JP7436029B2 - 高強度ターポリンの基布の回収方法 - Google Patents

高強度ターポリンの基布の回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物を始め、ガスホルダー構造物の内膜バルーン、防爆フェンスシートなどの原反に用いられる高強度ターポリンと、その基布の回収方法に関する。より詳しくは、全芳香族ポリアミド繊維織物、炭素繊維織物などの高強度耐熱繊維織物を基布に含むターポリンを原反として構築された膜構造物の廃材、高強度ターポリン端尺反(規格長に満たないもの)、及び製造ロス、からの高強度耐熱繊維織物の分離を容易とする高強度ターポリンの発明と、その基布(基布である織物の構成要素である糸条、繊維を含む)の効率的な回収方法の発明に関する。
大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物に用いる原反素材には、ポリエステルなどの合成繊維マルチフィラメント糸条からなる織物を補強基布として、その両面に軟質塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂層を積層してなるターポリンが使用されている。特に大型テント構造物、サーカステント、テント倉庫などの膜構造物においては、膜構造物を構築するのに複数の長尺ターポリンを繋合せ、ラップ(Lap)接合(ターポリン端部ののりしろ部分同士を重ね合わせた状態で熱溶着)することで面積を拡張して、鉄骨フレームに固定されている。このようなラップ接合部分では互いのターポリンに含む補強基布の織物も単に重なり合った状態で存在し、膜構造物全体からすると補強基布としての織物の存在はラップ接合部分毎に分断されているので、膜構造物自体は実質的に熱可塑性樹脂層のみで連結されたものとなる。拠ってターポリンの基布と熱可塑性樹脂層とは強固に接着されている必要があり、そのため基布と熱可塑性樹脂層の間には接着剤層が設けられ、接着剤の一部が基布の織物内部に含浸した仕様が汎用的となっている。
ところで、大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物に用いられるターポリン原反自体の耐用年数は、ターポリン原反の厚さ、熱可塑性樹脂層の種類と配合、防汚フィルムの積層の有無などによって5~20年、主に10~15年である。これらの膜構造物は5~20年経過すると、ターポリン原反の耐候劣化、煤塵汚れ、黴汚れ、変色などの理由により、新しい膜(ターポリン原反の連結縫製物)に張替えられ、使い古された膜のほとんどは埋め立処分となる。例えばターポリンのような樹脂/繊維質複合シートの壁紙は、壁紙の廃材を粉砕し、樹脂片と繊維質片とに分別し、得られた樹脂片を再生樹脂材料、再生樹脂製品とする試み、また繊維質片を再生繊維材料、再生繊維製品とするような資源リサイクル(例えば特許文献1)がなされたが、廃材の選別、洗浄、粉砕、分別分離などの工程に手間とコストが掛かり、また収率が悪く、品質にも劣るものであった。特に屋外で10~20年を経過したターポリンでは熱可塑性樹脂層が汚く、熱可塑性樹脂の耐候劣化が進行しているため、樹脂成分を分離回収しても再生樹脂利用の出来ない品質が多かった。また厚いターポリンの粉砕は基布の長繊維(マルチフィラメント糸)の切断に負荷が掛かり粉砕機のモーターが焼ける問題、また長繊維の切断物が綿状に凝集することで回転刃に絡まる問題などが相まって、破砕によるターポリンの資源リサイクルは至極困難であった。
一方、膜構造物に用いられるターポリン原反の熱可塑性樹脂層には、主に軟質塩化ビニル樹脂が用いられており、この軟質塩化ビニル樹脂が有機溶媒に易溶であることから、この軟質塩化ビニル樹脂をメチルエチルケトンやテトラヒドロフランなどの熱溶媒に溶かして熱可塑性樹脂層を除去することで樹脂と基布(ポリエステル繊維織物、ナイロン繊維織物、ビニロン繊維織物、ガラス繊維織物など)とを分離・回収する方法(特許文献2)が実施された。この方法では軟質塩化ビニル樹脂を溶解して含む熱溶媒から有機溶媒を揮発除去して軟質塩化ビニル樹脂成分を回収し、揮発させた溶媒は別途回収される。そしてこの再生溶媒はターポリンの資源リサイクルに繰り返し利用されるものなので効率的である。しかしながら屋外で10~20年を経過したターポリンの熱可塑性樹脂層は汚く、軟質塩化ビニル樹脂の耐候劣化が進行しているため、樹脂成分を分離回収しても再生樹脂利用が出来ない品質が多かった。またポリエステル(PET)繊維織物などの基布は、軟質塩化ビニル樹脂層で保護され、外観的な異常が見られないとしても、屋外で10~20年経過後での耐候劣化は免れないため、ターポリンからの回収PET繊維を原料にしたPET製品への展開までには至っていない。
大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物に用いられるターポリンの基布には、汎用性の高いポリエステル繊維織物が最も多く使用され、特に不燃性能が要求される膜構造物にはガラス繊維織物が使用されている。これらの膜構造物は大規模となるほどターポリンの強度を増す必要があり、そのためには基布を構成する繊維糸条の繊度を大きいものとする必要がある。そうすると繊維糸条の径が太くなって基布厚さが増し、この基布を被覆して防水性を確保するための熱可塑性樹脂層の厚さが増すことで、ターポリン原反厚も増すと同時に質量も増大する連鎖となる。このように膜構造物が大規模となるほど膜材の質量を増して膜材を鉄骨フレームに装着する作業を容易でないものとしていたのである。そこで基布を構成する繊維糸条の繊度を大きくせずにターポリンの強度を増大させる手段として、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(商標:ケブラー,トワロン)、パラフェニレン/3,4′オキシジフェニレンテレフタルアミド共重合体(商標:テクノーラ)などの高強度耐熱繊維である全芳香族ポリアミド繊維織物を基布に用いることが有望視されているが、これら全芳香族ポリアミド繊維織物の価格が汎用ポリエステル繊維織物の数十倍であるため膜構造物には採用されていない。これはポリアリレート(商標:ベクトラン)のような高強度耐熱繊維である全芳香族ポリエステル繊維織物、さらにポリベンゾイミダゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスイミダゾール:商標:セラゾールなど)、ポリベンゾオキサゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール:商標:ザイロンなど)の高強度耐熱繊維である芳香族複素環高分子繊維、またさらに炭素繊維織物なども同様に、膜構造物用ターポリンの基布として汎用的でないのが現状である。
しかしながらコスト問題はあるにしても、膜構造物用のターポリンの基布に、全芳香族ポリアミド繊維織物、全芳香族ポリエステル繊維織物、芳香族複素環高分子繊維織物、及び炭素繊維織物などを用いることで、膜構造物の膜材質量を増加させずに膜構造物を強固・強靭性なものとするメリット、及び膜材施工の作業性のメリットなどは歴然である。特にこれらの高強度耐熱繊維は経年的な強度保持性に優れることから、屋外使用後に分離・回収された織物であっても資源価値は十分にあると考えられている。従って将来的に膜構造物用のターポリンの基布として、高強度耐熱繊維織物が普及するためには、ターポリンからの高強度耐熱繊維織物(基布)の資源回収を容易とする設計が必要となる。しかしながら、これらの高強度耐熱繊維織物(基布)に熱可塑性樹脂層を形成するのに、ターポリン原反同士の熱融着接合部の耐クリープ性を考慮すれば、高強度耐熱繊維織物(基布)と熱可塑性樹脂層との接着は堅牢強固なものとする必要がある。しかし、接着を堅牢強固とするほど、高強度耐熱繊維織物(基布)と熱可塑性樹脂層との分離を困難とする問題がある。従って高強度耐熱繊維織物(基布)と熱可塑性樹脂層との接着が堅牢強固でありながら、高強度耐熱繊維織物(基布)と熱可塑性樹脂層との分離が効率的、かつ容易である高強度ターポリンが将来的な要望として見込まれる。
特開2003-305723号公報 特表2011-520004号公報
本発明は、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む基布の表裏に熱可塑性樹脂層を積層してなる高強度ターポリンで、後に高強度ターポリン原反からなる膜構造物の解体により生じるターポリン廃棄物、または高強度ターポリン製造時の端尺反(規格長に満たないもの)、製造ロス、などから基布の回収を効率的、かつ容易とする高強度ターポリン、及びその基布の回収方法の提供を課題とする。本発明の高強度ターポリンは、大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物の原反素材に適し、より堅牢な膜構造物の構築及びその持続耐久を可能とする。さらにガスホルダー構造物の内膜バルーン、防爆フェンスシートなどにも適して用いられる。また、耐貫通性、防刃性にも極めて優れるので、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などに使用することができる。そしてこれらの用途使用を終えた時、高強度ターポリンを効率的に剥離・分解して基布(基布である織物の構成要素である糸条、繊維を含む)を資源回収し、再利用に供することができる。
本発明はかかる点を考慮し検討を重ねた結果、1種以上の高強度耐熱繊維糸条を織編要素に含む基布の表裏に熱可塑性樹脂層が積層されてなるターポリンにおいて、基布と熱可塑性樹脂層との間に特定の樹脂接着層を散在して設け、それによってターポリンの積層構造に、A)接着領域と、B)密着領域を構成比1:10~1:2で含ませることによって得られる高強度ターポリンが、特定の方法によって分解可能であり、高強度ターポリンから高強度耐熱繊維糸条を織編要素に含む基布(基布である織物の構成要素である糸条、繊維を含む)を効率的に分離・回収できることを見出して本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明の高強度ターポリンは、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む基布の表裏に熱可塑性樹脂層を積層してなるターポリンであって、前記基布と前記熱可塑性樹脂層との間に樹脂接着層を散在して設け、それによって前記ターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/熱可塑性樹脂層」、または「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/基布/熱可塑性樹脂層」からなる密着領域を構成比1:10~1:2で含むことが好ましい。この構成により、膜構造物の膜材質量を増加させずに膜構造物を強固・強靭性なものとする高強度ターポリン原反を得ることができ、しかも後の膜構造物の解体から生じたターポリン廃棄物、あるいは高強度ターポリン製造時の端尺反(規格長に満たないもの)、製造ロス、などから基布(全芳香族ポリアミド繊維織物、全芳香族ポリエステル繊維織物、芳香族複素環高分子繊維織物、及び炭素繊維織物などの織物、糸条、繊維)の効率的回収を容易とする。接着領域と密着領域の構成比の接着領域の比率が1:10未満だと、ターポリンの分解はより容易で基布の回収も容易となるが、膜構造物におけるターポリン原反同士のラップ(Lap)接合部(ターポリン端部ののりしろ部分同士を重ね合わせた状態で熱溶着)が剥離破壊し易くなって、膜構造物の耐久性を損なう心配が増す。これはラップ接合部分では互いのターポリン基布が重なり合い、ラップ接合部分毎に分断された存在で、接合部は実質的に熱可塑性樹脂層で連結されていることで、これが剥離することで接合部がバラバラとなる。また接着領域と密着領域の構成比の接着領域の比率が1:2を超えると、膜構造物におけるターポリン原反同士のラップ(Lap)接合部の破壊強度が向上して膜構造物の耐久信頼性を増すが、その反面、廃棄物となったターポリンからの基布の分離・回収性を悪くすることがある。
本発明の高強度ターポリンは、前記基布の少なくとも片面の、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積に対する前記樹脂接着層の散在面積率も9~33%、かつドット状、無定型ランダム状、及び連続線状の何れかの態様を含む樹脂接着層であることが好ましい。基布と熱可塑性樹脂層との間には接着層が、ドット状、無定型ランダム状、及び連続線状などの態様で散在して設けられていてもよい。この接着層の散在によって膜構造物のラップ接合部での剥離破壊を生じることなく、また非接着層は高強度ターポリンの剥離・分解性に寄与する。すなわち主に接着領域の積層構造A)は接合部の耐クリープ性(糸抜破壊防止)向上に寄与し、主に密着領域の積層構造B)は高強度ターポリンの剥離・分解・基布回収性向上に寄与する。基布と熱可塑性樹脂層との間に形成する樹脂接着層は、基布の片面のみの散在形成でも十分な耐クリープ性(糸抜破壊防止)を発現させる。基布の空隙率0~25%の範囲が好ましく、この空隙部には表裏の熱可塑性樹脂層の一部が侵入して表裏連結部を形成する。そして基布の少なくとも片面の、どの9cm単位においても実体部面積(空隙部を除く)のうち接着領域の占有率は9~33%、密着領域の占有率は67~91%である。基布の表裏両面に樹脂接着層を形成する場合は、接着領域の積層構造A)と密着領域の積層構造B)の構成比1:10~1:2の範囲内とするよう、表裏の樹脂接着層形成の重なり合いの有無、及び重なり度合に留意する必要がある。例えば重なり合いが無い場合、表と裏の樹脂接着層の最大形成は16.5%で、重なり合いが完全一致の場合、表も裏も樹脂接着層の最大形成は33%である。重なり合いは表と裏の樹脂接着層の占有率の和が33%を超えた時に、その超えた分の占有率を重なり合いとして取り込み吸収する。この接着領域は接合部の耐クリープ性の向上に寄与し、ラップ接合部分で高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊を抑止することで膜構造物の耐久性を確保する。また密着領域は高強度ターポリンの剥離・分解性に寄与し、表裏連結部は熱可塑性樹脂層の接着(剥離防止)に寄与する。
