この発明の要旨は、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、上下方向に伸延した掘削・撹拌軸と、上記掘削・撹拌軸の下端に支持され、地盤を掘削する掘削翼と、上記掘削・撹拌軸の外周面に支持され、上記掘削・撹拌軸と一体に回転する駆動撹拌翼と、上記掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌した少なくとも2つ以上のボス部の外周面に跨持され、外方へ膨出させて弧状に形成した弧状撹拌翼と、を備え、上記弧状撹拌翼は、上記掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する最も外側の遊動撹拌翼とし、上記弧状撹拌翼の回転中心線は上記掘削・撹拌軸の回転中心線に対して偏心した位置にあることを特徴とする掘削・撹拌具としたことにある。
具体的には、本発明にかかる掘削・撹拌具は、掘削・撹拌軸において、弧状撹拌翼が跨持される少なくとも2つ以上のボス部の遊嵌部を掘削・撹拌軸の回転中心線に対して偏心した少なくとも2つ以上の偏心部となし、各偏心部の中心軸(偏心軸線)を同一直線上に配置して弧状撹拌翼の回転中心線をなし、弧状撹拌翼の回転中心線を掘削・撹拌軸の回転中心線に対して偏心した位置としている。
すなわち、本発明にかかる掘削・撹拌具は、弧状撹拌翼の回転中心線を掘削・撹拌軸の回転中心線に対して偏心させるように構成した偏心軸構造を有し、弧状撹拌翼を掘削孔内の周辺地盤へ係合を最低限又は係合することなく不動状態とすると共に掘削孔内で起振動させることにより、共回り現象を確実に防止して掘削及び撹拌効率を向上させ、施工スピードを向上せんとするものである。
詳細については後述するが、偏心軸構造としては、掘削・撹拌軸の弧状撹拌翼の跨持される少なくとも2つ以上のボス部が遊嵌部において、掘削・撹拌軸に所定の偏心量を有した偏心内輪を備えた構造(以下、単に偏心輪構造と称す。)と、掘削・撹拌軸の中途部を掘削・撹拌軸の回転中心線に対して径方向外方へ屈曲して突出し、所定の偏心量を有した偏心軸部を形成した構造(以下、単に軸屈曲偏心軸構造と称す。)と、に大別される。
ここで、掘削・撹拌軸や、これに支持される駆動撹拌翼や遊動撹拌翼といった各撹拌翼の形状、各撹拌翼の掘削・撹拌軸への配置構成については、その一例として以下のような実施形態が考えられる。図17〜図21は、掘削・撹拌軸1や、駆動撹拌翼3や遊動撹拌翼6などの各撹拌翼の形状、各撹拌翼の掘削・撹拌軸への配置構成の一例を示す説明図である。
まず、本発明にかかる掘削・撹拌具Aにおいて、各撹拌翼のうち弧状撹拌翼の形状における「弧状」とは、図18〜図21に示すように角部を有しない略円弧状の他に、一つの角部を有する略三角形弧状、二つの角部を有する略四角形弧状、さらには、角部を三つ以上有する略多角形状等も含まれる。
また、「弧状」には、図17(a)及び図17(b)に示すように角部で翼端が突出した翼形状も含み、角部としてはR状に面取りされているものも含まれる。
また、「弧状」の各形状は、側面視において、撹拌翼が掘削・撹拌軸1の外周面又は同掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して支持される部位よりも軸方向上側又は/及び下側に膨出させた形状をも含む。
また、各撹拌翼の形状は、上述の弧状に限定されることはなく、例えば、図18〜図20に示すように、棒状、板状、帯板状、H字形状、T字形状、L字形状も含まれる。
また、各撹拌翼の部材断面は、矩形、菱形、三角形、多角形、台形、円形、楕円形などであってもよい。
また、各撹拌翼の「板状」とは、幅広の板面を掘削・撹拌軸の軸方向に向けた略水平板状、板面を掘削・撹拌軸の周方向に向けた略鉛直板状であってもよく、板厚や形状おいて限定されることはない。
また、撹拌翼は複数あってもよく、掘削・撹拌軸の軸方向視で中心角において等角度間隔を隔てて、例えば180度、120度、90度、60度間隔等、軸中心に等間隔角度で放射状に配設してもよい。
また、掘削・撹拌軸1は、図21に示すように同一軸芯で相対回転駆動する内軸100と外軸110の二重軸構造を有するように構成されていてもよく、また、掘削翼2は、外軸110の外周面に設けられる上段掘削翼120と、上段掘削翼120より下方にある内軸100の露出部分の外周面に設けられ、上段掘削翼径未満に形成した下段掘削翼130とで構成することとしてもよい。
また、以下の説明において、「掘削・撹拌軸の回転中心線」とは、掘削・撹拌軸が回転した際の回転軸線を意図するものとし、「弧状撹拌翼の回転中心線」とは、弧状撹拌翼が回転する際の回転軸線であって掘削・撹拌軸に対する偏心軸線であり、弧状撹拌翼が支持されるボス部の回転中心線と同一軸心上にあることを意図する。
〔1.地盤改良装置〕
まず、本発明にかかる掘削・撹拌具を備える地盤改良装置の構成について説明する。図22は、本発明にかかる掘削・撹拌具Aを具備した地盤改良装置Kを示す。図22に示すように、地盤改良装置Kは、地盤Gの改良部分の地上面に設置される。
地盤改良装置Kは、自走可能なベースマシン本体200に設けられ、上下方向に伸延するリーダ210と、リーダ210に昇降自在に取り付けられる回転駆動部220と、上下方向に伸延して形成し、回転駆動部220の下端に取り付けられる掘削・撹拌軸1と、改良材を供給する改良材供給部230と、を備えることを基本構成としている。
ベースマシン本体200の後方位置に配設された改良材供給部230は、改良材を掘削孔内へ供給するための構成であり、改良材供給路231を介して、回転駆動部220に接続した掘削・撹拌軸1内部の改良材供給路と連通連設している。
なお、改良材は地盤を改良するために掘削土と混練される材料であって、地盤改良の目的に合わせて固化材、混和材、添加剤、中和剤、薬剤、化学剤等を採用できる。
