JP7495181B2 - 樹脂成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂成形体に関する。
従来、屋内外で使用する通信機器や、防犯カメラ又はスマートメータなどの電子機器の筐体、カーナビ、スマートメータなどのマルチインフォメーションディスプレイ、車載カメラの放熱シャーシ、LED放熱ヒートシンク、SoC、あるいはGDC等の放熱板には、金属板や、熱伝導性を有する樹脂成形体などが用いられている。なお、SoCとは「System-on-a-chip」のことをいい、GDCとは「Graphics Display Controller」のことをいう。
このような機構部品には、機器内部で発生する熱を効率的に外部へ放出する放熱性に加え、高い難燃性が求められている。
下記の特許文献1には、熱可塑性樹脂100質量部と、黒鉛10~200質量部と、難燃剤5~50質量部と、を含み、JIS R2618に準拠した熱伝導率が1.0W/m・K以上であり、かつUL-94規格の難燃レベルがランクV-1以上である熱可塑性樹脂組成物が開示されている。上記難燃剤としては、リン酸エステル系化合物等が用いられている。また、特許文献1の樹脂組成物は、熱伝導性及び難燃性に優れることが記載されている。
下記の特許文献2には、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、熱伝導フィラーを30~200質量部、及び難燃剤を1~80質量部含むポリオレフィン樹脂組成物が開示されている。上記難燃剤としては、臭素やアンチモン等のハロゲン系難燃剤や、リン酸塩等のノンハロゲン系難燃剤が記載されている。また、特許文献2においても、上記のようなポリオレフィン樹脂組成物が、難燃性や放熱性を備えることが記載されている。
特開2013-43949号公報 特開2015-189783号公報
近年、CPUの高速化に伴い、従来よりも高い放熱性と難燃性が求められている。しかしながら、特許文献1や特許文献2の樹脂成形体では、放熱性がなお十分ではなかった。特に、放熱性を高めようとすると、難燃性が低下する場合が多く、放熱性及び難燃性を高いレベルで両立することが難しいという問題があった。
本発明の目的は、放熱性及び難燃性を高いレベルで両立することを可能とする、樹脂成形体を提供することにある。
本発明に係る樹脂成形体の広い局面では、オレフィン系樹脂と、膨張黒鉛と、前記膨張黒鉛とは異なる板状黒鉛とを含み、前記膨張黒鉛の膨張倍率が、50ml/g以上、600ml/g以下であり、前記膨張黒鉛の含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、300重量部以下であり、前記板状黒鉛の体積平均粒子径が、30μm以上、500μm以下であり、前記板状黒鉛の含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、300重量部以下である。
本発明に係る樹脂成形体の他の広い局面では、オレフィン系樹脂と、膨張黒鉛と、前記膨張黒鉛とは異なる板状黒鉛とを含み、前記膨張黒鉛及び前記板状黒鉛の混合物の膨張倍率が、10ml/g以上、500ml/g以下であり、前記膨張黒鉛及び前記板状黒鉛の混合物の体積平均粒子径が、40μm以上、400μm以下であり、前記膨張黒鉛の含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、300重量部以下であり、前記板状黒鉛の含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、300重量部以下である。
本発明に係る樹脂成形体のある特定の局面では、前記膨張黒鉛及び前記板状黒鉛の総含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、50重量部以上、500重量部以下である。
本発明に係る樹脂成形体の他の特定の局面では、前記膨張黒鉛と前記板状黒鉛との含有量比(膨張黒鉛/板状黒鉛)が、0.05以上、0.5以下である。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、燃焼規格UL94に準拠して測定された難燃レベルがV1以上である。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、一次粒子径が、0.001μm以上、40μm以下である、難燃剤をさらに含む。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、前記難燃剤の含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、5重量部以上、100重量部以下である。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、体積平均粒子径が、0.001μm以上、40μm以下であり、前記膨張黒鉛及び前記板状黒鉛とは異なる無機フィラーをさらに含む。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、前記無機フィラーの含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、5重量部以上、100重量部以下である。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、前記樹脂成形体が主面を有し、前記主面における面内方向の熱伝導率が、3W/(m・K)以上である。
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、放熱シャーシ、放熱筐体、又はヒートシンク形状である。
本発明によれば、放熱性及び難燃性を高いレベルで両立することを可能とする、樹脂成形体を提供することができる。
図1は、放熱シャーシの模式的斜視図である。 図2は、放熱筐体の模式的斜視図である。 図3は、ヒートシンク形状の模式的斜視図である。
以下、本発明の詳細を説明する。
本願の第1の発明に係る樹脂成形体は、オレフィン系樹脂と、膨張黒鉛と、膨張黒鉛とは異なる板状黒鉛とを含む。膨張黒鉛の膨張倍率は、50ml/g以上、600ml/g以下である。膨張黒鉛の含有量は、オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、300重量部以下である。また、板状黒鉛の体積平均粒子径は、30μm以上、500μm以下である。板状黒鉛の含有量は、オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、300重量部以下である。
本願の第1の発明の樹脂成形体は、上記の構成を備えているので、放熱性及び難燃性を高いレベルで両立することができる。
従来の樹脂成形体では、熱可塑性樹脂と、フィラーと、難燃剤とが用いられることがあるが、放熱性がなお十分でなかった。特に、放熱性を高めようとすると、難燃性が低下する場合が多く、放熱性及び難燃性を高いレベルで両立することが難しいという問題があった。また、難燃剤として、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤を用いる場合が多く、環境的側面からも好ましくないという問題もある。
