JP7420821B2 - 感光性硬化性組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品 - Google Patents

感光性硬化性組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品 Download PDF

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Description

本発明は、感光性硬化性組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品に関する。
近年、自動車の分野では、自動車の省エネと自動運転化のため、燃料調整やブレーキ機能制御、ギヤ制御など、電子制御化の検討が盛んに行われている。このような自動車の電子制御化に伴い、自動車に組み込まれる電子部品には、200℃を超える高温下での長期間の信頼性が要求されており、かかる電子部品に用いられる有機絶縁材料には、優れた耐熱性が望まれている。
また、コンピューターや情報通信機器の分野では、電子部品の更なる高性能・高機能化が進み、大量のデータを高速で処理するため、扱う電気信号が高周波数化する傾向にある。このような高周波数化した電気信号を扱う電子部品では、伝送損失を抑制することが重要であり、かかる電子部品に用いられる有機絶縁材料には、低誘電率及び低誘電正接といった優れた誘電特性も望まれている。
さらに、このような有機絶縁材料には、電子部品の小型化、高精細な設計構造、複雑な製造方法に適用するために、微細なラインや開口部を高精度で形成できるようにフォトリソグラフィによるパターン形成が可能であることも望まれている。
さらにまた、このような有機絶縁材料には、膜厚の制御や工程の簡便化といった観点から、PETフィルム等のフィルム上に、上述の組成物を塗布し乾燥させてなる、組成物層を形成したドライフィルム状の製品も望まれている。
これに対し従来、優れた耐熱性や低誘電率および低誘電正接を有する有機絶縁材料として、例えば、特許文献1のようなカルボジイミド化合物を含む樹脂組成物が開示されている。
特開2017-179307号公報
しかしながら、特許文献1に開示された組成物の硬化物は、上述した200℃を超える耐熱性、優れた誘電特性(低誘電率および低誘電正接)を備えるものの、フォトリソグラフィによるパターン形成の要求を満足し得るものではなかった。
そこで、本発明の主たる目的は、優れた耐熱性(高Tg)、かつ優れた誘電特性(低誘電率および低誘電正接)を有し、フォトリソグラフィによるパターン形成が可能な感光性組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、該組成物から得られる組成物層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの組成物層の硬化物、該硬化物を有する電子部品を提供することにある。
本発明者は、カルボジイミド基が常温(約25℃)以上でカルボキシル基またはフェノール性水酸基と架橋反応すること、また、カルボジイミド基が180℃以上で自己架橋反応することに着目し、上記目的の実現に向け鋭意検討を行った。その結果、カルボジイミド基を有する化合物と、光によってカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を生成する化合物とを組み合わせた組成物とすることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の感光性硬化性組成物は、(A)カルボジイミド基を有する化合物と、(B)光によってカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を生成する化合物、好ましくはナフトキノンジアジド化合物と、を含むことを特徴とするものである。
本発明の感光性硬化性組成物は、組成物中にカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を有する化合物を実質的に含まないことが好ましい。
本発明の感光性硬化性組成物は、前記(A)カルボジイミド基を有する化合物が、有機溶剤を除く組成物の有機成分中に50~99質量%の割合で配合されていることが好ましい。
本発明のドライフィルムは、基材上に、前記感光性硬化性組成物を塗布、乾燥してなる組成物層を備えることを特徴とするものである。
本発明の硬化物は、前記感光性硬化性組成物または前記ドライフィルムの組成物層を硬化してなることを特徴とするものである。
本発明の電子部品は、前記硬化物を備えることを特徴とするものである。
本発明によれば、優れた耐熱性(高Tg)、かつ優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)を有し、フォトリソグラフィによるパターン形成が可能な感光性硬化性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、該組成物から得られる組成物層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの組成物層の硬化物、該硬化物を有する電子部品を提供することができる。
液状判定に用いる2本の試験管の概略側面図である。
以下、本発明の感光性硬化性組成物が含有する成分について詳述する。
<感光性硬化性組成物>
本発明の感光性硬化性組成物は、(A)カルボジイミド基を有する化合物と、(B)光によってカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を生成する化合物と、を含む組成物であり、カルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を有する化合物は組成物中に実質的に含まないことが好ましい。
本発明において、組成物中にカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を有する化合物を実質的に含まないとは、有機溶剤を除く組成物の全有機成分のカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基当量が1,000g/eq以上、好ましくは5,000g/eq以上であることを意味する。この範囲内であれば、優れた保存安定性が得られる。
[(A)カルボジイミド基を有する化合物]
本発明の感光性硬化性組成物は、(A)カルボジイミド基を有する化合物を含む。このカルボジイミド基を有する化合物は、分子構造中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を含む化合物であり、公知の方法にて合成することができる(例えば、特開2019-38960号公報参照)。具体的には、ジイソシアネートを縮合重合して合成することができる。
