JP7423150B2 - 穿孔システム - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート製の構造物に穿孔する穿孔システムに関するものである。
地上、地中、半地下などで地盤に接するコンクリート製の構造物や、鉄道や道路等に近接する地上に構築されたコンクリート製の構造物では、耐震補強を目的として、構造物の片側面から穿孔し、その孔内に定着材を充填した後、後施工せん断補強鉄筋(以下、「せん断補強鉄筋」という。)を挿入して構造物と一体化させることで当該構造体のせん断耐力を向上させる工法が行われる。
また、コンクリート製の躯体で構成された道路、橋梁、ダム、堤防などの既設の構造物では、耐力の維持や補強を目的として、躯体の側面や上下面に対し、所定間隔で穿孔してあと施工アンカーを埋め込み、当該あと施工アンカーと連結するように配筋を行ってさらにコンクリートを打設する増し打ち工法が行われている。
そして、穿孔作業において、現場の作業者は、重量物である穿孔装置のハンドルおよびサイドハンドルを両手でしっかりと保持した上で、構造物の穿孔位置にビットを押し当てて当てて掘り進める。
なお、構造物に対するせん断補強工法については、例えば特許文献1(特開2016-037787号公報)が知られている。また、構造物に対するコンクリートの増し打ち工法については、例えば特許文献2(特開2018-131848号公報)が知られている。
特開2016-037787号公報 特開2018-131848号公報
さて、構造物を耐震補強するためには、せん断補強鉄筋を埋め込むために構造物に多数の孔を開けなければならない。同様に、増し打ち工法でも、あと施工アンカーを埋め込むために構造物に多数の孔を開けなければならない。すると、前述した従来の穿孔装置を用いた作業は重労働となり、結果として作業効率が悪化することになる。
そして、コンクリート製の構造物に複数の孔を自動的に穿孔することができれば、作業者は穿孔作業から解放されて他の作業を行うことができるので、作業効率が向上して工期の短縮化を図ることができる。
しかしながら、コンクリート製の構造物の内部には鉄筋や埋設物(配管など)が配置されているために、これらが自動的に穿孔する上での障害になる。
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、コンクリート製の構造物に複数の孔を自動的に穿孔することのできる穿孔システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の穿孔システムは、構造物に穿孔する複数の孔の穿孔位置、穿孔深さおよび穿孔順序を規定した穿孔条件を入力する入力部と、上下方向および横方向の少なくとも何れかの方向に移動可能となった穿孔機を備え、構造物に複数の孔を穿孔する穿孔装置と、前記穿孔装置で穿孔した孔の穿孔状態を検出する穿孔状態検出部と、前記穿孔状態検出部で検出された穿孔結果を各孔を穿孔する毎に記憶する記憶部を備え、構造物に穿孔した孔の穿孔結果を出力する出力部と、前記入力部から送信された前記穿孔条件に基づいて前記穿孔装置により順次穿孔する制御を行う制御部とを有し、前記制御部は、規定された穿孔深さの孔を前記穿孔機が開けることができないと前記穿孔状態検出部の検出情報から判断した場合には、当該穿孔を中止して次の穿孔順序の孔を開ける制御を行うとともに、前記穿孔状態検出部からの検出情報に基づいて穿孔結果を取得してこれを前記出力部に送信する制御を行う、ことを特徴とする。
請求項2に記載の本発明の穿孔システムは、上記請求項1に記載の発明において、前記制御部は、前記穿孔機の前進長が所定寸法に達しないとき、前記穿孔機に取り付けられたビットの押付圧が所定圧以上になったとき、または前記穿孔機による穿孔深さが一定時間内に変化していないときに、前記穿孔機が規定された穿孔深さの孔を開けることができないと判断する、ことを特徴とする。