本発明者らは、膨張黒鉛の膨張倍率と、板状黒鉛の体積平均粒子径とに着目し、膨張倍率が特定の範囲にある膨張黒鉛と、平均粒子径が特定の範囲にある板状黒鉛とをそれぞれ特定の割合で含有することにより、放熱性及び難燃性を高いレベルで両立できることを見出した。
本願の第2の発明に係る樹脂成形体は、オレフィン系樹脂と、膨張黒鉛と、膨張黒鉛とは異なる板状黒鉛とを含む。膨張黒鉛及び前記板状黒鉛の混合物の膨張倍率が、10ml/g以上、500ml/g以下である。膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物の体積平均粒子径が、40μm以上、400μm以下である。膨張黒鉛の含有量は、オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、300重量部以下である。また、板状黒鉛の含有量は、オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、300重量部以下である。
本願の第2の発明の樹脂成形体は、上記の構成を備えているので、放熱性及び難燃性を高いレベルで両立することができる。
従来の樹脂成形体では、熱可塑性樹脂と、フィラーと、難燃剤とが用いられることがあるが、放熱性がなお十分でなかった。特に、放熱性を高めようとすると、難燃性が低下する場合が多く、放熱性及び難燃性を高いレベルで両立することが難しいという問題があった。また、難燃剤として、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤を用いる場合が多く、環境的側面からも好ましくないという問題もある。
本発明者らは、膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物の膨張倍率と、膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物の体積平均粒子径とに着目し、膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物の膨張倍率と膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物の体積平均粒子径とがそれぞれ特定の範囲にあり、膨張黒鉛と板状黒鉛とをそれぞれ特定の割合で含有することにより、放熱性及び難燃性を高いレベルで両立できることを見出した。
以下、本願の第1の発明及び第2の発明を総称して本願発明と称する場合があるものとする。
本発明の樹脂成形体は、高い放熱性を有するので、例えば、機構部品における放熱板に用いた場合、電子機器内部で発生する熱を効率的に外部へ放出することができる。また、同時に高い難燃性も発現することができる。そのため、電子機器の信頼性を高めることができる。
また、膨張黒鉛や板状黒鉛のような炭素材料によって難燃性を高めることができるので、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤を含まない、あるいは少量添加した場合においても、高い難燃性を得ることができる。そのため、環境的側面からも好適に用いることができる。
もっとも、本発明においては、膨張黒鉛や板状黒鉛とは異なる難燃剤を含んでいてもよい。膨張黒鉛や板状黒鉛と難燃剤とを併用することで、難燃剤を単独で使用したときと比較しても、難燃性をさらに一層高めることができる。
本発明において、膨張黒鉛の膨張倍率は、50ml/g以上、好ましくは80ml/g以上、より好ましくは150ml/g以上、600ml/g以下、好ましくは500ml/g以下、より好ましくは350ml/g以下である。膨張黒鉛の膨張倍率が上記下限値以上である場合、樹脂成形体の難燃性をより一層高めることができる。膨張黒鉛の膨張倍率が上記上限値以下である場合、樹脂と混練する際の分散性をより一層高めることができ、樹脂成形体の成形性や機械的物性をより一層高めることができる。
膨張黒鉛の膨張倍率は、例えば、以下の方法により測定することができる。
まず、常温での比容積(ml/g)と加熱後の比容積の差で評価し、電気炉で予め700℃に加熱した石英ビーカーに熱膨張材料(膨張黒鉛)を1g投入して、すばやく700℃に加熱した電気炉に1分間入れた後、外に取り出し、室温になるまで徐冷する。その後、膨張した材料のゆるみ見かけ比重(g/ml)を測定し、膨張倍率=1/ゆるみ見かけ比重で算出することができる。
また、膨張黒鉛の含有量は、オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、好ましくは20重量部以上、より好ましくは30重量部以上、300重量部以下、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下である。膨張黒鉛の含有量が上記下限値以上である場合、樹脂成形体の難燃性をより一層高めることができる。膨張黒鉛の含有量が上記上限値以下である場合、樹脂成形体の表面性をより一層良好にすることができ、機械的物性をより一層高めることができる。
本発明において、膨張黒鉛とは異なる板状黒鉛とは、膨張倍率が、10ml/g未満の板状黒鉛である。本明細書においては、この膨張黒鉛とは異なる板状黒鉛を、特に断りのない限りにおいて、単に板状黒鉛というものとする。
板状黒鉛の体積平均粒子径は、30μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは150μm以上、500μm以下、好ましくは400μm以下、より好ましくは350μm以下、さらに好ましくは300μm以下である。板状黒鉛の体積平均粒子径が、上記下限値以上である場合、樹脂成形体の放熱性をより一層高めることができる。また、板状黒鉛の体積平均粒子径が、上記上限値以下である場合、樹脂成形体の難燃性をより一層高めることができる。なお、異なる体積平均粒子径の板状黒鉛を2種類以上組み合わせて使用してもよい。
また、本発明において、板状黒鉛の体積平均粒子径とは、JIS Z 8825:2013に準拠し、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて、レーザー回折法により、体積基準分布で算出した値をいう。
より具体的には、例えば、板状黒鉛をその濃度が2重量%となるように石鹸水溶液(中性洗剤:0.01%含有)に投入し、超音波ホモジナイザーを用いて300Wの出力で超音波を1分間照射し、懸濁液を得る。次に、懸濁液についてレーザー回折/散乱式の粒度分析測定装置(日機装社製、製品名「マイクロトラックMT3300」)により板状黒鉛の体積粒子径分布を測定する。この体積粒子径分布の累積50%の値を板状黒鉛の体積平均粒子径として算出することができる。
本発明において、膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物の膨張倍率は、好ましくは50ml/g以上、より好ましくは100ml/g以上、好ましくは350ml/g以下、より好ましくは300ml/g以下、さらに好ましくは250ml/g以下、特に好ましくは200ml/g以下である。膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物の膨張倍率が上記下限値以上である場合、樹脂成形体の難燃性をより一層高めることができる。膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物の膨張倍率が上記上限値以下である場合、樹脂と混練する際の分散性をより一層高めることができ、樹脂成形体の成形性や機械的物性をより一層高めることができる。なお、異なる体積平均粒子径の板状黒鉛を2種類以上組み合わせて使用した場合は、膨張黒鉛と2種類以上の板状黒鉛との混合物の膨張倍率であるものとする。