本発明の高強度ターポリンは、前記樹脂接着層が、セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルを樹脂接着層に対して0.5~10質量%含んでいることが好ましい。セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルの存在によって樹脂接着層の強靭性、応力分散性を向上させ、膜構造物のラップ接合部耐クリープ性をより向上させ、ラップ接合部での剥離破壊を生じ難くする。この向上効果により樹脂接着層の散在面積率をより少なく設けることで、高強度ターポリンの剥離・分解・基布回収性向上を図ることができる。
本発明の高強度ターポリンは、前記樹脂接着層の樹脂が、アイオノマー樹脂であることが好ましい。これによって、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む基布との接着性を特に向上させる。そして高強度ターポリンの温度を80~150℃とすることで、アイオノマー樹脂接着層の接着性が低下する性質を利用し、80~150℃にした高強度ターポリンでの基布と熱可塑性樹脂層との剥離・分解を容易、かつ効率的なものとする。
本発明の高強度ターポリンは、前記熱可塑性樹脂層が、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化モリブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、及びアルミニウム粉から選ばれた1種以上の粒子を、熱可塑性樹脂層に対して1~10質量%含むことが好ましい。これらは特にアイオノマー樹脂接着層との密着剤となって、アイオノマー樹脂接着層と熱可塑性樹脂層との接着性を向上させることで、膜構造物におけるラップ接合部耐クリープ性(耐糸抜性)をより向上させる。これはアイオノマー樹脂の金属(イオン)架橋部と酸化チタン、酸化アンチモン、酸化モリブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、アルミニウム粉などの粒子との相互作用による密着効果の発現によるものである。そして高強度ターポリンの温度を80~150℃とすることで、アイオノマー樹脂接着層の接着性が低下する性質を利用し、80~150℃にした高強度ターポリンでの基布と熱可塑性樹脂層との剥離・分解を容易、かつ効率的なものとする。
本発明の高強度ターポリンは、前記芳香族複素環高分子繊維が、ポリベンゾイミダゾール系、ポリベンゾオキサゾール系、ポリベンゾチアゾール系、及びこれらの共重合高分子(ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、芳香族ポリアミド成分を含む上記共重合系)、の群から選ばれた1種以上であることが好ましい。
本発明の高強度ターポリンは、前記目開き基布の経軸及びバイアス軸が、経軸/右上バイアス軸/左上バイアス軸、もしくは経軸/緯軸/右上バイアス軸/左上バイアス軸、の何れかであることが好ましい。「経糸条/右上バイアス糸条/左上バイアス糸条」は三軸織物、「経糸条/緯糸条/右上バイアス糸条/左上バイアス糸条」は四軸織物で、特に三軸織物、及び四軸織物を用いることで、得られるターポリンの耐貫通性、防刃性に極めて優れるので、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などの特殊用途に適して使用することができる。
本発明の高強度ターポリンの基布の回収方法は、1)〔0010〕に記載の高強度ターポリンを2枚重ね、熱ロール圧着、熱板プレス、高周波溶着、の何れかの方法、またはこれらの併用方法で、2枚の前記高強度ターポリンの対面する熱可塑性樹脂層同士を溶着し、2枚の高強度ターポリンを一体化させて一体化物(I)とする工程(但し長手方向の端部は一体化させない)、2)この一体化していない2つの長手方向端部を掴み部として一体化物(I)を開いて溶着界面を露出させ、対面一体化する熱可塑性樹脂層の境界の一方に、一体化物(I)の幅方向に沿って熱可塑性樹脂層のみを切断する切込みを入れて熱可塑性樹脂層を剥がすための導入部を設ける工程、3)この一体化物(I)の温度70~150℃の状態で一体化物(I)を引き剥がし、切込みが入った側の熱可塑性樹脂層を、もう一方の熱可塑性樹脂層と一体化させて剥ぎ取り、切込みが入った側の高強度ターポリンの基布を露出させる分離工程、4)この基布が露出したターポリンに残存する熱可塑性樹脂層面を、新たな高強度ターポリンと重ね、熱ロール圧着、熱板プレス、高周波溶着、の何れかの方法、またはこれらの併用方法で、対面する熱可塑性樹脂層同士を一体化させて一体化物(II)とする工程(但し長手方向の端部は一体化させない)、5)この一体化していない2つの長手方向端部を掴み部として一体化物(II)を開いて溶着界面を露出させ、対面一体化する熱可塑性樹脂層(基布が露出したターポリン側)に、一体化物(II)の幅方向に沿って熱可塑性樹脂層のみを切断する切込みを入れて熱可塑性樹脂層を剥がすための導入部を設ける工程、6)この一体化物(II)の温度70~150℃の状態で、この一体化物(II)から基布を引き剥がして基布を単離する工程、を含むことが好ましい。

本発明の高強度ターポリンの基布の回収方法は、1)〔0010〕に記載の高強度ターポリンを3枚重ね、熱ロール圧着、熱板プレス、高周波溶着、の何れかの方法、またはこれらの併用方法で、3枚の高強度ターポリンの対面する熱可塑性樹脂層同士を溶着し、3枚の高強度ターポリンを一体化させる工程(但し長手方向の端部は一体化させない)、2)この一体化していない3枚の長手方向端部の1枚目と3枚目を掴み部として一体化物を開いて溶着界面を露出させ、対面一体化する熱可塑性樹脂層の2ヶ所に対して、2枚目の高強度ターポリンの熱可塑性樹脂層に、一体化物の幅方向に沿って表裏の熱可塑性樹脂層のみを切断する切込みを入れて熱可塑性樹脂層を剥がすための導入部を設ける工程、3)この一体化物の温度70~150℃の状態で一体化物を引き剥がし、切込みが入った側の熱可塑性樹脂層を、対面する熱可塑性樹脂層と一体化させて剥ぎ取り、2枚目の高強度ターポリンの基布を単離する工程、を含むことが好ましい。
本発明により、ターポリン原反からなる膜構造物の解体により生じるターポリン廃棄物、またはターポリン製造時の端尺反(規格長に満たないもの)、製造ロス、などから、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む基布の回収を容易とする高強度ターポリンを得ることが可能となった。本発明の高強度ターポリンは、大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物の原反素材に適し、より堅牢な膜構造物の構築及びその持続耐久を可能とする。さらにガスホルダー構造物の内膜バルーン、防爆フェンスシートなどにも適して用いられる。また、耐貫通性、防刃性にも極めて優れるので、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などに使用することができる。そしてこれらの用途使用を終えた時、高強度ターポリンを効率的に剥離・分解して基布(基布である織物の構成要素である糸条、繊維を含む)を資源回収し、織物、糸条(マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条)、繊維などの形態で再利用に供することができる。特に炭素繊維は、織物、糸条(マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条)、繊維などの形態で、汚水浄化の分野、導電性付与、及び帯電防止分野においての再利用が可能である。
本発明の高強度ターポリンの断面図の一例 本発明の高強度ターポリンの断面図の一例 本発明の高強度ターポリンの断面図の一例 本発明の高強度ターポリンの樹脂接着層の一例 本発明の高強度ターポリン一体化物の断面図の一例 本発明の高強度ターポリン一体化物の分離物の断面図の一例 基布がきれいに露出する好ましい分離の例 基布がまだらに露出する好ましくない分離の例
本発明の高強度ターポリンは、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む基布の表裏に熱可塑性樹脂層を積層してなるターポリンであって、基布と熱可塑性樹脂層との間に樹脂接着層を散在して設け、それによってターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/熱可塑性樹脂層」、または「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/基布/熱可塑性樹脂層」からなる密着領域を構成比1:10~1:2で含み、基布の少なくとも片面の、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積に対する樹脂接着層の散在面積率も9~33%、かつドット状、無定型ランダム状、及び連続線状の何れかの態様を含む樹脂接着層であって、樹脂接着層が、セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルを含んでいてもよく、特に樹脂接着層の樹脂は、アイオノマー樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂層が、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化モリブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、及びアルミニウム粉から選ばれた1種以上の粒子を含むことができ、芳香族複素環高分子繊維が、ポリベンゾイミダゾール系、ポリベンゾオキサゾール系、ポリベンゾチアゾール系、及びこれらの共重合高分子(ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、芳香族ポリアミド成分を含む上記共重合系)、の群から選ばれた1種以上であって、基布の織編要素が、経糸条/緯糸条、経糸条/右上バイアス糸条/左上バイアス糸条、経糸条/緯糸条/右上バイアス糸条/左上バイアス糸条、から選ばれた1種の態様である。特に目開き基布の片面の実体部面積(空隙部を除いた面積)において、樹脂接着層の散在部分を含む積層構造は全て接着領域A)で、それ以外の部分の積層構造は全て密着領域となる。但し接着領域A)と密着領域B)に散在して含まれる目開き基布の空隙部に形成された表裏連結部はその何れにも含まれない。特に本発明において接着領域とは熱可塑性樹脂層をJIS K6854-3(T形剥離試験)で剥がした時に、ターポリン本体側に熱可塑性樹脂層または樹脂接着層、及び両方の残骸が多く残り、(目開き)基布自体があまり露出しない状態となる凝集破壊が明確な積層構造を意味し、密着領域とは、ターポリン本体側に熱可塑性樹脂層も樹脂接着層もほとんど残らず、(目開き)基布が露出した状態となる剥離破壊が明確な積層構造を意味する。これにおいても接着領域A)と密着領域B)に散在して含む目開き基布の空隙部に形成された表裏連結部はその何れにも含まれない。
本発明の高強度ターポリンに用いる基布は、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む織物が好ましい。全芳香族ポリアミド繊維は、ポリパラベンズアミド、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(商標:ケブラー,トワロン)、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(商標:コーネックス)、パラフェニレン/3,4′オキシジフェニレンテレフタルアミド共重合体(商標:テクノーラ)、ポリアミドイミド(無水トリメリット酸とジフェニルメタンジイソシアネートの重縮合体:商標:ケルメル)などが挙げられ、全芳香族ポリエステル繊維は、パラヒドロキシ安息香酸、p,p-ジオキシジフェニルなどのジフェノール化合物と、6-ヒドロキシナフタレン―2―カルボン酸などの芳香族ジカルボン酸との重縮合体であるポリアリレート(商標:ベクトラン)が挙げられる。芳香族複素環高分子繊維は、ポリベンゾイミダゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスイミダゾール:商標:セラゾールなど)、ポリベンゾオキサゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール:商標:ザイロンなど)、ポリベンゾチアゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾールなど)、及びこれらの共重合高分子(ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系、芳香族ポリアミド成分を含む上記共重合系)、の群から選ばれた1種以上が挙げられる。他の具体例は、ポリパラフェニレンベンゾビスイミダゾール、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾールなどのフェニレン部位(-C-)を、ビフェニレン(-C12-)、ターフェニレン(-C1812-)、ジフェニレンエーテル(-C12O-)、ナフチレン(-C10-)、アントラセニル(-C14-)などの芳香族化合物に置換した化学構造の共重合体、すなわちフェニル部位(C)を、ビフェニル(C1210)、ターフェニル(C1814)、ジフェニルエーテル(C1210O)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C1410)、ピレン(C1610)などの芳香族化合物に置換した化学構造の共重合体が挙げられ、これらはオルト、メタ、パラの位置異性体による共重合体も含まれる。また炭素繊維は、アクリル系繊維を空気中200~300℃で耐炎化した繊維を、次いで不活性気体中1000~1500℃で炭化させたPAN系炭素繊維(商標:トレカ)、さらに不活性気体中2500~3000℃で黒鉛化させた高弾性率炭素繊維が挙げられ、本発明の高強度ターポリンの基布に炭素繊維糸条を用いることで優れた帯電防止効果を得ることができる。