改良材供給部230から供給される改良材は、掘削・撹拌軸1内の改良材供給路231を経由して掘削・撹拌具Aに形成した吐出口から掘削孔内へ向けて吐出され、掘削・撹拌具Aにより掘削土と撹拌される。
回転駆動部220は、ベースマシン本体200後部に内蔵した駆動回転ドラムにより吊下げワイヤ221を介してリーダ210の上下方向に沿った移動を可能としている。
吊下げワイヤ221は、一端を駆動回転ドラムに連結すると共に、中途部をリーダ210の最頂部を介して回転駆動部220上部に設けたプーリ222に巻き掛けられ、他端をリーダ210の上端部に連結している。
すなわち、駆動回転ドラムの回転駆動力をリーダ210に沿った上下昇降駆動力に変換して地盤改良における貫入・引抜き時の掘削・撹拌軸1の上下動を行うように構成している。
回転駆動部220内部には図示しない駆動機が搭載されており、掘削・撹拌軸1はその上端で駆動機に連結して回転駆動する。なお、回転駆動部220内部の駆動機は、駆動力を掘削・撹拌軸の回転力として付与するものであればよく、また、上述した通り相対駆動する二重軸構造を有した掘削・撹拌軸1に対応する二重駆動機であってもよい。
このように構成した地盤改良装置Kは、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材とを混練して地盤改良を行う主要部である掘削・撹拌具Aを備えている。
〔2.実施例1〕
以下、本発明の実施例1にかかる掘削・撹拌具の構成について図面を参照しながら説明する。図1は本実施例にかかる掘削・撹拌具A1の構成を示す側面図、図2及び図3は掘削・撹拌軸における偏心部分の構造を示す模式的平面図、図4は掘削・撹拌具A1の作動状態を示す平面図、図6は掘削・撹拌具A1の構成を示す側面図、図7は掘削・撹拌具A1の回転軌跡を示す平面図である。
本実施例にかかる掘削・撹拌具Aは、図1に示すように、上下方向に伸延した掘削・撹拌軸1と、掘削・撹拌軸1の下端に支持され、地盤を掘削する掘削翼2と、掘削・撹拌軸1の外周面に支持され、掘削・撹拌軸1と一体に回転する駆動撹拌翼3と、掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌した少なくとも2つ以上のボス部4の外周面に支持され、外方へ膨出させて弧状に形成した弧状撹拌翼5と、を有している。
すなわち、掘削・撹拌具Aは、掘削・撹拌軸1の外周面又は同掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部4の外周面に対して少なくとも一端を支持した複数の撹拌翼を有しており、同複数の撹拌翼は、掘削・撹拌軸1と一体に回転する駆動撹拌翼3と、掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する遊動撹拌翼6と、からなる。
かかる複数の撹拌翼のうち、最も外側の弧状撹拌翼5は遊動撹拌翼6とし、駆動撹拌翼3と遊動撹拌翼6とが、弧状撹拌翼5から内側にかけて、所定間隔を隔てて交互に配置されている。
すなわち、複数の撹拌翼として遊動撹拌翼6と駆動撹拌翼3とが、遊動撹拌翼6である弧状撹拌翼5から軸方向中央部C(弧状撹拌翼の基端が接続される2つの上下ボス部4a、4b間における掘削・撹拌軸1の中央部)に向ってそれぞれの撹拌翼の外形に沿う間隔を隔て、掘削・撹拌軸1に対して順番に配設されている。
より具体的には、遊動撹拌翼6と駆動撹拌翼3とは、掘削・撹拌軸1の軸回りにおいて互いに同位相にある状態で、側面視において後述するそれぞれの翼本体部の軸方向中央部を中心に内外翼層状として略同心円的配置となるように略波紋状に掘削・撹拌軸1に対して配設している。
駆動撹拌翼3は、帯板を中途部で屈曲してヘ字形状又は略L字形状をなした片持撹拌翼7である。
片持撹拌翼7は、帯板形状を回転中心線に沿うように、且つ板面をボス部4の回転中心線の円周に対する接線方向に向けて形成している。具体的には、片持撹拌翼7は、掘削・撹拌軸1の軸方向に沿う帯板状の翼本体部71と、翼本体部71の一端から屈曲部を経て伸延する翼支持部72と、を有している。
片持撹拌翼7は、翼本体部71先端を掘削・撹拌軸1の軸方向上方に向けて、且つ掘削・撹拌軸1において2つの上下ボス部4a、4bの間で露出する掘削・撹拌軸1の外周面に翼支持部72を接続することにより、支持されている。
また、掘削・撹拌軸1に遊嵌された2つのボス部4のうち、上部ボス部4aには、複数の撹拌翼のうち周方向の最内側に位置する遊動撹拌翼6としての片持撹拌翼14が、その翼本体部141の先端方向を、駆動撹拌翼3としての片持撹拌翼7の翼本体部71先端方向と上下逆に翼支持部142を接続して支持されている。
(弧状撹拌翼)
弧状撹拌翼5は、複数の撹拌翼のうち周方向の最外側に位置する帯板弧状の遊動撹拌翼6であり、帯板形状を掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に沿うように、且つ板面をボス部4の回転中心線S2を中心とした円周に対する接線方向に向けて形成している。
弧状撹拌翼5は、側面視で弧状撹拌翼の弧状外形をなす帯板状の翼本体部51と、翼本体部51から屈曲部を経て少なくとも2以上のボス部4に向けて伸延し、同ボス部4と連結する少なくとも2以上の翼支持部52と、を有している。
翼本体部51は、掘削・改良土の静止撹拌域に配置されて土壌抵抗受け部として機能すると共に周辺地盤に係合する係合端部として機能する。翼支持部52は、基本的には翼本体部51の両端から屈曲して伸延し、弧状撹拌翼5を支持する部位であるが、翼本体部51の両端の他に、その中途部にもボス部4の数に応じて延設することができる。
本実施例の翼支持部52は、図1及び図6(a)に示すように上下2つのボス部4a、4bに対応するように弧状撹拌翼5の両端部として上側翼支持部52aと下側翼支持部52bとの2つを有し、それぞれ翼本体部51の両端縁からボス部4a、4bに向けて延設している。