このような分子構造中に含まれるカルボジイミド基は、常温(約25℃)以上でカルボキシル基と架橋反応してN-アシルウレア結合を形成し、常温(約25℃)以上でフェノール性水酸基と架橋反応してウレア結合を形成し、150℃以上でアミノ基と架橋反応してグアニジン結合を形成し、150℃以上でエポキシ基と架橋反応してイミダゾリジオン環結合を形成し、そして、180℃以上でカルボジイミド基が自己架橋反応してトリアジン環結合を形成する。なかでも、イミダゾリジオン環結合とトリアジン環結合を形成した硬化物は、優れた誘電特性(低誘電率や低誘電正接)を示し、かつ優れた耐熱性(高いガラス転移温度)を示す。
この点で、本発明においては、組成物中にカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を有する化合物を実質的に含まない場合には、この化合物(A)中のカルボジイミド基とカルボキシル基やフェノール性水酸基との反応に起因した架橋反応が常温にて生起し難くなり、優れた保存安定性を示す。
このような(A)カルボジイミド基を有する化合物の合成に用いるジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートがある。具体的には、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
これらのジイソシアネートは、1種単独でも、2種以上併用してもよく、反応性や硬化物としての耐熱性の観点から芳香族ジイソシアネート、有機溶剤への溶解性や硬化物としての柔軟性や低誘電特性の観点から脂肪族ジイソシアネートや脂環族ジイソシアネートを適宜用いることができる。
特に、本発明において用いられる(A)カルボジイミド基を有する化合物としては、有機溶剤への溶解性、保存安定性、反応性、硬化物の耐熱性といった特性をバランスよく実現することから、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを併用して縮合重合させてなる化合物が好ましい。
このようにして得られる(A)カルボジイミド基を有する化合物は、末端イソシアネート基を有するが、この末端イソシアネート基は、組成物中にアルコール性水酸基が存在した場合に保存安定性が悪化するという観点から、イソシアネート基と反応する官能基を1つ有する化合物で封止反応することが好ましい。このイソシアネート基と反応する化合物としては、モノイソシアネート、モノアルコール、モノアミン、酸無水物等が挙げられる。
モノイソシアネートとしては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、n-、sec-或いはtert-ブチルイソシアネート等の低級アルキルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート等の脂環式脂肪族イソシアネート、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネート等の芳香族イソシアネート等が挙げられる。
モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、シクロヘキサノール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
前記モノアミンとしては、例えば、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の1級アミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の2級アミンが挙げられる。
酸無水物としては、無水フタル酸、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水安息香酸等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、反応性の観点から、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネートが好ましく、フェニルイソシアネートがより好ましい。
このような(A)カルボジイミド基を有する化合物は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、このカルボジイミド基を有する化合物は、後述する有機コバルト錯体や有機マンガン錯体等の有機金属錯体又は有機金属塩等の硬化促進剤を配合することで、自己架橋反応(トリアジン環結合の形成)を促進し、低温硬化性を付与することができる。
本発明の感光性硬化性組成物を構成する(A)カルボジイミド基を有する化合物は、カルボジイミド基を有する化合物としての有機溶剤への溶解性や保存安定性、感光性硬化性組成物としての露光部の現像液耐性や未露光部の現像液溶解性の観点から、その重量平均分子量(Mw)が1,000~10,000であることが好ましく、1,500~5,000であることがより好ましい。本明細書において、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
また、この(A)カルボジイミド基を有する化合物は、反応性の観点から、カルボジイミド基当量(g/eq)が100~500であることが好ましく、150~350であることがより好ましい。
また、この(A)カルボジイミド基を有する化合物は、有機溶剤を除く組成物の全有機成分中に50~99質量%の割合で配合されていることが好ましい。この範囲で配合することにより、優れた誘電特性と耐熱性を有する硬化物を得ることができる。
[(B)光によってカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を生成する化合物]
本発明の感光性硬化性組成物は、(B)光によってカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を生成する化合物、好ましくはナフトキノンジアジド化合物を含む。
この化合物(B)は、光照射(露光)によって、カルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を生成する化合物であり、未露光の状態では、化合物(A)中のカルボジイミド基と架橋反応を生じる官能基を生成しないものである。
その結果、本発明の感光性硬化性組成物からなる乾燥塗膜をパターン露光した場合、露光部の化合物(B)より生成されたカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基と(A)カルボジイミド基を有する化合物のカルボジイミド基とが、常温(約25℃)以上で架橋反応することで、露光部は現像液に溶解しなくなり、未露光部との現像性の差から、塗膜のパターンが形成される。
このような光によってカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を生成する化合物としては、公知慣用の化合物を用いることができるが、特に光によってカルボキシル基を生成するナフトキノンジアジド化合物が好ましい。このナフトキノンジアジド化合物としては、例えば、テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のBS570(付加率70%),BS599(付加率99%))や、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]-α,α-ジメチルベンジル}フェノールのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTKF-428(付加率93%),TKF-528(付加率93%))等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、有機溶剤への溶解性の観点から、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]-α,α-ジメチルベンジル}フェノールのナフトキノンジアジド付加物が好ましい。
