JP7496717B2 - ハブユニット及びそれを備えた車椅子 - Google Patents

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Description

本発明は車椅子の駆動輪に備えられるハブユニットの構造に関する。
手動式の車椅子は、利用者が、自らの手で左右のメインホイール(駆動輪)を操作することにより、前進、後進、左折、右折等の走行動作ができるよう構成されている。このような車椅子においては、例えば利用者が移乗するときの転倒事故を防ぐために、タッグルブレーキが設けられている。また、より安定的な駐車ロックを目的とした車椅子も提案されている(例えば特許文献1参照)。
しかし、従来の車椅子においては、例えば自力でスロープを昇り降りする際の安全性は確保できず、特に腕力が衰えた高齢者にとっては介助者の助けが必要である。そのため、近年、後進防止機能と移乗の際のロック機能とを両立させた特殊なハブユニット(後進防止ユニット)を搭載した車椅子が提案されている(例えば特許文献2参照)。
特開2019-17659号公報 特許第5105256号公報
上述した後進防止機能を有するハブユニットは、メインホイールのハブにサンギアと複数のプラネタリギアが組み込まれた構造を有している。しかし、このような複雑な構造のハブユニットをメインホイールのハブに組み込む際には、内部の複数のプラネタリギアの軸芯出しを同時に行いながら、対向する2枚のハブプレートの位置合わせをする必要があり、その作業は熟練を要し大量生産向きではなかった。
本発明は、こうした事情に鑑みてなされたものであり、ギアのアライメントを容易にして組み立て作業を簡素化するとともに、生産の自動化や量産化にも適した車椅子用のハブユニット構造を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するため、本発明は、軸心を基準軸心とする車軸部材と、前記車軸部材の基準軸心と軸心を一致させて該車軸部材に支持されたサンギアと、前記基準軸心を中心にして回動可能に配置され互いに平行かつ対向するギア取付面を有する第1及び第2のハブプレートと、前記第1及び第2のハブプレートの間に配置され前記サンギアに係合しながら該サンギアの周りを公転する複数のプラネタリギアであって、それぞれが前記基準軸心に平行な公転軸心を中心にして回動可能に前記ギア取付面に軸支された複数のプラネタリギアとを備えたハブユニットであって、前記第1及び第2のハブプレートの各ギア取付面から突出する一対のスペーサ部であって、互いに突き合わされる各先端部分に凹凸状の嵌合部を有するスペーサ部が、該第1及び第2の各ハブプレートにそれぞれ一体に形成されている、ハブユニットである。
ハブユニットは、互いに突き合わされる前記一対のスペーサ部を接合させる接合手段を更に備えていることが好ましい。
また、ハブユニットは、前記スペーサ部が、前記基準軸心を中心とした所定半径の円周上に複数配列して形成されていることが好ましい。この場合において、前記スペーサ部の前記円周上の間隔が不均等であることが更に好ましい。
また、本発明は、駆動輪を有する車椅子であって、前記駆動輪のハブに前記ハブユニットを採用した車椅子である。
本発明によれば、ギアのアライメントを容易にして組み立て作業を簡素化するハブユニット構造を提供することができる。それにより、ハブユニットの生産の自動化や量産化に資することができ、それを搭載した車椅子の生産性の向上やコスト低減にも貢献することができる。
本発明の一実施形態による車椅子の側面図である。 図1の車椅子の正面図である。 本発明のハブユニットの一実施形態である後進防止ユニットの取り付け構造を示す平面図である。 後進防止ユニットを前方外側から見た外観斜視図である。 後進防止ユニットを前方内側から見た外観斜視図である。 後進防止ユニットを略前方外側から見た外観斜視図である。 後進防止ユニットを分解して示す側面図である。 後進防止ユニットの内部構造を示す側面図である。 後進防止ユニットのギア配置構造を説明するための図である。 (a)は外側ハブプレートの側面図であり、(b)は外側ハブプレートのギア取付面図である。 (a)は内側ハブプレートのギア取付面図であり、(b)は内側ハブプレートの側面図である。 外側ハブプレート及び内側ハブプレートを接合するスペーサ部の断面図である。 (a)は前進操作力が与えられたときの後進防止ユニットの動作を説明するための図であり、(b)はそれに対応する車椅子の動作を説明するための図である。 (a)は後進操作力が与えられたときの後進防止ユニットの動作を説明するための図であり、(b)はそれに対応する車椅子の動作を説明するための図である。 (a)は逆回転トルクが作用したときの後進防止ユニットの動作を説明するための図であり、(b)はそれに対応する車椅子の動作を説明するための図である。