本発明において、膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物の体積平均粒子径は、好ましくは60μm以上、より好ましくは100μm以上、好ましくは350μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは300μm未満、特に好ましくは250μm以下である。膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物の体積平均粒子径が、上記下限値以上である場合、樹脂成形体の放熱性をより一層高めることができる。また、膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物の体積平均粒子径が、上記上限値以下である場合、樹脂成形体の難燃性をより一層高めることができる。なお、異なる体積平均粒子径の板状黒鉛を2種類以上組み合わせて使用した場合は、膨張黒鉛と2種類以上の板状黒鉛との混合物の体積平均粒子径であるものとする。
膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物の体積平均粒子径は、例えば、樹脂成形体から切り出した試験片を600℃の温度で加熱して樹脂を除去することにより、膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物を取り出して、上述した膨張倍率や体積平均粒子径の測定方法により測定すればよい。
膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物の膨張倍率は、例えば、以下のようにして測定することができる。樹脂成形体から切り出した試験片1.5gに、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含む、オルトジクロロベンゼン(o-DCB)溶液(BHT:o-DCB(重量比)=50:50)1000ml添加して、混合液を得る。次に、混合液を、溶解ろ過装置(例えば、TOSHO社製、商品名「DF-8020」など)により、混合液の温度を145℃、回転速度25rpmとして、2時間振とうさせて、オレフィン系樹脂を全て溶解させて、樹脂を除去する。それによって、膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物を取り出して、上述した膨張倍率の測定方法により、測定すればよい。
板状黒鉛の含有量は、オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、好ましくは70重量部以上、より好ましくは100重量部以上であり、300重量部以下好ましくは200重量部以下、より好ましくは150重量部以下である。板状黒鉛の含有量が上記下限値以上である場合、放熱性をより一層高めることができる。板状黒鉛の含有量が上記上限値以下である場合、樹脂と混練する際の分散性をより一層高めることができ、樹脂成形体の成形性や機械的物性をより一層高めることができる。
本発明において、膨張黒鉛及び板状黒鉛の総含有量は、オレフィン系樹脂100重量部に対し、好ましくは50重量部以上、より好ましくは100重量部以上、さらに好ましくは150重量部以上、好ましくは500重量部以下、より好ましくは300重量部以下である。膨張黒鉛及び板状黒鉛の総含有量が上記下限値以上である場合、放熱性及び難燃性をより一層高めることができる。膨張黒鉛及び板状黒鉛の総含有量が上記上限値以下である場合、樹脂と混練する際の分散性をより一層高め、樹脂成形体の成形性や機械的物性をより一層高めることができる。
本発明においては、膨張黒鉛と板状黒鉛との含有量比(膨張黒鉛/板状黒鉛)が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。上記含有量比(膨張黒鉛/板状黒鉛)が上記下限値以上である場合、樹脂成形体の難燃性をより一層高めることができる。上記含有量比が上記上限値以下である場合、樹脂成形体の放熱性をより一層高めることができる。
本発明においては、樹脂成形体の燃焼規格UL94に準拠して測定された難燃レベルが、V1以上であることが好ましく、V0以上であることがより好ましい。この場合、樹脂成形体の難燃性をより一層高めることができる。
本発明においては、樹脂成形体の主面における面内方向の熱伝導率が、好ましくは3W/(m・K)以上、より好ましくは8W/(m・K)以上、さらに好ましくは10W/(m・K)以上、特に好ましくは15W/(m・K)以上、最も好ましく20W/(m・K)以上である。面内方向の熱伝導率の上限値は、特に限定されないが、例えば、50W/(m・K)である。
なお、上記主面は、平面であってもよく、曲面であってもよい。また、本発明において主面とは、樹脂成形体の外表面における複数の面のうち最も面積の大きい面であり、連なっている面をいうものとする。
面内方向の熱伝導率は、下記式(1)を用いて計算することができる。
熱伝導率(W/(m・K))=比重(g/cm)×比熱(J/g・K)×熱拡散率(mm/s)…式(1)
熱拡散率は、例えば、ネッチジャパン社製、品番「キセノンフラッシュレーザーアナライザ LFA467 HyperFlash」を用いて測定することができる。
本発明の樹脂成形体は、ポリオレフィン系樹脂と、膨張黒鉛と、板状黒鉛とを含む樹脂組成物の成形体である。本発明の樹脂成形体は、上記樹脂組成物を、例えば、プレス加工、押出加工、押出ラミ加工、または射出成形などの方法によって成形することで得ることができる。
本発明の樹脂成形体は、放熱性及び難燃性の双方に優れている。そのため、本発明の樹脂成形体は、例えば、屋内外で使用する通信機器や、防犯カメラ又はスマートメータなどの電子機器の筐体に好適に用いることができる。あるいは、カーナビ、スマートメータなどのマルチインフォメーションディスプレイ、車載カメラの放熱シャーシ、LED放熱ヒートシンク等のヒートシンク、SoC、GDC等の放熱板に好適に用いることができる。
本発明の樹脂成形体は、放熱シャーシ、放熱筐体、又はヒートシンク形状であることが好ましい。以下、図1~図3を参照して、放熱シャーシ、放熱筐体、及びヒートシンク形状の具体例について説明する。
図1は、放熱シャーシの模式図である。樹脂成形体が放熱シャーシである場合、図1の矢印Aで示す部分が主面である。
図2は、放熱筐体の模式図である。樹脂成形体が放熱筐体である場合、図2の矢印Bで示す部分が主面である。なお、図1及び図2に示すように、主面は凹凸を有していてもよい。
図3は、ヒートシンク形状の模式図である。樹脂成形体がヒートシンク形状である場合、図3の矢印Cで示す部分が主面である。具体的には、底板部の一方側の主面とフィン部の表面が主面である。このように、複数の主面が存在していてもよい。