上記のナフトキノンジアジド化合物は、ナフトキノンジアジドの付加率に応じて、フェノール性水酸基が残存することから、保存安定性が低下する可能性がある。そのため、組成物中にフェノール性水酸基を有する化合物を実質的に含まないように、ナフトキノンジアジドの付加率は、60%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上であることが最も好ましい。
(B)光によってカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を生成する化合物は、組成物中の(A)カルボジイミド基を有する化合物との関係で、化合物(A)のカルボジイミド基と、化合物(B)が露光によって生成するカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基との当量比(カルボジイミド基:カルボキシル基および/またはフェノール性水酸基)が、1:0.01~0.2となるように配合することが好ましく、1:0.02~0.1であることがより好ましく、1:0.03~0.08であることが最も好ましい。このような当量比の関係にあれば、露光部の現像液耐性が得られ、かつ、カルボジイミド基がトリアジン環やイミダゾリジオン環といった架橋構造を多く形成し、優れた誘電特性と耐熱性が得られる。
[25℃において液状である有機化合物]
本発明の感光性硬化性組成物は、化合物(A)と化合物(B)以外に、優れた誘電特性と耐熱性を損なわない範囲内で、25℃において液状である有機化合物を配合することができる。
この25℃において液状である有機化合物は、組成物の軟化点を下げる効果を有し、未露光部の現像液溶解性を向上させると共に、後述するドライフィルムの組成物層の割れや裁断時の粉落ちを抑制し、ラミネート時の組成物流動性を向上させる機能を有し、配合量は、有機溶剤を除く組成物の有機成分中、10~40質量%であることが好ましい。
このような機能を有する25℃において液状である有機化合物としては、カルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を実質的に有していなければ、特に限定されるものではない。なかでも、環状(チオ)エーテル基および/またはエチレン性不飽和結合を有する有機化合物を用いることが好ましい。
(環状(チオ)エーテル基を有する有機化合物)
25℃において液状である環状(チオ)エーテル基を有する有機化合物としては、具体的には、エポキシ基、エピスルフィド基、オキセタン基を有する化合物が挙げられる。このような環状(チオ)エーテル基は、カルボジイミド基と150℃以上で架橋反応し、イミダゾリジオン環やイミダゾリジンチオン環結合を形成する。イミダゾリジオン環やイミダゾリジンチオン環結合を形成した硬化物は、より一層の優れた誘電特性(低誘電率や低誘電正接)を有し、優れた耐熱性(高いガラス転移温度)を有するものとなる。
25℃において液状であるエポキシ基を有する有機化合物としては、公知慣用のものを用いることができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
25℃において液状であるエピスルフィド基を有する有機化合物としては、上記液状のエポキシ基を有する有機化合物のエポキシ基(オキシラン環)にチオ尿素等の硫化剤を反応させて、エピスルフィド基(チイラン環)に置換した有機化合物が挙げられる。
25℃において液状であるオキセタン基を有する有機化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルなどが挙げられる。
このような25℃において液状である環状(チオ)エーテル基を有する有機化合物は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
この環状(チオ)エーテル基を有する有機化合物は、後述するイミダゾール等の硬化促進剤を配合することで、低温硬化性を付与することができる。
また、環状(チオ)エーテル基を有する有機化合物の分子構造に由来する公知慣用の効果は、本発明においても有効である。具体的には、エピスルフィド基に由来する密着性付与、低温硬化性付与、オキセタン基による保存安定性付与、ジシクロペンタジエン骨格による低誘電特性付与、ビスフェノールS型構造、トリスフェノール型構造、ナフタレン型構造、アントラセン型構造、ビフェニル型構造による難燃性付与、ナフタレン型構造、ビフェニル型構造による低熱膨張性付与、熱伝導性付与、線状脂肪族構造や脂環式構造による溶剤溶解性、柔軟性、保存安定性といった特性付与等が挙げられる。
(エチレン性不飽和結合を有する有機化合物)
25℃において液状であるエチレン性不飽和結合を有する有機化合物としては、具体的には、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
本発明の感光性硬化性組成物では、このようなエチレン性不飽和結合を有する有機化合物と後述する光重合開始剤とを併用することで、光照射(露光)によるラジカル重合性を付与することができる。このような構成によれば、組成物の乾燥塗膜において、露光部では、上述の化合物(A)と化合物(B)の架橋反応に加えて、エチレン性不飽和結合を有する有機化合物のラジカル重合反応が生起し、露光部の現像液耐性がさらに向上する。
25℃において液状であるエチレン性不飽和結合を有する有機化合物としては、公知慣用のものを用いることができ、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、もしくはε-カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類、前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類及びメラミンアクリレート、及び前記アクリレートに対応する各メタクリレート類が挙げられる。
なかでも柔軟性と反応性に優れることから、トリメチロールプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物および/またはプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
このような25℃において液状であるエチレン性不飽和結合を有する有機化合物は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここで、「25℃において液状」であるかの確認は、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)の別紙第2の「液状の確認方法」に準じて行う。具体的な、評価方法を以下に記載する。