以下、本発明に係る車椅子及び車椅子のメインホイールに取り付けられるハブユニットの好適な実施形態を詳細に説明する。まず、図1及び2を参照して、本発明の一実施形態である車椅子の構成を説明する。なお、以下説明する車椅子は一般的なものであり、本発明の実施にあたっては、この構成の車椅子に限定されない。また、本明細書において「利用者」とは、特に断りのない限り車椅子に搭乗する者をいう。
(車椅子の説明)
図1は本発明の一実施形態による車椅子1の側面図、図2はその正面図である。車椅子1は、椅子型に組まれた車体フレーム10と、左右一対の駆動輪であるメインホイール20とを備えている。
車体フレーム10は、左右のサイドフレーム11,11と、サイドフレーム11,11を連結するX形状のクロスバー部材19とを備えている。クロスバー部材19は、車椅子1をコンパクトに折り畳んで収納可能とするために、左右のサイドフレーム11,11を相互に接近及び離隔させる折り畳み機構を有している。左右のサイドフレーム11,11の間には着座シート41が設けられている。
サイドフレーム11は、基本的には、前側垂直フレーム12、背フレーム13、上側水平フレーム14及び下側水平フレーム15が剛接合されたラーメン構造からなっている。前側垂直フレーム12の下端部にはキャスターホイール30が設けられている。キャスターホイール30は、車椅子1の転倒を防止するとともに、前側垂直フレーム12の垂直軸まわりに旋回して車椅子1が進行方向を向くように操舵される。
左右の背フレーム13,13の間にはバックサポート(背もたれ部)42が張設されている。また、前側垂直フレーム12の上部は後方に向けて水平に屈曲する屈曲部となっており、その屈曲部と背フレーム13と間を掛け渡すようにアームサポートフレーム16が接合されている。そして、アームサポートフレーム16の水平部分にアームサポート(肘掛部)18が設けられている。なお、上側水平フレーム14の下部と前側垂直フレーム12との間に補強フレーム17が接合されてもよい。
また、背フレーム13よりも後方に延びる下側水平フレーム15の後端部はティッピングレバー45となっている。ティッピングレバー45は、段差などでキャスター30を乗り上げる際に介助者が踏み込むためのレバーである。前側垂直フレーム12の下部前方には、跳ね上げ式のフットサポート(足載部)43が設けられている。
背フレーム13の上部であって後方に屈曲する部分には、車椅子1を後方から操作するために介助者が握るグリップ部44が形成されている。グリップ部44には、メインホイール20の回動を規制する操作を行うためのブレーキ操作レバー45Aと、後述する後進防止ユニット100の後進ロックを解除する操作を行うための後進ロック解除操作レバー45Bとが設けられている。
車椅子1の駆動輪であるメインホイール20は、特に図3に示すように、その中央部分のハブユニット(本実施形態では後進防止ユニット100)を介して車軸部材150に回動可能に設けられている。メインホイール20のスポーク21,21,・・・は、後述する後進防止ユニット100の外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120に接続している。メインホイール20の外側には、車椅子1の搭乗者がメインホイール20に操作力を与えて走行動作をするためのハンドリム22が設けられている。一般的な車椅子において、ハンドリムはメインホイールのリムに直結されているが、本実施形態による車椅子1では、ハンドリム22が3本のスポーク23を介して、後進防止ユニット100の外側操作プレート130に接続されている。
(後進防止ユニットの説明)
次に、車椅子1のメインホイール20に取り付けられるハブユニットである後進防止ユニット100の構成を詳細に説明する。車椅子1の車軸に取り付けられる後進防止ユニット100は左右対称の構造を有しているが、本明細書では、車体の右側に設けられる後進防止ユニット100を例にその構造を代表して説明する。
また、以下の説明において「正転」とは車椅子の前進に対応する方向へのホイール20及びハブプレート110,120等の回転又は回動をいい、「逆転」とは車椅子の後進に対応する方向へのそれらの回転又は回動をいうものとする。
