JP3155906B2 - 還元剤を含む切り花の鮮度保持剤組成物 - Google Patents

還元剤を含む切り花の鮮度保持剤組成物

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、少なくとも2成分の混
合により相乗的に増強された作用を有する切り花の鮮度
保持剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】切り花の鮮度が低下する原因としては、
生け水中の茎の腐敗や導管の閉塞、栄養分の枯渇、内因
性のエチレンの増加などがあげらる。茎の腐敗や導管の
閉塞に対しては、8ーヒドロキシキノリンなどの殺菌剤や
水中汚物を沈澱させるための硫酸アルミニウム、水揚げ
を良くするための各種界面活性剤が用いられており、栄
養分の枯渇に対しては、ショ糖などの糖類が用いられて
いる。しかし、その効果には、ばらつきがあり明確では
ない。一方、内因性のエチレンの増加に対しては、1978
年にオランダのVeenらにより発見されたSTS(Ag(S2O3)2
3-)〔プランタ(Planta)140, 93〜96, 1978年〕がエ
チレンの作用を抑制し、カーネーション、宿根カスミソ
ウ等のエチレンが花の萎凋の主要因となる切り花に対し
ては明確な効果を示す。
【0003】現在では、生産者は、多くの切り花に対し
てSTSを使用している。しかし、STSはその有効成分とし
て、重金属である銀を含んでいるため、環境汚染が懸念
されており、重金属を含まない安全な鮮度保持剤の実用
化が望まれている。
【0004】一般式(I)
【化2】 (I) 〔式中、R1は炭素原子数3〜4の直鎖状または分岐鎖
状の低級アルキル基を表すか、ハロゲン原子、C1-4
ルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、カルボキ
シル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アミノ基
またはベンジルオキシ基により置換されてもよいフェニ
ル基を表すか、あるいはピリジル基を表すか、もしくは
1はカルボキシル基またはアルコキシカルボニル基に
より置換されてもよいチエニル基を表し、R2およびR3
はそれぞれに水素原子、C1-4アルキル基、アルコキサ
リル基、アルコキシアルキル基、または式−C(=X)
−X−R4(ただし、Xは酸素原子または硫黄原子を、
4はC1-4アルキル基を表す)で示されるアルコキシカ
ルボニル基またはアルキルチオ−チオカルボニル基を表
すか、あるいはR2およびR3はR2とR3が結合している
窒素原子と共に共同して炭素数4〜5の複素環、例えば
モルホリノ基またはピペリジノ基を形成してもよく、も
しくはR2およびR3が結合している窒素原子と共に式−
N=CR5(R6)(ただし、R5とR6はそれぞれにC
1-4アルキル基を表す)の基を形成してもよい〕で示さ
れるスルホニルセミカルバジド誘導体またはその塩は、
本発明者らにより切り花の鮮度保持剤として有効である
ことが発見されている(WO 9505362)。一
方、ジチオスレイトール、2-メルカプトエタノールとい
った還元剤については、切り花の鮮度保持効果はないと
考えられている。そのため、一般式(I)で示されるス
ルホニルセミカルバジド誘導体と還元剤との混合時の効
果については検討されていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、切り
花に対して優れた効果を有する鮮度保持剤を提供するこ
とにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成すべく鋭意検討した結果、一般式(I)で示さ
れるスルホニルセミカルバジド誘導体またはその塩と還
元剤の少なくとも1種とを混合することにより、スルホ
ニルセミカルバジド誘導体またはその塩の単独処理に比
べて鮮度保持効果が増強されることを見出し本発明に至
った。
【0007】即ち本発明は、一般式(I)で示されるス
ルホニルセミカルバジド誘導体またはその塩と還元剤と
を有効成分として含有する切り花の鮮度保持剤組成物に
関する。還元剤としては、例えばジチオスレイトール、
2-メルカプトエタノール、チオ硫酸ナトリウム、グルタ
チオン、L-アスコルビン酸などが用いられるが、特にこ
れらに限定されない。
【0008】これらの有効成分は、各種濃度の水溶液と
して用いられ、その濃度は対象とする切り花の種類によ
り最適値が異なるため、特に限定されない。一般式
(I)で示されるスルホニルセミカルバジド誘導体また
はその塩、中でも好ましくは1,1−ジメチルー4−
(フェニルスルホニル)セミカルバジドは、1×10-4
0.1重量%の範囲で、還元剤は、1×10-4〜1.0重量%の
範囲で用いられる。また、組成物中の混合割合としては
スルホニルセミカルバジド誘導体:還元剤=1:0.1
〜1000、好ましくはスルホニルセミカルバジド誘導
体:還元剤=1:1〜100(但し、単位は重量%とす
る。)で用いられる.
