JPH0133408Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、農用トラクタとかホイールローダ
等の自走式作業車の駐車ブレーキ、より詳しく言
うと、ブレーキドラムの外周面に設けたＶ字形溝
内にブレーキバンド上のＶ字形のブレーキシユー
を臨ませ、該ブレーキシユーを上記Ｖ字形溝の両
内側面に圧接させて制動作用を得るように構成さ
れた駐車ブレーキに、関するものであある。

上記タイプの駐車ブレーキにおけるブレーキド
ラムは、必要な制動キヤパシテイを確保するため
にかなり大径のものとされ、またブレーキシユー
を圧接させるＶ字形溝の両内側面については精密
仕上げが施される。このように大径のブレーキド
ラムのＶ字形の両内側面について精密仕上げを行
なう加工は、決して容易ではなく、このため駐車
ブレーキのコストがかなり高価についているのが
現状である。

この考案は、自走式作業車における左右駆動車
輪用の差動装置の入力傘歯車が大径のものに形成
される点に着眼し、元々精密加工が施される該入
力傘歯車を利用してブレーキドラムの半部を形成
することで、コストの低減を図つてある、冒頭記
載タイプの新規な駐車ブレーキを提供しようとす
るものである。

図示の実施例について、この考案に係る駐車ブ
レーキの構成を説明すると、図示の実施例は、こ
の考案を第１図に示すような農用トラクタにおい
て実施した例に係る。同農用トラクタは、機体前
部にエンジン１を搭載し、このエンジン１によつ
て、左右の後輪２を回転駆動すると共に必要に応
じて左右の前輪３も回転駆動して走行させると共
に、機体後部へ延出させてある作業機駆動用の
PTO軸４を回転駆動するものに、構成されてい
る。エンジン１の動力は、前端部５ａにおいて図
示省略の主クラツチを内装し機体の主要部を構成
しているミツシヨンケース５内と機体最後部を構
成しているリヤハウジング６内とへ伝達された上
で、後輪２、前輪３及びPTO軸４へと伝えられ
るように、図られている。リヤハウジング６上に
は乗用座席７と油圧リフトアーム８ａを備えた油
圧リフト装置８とが、上下に配して設置されてい
る。機体の操向は、乗用座席７前方の操縦ハンド
ル９により左右の前輪３を旋回させて行なうよう
にされている。

第２図に示すように前記リヤハウジング６内に
は、左右後輪２用の差動装置１０を設けてあり、
この差動装置１０の大径の入力傘歯車１１は、走
行変速部の出力軸１２の後輪部に一体形成された
小径の傘歯車１３と噛合されており、また該差動
装置１０の左右の出力軸１４は、それと同心配置
して設けた左右の後輪車軸２ａに対し、遊星歯車
式の左右の最終減速装置１５を介して連動連結さ
れており、上記した左右の出力軸１４上には油圧
作動型の左右のサイドブレーキ１６を配設してあ
る。そして差動装置１０は通例のように、上記し
た入力傘歯車１１をデフケース１８に対し装着固
定すると共に、デフケース１８内に、デフピニオ
ン軸２０上の１対のドライブ傘歯車２１と左右出
力軸１４上の１対のドリブン傘歯車２２とを、互
に噛合せて設けてあるものに構成されているが、
この考案に係る駐車ブレーキ２３は、上記した差
動装置１０の入力傘歯車１１を利用して、該入力
傘歯車１１の背面位置に次のように設けられてい
る。

すなわち該駐車ブレーキ２３は第２，３図に示
すように、ブレーキドラム２４の外周面に設けた
Ｖ字形溝２５内にブレーキバンド２６上のＶ字形
のブレーキシユー２７を臨ませ、該ブレーキシユ
ー２７を上記Ｖ字形溝２５の両内側面２５ａ，２
５ｂに圧接させて制動作動を得るように、構成さ
れているのであるが、上記ブレーキドラム２４は
特に、差動装置１０の入力傘歯車１１とこの入力
傘歯車１１の背面上に固定装着したドラム半部形
成金物２８とでもつて、構成されている。そして
入力傘歯車１１にはその背面外周端部においてＶ
字形溝２５の一方の内側面２５ａを形成してあ
り、またドラム半部形成金物２８にはＶ字形溝２
５の他方の内側面２５ｂを形成してあつて、Ｖ字
形溝２５の内底面はドラム半部形成金物２８によ
つて提供されている。ドラム半部形成金物２８
は、一側の出力軸１４に沿つている、一側のドリ
プン傘歯車２２のボス部延出部２２ａ上に内周端
を位置して、デフケース１８の一部を構成するも
のに形成されており、また該ドラム半部形成金物
２８は、それを直接に入力傘歯車１１に固定する
固定具２９とデフケース１８に固定する他の固定
具３０とによつて、入力傘歯車１１の背面上に装
着固定されている。

ブレーキバンド２６は第３図に示すように、一
端をピン３２止めされると共に他端に操作機構を
関連させてあるものと、されている。同操作機構
はブレーキレバー３３を備えており、このブレー
キレバー３３とブレーキバンド２６の他端をピン
３４止めされている回動アーム３５との間が、ブ
レーキレバー３３の回動操作により進退せしめら
れるロツド３６と該ロツド３６の進退により回動
せしめられて上記回動アーム３５を回動させるア
ーム３７とでもつて、接続されている。駐車ブレ
ーキ２３は、ブレーキレバー３３を第３図の矢印
Ａ方向に回動操作することによりブレーキバンド
２６が第３図の矢印Ｂ方向に引かれ、ブレーキシ
ユー２７がＶ字形溝２５の両内側面２５ａ，２５
ｂに圧接せしめられることで、作動せしめられる
ものとされており、ブレーキ作動状態はブレーキ
レバー３３をロツクすることで維持される。

