本発明は、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行う地盤改良装置の掘削・撹拌具に関し、複数の撹拌翼を備えた構成において、付着落とし翼を設けることにより、撹拌翼および掘削・撹拌軸への土塊の付着を低減し、掘削・改良土の共回り現象の防止を図るものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
<1.地盤改良装置>
本発明にかかる掘削・撹拌具を備える地盤改良装置の構成について説明する。図28は、本発明にかかる掘削・撹拌具Aを具備した地盤改良装置Kを示す。図28に示すように、地盤改良装置Kは、主要な装置部分が地盤Gの改良部分の地上面に設置される。
地盤改良装置Kは、自走可能なベースマシン本体200に設けられ、上下方向に伸延するリーダ210と、リーダ210に昇降自在に取り付けられる回転駆動部220と、上下方向に伸延して形成され、回転駆動部220の下端に取り付けられる掘削・撹拌軸1と、改良材を供給する改良材供給部230と、を備えることを基本構成としている。
ベースマシン本体200の後方に配置された改良材供給部230は、スラリー系の改良材を掘削孔内へ供給する。改良材供給部230は、改良材供給管231を介して回転駆動部220に接続した掘削・撹拌軸1内部の改良材供給路と連通連設している。
改良材は、地盤を改良するために掘削土と混練される材料であって、水とセメント系固化材を主成分としたスラリー状の混合物であり、地盤改良の目的に合わせて他に、セメント系以外の固化材、混和材、添加剤、中和剤、薬剤、化学剤等を添加することができる。
改良材供給部230から供給される改良材は、掘削・撹拌軸1内の改良材供給路を経由し、掘削・撹拌具Aに形成した吐出口から吐出され、掘削地盤や土中へ散布・拡散されて掘削・撹拌具Aにより掘削土とともに撹拌される。
回転駆動部220は、ベースマシン本体200に内蔵した駆動回転ドラムにより吊下げワイヤ221を介してリーダ210の伸延方向に沿った上下動を可能としている。
吊下げワイヤ221は、一端を駆動回転ドラムに連結し、中途部をリーダ210の最頂部を経由して回転駆動部220上部に設けたプーリ222に巻き掛けて、他端をリーダ210の上端部に固定している。
すなわち、吊下げワイヤ221は、駆動回転ドラムの回転駆動力を回転駆動部220のリーダ210に沿った上下昇降力に変換し、地盤改良における貫入・引抜き時の堀削・撹拌具Aの上下動を可能にしている。
回転駆動部220内部には図示しない駆動機が搭載されており、掘削・撹拌軸1はその基端で駆動機に連結して回転駆動する。
なお、回転駆動部220内部の駆動機は、駆動力を掘削・撹拌軸の回転力として付与するものであればよい。また、回転駆動部220およびその内部の駆動機は、単軸式の掘削・撹拌軸1に対応するものに限定されるものではなく、例えば、2本以上の回転軸を有する多軸式の掘削・攪拌軸に対応する駆動機、或いは、相対駆動する二重軸構造を有した掘削・撹拌軸に対応する二重駆動機であってもよい。
このように構成した地盤改良装置Kは、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材とを混練して地盤改良を行う主要部である掘削・撹拌具Aを備えている。
<2.第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態にかかる掘削・撹拌具A1の構成について図面を参照しながら説明する。図1および図2はそれぞれ本実施形態にかかる掘削・撹拌具A1の構成を模式的に示す正面図であり、図2はその側面図である。図3は、掘削・撹拌具A1の付着落とし翼6周辺を拡大して示す斜視図である。図4は、図1におけるB-B線で切断した横断面図である。なお、これらの図においては、仮想的な掘削穴の壁面9を二点鎖線で示している。
本実施形態にかかる掘削・撹拌具A1は、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土とスラリー状の改良材を混練することにより地盤改良を行うためのものであり、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸1と、掘削・撹拌軸1の下端に設けられ、地盤を掘削する掘削翼2と、複数の撹拌翼と、掘削・撹拌軸1または掘削・撹拌軸1の外周に設けられた部材に付着する改良土を落とすための付着落とし翼6を備える。
掘削翼2は、掘削・撹拌軸1の径方向外方に向かって伸延する帯板状の掘削翼本体部21と、掘削翼本体部21の下端から前方に向けて突出する複数のビット22を有する。掘削翼本体部21は、その下端を掘削回転方向前方側に向けて所定角度傾斜させた状態で掘削・撹拌軸1に支持されている。複数のビット22は、掘削翼本体部21に翼長方向に沿って所定間隔で配設されている。
また、掘削・撹拌軸1の下端側の掘削翼本体部21の下端に近い位置には、改良材を吐出する吐出口3が形成されている。吐出口3は、吐出口3の中心が掘削・撹拌軸1の回転の軸線Sに一致するように配置され、掘削・撹拌軸1外周面から掘削翼2の延伸方向に沿って開口されている。掘削翼2は、掘削翼本体部21を所定角度傾斜させて掘削・撹拌軸1に支持されることにより、ビット22によって地盤を掘削しつつ、吐出口3から吐出された改良材とともに土砂を上方に吐き出させるようにしている。
本実施形態では、2本の掘削翼2が掘削・撹拌軸1の下端に軸線Sを中心に点対称に設けられている(図4参照)。言い換えると、掘削翼2は、平面視で掘削・撹拌軸1の外周の左右両側に互いに180度の位相差を設けた配置状態で2つ設けられている。掘削・撹拌軸1に設けられる掘削翼2の数は、特に限定されるものではなく、例えば、掘削・撹拌軸1の外周面から放射状に複数本(3本以上)あってもよい。また、掘削翼2の翼長、翼幅、翼厚は、所望とする改良径や改良対象とする地盤の種類に合わせて適宜選択することができる。
掘削翼2の上方に設けられた複数の撹拌翼は、掘削翼2により掘削されて上方に吐き出された土砂と吐出口3から吐出された改良材とを混練するものである。複数の撹拌翼は、掘削・撹拌軸1の外周面に基端が支持された第1撹拌翼4と、掘削・撹拌軸1の外周回りに設けられた円筒部材としてのボス部7に基端が支持された第2撹拌翼5とを含む。
第1撹拌翼4は、帯板状に形成され、側面視で翼板面を掘削・撹拌軸1の軸線Sに対して所定角度傾斜する傾斜面をなして一端が掘削・撹拌軸1に支持されている。第1撹拌翼4は、掘削・撹拌軸1に対して複数(4本)設けられている。4本の第1撹拌翼4は、平面視において掘削・撹拌軸1の軸線Sを中心に点対称に配置された2本を一組とし、二組の第1撹拌翼4を、軸線Sを中心とする回転位相が90度異なるように上下2段として掘削・撹拌軸1に支持させている。
第1撹拌翼4の翼長は、掘削・撹拌軸1の軸線Sから先端までの長さが、掘削翼2のそれと略同一となる長さとしている。第1撹拌翼4は、一端が掘削・撹拌軸1に支持されていることにより、掘削・撹拌軸1と一体に回転する駆動撹拌翼である。なお、第1撹拌翼4の数は特に限定されることはなく、例えば、平面視において外周面から放射状に、上下方向において所定の回転位相でらせん状に複数本配設してもよい。
第2撹拌翼5は、帯板状に形成され、ボス部7に一端が支持されている。ボス部7は、内径が掘削・撹拌軸1よりやや大きい円筒状の部材であり、掘削・撹拌軸1に対し遊嵌されている。すなわち、ボス部7は、第2撹拌翼5の一端をその外周面に支持する支持部材であるとともに、掘削・撹拌軸1が回転自在に挿入された円筒部材である。これにより、ボス部7は掘削・撹拌軸1の回転運動に従うことなく掘削・撹拌軸1の外周回りを自由に回転することができ、ボス部7に支持した第2撹拌翼5を掘削・撹拌軸1に対して回転自在としている。なお、掘削・撹拌軸1におけるボス部7の上下には、ボス部7の上下方向の移動を規制する一対のストッパー8,8が配設されている。一対のストッパー8,8のそれぞれは掘削・撹拌軸1に固定されたフランジ状の部材である。ボス部7は、その円筒周縁部が一対のストッパー8,8における互いに対向するフランジ面に摺接して支持されることにより、掘削・撹拌軸1の所定の高さ位置に配置される。