また、掘削・撹拌軸1において、図1及び図2に示すように、弧状撹拌翼5が跨持される少なくとも2つ以上のボス部4の遊嵌部は掘削・撹拌軸1の回転中心線に対して偏心した偏心部とし、同偏心部の中心軸(偏心)を同一直線上に配置して弧状撹拌翼5の回転中心線をなし、弧状撹拌翼5の回転中心線S2を掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して偏心した位置にしている。
具体的には、偏心軸構造としては「偏心輪構造」であり、図1及び図3に示すように掘削・撹拌軸1の軸方向の所定位置に掘削・撹拌軸1に対して所定の偏心量で設けられ、同掘削・撹拌軸1と共に一体回転する少なくとも2つ以上の偏心内輪10と、同偏心内輪10の外周廻りに偏心内輪10に対して相対回転可能であり、偏心外輪として機能する2つ以上のボス部4と、少なくとも2つ以上のボス部4の外周面に跨持され、連設ロッドとして機能する弧状撹拌翼5と、で構築している。
偏心内輪10は、弧状撹拌翼5の振動源として掘削・撹拌軸1が回転駆動した際に偏心運動を生起するエキセントリック部材であって、弧状撹拌翼5の回転中心線S3、すなわち少なくとも2つ以上のボス部4の回転中心線S2(回転軸)をそれぞれ同一軸線上とするように、弧状撹拌翼5の翼支持部52の数(ボス部の数)に応じて掘削・撹拌軸1の軸方向に所定間隔を隔てて偏心配置される。
なお、偏心内輪10の形状は、ボス部4の内周面に対して最大外径Lを有した外周面で摺接可能な接点を有した形状であれば特に限定されることはなく、円柱形状や非対称形状であってもよい。
具体的には、偏心内輪10は、図3(a)に示すように軸方向視においてその最大外径Lを、掘削・撹拌軸1の回転中心線S1と偏心内輪10の形状における中心軸線S4(偏心軸線)とを通る直線の位置における外径とし、この最大外径Lがボス部4の内径lと略同一となるように形成されていればよい。
換言すれば、偏心内輪10は、ボス部4の内周面に対し、軸方向視で偏心内輪10の中心軸線S4及び掘削・撹拌軸1の回転中心線S1を通る直線L1の一側においては偏心内輪10が当接し、同直線L1の他側においては掘削・撹拌軸1が当接するように設けられる。
ここで、直線L1上において、掘削・撹拌軸1の回転中心S1からボス部4の内周面に対する偏心内輪10の当接位置P1までの距離T1は、掘削・撹拌軸1の回転中心S1からボス部4の内周面に対する掘削・撹拌軸1の当接位置P2までの距離T2よりも長い。
従って、掘削・撹拌軸1が回転することで、偏心内輪10の当接位置P2は、掘削・撹拌軸1の回転中心S1を中心とした半径T2の円周の軌跡を描くことになる。
このような偏心内輪10の形状としては、図3(b)〜図3(e)に示すように、例えば軸方向視で楕円形状、矩形突起形状、三角突起形状、多数突起形状にすることもできる。なお、本実施例では、図3(a)に示すように軸方向視で円形状(円柱形状)としている。
そして、少なくとも2つ以上の偏心内輪10において、各偏心内輪10は、それぞれの形状における中心軸線S4を中心に同一の長半径を有するように形成され、掘削・撹拌軸1の軸方向の所定位置で、掘削・撹拌軸1の回転中心線S1を中心にそれぞれ所定の径方向(以下、偏心方向と称す。)且つ同一偏心量で掘削・撹拌軸1の軸方向の所定位置に設けらている。
しかも、各偏心内輪10の形状における中心軸線S4をそれぞれ同一直線上に配置して弧状撹拌翼5の回転中心線S3をなし、同弧状撹拌翼5の回転中心線S3を掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して平行偏心している。
本実施例の偏心内輪10は、最上部に位置する偏心内輪(以下、最上部偏心内輪10aと称す。)と、最下部に位置する偏心内輪(以下、最下部偏心内輪10bと称す。)と、の2つであり、それぞれ同形同大とし、同一の偏心方向及び同一の偏心量で掘削・撹拌軸1の軸方向の所定位置に設けらている。
なお、偏心内輪10が3つ以上形成されている場合、すなわち最上部偏心内輪10aと最下部偏心内輪10bの間に他の偏心内輪10が形成されている場合は、他の偏心内輪10は、その中心軸線を最上部偏心内輪10と最下部偏心内輪10bのそれぞれの形状における中心軸線と同一直線上に配置するよう掘削・撹拌軸1に設けられることは勿論である。
このような各偏心内輪10の外周廻りに、それぞれ対応するボス部4を回転可能に遊嵌することにより、同ボス部4に跨持される弧状撹拌翼5の回転中心線S3が、ボス部4を介して各偏心内輪10形状における中心軸線S4及び対応するボス部4の回転中心線S2と一致することとなる。
このような構成により、掘削・撹拌軸1を主軸本体として折り曲げ加工したりすることなく掘削・撹拌軸1上の所望とする位置に、起振させる弧状撹拌翼を跨設するための偏心軸構造を簡単且つ自由に構築することができ、貫入・引抜き動作時の掘削・撹拌土からの掘削・撹拌軸1への鉛直方向の負荷に対応する強度を保持することができる。
弧状撹拌翼5の説明に戻ると、図1及び図3に示すように、弧状撹拌翼5は、少なくとも2つ以上のボス部に跨持された状態で弧状撹拌翼5による最大改良径Mを掘削翼径(図4中、掘削・撹拌軸1の回転中心線S1を中心に外方伸延する二点鎖線で示す。)以下とするように形成している。
換言すれば、弧状撹拌翼5の弧状撹拌翼半径Dと、弧状撹拌翼5の回転中心線S3の掘削・撹拌軸の回転中心線に対する偏心量dと、の総和は、掘削翼2の掘削翼半径R以下となるように、弧状撹拌翼5を形成している。
なお、弧状撹拌翼半径Dとは、弧状撹拌翼本体に付随する翼を含めた弧状撹拌翼5の回転半径(以下、単に周半径と称す。)を意図しており、例えば、弧状撹拌翼5の翼本体部51や翼支持部52の外側に補助翼を備えている場合には、弧状撹拌翼の回転中心線から最外周側に位置する補助翼端までの周半径である。
また、弧状撹拌翼5は、薄帯板状であって、側面視における翼形状面の幅を部材幅とし、軸方向視における翼形状面の幅を部材厚とし、部材厚は部材幅以下となるように形成している。