請求項3に記載の本発明の穿孔システムは、上記請求項1または2に記載の発明において、穿孔数と穿孔ピッチとの組み合わせ、または座標データで規定される、ことを特徴とする。
請求項4に記載の本発明の穿孔システムは、上記請求項1~3の何れか一項に記載の発明において、前記穿孔装置は、前記穿孔機を移動させる穿孔機移動部を備え、前記穿孔状態検出部は、前記穿孔機による穿孔位置を検出する穿孔位置検出部、および前記穿孔機による穿孔深さを検出する穿孔深さ検出部を備える、ことを特徴とする。
本発明では、コンクリート製の構造物を穿孔する際の複数の孔の穿孔位置、穿孔深さおよび穿孔順序が規定された穿孔条件を設定し、その穿孔条件に基づいて穿孔装置により順次穿孔するようにし、穿孔中において、規定された穿孔深さの孔を穿孔機が開けることができない場合には、当該穿孔を中止して次の穿孔順序の孔を開けるようにしている。
したがって、穿孔の途中で穿孔機が鉄筋に干渉した場合でも、穿孔不能な状態に陥ってしまうのではなく、穿孔を中止して次の穿孔順序の孔を開けるようにして穿孔が最後まで継続されるので、コンクリート製の構造物に複数の孔を自動的に穿孔することが可能になる。
本発明の一実施の形態に係る穿孔システムで穿孔された孔にせん断補強鉄筋を挿入して耐震補強されたコンクリート製の構造物の一部を示す説明図である。 本発明の一実施の形態に係る穿孔システムを構成する穿孔装置を示す側面図である。 図1の穿孔装置の正面図である。 図1の穿孔装置の平面図である。 図3のV-V線に沿った断面図である。 図2のVI-VI線に沿った断面図である。 本発明の一実施の形態に係る穿孔システムを構成する穿孔装置に設けられたチェーンの配置を示す説明図である。 本発明の一実施の形態に係る穿孔システムを示すブロック図である。 本発明の一実施の形態に係る穿孔システムで穿孔された孔と構造物内に配された鉄筋とを示す説明図である。 本発明の一実施の形態に係る穿孔システムを用いてコンクリート製の構造物に自動的に穿孔するプロセスを示すフローチャートである。
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
本実施の形態の穿孔システムSYSの構成要素である穿孔装置Aは、例えば図1に示すような地盤Gに接する既設のコンクリート製の構造物Sや、鉄道や道路等の建造物に近接する地上に構築された既設のコンクリート製の構造物(図示せず)などに対して、補強工事の一工程として片側面から孔Hを開けるために用いられる。開けた孔Hの内部に定着材Mを充填した後、せん断補強鉄筋Rを挿入して構造物Sと一体化させることで、構造物Sのせん断耐力を向上させる。なお、せん断補強鉄筋Rとしては、例えば、一般的に使用される鉄筋R1の片側をネジ切り、斜め切断加工し、先端部に六角ナット(定着体)R2を装着したものなどが適用される。
図2~図6に示すように、本実施の形態の穿孔装置Aは、コラム(角形鋼管)やH形鋼などの棒状の鋼材で直方体の形状に構成された本体フレーム(本体部)10と、同様にコラムやH形鋼などの鋼材で矩形に構成されて本体フレーム10内において昇降可能に設けられた昇降フレーム(昇降部材)20と、昇降フレーム20に設けられて前方のコンクリート製の構造物Sを穿孔するドリフタ(穿孔機)30とを備えている。
本体フレーム10は、図3に示すように、前後面が開口する一方、図2および図5に示すように、側面には、桁材11が上下の複数箇所(ここでは2カ所)に取り付けられるとともにブレース(筋交い)12が設けられ、所要の強度が確保されている。また、図4および図6に示すように、昇降フレーム20は、矩形を形成する4本のフレームロッド21からなり、図2、図5および図6に示すように、本体フレーム10の上下に延びる4本の柱材13に沿って設けられたガイドレール14に嵌め込まれており、当該ガイドレール14に案内されながら前面の開口範囲内を昇降する。
