JP2005070258A - 液晶プロジェクター用筐体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高い難燃性、電磁波シールド性、成形性・量産性を有する液晶プロジェクター用筐体を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂を20〜87重量%、導電性繊維を10〜60重量%、難燃剤を3〜20重量%含む樹脂組成物からなることを特徴とする液晶プロジェクター用筐体。
【選択図】 なし
【解決手段】 熱可塑性樹脂を20〜87重量%、導電性繊維を10〜60重量%、難燃剤を3〜20重量%含む樹脂組成物からなることを特徴とする液晶プロジェクター用筐体。
【選択図】 なし
Description
本発明は、液晶プロジェクター用筐体に関する。
従来から液晶プロジェクター用筐体には、高い難燃性、電磁波シールド性、成形性・量産性が要求されている。
成形性・量産性に優れるプラスチック材料の中でも、ポリカーボネート樹脂は、自己消火性を有する難燃性の高いプラスチック材料であり、その他に耐衝撃性、耐熱性に優れているためしばしば液晶プロジェクター用筐体材料に使用されている。また、例えば非特許文献1には、特定のシリコーン難燃剤を添加してさらに難燃性を向上させたポリカーボネート樹脂組成物の使用例として液晶プロジェクター用筐体が掲載されている。しかし、これらポリカーボネート樹脂は電磁波に対して透過性であるから電磁波シールド性能に難点がある。ポリカーボネート樹脂を用いた液晶プロジェクター用筐体の電磁波シールド性能を向上するには該筐体を金属メッキ処理する手段があるが、金属メッキ処理は、それ自体がコスト高なだけでなく、金属メッキ時に発生する廃水の環境への悪影響も問題となる。
また、非特許文献2には、マグネシウム合金材料が液晶プロジェクター用筐体に使用される記載がある。マグネシウム合金は、電磁波シールド性、難燃性に優れるだけでなく、金属の中で最も比重の小さい魅力ある材料であるため近年その成形法が検討・開発され、一部の液晶プロジェクター用筐体に使用されている。しかしながら、マグネシウム合金は大型部品の成形が難しく量産性が低いため高コストが問題となっていた。
また難燃性については、例えば特許文献2に記載されているように、電気・電子機器の難燃性はUL94 V−0,V−1クラスの難燃性が求められていたが、液晶プロジェクターは使用時の発熱が大きいため、他の電気・電子機器に比べより高いレベルでの難燃性が望まれていた。
尚、非特許文献3は、本発明の評価で採用したKEC法の内容紹介に関するものである。
ポリマーフロンティア21シリーズ(14)"高分子の難燃・放熱制御技術",(社)高分子学会,108頁 "2002マグネシウムマニュアル",日本マグネシウム協会,66頁 "測定法「KEC法」の紹介"、[online]、社団法人関西電子工業振興センター、インターネット< URL : http://www.kec.or.jp/> 特開平13−81318号公報
特開平11−217494号公報
ポリマーフロンティア21シリーズ(14)"高分子の難燃・放熱制御技術",(社)高分子学会,108頁 "2002マグネシウムマニュアル",日本マグネシウム協会,66頁 "測定法「KEC法」の紹介"、[online]、社団法人関西電子工業振興センター、インターネット< URL : http://www.kec.or.jp/>
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、高い難燃性、電磁波シールド性、成形性・量産性に優れた液晶プロジェクター用筐体を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂を20〜87重量%、導電性繊維を10〜60重量%、難燃剤を3〜20重量%含む樹脂組成物からなることを特徴とする液晶プロジェクター用筐体である。
本発明により、難燃性、電磁波シールド性、成形性・量産性に優れた液晶プロジェクター用筐体を提供することが可能となる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の液晶プロジェクター用筐体は、樹脂組成物からなるものとする。そうすることにより、金属に比べ優れた成形性・量産性を得ることができる。尚、装飾・補助等のために金属等、樹脂以外の素材を筐体の一部に用いても良い。
前記樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、導電性繊維、および難燃剤を含むことが重要である。