なお、このような樹脂成形体の表面には、回路形成されていてもよい。
以下、本発明の樹脂成形体を構成する材料の詳細について説明する。
(オレフィン系樹脂)
本発明の樹脂成形体は、オレフィン系樹脂を含む。オレフィン系樹脂としては、特に限定されず、公知のポリオレフィンを用いることができる。ポリオレフィンの具体例としては、エチレン単独重合体であるポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂が挙げられる。また、ポリオレフィンは、プロピレン単独重合体であるポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ブテン単独重合体であるポリブテン、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンの単独重合体又は共重合体などであってもよい。これらのポリオレフィンは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。耐熱性や弾性率をより一層高める観点から、ポリオレフィンは、ポリプロピレンであることが好ましい。
また、ポリオレフィン(オレフィン系樹脂)は、エチレン成分を含有していることが好ましい。エチレン成分の含有量は、5質量%~40質量%であることが好ましい。エチレン成分の含有量が、上記範囲内にある場合、樹脂成形体の耐衝撃性をより一層高めつつ、耐熱性をより一層高めることができる。
(膨張黒鉛)
本発明の樹脂成形体は、膨張黒鉛を含む。膨張黒鉛としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。膨張黒鉛としては、例えば、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものを用いることができる。このように、膨張黒鉛は、黒鉛の層状構造を維持したままの結晶化合物であることが望ましい。
膨張黒鉛は、酸処理して得られた膨張黒鉛が、アンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和されたものであってもよい。
脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
このような膨張黒鉛の具体例としては、例えば、日本化成社製、「CA-60S」等が挙げられる。
膨張黒鉛の体積平均粒子径は、好ましくは40μm以上、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは150μm以上、好ましくは800μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは350μm以下である。膨張黒鉛の体積平均粒子径が上記下限値以上である場合、膨張倍率をより一層大きくすることができ、放熱性及び難燃性をより一層高めることができる。膨張黒鉛の体積平均粒子径が上記上限値以下である場合、樹脂と混練する際の分散性をより一層高め、樹脂成形体の成形性や機械的物性をより一層高めることができる。なお、膨張黒鉛の体積平均粒子径は、板状黒鉛の体積平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
(板状黒鉛)
本発明の樹脂成形体は、膨張黒鉛とは異なる板状黒鉛を含む。板状黒鉛としては、板状の黒鉛である限りにおいて特に限定されないが、例えば、黒鉛、薄片化黒鉛又はグラフェンなどを用いることができる。放熱性及び難燃性をより一層高める観点からは、好ましくは黒鉛又は薄片化黒鉛である。これらは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。なお、黒鉛は、鱗片状黒鉛であってもよい。
薄片化黒鉛とは、元の黒鉛を剥離処理して得られるものであり、元の黒鉛よりも薄いグラフェンシート積層体をいう。薄片化黒鉛にするための剥離処理としては、特に限定されず、超臨界流体などを用いた機械的剥離法、あるいは酸を用いた化学的剥離法のいずれを用いてもよい。薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は、元の黒鉛より少なければよいが、1000層以下であることが好ましく、500層以下であることがより好ましく、200層以下であることがさらに好ましい。
板状黒鉛のアスペクト比は、好ましくは5以上、より好ましくは21以上、好ましくは2000以下、より好ましくは1000以下、さらに好ましくは100以下である。板状黒鉛のアスペクト比が、上記下限以上である場合、面方向における放熱性をより一層高めることができる。また、板状黒鉛のアスペクト比が上記上限以下である場合、射出成型時に黒鉛粒子自身がオレフィン系樹脂中でより一層折れ曲がり難い。そのため、ガスバリア性能をより一層高め、難燃性をより一層向上させることができる。なお、本明細書において、アスペクト比とは、板状黒鉛の厚みに対する板状黒鉛の積層面方向における最大寸法の比をいう。
なお、板状黒鉛の形状及び厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することができる。より一層観察し易くする観点から、樹脂成形体から切り出した試験片を600℃で加熱することで樹脂を飛ばして透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することが望ましい。なお、試験片は、樹脂を飛ばして板状黒鉛の厚みを測定できる限り、樹脂成形体の主面に沿う方向に沿って切り出してもよく、樹脂成形体の主面に直交する方向に沿って切り出してもよい。
(難燃剤)
本発明の樹脂成形体は、さらに他の難燃剤を含んでいてもよい。他の難燃剤としては、特に限定されないが、臭素化合物、リン化合物、塩素化合物、アンチモン化合物、金属水酸化物、窒素化合物、ホウ素化合物などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
難燃性をより一層高める観点からは、難燃剤として、ハロゲン系難燃剤及びリン系難燃剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。なかでも、成型時のガス発生から生じる焦げをより一層効果的に防止するため、リン系難燃剤を用いることが好ましい。
難燃剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、オレフィン系樹脂100重量部に対し、5重量部以上、100重量部以下であることが好ましい。難燃剤の含有量が上記下限値以上である場合、樹脂成形体の難燃性をより一層高めることができる。また、難燃剤の含有量が上記上限値以下である場合、樹脂成形体の放熱性をより一層高めることができる。
難燃剤の一次粒子径は、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは1μm以上、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