基布の構成要素となる繊維糸条は上記繊維の混用または混紡であってもよい。また必要に応じて、経糸、緯糸、バイアス糸などの軸糸ごとに繊維種を使い分けてもよい。また必要に応じて、特定の打ち込み間隔(n本交互、n本引揃え交互、n本跨ぎ:nは整数)で異なる複数種の糸条を規則的に配置、あるいはランダムに配置してもよい。特にこの配置態様は、ポリエステル繊維糸条、ナイロン繊維糸条、ビニロン繊維糸条、ガラス繊維糸条、シリカアルミナ繊維糸条、バサルト繊維糸条などを織編要素に含む基布に、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維など任意の糸条の混用配置を行うことによって外観上、格子模様、幾何学模様となる態様であってもよく、この混用配置によって得られるターポリンに、より強固で柔軟なリップストップ引裂抑止構造を付与する。
基布を構成する糸条はマルチフィラメント糸条であることが高強度ターポリンの要件に合致して特に好ましく、繊度は250~3500デニール(278~3888dtex)、特に500~2000デニール(555~2222dtex)で、278dtexであればフィラメント数は100~200本程度、1111dtexであればフィラメント数は400~800本程度が好ましく、糸条は無撚糸(断面が楕円または扁平)であっても撚糸であってもよい。また基布を構成する糸条を短繊維紡績糸条とすることで、糸条自体の強度は損なうものの短繊維紡績糸条独特の嵩高構造、及び毛羽のアンカー効果によって熱可塑性樹脂層との密着性を増強し、膜構造物のラップ接合部における耐クリープ性をより向上させて、ラップ接合部分での糸抜破壊を抑止する。短繊維紡績糸条は、綿番手の10番手(591dtex)~60番手(97dtex)の範囲、特に10番手(591dtex)、14番手(422dtex)、16番手(370dtex)、20番手(295dtex)、24番手(246dtex)、30番手(197dtex)など、これらの単糸、または双糸(片撚糸)、単糸2本以上による合撚糸(諸撚糸)などが使用できる他、嵩高加工糸条(タスラン加工糸、ウーリー加工糸など)、カバリング糸条(マルチフィラメント糸の外周に同種または異種の短繊維を巻き付けた芯鞘複合糸)なども使用することもできる。基布の経糸及び緯糸、あるいは経糸及びバイアス糸、あるいは経糸、緯糸、及びバイアス糸の打込み密度に制限は無く、用いる糸条の太さ(デニール、番手)に応じて任意の設計が可能であるが、糸条群による交差隙間の総和面積率(空隙率)0~25%の範囲となる打込み密度で、目付量100~750g/mの基布が適している。特に本発明の高強度ターポリンの基布の織編要素には、織軸ごとにマルチフィラメント糸条と短繊維紡績糸条とを1:1~5:1の本数比で混用して規則的配置とすることで、高強度を維持しながら、短繊維紡績糸条独特の嵩高構造、及び毛羽のアンカー効果によって熱可塑性樹脂層との密着性を増強し、膜構造物のラップ接合部での糸抜破壊(糸のすっぽ抜け)を抑止する。空隙率は基布の単位面積中に占める糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。具体的に糸条幅の平均値を求め、糸条の打込本数/インチ、との関係から1インチ平米当たりの空隙率の計算値として算出可能である。
1)ポリベンゾイミダゾール系繊維は、芳香族テトラアミン化合物(塩酸塩であってもよい)のジアミン成分と、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸エステル、芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物、複素環状ジカルボン酸などのジカルボン酸誘導体とが重縮合反応しアミド結合(プレポリマー)を形成し、次いで隣接するアミノ基とアミド結合とが縮合反応して形成されたイミダゾール環と芳香族環とを分子内に有する。具体的に3,3’-ジアミノベンジジン(四塩酸塩)とイソフタル酸ジフェニルエステル、またはテレフタル酸ジフェニルエステルとの重縮合反応によって得られるポリベンゾビスイミダゾールによる繊維、さらに芳香族テトラアミン化合物の一部を芳香族ジアミンに置換することで得られる芳香族ポリアミド成分を含むポリベンゾイミダゾール系共重合体繊維を用いることができる。2)ポリベンゾオキサゾール系繊維は、芳香環中の隣接する炭素原子上にアミノ基と水酸基とを有する芳香族ジアミンジオールと、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸エステル、芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物、複素環状ジカルボン酸などのジカルボン酸誘導体とが重縮合反応しアミド結合(プレポリマー)を形成し、次いで隣接する水酸基とアミド結合とが縮合反応して形成されたオキサゾール環と芳香族環とを分子内に有する繊維で、具体的に3,3’-ジヒドロキシベンジジン(塩酸塩でもよい)、または3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニルと、テレフタル酸との重縮合反応によって得られるポリベンゾビスオキサゾールによる繊維、さらに芳香族ジアミンジオールの一部を芳香族ジアミンに置換することで得られる芳香族ポリアミド成分を含むポリベンゾオキサゾール系共重合体繊維を用いることができる。3)ポリベンゾチアゾール系繊維は、芳香環中の隣接する炭素原子上にアミノ基とメルカプト基とを有する芳香族ジアミンジメルカプト(芳香族ジアミンジチオール)と、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸エステル、芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物、複素環状ジカルボン酸などのジカルボン酸誘導体とが重縮合反応しアミド結合(プレポリマー)を形成し、次いで隣接するメルカプト基とアミド結合とが縮合反応して形成されたチアゾール環と芳香族環とを分子内に有する繊維で、具体的に3,3’-ジメルカプトベンジジン(塩酸塩でもよい)、または3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメルカプトビフェニルと、テレフタル酸との重縮合反応によって得られるポリベンゾビスチアゾールによる繊維、さらに芳香族ジアミンジメルカプトの一部を芳香族ジアミンに置換することで得られる芳香族ポリアミド成分を含むポリベンゾチアゾール系共重合体繊維を用いることができる。
4)さらにベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール共重合系の芳香族複素環高分子繊維は、3,3’-ジアミノベンジジン(四塩酸塩でもよい)及び、3,3’-ジヒドロキシベンジジン(塩酸塩でもよい)と、イソまたはテレフタル酸ジフェニルエステルとの重縮合反応によって得られる共重合繊維であり、ベンゾイミダゾール-ベンゾチアゾール共重合系の芳香族複素環高分子繊維は、3,3’-ジアミノベンジジン(四塩酸塩でもよい)及び、3,3’-ジメルカプトベンジジン(塩酸塩でもよい)と、イソまたはテレフタル酸ジフェニルエステルとの重縮合反応によって得られる共重合繊維である。また、ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系の芳香族複素環高分子繊維は、3,3’-ジヒドロキシベンジジン(塩酸塩でもよい)及び、3,3’-ジメルカプトベンジジン(塩酸塩でもよい)と、イソまたはテレフタル酸ジフェニルエステルとの重縮合反応によって得られる共重合繊維である。また、ベンゾイミダゾール-ベンゾオキサゾール-ベンゾチアゾール共重合系の芳香族複素環高分子繊維は、3,3’-ジアミノベンジジン(四塩酸塩でもよい)、3,3’-ジヒドロキシベンジジン(塩酸塩でもよい)及び、3,3’-ジメルカプトベンジジン(塩酸塩でもよい)と、イソまたはテレフタル酸ジフェニルエステルとの重縮合反応によって得られる共重合繊維である。5)これらの共重合体繊維は、更に芳香族テトラアミン化合物の一部、芳香族ジアミンジオールの一部、芳香族ジアミンジメルカプトの一部、などを芳香族ジアミンに置換することで得られる芳香族ポリアミド成分を含む共重合体繊維であってもよい。
本発明の高強度ターポリンに用いる基布は、平織物(経/緯二軸織物、経/バイアス三軸織物、経/緯/バイアス四軸織物)、斜子織物(2×2、3×3、4×4などの正則斜子織、3×2、4×2、4×3、5×3、2×3、2×4、3×4、3×5などの不規則斜子織)、綾織物(経糸、緯糸とも最少3本ずつ用いた最小構成単位を有する:3枚斜文、4枚斜文、5枚斜文、6枚斜文など)、朱子織物(経糸、緯糸とも最少5本ずつ用いた最小構成単位を有する:2飛び、3飛び、4飛び、5飛びなどの正則朱子)などが挙げられ、これら基布の空隙率は0~25%である態様が好ましい。なかでも基布の織編要素を「経糸条/緯糸条」である二軸織物、特に「経糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」である三軸織物、及び「経糸条/緯糸条/右上30~60°バイアス糸条/左上30~60°バイアス糸条」である四軸織物が、各軸方向での物性(強度/外力の伝播分散性)値バランスに優れ好ましい。特に三軸織物、及び四軸織物を用いることで、得られる高強度ターポリンの耐貫通性、防刃性に極めて優れるので、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などの特殊用途に使用することができる。
本発明の高強度ターポリンにおいて、基布と熱可塑性樹脂層との間に樹脂接着層が、ドット状、無定型ランダム状、及び連続線状の何れかの態様にて散在して設けられ、それによってターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/熱可塑性樹脂層」、または「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/基布/熱可塑性樹脂層」からなる密着領域とを構成比1:10~1:2で含み、さらに基布の目開き部には表裏の熱可塑性樹脂層によって充填された表裏連結部を付帯することができる。この構成により、膜構造物の膜材質量を増加させずに膜構造物を強固・強靭性なものとする高強度ターポリン原反を得ることができ、しかも後の膜構造物の解体から生じたターポリン廃棄物、あるいは高強度ターポリン製造時の端尺反(規格長に満たないもの)、製造ロス、などから基布(全芳香族ポリアミド繊維織物、全芳香族ポリエステル繊維織物、芳香族複素環高分子繊維織物、及び炭素繊維織物など)の回収を容易とする。接着領域と密着領域の構成比の接着領域の比率が1:10未満だと、ターポリンの分解はより容易で基布の回収も容易となるが、膜構造物におけるターポリン原反同士のラップ(Lap)接合部(ターポリン端部ののりしろ部分同士を重ね合わせた状態で熱溶着)が剥離破壊し易くなって、膜構造物の耐久性を損なう心配を増す。これはラップ接合部分では互いのターポリン基布が重なり合い、ラップ接合部分毎に分断された存在で、接合部は実質的に熱可塑性樹脂層で連結されていることで、これが剥離することで接合部がバラバラとなる。また接着領域と密着領域の構成比の接着領域の比率が1:2を超えると、膜構造物におけるターポリン原反同士のラップ(Lap)接合部の破壊強度が向上して膜構造物の耐久信頼性を増すが、その反面、廃棄物となったターポリンからの基布の分離・回収性を悪くすることがある。この樹脂接着層の散在によって膜構造物のラップ接合部での剥離破壊を生じることなく、また非接着層は高強度ターポリンの分解性に寄与する。すなわち主に接着領域の積層構造A)は接合部の耐クリープ性(糸抜破壊防止)向上に寄与し、主に密着領域の積層構造B)は高強度ターポリンの剥離・分解・基布回収性向上に寄与する。基布と熱可塑性樹脂層との間に形成する樹脂接着層は、基布の片面のみの散在形成でも十分な耐クリープ性(糸抜破壊防止)を発現させる。
このような接着領域と密着領域とを構成比1:10~1:2で含む構成とする手段は、樹脂接着層を予め基布の片面、または両面に形成する手段、または表裏の熱可塑性樹脂層となる熱可塑性樹脂層側(表及び裏、表または裏)に予め樹脂接着層を形成する手段が挙げられる。基布と熱可塑性樹脂層との間に形成する樹脂接着層は、基布の片面のみの散在形成でもラップ接合部分での十分な糸抜破壊を抑止することができるが、両面形成が好ましい。両面に樹脂接着層を形成する場合は、接着領域の積層構造A)と密着領域の積層構造B)の構成比1:10~1:2の範囲内とするよう、表裏の樹脂接着層形成の重なり合いの有無、及び重なり度合に留意する必要がある。例えば表裏での重なり合いが全く無い場合、表と裏の樹脂接着層の最大形成面積率は各々16.5%で、重なり合いがほぼ一致する場合、表も裏も樹脂接着層の最大形成面積率は約33%となる。また部分的に重なり合いの生成がある場合は樹脂接着層の形成面積率は表裏各々20~30%の範囲内が好ましい。樹脂接着層は目開き基布の糸条部分に設けられた場合、目開きとなる空隙部は最大形成面積率から除外される。樹脂接着層を予め目開き基布(空隙率が5~25%)の片面、または両面に形成する具体的工程は、
1)基布の少なくとも片面に樹脂接着層をドット状、無定型ランダム状、連続線状の何れかの態様で散在させ、基布の少なくとも片面の、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積(空隙部を除く)に対する樹脂接着層の散在面積率も9~33%にして設ける工程、2)表裏の熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートを製造する工程、3)基布の表裏に熱可塑性樹脂層を積層すると同時に、基布の目開き部がされば、目開き部に表裏の熱可塑性樹脂層の一部を溶融充填して表裏連結部を形成する工程、を少なくとも含むターポリンの製造方法によって、ターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/熱可塑性樹脂層」の断面、または「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」の断面からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/基布/熱可塑性樹脂層」の断面からなる密着領域とを構成比1:10~1:2で混在して設けることができる。これによって得られる高強度ターポリンが、特定の方法によって分解可能であり、高強度ターポリンから高強度耐熱繊維糸条を織編要素に含む基布の分離・回収をすることができる。