熱可塑性樹脂は、樹脂組成物およびその硬化物のマトリックス樹脂となり、成形性を得るために必須である。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアリーレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、HIPS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などのアクリル樹脂、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂などの熱可塑性樹脂、さらにはエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体、エチレン/一酸化炭素/ジエン共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレン/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルエーテルエラストマー、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリエステルアミドエラストマー、ポリエステルエステルエラストマーなどの各種エラストマー類などが例示され、これらのうち1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。
液晶プロジェクター用筐体の耐熱性、耐薬品性の観点からはポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂を好ましく用いることができ、中でも強度、剛性、耐衝撃性などの機械特性、表面外観品位、経済性のバランスに優れたポリアミド樹脂をより好ましく用いることができる。
ポリアミド樹脂としては、その入手のし易さからナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/ナイロン66の共重合体、ナイロンXD6、ナイロンMXD6、ナイロン6T/6I、ナイロン66/6I、およびナイロン6/66/6Iコポリマーなどを挙げらることができ、また、ナイロン6、ナイロン66、ナイロンMXD6、ナイロン6/66/6Iは、成形時の高い流動性が得られるとともに、成形後の収縮、ヒケやウェルド部の膨らみを抑制でき、高い成形性と外観品位に優れるので特に好ましい。ポリアミド樹脂はこれらのうち1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
これらポリアミド樹脂の分子の大きさは、成形時の流動性の観点から、相対粘度ηrとして1.5〜2.5が好ましい目安となり、特に好ましい目安としては1.8〜2.3の範囲である。相対粘度ηrは、熱可塑性樹脂1gを98%硫酸100mLに溶解し、オストワルド粘度計を使用して25℃にて測定できる(98%硫酸法)。尚、樹脂組成物またはその硬化物の中の熱可塑性樹脂の相対粘度ηrを測定するには、当該熱可塑性樹脂を溶解しうる溶媒にて十分溶解させ、濾過することにより熱可塑性樹脂を分離・抽出することができる。
樹脂組成物に対する熱可塑性樹脂の含有量は、20〜87重量%とすることが重要である。20重量%未満であると成形時に十分な流動性を得ることができず、成形品としても成形品内の成分間の接着が不十分となり十分な強度を得ることができない。また、上限値の87重量%は、他の成分(導電性繊維および難燃剤)の含有量の下限値から定まる。
導電性繊維は、成形品である液晶プロジェクター用筐体の電磁波シールド性を向上させるために重要である。導電性繊維としては例えば、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属繊維(ステンレス鋼繊維、銅繊維など)などの単独で導電性を示す繊維を採用することができる。また、絶縁性繊維(有機繊維としてはアラミド繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維など、無機繊維としてはガラス繊維、シリコンカーバイド繊維、シリコンナイトライド繊維など。)や導電性繊維(金属繊維、炭素繊維)に、導電体(金属、金属酸化物、カーボン等)を被覆したものでも良い。また、これらのうち1種を単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。その中でも、価格、力学的特性、導電性、比重のバランスに優れる炭素繊維が好ましい。
炭素繊維としては例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、セルロース系、炭化水素による気相成長系炭素繊維、黒鉛繊維、またこれらをメッキ法(電解、無電解)、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、蒸着法などによりニッケル、イッテルビウム、金、銀、銅などの金属で被覆した金属被覆炭素繊維等を採用することができる。また、これらを2種類以上併用しても良い。なかでも、強度と弾性率などの力学的特性と価格とのバランスに優れるPAN系炭素繊維が好ましい。
また、カーボンナノチューブとしては例えば、単層ナノチューブ、多層ナノチューブなどを使用することができ、これらのうち1種を単独で使用しても2種以上併用しても良い。中でも、供給、価格、導電性付与効果などの総合的な面から、多層ナノチューブが好ましい。