なお前記した遊星歯車式の最終減速装置１５
は、出力軸１４に太陽歯車３９を一体形成すると
共に、リヤハウジング６の両側面上に固定装着し
たリヤアリスルハウジング４０にインターナル歯
車４１を固定具４２により取付け、また後輪車軸
２ａにスプライン嵌めして設けたキヤリア４３に
複数個の遊星歯車４４を軸４５支させて、構成さ
れている。また前記サイドブレーキ１６は、出力
軸１４外周面に形成した爪に噛合う爪を内周面に
形成された保持リング４６に取付けて摩擦制動板
４７を設け、この摩擦制動板４７の一面に対面す
るスチールリング４８を前記インターナル歯車４
１に相対回転不能にピン４９により支持させると
共に、摩擦制動板４７の他面に対面する環状のピ
ストン５０を、リヤハウジング６に形成した環状
のシリンダ室に収容して設けてあるものに、構成
されていて、ピストン５０背後への油圧作用で該
ピストン５０を前進させ、摩擦制動板４７をスチ
ールリング４８へと圧接させて、制動を得るもの
とされている。第２図において５１は、一側のド
リブン傘歯車２２をデフケース１８に対し相対回
転不能に結合するためのピン５２を備えた、前記
差動装置１０用のデフロツク・クラツチである。

この考案に係る図示の駐車ブレーキ２３は、左
右後輪２用の差動装置１０における入力傘歯車１
１を制動することで左右後輪２を制動して、駐車
時における車輌の不測発進を防止するが、同駐車
ブレーキ２３は、次のような長所を備えたものと
なつている。

すなわち、この考案の自走式作業車の駐車ブレ
ーキは、実施例の説明から明らかなように、ブレ
ーキドラム２４の外周面に設けたＶ字形溝２５内
にブレーキバンド２６上のＶ字形のブレーキシユ
ー２７を臨ませ、該ブレーキシユー２７を上記Ｖ
字形溝２５の両内側面２５ａ，２５ｂに圧接させ
て制動作用を得るように構成された駐車ブレーキ
２３であつて、前記ブレーキドラム２４を、左右
駆動車輪２用の差動装置１０の入力傘歯車１１と
この入力傘歯車１１の背面上に固定装着したドラ
ム半部形成金物２８とから、前記Ｖ字形溝２５の
一方の内側面２５ａを入力傘歯車１１に形成する
と共に他方の内側面２５ｂをドラム半部形成金物
２５に形成して、構成してなるものとされてい
る。

このようにこの考案の駐車ブレーキは、ブレー
キドラム２４の半部を差動装置の入力傘歯車１１
によつて形成することで、ブレーキドラム２４の
ための材料費が節減されるのはもとより、入力傘
歯車１１が元々精密に加工形成されたもので、そ
れに形成した一方のＶ字形溝内側面２５ａは歯車
１１形状をそのような内側面２５ａを附与するよ
うに設定しておけば後での精密加工が不要のもの
となり、またドラム半部形成金物１８に形成した
他方のＶ字形溝内側面２５ｂは、ドラム半部形成
金物１８が半割り状のものであることから精密加
工し易く、以上よりして加工経費が大巾に節減さ
れ、このように材料費はもとより加工経費の大巾
節減が得られることで、従来のものと比較して製
作コストを大巾に低減させるものとなつている。
またこの考案の駐車ブレーキは、ブレーキドラム
２４の半部が既存の入力傘歯車１１にて形成され
ていることで、コンパクトなものとなつていてブ
レーキ設置スペースを節減するものとなつてお
り、さらに以上のような長所を有するものであり
ながら差動装置１０の入力傘歯車１１が大径のも
のに形成されることからしてブレーキドラム２４
を大径のものとできて、必要な制動キヤパシテイ
を確保させるものとなつている。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の一実施例を装備した農用ト
ラクタの概略側面図、第２図は同トラクタ要部の
横断平面図、第３図は同実施例における要部の部
材のみの側面図である。 ２……後輪、２ａ……後輪車軸、１０……差動
装置、１１……入力傘歯車、１４……出力軸、１
８……デフケース、２３……駐車ブレーキ、２４
……ブレーキドラム、２５……Ｖ字形溝、２５
ａ，２５ｂ……内側面、２６……ブレーキバン
ド、２７……ブレーキシユー、２８……ドラム半
部形成金物、２９，３０……固定具、３３……ブ
レーキレバー。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ブレーキドラムの外周面に設けたＶ字形溝内に
   ブレーキバンド上のＶ字形のブレーキシユーを臨
   ませ、該ブレーキシユーを上記Ｖ字形溝の両内側
   面に圧接させて制動作用を得るように構成された
   駐車ブレーキであつて、前記ブレーキドラムを、
   左右駆動車輪用の差動装置の入力傘歯車とこの入
   力傘歯車の背面上に固定装着したドラム半部形成
   金物とから、前記Ｖ字形溝の一方の内側面を入力
   傘歯車に形成すると共に他方の内側面をドラム半
   部形成金物に形成して、構成したことを特徴とす
   る、自走式作業車の駐車ブレーキ。