具体的には、弧状撹拌翼5の翼本体部51や翼支持部52は、ボス部4の回転中心線S2の軸方向視で、ボス部の回転中心線の径方向に直交する方向、すなわちボス部4の回転中心線S2を中心とする円周に対する接線方向を板厚方向としている。
以上のように構成した掘削・撹拌具A1は、以下のように作動する。すなわち、弧状撹拌翼5は、図5に示したように掘削孔内で翼本体部51を静止撹拌域に配置されて掘削・改良土による回転抵抗力を受け、掘削・撹拌軸1の回転方向に対して不動状態となる。
また、上下ボス部4a、4bが弧状撹拌翼5を介して掘削・撹拌軸1の回転力に対する反力を伝えられて不動状態となるため、上部ボス部4aに支持された内側の片持撹拌翼14も不動状態となる。
このような状態で掘削・撹拌軸1の駆動回転した場合、ボス部4a、4b内部の偏心内輪10a、10bは、掘削・撹拌軸1と一体回転して軸方向視で掘削・撹拌軸1の回転中心線S1を中心に偏心量dに応じた円軌跡を描くように回る偏心運動を行う。
なお、上下2つの偏心内輪10a、10bは同形同大で掘削・撹拌軸1に対して同一径方向に同一偏心量で形成しているため、各偏心内輪10a、10bの偏心運動が一致する。
このような偏心内輪10a、10bの偏心運動は、図6(b)及び図7(a)乃至図7(e)に示すように、掘削・撹拌軸1の回転中心線S1を中心として、偏心内輪10a、10bの回転中心S4が偏心量dを半径とした円の軌跡を描くように回転する回転運動である。
すなわち掘削・撹拌軸1が回転することで、図3(a)で示したように偏心内輪10とボス部4との当接位置P2は掘削・撹拌軸1の回転中心S1を中心とした半径T2の円周の軌跡を描くことにより、偏心内輪10がボス部4の内周面に対して当接位置P2で摺接作用する。
そして、弧状撹拌翼5を介して回転方向に不動状態にあるボス部4a、4bは、偏心内輪10a、10bに対しては回転可能に外嵌されているため、図7(a)〜図7(e)に示すように偏心内輪10a、10bの回転運動に対しては滑動して偏心内輪10a、10bを空転させ、偏心量分だけ径方向に移動する往復揺動運動をすることとなる。
換言すれば、ボス部4a、4bは、連接ロッドとして機能する弧状撹拌翼5を介して翼端面(翼本体部51の板面)近傍に存在する静止撹拌域の掘削・改良土にガイドされて偏心内輪10a、10bの偏心運動を往復揺動運動に転換する。
その結果、遊動撹拌翼6としての弧状撹拌翼5や片持撹拌翼14は、図6(b)に示すように掘削・撹拌軸1の回転方向に対して不動姿勢状態を保持したまま、ボス部4a、4bに連動して側面視で掘削・撹拌軸1の回転中心線から偏心量分だけ径方向に移動しつつ円軌跡を描く往復揺動運動を行うように起振する。
すなわち弧状撹拌翼5や片持撹拌翼14は、掘削・撹拌軸1の駆動回転に伴い偏心量に応じて軸方向視で常に掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に一定の振幅を保持した円運動的振動をすることとなり、同振動応力を翼近傍の掘削・改良土へ伝達して「土壌付着抑制作用」と「締まり込み防止作用」とを最外側と最内側とで生起する。
特に弧状撹拌翼を構成する翼本体部51が、静止撹拌域の掘削・改良土へ同振動応力を伝達することにより、静止状態の掘削・改良土の強制的な振動撹拌を実現する。
より具体的には、翼本体部51が、軸方向視において、偏心量に応じた略円運動(図5中の弧状撹拌翼の両端の円運動軌跡)を行うことによる静止状態の掘削・改良土の強制的な回転撹拌を行うことができ、これまでの改良形態に無い翼本体部51の回転運動を伴った「鉛直せん断撹拌」を可能とする新たな撹拌効果を可能とする。
すなわち弧状撹拌翼5は、その翼本体部51にて静止撹拌域の掘削・改良土から抵抗を受けることにより掘削・撹拌軸の回転方向に対しては不動状態となる共回り防止翼として機能しつつも、偏心量に応じた起振動により静止撹拌域の掘削・改良土を局所的、部分的に回転撹拌する鉛直せん断回転撹拌翼として機能することを可能としている。
その結果、掘削・撹拌具A1は、駆動回転する駆動撹拌翼3としての片持撹拌翼7と、遊動撹拌翼6として不動姿勢状態を保持して振動する弧状撹拌翼5や片持撹拌翼14と、の間で「せん断線」を確実に生起して「共回りの防止効果」を堅実とし、改良体内全域で均一な撹拌とする撹拌効果を向上させる。
また、弧状撹拌翼5は、その最大改良径を掘削翼径以下とするようにボス部4a、4bを介して掘削・撹拌軸1に支持されているため、往復揺動運動範囲、すなわち最大振動範囲を掘削孔径内に収めることができ、周辺地盤へ弧状撹拌翼5の翼端部に相当する翼本体部51を係合させることがなく周辺地盤からの摩擦抵抗の影響を受けない。
さらに、弧状撹拌翼5は薄帯板状であって、側面視における翼形状面の幅を部材幅とし、軸方向視における翼形状面の幅を部材厚とし、部材厚は部材幅以下となるように形成しているため、弧状撹拌翼5の軸方向視による改良面積に対する翼面積を小さくして、貫入・引抜き動作時の掘削・改良土の通過抵抗と掘削・改良土の土壌付着とを可及的低減化することを可能とする。
また、弧状撹拌翼5の振動力が反力として少なくとも2つ以上のボス部4を介して掘削・撹拌軸1に伝わる結果、掘削翼2や駆動撹拌翼3を振動させることができ、「土壌付着抑制作用」及び「締まり込み防止作用」を助長させると共に掘削速度を向上して、駆動撹拌翼3と遊動撹拌翼6との交互配置による相対撹拌効果も相俟って、施工スピードを飛躍的に向上することができる。
〔実施例2〕
次に、本発明にかかる掘削・撹拌具の実施例2について説明する。図8は掘削・撹拌具A2の構成を示す側面図である。なお、以下において、実施例1にかかる掘削・撹拌具A1と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
