JP7492427B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、潤滑油組成物に関し、より詳しくは、はすば歯車機構に用いるための潤滑油組成物に関する。
従来より、動力伝達機構等に利用される歯車(ギア)機構において、動力の伝達効率の向上の観点から、様々な潤滑油組成物の利用が検討されてきた。例えば、国際公開第2013/136582号(特許文献1)には、100℃における動粘度が5mm/s以下である鉱油系基油と、重量平均分子量が15,000以下のポリマーとを含んでなる潤滑油組成物が開示されており、その実施例の欄においては前記重量平均分子量が15,000以下のポリマーとしてα-オレフィンとα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルとのコポリマーを利用したことが開示されている。
国際公開第2013/147162号
本発明は、はすば歯車機構に用いた場合に、特異的に、高温かつ高負荷といった厳しい条件下においても動力伝達効率を十分に向上させることが可能な潤滑油組成物を提供することを目的とする。
本発明者らが研究を重ねた結果、上記特許文献1に記載のような従来の潤滑油組成物は、平歯車機構に利用した場合に動力伝達効率の向上を図ることが可能なものであるが、それをそのままはすば歯車(斜歯歯車:ヘリカルギア)機構に対して利用した場合に、100℃~140℃程度(好ましくは120℃近傍)の高温、かつ、高負荷(例えば、高荷重(好ましくは30Nm~70Nm程度)でありかつ比較的高回転数(2000~4000rpm程度)であるような負荷条件)といった、厳しい条件下において、動力伝達効率を必ずしも十分に向上させることができないことを見出した。なお、平歯車機構に利用した場合と、はすば歯車機構に利用した場合とにおいて、動力伝達効率の向上効果が異なる傾向となるといったことは、特許文献1等の周知技術を勘案しても当業者にとって容易に想起されるものではなかった。
このような知見に基づいて、本発明者らが更に鋭意研究を重ねた結果、潤滑油組成物に重量平均分子量が5,000~20,000のエチレンプロピレンコポリマーを0.1~3.0質量%含有させることにより、その潤滑油組成物をはすば歯車機構に用いた場合に、特異的に、高温かつ高負荷といった厳しい条件下においても動力伝達効率を十分に向上させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の潤滑油組成物は、重量平均分子量が5,000~20,000のエチレンプロピレンコポリマーを0.1~3.0質量%含有するものであり、かつ、はすば歯車機構用の潤滑油組成物であることを特徴とするものである。
前記本発明の潤滑油組成物においては、前記潤滑油組成物中に含まれる潤滑油基油が、80℃における動粘度が2.0~7.0mm/sのものであることが好ましい。
また、前記本発明の潤滑油組成物においては、前記潤滑油組成物中に含まれる潤滑油基油が、API分類がグループII又はIIIであるという条件を満たす鉱油系基油を潤滑油基油全量基準で60質量%以上含むことが好ましい。
本発明によれば、はすば歯車機構に用いた場合に、特異的に、高温かつ高負荷といった厳しい条件下においても動力伝達効率を十分に向上させることが可能な潤滑油組成物を提供することが可能となる。
実施例等で得られた潤滑油組成物の特性を評価する際に利用したはすば歯車機構の試験装置を模式的に示す断面図である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本明細書においては、特に断らない限り、数値X及びYについて「X~Y」という表記は「X以上Y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Xにも適用されるものとする。
本発明の潤滑油組成物は、重量平均分子量が5,000~20,000のエチレンプロピレンコポリマーを0.1~3.0質量%含有するものであり、かつ、はすば歯車機構用の潤滑油組成物であることを特徴とするものである。
<エチレンプロピレンコポリマー>
本発明に用いるエチレンプロピレンコポリマーは、重量平均分子量(Mw)が5,000~20,000のものである。重量平均分子量が、前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、得られる潤滑油組成物のせん断安定性をより優れたものとすることが可能となり長期間に亘って油膜を保持する性能(油膜保持性)をより向上させることができ、他方、前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、得られる潤滑油組成物の粘度指数を向上させ、高温条件下において動力伝達効率を十分に向上させることができる。また、同様の観点から、前記エチレンプロピレンコポリマーの重量平均分子量としては、5,000~15,000であることがより好ましく、6,000~13,000であることが更に好ましく、6,500~12,000であることが特に好ましい。
また、前記エチレンプロピレンコポリマーは、数平均分子量(Mn)が2,000~10,000(より好ましくは3,500~7,000)のものであることが好ましい。数平均分子量が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、得られる潤滑油組成物のせん断安定性をより優れたものとすることが可能となり油膜保持性をより向上させることができ、他方、数平均分子量が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、得られる潤滑油組成物の粘度をより向上させ、使用時に歯車同士の接触界面の潤滑状態をより良好な状態に維持でき、動力伝達効率をより向上させることが可能となる。