ここで、図4は後進防止ユニット100を前方外側から見た外観斜視図であり、図5は後進防止ユニット100を前方内側から見た外観斜視図であり、図6は後進防止ユニット100を略前方から見た外観斜視図である。なお、図6にはカバー160が外された状態で内部のギア構造の一部が表示されている。
後進防止ユニット100は、車軸部材150と、車軸部材150を回動可能に貫通させた外側ハブプレート110と、同じく車軸部材150を回動可能に貫通させ外側ハブプレート110に対向配置された内側ハブプレート120と、外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120の間に配置されたサンギア161、第1プラネタリギア162,162,162及び第2プラネタリギア163,163,163と、車軸部材150を回動可能に貫通させ外側ハブプレート110よりも更に外側に配置された外側操作プレート130と、同じく車軸部材150を回動可能に貫通させ内側ハブプレート120よりも更に内側に配置された内側操作プレート140と、を基本的な構成要素としている。
(ギア配置構造)
先ず、図7~9を参照し、外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120との間に配置される、いずれも同一モジュールの平歯車であるサンギア161、第1プラネタリギア162,162,162及び第2プラネタリギア163,163,163のギア配置構造を説明する。サンギア161は、その軸心を車軸部材150に一致させて該車軸部材150に固定されている。ここで、車軸部材150の軸心及びそれに一致するサンギア161の軸心を「基準軸心」として定義する。
3つの第1プラネタリギア162,162,162は、それぞれの軸部材162a,162a,162aの軸心(これらを「第1公転軸心」という。)を中心に回動可能な態様で、外側ハブプレート110のギア取付面110Aに形成された軸受部1102及び内側ハブプレート120のギア取付面120Aに形成された軸受部1202に軸支されている。第1プラネタリギア162,162,162の各第1公転軸心は、車軸部材150の基準軸心と平行であって、かつ、この基準軸心を中心にした第1公転半径の円周上に互いに120°の等間隔で配置されている(図9参照)。
また、3つの第2プラネタリギア163,163,163は、それぞれの軸部材163a,163a,163aの中心を貫く軸芯部材164,164,164の軸心(これらを「第2公転軸心」という。)を中心に回動可能な態様で、外側操作プレート130に形成された軸受部1302及び内側操作プレート140に形成された軸受部1402に軸支されている。第2プラネタリギア163,163,163の各第2公転軸心は、車軸部材150の基準軸心と平行であって、かつ、この基準軸心を中心にした第2公転半径の円周上に互いに120°の等間隔で配置されている。
また、第2プラネタリギア163,163,163の軸部材163a,163a,163a(軸芯部材164,164,164を含む)は、外側ハブプレート110の軸逃げ孔1103,1103,1103及び内側ハブプレート120の軸逃げ孔1203,1203,1203を介して、外側操作プレート130及び内側操作プレート140に軸支されている。ここで、軸逃げ孔1103,1203の内径は、第2プラネタリギア163の軸部材163aの外径よりも若干大きいクリアランスを有している。そのクリアランスの存在により、外側操作プレート130及び内側操作プレート140は、外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120に対し、基準軸心を中心に僅かな角度範囲で相対的に回動可能とされている。
また、図9に示すように、第2プラネタリギア163の第2公転半径は、第1プラネタリギア162の第1公転半径よりも小さい。すなわち、第1プラネタリギア162は、第2プラネタリギア163に歯合し、第2プラネタリギア163は、サンギア161及び第1プラネタリギア162に歯合している。更に、サンギア161の基準軸心と第1プラネタリギア162の第1公転軸心とを結ぶ第1公転半径線に対し、該基準軸心と第2プラネタリギア163の第2公転軸心とを結ぶ第2公転半径線が、若干、後進方向(図9では反時計回り方向)に傾いている。
(外側ハブプレート)