第2撹拌翼5は、掘削・撹拌軸1の軸線Sから先端までの長さが、掘削翼2のそれよりも長く構成されている。本実施形態では、平面視において掘削・撹拌軸1の軸線Sを中心に2本の第2撹拌翼5が点対称に配置されるとともに、第2撹拌翼5の翼板面が、掘削・撹拌軸1に沿って配置された構成となっている。第2撹拌翼5は、その先端を掘削穴の壁面に対して食い込み接触、あるいは、当接させることにより、掘削穴内で静止、または、所定の速度で回転する掘削・撹拌軸1とは異なる速度で回転する。つまり、第2撹拌翼5は、掘削翼2および第1撹拌翼4の回転により生じる改良土の流動方向に沿って速度が一定でない回転運動をする。これにより、第2撹拌翼5は、土砂等をせん断し、撹拌翼と改良土が一体となって塊状になり共回りすることを防止する共回り防止翼として機能する。なお、第2撹拌翼5の数は特に限定されることはなく、例えば、平面視において略十字を形成するように4本配設してもよい。
本実施形態にかかる掘削・撹拌具A1では、下端から上方に向かって、掘削翼2、第2撹拌翼5、第1撹拌翼4の順に配置されている。
付着落とし翼6は、翼長方向を掘削・撹拌軸1の軸線Sに平行として、掘削・撹拌軸1に沿って設けられるものであり、翼本体部6aと接続部12を有する。すなわち、付着落とし翼6は、翼板部分を構成する翼本体部6aとしての直線板部11と、直線板部11の背面側に設けられた接続部12とから成る。
直線板部11は、長尺方形状の形状を有し、長尺方向を翼長方向とする横断面形状が略矩形の板状部材である。直線板部11は、翼長方向において少なくとも掘削・撹拌軸1における上下一対のストッパー8,8の離間距離よりも長い長さを有する。また、直線板部11は、掘削翼2および第1撹拌翼4との接触を避けるため、掘削翼2と最も低い位置に配置された第1撹拌翼4との離間距離よりも短い長さに設定されている。
接続部12は、付着落とし翼6をボス部7に取付けるための部分であり、直線板部11の背面側中央部に突設されている。
付着落とし翼6は、接続部12を例えばネジ締結によりボス部7の外周面に固定することにより、直線板部11の一方の板面を掘削・撹拌軸1およびボス部7に向けて掘削・撹拌軸1に沿って配置されるとともに、掘削・撹拌軸1に対して回転自在に支持される。なお、付着落とし翼6は、直線板部11を単一の板体で形成したものだけでなく、例えば直線板部11の半分の長さの板を上下対称に列設することにより、少なくとも上下一対のストッパー8,8を覆う上下方向の長さを実現するようにしてもよい。また、上下いずれか片側でも良い。
このような構成の付着落とし翼6は、掘削・撹拌軸1に対して、翼長方向を掘削・撹拌軸1に沿わせ、直線板部1の一方の板面を掘削・撹拌軸1およびボス部7の外周面に対向するように配置されることで、掘削翼2と第1撹拌翼4の掘削・撹拌軸1の近傍において、掘削・撹拌軸1に付着した改良土を落とす機能を発揮する。
以上のような構成を備えた掘削・撹拌具A1においては、地盤改良装置Kの回転駆動部220内部の駆動機に、掘削・撹拌軸1の基端を連結して該掘削・撹拌軸1を回転駆動することにより、地盤の掘削および掘削土と改良材の混練が実行される。
付着落とし翼6による掘削・撹拌軸1に対する改良土の付着落とし作用および効果について、図5および図6を参照して説明する。図5は図4と同様に図1のB-B線で水平に切断した断面図である。図5においては、仮想的な掘削穴の壁面9を二点鎖線で示し、掘削翼2および付着落とし翼6の移動軌跡を破線で示している。また、図6は図2と同様の側面図である。図6においては、仮想的な掘削穴の壁面9を二点鎖線で示し、図中に実線で示す掘削翼2、第1撹拌翼4および第2撹拌翼5を、掘削・撹拌軸1の軸線Sを中心に略90度回転させたときのそれぞれの位置を破線で示している。さらに、図5および図6においては、掘削土と改良材とが混練された改良土をドットで示している。
本実施形態に係る掘削・撹拌具A1で改良対象とする地盤を掘削し、撹拌により掘削土を改良材とを混練したときには、掘削・撹拌軸1の回転力は掘削翼2および第1撹拌翼4に伝達され、掘削翼2および第1撹拌翼4が掘削・撹拌軸1と一体として回転する。掘削翼2により掘削された掘削土と吐出口3から吐出された改良材は、掘削翼2の掘削翼本体部21の傾斜と吐出口3からの吐出圧力の作用により、掘削翼2よりも上方に流動する。掘削翼2より上方に流動した掘削土と改良材が混じった改良土は、第1撹拌翼4の翼板に押されて流動する。このとき第2撹拌翼5は、掘削穴の壁面9に先端部を食い込み接触させたことにより、改良土の流れに対して静止状態となる。第2撹拌翼5と同様にボス部7に支持された付着落とし翼6も改良土の流れに対して静止状態となる。
掘削翼2が周回運動すると、遠心力により掘削穴の径方向外側ほど圧力が高くなる。このとき、吐出口3から吐出されたスラリー状の改良材は、掘削翼2の遠心力に伴って内部から外部へとせん断撹拌が行われ、余ったスラリー状の改良材は圧力の低い掘削穴の径方向内側、すなわち掘削・撹拌軸1に沿って上方に噴出される。粘性土層等で撹拌性が良好でない場合、回転する掘削・撹拌軸1に改良土が付着する。掘削・撹拌軸1に付着した改良土の増大化がさらに続くと、掘削・撹拌軸1から掘削翼2、第1撹拌翼4へと改良土の付着が進み大きな土塊となる。そうすると、撹拌翼のせん断撹拌機能が失われていく。その後、大きな土塊によって、低圧力域であった掘削・撹拌軸1周辺の改良材の排出路が塞がれることにより、掘削された土砂に比べて流動性が高いスラリー状の改良材は、掘削土と混ざり合わなかった余剰の流体として、大きな土塊を迂回して掘削穴の外周地盤に沿って地上側に排出される。したがって、掘削穴の外周側にスラリー状の改良材が溜まりやすくなる。そうすると、改良土の掘削穴の壁面9に対する周面粘着力が低下し、掘削穴の壁面9と改良土との間に隙間が生じ、所謂、縁切りが起きやすくなる。つまり、改良土が掘削・撹拌軸1の回転とともに回る共回りが生じやすくなる。
本実施形態では、付着落とし翼6の翼本体部6aが改良土の流れに逆らって掘削・撹拌軸1の周囲(図5に破線で示す二重円の領域)で常に改良土を削ることから、掘削・撹拌軸1に付着した改良土が回転に伴って発達増大することを確実に防止することができる。さらに、掘削・撹拌軸1の外周面に接触する改良土の量を減らすことができることから、掘削・撹拌軸1の回転運動の改良土への伝達を抑制し、共回りの発生を低減させることができる。また、付着落とし翼6により撹拌性が向上することから、改良材が掘削翼2の回転軌跡の外周側に溜まることなく、特に図5および図6にドットで示した改良土の領域で、縁切りが起きない周面粘着力が維持される。つまり、図5および図6においてドットで示した領域では、掘削・撹拌軸1の回転運動に対して静止状態に近い状態となる。すなわち、地盤の円柱状の改良体との境界面となる、未改良土壌部分の内周面である掘削穴の壁面9に対して改良土が一定の粘着力を持って接することにより、改良土が掘削・撹拌軸1と同じ速度で回転しなくなり、共回り現象が防止される。
また、第2撹拌翼5が掘削・撹拌軸1の軸線Sに直交する水平方向(地盤面)に延在する水平翼であるのに対し、付着落とし翼6は、翼本体部6aが掘削・撹拌軸1の軸線Sに沿った垂直方向に延在する直線翼である。このように掘削・撹拌具A1に掘削・撹拌軸1に対して翼板の伸延方向が異なる撹拌翼を設けることにより、より共回りを防止することができ、掘削土と改良材の撹拌効率を向上させ、掘削土に対して改良材が均一に混練された柱状改良体を得ることが可能となる。