表裏の熱可塑性樹脂層となる熱可塑性樹脂フィルム側(表及び裏、表または裏)に予め樹脂接着層を形成する具体的工程は、1)表裏の熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートを製造する工程、2)表裏または表裏一方の熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートに樹脂接着層をドット状、無定型ランダム状、連続線状の何れかの態様で散在させ、基布(空隙率が0~25%)の少なくとも片面の、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積(空隙部うを除く)に対する樹脂接着層の散在面積率も9~33%にして設けた熱可塑性樹脂層を形成する工程、3)基布の表裏、または表裏の一方に、樹脂接着層が散在して設けられた熱可塑性樹脂層となるフィルムまたはシートを積層すると同時に、基布の目開き部があれば、この目開き部に表裏の熱可塑性樹脂層の一部を溶融充填して表裏連結部を形成する工程、を少なくとも含むターポリンの製造方法によって、ターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/熱可塑性樹脂層」の断面、または「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」の断面からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/基布/熱可塑性樹脂層」の断面からなる密着領域とを、構成比1:10~1:2で混在させて設けることができる。表裏の熱可塑性樹脂フィルムに樹脂接着層を形成する場合は、接着領域の積層構造A)と密着領域の積層構造B)の構成比1:10~1:2の範囲内とするよう、表裏熱可塑性樹脂層の樹脂接着層形成の重なり合いの有無、及び重なり度合に留意する必要がある。例えば表裏熱可塑性樹脂層での重なり合いが無い場合、表と裏の熱可塑性樹脂層の樹脂接着層の最大形成面積率は16.5%で、重なり合いが概ね一致する場合、表も裏も樹脂接着層の最大形成面積率は33%である。また部分的な重なり合いが生成する場合、樹脂接着層の形成面積率は各々20~30%の範囲内が好ましい。これによって得られる高強度ターポリンが、特定の方法によって分解可能であり、高強度ターポリンから高強度耐熱繊維糸条を織編要素に含む基布の分離・回収をすることができる
前述の段落〔0028〕―〔0030〕の樹脂接着層において、基布の空隙率が0~25%で、この基布の少なくとも片面の、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積に対する樹脂接着層の散在面積率も9~33%であることが好ましい。表裏連結部は基布の空隙率5~25%の部分に形成され、基布の少なくとも片面の、どの9cm単位においても実体部面積(空隙部を除く)のうち接着領域の占有率は9~33%、密着領域の占有率は67~91%である。樹脂接着層の散在面積率が9%未満だと、膜構造物のラップ接合部分の剥離破壊(基布から熱可塑性樹脂層が剥がれる)の心配があり、また散在面積率が33%を超えると、膜構造物の解体で排出されるターポリン廃棄物の分解(基布と熱可塑性樹脂層の分解)が困難、もしくは非効率的となることがある。ドット状の樹脂接着層とは具体的に、円、楕円、四角(市松)、三角、十字架、星形などの幾何学形状(角が潰れていてもよい)など、及びこれらのドットの組み合わせで、1ドットの幅1mm~6mm、高さ1mm~6mmのドットの集合体で、横段の並びの偶数列と奇数列が並ぶ整列配置、または横段の並びの偶数列と奇数列との互いのドット隣接間隔を半間隔ずらした千鳥配置が好ましい。ドット形状は、円、楕円、四角(市松)が特に好ましい。無定型ランダム状の樹脂接着層とは具体的に、ペイズリー、飛沫、写真、絵柄、文字、記号、モノグラムなど、及びこれらの組み合わせで、形や配置に特別な規約を設けていないものである。また連続線状の樹脂接着層とは、具体的に、横ストライプ、縦ストライプ、斜ストライプ、格子、斜め格子、三角格子、籠目、などの幾何学形状、自由な線及び曲線、など線幅1mm~6mmのもの、及びこれらの組み合わせが挙げられる。連続線状の樹脂接着層は、斜め格子、三角格子が最も好ましく、斜め格子は右上り30~60°(特に45°)の直線群と左上り30~60°(特に45°)の直線群との交差によるものが挙げられ、また三角格子は、横線群(または縦線群)と、右上り30~60°(特に45°)の直線群と左上り30~60°(特に45°)の直線群との交差によるものが挙げられる。またこれらのドット状、無定型ランダム状、連続線状の樹脂接着層の形成は、例えばグラビア印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、ホットメルト転写などの公知の印刷方法を用いることができる。
樹脂接着層を形成する接着性組成物は、アイオノマー樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂が例示できるが、特にアイオノマー樹脂が好ましい。ポリウレタン系樹脂は、ジイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を分子構造内に2個以上有する公知のポリオール化合物と、イソシアネート基と反応する官能基を含有する化合物(分子鎖長の調節用)との付加重合反応によって得られるものである。ジイソシアネートは、芳香族、脂肪族、脂環式(水素添加物を包含する)の公知のジイソシアネート化合物が用いられる。ポリアミド系樹脂は、炭素数4~12個の公知のジカルボン酸化合物と、炭素数4~14個の公知のジアミン化合物との重縮合から得られるもの、もしくは、炭素数6~12個の公知の環状ラクタムの開環重合によって得られるもの、これらの共重合体樹脂、ポリアミド-ポリウレタン共重合体樹脂、ポリアミド-ポリエステルの共重合体樹脂であってもよい。ポリエステル系樹脂は、炭素数4~12の公知のジカルボン酸化合物と、公知のジオール化合物との重縮合によって得られる非結晶性の飽和ポリエステル樹脂、また脂肪族ポリエーテルブロック重合体及び/又は脂肪族ポリエステルブロック重合体成分を上記飽和ポリエステル共重合樹脂に組み込んだ共重合体樹脂、ポリエステル-ポリアミド共重合体樹脂、ポリエステル-ポリウレタン共重合体樹脂などを使用することができる。これらのポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂の1種以上を、公知の有機系溶剤中に1~30重量%の固形分濃度で溶解させ、樹脂接着層形成時に併用する架橋剤として、公知のジイソシアネート化合物、イソシアネート基を分子内に3個以上含有する公知のポリイソシアネート化合物、公知のオキサゾリン化合物、公知のアジリジン化合物を主剤の固形分濃度に対して1~20質量%併用した液状組成物が好ましい。この架橋剤の官能基は、樹脂接着層形成時の加熱によって、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂の官能基と反応し、同時に架橋剤の官能基は、基布の繊維表面(繊維表面に官能基を有していれば繊維表面の官能基に反応)に固着し、同時に架橋剤の官能基は、熱可塑性樹脂層界面(熱可塑性樹脂層に官能基を有していれば熱可塑性樹脂層の官能基に反応)に固着し、同時に架橋剤同士が重合する。
樹脂接着層を形成する接着性組成物に含むアイオノマー樹脂は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体を基体ポリマーとして、カルボン酸基に金属(イオン)を結合させた樹脂で、特にカルボン酸基に結合した金属(イオン)がポリマーとポリマー間の架橋点、またカルボン酸基とカルボン酸基間の架橋点となって、基体ポリマーよりも樹脂の強靭性、及び耐摩耗性を増し、かつ対金属、対合成樹脂、対合成繊維との接着力を増大する。基体ポリマーとしては、不飽和カルボン酸含量が1~30質量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体が好ましく、さらに他の単量体を共重合した三元共重合体であってもよい。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、無水マレイン酸などが例示されるが、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、基体ポリマーの具体例は、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタリル酸共重合体、などである。また上記他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどが例示できるが、特にアクリル酸、メタクリル酸の不飽和カルボン酸エステルが好ましい。アイオノマー樹脂は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の30~80%を金属イオンで中和したものが好ましく、金属イオンとしては、Li、Na、Kなどの1価金属のイオン、Mg、Caなどのアルカリ土類金属、あるいはZnなどの2価金属のイオンなどが例示できるが、特にNa、Ca、Znが好ましい。本発明においてアイオノマー樹脂接着層を形成する接着性組成物はホットメルト性を有するか、または液状であることが好ましい。そのためには、固形分25~50質量%濃度のアイオノマー樹脂エマルジョン(乳化水分散体)、またはアイオノマー樹脂ディスパージョン(強制水分散体)を基体に用いればよい。このアイオノマー樹脂エマルジョン、及びアイオノマー樹脂ディスパージョンは、配合や希釈での濃度調整、また添加剤での粘度・レオロジーコントロールすることができる。アイオノマー樹脂接着層は塗布後に熱乾燥され、水分や有機溶剤が揮発して被膜となる。アイオノマー樹脂のエマルジョン、またはディスパージョンに、セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルを含むことによって、粘度・レオロジーがコントロールされ液垂れが無く、塗布ムラの無い状態での基布への塗工、または熱可塑性樹脂層フィルムへの塗工を容易とする。そしてこの塗工被膜であるアイオノマー樹脂接着層に、セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルを含むことによって樹脂接着層の強靭性、応力分散性を向上させ、膜構造物のラップ接合部耐クリープ性をより向上し、ラップ接合部での剥離破壊、糸抜破壊を生じ難いものとする。この向上効果により樹脂接着層の散在面積率をより少なく設計することで、高強度ターポリンの分解・基布回収性の向上が図れる。
樹脂接着層に、セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルを、樹脂接着層に対して0.5~10質量%含むことによって、樹脂接着層の強靭性、応力分散性及び耐摩耗性を増すことで、膜構造物のラップ接合部での剥離破壊抑止性、及び糸抜破壊抑止性を向上させる。これは基布に接着している樹脂接着層との界面、すなわち基布を構成する糸条と、それに接着している樹脂接着層との界面に作用する接合部クリープ剪断力がセルロースナノファイバー個々に伝播することで、クリープ剪断力に抵抗する応力となって、樹脂接着層の塑性変形に対する抵抗力が増すことでラップ接合部耐クリープ性をより向上させたものと考察される。この向上効果により樹脂接着層の散在面積率をより少なく設計でき、高強度ターポリンの分解・基布回収性を向上させる。セルロースナノファイバーは、セルロース原料(化学処理パルプ・機械破砕パルプ・古紙パルプなど)を機械的に解繊(粗解繊・微解繊)し、繊維径をナノサイズ化して得られた、粉体、スラリー、または分散液状のものが使用できる。本発明に用いるセルロースナノファイバーは、カルボキシメチルセルロース、酸化セルロース、エステル化セルロース、エーテル化セルロース、アセチル化セルロース、シアノエチル化セルロース、アセタール化セルロース、イソシアネート化セルロース、から選らばれた一種以上が好ましい。カルボキシメチルセルロースはセルロースの1級、2級水酸基(2,3,6位)を任意にカルボキシメチル化し、機械的に解繊したもので、また酸化セルロースはTEMPO触媒を含む酸化触媒液により、セルロース分子中の1級水酸基(6位)のみを選択的にカルボキシ基に変換し、機械的に解繊したものである。セルロースナノファイバーの平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は50~500、平均繊維径は4nm~200nm、平均繊維長は2μm~100μmのものが、接着性組成物中におけるセルロースナノファイバーの分散性に優れ、かつアイオノマー樹脂接着層内に親和する。またセルロースナノクリスタルは、セルロース原料(木材・竹・植物パルプ、古紙パルプなど)を硫酸等の酸によって非結晶部分を除去した後、機械的解繊処理して得られる、平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)50以下、平均繊維径1nm~100nm、平均繊維長50nm~5μmのもので、エステル化、エーテル化、アセチル化などの公知の化学修飾がなされたセルロースナノクリスタルであってもよい。これらは粉体、スラリー、または分散液状の形態で使用できる。
これらの樹脂接着層(セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタルなどを1~10質量%含む)には、さらにシリカ、ヒュームドシリカ、ゼオライト、及び粘土鉱物から選ばれた1種以上のナノ物質担持体を、セルロースナノファイバー、及びセルロースナノクリスタルと同量程度で含むことができる。粘土鉱物は、モンモリロナイト、セピオライト、タルク、カオリナイト、バーミキュライト、ハロサイト、イラサイト、クロライトなどから選ばれた1種以上である。これら無機粒子の粒子径は0.01μm~3μm、好ましくは0.1μm~1.5μmであるが、これらは疎水性または親水性に表面処理が施された粒子であってもよい。これによって、膜構造物のラップ接合部における糸抜破壊抑止性をより向上させる。これは基布に接着している樹脂接着層との界面、すなわち基布を構成する糸条と、それに接着している樹脂接着層との界面に作用するクリープ剪断力に抵抗する接着応力と、樹脂接着層の塑性変形に対する抵抗力が、樹脂接着層にセルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルと、ナノ物質担持体との相互作用によって向上するものと考察される。