導電性繊維が炭素繊維である場合、その重量平均繊維長は、0.35〜2mmとするのが好ましい。0.35mm以上とすることで、優れた電磁波シールド性や機械強度を得ることができる。また炭素繊維は、本発明の樹脂組成物に混練した場合剪断応力により2mm以下程度となる。
重量平均繊維長Lwは、個々の繊維の繊維長Liと、重量Wiに対して、
Lw=Σ(Wi×Li)/ΣWi
で表されるが、繊維径および密度が一定の場合には、繊維長Liを有する繊維の本数をNiとして、
Lw=Σ(Ni×Li2)/Σ(Ni×Li)
として測定することができる。尚、樹脂組成物またはその硬化物の中の繊維の重量平均繊維長を測定するには、繊維は溶解せずに樹脂組成物またはその硬化物の樹脂等の成分を溶解する溶媒などに樹脂組成物またはその硬化物を一定時間浸漬し、樹脂等の成分を十分溶解させ、濾過することにより繊維を分離することができる。
Lw=Σ(Wi×Li)/ΣWi
で表されるが、繊維径および密度が一定の場合には、繊維長Liを有する繊維の本数をNiとして、
Lw=Σ(Ni×Li2)/Σ(Ni×Li)
として測定することができる。尚、樹脂組成物またはその硬化物の中の繊維の重量平均繊維長を測定するには、繊維は溶解せずに樹脂組成物またはその硬化物の樹脂等の成分を溶解する溶媒などに樹脂組成物またはその硬化物を一定時間浸漬し、樹脂等の成分を十分溶解させ、濾過することにより繊維を分離することができる。
樹脂組成物に対する導電性繊維の含有量としては、10〜60重量%とすることが重要である。10重量%未満とすると、成形品である液晶プロジェクター用筐体に十分な電磁波シールド性を付与することができない。また60重量%を超えると、成形時の流動性が低くなり所望の成形を遂行することができない。
難燃剤は、成形品である液晶プロジェクター用筐体に難燃性を付与するために重要である。難燃剤としては例えば、ハロゲン系、燐系、無機系などの難燃剤を使用できる。具体的には、テトラブロモビスフェノールA及びその誘導体、デカブロモジフェニルエーテル、ブロモビスフェノールS、テトラブロモ無水フタル酸、ポリジブロモフェニレンオキサイド、ヘキサブロモシクロドデカン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボランジカルモキシルイミド、ペンタブロモジフェニルオキサイド、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、ヘキサブロモベンゼン、臭素化エポキシ系難燃剤、臭素化ポリカーボネート系難燃剤、臭素化ポリフェニレンオキサイド系難燃剤、臭素化スチレン系難燃剤などのハロゲン系難燃剤、赤燐、アルキルホスフェート、アリルホスフェート、アルキルアリルフォスフェート、芳香族縮合燐酸エステル、塩化ホスフォニトリル誘導体、ホスフォノアミド系難燃剤、ビニルホスフォネート、アリルホスフォネート、ポリ燐酸アンモニウム、ポリ燐酸アミド、メラミンホスフェートなどの燐系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化錫、水酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、硼酸亜鉛、硼酸バリウム、アルミン酸カルシウム、クレーなどの無機系難燃剤、またメラミン、メラミンシアヌレートなどの含窒素系、シリコーン系重合体、ポリテトラフルオロエチレンなどの難燃助剤を挙げることができ、これらのうち1種を単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。なかでも、環境負荷と難燃性の観点からは燐系難燃剤、とりわけ赤燐が好ましい。また、これら難燃剤は、予め熱可塑性樹脂と混練したマスターペレットして使用してもよい。
樹脂組成物に対する難燃剤の含有量としては、3〜20重量%とすることが重要である。3重量%未満とすると、成形品である液晶プロジェクター用筐体に十分な難燃性を付与することができない。また20重量%を超えると、コスト高になる割に難燃性向上の効果は飽和し、また衝撃強度等の機械強度が低下する。
また樹脂組成物には、要求される特性に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で無機充填材や添加剤を添加しても良い。
無機充填材としては例えば、ガラス繊維、ガラス粉末、ガラスビーズ、アラミド繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、層状珪酸塩(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、バーミキュライトなどのスメクタイト系粘土鉱物、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母等)、焼成クレイ、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、珪酸カルシウム、ワラステナイト、ゼオライト、セリナイト、カオリン、ベントナイト、アルミナシリコート、マイカ、酸化チタン、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、酸化鉄、フェライト、水酸化鉄、窒化硼素などを採用することができる。