(1)装置
恒温水槽:攪拌機、ヒーター、温度計、自動温度調節器(±0.1℃で温度制御が可能なもの)を備えたもので深さ150mm以上のものを用いる。例えば、ヤマト科学社製の低温恒温水槽(型式BU300)と投入式恒温装置サーモメイト(型式BF500)の組み合わせ、水道水約22リットルを低温恒温水槽に入れ、これに組み付けられたサーモメイトの電源を入れて25℃に設定し、水温を設定温度±0.1℃に調整する。
試験管:試験管としては、図1に示すように、内径30mm、高さ120mmの平底円筒型透明ガラス製のもので、管底から55mmおよび85mmの高さのところにそれぞれ標線11、12が付され、試験管の口をゴム栓13aで密閉した液状判定用試験管10aと、同じサイズで同様に標線が付され、中央に温度計を挿入・支持するための孔があけられたゴム栓13bで試験管の口を密閉し、ゴム栓13bに温度計14を挿入した温度測定用試験管10bを用いる。以下、管底から55mmの高さの標線11を「A線」、管底から85mmの高さの標線12を「B線」という。
温度計14としては、JIS B7410(1982)「石油類試験用ガラス製温度計」に規定する凝固点測定用のもの(SOP-58目盛範囲20~50℃)を用いるが、0~50℃の温度範囲が測定できるものであればよい。
(2)実施手順
温度20±5℃の大気圧下で24時間以上放置した試料を、図1(a)に示す液状判定用試験管10aと図1(b)に示す温度測定用試験管10bにそれぞれA線まで入れる。2本の試験管10a、10bを低温恒温水槽にB線が水面下になるように直立させて静置する。温度計は、その下端がA線よりも30mm下となるようにする。
試料温度が設定温度±0.1℃に達してから10分間そのままの状態を保持する。10分後、液状判断用試験管10aを低温恒温水槽から取り出し、直ちに水平な試験台の上に水平に倒し、試験管内の液面の先端がA線からB線まで移動した時間をストップウォッチで測定し、記録する。試料は、設定温度において、測定された時聞が90秒以内のものを液状、90秒を超えるものを固体状と判定する。
[硬化促進剤]
本発明の感光性硬化性組成物は、さらに硬化促進剤を含有することができる。
硬化促進剤としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のシクロアミジン化合物、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物及びその誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等の有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。
これらは1種を単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
このような硬化促進剤は、上述の(A)カルボジイミド基を有する化合物や環状(チオ)エーテル基を有する化合物と併用する場合には、その配合量を、(A)カルボジイミド基を有する化合物の量、または(A)カルボジイミド基を有する化合物と環状(チオ)エーテル基を有する化合物の合計量に対して0.01~10質量%とすることが好ましい。
[光重合開始剤]
本発明の感光性硬化性組成物は、さらに光重合開始剤を含有することができる。
光重合開始剤としては、例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類、チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類、フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような光重合開始剤は、上述のエチレン性不飽和結合を有する有機化合物と併用して用いる場合には、その配合量を、エチレン性不飽和結合を有する有機化合物に対して0.1~10質量%とすることが好ましい。
[有機溶剤]
本発明の感光性硬化性組成物は、さらに有機溶剤を含有することができる。
有機溶剤は、組成物の主成分である(A)カルボジイミド基を有する化合物に対して溶解性に優れるもの(良溶媒)を選択することが好ましい。このような良溶媒である有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、ジオキソラン等の脂環式エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、パークレン、トリクロロエタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、シクロヘキサノン、石油ナフサ等が挙げられる。なかでも、低価格や低毒性の観点から、シクロヘキサノンと石油ナフサが好ましい。石油ナフサは、沸点範囲が80~180℃の重質ナフサが好ましく、市販品としては、三協化学製のソルベント#100、ソルベント#150、ソルベントナフサ、出光昭和シェル製のイプゾール#100、イプゾール#150、イプゾールTP、JXTGエネルギー製のT-SOL100、T-SOL150、カクタスソルベントP-100、カクタスソルベントP-150、カクタスソルベントP-180、カクタスファインSF-01、カクタスファインSF-02、安藤パラケミー製のNDソルベント150が挙げられる。
これらは、単独でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このような有機溶剤との併用であれば、(A)カルボジイミド基を有する化合物に対して貧溶媒である有機溶剤も併用して配合することが可能である。
そして、有機溶剤の含有量は特に限定されず、硬化性組成物の用途に応じて適宜調整可能である。
[無機充填材]
本発明の感光性硬化性組成物は、さらに無機充填材を含有することができる。
無機充填材としては公知慣用のものを用いることができ、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、銀粉末、銅粉粉末、はんだ粉末等が挙げられる。
これらは、単独でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの無機充填材の形状は、充填性や組成物の流動性、ドライフィルムとしてのハンドリングが向上することから、球状が好ましく、より高充填化する場合は、主たる球状の無機充填材と、主たる無機充填材の平均粒子径に対して1/5~1/50の平均粒子径を有する球状の無機充填材を組み合せることがより好ましい。
また、無機充填材の平均粒子径は、50nm~20μmの範囲で適宜選択することができ、露光時の光透過性、ひいてはパターン解像性が向上することから、平均粒子径は50nm~2μmであることが好ましく、充填性や組成物の流動性が向上することから、平均粒子径は1μm~20μmであることが好ましい。
なお、本発明における平均粒子径とは、レーザー回折法により測定されたD50の値である。レーザー回折法による測定装置としては、日機装社製のMicrotrac MT3300EXIIが挙げられる。