次に、外側ハブプレート110の構成を説明する。図10(a)は外側ハブプレート110の側面図であり、図10(b)は外側ハブプレート110のギア取付面110A(内側ハブプレート120に対向する側の面)を示す図である。外側ハブプレート110は、例えばADC12等のアルミニウム系合金を略円盤状に圧入成型したダイキャスト部材である。外側ハブプレート110の中央部には、車軸部材150を軸支するベアリング111を嵌合するための車軸孔1101が形成されている。また、第1プラネタリギア162の軸部材162aを回動自在に受けるための軸受部1102,1102,1102が、車軸孔1101の基準軸心を中心にした第1公転半径の円周上において互いに120°の間隔をあけた所定の3箇所に形成されている。また、ギア取付面110Aには、第2プラネタリギア163の軸部材163aを貫通させる軸逃げ孔1103,1103,1103が、車軸孔1101の基準軸心を中心にした第2公転半径の円周上の所定位置において互いに120°の等間隔に形成されている。
また、外側ハブプレート110のギア取付面110Aには、円柱状の大径スペーサ部1104,1104,・・・が複数箇所(本実施形態では6箇所)に形成されている。大径スペーサ部1104の先端部分には凹状嵌合部1104aが形成されている。なお、この凹状嵌合部1104aは、内側ハブプレート120の対応する小径スペーサ部1204の先端部分(凸状嵌合部1204a)と突き合わされた状態で嵌合可能な寸法形状に形成されている。
また、外側ハブプレート110には、後述するロック解除機構部200のロック解除キー部材211を挿脱させるためのキー逃げ孔1105と、同ロック解除機構部200のロック解除キープレート210の脚部を支持するためのキープレート支持孔1106,1106とが形成されている。また、外側ハブプレート110の周縁部分には、スポーク支持プレート112をボルト136で固定するためのネジ孔1107が複数形成されている。
例えば図4に示されたスポーク支持プレート112は、環状の金属板部材であり、その周縁部分にメインホイール20のスポーク21,21,・・・の端部を接続するためのスポーク接続孔112aが複数形成されている。スポーク支持プレート112は、外側ハブプレート110の外周縁にオーバーラップする態様でボルト136によって着脱可能に固定される。
(内側ハブプレート)
次に、内側ハブプレート120の構成を説明する。図11(a)は内側ハブプレート120のギア取付面120A(外側ハブプレート110に対向する側の面)を示す図であり、図11(b)は内側ハブプレート120の側面図である。内側ハブプレート120は、外側ハブプレート110と同様に、例えばADC12等のアルミニウム系合金を略円盤状に圧入成型したダイキャスト部材である。
内側ハブプレート120の中央部には、車軸部材150を軸支するベアリング121を嵌合するための車軸孔1201が形成されている。また、第1プラネタリギア162の軸部材162aを回動自在に受ける軸受部1202,1202,1202が、車軸孔1201の基準軸心を中心にした第1公転半径の円周上において互いに120°の間隔をあけた所定の3箇所に形成されている。また、ギア取付面120Aには、第2プラネタリギア163の軸部材163aを貫通させる軸逃げ孔1203,1203,1203が、基準軸心を中心にした第2公転半径の円周上の所定位置において互いに120°の等間隔に形成されている。
また、ギア取付面120Aには、円柱状の小径スペーサ部1204,1204,・・・が複数箇所(本実施形態では6箇所)に形成されている。小径スペーサ部1204の先端部分には凸状嵌合部1204aが形成されている。なお、これら小径スペーサ部1204の先端部分(凸状嵌合部1204a)は、外側ハブプレート110の対応する大径スペーサ部1104の先端部分(凹状嵌合部1104a)と突き合わされた状態で嵌合可能な寸法形状に形成されている。また、小径スペーサ部1204の先端部分は、大径スペーサ部1104の先端部分と密着して嵌合可能であれば、例えば段差部又はテーパ部等を有するような適宜の形状とすることができる。
図12に示すように、小径スペーサ部1204の先端部である凸状嵌合部1204aにはネジ孔1204bが螺刻されている。大径スペーサ部1104の凹状嵌合部1104aと小径スペーサ部1204の凸状嵌合部1204aとを嵌合させ、ボルト113を大径スペーサ部1104のボルト孔1104bに挿入してネジ孔1204bに螺合させることで、大径スペーサ部1104及び小径スペーサ部1204とを突き合せた状態で接合することができる。