本実施形態では、付着落とし翼6は、平面視において第2撹拌翼5に対して軸線Sを中心とする回転位相が90度異なる位置でボス部7に支持させているが、これに限定されない。第2撹拌翼5に対して適当な間隔を確保できる位置であれば、例えば、軸線Sを中心とする回転位相が60度異なる位置であってもよい。また、本実施形態では、単一の付着落とし翼6を備える例を説明したが、ボス部7に設けられる付着落とし翼6の数は、特に限定されるものではなく、例えば、複数本あってもよい。
付着落とし翼6の配置について、図7および図8を参照してさらに説明する。図7および図8は、付着落とし翼6の配置範囲を模式的に示す平面概要図である。なお、これらの図においては、掘削翼2、第1撹拌翼4、第2撹拌翼5および付着落とし翼6の図示を省略している。また、これらの図においては、掘削・撹拌軸1の回転により掘削翼2の径方向外側端が描く掘削穴の壁面9に相当する掘削径円を二点鎖線で、掘削・撹拌軸1または掘削・撹拌軸1に設けられ掘削・撹拌軸1を回転自在に挿入する円筒部材(ボス部7)の外周面からの離間距離dが150mmとなる仮想円Pを破線で、半径が掘削翼2の回転半径rの1/2の仮想円Qを一点鎖線でそれぞれ示している。
先に図5および図6を参照して説明したように、付着落とし翼6による掘削・撹拌軸1および/またはボス部7の外周面に付着する改良土を落とす効果を得るためには、付着落とし翼6の翼本体部6aを、平面視において、掘削・撹拌軸1の外周面または筒状部材(ボス部7)の外周面からの離間距離が所定の範囲内となる位置に配置する必要がある。
一方で、地中に柱状改良体を構築する地盤改良工法においては、構築する柱状改良体の直径(以下、改良径と呼称する。)に応じた回転半径rを持つ掘削翼2が選択されている。改良径は、例えば直径600mm~2000mmの範囲で、建設予定の建物の規模に応じて選択されている。図7では、掘削・撹拌軸1の軸径が150mmで改良径が直径800mmの場合を、図8では、掘削・撹拌軸1の軸径が200mmで改良径が直径1600mmの場合を例に図示している。なお、所定の範囲内に付着落とし翼6を配置するのは、以下の理由による。
地盤改良の適用地盤がシルト層や粘性土層などの粘着力の強い地盤では、掘削・撹拌軸1の外周面への改良土の付着が、改良径の半分以上になると、第1撹拌翼4および第2撹拌翼5によるせん断効果が低下し、撹拌効率が著しく低下する。これにより、掘削・撹拌軸1の外周面への改良土の付着がより一層増大し、改良土と撹拌翼が共に回転する共回り現象を起こすことになる。このような現象を考慮して、付着落とし翼6は改良径の半分に相当する半径が掘削翼2の回転半径rの1/2の仮想円Q内に配置することが好ましい(図8参照)。
一方で、地盤改良の適用地盤が、玉石層または礫層、若しくはそれらの互層である場合には、小石または砂礫が、掘削・撹拌軸1の外周面またはボス部7の外周面と付着落とし翼6との間に挟まることで掘削・撹拌軸1とボス部7の遊嵌状態が無くなり固定状態となって駆動され外周面への改良土の付着をかえって増大させ、共回り現象を起こすと考えられる。なお、礫層地盤に含まれる一般的な砂礫の礫径は30mm~40mmとされているが、実際の地盤改良では、一般的な礫径の3倍程度の礫径(最大礫径)の最大礫が地盤に含まれることを考慮する必要がある。このため、最大礫径を120mm(40mm×3)とすると、掘削・撹拌軸1の外周面またはボス部7の外周面と付着落とし翼6との間の離間距離dは、最大礫が通過可能な150mmとすることが好ましいことになる。
図7に示すように、改良径が小さく(例えば900mm未満)、仮想円Qが仮想円Pよりも小さくなる場合には、付着落とし翼6は仮想円Qの外側であって仮想円Pの円内に配置してもよい。また、改良径が大きく(例えば、900mm以上)で仮想円Qが仮想円Pよりも大きくなる場合には、付着落とし翼6は仮想円Pの外側であって仮想円Qの円内に配置してもよい。
すなわち、付着落とし翼6の翼本体部6aを配置する所定の範囲は、平面視において掘削・撹拌軸1の軸心(軸線S)を中心とし掘削・撹拌軸1の外周面または筒状部材(ボス部7)の外周面からの離間距離dが150mmの仮想円Pまたは半径が掘削翼2の回転半径の1/2の仮想円Qどちらか大きい方の円内に配置することが好ましい。なお、ここでの円内とは、付着落とし翼6の掘削・撹拌軸1に最も近い部分(例えば内側の翼板面)が円周上に位置している状態を含む。
また、付着落とし翼6の配置は、仮想円Pまたは仮想円Qのどちらか大きい方の円により規定される所定の範囲内で、適用地盤および改良径に応じて自由に変更可能である。例えば、掘削・撹拌軸1の外周面または筒状部材(ボス部7)の外周面と付着落とし翼6との離間距離はゼロであってもよい。また、掘削・撹拌軸1の外周面または筒状部材(ボス部7)の外周面と付着落とし翼6の翼本体部6aとの離間距離を、砂は通過させるが礫が挟まらない距離(例えば20mm)に設定してもよい。
付着落とし翼6の翼本体部6aの横断面形状について、図9および図10を参照してさらに説明する。図9は、図1におけるC-C線で切断した横断面図である。図10は、従来の付着落とし翼に相当する板状部材(以下、排土板101と称する)と翼本体部6aの配置態様の違いによる掘削・撹拌軸1への改良土の付着防止効果を説明する模式図である。
ボス部7等の筒状部材に支持されている付着落とし翼6の翼本体部6aは、掘削・撹拌軸1の回転により生じる改良土の流れに対して静止状態となっている。付着落とし翼6は、共回りの原因となる掘削・撹拌軸1および筒状部材(ボス部7)に付着する改良土(以下、付着土と呼称する。)を、これらの部材から効率的にそぎ落とすため、翼本体部の横断面形状として所定の幅および厚みを持つ部材であることが好ましい。さらには、翼本体部を構成する部は、掘削・撹拌軸1および筒状部材(ボス部7)に対して、改良土の流れ方向の荷重に耐え得る向きで配置することが要求される。
図9に実線で示す付着落とし翼6の翼本体部6aの横断面形状は、掘削・撹拌軸1の回転方向を向く側端に、翼長方向に亘って翼本体部6aの外側面6bに連なるテーパ面6cが形成された形状となっている。
また、図9に実線で示す付着落とし翼6の翼本体部6aの横断面形状は、横断面平面において、掘削・撹拌軸1の外周円(軸線Sを中心とする円)の半径方向の直線y1に沿う方向の幅(板厚)を縦幅W1とし、外周円の半径方向の直線y1に直交する直線(外周円に接する接線x1)に沿う方向の幅を横幅W2として、横幅W2が縦幅W1よりも長くなっている。つまり、改良土の流れにあたる面積がより狭くなる縦幅W1側の面を、改良土の流れに対向させて配置している。これにより、縦幅W1より長い横幅W2の方向(接線x1に沿う方向)が翼本体部6aを構成する部材においては強軸方向となり、図9に矢印で示す改良土の流れ方向の荷重Qに対して翼本体部6aがより変形しにくくなる。
さらに、付着落とし翼6の翼本体部6aの横断面形状は、図9に二点鎖線で示した翼本体部6aのように、横幅W2は、掘削・撹拌軸1または円筒部材(ボス部7)の外周円における中心角が90度の円弧の弦の長さ以下となる範囲で調整される。横幅W2がこの範囲を超えると、翼本体部6aの外側を向く面に改良土が付着し、掘削・撹拌軸1およびボス部7に付着した改良土のそぎ落とし効果が損なわれる。
また、図10(a)に示すように、従来の排土板101(特許文献7および特許文献8参照)は、板面を改良土の流れに対向させて配置されている。支点を軸線S、翼本体部6a側の力点をF1、排土板101側の力点をF2、支点から力点F1までの距離をL1、支点から力点P2までの距離をL2として、力点F1にかかる荷重をP1、力点F2にかかる荷重をP2とすると、従来の排土板101と本実施形態の付着落とし翼6の翼本体部6aとを比較すると、翼本体部6aに働くモーメントM1=L1×P1と排土板101に働くモーメントM2=L2×P2では、L1<L2が明かであることから、M1<M2の関係が成立する。つまり、排土板101には、掘削・撹拌軸1を回転させたときに改良土を介して排土板101を掘削・撹拌軸1の軸心を中心に回転させようとする力がより作用することになる。