上記のような無機充填材は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、その形状としては、パウダー状、フレーク状、繊維状、ウィスカーバルーン状などを採用できる。
添加剤としては、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、耐電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤、また前述の導電性繊維以外の導電性付与剤などを採用できる。
導電性付与剤としては例えば、カーボンブラック、アモルファスカーボン粉末、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、膨張黒鉛粉末、ピッチマイクロビーズなどを採用でき、その中でも導電性向上の観点からカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックとしては例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなどを採用することができ、これらのうち1種を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。中でも、価格、導電性付与効果などの総合的な面から、ファーネスブラックが好ましい。
本発明の液晶プロジェクター用筐体は、筐体厚みが1.6〜6mmであることが好ましい。1.6mm以上とすることで、電磁波シールド性や機械強度を得ることができる。また6mm以下とすることで、筐体の軽量化や低コスト化を達成することができる。筐体厚みとしてより好ましくは1.6〜4mm、さらに好ましくは2〜3mmである。
本発明の液晶プロジェクター用筐体は、KEC法にて測定される周波数1GHzにおける電波シールド効果が30dB以上であることが好ましい。電波シールド効果が30dB以上であることで、筐体の外部からの電磁波による液晶プロジェクターの誤作動や、外部への電磁波放出による他の電気・電子機器への悪影響を抑えることができる。電波シールド効果としてより好ましくは33dB以上、さらに好ましくは35dB以上である。
ここでKEC法とは、社団法人関西電子工業振興センターによる測定方法で(非特許文献3参照。)、左右対称に分割したシールドボックスに試験片をはさみこんで、スペクトラムアナライザーにて電磁波の減衰度を測定するものである。
かかる電磁波シールド性は、前述のように導電性繊維や補助的に導電性付与剤を適宜採用することにより達成することができる。
また、本発明の液晶プロジェクター用筐体は、該筐体厚みにおいてUL94 5VA規格を満たす樹脂組成物からなることが好ましい。同規格を満たすことにより、他の電気・電子機器に比べ使用時の発熱が大きい液晶プロジェクターでも、難燃性を担保することができる。UL94 5VA規格は、アンダーライターズ・ラボラトリーズで定められたプラスチック材料の燃焼性試験の規格における最高クラスの難燃性のレベルである。UL94 5V試験は、UL V−0,V−1,V−2と比較して、試験片は同様の短冊状試験片を使用するが、約10倍の燃焼エネルギーを有する燃焼炎を使用する過酷な試験である。また、V−0クラスでは、試験中に滴下物(ドリップ)があっても、下に置いてある綿を発火させなければ良いが、5Vクラスでは滴下物がないことが条件であり、この5Vクラスを得ることは非常に困難である。さらに5V規格には5VAと5VBとがあり、短冊状試験片試験による判定の上、板状試験片試験(板状試験片の下部から燃焼炎をあて穴開きの有無を判定する)も行い、「5VA:開口なきこと」、「5VB:開口があっても良い」であり、より難燃性のレベルが高いのは5VAである。
本発明の液晶プロジェクター用筐体の製造方法としては、生産性・量産性の観点からは、樹脂組成物のペレットを作製し、これを成形に供するのが好ましい。
樹脂組成物のペレットの製造方法としては、各必須成分及び任意の添加剤を一括して溶融混練する方法、成分の一部を溶融混練しその途中から残りの成分を添加する方法、成分の一部を予め溶融混練して一旦ペレットとし残りの成分と再度溶融混練する方法、また特定成分同士を別途溶融混練して複数種のペレットとし、これらをブレンドする方法などを採用することができる。
溶融混練には、単軸押出機、二軸押出機やニーダーなど、溶融状態下での機械的剪断を行うことができる装置を用いると良い。また、溶融混練装置の好ましい態様として、溶融混練時に発生する水分や低分子量の揮発成分を除去するためにベント口を設けても良い。また、溶融混練の途中から成分を添加できるようにホッパー口を複数個設けても良い。