なお、ボルト113、ボルト孔1104b及びネジ孔1204bは、大径スペーサ部1104及び小径スペーサ部1204を介して外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120を一定の間隔を保持して接合させるための接合手段を構成する要素である。
2枚のハブプレートの間に、サンギアと複数のプラネタリギアとが組み込まれた複雑なギア構造のハブユニットを全てのギアの軸芯出し(シャフトアライメント)を同時に行いながらメインホイールのハブに組み込む作業は容易ではない。しかしながら、本実施形態の後進防止ユニット100によれば、外側ハブプレート110側の大径スペーサ部1104と内側ハブプレート120側の小径スペーサ部1204との先端部分同士を互いに突き合わせて嵌合するだけで、少なくとも3つのプラネタリギア162,162,162の軸芯出しを同時にかつ容易に行い、しかも外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120の相対的な位置合わせを簡単に行うことができる。
また、大径スペーサ部1104,1104,・・・及び小径スペーサ部1204,1204,・・・は、図10及び11に示されたように、車軸孔1101の基準軸心を中心とした所定半径の円周上に配列して形成されていることが好ましい。それにより、車軸部材150(サンギア161)の中心の基準軸心に外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120を合わせた後、大径スペーサ部1104及び小径スペーサ部1204の相対的な回動位置を合わせるだけで、少なくとも3つのプラネタリギア162,162,162の軸芯出しを同時に行うことができる。更にいえば、大径スペーサ部1104,1104,・・・及び小径スペーサ部1204,1204,・・・の円周上の間隔は不均等であることが好ましい。そうすれば、外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120の相対的回動位置関係を間違えるような組み立てミスを防ぐことができる。
内側ハブプレート120には、また、後述するロック解除機構部200のロック解除キー部材211を挿脱させるためのキー逃げ孔1205と、同ロック解除機構部200のロック解除キープレート210の脚部を支持するためのキープレート支持孔1206,1206とが形成されている。また、内側ハブプレート120の周縁部分には、スポーク支持プレート122をボルト126で固定するためのネジ孔1207が複数形成されている。
例えば図5に示されたスポーク支持プレート122は、環状の金属板部材であり、その周縁部分にメインホイール20のスポーク21,21,・・・の端部を接続するためのスポーク接続孔122aが複数形成されている。スポーク支持プレート122は、内側ハブプレート120の外周縁にオーバーラップする態様でボルト126によって着脱可能に固定される。
(外側操作プレート)
次に、外側操作プレート130の構成を説明する。外側操作プレート130は、例えばADC12等のアルミニウム系合金を星形略円盤状に圧入成型したダイキャスト部材である。外側操作プレート130の中央部には、例えば図7に示したように、車軸部材150を軸支するベアリング131を嵌合するための車軸孔1301が形成されている。また、外側操作プレート130のギア取付面(外側ハブプレート110に対向する側の面)には、第2プラネタリギア163の軸部材162aを回動自在に受ける軸受部1302が、外側ハブプレート110の軸逃げ孔1103に対応する3箇所に形成されている。第2プラネタリギア163の軸部材162aの内部には軸芯部材164が摺動回転可能に貫通しており、その軸芯部材164の端部が、軸受部1302の内部で、ボルト132により固定されている。
外側操作プレート130の外側面(ギア取付面とは反対側の面)には、例えば図3及び4に示したように、ハンドリム22の3本のスポーク23,23,23をボルト133,133で固定するための台部130a,130a,130aが放射状に一体形成されている。
(内側操作プレート)
次に、内側操作プレート140の構成を説明する。内側操作プレート140は、例えばADC12等のアルミニウム系合金を略円盤状に圧入成型したダイキャスト部材である。内側操作プレート140の中央部には、図7に示したように、車軸部材150を軸支するベアリング141を嵌合するための車軸孔1401が形成されている。また、内側操作プレート140のギア取付面(内側ハブプレート120に対向する側の面)には、第2プラネタリギア163の軸部材162aを回動自在に受ける軸受部1402が、内側ハブプレート120の軸逃げ孔1203に対応して3箇所に形成されている。第2プラネタリギア163の軸部材162aを摺動回転可能に貫通する軸芯部材164の端部が、軸受部1402の内部で、ボルト142により固定されている。