図5に示すように、ドリフタ30は、先端にビット31が取り付けられたロッド32と、ロッド32に打撃力、回転力および推力を加えるドリフタ本体であるジャックハンマ33とからなり、コンクリート製の構造物Sに対して所定深さの孔Hを開ける。このドリフタ30は、開口した前面の所望位置へと移動できるように昇降フレーム20上を横行移動可能になっており、さらに開口した前面を介して構造物Sを削孔するために進退移動可能になっている。
ここで、本実施の形態のドリフタ30では、例えば深さ1m程度の比較的深い孔Hを開けることが可能になっている。但し、孔Hの深さは自由に設定することができ、本実施の形態の1mに限定されるものではない。
なお、穿孔装置Aには、ジャックハンマ33、ならびに後述するエアモータ53およびスライドジャッキ72に対して圧縮空気を供給するコンプレッサCPが備えられている(図8参照)。
次に、ドリフタ30の横行移動機構および進退移動機構について、具体的に説明する。
図4および図6に示すように、昇降フレーム20には、当該昇降フレーム20上を横行移動する横行部材40が設けられている。また、横行部材40には、当該横行部材40の移動方向と直交する方向に往復動可能な進退部材50が設置されている。そして、進退部材50がドリフタ30を進退移動させ、横行部材40が進退部材50を横行移動させることにより、ドリフタ30は横行移動可能且つ進退移動可能になっている。
図6において、横行部材40は、矩形の昇降フレーム20を形成する後部に位置したフレームロッド21に沿って横方向に延びて設けられた横行用ガイドレール41と、前後方向に長くなってこの横行用ガイドレール41をスライド移動する横行体42と、横行体42に螺合するとともに横行用モータ43により回転駆動されるボールねじ44とを備えている。また、ドリフタ30は進退部材50を介して横行体42に設置されている。したがって、ボールねじ44の回転により横行体42が横行用ガイドレール41に沿って移動することにより、ドリフタ30は昇降フレーム20上を前面の開口範囲内にわたって横行移動する。
図4および図6において、進退部材50は、横行体42に沿って設けられた進退用ガイドレール51と、進退用ガイドレール51をスライド移動するスライダ52と、およびエアモータ53により周回駆動されることによって取り付けられたスライダ52をスライド移動させる無端状ベルト54を備えている。また、ドリフタ30はスライダ52に搭載されている。したがって、エアモータ53の回転により無端状ベルト54が周回してスライダ52が進退用ガイドレール51に沿って移動することにより、ドリフタ30は昇降フレーム20上を進退移動する。なお、無端状ベルト54は、本実施の形態では非金属のゴムベルトであるが、金属ベルトであってもよい。また、無端状ベルト54を周回させるのは、圧縮空気で回転するエアモータ53ではなく、給電されて回転する電気モータを用いてもよい。
次に、昇降フレーム20の昇降機構について説明する。
図3に示すように、昇降機構は、昇降フレーム20を吊り下げるチェーン60と、チェーン60を上げ下ろしして昇降フレーム20を昇降させる昇降用モータ61と、チェーン60が掛け渡されたスプロケット62で構成されている。
チェーン60は、一方端が昇降フレーム20における相互に対向する2辺の中央にそれぞれ取り付けられた第1のチェーン60aおよび第2のチェーン60bで構成されている。すなわち、図3、図4および図6に示すように、第1のチェーン60aおよび第2のチェーン60bの一方端は、矩形の昇降フレーム20の構成要素である左右の2本のフレームロッド21の中央上部に取り付けられている。また、第1のチェーン60aおよび第2のチェーン60bの他方端は、その反対側であるフレームロッド21の中央下部に取り付けられている。
なお、チェーン60が左右のフレームロッド21に取り付けられているのは、前後のフレームロッド21に取り付けられていると、横行移動するドリフタ30と干渉してしまうからである。
