JP2012087269A - 放電加工油基材 - Google Patents

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Akinori Kanetani
昭範 金谷
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Abstract

【課題】 加工精度を保ちつつ加工速度を向上させ、従来の炭化水素系より優れた放電加工油を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される脂肪酸エステル
【化1】


[式中、脂肪酸由来のRは炭素数が7〜13の飽和の直鎖又は分岐鎖からなる鎖式炭化水素基を示し、一価アルコール由来のRは炭素数が1〜13であり、飽和の直鎖又は分岐鎖からなる炭化水素基、又は脂環式炭化水素基を示す。]
において、RとRの炭素数の和が12〜20であり、且つ、40℃における動粘度が2.0〜6.0mm/sであることを特徴とする放電加工油

【選択図】なし

Description

この発明は、放電加工の際に使用する放電加工油基材に関するものである。

放電加工法は、絶縁性媒体内で電極(銅、グラファイト等)と導電性の被加工物とを数ミクロン〜数十ミクロンの狭い間隔を保って対向させ、この間隔を介して加工電源からパルス的に電圧を供給することにより、電極と工作物との間に放電を生じさせ、被加工物を高精度に加工する方法である。近年では生産性の観点から、加工精度を保ちつつ加工速度を向上させることが望まれている。

一般に放電加工で使用する絶縁性媒体としては油性の放電加工油基材、例えば灯油、ナフテン系炭化水素、ノルマルパラフィン、イソパラフィンなどが使用されている。しかし、これらの油のみでは必ずしも加工速度が十分満足するほど速いとは言えず、それを改善する手段として鉱油や合成油に対し添加剤を配合した放電加工油組成物が提案されている。例えば、鉱油もしくはアルキルベンゼンを基油としビスフェノール化合物を添加することにより電極汚れを防止し、加工速度を向上させる試みがなされている(特許文献1)。しかしながら特許文献1に記載の技術では、加工速度の向上は不十分であった。

特許第4145441号

従来の技術では、加工速度の向上と加工精度を確保することは困難であった。本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、加工精度を保ちつつ加工速度を向上させる放電加工油基材を提供する。

本発明者らは、放電加工油の基材に着目して鋭意研究を重ねた結果、ある特定の脂肪酸エステルが従来の炭化水素系放電加工油基材よりも加工精度を保ちつつ加工速度を向上させることを見出した。

本発明は上記知見に基づいてなされたもので、下記構成からなる放電加工油基材を提供する。
〔1〕
下記一般式(1)で表される脂肪酸エステル
[式中、脂肪酸由来のRは炭素数が7〜13の飽和の直鎖又は分岐鎖からなる鎖式炭化水素基を示し、一価アルコール由来のRは炭素数が1〜13であり、飽和の直鎖又は分岐鎖からなる炭化水素基、又は脂環式炭化水素基を示す。]において、RとRの炭素数の和が12〜20であり、且つ、40℃における動粘度が2.0〜6.0mm/sであることを特徴とする放電加工油基材
〔2〕
上記〔1〕の放電加工油を50質量%以上含有する放電加工油組成物。

本発明の前記一般式(1)で表される脂肪酸エステルは、40℃における動粘度が2.0〜6.0mm/sが好ましい。40℃における動粘度が6.0mm/sを超えると、加工屑の排出機能が低下し、加工速度ならびに加工精度が低下する。一方、40℃における動粘度が2.0mm/s未満であると放電加工油の絶縁性が極端に低下するため短絡が生じやすくなり、加工速度が低下する。

前記一般式(1)で表される脂肪酸エステルのRは、炭素数が7〜13の飽和の直鎖又は分岐鎖からなる鎖式炭化水素基であることが好ましい。ベンジル基、フェニル基などの芳香族基は人体の安全性確保の観点から好ましくない。該Rが炭素数6以下では放電加工機のゴム部材を膨潤させるなどの不具合を示す傾向があり、炭素数14以上では冬季において固まりやすくなる傾向があり、好ましくない。

前記一般式(1)で表される脂肪酸残基(R−CO部)に対応する脂肪酸の具体的な例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、イソオクチル酸、などが挙げられる。再生可能な資源であると共に、環境への負荷が小さい点では、パーム由来、パーム核油由来、ヤシ油由来等の植物油から誘導された脂肪酸残基に対応するカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸が好ましい。これらは、1種単独でまたは2種以上混合して用いることができる。