さらに、従来の排土板101は、板の両側端面が掘削・撹拌軸1の外周円の半径方向の直線に沿い、板面が改良土の流れ方向を向くように配置されていることから、板の側端面よりも広い面積の板面には改良土の付着および掘削・撹拌軸1の周囲から排土板101により削られた付着土の再付着が生じやすい。図10(b)にハッチングで示すように、排土板101によりそぎ落としきれなかった付着土G1が、排土板101と掘削・撹拌軸1との間の隙間に残るが、このような掘削・撹拌軸1周りの付着土G1が排土板101の付着土G2と一体となり、掘削・撹拌軸1の回転に抵抗できなくなる。その結果、第2撹拌翼5の翼端部と掘削穴の周辺地盤との係合が外れ、ボス部7に支持された部材も土塊とともに共回りする状態になりかねない。
本実施形態に係る付着落とし翼6では、翼本体部6a(直線板部11)は、板の両側端が掘削・撹拌軸1から所定の距離だけ離隔した掘削・撹拌軸1の外周円と同心円となる円周上に位置し、板面よりも表面積が小さい板の側端面が改良土の流れ方向を向くように配置されている。このため、翼本体部6aに付着する付着土G3は、従来よりも大幅に少なくなる。したがって、共回り現象が防止される。
さらに、従来の排土板101の掘削・撹拌軸1に対する配置では、荷重P2が弱軸方向の荷重となり、曲げに弱く破損しやすい。これに対し、付着落とし翼6の翼本体部6aの配置では、荷重P1が強軸方向の荷重となり、曲げに強く翼本体部6aの破損が防止される。
図10(c)は、図10(b)に矩形で囲ったD領域を拡大した図である。図10(c)においては、付着落とし翼6の翼本体部6aの断面形状が、図9に示したように、掘削・撹拌軸1の回転方向を向く側端に、翼長方向に亘って翼本体部6aの外側面6bに連なるテーパ面6cが形成された形状の場合を例に示している。図10(c)に示すように、テーパ面6cを設けることで、翼本体部6aにおける付着土G4の量を、二点鎖線で示す断面長方形の側端面に付着する付着土G3よりも少なくすることができる。
付着落とし翼6の翼本体部6aの横断面形状の他の変形例について、図11を参照してさらに説明する。なお、図11において、X方向は横幅W2に沿う方向であり、Y方向は縦幅W1に沿う方向である。
付着落とし翼6の翼本体部6aの横断面形状は、図9を参照して説明したように、横幅W2が縦幅W1以上であり、かつ、横幅W2が掘削・撹拌軸1または円筒部材(ボス部7)の外周円における中心角が90度の円弧の弦の長さ以下の範囲で、種々の変更が可能である。また、付着落とし翼6の翼幅、翼厚、形状は、適用地盤の地質に合わせて適宜選択することができる。
例えば、付着落とし翼6の翼本体部6a、すなわち翼板部分を構成する部材、の横断面形状は、長方形(図11(a))、正方形(図11(b))、三角形(図11(c),(d))、多角形、台形、円形(図11(g))、半円形(図11(e),(f))、馬蹄形、三日月形などであってもよい。より具体的には、横断面形状が、長方形(図11(a))の場合、縦幅W1を15mmとし、横幅W2を40mm~60mmとすることができる。横断面形状が、正方形(図11(b))の場合、縦幅W1を25mmとし、横幅W2を25mmとすることができる。横断面形状が、円形(図11(g))の場合、縦幅W1を20mmとし、横幅W2を20mmとすることができる。横断面形状が、三角形(図11(c),(d))の場合、縦幅W1を20mmとし、横幅W2を40mm~60mmとすることができる。横断面形状が、半円形(図11(e),(f))、の場合、縦幅W1を15mmとし、横幅W2を40mm~60mmとすることができる。なお、図11(c)のように、薄板をL字状に曲げ加工して断面外形を三角形状としたり、図11(e)のように、薄板を略U字状に曲げ加工して断面外形を半円形とした場合には、翼本体部6aの重量を軽量化することができる。
また、板材を掘削・撹拌軸1またはボス部7の外周円の円弧に沿わせて、横断面形状の横幅W2が、軸線Sを中心とする外周円における中心角が90度の円弧の弦の長さ以下となるように曲げ加工したものを翼本体部6aに採用することもできる(図9参照)。
また、付着落とし翼6の翼本体部6aの断面形状としては、回転方向に対して抵抗の少ない形状のものが好ましい。付着落とし翼6の翼本体部6aの横断面形状を、図11(h)に示すように、正方形の4つの角部のうち掘削・撹拌軸1から遠い方となる2つの角部に対して、面取り加工を施すなどしてテーパ面を設けた形状とすることにより、掘削・撹拌軸1の外周面から削られた付着土が翼本体部6aによってせき止められることなく、スムーズに流れるようになる。なお、付着落とし翼6の翼本体部6aの横断面形状として、角部となる部分にはテーパ面を設ける加工の他に、角丸め等を施してもよい。
図11(b),(g)のように、翼本体部6aの断面形状として縦幅W1=横幅W2となる丸棒や角棒を翼本体部6aの部材として採用することができる。さらに、横断面形状を、縦幅W1の長さを横幅W2の長さより短い、板厚の薄いもとのすることにより、改良土の流れに正対する縦幅W1側の面積を小さくし、掘削・撹拌軸1の回転により翼本体部6aが改良土を介して受ける荷重をより小さくすることができる。縦幅W1側の面を改良土の流れに正対させる翼本体部6aの配置においては、縦幅W1が横幅W2以下であれば、少なくとも翼本体部6aに対して弱軸方向の荷重が作用することがないため、十分な強度を確保することができる。
なお、図9に実線で示した翼本体部6aの横断面形状および図11(h)の横断面形状では、掘削・撹拌軸1が時計回りまたは反時計回りのどちらに回転しても、テーパ面により改良土の流れに対する抵抗をより低減するように、図9および図11の紙面の左右対称な位置にテーパ面を設けている。
本実施形態に係る付着落とし翼6の翼本体部6aは、鋼材を用いて形成しているがこれに限定されない。付着落とし翼6は、礫等が当たっても容易に破壊されない強度をもつ材であれば、金属、プラスチック等により形成することができる。付着落とし翼6は、例えば、鋳造等による一体成型で製作してもよく、溶接、曲げ加工等、材料に応じた加工方法により制作してもよい。
<3.第1実施形態に係る掘削・撹拌具の変形例>
本発明の第1実施形態に係る掘削・撹拌具A1の変形例について説明する。
[第1の変形例]
図12に示すように、第1の変形例の掘削・撹拌具A1は、付着落とし翼6を有する構成において、直線板部11の上下端を一対の補助部材13,13により保持させている。なお、図12(a)は、付着落とし翼6のボス部7への取り付け部分を示す部分的正面図であり、図12(b)は、その部分的側面図である。
上下一対の補助部材13,13は、例えば線材等を略楕円状に形成したものである。本変形例では、補助部材13の形状を掘削・撹拌軸1に遊嵌可能な形状とし、付着落とし翼6に対して個別に設けている。
なお、2個の付着落とし翼6を掘削・撹拌軸1の軸線Sを中心に点対称に設けた場合には、線材を略環状に形成し、一対の補助部材13,13を、付着落とし翼6のそれぞれの対応する位置に接続してもよい。すなわち、掘削・撹拌軸1に直接的に係合しない構成で、一対の補助部材13,13により付着落とし翼6の上下端部分を支持させるようにしてもよい。より具体的には、上側の補助部材63は、掘削・撹拌軸1の軸線Sを中心に点対称に配置された付着落とし翼6の直線板部11の上端部同士を連結し、下側の補助部材13は、掘削・撹拌軸1の軸線Sを中心に点対称に配置された付着落とし翼6の直線板部11の下端部同士を連結するようにしてもよい。
第1の変形例の構成によれば、補助部材13,13を介して付着落とし翼6の直線板部11の上下端を掘削・撹拌軸1に接続したことにより、例えば、粗礫やそれより大きい石が当たることにより直線板部11の端部が外周方向に向かって変形することを回避することができる。