さらに、前記エチレンプロピレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は3.0以下(より好ましくは2.5以下)であることが好ましい。分子量分布が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、得られる潤滑油組成物のせん断粘度安定性をより向上させ、使用時に歯車同士の接触界面の潤滑状態をより良好な状態に維持でき、動力伝達効率をより向上させることが可能となる。
なお、本明細書において、前記エチレンプロピレンコポリマーのMw、Mn及びMw/Mnは、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で求められる値(ポリスチレン換算により得られた分子量)を意味する。なお、Mw、Mn及びMw/MnをGPCで求める際の測定条件は次の通りである。
[GPC測定条件]
装置:Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC UV RIシステム
カラム:上流側から順に、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT900A(ゲル粒径2.5μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)2本、および、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT200A(ゲル粒径2.5μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)1本を直列に接続
カラム温度:40℃
試料溶液:試料濃度1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:20.0μL
検出装置:示差屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(Agilent Technologies社製Agilent EasiCal(登録商標) PS-1)8点(分子量:2698000、597500、290300、133500、70500、30230、9590、2970)
上記条件に基づきGPC測定を行い、重量平均分子量が10,000以上である場合には、そのまま測定を終了する。他方、重量平均分子量が10,000未満である場合、カラムおよび基準物質を下記のものに変更する以外は、上記条件と同様の条件を採用して再測定を行う。
カラム:上流側から順に、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT125A(ゲル粒径2.5μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)1本、および、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT45A(ゲル粒径1.7μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)2本を直列に接続
基準物質:標準ポリスチレン(Agilent Technologies社製Agilent EasiCal(登録商標) PS-1)10点(分子量:30230、9590、2970、890、786、682、578、474、370、266)。
また、前記エチレンプロピレンコポリマーにおいては、エチレンに由来する構成単位の含有量(エチレン含有率)が30~80モル%(より好ましくは40~60モル%)であることが好ましい。エチレン含有率が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、低温粘度特性により優れた潤滑油組成物を得ることができ、他方、エチレン含有率が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、粘度の温度依存性をより小さくすることができる。なお、本願において、「エチレン含有率」は、下記測定条件を採用して13C‐NMR測定を行い、その測定結果を利用して、以下の計算式(I)~(III)に基づき算出される値を意味する。
13C‐NMR測定条件)
使用装置:ブルカー製 AVANCE400型NMR
溶媒:CDCl
試料管:直径10mm
測定法:1H-インバースゲーテッドデカップリング法
積算回数:3000回
待ち時間:10秒
測定温度:室温
化学シフト標準:CDCl(77.1ppm)
(エチレン含有率の計算式(I)~(III))
=3×A (I)
=100-A (II)
X=100×(0.5×A)/{(0.5×A)+(1/3×A)} (III)
[式(I)~(III)中、A13C-NMRにおける19~21ppm領域の積分値を表し、A13C-NMRにおけるプロピレン由来の炭素の積分値を表し、A13C-NMRにおけるエチレン由来の炭素の積分値を表し、Xはエチレン含有率(%)を表す。なお、13C-NMRを用いて検出された全ピーク(ただし溶媒を除く)の積分値を100とする。]。
また、前記エチレンプロピレンコポリマーは、ブロックコポリマーであっても、あるいは、ランダムコポリマーであってもよい。さらに、前記エチレンプロピレンコポリマーを製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用できる。また、前記エチレンプロピレンコポリマーとしては市販品を利用してもよい。