特に、本発明においては、体積平均粒子径が、40μm以上、500μm以下の板状黒鉛と、一次粒子径が、0.001μm以上、40μm以下である難燃剤とを組み合わせることによって、放熱性の低下をより一層抑制しつつ、難燃性をより一層高めることができる。なお、難燃剤の一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡により得られた難燃剤の画像データを用いて求めた平均一次粒子径である。透過型電子顕微鏡としては、例えば、日本電子社製、製品名「JEM-2200FS」を用いることができる。
ハロゲン系難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、低分子臭素含有化合物や、ハロゲン化されたポリマーやオリゴマーなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
低分子臭素含有化合物としては、例えば、パークロロペンタシクロデカン、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス-(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。
ハロゲン化されたポリマーやオリゴマーとしては、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ化合物、臭素化フェノキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA/塩素化シアヌル/臭素化フェノール縮合物等が挙げられる。
また、ハロゲン系難燃剤には、難燃助剤としての酸化アンチモン類を併用することが好ましい。酸化アンチモン類としては、特に限定されないが、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
難燃助剤としての酸化アンチモン類の含有量は、特に限定されないが、ハロゲン系難燃剤100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは20重量部以上、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部である。なかでも、ハロゲン系難燃剤のハロゲン原子2~5個当たり、アンチモン原子1個の割合で添加することが特に好ましい。
リン系難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で示されるリン化合物、赤燐、又はポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
Figure 0007495181000001
一般式(1)中、R及びRは、同一であってもよく、異なっていてもよい。R及びRは、それぞれ、水素、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6~16のアリール基を示す。Rは、水酸基、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1~16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6~16のアリール基、又は炭素数6~16のアリールオキシ基を示す。
一般式(1)で表される化合物としては、特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n-プロピルホスホン酸、n-ブチルホスホン酸、2-メチルプロピルホスホン酸、t-ブチルホスホン酸、2,3-ジメチル-ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4-メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。なかでも、t-ブチルホスホン酸は、高価ではあるものの、難燃性をより一層高めることができる。また、これらは、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
赤燐としては、特に限定されず、市販の赤燐を用いることができる。もっとも、耐湿性をより一層高め、混練時に自然発火しない等の安全性をより一層高める観点から、赤燐粒子の表面をポリリン酸アンモニウム樹脂でコーティングしたもの等を好適に用いることができる。
(無機フィラー)
本発明の樹脂成形体は、さらに無機フィラーを含んでいてもよい。無機フィラーとしては、特に限定されず、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、カルシウム塩、シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルーン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
金属酸化物としては、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等が挙げられる。
金属水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
金属炭酸塩としては、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等が挙げられる。
カルシウム塩としては、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
無機フィラーの体積平均粒子径は、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは1μm以上、好ましくは40μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
特に、本発明においては、体積平均粒子径が、30μm以上、500μm以下の板状黒鉛と、体積平均粒子径が、0.001μm以上、40μm以下である無機フィラーとを組み合わせることによって、放熱性の低下をより一層抑制しつつ、難燃性をより一層高めることができる。なお、無機フィラーの体積平均粒子径は、板状黒鉛の体積平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
無機フィラーの含有量は、特に限定されないが、例えば、オレフィン系樹脂100重量部に対し、5重量部以上、100重量部以下であることが好ましい。無機フィラーの含有量が上記下限値以上である場合、樹脂成形体の難燃性をより一層高めることができる。また、無機フィラーの含有量が上記上限値以下である場合、樹脂と混練する際の分散性をより一層高め、樹脂成形体の成形性や機械的物性をより一層高めることができる。
(繊維系フィラー)
本発明の樹脂成形体は、さらに繊維系フィラーを含んでいてもよい。上記繊維系フィラーとしては、例えば、金属繊維、炭素繊維、セルロース繊維、アラミド繊維又はガラス繊維が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
繊維系フィラーの含有量は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、1重量部以上、200重量部以下であることが好ましい。繊維系フィラーの含有量が上記範囲内にある場合、樹脂成形体を形成する際の樹脂組成物により一層優れた流動性を付与することができる。
炭素繊維としては、特に限定されないが、PAN系若しくはピッチ系の炭素繊維などを用いることができる。