[第2の変形例]
図13および図14に示すように、第2の変形例の掘削・撹拌具A1は、付着落とし翼6とは形状の異なる付着落とし翼16を有する。
第2の変形例において、付着落とし翼16は、掘削・撹拌軸1の軸線S方向を長辺とする縦長状の直線板部17と、直線板部17の上下端部に段部を設けて延設された端板部18a,18bと、直線板部17の背面側に設けられた接続部19を有する。端板部18a,18bは、ストッパー8,8のフランジの掘削・撹拌軸1の外周面から径方向の突出長さよりも掘削・撹拌軸1に近づけて設けられ、側面視で直線板部17に対して段状に設けられた部分である。
付着落とし翼16は、翼長方向を掘削・撹拌軸1の軸線Sに平行として設けられている。付着落とし翼16の直線板部17と上下の端板部18a,18bとを合わせた掘削・撹拌軸1に沿う翼長は、掘削翼2および第2撹拌翼5にその両端部が接触しない長さに設定されている。また、付着落とし翼6の直線板部17の掘削・撹拌軸1に沿った長さは、掘削・撹拌軸1における上下一対のストッパー8,8の離間距離よりも長く設定されている。付着落とし翼16は、接続部19を溶接またはネジ締結によりボス部7に固定することにより、第2撹拌翼5と同様に、掘削・撹拌軸1に対して回転自在に支持される。
なお、上側の端板部18aは、上側のストッパー8と第1撹拌翼4との離間距離を考慮して長さが設定される。また、下側の端板部18bは、下側のストッパー8と掘削翼2との離間距離を考慮して長さが設定される。すなわち、一対の端板部18a,18aは、それぞれ同じ長さでなくてもよい。
第2の変形例の構成によれば、付着落とし翼16を、掘削・撹拌軸1に沿って配置することで、掘削翼2と第1撹拌翼4の掘削・撹拌軸1の近傍において、付着落とし翼16が掘削・撹拌軸1に付着した、ボス部7の外周よりも径が小さい掘削・撹拌軸1への改良土の付着を効果的に防止することができる。
また、第2の変形例の構成によれば、付着落とし翼16の上下端に直線板部17よりも掘削・撹拌軸1側に近づけて配置される端板部18を設けたことから、例えば、粗礫やそれより大きい石が当たることによる付着落とし翼16の翼板の角部の変形を回避することができる。
[第3の変形例]
図15に示すように、第3の変形例の掘削・撹拌具A1は、付着落とし翼6とは形状の異なる付着落とし翼26を有する。なお、図15(a)は、付着落とし翼26のボス部7への取り付け部分を示す部分的正面図であり、図15(b)は、その部分的側面図である。
第3の変形例において、付着落とし翼26は、掘削・撹拌軸1の軸線S方向を長辺とする縦長状の直線板部27と、直線板部27の上端に外周側に向けて突設された上側突出部28aと、直線板部27の下端に外周側に突出させた下側突出部28bと、直線板部27の背面側に設けられた接続部29とから成る。
付着落とし翼26の直線板部27の掘削・撹拌軸1に沿った長さは、掘削・撹拌軸1における上下一対のストッパー8,8の離間距離よりも長く、掘削翼2と最も下側に位置する第1撹拌翼4との離間距離よりも短く設定されている。
上側突出部28aと下側突出部28bは、直線板部27の上下端から掘削・撹拌軸1の径方向外向きに水平に設けられている。上側突出部28aと下側突出部28bの長さは、特に限定されないが、例えばそれぞれの先端が、掘削・撹拌軸1の軸線Sから掘削翼2の翼長により規定される掘削穴の半径の3分の1から2分の1程度の位置に到達する長さに設定される。なお、図15(b)に示すように、本変形例では、上側突出部28aと下側突出部28bの長さを異なる長さとしているが、両者は同一の長さであってもよい。また、上側突出部28aまたは下側突出部28bのどちらか一方を省略してもよい。
付着落とし翼26は、接続部29を溶接またはネジ締結によりボス部7に固定することにより、第2撹拌翼5と同様に、掘削・撹拌軸1に対して回転自在に支持される。
第3の変形例の構成によれば、付着落とし翼26が突出部28a,28bを有することから、掘削・撹拌軸1近傍において、突出部28a,28bにより改良土をせん断し、撹拌効率を向上させることができる。
[第4の変形例]
図16に示すように、第4の変形例の掘削・撹拌具A1は、付着落とし翼6とは形状の異なる付着落とし翼31を有する。なお、図16(a)は、付着落とし翼31のボス部7への取り付け部分を示す部分的正面図であり、図16(b)は、その部分的側面図である。
第4の変形例において、付着落とし翼31は、第2の変形例の付着落とし翼16を上下の中央で分離した形状とも言える。付着落とし翼31は、上下一対の翼部31a,31bにより構成されている。上下一対の翼部31a,31bの各々は、掘削・撹拌軸1の軸線Sに沿った方向を長辺とする縦長状の直線板部32と、直線板部32の一端に直線板部32よりも掘削・撹拌軸1に近づくように段部を設けて延設された端板部33と、直線板部32の他端(基端)に直線板部32の板面と略直角となるように掘削・撹拌軸1に向けて設けられた接続部25を有する。
付着落とし翼31は、各翼部31a,31bの接続部25を溶接またはネジ締結によりボス部7に固定することにより、第2撹拌翼5と同様に、掘削・撹拌軸1に対して回転自在に支持される。また、各翼部31a,31bを、接続部25が向き合うように上下対称に配置することより、上下の翼部31a,31bにおける端板部33のそれぞれが、ストッパー8,8のフランジの掘削・撹拌軸1の外周面から径方向の突出長さよりも掘削・撹拌軸1に近づけて設けられる。
また、第4の変形例の構成によれば、第2の変形例と同様に付着落とし翼31に直線板部32よりも掘削・撹拌軸1側に近づけて配置される端板部33を設けたことから、例えば、粗礫やそれより大きい石が当たることによる付着落とし翼16の翼板の角部の変形を回避することができる。
[第5の変形例]
図17に示すように、第4の変形例の掘削・撹拌具A1は、付着落とし翼6とは形状の異なる付着落とし翼34を有する。なお、図17(a)は、付着落とし翼34のボス部7への取り付け部分を示す部分的正面図であり、図17(b)は、その部分的側面図である。
第5の変形例において、付着落とし翼34は、第4の変形例の付着落とし翼31と同様に、上下一対の翼部34a,34bにより構成されている。上下一対の翼部34a,34bの各々は、正面視において掘削・撹拌軸1の軸線S方向を長辺とする縦長状の形状を有し、側面視において、先端が掘削・撹拌軸1に近づくように傾斜した傾斜板部35と、傾斜板部35に傾斜板部35の板面に対して鋭角となるように掘削・撹拌軸1に向けて設けられた接続部39を有する。
付着落とし翼34は、各翼部34a,34bの接続部39を溶接またはネジ締結によりボス部7に固定することにより、第2撹拌翼5と同様に、掘削・撹拌軸1に対して回転自在に支持される。また、各翼部34a,34bを、互いの接続部39が向き合うように上下対称に配置することより、上下の翼部31a,31bにおける傾斜板部35のそれぞれの先端が、ストッパー8,8のフランジの掘削・撹拌軸1の外周面から径方向の突出長さよりも掘削・撹拌軸1に近づく。
付着落とし翼34の傾斜板部35のように、翼板となる部材は、掘削・撹拌軸1に対して傾斜して設けてもよい。
[第6の変形例]
図18に示すように、第6の変形例の掘削・撹拌具A1は、付着落とし翼6とは形状の異なる付着落とし翼36を有する。
第6の変形例において、付着落とし翼36は、ボス部7の外周面に突設された支軸45に枢着された揺動板部37と、揺動板部37の一端側に接続された一対のバネ38,38とを有する。揺動板部37は、略長方形の板状の部材であり、一端を支軸45に支持される固定端、他端を自由端として構成されている。揺動板部37の自由端側は、角丸め加工等により半円形に形成されている。揺動板部37の支軸45から自由端の端縁までの長さは、少なくともストッパー8を覆う長さである。また、揺動板部37の支軸45から自由端の端縁までの長さは、掘削翼2または第1撹拌翼4に接触しない長さとしている。