また、本発明の潤滑油組成物において、前記エチレンプロピレンコポリマーの含有量は0.1~3.0質量%とする必要がある。エチレンプロピレンコポリマーの含有量が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、エチレンプロピレンコポリマーにより潤滑油組成物の粘度を調整することが容易となり、高温かつ高負荷といった厳しい条件下において、はすば歯車機構の動力伝達効率を十分に向上させることができる。他方、エチレンプロピレンコポリマーの含有量が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、得られる潤滑油組成物の粘度の上昇を抑えつつ粘度指数を向上させ、高温条件下において動力伝達効率を十分に向上させることができる。また、エチレンプロピレンコポリマーの含有量は、高温かつ高負荷といった厳しい条件下において、はすば歯車機構の動力伝達効率をより向上させることが可能となることから、0.15~2.5質量%(更に好ましくは0.20~2.0質量%)であることがより好ましい。
また、本発明の潤滑油組成物は、重量平均分子量が5,000~20,000のエチレンプロピレンコポリマーを0.1~3.0質量%を含有するものであればよく、かかる潤滑油組成物に含有させる他の成分の種類等は特に制限されず、歯車機構に利用することが可能な、公知の潤滑油基油や公知の他の成分(添加剤)を適宜利用できる。以下、本発明の潤滑油組成物に利用可能な潤滑油基油や他の成分について説明する。
<潤滑油基油>
本発明の潤滑油組成物に含有させる潤滑油基油としては特に制限されず、公知のもの(例えば、特開2003-155492号公報、国際公開第2017/073748号、特開2020-76004号公報等に記載されているもの)を適宜利用することができ、鉱油系のものであっても、合成油系のものであってもよい。以下、このような潤滑油基油として好適に利用可能なものについて説明する。
前記潤滑油基油としては、80℃における動粘度が2.0~7.0mm/s(より好ましくは3.0~6.0mm/s)であるものが好ましい。80℃における動粘度が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、高温の温度域(100℃~140℃程度)において、動力伝達効率をより向上させることが可能となり、他方、80℃における動粘度が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、高温の温度域(100℃~140℃程度)において、潤滑箇所での潤滑油組成物の油膜形成性及び油膜保持性がより向上し、より良好な潤滑状態を保持することが可能となる。なお、本明細書において「80℃における動粘度」とは、JIS K 2283-2000に準拠し、測定装置として自動粘度計(商品名「CAV-2100」、Cannon Instrument社製)を用いて測定された80℃での動粘度を意味する。
また、前記潤滑油基油としては、API(アメリカ石油協会:American Petroleum Institute)による基油の分類(本明細書においては「API分類」と称する)がグループII又はIIIであるという条件(以下、場合により単に「条件(A)」と称する)を満たす鉱油系基油を含むものであることが好ましい。なお、API分類がグループIIの基油は、硫黄分が0.03質量%以下、飽和分(飽和ハイドロカーボン)が90容量%以上、且つ、粘度指数が80以上120未満の鉱油系基油である。また、API分類がグループIIIの基油は、硫黄分が0.03質量%以下、飽和分(飽和ハイドロカーボン)が90容量%以上、且つ、粘度指数が120以上の鉱油系基油である。また、前記潤滑油基油としては、条件(A)を満たす鉱油系基油の含有量が潤滑油基油全量基準で60質量%以上(更に好ましくは80質量%以上)のものがより好ましい。
さらに、前記潤滑油基油としては、硫黄分の濃度が200質量ppm以下(より好ましくは100質量ppm以下、更に好ましくは1質量ppm以下)であるという条件を満たすものが好ましい。硫黄分の濃度が前記上限以下である場合には、熱・酸化安定性により優れる組成物を得ることが可能となる。なお、本明細書において「硫黄分の濃度」はJIS K 2541-6-2003(紫外蛍光法)に準拠して測定された値を意味する。
また、前記潤滑油基油としては、窒素分の濃度が300質量ppm以下(より好ましくは100質量ppm以下、更に好ましくは1質量ppm以下)であるという条件を満たすものが好ましい。窒素分の濃度前記上限以下である場合には、熱・酸化安定性により優れる組成物を得ることが可能となる。なお、本明細書において「窒素分の濃度」はJIS K 2609-1998(化学発光法)に準拠して測定された値を意味する。
さらに、前記潤滑油基油としては、15℃における密度が0.800~0.850g/cm(より好ましくは0.805~0.845g/cm)であるものが好ましい。密度が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、熱・酸化安定性により優れる組成物を得ることが可能となり、他方、密度が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、伝熱特性に優れ、摺動面の過度な昇温をより抑制することが可能となる。なお、本明細書において「15℃における密度」とは、JIS K 2249-1-1995に準拠して測定された15℃での密度を意味する。