本発明の高強度ターポリンにおいて、基布の表裏に形成する熱可塑性樹脂層は、公知の熱可塑性樹脂およびエラストマーにより形成される組成物であり、これらは例えば、軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤含有)、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂(PE,PP)、オレフィン系共重合体樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂などであり、これらにはウレタンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、クロルスルホン化ポリエチレン、SBR、EPDM、EPMなどの熱可塑性ゴムをブレンドして補助成分として含んでいてもよい。これらの熱可塑性樹脂のうち、特に高周波溶着性を有する軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、ウレタン樹脂、及びフッ素含有共重合体樹脂などを高周波溶着性付与成分として熱可塑性樹脂層に対し50質量%以上含有することが好ましい。特に熱可塑性樹脂層が、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化モリブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、及びアルミニウム粉から選ばれた1種以上の粒子を、アイオノマー樹脂接着層との密着剤として、熱可塑性樹脂層に対して1~10質量%含むことが好ましい。これら粒子を含むことによってターポリン本体における熱可塑性樹脂層と基布との接着強度、特に基布上に設けたアイオノマー樹脂接着層部分との接着強度をより増強して膜構造物におけるラップ接合部の耐クリープ性がより向上する。これはアイオノマー樹脂の金属(イオン)架橋部と酸化チタン、酸化アンチモン、酸化モリブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、アルミニウム粉などの粒子との相互作用による密着効果の発現によるもので、これが耐クリープ性向上となる。そしてこのラップ接合部分では高強度耐熱繊維糸条の糸抜破壊を抑止する糸抜抵抗値が発現されることでラップ接合部の破壊を防ぐことができる。熱可塑性樹脂層には、安定剤、着色剤、顔料、光輝性顔料、難燃剤、防炎剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤、架橋剤などの公知の添加剤を任意に用いることができる
本発明の高強度ターポリンを構成する表裏の熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂組成物を熱混練し、カレンダー法、またはTダイス押出法で溶融圧延した厚さが80μm~800μm、特に150μm~300μmフィルム(シート)が使用できる。また目開き基布に対する表裏の熱可塑性樹脂層の積層は、熱ロール/ゴムロールの連続圧着ユニットを1~2と、冷却ロールユニット、及び巻取ユニットを有するラミネーターを用いることによって1パスまたは2パスの工程により熱溶融圧着することができる。本発明の高強度ターポリンの製造は、カレンダー成型して得たフィルムをラミネーターにより基布の両面に熱圧着する方法が適している。このとき目開き基布の場合、目開き部には表裏から熱可塑性樹脂フィルムの溶融物が侵入し充填され、目開き部を介して表と裏のフィルム同士が部分的にブリッジ固化してなる表裏連結部が形成される。この表裏連結部の形成量は目開き基布の空隙率と実質的同じ占有率となる。得られるターポリンの厚さは0.4mm~1.5mm、質量500~2000g/mの範囲が、大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物の原反素材に適し、より堅牢な膜構造物の構築及びその持続耐久を可能とするのみならず、ガスホルダー構造物の内膜バルーン、防爆フェンスシートなどにも適して用いられる。また本発明の高強度ターポリンは、耐貫通性、防刃性に極めて優れるので、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などに使用することができる。
本発明の高強度ターポリンの表面の片面以上に、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル/シリコン系共重合体樹脂、フッ素系共重合体樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合体樹脂のブレンド、ウレタン/シリコン系グラフト共重合体樹脂、及びウレタン/フッ素系グラフト共重合体樹脂、などの塗膜からなる防汚層が形成されていてもよく、また、フッ素系樹脂層/アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ硬化物接着層、フッ素系樹脂層/アクリル系樹脂接着層、フッ素系樹脂層/アクリル系樹脂層/アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ硬化物接着層、及びフッ素系樹脂層/アクリル系樹脂層/塩化ビニル系樹脂接着層などのフッ素系樹脂フィルムを防汚層として積層することができる。これらの防汚層を、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、モニュメントなどの膜構造物に適用することで屋外使用時の耐久性を飛躍的に向上させることができる。さらにこれらの防汚層の表面には、1次粒子径3nm~150nmの無機コロイド物質を原料とするナノ粒子が、シランカップリング剤の加水分解縮合物を含むバインダー成分に担持されてなる帯電防止性防汚層が設けられていてもよい。無機コロイド物質は、光触媒性酸化チタンゾル、光触媒性酸化亜鉛ゾル、光触媒性酸化錫ゾル、酸化チタンゾル、酸化亜鉛ゾル、酸化錫ゾル、シリカゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化ジルコニウムゾル、酸化セリウムゾル、及び複合酸化物(酸化亜鉛-五酸化アンチモン複合または酸化スズ-五酸化アンチモン複合)ゾルなどの金属酸化物である。
本発明の高強度ターポリンの接合・縫製などは、高周波ウエルダー融着法、熱板融着法、熱風融着法、超音波融着法などの熱融着が適用可能である。特に高周波融着法において、ウエルドバーによる発熱プレスにより表裏の熱可塑性樹脂層が再溶融し、樹脂接着層(接着領域)を再加熱することで基布(マルチフィラメント糸条)との接着効果が増すこと、また表裏連結部が再溶融し、基布との密着性を増すことで更に膜構造物のラップ接合部におけるクリープ性(糸抜破壊の抑止性)を向上させることができる。
本発明の高強度ターポリンの基布の回収方法は、1)高強度ターポリンを2枚重ね、熱ロール圧着、熱板プレス、高周波溶着、の何れかの方法、またはこれらの併用方法で、2枚の高強度ターポリンの対面する熱可塑性樹脂層同士を溶着し、2枚の高強度ターポリンを一体化させて一体化物(I)とする工程(但し長手方向の端部、少なくとも3cmは一体化させない)、2)この一体化していない2つの長手方向端部を掴み部として一体化物(I)を開いて溶着界面を露出させ、対面一体化する熱可塑性樹脂層の境界の一方に、一体化物(I)の幅方向に沿って熱可塑性樹脂層のみを切断する切込みを入れて熱可塑性樹脂層を剥がすための導入部を設ける工程、3)この一体化物(I)の温度70~150℃の状態で一体化物(I)を引き剥がし、切込みが入った側の熱可塑性樹脂層を、もう一方の熱可塑性樹脂層と一体化させて剥ぎ取り、切込みが入った側の高強度ターポリンの基布を露出させる分離工程、4)この基布が露出したターポリンに残存する熱可塑性樹脂層面を、新たな高強度ターポリンと重ね、熱ロール圧着、熱板プレス、高周波溶着、の何れかの方法、またはこれらの併用方法で、対面する熱可塑性樹脂層同士を一体化させて一体化物(II)とする工程(但し長手方向の端部、少なくとも3cmは一体化させない)、5)この一体化していない2つの長手方向端部を掴み部として一体化物(II)を開いて溶着界面を露出させ、対面一体化する熱可塑性樹脂層(基布が露出したターポリン側)に、一体化物(II)の幅方向に沿って熱可塑性樹脂層のみを切断する切込みを入れて熱可塑性樹脂層を剥がすための導入部を設ける工程、6)この一体化物(II)の温度70~150℃の状態で、この一体化物(II)から基布を引き剥がして基布を単離する工程、を含む方法である。
またもう1つの本発明の高強度ターポリンの基布の回収方法は、1)高強度ターポリンを3枚重ね、熱ロール圧着、熱板プレス、高周波溶着、の何れかの方法、またはこれらの併用方法で、3枚の高強度ターポリンの対面する熱可塑性樹脂層同士を溶着し、3枚の高強度ターポリンを一体化させる工程(但し長手方向の端部、少なくとも3cmは一体化させない)、2)この一体化していない3枚の長手方向端部の1枚目と3枚目を掴み部として一体化物を開いて溶着界面を露出させ、対面一体化する熱可塑性樹脂層の2ヶ所に対して、2枚目の高強度ターポリンの熱可塑性樹脂層に、一体化物の幅方向に沿って表裏の熱可塑性樹脂層のみを切断する切込みを入れて熱可塑性樹脂層を剥がすための導入部を設ける工程、3)この一体化物の温度70~150℃の状態で一体化物を引き剥がし、切込みが入った側の熱可塑性樹脂層を、対面する熱可塑性樹脂層と一体化させて剥ぎ取り、2枚目の高強度ターポリンの基布を単離する工程、を含む方法である。
上記の基布の回収方法において熱ロール圧着とは、1対の電気ヒーター内蔵金属ロール(150~200℃設定)、または電気ヒーター内蔵金属ロール(130~200℃設定)とゴムロールの対、のロール間に2~3枚の高強度ターポリン(金属ロール、外部ヒーターによる予熱が好ましい)を挟んで熱可塑性樹脂層を溶融させた状態で回転圧着させて一体化する方法で、外部ヒーター照射を付帯させることもできる。2枚または3枚の高強度ターポリンの一体化物を引き剥がす工程は、この金属ロール上に乗せた状態で人手作業によって、もしくは機械装置によって行ってもよい。熱板プレスは、電気ヒーター内蔵の1対の金属ブロック(130~200℃設定)間に2~3枚の高強度ターポリンを挟んで熱可塑性樹脂層を溶融させた状態で圧着一体化する方法である。2枚または3枚の高強度ターポリンの一体化物を引き剥がす工程は、この金属ブロック上に乗せた状態で人手作業によって、もしくは機械装置によって行ってもよい。高周波溶着は、金属製平押刃と絶縁体シートの間に2~3枚の高強度ターポリン(常温)を挟んで圧着した状態で高周波電界を加え、熱可塑性樹脂の分子振動による発熱で熱可塑性樹脂層を溶融させて一体化する方法である。高強度ターポリンを剥離・分解して回収した基布(基布である織物の構成要素である糸条、繊維を含む)は、織物、糸条(マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条)、繊維などの形態で再利用できる。特に炭素繊維は、織物、糸条(マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条)、繊維、3mm~15mm程度のカットファイバー、などの形態で、汚水浄化の分野、導電性付与、及び帯電防止分野においての再利用が可能で、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維などは、3mm~15mm程度のカットファイバーの形態で、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂ポリイミドなどの熱硬化性樹脂、アクリレート系光硬化型樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、などのエンジニアプラスチックの補強材として再利用できる。
本発明を下記の実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。
接合体の評価方法
〈経糸方向クリープ試験によるラップ接合部の糸抜破壊抑止効果の確認〉
2枚のターポリンのヨコ方向(緯糸方向)の端部同士を8cm幅ののりしろを取って平行に重ね合わせたラップ接合部を形成し、4cm幅×30cm長のウエルドバー(平刃)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター(株)製YTO-8A型:高周波出力8KW)を用い、陽極電流1.0Aでターポリンの高周波融着接合を行い、ターポリン接合体を得た。この接合体より融着接合部を重ね合わせ幅8cmをタテ方向に含む、3cm幅×30cm長の試験片を採取してクリープ試験片とし、クリープ試験機(東洋精機製作所(株)製:100LDR型)を使用して25℃×100kgf荷重(条件1)、20℃×150kgf荷重(条件2)、20℃×200kgf荷重(条件3)の3条件で経糸方向のクリープ性を24時間評価した。
〈緯糸方向クリープ試験によるラップ接合部の糸抜破壊抑止効果の確認〉
2枚のターポリンのタテ方向(経糸方向)の端部同士を8cm幅ののりしろを取って平行に重ね合わせたラップ接合部を形成し、上記経糸方向クリープ性評価用試験片の準備と同様の手順によって得た試験片を用い、25℃×100kgf荷重(条件1)、25℃×150kgf荷重(条件2)、25℃×200kgf荷重(条件3)の3条件で緯糸方向のクリープ性を24時間評価した。
※三軸織物を用いた場合は、緯糸方向をバイアス方向(右上がり、または左上がりの何れか一方)に読み替えた試験を行うものとする。
評価の基準
1 :24時間経過後、ラップ接合部に異変・異常なく良好
2 :24時間経過後、糸条が変位しラップ接合部に伸びが発生した
3 :24時間以内にラップ接合部に糸抜を生じ試験片が伸びた
4 :24時間以内にラップ接合部に糸抜破壊を生じ試験片が分断した
〈破壊した時間を記録〉
破壊状態の判断 : ラップ接合部糸抜け破壊(糸条の断裂なし),
ラップ接合部以外の破壊(糸条の断裂あり)
ターポリンの引裂強度
〈JIS L1096:8.17.1 A法〉シングルタング法
断:糸条の断裂を伴う本体破壊
抜:糸条の糸抜を伴う本体破壊