(その他の添加剤)
本発明の樹脂成形体は、さらに任意成分として様々な添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、フェノール系、リン系、アミン系、イオウ系などの酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系などの紫外線吸収剤;金属害防止剤;各種充填剤;帯電防止剤;安定剤;顔料などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
以下、本発明の樹脂成形体の製造方法の一例について説明する。
(樹脂成形体の製造方法)
本発明の樹脂成形体は、例えば、以下の方法により製造することができる。
まず、ポリオレフィン系樹脂と、膨張黒鉛、板状黒鉛とを含む樹脂組成物を用意する。樹脂組成物中には、上述したさまざまな材料がさらに含まれていてもよい。樹脂組成物中においては、ポリオレフィン系樹脂中に膨張黒鉛が分散されていることが好ましい。この場合、得られる樹脂成形体の難燃性をより一層高めることができる。ポリオレフィン系樹脂中に膨張黒鉛や板状黒鉛を分散させる方法については、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂を加熱溶融させて膨張黒鉛や板状黒鉛と混練することで、より一層均一に分散させることができる。
上記混練方法については、特に限定されないが、例えば、プラストミルなどの二軸スクリュー混練機、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、加圧式ニーダーなどの混練装置を用いて、加熱下において混練する方法などが挙げられる。これらのなかでも、加圧式ニーダーを用いて溶融混練する方法が好ましい。
次に、用意した樹脂組成物を、例えば、プレス加工、押出加工、押出ラミ加工、または射出成形などの方法によって成形することで、樹脂成形体を得ることができる。
このように本発明の樹脂成形体においては、目的とする用途に応じて、物性を適宜調整することができる。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明の効果を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
オレフィン系樹脂としてのポリプロピレン(PP)100重量部と、膨張黒鉛10重量部と、板状黒鉛としての鱗片状黒鉛100重量部とを、ラボプラストミル(東洋精機社製、品番「R100」)を用いて、180℃で溶融混練することにより樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、樹脂組成物の温度180℃、金型の温度40℃にて射出成形することで、縦100mm×横100mm×厚み2mmの樹脂成形体を得た。なお、ポリプロピレンとしては、日本ポリプロ社製、商品名「BC10HRF」を用いた。膨張黒鉛としては、富士黒鉛工業社製、商品名「EXP-80S220」(膨張倍率200ml/g、体積平均粒子径:180μm)を用いた。鱗片状黒鉛としては、中越黒鉛工業所社製、商品名「CPB-100」(体積平均粒子径:100μm)を用いた。
また、得られた樹脂成形体を切り出した試験片を600℃で加熱することで樹脂を除去し、板状黒鉛及び膨張黒鉛の混合物を取り出して以下の体積平均粒子径の測定に供した。
体積平均粒子径は、JIS Z 8825に準拠して、粒子径解析-レーザー回折/散乱法により測定した。具体的には、上記のようにして得られた混合物をその濃度が2重量%となるように石鹸水溶液(中性洗剤:0.01%含有)に投入し、超音波ホモジナイザーを用いて300wの出力で超音波を1分間照射し、これにより懸濁液を得た。次に、懸濁液についてレーザー回折・散乱式の粒度分析測定装置(日機装社製、製品名「マイクロトラックMT3300」)により混合物の体積粒子径分布を測定し、この体積粒子径分布の累積50%の値を混合物の平均体積粒子径として算出した。なお、以下の実施例及び比較例においても同様の方法で求めた。
また、樹脂成形体から切り出した試験片1.5gに、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含む、オルトジクロロベンゼン(o-DCB)溶液(BHT:o-DCB(重量比)=50:50)1000ml添加して、混合液を得た。次に、混合液を、溶解ろ過装置(例えば、TOSHO社製、商品名「DF-8020」など)により、混合液の温度を145℃、回転速度25rpmとして、2時間振とうさせて、オレフィン系樹脂を全て溶解させて、樹脂を除去した。それによって、膨張黒鉛及び板状黒鉛の混合物を取り出して以下の膨張倍率の測定に供した。
膨張倍率の測定に際しては、常温での比容積(ml/g)と加熱後の比容積の差で評価し、電気炉で予め700℃に加熱した石英ビーカーに上記のようにして得られた混合物を1g投入して、すばやく700℃に加熱した電気炉に1分間入れた後、外に取り出し、室温になるまで徐冷した。その後、膨張した材料のゆるみ見かけ比重(g/ml)を測定し、膨張倍率=1/ゆるみ見かけ比重で算出した。なお、以下の実施例及び比較例においても同様の方法で求めた。
(実施例2)
膨張黒鉛の添加量を20重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例3)
膨張黒鉛の添加量を30重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例4)
膨張黒鉛の添加量を100重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例5)
膨張黒鉛の添加量を200重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例6)
膨張黒鉛の添加量を300重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例7)
膨張黒鉛として、膨張倍率80ml/g、体積平均粒子径:30μm(富士黒鉛工業社製、商品名「EXP-100S」)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例8)
膨張黒鉛として、膨張倍率400ml/g、体積平均粒子径:500μm(伊藤黒鉛工業社製、商品名「9532400A」)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例9)
板状黒鉛の添加量を50重量部としたこと以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例10)
板状黒鉛の添加量を200重量部としたこと以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例11)
板状黒鉛の添加量を300重量部としたこと以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例12)
体積平均粒子径30μmの鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、商品名「-300」)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例13)