また、前記潤滑油基油としては、粘度指数が80以上であることが好ましく、95~160であることがより好ましい。粘度指数が、前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、基油中のノルマルパラフィンの含有量がより少なくなるため、低温時の粘度急上昇がより抑制され、他方、粘度指数が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、得られる潤滑油組成物の粘度の温度依存性をより低下させることができ、高温条件下において動力伝達効率をより向上させることが可能となる。なお、本明細書において「粘度指数」とは、JIS K 2283-1993に準拠して測定された粘度指数を意味する。
なお、前記潤滑油基油は、潤滑油基油全体として、単一の基油成分からなるものであってもよく、あるいは、複数の基油成分を組み合わせてなるものであってもよい。
また、本発明の潤滑油組成物において、潤滑油基油の含有量は、潤滑油組成物の全量を基準として50~99質量%(より好ましくは70~97質量%)であることが好ましい。潤滑油基油の含有量が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、添加剤を利用して潤滑被膜の形成性等の特性を向上させることがより容易となり、他方、潤滑油基油の含有量が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、粘度の温度依存性をより低下させることが可能となる。
<他の添加剤>
本発明の潤滑油組成物においては、その性能を更に向上させるために、目的に応じて潤滑油組成物に一般的に使用されている他の成分(他の添加剤)を適宜利用できる。このような他の成分としては特に制限されず、潤滑油組成物の分野において利用されている公知のもの(例えば、特開2003-155492号公報、国際公開第2017/073748号、国際公開第2013/147162号、特開2020-76004号公報等に記載されているもの)を適宜利用できる。また、このような他の成分としては特に制限されるものではないが、例えば、摩耗防止剤、無灰分散剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、金属系清浄剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、ゴム膨潤剤、消泡剤、希釈油等の添加剤等を好適に利用できる。以下、このような他の成分として好適に利用することが可能な成分について説明する。
前記摩耗防止剤としては、特に限定されず、潤滑油組成物の分野において摩耗防止剤として用いられている公知の化合物(例えば、特開2003-155492号公報、特開2020-76004号公報、国際公開第2013/147162号等参照)を適宜用いることができる。また、摩耗防止剤としては、例えば、硫黄系、リン系又は硫黄-リン系の摩耗防止剤等が使用できる。このような摩耗防止剤の中でも、優れた摩耗防止性の観点からは、リン系又は硫黄-リン系摩耗防止剤がより好ましく、亜リン酸エステル、チオリン酸エステルがより好ましい。なお、摩耗防止剤は1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。摩耗防止剤を利用する場合において、その含有量は特に制限されないが、前記潤滑油組成物の全量を基準として0.02~2.0質量%(より好ましくは0.05~1.0質量%)であることが好ましい。摩耗防止剤の含有量が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して熱・酸化安定性をより高めることが可能となり、他方、前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して潤滑油組成物の耐摩耗性をより向上させ、高荷重条件においても動力伝達効率をより向上させることが可能となる。
また、前記無灰分散剤としては、潤滑油組成物の分野において無灰分散剤として用いられている公知の化合物(例えば、特開2003-155492号公報、特開2020-76004号公報、国際公開第2013/147162号等参照)を適宜使用できる。無灰分散剤としては、非ホウ素化コハク酸イミド、ホウ素化コハク酸イミド、及び、これらの混合物を好適に利用できる。なお、無灰分散剤は1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。無灰分散剤を利用する場合において、その含有量は特に制限されないが、前記潤滑油組成物の全量を基準として0.2~6.0質量%(より好ましくは0.5~5.0質量%)であることが好ましい。
また、前記流動点降下剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、エチレン-酢酸ビニルコポリマー等が挙げられ、中でも、ポリメタクリレートが好ましい。また、前記ポリメタクリレートとしては、重量平均分子量(Mw)が20,000~100,000のものが好ましい。流動点降下剤は1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。流動点降下剤を利用する場合、その含有量は前記潤滑油組成物の全量を基準として0.01~1.0質量%(より好ましくは0.03~0.6質量%)であることが好ましい。
さらに、前記摩擦調整剤としては特に制限されないが、例えば、アミン系、アミド系、イミド系、脂肪酸エステル系、脂肪酸系、脂肪族アルコール系、脂肪族エーテル系の摩擦調整剤が挙げられ、中でも、より高い摩擦低減効果が得られるといった観点から、アミン系摩擦調整剤がより好ましい。また、このようなアミン系摩擦調整剤としてはアルキルアミン、アルケニルアミンが好ましい。摩擦調整剤は1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。また、摩擦調整剤を利用する場合、その含有量は前記潤滑油組成物の全量を基準として0.005~3.0質量%(より好ましくは0.01~2.5質量%)であることが好ましい。