ここで、本体フレーム10には、図3および図7に示すように、左右上部における前後方向の中央にスプロケット62a、62bが配置され、これと対応した左右下部における前後方向の中央にスプロケット62c、62dが配置されている。また、昇降用モータ61と当該昇降用モータ61の近傍に位置するスプロケット62dとの間で、且つスプロケット62dよりもやや高い位置には、スプロケット62eが配置されている。さらに、昇降用モータ61には駆動スプロケット61aが取り付けられている。
なお、駆動スプロケット61aおよび昇降用モータ61が位置する側(図示する場合には、右側)のスプロケット62b、62d、62eは、2枚のスプロケットが同軸上となって一体化されたシングルダブルスプロケットとなって、2本のチェーン60(第1のチェーン60a、第2のチェーン60b)を掛け渡すことができるようになっている。また、その反対側(図示する場合には、左側)のスプロケット62a、62cは、1枚だけのシングルスプロケットとなって、第1のチェーン60aのみを掛け渡すことができるようになっている。
そして、図3に示すように、第1のチェーン60aは、昇降フレーム20の左側の上部取付位置から上方に向けてスプロケット62a、スプロケット62b、スプロケット62e、駆動スプロケット61a、スプロケット62dおよびスプロケット62cに順次掛け渡されて昇降フレーム20の左側の下部取付位置に至っている。また、第2のチェーン60bは、昇降フレーム20の右側の取付位置から上方に向けてスプロケット62b、スプロケット62e、駆動スプロケット61aおよびスプロケット62dに順次掛け渡されて昇降フレーム20の右側の下部取付位置に至っている。
図3において昇降用モータ61が時計回りに回転して第1のチェーン60aおよび第2のチェーン60bが周回すると、昇降フレーム20がこれらのチェーン60で吊り上げられて上昇する。また、同じく図3において昇降用モータ61が反時計回りに回転して第1のチェーン60aおよび第2のチェーン60bが逆方向に周回すると、昇降フレーム20がこれらのチェーン60で吊り下げられて下降する。
なお、昇降フレーム60を昇降させる昇降用モータ61と、横行体42を横行移動させる前述の横行用モータ43とで、ドリフタ30を移動(上下方向および横方向に移動)させるドリフタ移動部(穿孔機移動部)34を構成している(図8参照)。ここで、本実施の形態では、このようにドリフタ30が上下方向および横方向に移動可能になっているが、上下方向にだけ移動可能、あるいは横方向にだけ移動可能になっていてもよい。
さて、図2~図4に示すように、本体フレーム10の上端部の左右2箇所には、穿孔対象である構造物Sに対して穿孔時の推進反力を伝達する反力伝達部(反力伝達手段)70が設置されている。この反力伝達部70は、真空ポンプ73(図8)による負圧吸引力により構造物Sに吸着する吸着パッド71と、吸着パッド71を進退移動させるスライドジャッキ72とからなる。そして、穿孔時にはスライドジャッキ72で吸着パッド71を前方に伸ばして構造物Sに押し当て、真空ポンプ73により吸着パッド71を当該構造物Sに吸着させることにより、ドリフタ30で構造物Sを穿孔する際の推進反力が得られ、スムーズに穿孔を実行することが可能になる。
なお、反力伝達部70は、本実施の形態のように本体フレーム10の上端部の左右2箇所に設置されるのが望ましいが、上端部の左右何れか1箇所、上端中央部の1箇所、あるいは上端部以外の箇所などに設置されていてもよい。
さて、図2、図3および図5に示すように本願の穿孔装置Aでは、穿孔対象であるコンクリート製の構造物Sに沿って走行レール80が敷設されている。そして、本体フレーム10の下部には、走行用モータ81により駆動されて走行レール80上を転動する複数個(本実施の形態では4個)のローラ82が取り付けられている。ローラ82は、走行用モータ81によりベルト83を介して回転駆動される走行駆動軸84の同軸上に取り付けられた2個の駆動ローラ82a(図2、図3、図6参照)と、駆動ローラ82aの対向位置に配置されて駆動ローラ82aの回転に従って回転する2個の従動ローラ82b(図3、図6参照)とで構成されている。