また、導電性繊維として炭素繊維を採用し、これを熱可塑性樹脂等と溶融混練する場合には、機械的剪断がかかるシリンダー(ただし原料供給部付近は除く)の温度を樹脂組成物の熱可塑性樹脂の融点(変性ポリフェニレンエーテルやポリアリレートなどの非晶性樹脂の場合には流動開始点)より10℃以上高くすることが好ましい。そうすることで、剪断による炭素繊維の過剰な折損を防ぐことができる。炭素繊維の過剰な折損を防ぐその他の手段としては、強い剪断のかかるようなスクリューの形状は避けること、スクリューの溝深さを深くとること、ダイス径を大きくすることなどが挙げられる。
また、炭素繊維を採用する他の態様として、溶融させた熱可塑性樹脂中に連続した炭素繊維を通過させて、炭素繊維の表面に熱可塑性樹脂を被覆させ、得られたストランドを冷却後に所定の長さに切断することによって、炭素繊維を含む長繊維ペレットとすることも好ましい。この場合、炭素繊維は成形時の剪断により折損が進むので、成形品における所望の繊維長にあわせてペレットの切断長さ(すなわちペレット中の繊維長)を設定すると良く、前述のように成形品中で0.35〜2mmとするには、長繊維ペレットとしては3mm〜15mmとすることが好ましく、より好ましくは5〜10mmである。
本発明の液晶プロジェクター用筐体は、かくして得られる樹脂組成物を射出成形、押出成形、圧縮成形などの方法で成形することによって得られる。なかでも射出成形は、生産性が高く、ウエルド部やヒンジ部を有する成形品やインサート成形品などの複雑な形状の成形品、薄肉成形品にも好適である。
射出成形においては、以下の点に配慮して、炭素繊維の過剰な折損を抑制することがより好ましい。すなわち好ましい成形条件の傾向としては、背圧を低くすること、また射出成形機において、ノズル径を太くすること、スクリューの溝深さを深くすること、テーパー角度を小くすること、圧縮比を低くすること、また成形用金型において、スプルー径、ランナー径、ゲート径を大きくすることなどである。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明する。
[測定・評価方法]
(1)熱可塑性樹脂の相対粘度ηr
熱可塑性樹脂1gを98%硫酸100mLに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。
(1)熱可塑性樹脂の相対粘度ηr
熱可塑性樹脂1gを98%硫酸100mLに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。
(2)電磁波シールド性
KEC法にて評価を行った。作製した筐体の天面中央から120mm×120mmを切出し、試験片を絶乾状態(水分率0.1%以下)とし、四辺に導電性ペースト(藤倉化成(株)製ドータイト)を塗布し、十分に導電性ペーストを乾燥させて試験片とした。そしてスペクトラムアナライザーにて周波数1GHzでの電波シールド効果(dB)を測定した。測定回数はn=2とした。電波シールド効果の数値が高いほど、電磁波シールド性に優れていることを表している。
KEC法にて評価を行った。作製した筐体の天面中央から120mm×120mmを切出し、試験片を絶乾状態(水分率0.1%以下)とし、四辺に導電性ペースト(藤倉化成(株)製ドータイト)を塗布し、十分に導電性ペーストを乾燥させて試験片とした。そしてスペクトラムアナライザーにて周波数1GHzでの電波シールド効果(dB)を測定した。測定回数はn=2とした。電波シールド効果の数値が高いほど、電磁波シールド性に優れていることを表している。
(3)難燃性(UL94 V−0規格)
作製した筐体と同じ厚みの125mm×13mmの試験片(n=5)を成形して、試験片の下端にバーナー炎をあてて10秒間保ち、その後バーナー炎を試験片から離し、炎が消えれば直ちにバーナー炎を更に10秒間あてたのちバーナー炎を離した。そして、1回目,2回目ともに10秒以内で有炎燃焼を終え、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が30秒以内であり、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が50秒以内で、かつ305mm(12インチ)下の面を発火させる燃焼落下物のないものが、V−0規格を満足する。測定は、DJKリサーチセンター(株)に委託した。表1中、規格に合格のものを○、不合格のものを×で示す。
作製した筐体と同じ厚みの125mm×13mmの試験片(n=5)を成形して、試験片の下端にバーナー炎をあてて10秒間保ち、その後バーナー炎を試験片から離し、炎が消えれば直ちにバーナー炎を更に10秒間あてたのちバーナー炎を離した。そして、1回目,2回目ともに10秒以内で有炎燃焼を終え、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼時間の合計が30秒以内であり、更に5本の試験片の有炎燃焼時間の合計が50秒以内で、かつ305mm(12インチ)下の面を発火させる燃焼落下物のないものが、V−0規格を満足する。測定は、DJKリサーチセンター(株)に委託した。表1中、規格に合格のものを○、不合格のものを×で示す。
(4)難燃性(UL94 5VA規格)