また、無機充填材は、組成物における分散性や充填性の向上、硬化物としての機械特性の向上から、カップリング剤等により表面処理することが好ましい。カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が挙げられ、なかでもシラン系カップリング剤が好ましい。シラン系カップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリルシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、フェニルトリメトキシシラン等のアルコキシシランが挙げられる。
そのなかでも、ビニルシラン類、エポキシシラン類、メタクリルシラン類、フェニルトリメトキシシランは、組成物における無機充填材の分散性の向上と保存安定性に優れることから好ましい。また、特に、ビニルシラン類、メタクリルシラン類、アクリルシラン類は、上述の光重合開始剤と併用することでラジカル重合性が得られ、露光部の現像液耐性を向上することができるためより好ましい。
なお、このようなカップリング剤等により表面処理により有機官能基が付加された無機充填材は、本明細書中において非有機成分として扱う。
また、無機充填材の種類に由来する公知慣用の効果は、本発明においても有効である。
具体的には、硫酸バリウムに由来する耐熱性、耐薬品性付与、シリカに由来する低熱膨張性付与や低誘電正接化、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムに由来する難燃性付与、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウムに由来する熱伝導性付与、炭酸カルシウムに由来する硬化物表面の粗面化、銀粉末、銅粉末、はんだ粉末に由来する導電性付与等が挙げられる。
無機充填材の配合量は、感光性硬化性組成物の有機溶剤を除く成分全量に対して、20~93質量%であることが好ましい。この配合量は、組成物の利用目的に応じて適宜調整され、プリント配線板や半導体素子等の保護膜や電気絶縁層、電子部品を固定する接着層の用途であれば、20~75質量%が好ましく、電子部品等を封止や内蔵する封止材や部品内蔵層、成型品材料の用途であれば、60~93質量%であることが好ましい。
[その他の成分]
本発明にかかる感光性硬化性組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述した成分以外のその他の成分、例えば、公知慣用の添加物を配合することができる。その他の公知慣用の添加物としては、特に限定されないが、例えば、樹脂及びエラストマー、着色剤、難燃剤、分散剤、消泡剤・レベリング剤、揺変剤などが挙げられる。
(樹脂及びエラストマー)
樹脂及びエラストマーとしては、25℃で液状ではないエポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、イミド樹脂、マレイミド樹脂、アミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ノルボルネン系樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアゾメチン樹脂、ブロック共重合体、天然ゴム、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
(着色剤)
着色剤としては、着色顔料や染料等としてカラーインデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyers and Colourists)発行)番号が付されているものを挙げることができる。例えば、赤色着色剤としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがある。青色着色剤としては、フタロシアニン系、アントラキノン系などがあり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物を使用することができる。これら以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。緑色着色剤としては、同様にフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系がある。これら以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。黄色着色剤としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等がある。白色着色剤としては、ルチル型またはアナターゼ型酸化チタンなどが挙げられる。黒色着色剤としては、カーボンブラック系、黒鉛系、酸化鉄系、チタンブラック、酸化鉄、アンスラキノン系、酸化コバルト系、酸化銅系、マンガン系、酸化アンチモン系、酸化ニッケル系、ペリレン系、アニリン系、硫化モリブデン、硫化ビスマスなどがある。その他、色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色などの着色剤を加えてもよい。
(分散剤)
分散剤としては、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子型分散剤、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子型分散剤等が挙げられ、組成物中の各成分の分散性が向上し、さらに硬化物の機械特性を向上することができる。
(消泡剤・レベリング剤)
消泡剤・レベリング剤としては、シリコーン、変性シリコーン、鉱物油、植物油、脂肪族アルコール、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等の化合物等が使用でき、塗膜表面の平滑性が向上し、塗膜中のボイドの発生を抑制することができる。
(揺変剤)
揺変剤としては、微粒子シリカ、シリカゲル、不定形無機粒子、ポリアミド系添加剤、変性ウレア系添加剤、ワックス系添加剤、有機ベントナイト等が使用でき、塗膜の成膜性が向上し、ダレを抑制することができる。
(難燃剤)
難燃剤としては、赤燐、燐酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、モリブデン化合物系、臭素化合物系、塩素化合物系、燐酸エステル、含燐ポリオール、含燐アミン、メラミンシアヌレート、メラミン化合物、トリアジン化合物、グアニジン化合物、シリコーンポリマー等が使用でき、硬化物の自己消火性、耐熱性を高いレベルでバランスよく達成できる。
<ドライフィルム>
本発明のドライフィルムは、基材(例えば支持(キャリア)フィルム)上に、本発明の感光性硬化性組成物を塗布後、乾燥して得られる組成物層を有するものである。そして、この組成物層を、目的とする別の基材に接するように熱圧着(ラミネート)して使用される。