【0009】本発明の鮮度保持剤組成物の使用法として
は、前処理、後処理あるいは植物体への散布などがあげ
られる。前処理の方法としては、切り花の切り口を薬液
に、好ましくは1〜24時間浸せきすれば良い。後処理の
方法としては、切り花を薬液の入った花瓶などに生けて
おけば良い。散布処理の方法としては、スプレーなど
で、切り花全体に薬液を散布すれば良い。
【0010】本発明の鮮度保持剤組成物は、添加剤(殺
菌剤、界面活性剤など)や、市販されている他の鮮度保
持剤と混合して用いても良く、本発明品を用いた後に添
加剤や市販されている他の鮮度保持剤を用いても良い。
【0011】本発明の鮮度保持剤を適用できる花として
は、カーネーション、デルフィニウム、スイートピー、
宿根カスミソウ、ユリ、フリージア、チューリップ、洋
ラン等の切り花、あるいは鉢物などがあげられる。
【0012】
【実施例】
試験例1 カーネーション切り花の鮮度保持効果 神奈川県秦野市の農家において栽培されたカーネーショ
ン(品種;フランシスコ)を10 cmの長さに切り、50 ml
の薬液の入った管ビン(φ3×12 cm)に、切り花を1本
ずつ入れ、その後25℃の恒温室にて切り花の状態を観察
した。各試験区とも4反復とした。結果を表1に示す。
花の萎凋が見られるまでの日数を花持ち日数として表
し、さらに対照区と比較したときの花持ち延長日数とそ
れぞれ単独処理の花持ち延長日数を相加した日数も併せ
て示した。また,花持ち延長日数および相加日数は以下
のように定義する。 花持ち延長日数=各処理群の花持ち日数−対照区の花持
ち日数 相加日数=各濃度のスルホニルセミカルバジド誘導体処
理群の花持ち延長日数+各還元剤処理群の花持ち延長日
【0013】 表1 処理 花持ち日数 花持ち延長 相加 (日) 日数(日) 日数(日) 対照区 5.9 − − 1 ppm 1,1-ジメチル-4-(フェニル 6.6 0.7 − スルホニル)セミカルバジド 10 ppm 1,1-ジメチル-4-(フェニル 7.3 1.4 − スルホニル)セミカルバジド 100 ppm ジチオスレイトール 6.5 0.6 − 1 ppm 1,1-ジメチル-4-(フェニル 9.0 3.1 1.3 スルホニル)セミカルバジド + 100 ppm ジチオスレイトール 10 ppm 1,1-ジメチル-4-(フェニル 11.0 5.1 2.0 スルホニル)セミカルバジド + 100 ppm ジチオスレイトール
【0014】表1から明らかなように、1,1-ジメチル-4
-(フェニルスルホニル)セミカルバジドとジチオスレ
イトールとを混合したときの効果は、1,1-ジメチル-4-
(フェニルスルホニル)セミカルバジドの単独使用、ま
たはそれぞれの単独使用の花持ち延長日数の相加以上の
効果を示した。
【0015】試験例2 カーネーション切り花の鮮度保持効果 上記試験例1と同様な方法で実験を行った。結果を表2
に示す。
【0016】 表2 処理 花持ち日数 花持ち延長 相加 (日) 日数(日) 日数(日) 対照区 4.8 − − 10 ppm 1,1-ジメチル-4-(フェニル 10.1 5.3 − スルホニル)セミカルバジド 10 ppm 2-メルカプトエタノール 3.9 -0.9 − 10 ppm チオ硫酸ナトリウム 5.0 0.2 − 10 ppm 1,1-ジメチル-4-(フェニル 12.0 7.2 4.4 スルホニル)セミカルバジド+ 10 ppm 2-メルカプトエタノール 10 ppm 1,1-ジメチル-4-(フェニル 12.0 7.2 5.5 スルホニル)セミカルバジド+ 10 ppm チオ硫酸ナトリウム
【0017】表2から明らかなように、1,1-ジメチル-4
-(フェニルスルホニル)セミカルバジドと2−メルカ
プトエタノール、または1,1-ジメチル-4-(フェニルス
ルホニル)セミカルバジドとチオ硫酸ナトリウムとを混
合したときの効果は、1,1-ジメチル-4-(フェニルスル
ホニル)セミカルバジドの単独使用、またはそれぞれの
単独使用の花持ち延長日数の相加以上の効果を示した。