ターポリンの剥離・分解による基布の回収(方法A)
1)ターポリン(長手方向40cm×幅方向25cm)を、電気ヒーター内蔵の金属ロール対を有するテストロール(8インチ径)の2つの金属ロール(165℃設定)上に巻き付けて乗せて30秒後に、金属ロールを回転させて2本の金属ロール間で熱ロール圧着して、2枚のターポリンの対面する熱可塑性樹脂層同士を溶着し、2枚のターポリンを一体化した。(但し長手方向の端部5cmは一体化させなかった)、2)この一体化させていない2つの長手方向端部を掴み部として一体化物を開いて溶着界面を露出させ、対面一体化する熱可塑性樹脂層の一方に、一体化物の幅方向に沿って熱可塑性樹脂層のみを切断する切込みをカッターナイフで入れて熱可塑性樹脂層を剥がすための導入部を設けた。3)この一体化物をテストロールから取り出して、温度80~100℃の状態で一体化物を手作業で引き剥がして分離した。この時、切込みが入った側の熱可塑性樹脂層が、もう一方の熱可塑性樹脂層と一体化した状態で剥ぎ取り、切込みが入った側のターポリンの基布がきれいに露出したものを「容易」(図6-1)、両方のターポリンの基布がまだらに露出したものは「困難」(図6-2)と評価した。4)「容易」と評価したターポリンに残存するもう片面の熱可塑性樹脂層面を、新たなターポリン(長手方向40cm×幅方向25cm)と重ね、テストロール(同上)により熱ロール圧着して、対面する熱可塑性樹脂層同士を一体化させた。(但し長手方向の端部5cmは一体化させなかった)、5)この一体化させていない2つの長手方向端部を掴み部として一体化物を開いて溶着界面を露出させ、対面一体化する熱可塑性樹脂層(基布が露出したターポリン側)に、一体化物の幅方向に沿って熱可塑性樹脂層のみを切断する切込みをカッターナイフで入れて熱可塑性樹脂層を剥がすための導入部を設けた。6)この一体化物をテストロールから取り出して、温度80~100℃の状態で、この一体化物から基布を手作業で引き剥がして基布を単離した。
ターポリンの剥離・分解による基布の回収(方法B)
1)ターポリン(長手方向40cm×幅方向25cm)を、電気ヒーター内蔵の金属ロール対を有するテストロール(8インチ径)の2つの金属ロール(165℃設定)上に巻き付けて乗せて30秒後に、金属ロールを回転させて2本の金属ロール間で熱ロール圧着して、2枚のターポリンの対面する熱可塑性樹脂層同士を溶着し、2枚の高強度ターポリンを一体化した。(但し長手方向の端部5cmは一体化させなかった)、空いたもう一方の金属ロール上にもう1枚のターポリン(長手方向40cm×幅方向25cm)を巻き付けて乗せて30秒後に、金属ロールを回転させて2本の金属ロール間で熱ロール圧着して、互いのターポリンの対面する熱可塑性樹脂層同士を溶着し、3枚の高強度ターポリンの一体化物とした。(但し長手方向の端部5cmは一体化させなかった)2)この一体化していない3枚の長手方向端部の1枚目と3枚目を掴み部として一体化物を開いて溶着界面を露出させ、対面一体化する熱可塑性樹脂層の2ヶ所に対して、2枚目の高強度ターポリンの熱可塑性樹脂層に、一体化物の幅方向に沿って表裏の熱可塑性樹脂層のみを切断する切込みをカッターナイフで入れて熱可塑性樹脂層を剥がすための導入部を設けた。3)この一体化物をテストロールから取り出して、温度80~100℃の状態で一体化物を手作業で引き剥がして分離した。この時、中央(2枚目)のターポリンの基布が単離できたものを「容易」(図6-1)、中央(2枚目)のターポリンの基布がまだらに露出したものは「困難」(図6-2)と評価した。
[実施例1]
<基布(1)>
1500デニール(1670dtex)の全芳香族ポリアミド繊維(フィラメント数1000本:ポリパラフェニレンテレフタルアミド)によるマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経糸群は1インチ間13本の織組織、及び緯糸群は1インチ間13本の織組織とする平織物を基布(1)として用いた。この基布(1)の質量は165g/m、空隙率(目抜け)は14%であった。この基布(1)の片面上に、下記の接着性組成物(1)〔配合1〕による樹脂接着層(1)の形成を60メッシュロール(5mmφの円ドット、左右隣接間隔10mm、横段列隣接間隔10mm、横段の並びの偶数列と奇数列との互いのドット隣接間隔を半間隔ずらした千鳥配置)によるグラビア塗布を行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して円ドット状のアイオノマー樹脂接着層(1)を設けた。
〔配合1〕樹脂接着層(1)を形成する接着性組成物
エチレン-メタリル酸共重合体(不飽和カルボン酸含量25質量%)のカルボン酸に
亜鉛イオンが結合してなるアイオノマー樹脂ディスパージョン(固形分25質量%)
100質量部
セルロースナノファイバー(カルボキシメチルセルロース) 1質量部
<高強度ターポリン(1)>
樹脂接着層(1)を片面に形成した空隙率12%の基布(1)を基材として、その両面に下記〔配合2〕の軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)からなる厚さ0.2mmのカレンダー成型フィルムを表裏の熱可塑性樹脂層としてラミネーターでの熱圧着によるブリッジ溶融ラミネートにより、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量830g/mの高強度ターポリン(1)を得た。得られた高強度ターポリン(1)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:4であった。また、基布(1)の片面、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積(空隙部を除く)に対する樹脂接着層(1)の散在面積率も15~16.5%であった。
〔配合2〕:軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)
塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)(可塑剤)
55質量部
リン酸トリクレジル(防炎可塑剤) 10質量部
エポキシ化大豆油(安定剤兼可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤、兼アイオノマー樹脂接着層との密着剤) 10質量部
ルチル型酸化チタン(白顔料、兼アイオノマー樹脂接着層との密着剤) 5質量部
ベンゾトリアゾール骨格有機化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
[実施例2]
実施例1の基布(1)を、基布(2)に変更した以外は実施例1と同様として、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/基布(2)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/基布(2)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量815g/mの高強度ターポリン(2)を得た。得られた高強度ターポリン(2)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:4であった。また、基布(2)の片面、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積(空隙部を除く)に対する樹脂接着層(1)の散在面積率も15~16.5%であった。
<基布(2)>
1500デニール(1670dtex)の全芳香族ポリエステル繊維(フィラメント数300本:パラヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸の重縮合によるポリアリレート)によるマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経糸群は1インチ間13本の織組織、及び緯糸群は1インチ間13本の織組織とする平織物を基布(2)として用いた。この基布(2)の質量は157g/m、空隙率(目抜け)は14%である。
[実施例3]
実施例1の基布(1)を、基布(3)に変更した以外は実施例1と同様として、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/基布(3)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/基布(3)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量843g/mの高強度ターポリン(3)を得た。得られた高強度ターポリン(3)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:4であった。また、基布(3)の片面、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積(空隙部を除く)に対する樹脂接着層(1)の散在面積率も15~16.5%であった。
<基布(3)>
1500デニール(1670dtex)の芳香族複素環高分子繊維(フィラメント数996本:ポリベンゾオキサゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)によるマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経糸群は1インチ間13本の織組織、及び緯糸群は1インチ間13本の織組織とする平織物を基布(3)として用いた。この基布(3)の質量は174g/m、空隙率(目抜け)は14%である。
[実施例4]
実施例1の基布(1)を、基布(4)に変更した以外は実施例1と同様として、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/基布(4)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/基布(4)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量850g/mの高強度ターポリン(4)を得た。得られた高強度ターポリン(4)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:4であった。また、基布(4)の片面、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積(空隙部を除く)に対する樹脂接着層(1)の散在面積率も15~16.5%であった。
<基布(4)>
1782デニール(1980dtex)の炭素繊維(フィラメント数3000本)によるマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経糸群は1インチ間11本の織組織、及び緯糸群は1インチ間11本の織組織とする平織物を基布(4)として用いた。この基布(4)の質量は178g/m、空隙率(目抜け)は14%である。
[実施例5]
実施例1の目開き基布(1)の片面に設けた〔配合1〕による樹脂接着層(1)の形成を変更し、60メッシュロール(5mmφの円ドット、左右隣接間隔5mm、横段列隣接間隔5mm、横段の並びの偶数列と奇数列との互いのドット隣接間隔を半間隔ずらした千鳥配置)によるグラビア塗布を表裏の円ドットが重ならないように調節して行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して円ドット状の樹脂接着層(1)を設けた以外は実施例1と同様として、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/基布(1)/樹脂接着層(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量835g/mの高強度ターポリン(5)を得た。得られた高強度ターポリン(5)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:2であった。また、目開き基布(1)の片面、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積(空隙部を除く)に対する樹脂接着層(1)の散在面積率も30~33%であった。
[実施例6]
実施例1の目開き基布(1)の片面に設けた〔配合1〕による樹脂接着層(1)の形成面積率を変更し、60メッシュロール(5mmφの円ドット、左右隣接間隔25mm、横段列隣接間隔25mm、横段の並びの偶数列と奇数列との互いのドット隣接間隔を半間隔ずらした千鳥配置)によるグラビア塗布を行った以外は実施例1と同様として、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量823g/mの高強度ターポリン(6)を得た。得られた高強度ターポリン(6)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:10となった。また、基布(1)の片面、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積(空隙部を除く)に対する樹脂接着層(1)の散在面積率も6~6.6%であった。
[実施例7]
実施例1の目開き基布(1)の片面に形成した樹脂接着層(1)の円ドット態様を斜め格子状に変更した以外は実施例1と同様とした。樹脂接着層(1)は、<配合1>の樹脂接着層を形成する接着性組成物(1)を用い、60メッシュロール(2mm幅の右上り45°の直線群と2mm幅の左上り45°の直線群との交差による斜め格子、直線間隔20mm)によるグラビア塗布を行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して斜め格子状の樹脂接着層(1)を設けた。樹脂接着層(1)が形成された基布(1)を用いて得られた高強度ターポリン(7)は、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の斜め格子接着領域、「熱可塑性樹脂層/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量830g/m、表裏連結部は14%、斜め格子接着領域と密着領域との構成比は約1:5であった。また、基布(1)の片面、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積(空隙部を除く)に対する樹脂接着層(1)の散在面積率も14.5~16%であった。