具体的には、本発明のドライフィルムは、基材(例えば支持(キャリア)フィルム)上に、ブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の適宜の方法により本発明の感光性硬化性組成物を均一に塗布し、乾燥して、組成物層を形成し、好ましくはその上にフィルム(いわゆる保護(カバー)フィルム)を積層することにより、製造することができる。保護フィルムと支持フィルムは同一のフィルム材料であっても、異なるフィルムを用いてもよい。
本発明のドライフィルムにおいて、支持フィルムおよび保護フィルムのフィルム材料としては、ドライフィルムに用いられる公知慣用のものを用いることができる。
支持フィルムとしては、例えば2~150μmの厚さのポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。また、パターン解像性を向上させるため、光透過性に優れる支持フィルムや、組成物層と接する面を粗面化した支持フィルムを用いて、組成物層の表面に支持フィルムの粗面形状を転写する技術を用いることができる。
保護フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、組成物層との接着力が、支持フィルムよりも小さいものが良い。
本発明のドライフィルムの組成物層の膜厚は、1~40μmが好ましく、1~30μmがより好ましい。組成物層の膜厚がこのような範囲にあれば、光照射または加熱した際に、特にナフトキノンジアジド化合物から発生する窒素ガスが組成物層より除去され、良好な塗膜及び硬化膜を形成することができる。
本発明のドライフィルムは、本発明の感光性硬化性組成物からなる組成物層を保護層(外層)とし、本発明の感光性硬化性組成物からナフトキノンジアジド化合物などの化合物(B)を除いた硬化性組成物を接着層(内層)とした2層構造のドライフィルムにすることができる。
このような2層構造によれば、保護層の露光部が現像時に直下の接着層の溶解を防ぎ、2層構造でのパターン形成が可能となる。また、化合物(B)として特にナフトキノンジアジド化合物を用いた場合には、窒素ガスの発生が外層のみとなるため、層内にボイド等を残存させることなく、ドライフィルムとしての高膜厚化が可能となる。
このような2層構造のドライフィルムでは、保護層の膜厚は、1~40μmが好ましく、1~30μmがより好ましく、接着層の膜厚は、1~100μmが好ましい。
2層構造のドライフィルムの製造方法としては、第1の例として、支持フィルム上に、本発明の感光性硬化性組成物を塗布、乾燥して、保護層を形成し、次いで、前記保護層上に、本発明の感光性硬化性組成物からナフトキノンジアジド化合物などの化合物(B)を除いた硬化性組成物を塗布、乾燥して接着層を形成し、その後、必要に応じて接着層上に保護フィルムを積層して製造する。
第2の例としては、支持フィルム上に、本発明の感光性硬化性組成物を塗布、乾燥した保護層と、保護フィルム上に、本発明の感光性硬化性組成物からナフトキノンジアジド化合物などの化合物(B)を除いた硬化性組成物を塗布、乾燥した接着層を各々作製し、保護層と接着層を接するように積層して製造する。
2層構造のドライフィルムの使用方法は、接着層側の保護フィルムを剥離し、この接着層が目的とする別の基材に接するように熱圧着(ラミネート)して使用され、その後の製造工程は、単層のドライフィルムを用いた場合と同じである。
[硬化物]
本発明の硬化物は、上述した本発明の感光性硬化性組成物またはドライフィルムの組成物層を硬化させたものである。
本発明の感光性硬化性組成物または組成物層を形成したドライフィルムを用いてパターン形成した硬化物を得る方法としては、例えば、以下の工程を経る方法が挙げられる。
まず、塗膜形成工程として、基材上に、感光性硬化性組成物を塗布、乾燥することにより、あるいはドライフィルムから組成物層を転写することにより、乾燥塗膜を形成する。
ここで、この塗膜形成工程において、基材上に感光性硬化性組成物を塗布する方法としては、従来からの塗布方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、さらにはインクジェット法等を用いることができる。塗膜を乾燥する方法としては、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥等の方法が用いられる。また、塗膜の乾燥は、感光性硬化性組成物中の化合物(B)の熱反応が起こらないような条件下で行う。具体的には、110℃以下で1~30分の条件、好ましくは90℃以下で1~30分の条件とする。
この工程に用いる基材としては、180℃以上の硬化温度に耐性を有する基材であれば特に制限はなく、シリコンウエハ等の半導体基材、ガラス繊維に硬化性樹脂を含侵して硬化した基材、ポリイミドフィルム上に予め銅等の回路が形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板等の配線基板、金属基板等に広く適用できる。
次に、露光工程として、上記工程で基材上に形成した乾燥塗膜に対し、パターンを有するフォトマスクを介して、あるいは直接的に、活性エネルギー線を照射し、パターン露光する。特にドライフィルムによって乾燥塗膜を形成した場合には、支持フィルムを剥離してから露光するか、もしくは、支持フィルム上から露光した後に支持フィルムを剥離することができる。
ここで、活性エネルギー線としては、化合物(B)を活性化させることができる波長のものを用いる。具体的には、活性エネルギー線の照射に用いられる露光機の光源として、高圧水銀灯ランプやメタルハライドランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、直接描画(ダイレクトイメージング露光)装置も用いることができる。また、露光量は、膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cmの範囲内で行う。
次いで、必要に応じてPEB(POST EXPOSURE BAKE)工程を行う。このPEB工程は、露光によって化合物(B)から生成したカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基とカルボジイミド基との反応を加熱によって促進する工程である。カルボキシル基および/またはフェノール性水酸基とカルボジイミド基の反応は25℃程度でも進行するが、PEBを行うことで、パターン形成性が向上する。
このPEB工程では、オーブンまたはホットプレートによる加熱等の方法が用いられる。また、このPEB工程は、未露光部のナフトキノンジアジド化合物などの化合物(B)の熱反応が起こらないような条件下の温度で行う。具体的には、110℃以下で1~30分であり、90℃以下で1~30分が好ましい。
次いで、現像工程として、露光工程後またはPEB工程後の乾燥塗膜を現像液で処理する。これにより、塗膜中の未露光部分を除去して、本発明の感光性硬化性組成物のパターン膜を形成することができる。