図8は、以上の構成を有する穿孔装置Aを備えた穿孔システムSYSのブロック図である。なお、図8において、破線で結ばれたブロック同士は、両者が間接的な関係にあることを示している。
図8に示すように、穿孔システムSYSは、上述した穿孔装置Aと、穿孔条件の入力(設定)および穿孔結果の出力を行うPC(パーソナルコンピュータ)などの入出力部PCと、穿孔システムSYS全体の動作制御を実行する制御部Cと、穿孔装置Aの穿孔状態を検出する穿孔状態検出部SSと、作業者が手動操作を行うペンダントスイッチなどの手動操作部MUとで構成されている。また、入出力部PCには、穿孔条件および穿孔結果を記憶する記憶部PCmを備えている。
ここで、入出力部PCに入力される穿孔条件とは、例えば、構造物Sに穿孔する複数の孔の穿孔位置、穿孔深さおよび穿孔順序である。なお、構造物Sの厚さ(コンクリート厚)や構造物Sに配された鉄筋の位置、穿孔領域の広さなどを入力すれば、入出力部PCにインストールされた所定のソフトウェアにより自動的に前述の穿孔条件が規定されるようにすることもできる。したがって、穿孔条件を入力(設定)するとは、穿孔位置、穿孔深さおよび穿孔順序など具体的な穿孔内容を入出力部PCに入力することのみならず、具体的な穿孔内容を規定することができる項目(前述した構造物Sの厚さなど)を入出力部PCに入力することも含まれる。なお、穿孔位置は、穿孔数と穿孔ピッチとの組み合わせや、座標データ(穿孔位置マップ)などで規定される。但し、本実施の形態に列挙した穿孔条件は一例であり、これら以外が含まれていてもよい。
また、入出力部PCから出力される穿孔結果とは、構造物Sに開けた孔の穿孔結果である。後述するように、制御部Cでは、穿孔状態検出部SSから送信された検出情報に基づいて穿孔結果を取得して入出力部PCに送信しており、入出力部PCでは制御部Cから送信された穿孔結果が出力される。
前述のように、入出力部PCには、穿孔条件および穿孔結果を記憶する記憶部PCmが備えられており、作業者が必要とするときに穿孔条件や穿孔結果を確認することができるようになっている。
本実施の形態の穿孔システムSYSでは、穿孔条件を入力(設定)する入力部と穿孔結果を出力する出力部とが一体になった入出力部PCとなっているが、入力部と出力部とは相互に別体になっていてもよい。なお、穿孔条件は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの様々な入力媒体により入力される。また、穿孔結果は、液晶ディスプレイやプリンタなどの様々な出力媒体に出力される。
制御部Cは、入出力部PCで入力(設定)された穿孔条件に基づいて穿孔装置Aを駆動して構造物Sに順次穿孔する制御を行う。また、穿孔状態検出部SSからの検出情報に基づいて穿孔結果を取得し、これを入出力部PCに送信する制御を行う。
ここで、図8に示すように、穿孔装置Aの昇降用モータ61はインバータIVaにより、横行用モータ43はインバータIVbにより、走行用モータ81はインバータIVcにより、それぞれ回転制御されている。また、コンプレッサCPからジャックハンマ33、エアモータ53およびスライドジャッキ72に対して圧縮空気を供給する経路上には、当該経路を開閉する電磁弁SVaが配置されている。さらに、吸着パッド71とこれを負圧吸引する真空ポンプ73との間には、両者間の経路を開閉する電磁弁SVbが配置されている。
そして、図示するように、制御部Cにより、インバータIVa,IVbおよび電磁弁SVa,SVbの動作が制御されるようになっている。また、手動操作部MUにより、インバータIVa,IVb,IVcおよび電磁弁SVa,SVbの動作が制御されるようになっている。したがって、作業者が手動操作部MUを操作し、インバータIVcを介して走行用モータ81を駆動して穿孔装置Aを走行させて所定の穿孔位置に設置したならば、制御部Cにより穿孔が自動的に実行される。また、手動操作部MUを操作することにより、制御部Cによる穿孔とは別に、作業者が所望する箇所を穿孔することができる。