また、前記金属系清浄剤としては特に制限されないが、例えば、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート等が挙げられる。金属系清浄剤は1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。さらに、金属系清浄剤を利用する場合、その含有量は前記潤滑油組成物の全量を基準として0.01~1.0質量%(より好ましくは0.05~0.6質量%)であることが好ましい。
また、前記酸化防止剤としては特に制限されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。酸化防止剤を利用する場合、その含有量は前記潤滑油組成物の全量を基準として0.1~2.0質量%(より好ましくは0.2~1.0質量%)であることが好ましい。
さらに、前記金属不活性化剤としては特に制限されないが、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体、トリルトリアゾールまたはその誘導体、1,3,4-チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4-チアジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート、2-(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、β-(o-カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。金属不活性化剤は1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。また、金属不活性化剤を利用する場合、その含有量は前記潤滑油組成物の全量を基準として0.01~0.5質量%(より好ましくは0.02~0.3質量%)であることが好ましい。
また、前記ゴム膨潤剤としては特に制限されないが、潤滑油用のシール膨潤剤として用いることが可能な公知の化合物を適宜利用でき、例えば、エステル系、硫黄系、芳香族系等のシール膨潤剤(例えばスルホラン化合物等)が挙げられる。ゴム膨潤剤は1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。また、ゴム膨潤剤を利用する場合、その含有量は特に制限されないが、前記潤滑油組成物の全量を基準として0.01~1.0質量%(より好ましくは0.05~0.8質量%)であることが好ましい。
また、前記消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が1,000~100,000mm2/sのシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸とのエステル、メチルサリシレート、および、o-ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。消泡剤は1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。また、消泡剤を利用する場合、その含有量は特に制限されないが、前記潤滑油組成物の全量を基準として0.0001~0.005質量%(より好ましくは0.0003~0.003質量%)であることが好ましい。
<潤滑油組成物の特性等について>
以上、本発明の潤滑油組成物の組成の好適な条件等について説明したが、以下、本発明の潤滑油組成物の特性の好適な条件について説明する。
本発明の潤滑油組成物は、120℃における動粘度が1.5~4.0mm/sのものであることが好ましく、1.8~3.5mm/sのものであることがより好ましい。120℃における動粘度が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、はすば歯車機構に利用した際に、100~140℃程度の高温の温度域において、動力伝達効率をより向上させることが可能となる。他方、120℃における動粘度が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、特に100~140℃程度の高温の温度域において、潤滑箇所での潤滑油組成物の油膜形成性及び油膜保持性がより向上し、高温条件下においてもより良好な潤滑状態を保持することが可能となる。なお、本明細書において「120℃における動粘度」とは、JIS K 2283-2000に準拠し、測定装置として自動粘度計(商品名「CAV-2100」、Cannon Instrument社製)を用いて測定された120℃での動粘度を意味する。
また、本発明の潤滑油組成物は、80℃における動粘度が3.0~9.0mm/sのものであることが好ましく、3.5~7.0mm/sのものであることがより好ましい。80℃における動粘度が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、高温、高負荷といった厳しい条件下において動力伝達効率をより向上させることが可能となる。また、80℃における動粘度が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、使用時に潤滑箇所での潤滑油組成物の油膜形成性及び油膜保持性がより向上し、高温条件下においてもより良好な潤滑状態を保持することが可能となる。
