料を葉面散布し、薬害の発生の有無を判定した。結果を表5に示した。
【0031】
【表5】
Figure 0003826968
【0032】
(試験例3)
小松菜に、播種2週間後より3日間隔で2回、所定濃度に水に溶解したカルシウム肥料を葉面散布し、散布1週間後に同個体数の葉長、生体重、Ca含有量を調査した。結果を平均値で表6に示した。
【0033】
【表6】
Figure 0003826968
【0034】
(試験例4)
トマトの土耕ポット栽培においてカルシウム欠乏症がでる土壌条件をつくり、所定濃度に水で溶解したカルシウム肥料を第一花房開花期及び第二花房開花期に葉面散布でトマトに施用し、カルシウム欠乏症である尻腐れ症の発生率を見た。
【0035】
【表7】
Figure 0003826968
【0036】
【発明の効果】
本発明の液状カルシウム肥料は、従来の無機カルシウム塩又は有機カルシウム塩の単用では不可能であったCaO11%以上のカルシウム含有濃度が高く、しかも安定性のよいもので、使用時の計量希釈の容易さと物流コストの低減を実現できる。また、本発明の液状カルシウム肥料は、薬害が少なく、作物に対するカルシウムの効果が高い。

Claims (3)

  1. 水溶性有機酸、塩化カルシウム、消石灰及び/又は生石灰を水に混合反応溶解した液状組成物で、カルシウム濃度がCaO換算11%以上、塩化カルシウム由来のカルシウム濃度が全カルシウム濃度の45〜65%、pH3〜4.5である液状カルシウム肥料。
  2. 水溶性有機酸としてグルコン酸1〜3%、乳酸1〜5%、及び酢酸5%以上を含有する請求項1に記載の液状カルシウム肥料。
  3. 水溶性有機酸として、ギ酸及び/又はプロピオン酸を含有する請求項1に記載の液状カルシウム肥料。
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