ここで、この現像工程に用いる方法としては、従来から知られているフォトリソグラフィの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等の中から任意の方法を選択することができる。現像液としては、上述した有機溶剤を用いることができ、なかでも、石油ナフサ、または石油ナフサとシクロヘキサノンを組み合せた現像液が好ましい。石油ナフサとシクロヘキサノンを混合した現像液では、シクロヘキサノンの比率が高いほど未露光部分の現像性が向上し、石油ナフサの比率が高いほど露光部における現像ダメージが抑制される。石油ナフサとシクロヘキサノンの混合比(石油ナフサ:シクロヘキサノン)としては、9.5:0.5~5:5が好ましく、9:1~7:3がより好ましい。また、必要に応じて、現像液に界面活性剤を適当量添加してもよい。
この現像工程では、現像液の温度は20~40℃、現像時間は180秒以内で行う。
なお、この現像工程では、必要に応じて得られたパターン膜をリンス液により洗浄する。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を単独または組み合わせて用いることができる。
次いで、上記現像工程にて得られたパターン膜に対し、必要に応じて脱窒素工程を行う。脱窒素の方法としては、塗膜を加熱することにより行うことができる。特に、化合物(B)としてナフトキノンジアジド化合物には、露光部に残存する未感光のナフトキノンジアジド化合物を熱によって反応させて失活させることができる。
ここで、脱窒素工程における加熱方法としては、オーブンまたはホットプレートによる加熱等の方法が挙げられる。また、加熱条件は、120~140℃で1~30分とする。このような温度範囲であれば、特にナフトキノンジアジド化合物が完全に熱反応して窒素を放出し、かつパターン膜の硬化反応が進行しにくいため、発生した窒素は塗膜中に残存することなく除去される。
そして最後に、現像工程または脱窒素工程を終えたパターン膜に対し、硬化工程として、加熱して硬化塗膜(硬化物)を得る。この工程により、カルボジイミド基が架橋反応し、硬化する。
ここで、この硬化工程における加熱条件は、180~250℃で30~90分であるが、組成物中に環状(チオ)エーテル基を有する化合物を含有する場合には、前記加熱条件の前に150~170℃で30~90分の加熱を加えても良い。
本発明の感光性硬化性組成物またはドライフィルムは、プリント配線板や半導体素子等の保護膜や電気絶縁層、電子部品等を封止や内蔵する封止材や部品内蔵層、電子部品を固定する接着層等に用いることができ、特に、低誘電率や低誘電正接が要求される高密度配線、高周波信号を扱う電子部品、高温かつ長期の信頼性が要求される車載やロボット用の電子部品に好適である。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り、すべて質量基準である。
(カルボジイミド基を有する化合物(A1)の合成)
還流管および撹拌機付き反応容器にジイソシアネートとして、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート54質量部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート46質量部との混合物(東ソー製、モノメリックMDI;ミリオネートNM)、イソシアネート基と反応する官能基を1つ有する化合物として、フェニルイソシアネート10質量部、カルボジイミド化触媒として、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド0.6質量部を入れ、窒素気流下100℃で2時間撹拌し、赤外吸収(IR)スペクトル測定による波長2270cm-1前後のイソシアネート基による吸収ピークがほぼ消失したことを確認して、カルボジイミド基を有する化合物(A1)を得た。得られたカルボジイミド基を有する化合物(A1)の重量平均分子量は2,100、カルボジイミド基当量は205g/eqであった。
(球状シリカの表面処理)
PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)50質量部、アクリルシラン系カップリング剤(信越シリコーン製KBM-5103(3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン))3質量部を混合した溶液に、球状シリカ(アドマテックス製、SO-E2、平均粒子径0.5μm)100質量部を加え、撹拌し均一分散させた後、加熱乾燥して表面処理球状シリカを得た。
(球状アルミナの表面処理)
上記シリカの表面処理において、球状シリカを球状アルミナ(アドマテックス製、A-509、平均粒子径10μm)100量部、カップリング剤をエポキシシラン系カップリング剤(信越シリコーン製KBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン))3質量部に変更した以外はシリカの表面処理と同様にして表面処理球状アルミナを得た。
(実施例1~13、比較例1)
下記の表1に示す配合に従い、各成分を配合し、攪拌機にて撹拌し、必要に応じて3本ロールミルで混練して実施例1~13、比較例1の感光性硬化性組成物を調製した。なお、表中の配合量は、質量部を示す。
Figure 0007420821000001
*1:三宝化学研究所社製、ナフトキノンジアジド化合物、ナフトキノンジアジド付加率93%、生成されるカルボキシル基当量約383g/eq、
Figure 0007420821000002
*2:新日鉄住金化学社製、ビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂とビスフェノールF型2官能エポキシ樹脂の混合品、エポキシ当量:165g/eq
*3:ADEKA製 ジシクロペンタジエン型2官能液状エポキシ樹脂、エポキシ当量165g/eq
*4:新中村化学製、EO変性ビスフェノールAジメタクリレート
*5:東亜合成製、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート
*6:IGM Resins製、モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤
*7:BASF製、オキシム系光重合開始剤
*8:東京化成工業製、コバルト(II)アセチルアセトナート
*9:四国化成製、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール
*10:JXTGエネルギー製、重質芳香族系石油ソルベントナフサ
*11:三協化学製、シクロヘキサノン
*12:アドマテックス製、球状シリカ、平均粒子径0.5μm、アクリルシラン表面処理
*13:アドマテックス製、球状シリカ、平均粒子径50nm
*14:アドマテックス製、球状アルミナ、平均粒子径10μm、エポキシシラン表面処理
(保存安定性)
得られた各実施例および各比較例の感光性硬化性組成物を遮光容器に入れ、25℃に温度調整された恒温器に24時間保管した。保管した各組成物を取り出し、ゲル化の有無を確認し、保存安定性を以下の評価基準にて評価した。その結果を表1に示す。
○:ゲル化しない
×:ゲル化した
(パターン形成性)