本発明の潤滑油組成物は、40℃における動粘度が8.0~30.0mm/sのものであることが好ましく、9.0~20.0mm/sのものであることがより好ましい。40℃における動粘度が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、高温、高負荷といった厳しい条件下において動力伝達効率をより向上させることが可能となる。また、40℃における動粘度が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、使用時に潤滑箇所での潤滑油組成物の油膜形成性及び油膜保持性がより向上し、高温条件下においてもより良好な潤滑状態を保持することが可能となる。なお、本明細書において「40℃における動粘度」とは、JIS K 2283-2000に準拠し、測定装置として自動粘度計(商品名「CAV-2100」、Cannon Instrument社製)を用いて測定された40℃での動粘度を意味する。
また、本発明の潤滑油組成物は、粘度指数が90以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。粘度指数が前記下限以上である場合には、前記下限未満である場合と比較して、潤滑油組成物の粘度の温度依存性をより低下させることができ、動力伝達効率をより向上させることが可能となる。
さらに、本発明の潤滑油組成物は、流動点が-30℃以下(より好ましくは-40℃以下)であることが好ましい。流動点が前記上限以下である場合には、前記上限を超えた場合と比較して、低温粘度特性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。なお、本明細書において「流動点」とは、JIS K 2269-1987に準拠して測定された流動点を意味する。
また、本発明の潤滑油組成物を製造するための方法は、潤滑油組成物に前記重量平均分子量が5,000~20,000のエチレンプロピレンコポリマーを上記含有量となるように含有させることが可能な方法であればよく、特に制限されず、目的の用途や設計に応じて、潤滑油基油や、上述のような他の成分(例えば、前記粘度調整剤、前記無灰分散剤等)を適宜選択して、その潤滑油基油中に前記エチレンプロピレンコポリマー及び前記他の成分を添加することにより調製することができる。
また、本発明の潤滑油組成物において、上述のような他の成分を添加する場合、他の成分はそれぞれ各成分ごとに別々に準備して添加してもよいし、あるいは、他の成分の混合物を準備して添加してもよい。このような他の成分の混合物としては、市販のパッケージ(例えば、無灰分散剤、金属系清浄剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、ゴム膨潤剤、金属不活性化剤、希釈成分(希釈油)等を含む添加剤パッケージ)を適宜利用してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔各実施例等で利用した成分について〕
各実施例等において利用した潤滑油基油、低分子量のポリマー成分及び他の添加剤を以下に示す。なお、以下に示す潤滑油基油の密度は15℃における密度である。また、下記低分子量のポリマー成分について、重量平均分子量は前述のGPC測定条件に基づきゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分析した値である。
(1)潤滑油基油
[鉱油(I)]80℃における動粘度:3.61mm/s、硫黄分:1質量ppm未満、窒素分:1質量ppm未満、API分類:グループII(鉱油)、密度:0.837g/cm
(2)分子量が20,000以下のポリマー成分
[ポリマー(A)]エチレンプロピレンコポリマー(重量平均分子量:11,500、エチレン含有率:60%)
[ポリマー(B)]エチレンプロピレンコポリマー(重量平均分子量:7,080、エチレン含有率:58%)
[ポリマー(C)]α-オレフィンと、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルとのコポリマー(重量平均分子量:4,730)
[ポリマー(D)]α-オレフィンと、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルとのコポリマー(重量平均分子量:6,000)
[ポリマー(E)]非分散型ポリメタクリレート(重量平均分子量:7,950)
[ポリマー(F)]非分散型ポリメタクリレート(重量平均分子量:20,000)
(3)他の添加剤
[添加剤パッケージ]無灰分散剤(非ホウ素化コハク酸イミド及びホウ素化コハクイミドの混合物);金属系清浄剤(カルシウムスルホネート、全塩基価:300(TBN300)、カルシウム濃度:10質量%);酸化防止剤(アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の混合物);摩擦調整剤(アミン系);摩耗防止剤(亜リン酸エステル);ゴム膨潤剤(スルホラン化合物);金属不活性化剤(チアジアゾール);及び、希釈油を含む添加剤パッケージ
[流動点降下剤]ポリメタクリレート(非分散型、重量平均分子量:50,000)。
(実施例1~4及び比較例1~5)
下記表1に示す組成となるように各成分を利用して、潤滑油組成物を調製した。なお、表1中の「-」はその成分を利用していないことを示す。また、表1中、潤滑油基油の含有量の単位の「inmass%」は組成物中に含まれる潤滑油基油の全量に対する鉱油(I)の含有量(質量%)を表し、ポリマー成分及び他の添加剤の含有量の単位の「mass%」は潤滑油組成物全量に対する各成分の含有量(質量%)を表す。また、表1には、実施例1~4及び比較例1~5の各潤滑油組成物の40℃、80℃及び120℃の各温度における動粘度(JIS K 2283-2000に準拠して、測定装置として自動粘度計(商品名「CAV-2100」、Cannon Instrument社製)を用いて測定した値)を併せて示す。