本実施例にかかる掘削・撹拌具A2は、掘削・撹拌具A1と略同様の構成を備えており、図2で示したように弧状撹拌翼5の回転中心線S3を掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して平行に偏心し、弧状撹拌翼5が掘削・撹拌軸1の回転中心線S1を中心に偏心量分だけ径方向に往復揺動運動する起振を可能に構成したものであるが、偏心軸構造を「軸屈曲偏心軸構造」としている点で構成を異にする。
すなわち、掘削・撹拌具A2は、掘削・撹拌軸1においてその一部を掘削・撹拌軸1の径方向外方に屈曲して掘削・撹拌軸1の軸方向に沿って伸延する偏心軸部11をなし、同偏心軸部11の回転中心線S5を弧状撹拌翼5の回転中心線S3とし、弧状撹拌翼5の回転中心線S3を掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して偏心した位置に配置している。
具体的には、掘削・撹拌軸1は、図8(a)に示すように掘削・撹拌軸1の回転中心線S1と同一軸芯上で回転する主軸としての掘削・撹拌軸本体部12と、掘削・撹拌軸本体部12を中心に所定の偏心方向で同一周半径となるように掘削・撹拌軸1を屈曲して形成した上下2つの偏心屈曲部13a、13bと、同偏心屈曲部13a、13bの間で掘削・撹拌軸本体部12と略平行に伸延して形成した偏心軸部11と、偏心軸部11の軸方向でその外周廻りに回転可能に遊嵌される少なくとも2つ以上のボス部4a、4bと、少なくとも2つ以上のボス部4a、4bに跨持される弧状撹拌翼5と、により「軸屈曲偏心軸構造」を構築している。
偏心軸部11の偏心量は、上下2つの偏心屈曲部13a、13bの周半径(掘削・撹拌軸1の回転中心線S1から直交する仮想直線と偏心屈曲部13a、13bの先端位置までの距離)で決定され、本実施例では上下2つの偏心屈曲部13a、13bの周半径をそれぞれ同一としている。
このような構成により、掘削・撹拌軸1の回転に伴い偏心軸部11は、実施例1と同様に掘削・撹拌軸1と一体回転して掘削・撹拌軸1の回転中心線を中心に偏心量を半径として円の軌跡を描くように回る偏心運動を行う。
すなわち、上下ボス部4a、4bが、弧状撹拌翼5を介して翼本体部51近傍に存在する静止撹拌域の掘削・改良土にガイドされるように偏心軸部11の偏心運動を往復揺動運動に転換することを可能としている。
また、遊動撹拌翼6としての弧状撹拌翼5や片持撹拌翼14が、図7で示したように軸方向視において、掘削・撹拌軸1の回転方向に対して不動姿勢状態を保持したままボス部4a、4bに連動して掘削・撹拌軸1の回転中心線から偏心量分だけ径方向に移動しつつ円軌跡を描く往復揺動運動を行う起振をすることを可能としている。
また、偏心軸部11において、弧状撹拌翼5が跨持される上下ボス部4a、4b間には、駆動撹拌翼3としての片持撹拌翼7が支持されている。
換言すれば、複数の撹拌翼としての遊動撹拌翼6と駆動撹拌翼3とが、遊動撹拌翼6である弧状撹拌翼5から軸方向中央部C(弧状撹拌翼の基端が接続される2つの上下ボス部4a、4b間における掘削・撹拌軸1の中央部)に向ってそれぞれの撹拌翼の外形に沿う間隔を隔て、掘削・撹拌軸1の偏心軸部11に対して順番に配設されている。
より具体的には、弧状撹拌翼5と駆動撹拌翼3とは、掘削・撹拌軸1の偏心軸部11の軸回りにおいて互いに略同位相にある状態で、側面視においてそれぞれの翼本体部51の軸方向中央部を中心に内外翼層状として略同心円的配置となるように略波紋状に掘削・撹拌軸1に対して配設している。
このような構成により、図4で示したように弧状撹拌翼5が、その翼本体部51にて静止撹拌域の掘削・改良土から抵抗を受けることにより掘削・撹拌軸の回転方向に対しては不動状態となる共回り防止翼として機能しつつも、偏心量に応じた起振動により静止撹拌域の掘削・改良土を局所的、部分的に回転撹拌する鉛直せん断回転撹拌翼として機能する。
さらには、図8(b)に示すように遊動撹拌翼6としての弧状撹拌翼5や片持撹拌翼14が起振するだけでなく、偏心軸部11や駆動撹拌翼3としての片持撹拌翼7が、掘削孔内で偏心量に応じた偏心運動を行うこととなり、上述の相対撹拌効果をより向上させるとともに各撹拌翼への「土壌付着抑制作用」を堅実とし、改良体内全域で均一な撹拌とする撹拌効果を向上させる。
なお、本実施例では、掘削・撹拌軸1に1つの偏心軸部11を形成しているが、偏心軸部11に遊嵌され、弧状撹拌翼5が跨持される少なくとも2つ以上のボス部4の回転中心線S2が同一線上にあれば、その数において限定されることない。
すなわち、掘削・撹拌軸1において弧状撹拌翼5が跨持される少なくとも2つ以上の個々のボス部4に応じた部分にのみ、同一方向且つ同一偏心量とした偏心軸部11を複数ヵ所、屈曲形成しつつ、弧状撹拌翼5の内側の駆動撹拌翼3を掘削・撹拌軸本体部12に支持することができることは勿論である。
〔実施例3〕
次に、本発明の実施例3にかかる掘削・撹拌具A3について説明する。図9は、掘削・撹拌具A3の構成を示す側面図、図10は、掘削・撹拌軸における偏心部分の構造を示す模式的説明図である。
本実施例にかかる掘削・撹拌具A3は、掘削・撹拌具A1と略同様の構成を備えており、偏心軸構造は「偏心輪構造」としているが、同「偏心輪構造」において、弧状撹拌翼の回転中心線が掘削・撹拌軸の回転中心線に対して傾斜している点で構成を異にする。
すなわち、掘削・撹拌軸1の軸方向の所定位置で、同掘削・撹拌軸1と共に一体回転する少なくとも2つ以上の偏心内輪30a、30bは、図10に示すように掘削・撹拌軸1の回転中心線を中心に所定の偏心方向で偏心量を違えた最大偏心量を有する偏心内輪30aと最小偏心量を有する偏心内輪30bとを備え、各偏心内輪30a、30bの形状における中心軸線S4を同一直線上として弧状撹拌翼5の回転中心線S3をなし、弧状撹拌翼5の回転中心線S3を掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して傾斜するように形成している。