一対のバネ38,38は、支軸45より固定端の端縁に近い位置に支軸45を挟んで左右対称に設けられる。一対のバネ38,38のそれぞれは、揺動板部37とボス部7との間に介在して、揺動板部37を、その長さ方向を掘削・撹拌軸1の軸線Sに沿う姿勢に保持している。揺動板部37が粗礫等に押されて支軸45を中心に回動(図18の矢印R)した場合、一対のバネ38,38のうち一方のバネ38が圧縮方向の荷重を受け止め、他方のバネ38が伸長する。揺動板部37への押圧が解除されると、バネの付勢力により、揺動板部37が元の姿勢に復帰する。
本変形例においては、このような構成の2つの付着落とし翼36が、図18において紙面左側となる付着落とし翼36では、自由端を上向きにし、紙面右側となる揺動板部37では、自由端を下向きにして、それぞれが支軸45と一対のバネ38,38を介してボス部7に配置されている。
第6の変形例の構成によれば、粗礫等の衝突に対して、バネ38,38により衝撃を吸収しつつ支軸45を中心に揺動板部37を矢印Rで示すように揺動可能であることから、揺動板部37の破損、すなわち、付着落とし翼36の破損を回避することができる。
[第7の変形例]
図19に示すように、第7の変形例の掘削・撹拌具A1においては、付着落とし翼46を有する。本変形例は、付着落とし翼36と同形状の揺動板部37を有している。一方で、本変形例では、2つの揺動板部37を、各揺動板部37を支持する支軸45とともに掘削・撹拌軸1の軸線Sに平行な同一直線上に配置して、単一のバネ48により2つの揺動板部37を連結している。
付着落とし翼46は、2つの揺動板部37の互いに対向する固定端の間に、単一のバネ48を介在させ、支軸45にそれぞれ支持された2つの揺動板部37を掘削・撹拌軸1の軸線Sに沿った姿勢に保持させている。
揺動板部37が粗礫等に押されて支軸45を中心に揺動(図19の矢印R)した場合、バネ48が圧縮方向の荷重を受け止めて変形するとともに、揺動板部37への押圧が解除されると、バネの付勢力により、揺動板部37が元の姿勢に復帰する。
第7の変形例の構成によれば、粗礫等の衝突に対して、バネにより衝撃を吸収しつつ支軸45を中心に揺動板部37を矢印Rで示すように揺動可能であることから、揺動板部37の破損、すなわち、付着落とし翼46の破損を回避することができる。
<3.第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態に係る掘削・撹拌具A2について説明する。なお、第1実施形態と同等の部材は同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第2実施形態においては、図20に示すように、掘削・撹拌具A2が、掘削・撹拌軸1と、地盤を掘削する掘削翼2と、掘削・撹拌軸1の外周面に一端が支持された第1撹拌翼4と、掘削・撹拌軸1に遊嵌されたボス部7に一端が支持された複数の第2撹拌翼5とを有している点は、第1実施形態と同様である。
一方で、第2実施形態においては、翼長方向を掘削・撹拌軸1に沿って設けられる付着落とし翼56を、第2撹拌翼5に支持させた点において、第1実施形態と異なる。
付着落とし翼56は、少なくとも掘削・撹拌軸1における上下一対のストッパー8,8の離間距離よりも長い長さを有する棒状体である。また、付着落とし翼56の翼長は、掘削翼2および第1撹拌翼4との接触を避けるため、掘削翼2と最も低い位置に配置された第1撹拌翼4との離間距離よりも短い長さに設定されている。
付着落とし翼56は、特に接続部を設けることなく、棒状体の中央付近の側端を第2撹拌翼5の翼板面に固定している。付着落とし翼56の固定方法としては、溶接や締結金具を用いたネジ締結等を採用することができる。つまり、付着落とし翼56は、第2撹拌翼5を介してボス部7に支持されていることになる。したがって、付着落とし翼56は掘削・撹拌軸1に沿って掘削・撹拌軸1に沿って配置されるとともに、掘削・撹拌軸1に対して回転自在に支持される。
このような構成の付着落とし翼56は、掘削・撹拌軸1に沿って配置されることで、掘削・撹拌軸1に付着した改良土を落とす機能を発揮する。この機能の発揮においては、付着落とし翼56が、軸線Sを中心に点対称な位置関係にある2枚の第2撹拌翼5のいずれか一方に1つ配置されていれば足りるが、2枚の第2撹拌翼5のそれぞれに設けてもよい。
第2撹拌翼5における付着落とし翼56の取付位置について、さらに説明する。図21および図22は、付着落とし翼56の配置を模式的に示す図である。図21は、図20におけるE-E線で切断した横断面図であり図22は側面図である。なお、これらの図において、仮想的な掘削穴の壁面9を二点鎖線で示し、付着落とし翼56の変形例である付着落とし翼57を掘削穴の壁面9を示す二点鎖線とはピッチの異なる二点鎖線で示している。図16においては掘削翼2の図示を省略し、ボス部7の外周面からの離間距離dが150mmとなる仮想円Pを破線で、半径が掘削翼2の回転半径rの1/2の仮想円Qを一点鎖線でそれぞれ示している。
第2実施形態における第2撹拌翼5を介してボス部7に支持される付着落とし翼56についても、図7および図8を参照して説明した付着落とし翼の配置と同様に、平面視において掘削・撹拌軸1の軸心(軸線S)を中心とし掘削・撹拌軸1の外周面またはボス部7の外周面からの離間距離dが150mmの仮想円Pまたは半径が掘削翼2の回転半径の1/2の仮想円Qどちらか大きい方の円内に配置される。なお、ここでの円内とは、付着落とし翼56の掘削・撹拌軸1に最も近い部分(面)が円周上に位置している状態を含む(図21および図22参照)。
また、付着落とし翼56の配置は、仮想円Pまたは仮想円Qのどちらか大きい方の円により規定される所定の範囲内で、適用地盤および改良径に応じて自由に変更可能であることは勿論である。
また、付着落とし翼56は単一の部材により構成されているが、図22に二点鎖線で示した付着落とし翼57のように、上翼部57aと下翼部57bの2部材により付着落とし翼57を構成してもよい。このような場合にも、仮想円Pまたは仮想円Qのどちらか大きい方の円により規定される所定の範囲内に付着落とし翼が配置される。
第2実施形態の構成によれば、第2撹拌翼5に付着落とし翼56,57を取り付けることから、ボス部7と翼板との離間距離に相当する長さの接続部を設ける必要がない極めて簡易な構成とすることができ、付着落とし翼の製作コストが低減される。
<4.第3実施形態>
次に本発明の第3実施形態に係る掘削・撹拌具A3について説明する。なお、第1実施形態と同等の部材は同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第3実施形態においては、図23および図24に示すように、掘削・撹拌具A1,A2におけるボス部7よりも上下方向の長さが長いボス部77を有し、上下一対のストッパー8,8のそれぞれに対して、付着落とし翼66を設けている点において、第1実施形態および第2実施形態と異なっている。
付着落とし翼66は、方形状の板状体である直線板部67と、直線板部67の一端に略直角に接続された接続部68を有する。直線板部67と接続部68とは一体的に形成され、付着落とし翼66は、側面視(図24参照)において略L字形状を有する。
付着落とし翼66は、掘削・撹拌軸1に固定された上下一対のストッパー8,8に設けられることから、掘削・撹拌軸1に遊嵌されたボス部77に支持された第2撹拌翼5の回転と同期せず、掘削・撹拌軸1の回転と一体として回転する。したがって、付着落とし翼66の直線板部67の長さは、それぞれを、上下一対のストッパー8,8のそれぞれに取り付けたときに、直線板部67の先端がボス部77の上下方向の中央付近の外周面に支持された第2撹拌翼5の回転を妨げない長さとしている。