前記一般式(1)で表される脂肪酸エステルのRは、一価アルコール由来の炭素数1〜13の、飽和の直鎖又は分岐鎖からなる炭化水素基、又は脂環式炭化水素基であることが好ましい。ベンジル基、フェニル基などの芳香族基は人体の安全性確保の観点から好ましくない。

前記Rの具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ter−ブチル基、n−ペンチル基、3−メチルブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルブチル基、4−メチルペンチル、ヘプチル基、2−エチルペンチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基2−ブチルブチル基、3−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、2−エチルオクチル基、3−エチルオクチル基、ウンデシル基、2−ブチルオクチル基、2−ヘキシルヘキシル基が挙げられる。これらは1種単独または2種以上混合して用いることができる。
この中でも、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基がより好ましく、これらの基だと低温流動性が良好な基材が得られ、冬季の作業性が向上するという利点も有する。
前記一般式(1)で表される脂肪酸エステルにおいて、RとRの炭素数の和は12〜20であることが好ましい。RとRの炭素数の和が12未満であると絶縁性が極端に低下するため、短絡が生じやすくなり、加工速度を低下させる。RとRの炭素数の和が20を超えると動粘度が高くなり、その結果加工屑の排出機能が低下するため、加工速度と加工精度を低下させる。

前記RとRの炭素数の和が12〜20である前記脂肪酸エステルとしては、カプリル酸2−エチルヘキシル、カプリル酸イソデシル、カプリル酸イソトリデシル、カプリル酸ヘキシル、カプリル酸オクチル、カプリル酸−シクロヘキシル、カプリン酸−イソプロピル、カプリン酸−シクロヘキシル、カプリン酸2−エチルヘキシル、カプリン酸−イソデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸−イソプロピル、ラウリン酸−nブチル、ラウリン酸−イソブチル、ラウリン酸−terブチル、ラウリン酸−ヘキシル、ラウリン酸−シクロヘキシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸−プロピル、ミリスチン酸−イソプロピル、ミリスチン酸−nブチル、ミリスチン酸−イソブチル、ミリスチン酸−terブチル、ミリスチン酸−ヘキシル、ミリスチン酸−シクロヘキシル等が挙げられる。これらは1種単独または2種以上混合して用いることができる。

前記一般式(1)で表される脂肪酸エステルは、公知の種々エステル化法を用いて製造することができ、例えば、(1)炭素数8〜14の高級脂肪酸と炭素数1〜13の1価アルコールとを酸またはアルカリの存在下で反応してエステル化させる方法、(2)炭素数8〜14の高級脂肪酸エステル化物と炭素数1〜13の1価アルコールとを酸またはアルカリの存在下で反応してエステル交換させる方法、(3)ヤシ油、パーム油、パーム核油等などの植物油と炭素数1〜13の1価アルコールとを酸またはアルカリの存在下で反応してエステル交換させる方法、などにより製造することができる。この場合、高級脂肪酸或いはそのエステルとしては、食用で用いられた植物油の廃油、廃酸、廃脂肪酸エステルを再利用することもできる。

本発明では、前記一般式(1)で表される脂肪酸エステルを単独で用いることのほか、2種類以上の脂肪酸エステルを混合して使用することもできる。

また加工速度および加工精度を低下させない範囲で、前記一般式(1)で表される脂肪酸エステルに鉱油、合成油を混合することができる。放電加工油基材として従来から使用されている鉱油または合成油を混合して用いる場合、その鉱油または合成油の含有量は、加工速度および加工精度を低下させないために組成物全量基準で50%未満であることが好ましい。

鉱油及び合成油としては、通常放電加工油の基材として使用しているものであれば特に限定されず使用することができる。鉱油としては、具体的には、パラフィン系またはナフテン系の原油の蒸留により得られる灯油留分;灯油留分からの抽出操作等により得られる潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、及び白土処理等の精製処理等を一つ以上適宜組み合わせて精製したもの等が挙げられる。合成油としては、具体的には、ポリ−α−オレフィン又はその水素化物、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル、ポリオールエステル、ポリグリコール、シリコーン油、ジアルキルジフェニルエーテル、及びポリフェニルエーテル等が挙げられる。