内側操作プレート140には、次に説明するロック解除機構部200のロック解除キー部材211と係合するカム孔(図示せず)や、同ロック解除機構部200のロック解除キープレート210の脚部を貫通させるための貫通孔(図示せず)が形成されている。
(ロック解除機構部の説明)
ロック解除機構部200は、例えば図3に示したように、ロック解除キープレート210と、ロック解除キープレート210に固定されたロック解除キー部材211と、ロック解除キープレート210を移動させるロック解除レバー202とを有して構成されている。ロック解除キープレート210は、その中央部に車軸部材150を摺動可能に貫通させる貫通孔210aが形成されており(図5参照)、この車軸部材150に沿って内側操作プレート140に接近及び離隔する方向に移動可能に設けられている。
ロック解除レバー202の基端部にはワイヤ201が接続しており、そのワイヤ201が後進ロック解除操作レバー45B(図1参照)に連結されている。すなわち、車椅子1の介助者等が後進ロック解除操作レバー45Bを握る操作をすると、ワイヤ201が引っ張られロック解除レバー202が回動するとともに、ロック解除キープレート210がロック解除レバー202の先端部に押されて内側操作プレート140に向けて移動する。このロック解除キープレート210の移動とともに、くさび形を有するロック解除キー部材211が、上述した内側操作プレート140のカム孔(図示せず)に入り、内側操作プレート140をロック解除位置に回動させる。
なお、ここでいう「ロック解除位置」とは、基準軸心を中心とする第2プラネタリギア163の第2公転半径線を、軸逃げ孔1203が許容する範囲で逆転方向(図9では反時計回り方向)に少し移動させた、外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120に対する外側操作プレート130及び内側操作プレート140の相対的な回動位置を意味する。このロック解除位置では、第1プラネタリギア162と第2プラネタリギア163との間のバックラッシュが確保されるため、サンギア161を中心にした第1プラネタリギア162及び第2プラネタリギア163の公転及び回動が自由になる。それにより、メインホイール20の後進ロックを解除することができる。
(初期位置復帰手段の説明)
本実施形態の後進防止ユニット100は、外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120に対する外側操作プレート130及び内側操作プレート140の相対的な回動位置を初期位置(又は「中立位置」ともいう。)に復帰させる初期位置復帰手段を備えている。なお、ここでいう「初期位置」又は「中立位置」とは、第1プラネタリギア162と第2プラネタリギア163との間のバックラッシュをゼロ又は実質的にゼロとなる、外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120に対する外側操作プレート130及び内側操作プレート140の相対的な回動位置を意味する。
例えば図4には、初期位置復帰手段として3つのコイルバネ137,137,137が例示されている。コイルバネ137は、弾性的に伸張された状態で、外側ハブプレート110に植設されたブラケット115及び外側操作プレート130に植設されたブラケット135と間に掛け渡されて設けられている。この場合、コイルバネ137の引っ張り弾性力は、外側ハブプレート110に対し、外側操作プレート130を、常時、正転方向(図4では時計回り方向)に回動させるよう作用している。
このような初期位置復帰手段を備えた後進防止ユニット100を、車椅子1のメインホイール20のハブとして設けることにより、後進ロック時のノッキングや、左右のメインホイール20,20の初動の不一致等の不具合を解消することができる。
(後進防止ユニット及びそれを備えた車椅子の動作説明)
本発明に係るハブユニットの一実施形態である後進防止ユニット100及び後進防止ユニット100をメインホイール20のハブに備えた車椅子1の動作を、以下説明する。