[実施例8]
実施例1の目開き基布(1)の片面に形成した樹脂接着層(1)の円ドット態様を、基布(1)の両面に設けた以外は実施例1と同様とした。樹脂接着層(1)が両面に形成された基布(1)を用いて得られた高強度ターポリン(8)は、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/基布(1)/樹脂接着層(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量838g/m、表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は表面、裏面とも約1:4であった。また、基布(1)の表面、裏面とも、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積(空隙部を除く)に対する樹脂接着層(1)の散在面積率も15~16.5%であった。
[実施例9]
実施例1に用いた基布(1)を下記の基布(5)に変更し、基布(5)の両面に樹脂接着層(1)のグラビア塗布を表裏の円ドットが重ならないように調節して行い、樹脂接着層(1)の形成を行った以外は実施例1と同様として「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/基布(5)/樹脂接着層(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/基布(5)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.85mm、質量889g/mの高強度ターポリン(9)を得た。高強度ターポリン(9)の表裏連結部は11%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は表面、裏面とも約1:4であった。また、基布(5)の表面、裏面とも、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積(空隙部を除く)に対する樹脂接着層(1)の散在面積率も15~16.5%であった。
<基布(5)>
1500デニール(1670dtex)の芳香族複素環高分子繊維(フィラメント数996本:ポリベンゾオキサゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)によるマルチフィラメント糸条を経糸群及び45°左上/45°右上バイアス糸群に用い、経糸群は1インチ間10本の織組織とし、また45°左上/45°右上バイアス糸群は各々1インチ間10本の織組織とする三軸平織物を基布(5)に用いた。この基布(5)の質量は224g/m、空隙率(目抜け部総和)は11%であった。
[実施例10]
実施例1に用いた基布(1)を下記の基布(6)に変更し、基布(6)の両面に樹脂接着層(1)のグラビア塗布を表裏の円ドットが重ならないよう調節して行い、樹脂接着層(1)の形成を行った以外は実施例1と同様として「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(1)/基布(6)/樹脂接着層(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/基布(6)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.88mm、質量941g/mの高強度ターポリン(10)を得た。高強度ターポリン(10)の表裏連結部は10%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は表面、裏面とも約1:4であった。また、基布(6)の表面、裏面とも、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積(空隙部を除く)に対する樹脂接着層(1)の散在面積率も15~16.5%であった。
<基布(6)>
1500デニール(1670dtex)の芳香族複素環高分子繊維(フィラメント数996本:ポリベンゾオキサゾール系(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)によるマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経緯とも1インチ間8本の織組織とする平織物に、45°左上/45°右上バイアス糸群を絡み糸で1インチ間8本配置したハイブリッド四軸織物で、45°左上/45°右上バイアス糸群が、1782デニール(1980dtex)の炭素繊維(フィラメント数3000本)によるマルチフィラメント糸条であって、質量268g/m、空隙率(目抜け)10%の基布(6)である。
[実施例11~20]
実施例1~10のターポリン(1)~(10)の両面に下記〔配合3〕のアクリル系樹脂塗料を100メッシュのグラビアロールにより塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、アクリル系樹脂塗膜層(5g/m/片面)を表裏に形成し中間体A(11~20)とした。
〔配合3〕アクリル系樹脂塗料
メタアクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル共重合体
100質量部
メチルエチルケトン(MEK希釈剤) 250質量部
トルエン(希釈剤) 250質量部
次にこの中間体A(11~20)の片表面に下記〔配合4〕のアミノエチル化アクリル樹脂エポキシ組成物の溶液を100メッシュのグラビアロールにより塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、アクリル系樹脂塗膜層(5g/m/片面)を表面側に半硬化の状態で付帯する中間体B(11~20)を得た。
〔配合4〕アミノエチル化アクリル樹脂エポキシ組成物
メタクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸共重合
物のカルボキシル基にポリエチレンイミンをグラフトし、
側鎖が、-COO(CHCHNH)Hの化学式で示されるアミン価(固形分1g
に含むアミンmmol数)0.7~1.3mmol/gの一級アミノ基含有アクリル系樹脂
100質量部
エポキシ樹脂(エポキシ当量260g/eqのビスフェノールA骨格含有3官能
エポキシ樹脂) 20質量部
メチルエチルケトン(MEK希釈剤) 150質量部
トルエン(希釈剤) 150質量部
次に、この中間体B(1~11)のアミノエチル化アクリル樹脂エポキシ半硬化物層面側に、厚さ25μm、53g/mのポリビニリデンフルオライド(PVdF)フィルムのコロナ処理面側を対向し、150℃の熱ロール条件でラミネーターを通過させ、熱圧着してフッ素系樹脂フィルムを積層して防汚層とした。各々実施例1~10のターポリンを基材に、フッ素系樹脂フィルムを防汚層とする高強度ターポリン(11)~(20)を得た。
従来、接合部耐クリープ(糸抜破壊防止)性と引裂強度との関係は、一方が高くなる程もう一方は低くなるという背反関係にあり、両者のバランスを得ることは至極困難とされていたが、本発明により得られた実施例1~10の高強度ターポリン(1)~(10)は、何れも優れた接合部耐クリープ(糸抜破壊防止)性を有しながら高い引裂強度を兼備する有用なもので、しかもターポリンからの高強度耐熱性基布の分離・回収が容易(方法A、方法B)なもので、およそ3分程度で基布の回収が可能であった。また回収した基布の織目は手作業にもかかわらず整然とした外観であった。特に本発明において、基布と熱可塑性樹脂層との間に(アイオノマー)樹脂接着層を散在して設け、接着領域と密着領域とを構成比1:10~1:2の範囲、特に1:5~1:2とすることで基布の分離・回収を容易可能なものとし、しかも接合部耐クリープ性(糸抜破壊防止効果)と引裂強度とをバランスよく兼備した。この際(アイオノマー)樹脂接着層にナノセルロースを含有することで(アイオノマー)樹脂接着層自体の強靭性、応力分散性及び耐摩耗性を増し、高強度ターポリン同士のラップ接合部での糸抜破壊抑止性がさらに向上した。また実施例8~10では基布の両面に(アイオノマー)樹脂接着層を散在形成したことで(アイオノマー)樹脂接着層の形成量(接着領域)が実質的に2倍となり、接合部耐クリープ(糸抜破壊防止効果)性が向上したが、接着領域と密着領域との構成比1:4は変わらないことでターポリンからの基布の分離・回収性への影響は無かった。実施例9の高強度ターポリン(9)は基布に三軸織物を用い、また実施例10の高強度ターポリン(10)は基布に四軸織物を用いたことで、織編要素の糸条本数が増して引裂強度と接合部耐クリープ性が他の実施例のどの高強度ターポリンよりも高レベルとなったが、ターポリンからの基布の分離・回収性への影響は無かった。また実施例10の四軸織物では、ポリベンゾオキサゾール系糸条を経緯に配置し、炭素繊維糸条をバイアス配置したハイブリッド四軸織物としたことで、表面抵抗率測定(JIS K7194準拠)で10Ω/□~1010Ω/□の優れた帯電防止効果が発現されたが、ターポリンからの基布の分離・回収性への影響は無かった。以上の結果により、高強度耐熱繊維織物を基材とする高強度ターポリンによる膜構造物設計において、膜構造物のラップ接合部分での糸抜破壊(糸のすっぽ抜け)を生じる事故の心配が解消されると同時に、膜構造物の解体により生じるターポリン廃棄物、高強度ターポリン製造時の端尺反(規格長に満たないもの)、製造ロスなどから基布の分離回収が容易となって、再資源利用に適したものと確信する。
さらにターポリン(1)~(10)を基材に、フッ素系樹脂フィルムを防汚層として片面に設けた高強度ターポリン(11)~(20)では、これらの防汚性評価として、市販の油性ペン(赤)文字描き、室温60秒乾燥後のDRYティッシュペーパー拭取除去性(擦り取り往復10回)で評価した結果、明らかにフッ素系樹脂フィルムを付帯する高強度ターポリン(11)~(20)の赤インク文字の除去性に優れていたのに対し、フッ素系樹脂フィルムを付帯しない高強度ターポリン(1)~(10)では赤インク文字がターポリンに浸透し、しかも擦った部分にインク汚れが延びて汚らしい状態となった。また高強度ターポリン(1)~(20)の断片を7-9月の3ケ月間屋外曝露し、水濡ティッシュペーパー拭取除去性(擦り取り往復10回)で評価した結果、明らかにフッ素系樹脂フィルムを付帯する高強度ターポリン(11)~(20)では付着煤塵の除去性に優れ、初期の外観を回復したのに対し、フッ素系樹脂フィルムを付帯しない高強度ターポリン(1)~(10)では、ターポリン表面に可塑剤が移行することで付着煤塵がこびり付き、初期の外観が回復できないものであった。従って、大型テント(パビリオン)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、モニュメントなどの膜構造物などの用途に用いる高強度ターポリンは、実施例11~20のターポリン(11)~(20)が特段好ましい。
[比較例1]
実施例1の高強度ターポリン(1)の設計から樹脂接着層を省略した以外は実施例1と同様として「熱可塑性樹脂層/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び14%の表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量825g/mのターポリン(21)を得た。得られたターポリン(21)は、柔軟性に富み、引裂強度、及び基布の分離回収性には優れているものの、樹脂接着層を有していないことが原因で、ラップ接合部が剥がれ易く、同時に耐クリープ性に劣るもので、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、モニュメントなどの膜構造物などの用途には各段不適切なものであった。
[比較例2]
実施例1の基布(1)に形成した樹脂接着層(1)を樹脂接着層(2)に変更した以外は実施例1と同様とした。樹脂接着層(2)は、<配合1>の樹脂接着層を形成する接着性組成物(1)を用い、60メッシュロール(3mmφの円ドット、上下左右ドット間隔12mm、横段の並びの偶数列と奇数列との整列を半分ずらした千鳥配置)によるグラビア塗布を行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して円ドット状の樹脂接着層(2)を設けた。樹脂接着層(2)が形成された基布(1)を用いて得られたターポリン(22)は、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(2)/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量820g/m、表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:20であった。また、基布(1)の片面、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積に対する樹脂接着層(2)の散在面積率も約4.5%であった。得られたターポリン(22)は、接着領域と密着領域との好ましい構成比1:10~1:2の範囲から大きく外れた1:20と、接着領域が僅少のため、比較例1に近い態様となり、比較例1同様、柔軟性に富み、引裂強度、及び基布の分離回収性には優れているものの、樹脂接着層を有していないことが原因で、ラップ接合部が剥がれ易く、同時に耐クリープ性に劣るもので、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(天井)、モニュメントなどの膜構造物などの用途には各段不適切なものであった。
[比較例3]