換言すれば、掘削・撹拌軸1の軸方向の所定位置に形成される少なくとも2つ以上の偏心内輪30a、30bは、図10(a)や図10(b)に示すように掘削・撹拌軸1の軸方向に沿って漸次最大外径を違える相似形状をなし、掘削・撹拌軸1の回転中心線S1を中心にそれぞれ所定の偏心方向で掘削・撹拌軸1の軸方向に沿って漸次偏心量を違え、各偏心内輪30a、30bの形状における中心軸線S4を同一直線上に配置すると共に掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して傾斜するように形成している。
本実施例にかかる2以上の偏心内輪10は、掘削・撹拌軸1対して所定の偏心方向で最上部偏心内輪30を最下部偏心内輪30bより最大外径を大きくした円柱形状となし、最上部偏心内輪30aを最大偏心量を有する偏心内輪とし、最下部偏心内輪30bを最小偏心量を有する偏心内輪とし、最上部偏心内輪30aと最下部偏心内輪30bとの円柱形状における各中心軸線S4を同一直線上に配置している。
かかる最上部偏心内輪30aと最下部偏心内輪30bとの外周廻りには、それぞれ対応する最上部ボス部4aと最下部ボス部4bとが回転可能に遊嵌され、同ボス部4a、4bには弧状撹拌翼5が跨持されている。
換言すれば、弧状撹拌翼5の回転中心線S3は、ボス部4a、4bを介して最上部偏心内輪30aと最下部偏心内輪30bとの各中心軸線S4に一致し、図9(a)に示すように掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して傾斜することとなる。
このような構成により、掘削・撹拌軸1が駆動回転した場合、ボス部4a、4b内部の偏心内輪30a、30bは、掘削・撹拌軸1と一体回転して掘削・撹拌軸1の回転中心線S1を中心に傾斜偏心量に応じて、側面視及び軸方向視で楕円軌跡を描くように回る偏心運動を行う。
すなわち、掘削・撹拌軸1の駆動回転に伴い、回転方向に不動状態の弧状撹拌翼5が、図9(b)に示すように側面視で左右傾斜方向に起振動して、弧状撹拌翼の「鉛直せん断回転撹拌機能」により弧状撹拌翼近傍の静止撹拌域にある掘削・改良土を強制的に撹拌し、掘削・改良土への振動伝達により「土壌付着抑制作用」と「締まり込み防止作用」を助長させ、「共回り防止効果」を確実に生起することを可能としている。
〔実施例4〕
次に、本発明の実施例4にかかる掘削・撹拌具について説明する。図11は、掘削・撹拌具A4の構成を示す側面図である。
本実施例にかかる掘削・撹拌具A4は、掘削・撹拌具A2と略同様の構成を備えており、偏心軸構造は「軸屈曲偏心軸構造」としているが、同「軸屈曲偏心軸構造」において、上記実施例3にかかる掘削・撹拌具A3と同様、弧状撹拌翼5の回転中心線S3が掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して傾斜している点で構成を異にする。
すなわち、掘削・撹拌軸1の中途部において掘削・撹拌軸1を中心に径方向外方にむけて2箇所で屈曲してなした偏心軸部は、図11(a)に示すようにその屈曲部分において互いに周半径を違えた傾斜偏心軸部21とし、同傾斜偏心軸部21の回転中心線S5を弧状撹拌翼5の回転中心線S3となし、同弧状撹拌翼5の回転中心線S3を掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して傾斜偏心している。
具体的には、上述した「軸屈曲偏心軸構造」のうち、上下2つの偏心屈曲部23a、23bは、掘削・撹拌軸1の回転中心線S1を中心に互いに所定の偏心方向で、且つ互いに異なる周半径となるように掘削・撹拌軸1から外方に向けて屈曲してせり出している。
すなわち、掘削・撹拌軸1において軸方向に沿って所定間隔を隔てて形成された上下2つの偏心屈曲部23a、23bは、一方の偏心屈曲部23aの周半径を他方の偏心屈曲部23bの周半径と違え、最大周半径を有する偏心屈曲部23aと最小周半径を有する偏心屈曲部23bとしている。
かかる偏心屈曲部23a、23bの先端同士の間に偏心軸部21を伸延形成することにより、図10で示したように偏心軸部11の回転中心線S5が掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して傾斜する。
また、偏心軸部21の外周廻りには、少なくとも2つ以上のボス部4a、4bが回転可能に遊嵌され、少なくとも2つ以上のボス部4a、4bには弧状撹拌翼5が跨持されている。
このような構成により、実施例3と同様に、図11(b)に示すように掘削・撹拌軸1の駆動回転に伴い弧状撹拌翼5を側面視で左右傾斜方向に起振動させることができ、弧状撹拌翼の「鉛直せん断回転撹拌機能」により弧状撹拌翼近傍の静止撹拌域にある掘削・改良土を強制的に撹拌して「土壌付着抑制作用」と「締まり込み防止作用」を助長させ、「共回り防止効果」を確実に生起することを可能としている。
〔実施例5〕
次に、本発明の実施例5にかかる掘削・撹拌具A5について説明する。図12は掘削・撹拌具A5の構成を示す側面図、図13は掘削・撹拌軸における偏心部分の構造を示す模式的説明図である。
本実施例にかかる掘削・撹拌具A5は、掘削・撹拌具A3と略同様の構成を備えており、偏心軸構造は傾斜偏心した「偏心輪構造」としているが、同「偏心輪構造」において、弧状撹拌翼5の回転中心線S3が、掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して、弧状撹拌翼5が跨持される少なくとも2つ以上のボス部4のうち最上部と最下部のボス部間で、互いに交差するように傾斜している点で構成を異にする。
すなわち、掘削・撹拌軸1の軸方向の所定位置に設けられて同掘削・撹拌軸1と共に一体回転する少なくとも2つ以上の偏心内輪10a、10bのうち、図12(a)及び図13に示すように最上部偏心内輪10aと最下部偏心内輪10bとは、掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対してそれぞれの偏心方向を掘削・撹拌軸1を介して互いに逆方向となるように形成している。