本実施形態による後進防止ユニット100は、上述したように、外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120に対する外側操作プレート130及び内側操作プレート140の相対的な回動位置に応じて、第1プラネタリギア162と第2プラネタリギア163との間の歯合状態が変化するよう構成されている。そしてそれらの相対的な回動を許容する角度範囲が、外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120の軸逃げ孔1103,1203の内径と、第2プラネタリギア163の軸部材163aの外径とのクリアランスによって制限されている。
かかる構成の後進防止ユニット100において、先ず、図13を参照して、前進操作力Ffが外側操作プレート130に与えられた場合について説明する。外側操作プレート130に与えられた前進操作力Ffは、第2プラネタリギア163の軸心(軸部材163a)を、第1プラネタリギア162の軸心(軸部材162a)に近づかせる方向に移動させるが、そのとき第1プラネタリギア162及び第2プラネタリギア163のそれぞれは、互いのピッチ点が離れるようにして自身の軸心周りで回動する。そして同時に第1プラネタリギア162及び第2プラネタリギア163のそれぞれがサンギア161を中心に公転するため、結果として前進操作力Ffが、第1プラネタリギア162を軸支する外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120に伝達され、各ハブプレート110,120を正転させる前進駆動力Tfに変換されることとなる(図13(a)参照)。
本実施形態の車椅子1においては、ハンドリム22を介して与えられた前進操作力Ffが、後進防止ユニット100により前進駆動力Tfに変換されてメインホイール20を正転させる。したがって、一般的な車椅子と同様にハンドリム22を操作して、車体を前進させることができる(図13(b)参照)。
次に、図14を参照して、後進防止ユニット100の外側操作プレート130に後進操作力Frが与えられた場合について説明する。外側操作プレート130に与えられた後進操作力Frは、第2プラネタリギア163の軸心(軸部材163a)を、第1プラネタリギア162の軸心(軸部材162a)から離す方向に移動させる。それにより、第1プラネタリギア162と第2プラネタリギア163との間のバックラッシュが増し、それぞれのプラネタリギア162,163が自身の軸心周りで回動しながら、サンギア161を中心に公転する。その結果として、後進操作力Frが、第1プラネタリギア162を軸支する外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120に伝達され、各ハブプレート110,120を逆転させる後進駆動力Trに変換されることとなる(図14(a)参照)。
本実施形態の車椅子1においては、ハンドリム22を介して与えられた後進操作力Frが、後進防止ユニット100により後進駆動力Trに変換されてメインホイール20を逆転させる。したがって、一般的な車椅子と同様にハンドリム22を操作して、車体を後進させることができる(図14(b)参照)。
次に、図15を参照して、後進防止ユニット100の外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120を逆転させる逆回転トルクWrが作用した場合について説明する。逆回転トルクWrが外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120に作用すると、第1プラネタリギア162の軸心(軸部材162a)が第2プラネタリギア163の軸心(軸部材163a)に近づく方向に、外側操作プレート130及び内側操作プレート140に対する外側ハブプレート110及び内側ハブプレート120の相対的回動位置がシフトする。それにより、第1プラネタリギア162と第2プラネタリギア163のそれぞれの基準ピッチ円が重なり、つまり互いのギアが噛み込んだ状態となって、それらのギアの回動がロックされる(図15(a)参照)。
このような逆回転トルクWrは、例えば車椅子1がスロープ上にあるときや、利用者が車椅子1に移乗する際の体重移動により生じることが多い。本実施形態の車椅子1においては、逆回転トルクWrがメインホイール20に作用しても、車体の後方への移動がメカ的にロックされている(図15(b)参照)。そのため、スロープ上で利用者がハンドリム22から手を離しても車椅子1が後退せず安全であり、またスロープを登りきるまで登坂動作を続けなくて済む。また、後進が自動的にメカロックされるので、利用者は安全に車椅子1に移乗することもできる。