[実施例1~4及び比較例1~5で得られた潤滑油組成物の特性について]
実施例1~4及び比較例1~5で得られた潤滑油組成物をそれぞれ用いて、以下のようにして特性を評価した。
<平歯車機構における動力伝達効率の測定試験:FZG平歯車試験>
後述の点で異なる条件を採用した以外は、文献“FVA Information Sheet No.345,March 2002(以下、かかる文献を場合により単に「参考文献1」と称する)”に記載されている方法と同様の方法を採用して、下記試験条件でFZG平歯車試験装置を運転した場合の動力伝達効率を測定した。すなわち、試験装置として動力循環型のFZG平歯車試験装置を利用し、試験用ギアC-PT(C)(歯車材質:16MnCr5)を備えるギアボックスをシャフトの中心部のレベルまで潤滑油組成物で浸した状態とし、荷重ステージ:7(ST7[面圧:約1300N/mm])、試験温度(試験時の潤滑油組成物の温度):90℃、モーター回転速度:1440rpmの試験条件で前記試験装置を運転し、入力トルク[単位:Nm]と、損失トルク([単位:Nm])とを測定して、下記式(1):
[動力伝達効率(%)]={(Tin-Tout)/Tin}×100 (1)
(式(1)中、Tinは入力トルクを示し、Toutは損失トルクを示す。)
を計算して、動力伝達効率(ギア効率)を求めた。なお、かかる測定に際しては、参考文献1に記載されている基準油「mineral oil FVA3A」の代わりにENEOS株式会社製の商品名「スーパーオイルM100」を利用し、参考文献1の7章中の7.4に記載されている手順のうち「Vc) Steady-state-tempeature」の欄に記載されている手順を省略し、更に、損失トルクの値として、参考文献1の8.2章に記載されているような「無負荷トルク損失(no load loss torque)」の値を差し引いた値ではなく、上記試験条件での測定値をそのまま採用した点において、参考文献1とは異なる条件を採用したが、それ以外は参考文献1に記載されている方法と同様の方法を採用した。このようなFZG平歯車試験により得られた結果を表3に示す。なお、表3には、比較例1の動力伝達効率を基準値とした場合の各実施例等の動力伝達効率の増加量(基準値に対する増加量:比較例1の動力伝達効率との差:効率向上値)を併せて示す。
<はずば歯車機構における動力伝達効率の測定試験:はすば歯車試験>
図1に模式的に示すはすば歯車機構の試験装置を利用して、一対のはすば歯車に潤滑油組成物を供給して、以下のようにして動力伝達効率(ギア効率)をそれぞれ求めた。以下、試験装置及び試験条件を分けて説明する。
(試験装置について)
先ず、試験装置について説明する。図1に試験装置は、はすば歯車G1と、はすば歯車G2とからなる一対のはすば歯車を備えるギアボックス30を利用した試験装置である。より具体的には、図1に試験装置は、駆動力を入力するための入力モータ(Input Motor:駆動モータ)10と、入力モータ10用の回転軸11と、回転軸11の先端に設置された入力側(駆動側)のはすば歯車G1と、入力トルク(駆動トルク)を測定するために回転軸11に接続されたトルクメータ12と、出力モータ(Output Motor:吸収モータ)20と、出力モータ20用の回転軸21と、回転軸21の先端に取り付けられた出力側(吸収側)のはすば歯車G2と、出力トルク(吸収トルク)を測定するために回転軸21に接続されたトルクメータ22と、一対のはすば歯車G1及びG2が内部に配置されたギアボックス30と、歯車に供給するための潤滑油組成物を貯蔵するためのタンク40と、タンク40から一対のはすば歯車G1及びG2の接触部位(歯車のかみ合う部分)に潤滑油組成物を供給するためのオイル供給管41とを備える試験装置である。なお、図1に示すタンク40には、タンク内に潤滑油組成物を導入させるためのオイル導入管(図示省略)が接続されており、タンク内に必要な量の潤滑油組成物を導入可能なように設計されている。また、図1中の矢印A1は、潤滑油組成物が供給管41内を移動する際の移動方向を概念的に示すものである。このような試験装置に利用した歯車の仕様を表2に示す。
(試験条件について)
次に、試験条件等について説明する。すなわち、図1に示すはすば歯車機構の試験装置を、以下に示すような条件で運転して、入力トルク[単位:Nm]と、出力トルク[単位:Nm]とをそれぞれ測定して、その測定値と入力側(駆動側)及び出力側(吸収側)の各回転軸の回転数の値とに基づいて、下記式(1’):
[動力伝達効率(%)]={(T×n)/(T×n)}×100 (1’)
〔式(1’)中、Tは入力トルク(駆動トルク)を示し、nは入力側のはすば歯車G1の回転数(駆動回転数)を示し、Tは出力トルク(吸収トルク)を示し、nは出力側のはすば歯車G2の回転数(吸収回転数)を示す。〕
を計算して、動力伝達効率(ギア効率)を求めた。このような動力伝達効率の測定は、試験温度(潤滑油組成物の供給時の温度:供給油温)、回転数(回転軸11(入力側:駆動側)の回転数)、及び、荷重(はすば歯車G2(出力側)の歯面に負荷される荷重)に関する試験条件(前記試験装置の運転条件)を変更して、2回行った(このような2回の測定試験を便宜上、以下、それぞれ、試験(A)、試験(B)と称する)。なお、各試験において、前記試験装置内の一対のはすば歯車G1及びG2の接触部位(歯車のかみ合う部分)に対する潤滑油組成物の供給速度は1.0L/分(共通)とした。以下、各試験で採用した試験条件を示す。