体積平均粒子径200μmの鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、商品名「XD150」)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例14)
体積平均粒子径300μmの鱗片状黒鉛(中越黒鉛工業所社製、商品名「CPB-80」)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例15)
板状黒鉛として鱗片状黒鉛の代わりに体積平均粒子径30μmの薄片化黒鉛(日本黒鉛社製、商品名「UP-35N」)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例16)
板状黒鉛として鱗片状黒鉛の代わりに体積平均粒子径100μmの薄片化黒鉛(アイテック社製、商品名「iGrafen-α」)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例17)
板状の黒鉛として鱗片状黒鉛の代わりに体積平均粒子径200μmの薄片化黒鉛(中越黒鉛社製、商品名「BSP-200AK」)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例18)
板状の黒鉛として鱗片状黒鉛の代わりに体積平均粒子径300μmの薄片化黒鉛(中越黒鉛社製、商品名「BSP-300AK」)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例19)
オレフィン系樹脂としてのポリプロピレン(PP)100重量部と、膨張黒鉛20重量部と、板状黒鉛としての鱗片状黒鉛100重量部と、難燃剤としてハロゲン系難燃剤10重量部とをラボプラストミル(東洋精機社製、品番「R100」)を用いて、180℃で溶融混練することにより樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、樹脂組成物の温度180℃、金型の温度40℃にて射出成形することで、縦100mm×横100mm×厚み2mmの樹脂成形体を得た。ポリプロピレンとしては、日本ポリプロ社製、商品名「BC10HRF」を用いた。膨張黒鉛としては、富士黒鉛工業社製、商品名「EXP-80S220」(膨張倍率200ml/g、体積平均粒子径:180μm)を用いた。鱗片状黒鉛としては、中越黒鉛工業所社製、商品名「CPB-100」(体積平均粒子径:100μm)を用いた。また、ハロゲン系難燃剤として、アンチモンと、鈴裕化学社製、商品名「ファイアカットP-1590」(一次粒子径:3.5μm)を用いた。
(実施例20)
ハロゲン系難燃剤を20重量部としたこと以外は、実施例19と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例21)
ハロゲン系難燃剤を50重量部としたこと以外は、実施例19と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例22)
ハロゲン系難燃剤の代わりに、リン系難燃剤としてのポリリン酸アンモニウム(クラリアントケミカルズ社製、商品名「AP423」、一次粒子径:8μm)を用いたこと以外は、実施例19と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例23)
リン系難燃剤としてのポリリン酸アンモニウム(クラリアントケミカルズ社製、商品名「AP423」)を20重量部としたこと以外は、実施例22と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例24)
リン系難燃剤としてのポリリン酸アンモニウム(クラリアントケミカルズ社製、商品名「AP423」)を50重量部としたこと以外は、実施例22と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例25)
ハロゲン系難燃剤の代わりに、金属水酸化物としての水酸化アルミニウム(アルモリックス社製、商品名「B-325」、体積平均粒子径:27μm)を用いたこと以外は、実施例19と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例26)
難燃剤としての水酸化アルミニウム(アルモリックス社製、商品名「B-325」、体積平均粒子径:27μm)を20重量部としたこと以外は、実施例25と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例27)
難燃剤としての水酸化アルミニウム(アルモリックス社製、商品名「B-325」、体積平均粒子径:27μm)を50重量部としたこと以外は、実施例25と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例28)
ハロゲン系難燃剤の代わりに、無機フィラーとしてのアルミナ(デンカ社製、商品名「DAM-03」、体積平均粒子径:4μm)を用いたこと以外は、実施例20と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例29)
ハロゲン系難燃剤の代わりに、無機フィラーとしての炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名「μpowder 3S」、体積平均粒子径:1μm)を用いたこと以外は、実施例20と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例30)
ハロゲン系難燃剤の代わりに、無機フィラーとしてのカーボンブラック(ライオン社製、商品名「EC200L」、一次粒子径:40nm)を用いたこと以外は、実施例20と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例31)
無機フィラーとしてのアルミナ(デンカ社製、商品名「DAM-03」、体積平均粒子径:4μm)10重量部をさらに添加したこと以外は、実施例22と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例32)
無機フィラーとしての炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名「μpowder 3S」、体積平均粒子径:1μm)10重量部をさらに添加したこと以外は、実施例22と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例33)
無機フィラーとしてのカーボンブラック(ライオン社製、商品名「EC200L」、一次粒子径:40nm)10重量部をさらに添加したこと以外は、実施例22と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例34)
ガラス繊維(日本電気硝子社製、商品名「HP3273」、繊維径13μm、繊維長:4.5mm)10重量部をさらに添加したこと以外は、実施例22と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例35)