1 車椅子
10 車体フレーム
20 メインホイール
21 スポーク
22 ハンドリム
23 スポーク
100 後進防止ユニット
110 外側ハブプレート
110A ギア取付面
112 スポーク支持プレート
113 ボルト
120 内側ハブプレート
120A ギア取付面
122 スポーク支持プレート
130 外側操作プレート
137 コイルバネ
140 内側操作プレート
150 車軸部材
161 サンギア
162 第1プラネタリギア
162a 軸部材
163 第2プラネタリギア
163a 軸部材
200 ロック解除機構部
210 ロック解除キープレート
211 ロック解除キー部材
1101 車軸孔
1102 軸受部
1103 軸逃げ孔
1104 大径スペーサ部
1107 ネジ孔
1201 車軸孔
1202 軸受部
1203 軸逃げ孔
1204 小径スペーサ部
1301 車軸孔
1302 軸受部
1401 車軸孔
1402 軸受部
Ff 前進操作力
Fr 後進操作力
Tf 前進駆動力
Tr 後進駆動力
Wr 逆回転トルク

Claims (5)

  1. 自身の軸心を基準軸心とする車軸部材と、
    前記基準軸心を中心にして前記車軸部材に回動可能に軸支され、互いに連結された第1及び第2のハブプレートと、
    前記基準軸心を中心にして前記車軸部材に回動可能に軸支され、前記第1のハブプレートの側に配置された第1の操作プレート及び前記第2のハブプレートの側に配置された第2の操作プレートとを備え、
    前記第1及び第2の操作プレートに与えられた回転力が、前記第1及び第2のハブプレートに伝達され得るように構成されたハブユニットであって、
    前記基準軸心とその軸心とを一致させて前記車軸部材に支持されたサンギアと、
    前記第1及び第2のハブプレートの間に配置され、前記基準軸心と平行な第1軸心周りで回動可能な態様で前記第1及び第2のハブプレートに軸支された第1プラネタリギアと、
    前記第1及び第2のハブプレートの間に配置され、前記基準軸心と平行な第2軸心周りで回動可能な態様で前記第1及び第2の操作プレートに軸支された第2プラネタリギアであって、前記サンギア及び前記第1プラネタリギアにそれぞれ歯合する第2プラネタリギアとを備え、
    前記基準軸心と前記第1プラネタリギアの軸心とを結ぶ線に対し、前記基準軸心と前記第2プラネタリギアの軸心とを結ぶ線が、一方向に傾いており、
    前記第2プラネタリギアの軸部材が、前記第1及び第2のハブプレートに形成され当該軸部材の外径よりも大きい内径を有する軸逃げ孔に貫通されていることで、前記第1及び第2のハブプレートに対する前記第1及び第2の操作プレートの制限された相対回動位置に応じて前記第1プラネタリギア及び前記第2プラネタリギア間の歯合状態が変化するよう構成され、
    前記第1及び第2のハブプレートに対し前記一方向に外力が作用すると、前記第1プラネタリギアの軸心と前記第2プラネタリギアの軸心とが互いに近づく方向にシフトし噛み込み状態となることで、これらのギアの回転が規制されるようになされ、
    前記第1及び第2のハブプレートの各ギア取付面から突出する一対のスペーサ部であって、互いに突き合わされる各先端部分に凹凸状の嵌合部を有するスペーサ部が、該第1及び第2の各ハブプレートにそれぞれ一体に形成されている、ハブユニット。
  2. 互いに突き合わされる前記一対のスペーサ部を接合させる接合手段を更に備えている、請求項1に記載のハブユニット。
  3. 前記第1プラネタリギア及び前記第2プラネタリギアが、それぞれの公転半径の円周上にそれぞれ3個配置され、前記スペーサ部が、互いに隣接する前記第1プラネタリギア間に配置されている、請求項1又は2に記載のハブユニット。
  4. 前記スペーサ部が、前記基準軸心を中心とした所定半径の円周上に配置され、前記円周上の配置間隔が不均等である、請求項1~の何れか1項に記載のハブユニット。
  5. 請求項1~4の何れか1項に記載のハブユニットを採用した車椅子であって、
    当該車椅子のメインホイールが前記第1又は第2のハブプレートの少なくとも何れか一方に接続され、当該車椅子のハンドリムが前記第1又は第2の操作プレートの何れか一方に接続されている、車椅子。
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