さて、穿孔装置Aの穿孔状態を検出する穿孔状態検出部SSは、ドリフタ移動部34により移動したドリフタ30による穿孔位置を検出する穿孔位置検出部SSaと、エアモータ53により前進してジャックハンマ33で構造物Sを穿孔するドリフタ30のストローク(前進長)に基づいた構造物Sとの距離検出部SSbおよび穿孔深さ検出部SScと、吸着パッド71を進退移動させるスライドジャッキのストローク検出部SSdと、構造物Sに吸着する吸着パッドのON/OFF検出部SSeとからなる。また、穿孔位置検出部SSaは、昇降用モータ61の回転量からドリフタ30の昇降位置を検出する昇降位置検出部SSaaと、横行用モータ43の回転量からドリフタ30の横行位置を検出する横行位置検出部SSabとからなる。
前述のように、穿孔状態検出部SSで検出された穿孔装置Aの穿孔状態は制御部Cに送信される。そして、制御部Cでは、穿孔状態検出部SSから送信された様々な検出情報から穿孔装置Aによる構造物Sに対しての穿孔結果を取得(算出)し、これを入出力部PCに送信する。
ここで、本実施の形態の制御部Cでは、構造物Sの穿孔中において規定された穿孔深さの孔をドリフタ30が開けることができないと判断した場合には、当該穿孔を中止して次の穿孔順序の孔を開ける制御を行っている。
すなわち、図9に示すように、コンクリート製の構造物Sの内部には鉄筋Bや配管などの埋設物(以下、単に「鉄筋」という。)が配されていることから、ドリフタ30(詳しくは、ドリフタ30の先端のビット31)が穿孔途中で鉄筋Bに干渉した場合、それ以上穿孔することはできない。なお、図9では、水平方向に配された鉄筋Bを示しており、そのために断面が円形になっている。
そこで、制御部Cにおいて、穿孔状態検出部SSから送信された検出情報からドリフタ30のストローク(前進長)が所定寸法に達しないときには、ドリフタ30が鉄筋Bに干渉したために規定された穿孔深さの孔Hを開けることができないと判断して穿孔を中止し、ドリフタ30を構造物Sから引き抜いて上下方向あるいは横方向に移動させ、次の穿孔順序の孔Hを開ける。そして、規定の穿孔深さの孔Hを開けることができなかった箇所については、制御部Cの制御下における穿孔システムSYSによる穿孔が完了した後、作業者が手動操作部MUを操作し、位置をずらして穿孔する。
ここで、本実施の形態では、ドリフタ30のストロークに基づいて規定の穿孔深さの孔を開けることができているか否かを判断しているが、これ以外を判断材料にしてもよい。たとえば、ドリフタ30に取り付けられたビット31の押付圧(フィード圧)を検出する検出部を設けておき、当該検出部に検出される押付圧に基づいて規定の穿孔深さの孔を開けることができているか否かを判断することなどが考えられる。すなわち、検出された押付圧が所定圧以上になったときには、ドリフタ30が鉄筋Bに干渉したために規定された穿孔深さの孔を開けることができないと判断する。
次に、以上の構成を有する穿孔システムSYSを用いて、コンクリート製の構造物Sに孔H(ここでは、せん断補強鉄筋Rを挿入するための孔H)を自動的に開ける場合のプロセスについて、図10のフローチャートを用いて説明する。
先ず、作業者が手動操作部MUを操作し、走行レール80上の穿孔装置Aを走行させて、当該穿孔装置Aを構造物Sの作業位置に移動させる(ステップST1)。なお、穿孔装置Aを構造物Sの作業位置に移動させたならば、スライドジャッキ72で吸着パッド71を前方に伸ばして構造物Sに押し当てて吸着させ、穿孔装置Aをその場に拘束する。
次に、同様に作業者が手動操作部MUを操作し、昇降用モータ61で昇降フレーム20を穿孔高さに移動させ、横行用モータ43で横行体42を移動させてドリフタ30を穿孔の原点位置(開始位置)に移動させる(ステップST2)。
続いて、入出力部PCを用いて、構造物Sに穿孔する複数の孔の穿孔位置、穿孔深さおよび穿孔順序を規定した穿孔条件を設定する(ステップST3:穿孔条件設定工程)。なお、このステップST3は、ステップST1の前、あるいはステップST1とステップST2との間に実行するようにしてもよい。