ガラス繊維(日本電気硝子社製、商品名「HP3273」、繊維径13μm、繊維長:4.5mm)50重量部をさらに添加したこと以外は、実施例22と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例36)
ガラス繊維(日本電気硝子社製、商品名「HP3273」、繊維径13μm、繊維長:4.5mm)100重量部をさらに添加したこと以外は、実施例22と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例37)
ポリプロピレン(PP)の代わりにポリエチレン(PE、プライムポリマー社製、商品名「2208J」)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして樹脂成形体を得た。
(実施例38)
ポリプロピレン(PP)の代わりに環状オレフィンコポリマー(COC、ポリプラスチックス社製、商品名「5013L-10」)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして樹脂成形体を得た。
(比較例1)
膨張黒鉛として、膨張倍率45ml/g、体積平均粒子径:100μm(伊藤黒鉛工業社製、商品名「9532400A」)を用い、板状黒鉛の添加量を200重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
(比較例2)
膨張黒鉛の添加量を2重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
(比較例3)
膨張黒鉛として、膨張倍率80ml/g、体積平均粒子径:30μm(富士黒鉛工業社製、商品名「EXP-100S」)を用い、板状黒鉛として、体積平均粒子径7μmの鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、商品名「-300」)50重量部を用いたこと以外は、実施例3と同様にして樹脂成形体を得た。
(評価方法)
実施例及び比較例で得られた樹脂成形体について、以下の評価を行った。結果を下記の表1~表4に示す。
<難燃性>
樹脂成形体を平面視において長方形状となるように長さ125mm×幅13mm×厚み1.5mmに裁断して試験片を作製し、試験片(樹脂成形体)の燃焼性をUL94 V試験に準拠して評価した。UL94 V試験は、V0、V1、V2で評価し、当てはまらないものは該当せずと表記した。
<面内方向の熱伝導率(W/(m・K))>
面内方向の熱伝導率(面内方向熱伝導率)は、ネッチジャパン社製、品番「キセノンフラッシュレーザーアナライザ LFA467 HyperFlash」を用いて測定した。具体的には実施例及び比較例に記載の方法で縦100mm×横100mm×厚み2mmに成形した樹脂成形体から、縦10mm×横2mm×厚み2mmに打ち抜き、測定サンプルとした。面内方向熱伝導率が測定できる向きで測定サンプルをホルダにはめ込み、30℃における熱拡散率を測定し、以下の式(1)に従って熱伝導率を算出した。
熱伝導率(W/(m・K))=比重(g/cm)×比熱(J/g・K)×熱拡散率(mm/s)…式(1)
Figure 0007495181000002
Figure 0007495181000003
Figure 0007495181000004
Figure 0007495181000005
表1~表4から明らかなように、実施例1~38の樹脂成形体は、放熱性及び難燃性を高いレベルで両立できていることが確認できた。他方、比較例1~3の樹脂成形体では、放熱性及び難燃性のうち少なくともいずれかが十分でなかった。

Claims (11)

  1. オレフィン系樹脂と、膨張黒鉛と、前記膨張黒鉛とは異なる板状黒鉛とを含み、
    前記膨張黒鉛の膨張倍率が、50ml/g以上、600ml/g以下であり、
    前記膨張黒鉛の体積平均粒子径が、180μm以上、800μm以下であり、
    前記膨張黒鉛の含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、300重量部以下であり、
    前記板状黒鉛の体積平均粒子径が、30μm以上、500μm以下であり、
    前記板状黒鉛の含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、300重量部以下である、樹脂成形体。
  2. オレフィン系樹脂と、膨張黒鉛と、前記膨張黒鉛とは異なる板状黒鉛とを含み、
    前記膨張黒鉛及び前記板状黒鉛の混合物の膨張倍率が、10ml/g以上、500ml/g以下であり、
    前記膨張黒鉛及び前記板状黒鉛の混合物の体積平均粒子径が、100μm以上、400μm以下であり、
    前記膨張黒鉛の体積平均粒子径が、180μm以上、800μm以下であり、
    前記膨張黒鉛の含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、300重量部以下であり、
    前記板状黒鉛の含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、10重量部以上、300重量部以下である、樹脂成形体。
  3. 前記膨張黒鉛及び前記板状黒鉛の総含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、50重量部以上、500重量部以下である、請求項1又は2に記載の樹脂成形体。
  4. 前記膨張黒鉛と前記板状黒鉛との含有量比(膨張黒鉛/板状黒鉛)が、0.05以上、0.5以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  5. 燃焼規格UL94に準拠して測定された難燃レベルがV1以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  6. 一次粒子径が、0.001μm以上、40μm以下である、難燃剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  7. 前記難燃剤の含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、5重量部以上、100重量部以下である、請求項6に記載の樹脂成形体。
  8. 体積平均粒子径が、0.001μm以上、40μm以下であり、前記膨張黒鉛及び前記板状黒鉛とは異なる無機フィラーをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  9. 前記無機フィラーの含有量が、前記オレフィン系樹脂100重量部に対し、5重量部以上、100重量部以下である、請求項8に記載の樹脂成形体。
  10. 前記樹脂成形体が主面を有し、
    前記主面における面内方向の熱伝導率が、3W/(m・K)以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
  11. 放熱シャーシ、放熱筐体、又はヒートシンク形状である、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
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