【0018】試験例3 カーネーション切り花の鮮度保持効果 上記試験例1と同様な方法で実験を行った。結果を表3
に示す。
【0019】 表3 処理 花持ち日数 花持ち延長 相加 (日) 日数(日) 日数(日) 対照区 5.6 − − 10 ppm 1,1-ジメチル-4-(フェニル 11.6 6.0 − スルホニル)セミカルバジド 10 ppm グルタチオン 5.0 −0.6 − 10 ppm 1,1-ジメチル-4-(フェニル 12.4 6.8 5.4 スルホニル)セミカルバジド + 10 ppm グルタチオン
【0020】表3から明らかなように、1,1-ジメチル-4
-(フェニルスルホニル)セミカルバジドとグルタチオ
ンとを混合したときの効果は、1,1-ジメチル-4-(フェ
ニルスルホニル)セミカルバジドの単独使用、またはそ
れぞれの単独使用の花持ち延長日数の相加以上の効果を
示した。
【0021】
【発明の効果】本発明によれば、切り花の鮮度を良好な
状態で長期に保つ鮮度保持剤を提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−124101(JP,A) 特開 平4−49203(JP,A) 特開 平2−204401(JP,A) 特開 昭63−284102(JP,A) 特開 昭63−222101(JP,A) 特開 平9−12401(JP,A) 国際公開95/5362(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01N 3/02 A01N 47/34 JICSTファイル(JOIS) CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(I ) 【化1】 (I ) 〔式中、R 1 は炭素原子数3 〜4 の直鎖状または分
    岐鎖状の低級アルキル基を表すか、ハロゲン原子、C
    1- 4 アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、
    カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、
    アミノ基またはベンジルオキシ基により置換されてもよ
    いフェニル基を表すか、あるいはピリジル基を表すか、
    もしくはR 1 はカルボキシル基またはアルコキシカル
    ボニル基により置換されてもよいチエニル基を表し、R
    2 およびR 3はそれぞれに水素原子、C1- 4 アルキル
    基、アルコキサリル基、アルコキシアルキル基、または
    式−C (=X )−X −R 4 (ただし、X は酸素原
    子または硫黄原子を、R 4 はC1- 4 アルキル基を表
    す)で示されるアルコキシカルボニル基またはアルキル
    チオ−チオカルボニル基を表すか、あるいはR 2 およ
    びR 3 はR 2 とR 3 が結合している窒素原子と共に
    共同して炭素数4 〜5 の複素環、例えばモルホリノ基
    またはピペリジノ基を形成してもよく、もしくはR 2
    およびR 3 が結合している窒素原子と共に式−N =C
    5(R 6 )(ただし、R 5 とR 6 はそれぞれにC
    1- 4 アルキル基を表す)の基を形成してもよい〕で示
    されるスルホニルセミカルバジド誘導体またはその塩
    と、ジチオスレイトール、2- メルカプトエタノール、
    チオ硫酸ナトリウム、グルタチオンの中から選択される
    少なくとも1 種の還元剤とを有効成分とする切り花の
    鮮度保持剤組成物。
  2. 【請求項2】スルホニルセミカルバジド誘導体が1 ,
    1−ジメチルー4 −(フェニルスルホニル)セミカル
    バジドである請求項1記載の切り花の鮮度保持剤組成
    物。
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