さて、穿孔条件を設定したならば、制御部Cによる制御の下において穿孔を開始する(ステップST4:穿孔工程)。すなわち、エアモータ53でスライダ52をスライド移動させてドリフタ30を前進移動させ、ロッド32の先端のビット31を構造物Sの穿孔位置に押し当てて穿孔する。
穿孔を開始したならば、穿孔深さ検出部SScによって孔の深さを逐次検出し(ステップST5:穿孔工程)、検出された穿孔深さが規定された穿孔深さかどうかを判断する(ステップST6:穿孔工程)。そして、検出された穿孔深さが規定された穿孔深さの場合には、穿孔を終了する(ステップST7:穿孔工程)。なお、前述のように、ステップST6では、ドリフタ30のストロークに基づいて、あるいはドリフタ30先端のビット31の押付圧に基づいて、規定の穿孔深さの孔を開けることができているかを判断することができる。
一方、ステップST6において、検出された穿孔深さが規定された穿孔深さではない場合には、一定時間内に穿孔深さが変化したかを判断する(ステップST8:穿孔工程)。そして、変化した場合には、規定深さに向かっての穿孔途中と考えられることから、再びステップST5に戻って孔の深さを検出し、当該孔の深さが規定された穿孔深さになって穿孔を停止するまで繰り返す。また、ステップST8において、一定時間内(例えば3秒以内)に穿孔深さが変化していない場合には、ドリフタ30が穿孔途中でコンクリート製の構造物S内の鉄筋Bに干渉してそれ以上穿孔できなくなっていると考えられることから、穿孔を中止する(ステップST9:穿孔工程)。
以上のようにしてステップST7で穿孔を終了するかステップST9で穿孔を中止したならば、その穿孔結果を取得する(ステップST10:穿孔結果取得工程)。つまり、当該穿孔位置では規定の深さの穿孔ができたか、あるいはできなかったかの結果を取得する。
そして、穿孔条件に規定された全ての孔を穿孔したかが判断され(ステップST11)、全ての孔を穿孔した場合には、制御部Cによる処理を終了する。
一方、ステップST11において、全ての孔を穿孔していない場合(穿孔する孔が残っている場合)には、ドリフタ30を上下方向あるいは横方向に動かして次の穿孔位置に移動させる(ステップST12:穿孔工程)。そして、ステップST4に戻って次の箇所の穿孔を行う。
なお、作業者は入出力部PCから出力される各孔の穿孔結果を確認し、穿孔が中止された孔(すなわち、鉄筋Bに干渉したために規定の深さの穿孔がされなかった孔)については、制御部Cによる自動穿孔が終了した後に手動操作部MUを操作し、位置をずらして穿孔することになる。
このように、本実施の形態では、コンクリート製の構造物Sを穿孔する際の複数の孔の穿孔位置、穿孔深さおよび穿孔順序が規定された穿孔条件を設定し、その穿孔条件に基づいて穿孔装置Aにより順次穿孔するようにし、穿孔中において、規定された穿孔深さの孔をドリフタ30が開けることができない場合には、当該穿孔を中止して次の穿孔順序の孔を開けるようにしている。
したがって、穿孔の途中でドリフタ30が鉄筋Bに干渉した場合でも、穿孔不能な状態に陥ってしまうのではなく、穿孔を中止して次の穿孔順序の孔を開けるようにして穿孔が最後まで継続されるので、コンクリート製の構造物Sに複数の孔を自動的に穿孔することが可能になる。
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
たとえば、本実施の形態の穿孔システムSYSでは、制御部Cは、入出力部PCから送信された穿孔情報に基づいて穿孔装置Aにより順次孔を穿設する制御と、穿孔状態検出部SSからの検出情報に基づいて穿孔結果を取得して入出力部PCに送信する制御を行っているが、穿孔結果を入出力部PCに送信する制御については行わなくてもよい。