本発明の脂肪酸エステルはそれ自体単品で放電加工油として使用可能であるが、性能を高める目的で必要に応じて任意の添加剤と混合して使用することもできる。この添加剤としては具体的には、ポリブテン又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水素化物、エチレン−プロピレン共重合体又はその水素化物、ポリアルキルメタクリレート、ポリアミド化合物、樹脂等の高分子化合物に代表される加工性向上剤やモノフェノール化合物やビスフェノール化合物などの酸化防止剤や、公知の分散剤、凝集防止剤、再分散促進剤および消泡剤などが挙げられ、単独もしくは併用することができる。これら添加剤の含有量は、放電加工油全量基準で通常0.005〜10質量%である。

以下に、実施例及び比較例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。

なお、以下の実施例および比較例において、動粘度、加工性(加工速さと加工精度)は下記の方法により測定した値である。

<動粘度の評価>
以下の実施例および比較例において、動粘度は、下記の方法により測定した値である。
( 1 )動粘度: JIS K2283 に準拠した方法により求めた。
加工性の向上の観点から、動粘度が2.0〜6.0mm/sを好ましいとした。

<加工速さの評価>
加工は荒加工と仕上げ加工を連続して行い、加工設定深さ10mmまで彫れた時間を測定することにより加工速度を評価した。
加工機ならびに加工条件は以下に設定した。
放電加工機: 牧野フライス製作所製 EDGE2#3
電極: 銅の20mm×20mm角型電極
ワーク: 炭素鋼S50C
極性: +
加工条件:パルス幅 40〜300μs
休止幅 20〜150μs
電流ピーク値 6〜35A
<加工精度の評価>
加工精度は、加工終了後の炭素鋼底面の表面粗さ(単位:μmRy)を測定することにより評価した。測定には、表面粗さ計(小坂研究所製、サーフコーダSE3500)を用いた。
<加工性の評価基準>
加工性は加工速度(加工に要した時間)、加工精度を総合して評価するものとし、評価基準を以下とした。
◎: 加工に要した合計時間が200分未満であり、かつ表面粗さが8μmRy以下である。
○: 加工に要した合計時間が200分未満であり、かつ表面粗さが9μmRy以下である。
×: 加工に要した合計時間が200分以上である。もしくは表面粗さが10μmRy以上である。

ラウリン酸メチル(商品名:パステルM12、ライオン(株)製)
カプリル酸2−エチルヘキシル(商品名:パステル2H−08、ライオン(株)製)
ミリスチン酸イソプロピル(商品名:パステルIP−14、ライオン(株)製)
ラウリン酸2−エチルヘキシル( 商品名: パステル2H−12 、ライオン(株) 製 )
ラウリン酸2−エチルヘキシル/合成油(質量比は80/20)
実施例4記載のラウリン酸2−エチルヘキシルと、合成油であるパラオール250(昭和シェル石油製)を質量比80/20で混合した。尚、パラオール250は放電加工専用油として市販されているものである。

(比較例1)
カプリル酸メチル( 商品名: パステルM8 、ライオン(株) 製 )
(比較例2)
パルミチン酸2−エチルヘキシル(商品名:パステル2H−16、ライオン(株)製)
(比較例3)
オレイン酸イソブチル( 商品名: ビニサイザー30 、花王(株) 製 )
(比較例4)
パラオール250(昭和シェル石油(株)製)

上記各実施例1〜5、および比較例1〜4について、前記一般式(1)で表される脂肪酸エステルの炭素数R、R及びRとRの和、動粘度、加工性(加工速さと加工精度)の評価結果を表1に示した。


(表1)
実施例、比較例

表1に示したように、実施例1〜4の脂肪酸エステルは加工速度、加工精度ともに優れており、従来の放電化工油基材に比べて格段に優れていることがわかる。また、この基材と、組成物全量基準で50%未満の合成油を混合した実施例5の放電加工油組成物も加工速度、加工精度ともに優れていることがわかる。
















Claims (2)

  1. 下記一般式(1)で表される脂肪酸エステル

    [式中、脂肪酸由来のRは炭素数が7〜13の飽和の直鎖又は分岐鎖からなる鎖式炭化水素基を示し、一価アルコール由来のRは炭素数が1〜13であり、飽和の直鎖又は分岐鎖からなる炭化水素基、又は脂環式炭化水素基を示す。]において、RとRの炭素数の和が12〜20であり、且つ、40℃における動粘度が2.0〜6.0mm/sであることを特徴とする放電加工油基材
  2. 上記〔1〕の放電加工油基材を50質量%以上含有する放電加工油組成物。





















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