[試験(A)で採用した試験条件]
試験温度(供給油温):120℃、回転数(入力側):3000rpm、荷重(出力側):30Nm、潤滑油組成物の供給速度:1.0L/分
[試験(B)で採用した試験条件]
試験温度(供給油温):120℃、回転数(入力側):2000rpm、荷重(出力側):50Nm、潤滑油組成物の供給速度:1.0L/分。
このようなはすば歯車試験により得られた結果(各実施例等の動力伝達効率)を表3に示す。利用した低分子量のポリマー成分の種類及び含有量を併せて示す。なお、表3には、比較例1の動力伝達効率を基準値とした場合の各実施例等の動力伝達効率の増加量(基準値に対する増加量:比較例1の動力伝達効率との差:効率向上値)並びにその平均値を併せて示す。
表3に示したFZG平歯車試験の結果から明らかなように、平歯車の動力伝達効率といった観点からは、実施例1~4で得られた潤滑油組成物と、比較例1、4~5で得られた潤滑油組成物とに差はなく、動力伝達効率は同等の値となっていた。このように、平歯車の動力伝達効率といった観点からは、実施例1~4で得られた潤滑油組成物と基準となる比較例1で得られた潤滑油組成物とは同等の効果が得られるものであることが分かった。
これに対して、表3に示したはすば歯車試験の結果からも明らかなように、実施例1~4で得られた潤滑油組成物においてはいずれも、試験(A)及び試験(B)の試験条件によらず、基準となる比較例1で得られた潤滑油組成物に対する動力伝達効率の増加量(効率向上値)が0.1以上となっていた。また、表3に示したはすば歯車試験の結果からも明らかなように、試験(A)及び試験(B)の双方の動力伝達効率の増加量(効率向上値)の平均値が、実施例1~4で得られた潤滑油組成物ではいずれも0.2となっているのに対して、比較例1~5で得られた潤滑油組成物では最大のもので0.1となっていた。なお、比較例1で得られた潤滑油組成物の動力伝達効率が試験(A)及び試験(B)の双方において99.4%と高い水準にあることから、その動力伝達効率と比較した動力伝達効率の増加量を0.1以上とすることで、すなわち、動力伝達効率を比較例1と比較して0.1%以上向上させることで、歯車機構において損失トルクを低減させる度合いが十分に大きなものとなることは明らかであり、各試験において比較例1を基準として動力伝達効率の増加量が0.1以上となれば、はすば歯車機構の動力伝達効率を十分に向上させることが可能なものであると判断することができる。このような観点から確認すると、本発明の潤滑油組成物(実施例1~4)はいずれも、試験(A)及び試験(B)の双方において、基準となる比較例1で得られた潤滑油組成物に対する動力伝達効率の増加量(効率向上値)が0.1以上となっており、かつ、試験(A)及び試験(B)の双方の動力伝達効率の増加量(効率向上値)の平均値が0.1を超える値(0.2)となっていることから、温度120℃、荷重30Nm、回転数3000rpmといった条件(試験(A))や温度120℃、荷重50Nm、回転数2000rpmといった条件(試験(B))のような、厳しい使用条件下において、はすば歯車機構の動力伝達効率を十分に向上させることが可能なものであることが分かった。
なお、表3に示す結果からも明らかなように、特に、荷重(出力側)が50Nmとなるような高負荷の条件を採用している試験(B)において、実施例1~4で得られた潤滑油組成物はいずれも動力伝達効率の増加量(効率向上値)が0.2以上となっているのに対して、比較例1~5で得られた潤滑油組成物はいずれも動力伝達効率の増加量(効率向上値)が0となっていることから、本発明の潤滑油組成物(実施例1~4)をはすば歯車機構に用いた場合には、高温かつ高負荷の条件下のうち、特に出力側の歯車への荷重がより高くなるような条件下において、はすば歯車機構の動力伝達効率をより高い水準まで向上させることが可能であることが分かった。
以上説明したように、本発明によれば、はすば歯車機構に用いた場合に、特異的に、高温かつ高負荷といった厳しい条件下においても動力伝達効率を十分に向上させることが可能な潤滑油組成物を提供することが可能となる。したがって、本発明の潤滑油組成物は、はすば歯車機構を利用する各種装置に好適に利用でき、特に、電気自動車やハイブリッド自動車等を含む各種自動車用の変速機(自動変速機、手動変速機等)、減速機等に有用である。
10…入力モータ(Input Motor)、11…回転軸(入力側)、12…トルクメータ(入力側)、20…出力モータ(Output Motor)、21…回転軸(出力側)、22…トルクメータ(出力側)、G1及びG2…はすば歯車、40…潤滑油組成物を貯蔵するためのタンク40、41…オイル供給管、A1…オイル供給管内の潤滑油組成物の移動方向を概念的に示す矢印。

Claims (3)

  1. 重量平均分子量が5,000~20,000のエチレンプロピレンコポリマーを0.1~3.0質量%含有するものであり、かつ、はすば歯車機構用の潤滑油組成物であることを特徴とする潤滑油組成物。
  2. 前記潤滑油組成物中に含まれる潤滑油基油が、80℃における動粘度が2.0~7.0mm/sのものであることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
  3. 前記潤滑油組成物中に含まれる潤滑油基油が、API分類がグループII又はIIIであるという条件を満たす鉱油系基油を潤滑油基油全量基準で60質量%以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
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