さらに、各偏心内輪10a、10bの形状における中心軸線S4は同一直線上として弧状撹拌翼5の回転中心線S3をなし、弧状撹拌翼5の回転中心線S3は各偏心内輪10a、10bの間における掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して交差して傾斜している。
本実施例にかかる最上部偏心内輪10aと最下部偏心内輪10bとは、同形同大とし、互いの偏心方向を掘削・撹拌軸1の回転中心線S1を介して180°左右対称方向とすると共に同一偏心量となるように掘削・撹拌軸1の軸方向の所定位置に形成している。
また、これら最上部偏心内輪10a及び最下部偏心内輪10bは、掘削・撹拌軸1の回転中心線S1の最上部偏心内輪10aと最下部偏心内輪10bとにそれぞれ回転可能に外嵌される最上部ボス部4aと最下部ボス部4bとの間の掘削・撹拌軸1の回転中心線S1の中央部で、弧状撹拌翼5の回転中心線S3が交差するように偏心している。
このような構成により、掘削・撹拌軸1が駆動回転した場合、ボス部4a、4b内部の偏心内輪10a、10bは掘削・撹拌軸1と一体回転し、掘削・撹拌軸1の回転中心線S1を中心に、側面視及び軸方向視で傾斜偏心量に応じた楕円軌跡を描くように傾斜偏心運動を行う。
すなわち、掘削・撹拌軸1の駆動回転に伴い同回転方向に不動状態の弧状撹拌翼5は、図12(b)に示すように側面視で掘削・撹拌軸1を中心に略左右上下方向に往復揺動運動を行うように起振動して、弧状撹拌翼の「鉛直せん断回転撹拌機能」により弧状撹拌翼近傍の静止撹拌域にある掘削・改良土を強制的に撹拌すると共に、掘削・改良土への振動伝達により「土壌付着抑制作用」と「締まり込み防止作用」を助長させ、「共回り防止効果」を確実に生起することを可能としている。
〔実施例6〕
次に、本発明の実施例6にかかる掘削・撹拌具A6について説明する。図14は掘削・撹拌具A6の構成を示す側面図である。
本実施例にかかる掘削・撹拌具A6は、掘削・撹拌具A4と略同様の構成を備えており、偏心軸構造は傾斜偏心した「軸屈曲偏心軸構造」としているが、同「軸屈曲偏心軸構造」において、実施例5と同様に、弧状撹拌翼の回転中心線が、掘削・撹拌軸の回転中心線に対して、弧状撹拌翼が支持される少なくとも2つ以上のボス部のうち最上部と最下部のボス部間で、互いに交差するように傾斜している点で構成を異にする。
すなわち、掘削・撹拌軸1の中途部において掘削・撹拌軸1から径方向外方にむけて2箇所で屈曲してなした傾斜偏心軸部は、その屈曲部分において互いに所定の周半径で互いの偏心方向を掘削・撹拌軸1を介して逆方向にして形成し、同傾斜偏心軸部21の回転中心線S5を弧状撹拌翼5の回転中心線S3となし、同弧状撹拌翼5の回転中心線S3を掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して交差して偏心している。
具体的には、上下2つの偏心屈曲部23a、23bは、掘削・撹拌軸本体部12の回転中心線を中心に、一方の偏心屈曲部23aの周半径を他方の偏心屈曲部23bの周半径と同一とすると共に、一方の偏心屈曲部23aの偏心方向を他方の偏心屈曲部23bの偏心方向と逆方向としている。
また、上下2つの偏心屈曲部23a、23bは、実施例5と同様に、遊嵌される最上部ボス部4aと最下部ボス部4bとの間の掘削・撹拌軸1の回転中心線S1の中央部で、弧状撹拌翼5の回転中心線S1が掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対して交差するように偏心している。
このような構成により、実施例5と同様に、掘削・撹拌軸1の駆動回転に伴い、弧状撹拌翼5は、回転方向に対しては不動姿勢状態を保持したまま、側面視及び軸方向視で掘削・撹拌軸1を中心に楕円軌跡を描く往復揺動運動を行うように起振動し、弧状撹拌翼の「鉛直せん断回転撹拌機能」により弧状撹拌翼近傍の静止撹拌域にある掘削・改良土を強制的に撹拌すると共に、掘削・改良土への振動伝達により「土壌付着抑制作用」と「締まり込み防止作用」を助長させ、「共回り防止効果」を確実に生起することを可能としている。
〔実施例7〕
次に、本発明の実施例7にかかる掘削・撹拌具A7について説明する。図15は掘削・撹拌具A7の構成を示す側面図である。
本実施例にかかる掘削・撹拌具A7は、掘削・撹拌具A1と略同様の構成を備えており、偏心軸構造は傾斜偏心した「偏心輪構造」としているが、少なくとも2つ以上のボス部に支持される弧状撹拌翼が、弧状撹拌翼の回転中心線に対して、捩じり形状又は同軸方向に対して傾斜させた形状とした点で構成を異にする。
すなわち、弧状撹拌翼8は、図15に示すように側面視で弧状撹拌翼の弧状の外形をなす帯板状の翼本体部81や翼支持部82を有し、翼本体部81や翼支持部82の板面を上下方向に対して傾斜する傾斜面となし、掘削・撹拌具A7の貫入・引抜き動作に伴って傾斜面に受ける土壌抵抗により回転作動するように形成している。
このような形状の弧状撹拌翼8を掘削・撹拌軸1上の少なくとも2つ以上の偏心内輪10a、10bに遊嵌した少なくとも2つ以上のボス部4a、4bに跨持することにより、弧状撹拌翼8と駆動撹拌翼3とによる複雑な相対回転撹拌を実現し、しかも弧状撹拌翼8を起振動させて「土壌付着抑制作用」、「締まり込み防止作用」を生起して「共回り防止効果」を確実に得ると共に弧状撹拌翼8の「鉛直せん断回転撹拌機能」により、掘削・改良土の良好な混練り性を確保することができる。
なお、このような傾斜形状の弧状撹拌翼8は、上述した実施例2〜実施例6の各種偏心軸構造を有した掘削・撹拌具の構成として適応できることは勿論である。
〔実施例8〕
次に、本発明の実施例8にかかる掘削・撹拌具A8について説明する。図16は、掘削・撹拌具A8の構成を示す側面図である。
本実施例にかかる掘削・撹拌具A8は、掘削・撹拌具A1と略同様の構成を備えており、偏心軸構造は傾斜偏心した「偏心輪構造」としているが、少なくとも2つ以上のボス部に支持される弧状撹拌翼において、弧状撹拌翼による最大改良径を掘削翼径よりも大きくなるように形成している点で構成を異にする。