作製した筐体と同じ厚みの125mm×13mmの短冊状試験片(n=5)を成形して、V−0規格の試験で用いたバーナー炎に比して10倍の燃焼エネルギーを有するバーナー炎を用いて、短冊状試験片試験を行った。さらに、短冊状試験片試験に合格したものについては、同様に同じ厚みの150mm×150mmの板状試験片(n=5)を成形して、板状試験片の下部から燃焼炎をあて穴開きの有無を判定する板状試験片試験を行い、開口部なきものを5VAとした。測定は、DJKリサーチセンター(株)に委託した。表1中、規格に合格のものを○、不合格のものを×で示す。
作製した筐体と同じ厚みの125mm×13mmの短冊状試験片(n=5)を成形して、V−0規格の試験で用いたバーナー炎に比して10倍の燃焼エネルギーを有するバーナー炎を用いて、短冊状試験片試験を行った。さらに、短冊状試験片試験に合格したものについては、同様に同じ厚みの150mm×150mmの板状試験片(n=5)を成形して、板状試験片の下部から燃焼炎をあて穴開きの有無を判定する板状試験片試験を行い、開口部なきものを5VAとした。測定は、DJKリサーチセンター(株)に委託した。表1中、規格に合格のものを○、不合格のものを×で示す。
(5)重量平均繊維長
作製した筐体の天面の一部から約1gを切り出し、蟻酸100ccに浸漬して12時間放置した。樹脂等の成分が溶解したのを確認した後、ペーパーフィルターを用いて繊維を濾過した。濾過して得た繊維を顕微鏡にて観察し、無作為に抽出した400本の繊維の繊維長を測定し、繊維径および密度が一定であるという前提のもと、次式を用いて算出した。
Lw=Σ(Ni×Li2)/Σ(Ni×Li)
ここで、Lwは重量平均繊維長、Liは繊維長、Niは繊維長Liを有する繊維の本数とする。
作製した筐体の天面の一部から約1gを切り出し、蟻酸100ccに浸漬して12時間放置した。樹脂等の成分が溶解したのを確認した後、ペーパーフィルターを用いて繊維を濾過した。濾過して得た繊維を顕微鏡にて観察し、無作為に抽出した400本の繊維の繊維長を測定し、繊維径および密度が一定であるという前提のもと、次式を用いて算出した。
Lw=Σ(Ni×Li2)/Σ(Ni×Li)
ここで、Lwは重量平均繊維長、Liは繊維長、Niは繊維長Liを有する繊維の本数とする。
(6)総合評価
上記電磁波シールド性、難燃性レベルから、悪い方から×,○,◎の順に3段階で総合評価した。○,◎が、液晶プロジェクター用筐体として、金属メッキ、難燃性付与などの処理なしに使用可能なレベルである。
上記電磁波シールド性、難燃性レベルから、悪い方から×,○,◎の順に3段階で総合評価した。○,◎が、液晶プロジェクター用筐体として、金属メッキ、難燃性付与などの処理なしに使用可能なレベルである。
[材料]
各実施例・比較例に用いた成分は以下のとおりのものを指す。
各実施例・比較例に用いた成分は以下のとおりのものを指す。
(熱可塑性樹脂)
A−1:ナイロン66/6/6I共重合体(ηr=2.0)
A−2:ナイロン6樹脂(ηr=2.4)
A−3:ポリメタキシリレンアジパミド(ηr=2.2)
(導電性繊維)
B−1:短炭素繊維(東レ(株)製チョップドトレカTS−12)
B−2:長炭素繊維(東レ(株)製トレカT700SC−12K)
(難燃剤)
C−1:赤燐(燐化学工業(株)製ノーバエクセル140)
C−2:水酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製キスマ5E)
(導電性付与剤)
D−1:カーボンブラック(三菱化学(株)製3050B)。
A−1:ナイロン66/6/6I共重合体(ηr=2.0)
A−2:ナイロン6樹脂(ηr=2.4)
A−3:ポリメタキシリレンアジパミド(ηr=2.2)
(導電性繊維)
B−1:短炭素繊維(東レ(株)製チョップドトレカTS−12)
B−2:長炭素繊維(東レ(株)製トレカT700SC−12K)
(難燃剤)
C−1:赤燐(燐化学工業(株)製ノーバエクセル140)
C−2:水酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製キスマ5E)
(導電性付与剤)
D−1:カーボンブラック(三菱化学(株)製3050B)。
[実施例1]
2軸押出機(日本製鋼所(株)製TEX30α)を使用し、材料A−1,C−1の全量をメインフィーダーより供給し、次いで材料B−1の全量をサイドフィーダーより供給してコンパウンドした。シリンダー温度及びダイス温度は270℃とし、スクリュー回転数は200rpmに設定した。また、サイドフィード部とダイスの中間に減圧ベント部を設け、スクリュー形状はサイドフィード後にフルフライトにアレンジした。
2軸押出機(日本製鋼所(株)製TEX30α)を使用し、材料A−1,C−1の全量をメインフィーダーより供給し、次いで材料B−1の全量をサイドフィーダーより供給してコンパウンドした。シリンダー温度及びダイス温度は270℃とし、スクリュー回転数は200rpmに設定した。また、サイドフィード部とダイスの中間に減圧ベント部を設け、スクリュー形状はサイドフィード後にフルフライトにアレンジした。
得られたストランドを引き続きオンラインで冷却後、オンラインでカッターにて成形用ペレットとした。