また、本実施の形態においては、穿孔機としてドリフタ30が用いられているが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば円筒状ノコ歯ビットが先端に取り付けられたロッドを回転させて穿孔するコアドリルなど、コンクリート製の構造物Sを穿孔可能な様々な穿孔機を適用することができる。
さらに、穿孔装置Aの構造は本実施の形態に限定されるものではない。すなわち、上下方向および横方向の少なくとも何れかの方向に移動可能となったドリフタ30などの穿孔機を備えて、構造物Sに複数の孔を穿設することが可能である限り、様々な構造の穿孔装置Aを用いることができる。
以上の説明では、本発明の穿孔システムを、コンクリート製の既設の構造物にせん断補強鉄筋を挿入するための孔開けに用いられた場合が示されているが、これに限定されるものではなく、コンクリート製の構造物の孔開けに広く適用することができる。
10 本体フレーム(本体部)
20 昇降フレーム(昇降部材)
30 ドリフタ(穿孔機)
31 ビット
32 ロッド
33 ジャックハンマ
40 横行部材
41 横行用ガイドレール
42 横行体
43 横行用モータ
50 進退部材
51 進退用ガイドレール
52 スライダ
53 エアモータ
61 昇降用モータ
70 反力伝達部(反力伝達手段)
71 吸着パッド
72 スライドジャッキ
80 走行レール
81 走行用モータ
82 ローラ
A 穿孔装置
B 鉄筋
C 制御部
CP コンプレッサ
H 孔
IVa,IVb,IVc インバータ
MU 手動操作部
PC 入出力部
PCm 記憶部
R せん断補強鉄筋
S 構造物
SS 穿孔状態検出部
SSa 穿孔位置検出部
SSaa 昇降位置検出部
SSab 横行位置検出部
SSb 構造物との距離検出部
SSc 穿孔深さ検出部
SSd スライドジャッキのストローク検出部
SSe 吸着パッドのON/OFF検出部
SVa,SVb 電磁弁
SYS 穿孔システム

Claims (4)

  1. 構造物に穿孔する複数の孔の穿孔位置、穿孔深さおよび穿孔順序を規定した穿孔条件を入力する入力部と、
    上下方向および横方向の少なくとも何れかの方向に移動可能となった穿孔機を備え、構造物に複数の孔を穿孔する穿孔装置と、
    前記穿孔装置で穿孔した孔の穿孔状態を検出する穿孔状態検出部と、
    前記穿孔状態検出部で検出された穿孔結果を各孔を穿孔する毎に記憶する記憶部を備え、構造物に穿孔した孔の穿孔結果を出力する出力部と、
    前記入力部から送信された前記穿孔条件に基づいて前記穿孔装置により順次穿孔する制御を行う制御部とを有し、
    前記制御部は、規定された穿孔深さの孔を前記穿孔機が開けることができないと前記穿孔状態検出部の検出情報から判断した場合には、当該穿孔を中止して次の穿孔順序の孔を開ける制御を行うとともに、前記穿孔状態検出部からの検出情報に基づいて穿孔結果を取得してこれを前記出力部に送信する制御を行う、
    ことを特徴とする穿孔システム。
  2. 前記制御部は、前記穿孔機の前進長が所定寸法に達しないとき、前記穿孔機に取り付けられたビットの押付圧が所定圧以上になったとき、または前記穿孔機による穿孔深さが一定時間内に変化していないときに、前記穿孔機が規定された穿孔深さの孔を開けることができないと判断する、
    ことを特徴とする請求項1記載の穿孔システム。
  3. 前記穿孔位置は、穿孔数と穿孔ピッチとの組み合わせ、または座標データで規定される、
    ことを特徴とする請求項1または2記載の穿孔システム。
  4. 前記穿孔装置は、前記穿孔機を移動させる穿孔機移動部を備え、
    前記穿孔状態検出部は、前記穿孔機による穿孔位置を検出する穿孔位置検出部、および前記穿孔機による穿孔深さを検出する穿孔深さ検出部を備える、
    ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の穿孔システム。
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