得られた各実施例および各比較例の感光性硬化性組成物を、塗膜形成工程として、銅板上にアプリケータにて乾燥後の塗膜厚が約25μmになるように塗布し、オーブンにて80℃で30分間乾燥した。次いで、露光工程として、得られた乾燥塗膜に対し、100μmのラインパターンを有するフォトマスクを密着させ、紫外線露光装置((株)オーク製作所製、型式HMW-680GW)を用いて露光(露光量1J/cm)した。次いで、PEB工程として、露光した塗膜に対し、オーブンにて80℃で30分間の加熱処理を行った。次いで、現像工程として、PEB工程を終えた乾燥塗膜を、石油ナフサ(カクタスファインSF-01)90質量%とシクロヘキサノン10質量%を混合した現像液に、20℃で60秒間浸漬し、揺動させながら現像して、パターン形成した塗膜(パターン膜)を備える銅板(試験片)を作製した。
得られたパターン膜について、ラインの残存状態を目視にて、現像後の膜厚をマイクロメータにて測定し、下記の評価基準にてパターン形成性を評価した。その結果を表1に示す。
◎:ラインの欠損がなく、乾燥前の膜厚と現像後の膜厚の差が2μm未満
〇:部分的にラインが欠損、または乾燥前の膜厚と現像後の膜厚の差が2μm以上
×:パターン形成が不可能
(硬化膜(硬化物)の外観)
上記パターン形成性にて作製した試験片を、脱窒素工程として、オーブンにて130℃で30分間加熱し、さらに硬化工程として、250℃に昇温して60分間加熱処理し、銅板上にパターン形成した硬化膜を備える試験片を得た。
得られた試験片が備えるパターン形成した硬化膜の外観を目視にて観察し、下記の評価基準にて硬化膜の外観を評価した。その結果を表1に示す。
○:硬化膜にボイド等の異常が無い
×:硬化膜にボイド等の異常が有る
(誘電率及び誘電正接)
各実施例の組成物を、18μm厚の銅箔の光沢面にアプリケータにて乾燥後の塗膜厚が約25μmになるように塗布し、オーブンにて80℃で30分間乾燥した。次いで、露光工程として、得られた乾燥塗膜に対し、紫外線露光装置((株)オーク製作所製、型式HMW-680GW)を用いて全面露光(露光量1J/cm)した。次いで、PEB工程として、全面露光した塗膜に対し、オーブンにて80℃で30分間の加熱処理を行った。次いで、現像工程として、PEB工程を終えた乾燥塗膜を、石油ナフサ(カクタスファインSF-01)90質量%とシクロヘキサノン10質量%を混合した現像液に、20℃で60秒間浸漬し、揺動させながら現像した。次いで、脱窒素工程として、得られた塗膜をオーブンにて130℃で30分間加熱し、さらに硬化工程として、250℃に昇温して60分間加熱処理し、銅箔に硬化膜を備える試験片を作製した。
なお、比較例1については、前述の試験にてパターン形成が不可能であったため、上記現像工程を除いて試験片を作製した。
このようにして作製した試験片の硬化膜を銅箔から剥離し、硬化膜サンプルとして、SPDR誘電体共振器とネットワークアナライザー(ともにアジレント社製)を用いて、10GHzにおける誘電率及び誘電正接を測定し、以下の評価基準にてそれぞれ評価した。その結果を表1に示す。
(誘電率の評価基準)
◎:3.3未満
○:3.3以上3.5未満
×:3.5以上
(誘電正接の評価基準)
◎:0.015未満
○:0.015以上0.02未満
×:0.02以上
(耐熱性(ガラス転移温度))
上記誘電率及び誘電正接の評価にて用いた硬化膜サンプルを、3mm幅×20mm長にカットし、ガラス転移温度の測定用試験片とした。この試験片について、測定装置として日立ハイテクサイエンス社製の「TMA/SS120」を用い、昇温速度:5℃/分として測定温度範囲:30~350℃の条件で測定し、以下の評価基準にて耐熱性を評価した。その結果を表1に示す。
◎:ガラス転移温度が260℃以上
〇:ガラス転移温度が200℃以上260℃未満
×:ガラス転移温度が200℃未満
上記表1に示す評価結果から明らかなように、各実施例の感光性硬化性組成物によれば、フォトリソグラフィによるパターン形成が可能であり、その硬化物は、優れた耐熱性(高Tg)と優れた誘電特性(低誘電率および低誘電正接)を有することが確認された。一方で、比較例1の組成物では、フォトリソグラフィによるパターン形成が不可能であることが確かめられた。
(ドライフィルムの作製)
実施例11の感光性硬化性組成物を、PETフィルム(東レ製、ルミラーT60、厚み25μm)上に、アプリケータにて乾燥後の塗膜厚が20μmになるように塗布し、オーブンにて80℃で30分間乾燥させて、表2に示した実施例12の感光性硬化性組成物からなる組成物層を単層として備えるドライフィルムAを作製した。
また、実施例12の感光性硬化性組成物からナフトキノンジアジド化合物を除いた組成物を調製し、かかる組成物を、前記ドライフィルムAの組成物層上に、さらにアプリケータにて乾燥後の膜厚が40μmになるように塗布し、オーブンにて80℃で30分間乾燥させて、接着層としての組成物層を形成し、PETフィルム上に、実施例12の組成物からなる組成物層である保護層と接着層とを有する2層構造からなるドライフィルムBを作製した。
このようにして作製したドライフィルムAおよびBを銅板上にPETフィルムが外側になるように設置し、真空ラミネーター(ニッコーマテリアルズ製CVP-300)を用いて加圧力:0.4MPa、110℃、1分、真空度:3hPaの条件で加熱ラミネートした。次いで、PETフィルムを剥離し、上述したパターン形成性と硬化物の外観の評価試験と同様の方法にて、パターン形成した塗膜を備える試験片及びパターン形成した硬化膜を備える試験片を作製し、パターン形成性と硬化物の外観を評価した。その結果を表2に示す。
Figure 0007420821000003
上記表2に示す評価結果から明らかなように、本発明の感光性硬化性組成物は、単層のドライフィルム化および2層構造のドライフィルム化が可能であり、これらのドライフィルムによれば、フォトリソグラフィによるパターン形成と、外観にボイド等の異常がなく、厚膜の硬化物も得られることが確かめられた。
10a 液状判定用試験管
10b 温度測定用試験管
11 標線(A線)
12 標線(B線)
13a,13b ゴム栓
14 温度計

Claims (5)

  1. (A)カルボジイミド基を有する化合物と、
    (B)光によってカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を生成する化合物と、
    ラジカル重合を生起する光重合性開始剤、ならびにビニルシラン類、メタクリルシラン類およびアクリルシラン類から選ばれる1種以上のカップリング剤により表面処理された無機充填材と、
    を含み、
    組成物中にカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基を有する化合物を実質的に含まないことを特徴とする感光性硬化性組成物。
  2. 前記(A)カルボジイミド基を有する化合物は、有機溶剤を除く組成物の有機成分中に50~99質量%の割合で配合されていることを特徴とする請求項1に記載の感光性硬化性組成物。
  3. 基材上に、請求項1または2に記載の感光性硬化性組成物を塗布、乾燥してなる組成物層を備えるドライフィルム。
  4. 請求項1または2に記載の感光性硬化性組成物、または、請求項3に記載のドライフィルムの組成物層を硬化してなる硬化物。
  5. 請求項4に記載の硬化物を備える電子部品。
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