得られたペレットを80℃、5時間以上真空下で乾燥させた後、液晶プロジェクター用筐体の射出成形に供し、日本製鋼所(株)製J350E2−SP型射出成形機を用いて、図1に示すような液晶プロジェクターのモデル筐体を成形した。かかるモデル筐体は、長さL270mm×幅W260mmの天面2を有し、高さHは70mm、厚みは2.2mmとした。射出成形の条件は、シリンダー温度280℃、金型温度70℃、冷却時間30秒、射出速度70%とした。また、同成形条件にて、長さ125mm×幅13mm×厚み2.2mmの難燃性評価用試験片を成形した。
[実施例2〜4、比較例1,2]
表1に示すような組成比で、熱可塑性樹脂、難燃剤、導電性付与剤の全量を単軸押出機にて、その先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に十分混練された状態で押し出すと同時に、長炭素繊維B−2の糸条も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した熱可塑性樹脂等を長炭素繊維B−2の糸条の表面に被覆した。
表1に示すような組成比で、熱可塑性樹脂、難燃剤、導電性付与剤の全量を単軸押出機にて、その先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に十分混練された状態で押し出すと同時に、長炭素繊維B−2の糸条も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した熱可塑性樹脂等を長炭素繊維B−2の糸条の表面に被覆した。
得られたストランドを、引き続きオンラインで冷却後、オンラインでカッターにて7mmの長さに切断して成形用ペレットとした。
得られたペレットを80℃、5時間以上真空下で乾燥させ、以降は実施例1と同様にして液晶プロジェクターのモデル筐体および難燃性評価用試験片を成形した。
[実施例5]
液晶プロジェクターのモデル筐体および難燃性評価用試験片の厚みを1.5mmとした以外は実施例3と同様に行った。
液晶プロジェクターのモデル筐体および難燃性評価用試験片の厚みを1.5mmとした以外は実施例3と同様に行った。
実施例1〜5、比較例1,2の組成および評価結果を表1に示す。
1:液晶プロジェクターのモデル筐体
2:天面
L:長さ
W:幅
H:高さ
2:天面
L:長さ
W:幅
H:高さ
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂を20〜87重量%、導電性繊維を10〜60重量%、難燃剤を3〜20重量%含む樹脂組成物からなることを特徴とする液晶プロジェクター用筐体。
- 導電性繊維が炭素繊維である請求項1記載の液晶プロジェクター用筐体。
- 炭素繊維の重量平均繊維長が0.35〜2mmである請求項2記載の液晶プロジェクター用筐体。
- 熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂である請求項1〜3のいずれか記載の液晶プロジェクター用筐体。
- 筐体厚みが1.6〜6mmである請求項1〜4のいずれか記載の液晶プロジェクター用筐体。
- KEC法にて測定される周波数1GHzにおける電波シールド効果が30dB以上である請求項1〜5のいずれか記載の液晶プロジェクター用筐体。
- UL94規格における難燃性が筐体厚さで5VAクラスである樹脂組成物からなる請求項1〜6のいずれか記載の液晶プロジェクター用筐体。
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---|---|---|---|
JP2003298345A JP2005070258A (ja) | 2003-08-22 | 2003-08-22 | 液晶プロジェクター用筐体 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014117873A (ja) * | 2012-12-17 | 2014-06-30 | Wintech Polymer Ltd | 難燃性樹脂成形品の製造方法 |
JP2014125528A (ja) * | 2012-12-26 | 2014-07-07 | Wintech Polymer Ltd | 難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の製造方法 |
JP2015018281A (ja) * | 2014-10-14 | 2015-01-29 | セイコーエプソン株式会社 | プロジェクター |
JP2017107928A (ja) * | 2015-12-08 | 2017-06-15 | ダイセルポリマー株式会社 | 成形体 |
-
2003
- 2003-08-22 JP JP2003298345A patent/JP2005070258A/ja active Pending
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