上下のストッパー8,8にそれぞれ取り付けた付着落とし翼66の直線板部67,67は、先端部の間に、図24に破線で示した第2撹拌翼5との衝突を避けるための間隔をあけて、掘削・撹拌軸1に沿って設けられる。
なお、本実施形態では、2つの付着落とし翼66を掘削・撹拌軸1の軸線Sに平行な同一直線上に上下に対を成すように配置しているが、これに限定されない。2つの付着落とし翼66は、第2撹拌翼5の上下において異なる位置に配置してもよい。
本実施形態においては、第2撹拌翼5の先端が掘削穴の壁面9よりも外側となる地盤に食い込むことで、第2撹拌翼5およびボス部77が静止状態となり、付着落とし翼66が掘削・撹拌軸1の回転と一体として回転する。つまり、ボス部77の外周面から所定の距離離隔した位置でボス部77の周りを回ることから、ボス部77に付着した改良土を確実に落とすことができる。
このような構成の付着落とし翼66は、第2撹拌翼5と異なる動き(回転)をする部材であるストッパー8、8を介し掘削・撹拌軸1に支持されることで、上下方向における掘削翼2と第1撹拌翼4の間の掘削・撹拌軸1の近傍において、掘削・撹拌軸1に付着した改良土を落とす機能を発揮する。すなわち、付着落とし翼は、第1撹拌翼4と第2撹拌翼5のいずれか一方と異なる動き(回転)をするように設けることで改良土を落とす機能を発揮させ、共回りを防止することが可能である。
<5.第4実施形態>
次に本発明の第4実施形態に係る掘削・撹拌具A4について説明する。なお、第1実施形態と同等の部材は同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第4実施形態においては、図25に示すように、掘削・撹拌具A4は上下方向に延伸する掘削・撹拌軸1を平行に2本備え、2本の掘削・撹拌軸1が互いに反対方向に回転されるよう構成された二軸型の掘削・撹拌具である。
掘削・撹拌具A4は、各掘削・撹拌軸1に対して、下端側から、掘削翼2、ボス部7、第1撹拌翼4、ボス部7、第1撹拌翼4の順に配置した構成を有する。掘削・撹拌具A4は、各掘削・撹拌軸1について、2つのボス部7を有し、2つの掘削・撹拌軸1の同一高さ位置のボス部7間には振れ止め板41が架設されている。
振れ止め板41は、ボス部7を介して2つの掘削・撹拌軸1を相互に連結することにより、2つの掘削・撹拌軸1の相対位置を一定に保持するためのものである。振れ止め板41は、第2撹拌翼5と同様の翼幅および翼厚を有し、帯板状に形成されている。振れ止め板41の両端部は、各ボス部7において、第2撹拌翼5の支持位置に対して180度反対の位置に配置されている。したがって、振れ止め板41は、第2撹拌翼5と同様に、共回り防止翼として機能するとともに、改良土に対してせん断作用を及ぼす。
掘削・撹拌具A4には、各ボス部7に対して、第1実施形態で説明した付着落とし翼6が配置されている。
本実施形態においては、各掘削・撹拌軸1に遊嵌されたボス部7が振れ止め板41により連結されていることから、回転する掘削・撹拌軸1に対して第2撹拌翼5およびボス部7は静止状態となる。静止した付着落とし翼66に対して、掘削・撹拌軸1が回転することで、掘削・撹拌軸1に付着した改良土を確実に落とすことができる。
このような構成の掘削・撹拌具A4では、付着落とし翼66をその翼長方向を掘削・撹拌軸1の軸方向に平行な方向として、掘削・撹拌軸1に沿って配置することで、掘削翼2と第1撹拌翼4との間の掘削・撹拌軸1の近傍において、付着落とし翼66に掘削・撹拌軸1に付着した改良土を落とす機能を発揮させている。
<6.第5実施形態>
次に本発明の第5実施形態に係る掘削・撹拌具A5について説明する。なお、第1実施形態および第3実施形態と同等の部材は同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第5実施形態においては、図26に示すように、掘削・撹拌具A5は上下方向に延伸する掘削・撹拌軸1と、当該掘削・撹拌軸1に被嵌された外軸51とを有し、掘削・撹拌軸1と外軸のそれぞれに、互いに反対方向の回転が伝達されるよう構成された、二重軸型の掘削・撹拌具である。
また、掘削・撹拌具A5は、帯板弧状に形成された第2撹拌翼52を有する点において、第1~第4実施形態に係る掘削・撹拌具A1~A4と異なる。掘削・撹拌具A5は、掘削・撹拌軸1に対して、下端側から、掘削翼2、ボス部7、第1撹拌翼4、外軸51の順に配置した構成を有する。
第2撹拌翼52は、弧状の外形を成す帯板状の翼本体部52aと、屈曲部を経て外軸51およびボス部7に向けて伸延し、外軸51およびボス部7の外周面にそれぞれ連結される上下一対の翼支持部52b,52bとを有する。すなわち、本実施形態においては、外軸51はボス部7と同様に、少なくとも第2撹拌翼52の一端を支持する支持部材となる。掘削・撹拌軸1に遊嵌されたボス部7は、第2撹拌翼52を介して外軸51に接続されることにより、外軸51と一体として回転する。
掘削・撹拌具A5には、ボス部7の外周面に第1実施形態で説明した付着落とし翼6が配置されるとともに、第2撹拌翼52を支持する支持部材としての外軸51の外周面に、第3実施形態で説明した付着落とし翼66が配置されている。
第1撹拌翼4は、翼長を第2撹拌翼52の翼本体部52aに接触しない長さとし、掘削・撹拌軸1において、ボス部7に設けられた付着落とし翼6の上端と、外軸51に設けられた付着落とし翼66の下端との間の外周面に、その一端が支持されている。なお、図22においては、第1撹拌翼4を、掘削・撹拌軸1の軸線Sを中心に略90度回転させたときの位置を破線で示している。
掘削・撹拌軸1と外軸51とが互いに逆方向に回転することにより、掘削翼2および第1撹拌翼4の回転方向(例えば時計回り)に対して、第2撹拌翼5および付着落とし翼6,66が逆方向(例えば反時計回り)に回転することになる。
なお、本実施形態では、ボス部7における付着落とし翼6と、外軸51における付着落とし翼66とを掘削・撹拌軸1の軸線Sに平行な同一直線上に配置しているが、これに限定されない。付着落とし翼6および付着落とし翼66は、第2撹拌翼5の上下において軸回りの異なる位置に配置してもよい。
このような構成の掘削・撹拌具A5では、付着落とし翼6,66をその翼長方向を掘削・撹拌軸1の軸方向に平行な方向として、掘削・撹拌軸1に沿って配置することで、掘削翼2と第1撹拌翼4との間の掘削・撹拌軸1の近傍において、付着落とし翼6,66に掘削・撹拌軸1に付着した改良土を落とす機能を発揮させている。
<7.第6実施形態>
次に本発明の第6実施形態に係る掘削・撹拌具A6について説明する。なお、第1実施形態および第5実施形態と同等の部材は同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
第6実施形態においては、図27に示すように、掘削・撹拌具A6は、図26を参照して説明した掘削・撹拌具A5と同様に、上下方向に延伸する掘削・撹拌軸1と、当該掘削・撹拌軸1に被嵌された外軸51とを有し、掘削・撹拌軸1と外軸51のそれぞれに、互いに反対方向の回転が伝達されるよう構成された、二重軸型の掘削・撹拌具である。
第2撹拌翼55は、第2撹拌翼52を支持する支持部材としての外軸51の外周面に配置されている。また、外軸51の外周面には、第1撹拌翼4および、第3実施形態で説明した付着落とし翼66が支持されている。
第2撹拌翼55は、第1~第3実施形態で説明した第2撹拌翼5と異なり、掘削・撹拌軸1の軸線Sからの長さが掘削翼2のそれと同等となる長さとしている。これにより、第2撹拌翼55は先端が掘削穴の壁面9に突き刺さることなく、外軸51の回転と一体として回転する。
掘削・撹拌軸1と外軸51とが互いに逆方向に回転することにより、掘削翼2の回転方向(例えば時計回り)に対して、第1撹拌翼4、第2撹拌翼55および付着落とし翼66が逆方向(例えば反時計回り)に回転することになる。