実施例1の基布(1)に形成した樹脂接着層(1)を樹脂接着層(3)に変更した以外は実施例1と同様とした。樹脂接着層(3)は、<配合1>のアイオノマー樹脂接着層を形成する接着性組成物(1)を用い、60メッシュロール(14mmφの円ドット、上下左右ドット間隔3mm、横段の並びの偶数列と奇数列の整列を半分ずらした千鳥配置)によるグラビア塗布を行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して円ドット状の樹脂接着層(3)を設けた。樹脂接着層(3)が形成された基布(1)を用いて得られたターポリン(23)は、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(3)/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量840g/m、表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:1であった。また、基布(1)の片面、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積に対する樹脂接着層(3)の散在面積率も約50%であった。得られたターポリン(23)は、接着領域と密着領域との好ましい構成比1:10~1:2の範囲から大きく外れた1:1と、接着領域が過剰のため、ラップ接合部の耐クリープ性に優れているものの、基布の分離回収性には劣り回収困難であった。
[比較例4]
実施例1の基布(1)に形成した樹脂接着層(1)を樹脂接着層(4)に変更した以外は実施例1と同様とした。樹脂接着層(4)は、<配合1>のアイオノマー樹脂接着層を形成する接着性組成物(1)を用い、60メッシュロールによるグラビア塗布を行い、100℃×1分の熱風乾燥を施して基布(1)の片面の実態部(空隙部を除く)全面に樹脂接着層(4)を設けた。樹脂接着層(4)が形成された基布(1)を用いて得られたターポリン(24)は、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(3)/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の接着領域のみからなる、厚さ0.7mm、質量840g/m、表裏連結部は14%、接着領域と密着領域との構成比は約1:0であった。また、得られたターポリン(24)は接着領域が過剰のため、ラップ接合部の耐クリープ性に優れているものの、基布の分離回収性には比較例3のターポリン(23)よりも劣り回収困難であった。
[実施例21]
実施例1の樹脂接着層(1)を形成する接着性組成物(1)〔配合1〕を、下記〔配合5〕の接着性組成物(2)に変更し、これにより形成される樹脂接着層を(4)とした。これ以外は実施例1と同様として、「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層(2)/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の円ドット接着領域、「熱可塑性樹脂層/基布(1)/熱可塑性樹脂層」断面の密着領域、及び表裏連結部からなる、厚さ0.7mm、質量830g/mの高強度ターポリン(25)を得た。得られた高強度ターポリン(25)において表裏連結部は14%、円ドット接着領域と密着領域との構成比は約1:4であった。また、基布(1)の片面、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積に対する樹脂接着層(2)の散在面積率も15~16.5%であった。
〔配合5〕樹脂接着層(4)を形成する接着性組成物(2)
エチレン-メタリル酸共重合体(不飽和カルボン酸含量25質量%)のカルボン酸に
亜鉛イオンが結合してなるアイオノマー樹脂ディスパージョン(固形分25質量%)
100質量部
すなわち〔配合5〕は〔配合1〕からセルロースナノファィバー(カルボキシメチルセルロース)1質量部を省略したものである。これは実施例1との対比から、樹脂接着層にセルロースナノファイバー(カルボキシメチルセルロース)を約3.8質量%含有していないと、25℃×150kgf×24hrの耐クリープ性がクリアできないことが〔表3〕より明らかである。これは耐クリープ荷重がラップ接合部に掛かる際、基布に接着している樹脂接着層との界面、すなわち基布を構成するマルチフィラメント糸条と、それに接着している樹脂接着層との界面に作用する接合部耐クリープの剪断力の分散がセルロースナノファイバー個々に伝播することが出来ないため、剪断力に抵抗するための応力緩和が不十分となり、樹脂接着層全体の形態保持が安定できないためと考察される。
[参考例1]
実施例1の高強度ターポリン(1)~(10)個々による段落〔0044〕のターポリンの剥離・分解による基布の回収(方法A)において、高強度ターポリンの2枚一体化を省略し、高強度ターポリン(長手方向40cm×幅方向25cm)1枚のみを、電気ヒーター内蔵の金属ロール対を有するテストロール(8インチ径)の2つの金属ロール(165℃設定)上に巻き付けて乗せて30秒後に、手作業にて熱可塑性樹脂層を引き剥がし除去を試みたが、熱可塑性樹脂層が何度も引きちぎれ、作業性に劣り基布の分離・回収におよそ12~24分を要した(本発明の回収方法によれば約3分の短時間で回収)。高強度ターポリン(1)~(10)個々の基布の分離・回収は、接着領域と密着領域の構成比において、接着領域の比率が高いほど時間を要する結果となり、その詳細は、接着領域と密着領域の構成比1:10の高強度ターポリン(6)の要した時間約12分、構成比1:5の高強度ターポリン(7)の要した時間約14分、構成比1:4の高強度ターポリン(1~4,8~10)の要した時間約15分、構成比1:2の高強度ターポリン(5)の要した時間約24分であった。また回収した基布は手作業を多く加えたことで織目が大きく崩れて見た目の悪い状態であった。(本発明の回収方法によれば整然とした織目の状態)
[参考例2]
実施例1の高強度ターポリン(1)~(10)による段落〔0044〕のターポリンの剥離・分解による基布の回収(方法A)において、高強度ターポリンの2枚一体化物に対する切込みを省略した。この熱可塑性樹脂層の切込みを省略したことで、特定の一方のターポリンの熱可塑性樹脂層の引き剥がし除去が出来ず、2枚に分離したターポリン各々の熱可塑性樹脂層がまだらに剥がれ、その結果2枚のターポリンの基布がまだらに露出した。この一方のターポリン1枚を手作業にて熱可塑性樹脂層を引き剥がし除去を試みたが、熱可塑性樹脂層が何度も引きちぎれ、作業性に劣り基布の回収におよそ10~16分を要した(本発明の回収方法によれば約3分の短時間で回収)。高強度ターポリン(1)~(10)個々の基布の分離・回収は、接着領域と密着領域の構成比において、接着領域の比率が高いほど時間を要する結果となり、その詳細は、接着領域と密着領域の構成比1:10の高強度ターポリン(6)の要した時間約8分、構成比1:5の高強度ターポリン(7)の要した時間約10分、構成比1:4の高強度ターポリン(1~4,8~10)の要した時間約11分、構成比1:2の高強度ターポリン(5)の要した時間約16分であった。また回収した基布は手作業を多く加えたことで織目が大きく崩れて見た目の悪い状態であった。(本発明の回収方法によれば整然とした織目の状態)
本発明の高強度ターポリンは、ターポリン原反からなる膜構造物の解体により生じるターポリン廃棄物、またはターポリン製造時の端尺反(規格長に満たないもの)、製造ロス、などから、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む基布の回収を容易とする高強度ターポリンを得ることが可能となった。本発明の高強度ターポリンは、大型テント構造物(室内スポーツ施設、パビリオン、イベントホール)、サーカステント、テント倉庫、建築空間の膜屋根(膜天井)などの膜構造物の原反素材に適し、より堅牢な膜構造物の構築及びその持続耐久を可能とする。さらにガスホルダー構造物の内膜バルーン、防爆フェンスシートなどにも適して用いられる。また、耐貫通性、防刃性にも極めて優れるので、フレキシブル防犯シャッター、機動隊・自衛隊の防護服・防護カバー、爆破工事現場の破砕飛散物避け、作業現場の落下物受け装備などに使用することができる。そしてこれらの用途使用を終えた時、高強度ターポリンを効率的に剥離・分解して基布(基布である織物の構成要素である糸条、繊維を含む)を資源回収し、織物、糸条(マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条)、繊維などの形態で再利用に供することが実現できる。特に炭素繊維は、織物、糸条(マルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条)、繊維などの形態で、汚水浄化の分野、導電性付与、及び帯電防止分野においての再利用が可能である。
1:高強度ターポリン
2:基布
3:熱可塑性樹脂層
3-1:表面
3-2:裏面
4:樹脂接着層
5:C)表裏連結部
6:A)接着領域 ※5:C部分の表現は省略(Cは含まず)
7:B)密着領域 ※5:C部分の表現は省略(Cは含まず)
8:熱可塑性樹脂層に対する切込み

Claims (8)

  1. 全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む基布の表裏に熱可塑性樹脂層を積層してなるターポリンであって、前記基布と前記熱可塑性樹脂層との間に樹脂接着層を散在して設け、それによって前記ターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/熱可塑性樹脂層」、または「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/基布/熱可塑性樹脂層」からなる密着領域を構成比1:10~1:2で含む高強度ターポリンから前記基布を回収する工程が、
    1)前記高強度ターポリンを2枚重ね、熱ロール圧着、熱板プレス、高周波溶着、の何れかの方法、またはこれらの併用方法で、2枚の高強度ターポリンの対面する熱可塑性樹脂層同士を溶着し、2枚の高強度ターポリンを一体化させて一体化物(I)とする工程(但し長手方向の端部は一体化させない)、2)この一体化していない2つの長手方向端部を掴み部として一体化物(I)を開いて溶着界面を露出させ、対面一体化する熱可塑性樹脂層の境界の一方に、一体化物の幅方向に沿って熱可塑性樹脂層のみを切断する切込みを入れて熱可塑性樹脂層を剥がすための導入部を設ける工程、3)この一体化物(I)の温度70~150℃の状態で一体化物(I)を引き剥がし、切込みが入った側の熱可塑性樹脂層を、もう一方の熱可塑性樹脂層と一体化させて剥ぎ取り、切込みが入った側の高強度ターポリンの基布を露出させる分離工程、4)この基布が露出したターポリンに残存する熱可塑性樹脂層面を、新たな高強度ターポリンと重ね、熱ロール圧着、熱板プレス、高周波溶着、の何れかの方法、またはこれらの併用方法で、対面する熱可塑性樹脂層同士を一体化させて一体化物(II)とする工程(但し長手方向の端部は一体化させない)、5)この一体化していない2つの長手方向端部を掴み部として一体化物(II)を開いて溶着界面を露出させ、対面一体化する熱可塑性樹脂層(基布が露出したターポリン側)に、一体化物(II)の幅方向に沿って熱可塑性樹脂層のみを切断する切込みを入れて熱可塑性樹脂層を剥がすための導入部を設ける工程、6)この一体化物(II)の温度70~150℃の状態で、この一体化物(II)から基布を引き剥がして基布を単離する工程、を含むことを特徴とする高強度ターポリンの基布の回収方法。
  2. 前記基布の少なくとも片面の、どの9cm (3cm×3cm)単位の実体部面積に対する前記樹脂接着層の散在面積率も9~33%、かつドット状、無定型ランダム状、及び連続線状の何れかの態様を含む樹脂接着層である請求項1に記載の高強度ターポリンの基布の回収方法
  3. 前記樹脂接着層が、セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルを含んでいる請求項1または2に記載の高強度ターポリンの基布の回収方法
  4. 前記樹脂接着層の樹脂が、アイオノマー樹脂である請求項1~3の何れか1項に記載の高強度ターポリンの基布の回収方法
  5. 全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、芳香族複素環高分子繊維、及び炭素繊維から選ばれた1種以上の糸条を織編要素に含む基布の表裏に熱可塑性樹脂層を積層してなるターポリンであって、前記基布と前記熱可塑性樹脂層との間に樹脂接着層を散在して設け、それによって前記ターポリンの積層構造に、A)「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/熱可塑性樹脂層」、または「熱可塑性樹脂層/樹脂接着層/基布/樹脂接着層/熱可塑性樹脂層」からなる接着領域と、B)「熱可塑性樹脂層/基布/熱可塑性樹脂層」からなる密着領域を構成比1:10~1:2で含む高強度ターポリンから前記基布を回収する工程が、
    1)前記高強度ターポリンを3枚重ね、熱ロール圧着、熱板プレス、高周波溶着、の何れかの方法、またはこれらの併用方法で、3枚の高強度ターポリンの対面する熱可塑性樹脂層同士を溶着し、3枚の高強度ターポリンを一体化させる工程(但し長手方向の端部は一体化させない)、2)この一体化していない3枚の長手方向端部の1枚目と3枚目を掴み部として一体化物を開いて溶着界面を露出させ、対面一体化する熱可塑性樹脂層の2ヶ所に対して、2枚目の高強度ターポリンの熱可塑性樹脂層に、一体化物の幅方向に沿って表裏の熱可塑性樹脂層のみを切断する切込みを入れて熱可塑性樹脂層を剥がすための導入部を設ける工程、3)この一体化物の温度70~150℃の状態で一体化物を引き剥がし、切込みが入った側の熱可塑性樹脂層を、対面する熱可塑性樹脂層と一体化させて剥ぎ取り、2枚目の高強度ターポリンの基布を単離する工程、を含むことを特徴とする高強度ターポリンの基布の回収方法。
  6. 前記基布の少なくとも片面の、どの9cm(3cm×3cm)単位の実体部面積に対する前記樹脂接着層の散在面積率も9~33%、かつドット状、無定型ランダム状、及び連続線状の何れかの態様を含む樹脂接着層である請求項5に記載の高強度ターポリンの基布の回収方法。
  7. 前記樹脂接着層が、セルロースナノファイバー、または/及びセルロースナノクリスタルを含んでいる請求項5または6に記載の高強度ターポリンの基布の回収方法。
  8. 前記樹脂接着層の樹脂が、アイオノマー樹脂である請求項5~7の何れか1項に記載の高強度ターポリンの基布の回収方法。
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