換言すれば、弧状撹拌翼9は、図16(a)に示すように翼本体部91を周辺地盤に係合させるように、図4に示した弧状撹拌翼9の弧状撹拌翼径Dと掘削・撹拌軸1の回転中心線S1に対する弧状撹拌翼9の回転中心線S3の偏心量dとの総和が、掘削翼2の掘削翼径Rより大となるように形成している。すなわち、翼本体部91が、その帯板の長手方向に沿って板幅を係合深さとする係合端部として機能する。
また、弧状撹拌翼9は、図16(b)に示すように翼本体部91の帯板の外側端縁の所定位置に、周辺地盤に係合させるための係合補助翼92を周方向外方に向けて延設することとしてもよい。
また、弧状撹拌翼9や係合補助翼92は、実施例1と同様に、薄帯板状であって、側面視における翼形状面の幅を部材幅とし、軸方向視における翼形状面の幅を部材厚とし、部材厚は部材幅以下となるように形成している。
このように形成した弧状撹拌翼9が、周辺地盤に係合した際には、掘削・撹拌軸1の回転方向に対しては翼本体部91の帯板面を周辺地盤との係合部分における係合面に面対向させて固定状態を堅実とする効果がある。
また、翼本体部91は軸方向視において翼形状面の幅が肉薄であるため、掘削・撹拌具A8の貫入・引抜き動作に伴い掘削・撹拌軸1の軸方向に沿って弧状撹拌翼9が上下移動した際には、摩擦抵抗が少なくなる効果がある。
さらに、上述の「偏心軸構造」により弧状撹拌翼9は側面視で偏心量分だけ径方向に起振動した場合には、弧状撹拌翼9は、翼本体部91を周辺地盤との係合部と掘削孔内の掘削・改良土における静止撹拌域と間を常に移動させて、貫入・引抜き動作に伴う摩擦抵抗を更に低減化する。
しかも、周辺地盤のみならず静止撹拌域から回転抵抗力を効果的に得て静止状態となるため、仮に改良施工対象が軟弱地盤であっても弧状撹拌翼9の共回り防止機能が失われることはない。
このような構成により、弧状撹拌翼9の周辺地盤への係合固定状態を最低限に抑制し、駆動撹拌翼との間で掘削・改良土に「せん断線」を生起すると共に、「土壌付着抑制作用」及び「締まり込み防止作用」を生起して「共回り防止効果」を確実に得て、掘削・改良土の良好な混練り性を確保することができる。
このように本発明にかかる掘削・撹拌具によれば、独特の弧状撹拌翼を特別な構造で構築した偏心軸に跨持する構造を備えたことにより、周辺地盤に依拠することなく掘削孔内の掘削・改良土の土壌抵抗を効果的に利用して弧状撹拌翼を起振動させ、「土壌付着抑制作用」と「締まり込み防止作用」を生起しつつ、「共回り防止効果」を飛躍的に向上させ、施工スピードを大幅に向上させることができる。
特に、弧状撹拌翼が、その翼本体部にて静止撹拌域の掘削・改良土から抵抗を受けることにより、掘削・撹拌軸の回転方向に対しては不動状態となる共回り防止翼として機能しつつも、偏心量に応じた起振動により静止撹拌域の掘削・改良土を局所的、部分的に回転撹拌する鉛直せん断回転撹拌翼として機能することで、改良体内全域で均一な撹拌とする撹拌効果を向上させる。
すなわち、本発明にかかる掘削・撹拌具は、周辺地盤の種類に左右されず、掘削・改良土の締まり込みに対応でき、共回り防止翼の周辺地盤への係合深さを最低限に抑え又は係合することなく共回り防止翼を不動状態とし、翼の破損劣化と翼への土壌付着を可及的抑制でき、共回り現象を確実に防止して撹拌効率を向上させることができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。また、本発明は上述の実施の形態に限定されることはなく、本発明にかかる技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。そして、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
上記従来の課題を解決するために、本発明にかかる掘削・撹拌具は、(1)地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、上下方向に伸延した掘削・撹拌軸と、上記掘削・撹拌軸の下端に支持され、地盤を掘削する掘削翼と、上記掘削・撹拌軸の外周面に支持され、上記掘削・撹拌軸と一体に回転する駆動撹拌翼と、上記掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌した少なくとも2つ以上のボス部の外周面に跨持され、外方へ膨出させて弧状に形成した弧状撹拌翼と、を備え、上記弧状撹拌翼は、上記掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する最も外側の遊動撹拌翼とし、上記弧状撹拌翼の回転中心線は上記掘削・撹拌軸の回転中心線に対して偏心した位置とし、しかも、上記弧状撹拌翼の弧状撹拌翼半径と上記弧状撹拌翼の回転中心線の上記掘削・撹拌軸の回転中心線に対する偏心量との総和が、掘削翼の掘削翼半径以下になるように構成したことに特徴を有する。
上記従来の課題を解決するために、本発明にかかる掘削・撹拌具は、(1)地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、上下方向に伸延した掘削・撹拌軸と、上記掘削・撹拌軸の下端に支持され、地盤を掘削する掘削翼と、上記掘削・撹拌軸の外周面に支持され、上記掘削・撹拌軸と一体に回転する駆動撹拌翼と、上記掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌した少なくとも2つ以上のボス部の外周面に跨持され、外方へ膨出させて弧状に形成した弧状撹拌翼と、を備え、上記弧状撹拌翼は、上記掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する最も外側の遊動撹拌翼とし、上記弧状撹拌翼の回転中心線は、上記掘削・撹拌軸の回転中心線に対して傾斜させた偏心位置にあることに特徴を有する。