このような構成の掘削・撹拌具A6では、付着落とし翼66をその翼長方向を掘削・撹拌軸1の軸方向に平行な方向として、掘削・撹拌軸1に沿って配置することで、掘削翼2と第1撹拌翼4との間の掘削・撹拌軸1の近傍において、掘削・撹拌軸1に付着した改良土を落とす付着落とし翼として機能させている。
以上説明してきたように、本発明によれば、掘削・撹拌具(A1,A2,A3,A4,A5,A6)に、付着落とし翼(6,16,26,31,34,36,46,56,66)を掘削・撹拌軸1に沿って設けることで、掘削・撹拌軸1に付着する改良土を落とし、共回りを確実に防止することができる。これにより掘削土と改良材との撹拌効率が向上し、改良材が均一に分散した柱状改良体を得ることができ、柱状改良体の品質を向上させることができる。
以上のような構成を備えた本実施形態の掘削・撹拌具(A1,A2,A3,A4,A5,A6)は、次のような構成を備えていると言える。すなわち、掘削・撹拌具(A1,A2,A3,A4,A5,A6)は、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸1と、掘削・撹拌軸1の下端に設けられた掘削翼2と、掘削翼2の上方に配置された複数の撹拌翼(第1撹拌翼4、第2撹拌翼5)と、掘削・撹拌軸1が回転自在に挿入された筒状部材(ボス部7,77、外軸51)と、翼長方向を掘削・撹拌軸1の軸線Sに沿って伸延した翼本体部(6a、直線板部11,17,32,傾斜板部35、揺動板部37、付着落とし翼56、上翼部57a、下翼部57b、直線板部67)を有し、掘削・撹拌軸1に付着する改良土を落とすための付着落とし翼(6,16,26,31,34,36,46,56,66)と、を備える。
ここで、円筒部材には、掘削・撹拌軸1が回転自在に挿入される構成のものであり、掘削・撹拌軸1に遊嵌されたボス部7,77、掘削・撹拌軸1に外嵌されて掘削・撹拌軸1と相対回転する外軸51が対応する構成である。
また、本実施形態に係る掘削・撹拌具(A1,A2,A3,A4,A5,A6)では、付着落とし翼(6,16,26,31,34,36,46,56,66)において翼本体部(6a、直線板部11,17,32,傾斜板部35、揺動板部37、付着落とし翼56、上翼部57a、下翼部57b、直線板部67)の横断面形状は、横断面平面において、掘削・撹拌軸1の外周円の半径方向の直線y1に沿う方向の幅を縦幅W1とし、外周円の半径方向の直線に直交する直線x1に沿う方向の幅を横幅W2として、横幅W2が縦幅W1以上であり、かつ、横幅W2が掘削・撹拌軸1または円筒部材(ボス部7,77、外軸51)の外周円における中心角が90度の円弧の弦の長さ以下である。
このような構成によれば、翼本体部(6a、直線板部11,17,32,傾斜板部35、揺動板部37、付着落とし翼56、上翼部57a、下翼部57b、直線板部67)は、縦幅W1側の端面で改良土の流れに対向することになるため、翼本体部が弱軸方向で荷重を受けることがなく、翼本体部の破損を回避できるとともに、効率的に掘削・撹拌軸1または円筒部材に付着した付着土を削り落とし共回り現象を防止することができる。
また、本実施形態に係る掘削・撹拌具(A1,A2,A3,A4,A5,A6)では、付着落とし翼(6,16,26,31,34,36,46,56,66)は、翼本体部の横幅W2が縦幅W1より長いものである。
このような構成によれば、付着落とし翼の翼本体部(6a、直線板部11,17,32,傾斜板部35、揺動板部37、付着落とし翼56、上翼部57a、下翼部57b、直線板部67)は常に強軸方向で荷重を受けることになるため、翼本体部の破損をより防止することができる。
また、本実施形態に係る掘削・撹拌具(A1,A2,A3,A4,A5,A6)では、付着落とし翼(6,16,26,31,34,36,46,56,66)の翼本体部(6a、直線板部11,17,32,傾斜板部35、揺動板部37、付着落とし翼56、上翼部57a、下翼部57b、直線板部67)において、掘削・撹拌軸1の回転方向を向く側端には翼長方向に亘って翼本体部の外側面に連なるテーパ面6cが形成されている。
このような構成によれば、翼本体部において、改良土の流れに対向する縦幅W1側の端面の面積を少なくし、テーパ面6cにより改良土の流れを受け流すことにより、翼本体部に係る荷重を低減することができる。したがって、翼本体部の破損をより防止することができるとともに、翼本体部の縦幅W1側の端面の掘削・撹拌軸1を向く側では確実に掘削・撹拌軸1および筒状部材への付着土を削り、共回り現象を防止することができる。
また、本実施形態に係る掘削・撹拌具(A1,A2,A3,A4,A5,A6)では、付着落とし翼(6,16,26,31,34,36,46,56,66)が、平面視において掘削・撹拌軸1の軸心(軸線S)を中心とし掘削・撹拌軸1の外周面または筒状部材の外周面からの離間距離が150mmの仮想円Pまたは半径が掘削翼2の回転半径の1/2の仮想円Qどちらか大きい方の円内に翼長方向を掘削・撹拌軸の軸線Sに沿って配置されている。
付着落とし翼(6,16,26,31,34,36,46,56,66)は、掘削・撹拌軸1または筒状部材(ボス部7,77、外軸51)に支持されているが、ここでの支持とは、掘削・撹拌軸1または筒状部材(ボス部7,77、外軸51)に直接的に支持されている場合と間接的に支持されている場合の両方を含む。つまり、付着落とし翼(6,16,26,31,34,36,46,56,66)は、掘削・撹拌軸1または筒状部材に固定されている部材を介して支持されてもよい。
また、付着落とし翼(6,16,26,31,34,36,46,56,57)は、掘削・撹拌軸1に沿った、上下のいずれか一方だけに設けてもよい。このような配置によっても、付着落とし翼(6,16,26,31,34,36,46,56,57)は、共回り現象防止、撹拌性の向上において効果を発揮する。
また、付着落とし翼(6,16,26,31,34,36,46,56,66)は、掘削翼2と掘削・撹拌軸1に支持された最下段の撹拌翼との間に設けられている。ここで掘削・撹拌軸に支持された最下段の撹拌翼には、掘削・撹拌軸1に支持されることで、掘削・撹拌軸1と一体として回転する駆動撹拌翼である第1撹拌翼4のうち、最も下に位置する第1撹拌翼4が相当する。なお、第6実施形態の掘削・撹拌具A6のように、掘削・撹拌軸が二重軸となっている場合には、外側の外軸と一体として回転する駆動撹拌翼のうち最も下に位置する撹拌翼であってもよい。
また、掘削翼2に近い深い位置ほど、削りだされた直後の掘削土と改良材の混ざり具合にムラがあり、共回り現象の原因となる掘削・撹拌軸1や円筒部材に対する付着土の肥大化が発生しやすい傾向がある。したがって、付着落とし翼(6,16,26,31,34,36,46,56,66)を掘削翼2と掘削・撹拌軸1に支持された最下段の撹拌翼との間に設けることが、共回り現象防止においては、より効果的である。
上述した各実施形態並びに変形例は、地盤改良工法として、スラリー状の改良材を供給して柱状改良体を構築する場合を例に説明したが、本発明が粉粒状の改良材を供給して柱状改良体を構築する地盤改良工法に用いられる掘削・撹拌具に適用可能であることは勿論である。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、上述した実施形態および変形例に限られず、上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。また、本発明は上述の実施の形態に限定されることはなく、本発明にかかる技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。そして、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。