この発明の要旨は、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸と、上記掘削・撹拌軸の下端に設けられ、地盤を掘削する掘削翼と、上記掘削・撹拌軸の外周面又は上記掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に少なくとも一端を支持した複数の撹拌翼と、を備え、上記複数の撹拌翼として、上記掘削・撹拌軸と一体に回転する駆動撹拌翼と、上記掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する遊動撹拌翼と、を有し、上記掘削・撹拌軸又は上記ボス部のいずれか一方に設けられ、上記掘削・撹拌軸の周方向について上記掘削・撹拌軸の軸方向に起伏する起伏面を有するカム部と、上記掘削・撹拌軸又は上記ボス部のいずれか他方に設けられ、上記カム部の起伏面に対して摺接可能な接触子を有するカム受部と、により立体カム構造をなし、上記立体カム構造は、上記掘削・撹拌軸の上記ボス部に対する相対回転によって上記遊動撹拌翼を上記起伏面の起伏に応じて振動させることを特徴とする掘削・撹拌具としたことにある。
すなわち、本発明にかかる掘削・撹拌具は、立体カム構造を備えることにより、駆動回転する掘削・撹拌軸を原動軸とし、掘削・撹拌軸の軸方向の所定部分を掘削・撹拌軸と一体的に回転する回転体としての原動節とし、掘削・撹拌軸に遊嵌したボス部を原動節に接触して動く従動節とし、従動節としてのボス部に支持された遊動撹拌翼を掘削撹拌軸の軸方向に沿って起振させ、撹拌翼への土壌付着を抑止することにより、共回り現象を未然に防止せんとするものである。
立体カム構造としては、掘削・撹拌軸のボス部に対する相対回転によって遊動撹拌翼をカム部の起伏面の起伏に応じて振動させることができれば特に限定されることはなく、端面カム構造、溝カム構造を採用できる。また、原動節にカム受部を設けると共に従動節にカム部を設ける、いわゆる逆カム構造であってもよいのは勿論である。
また、各撹拌翼のうち弧状撹拌翼の形状における「弧状」とは、角部を有しない略円弧状の他に、一つの角部を有する略三角形弧状、二つの角部を有する略四角形弧状、さらには、角部を三つ以上有する略多角形状等も含まれる。
また、「弧状」には、角部で翼端が突出した翼形状も含み、角部としてはR状に面取りされているものも含まれる。
また、「弧状」の各形状は、側面視において、撹拌翼が掘削・撹拌軸1の外周面又は同掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して支持される部位よりも軸方向上側又は/及び下側に膨出させた形状をも含む。
また、各撹拌翼の形状は、上述の弧状に限定されることはなく、棒状、板状、帯板状、H字形状、T字形状、L字形状も含まれる。
また、各撹拌翼の部材断面は、矩形、菱形、三角形、多角形、台形、円形、楕円形などであってもよい。
また、各撹拌翼の「板状」とは、幅広の板面を掘削・撹拌軸の軸方向に向けた略水平板状、板面を掘削・撹拌軸の周方向に向けた略鉛直板状であってもよく、板厚や形状おいて限定されることはない。
また、撹拌翼は複数あってもよく、掘削・撹拌軸の軸方向視で中心角において等角度間隔を隔てて、例えば180度、120度、90度、60度間隔等、軸中心に等間隔角度で放射状に配設してもよい。
また、掘削・撹拌軸は、同一軸芯で相対回転駆動する内軸と外軸の二重軸構造を有するように構成されていてもよく、また、掘削翼は、外軸の外周面に設けられる上段掘削翼と、上段掘削翼より下方にある内軸の露出部分の外周面に設けられ、上段掘削翼径未満に形成した下段掘削翼と、で構成することとしてもよい。
〔1.地盤改良装置〕
まず、本発明にかかる掘削・撹拌具を備える地盤改良装置の構成について説明する。図11は、本発明にかかる掘削・撹拌具Aを具備した地盤改良装置Kを示す。図11に示すように、地盤改良装置Kは、地盤Gの改良部分の地上面に設置される。
地盤改良装置Kは、自走可能なベースマシン本体200に設けられ、上下方向に伸延するリーダ210と、リーダ210に昇降自在に取り付けられる回転駆動部220と、上下方向に伸延して形成され、回転駆動部220の下端に取り付けられる掘削・撹拌軸1と、改良材を供給する改良材供給部230と、を備えることを基本構成としている。
ベースマシン本体200の後方位置に配設された改良材供給部230は、改良材を掘削孔内へ供給するための構成であり、改良材供給路231を介して、回転駆動部220に接続した掘削・撹拌軸1内部の改良材供給路と連通連設している。
なお、改良材は地盤を改良するために掘削土と混練される材料であって、地盤改良の目的に合わせて固化材、混和材、添加剤、中和剤、薬剤、化学剤等を採用できる。
改良材供給部230から供給される改良材は、掘削・撹拌軸1内の改良材供給路231を経由して掘削・撹拌具Aに形成した吐出口から掘削孔内へ向けて吐出され、掘削・撹拌具Aにより掘削土と撹拌される。
回転駆動部220は、ベースマシン本体200後部に内蔵した駆動回転ドラムにより吊下げワイヤ221を介してリーダ210の上下方向に沿った移動を可能としている。
吊下げワイヤ221は、一端を駆動回転ドラムに連結すると共に、中途部をリーダ210の最頂部を介して回転駆動部220上部に設けたプーリ222に巻き掛けられ、他端をリーダ210の上端部に連結している。
すなわち、駆動回転ドラムの回転駆動力をリーダ210に沿った上下昇降駆動力に変換して地盤改良における貫入・引抜き時の掘削・撹拌軸1の上下動を行うように構成している。
回転駆動部220内部には図示しない駆動機が搭載されており、掘削・撹拌軸1はその基端で駆動機に連結して回転駆動する。
なお、回転駆動部220内部の駆動機は、駆動力を掘削・撹拌軸の回転力として付与するものであればよく、また、上述した通り相対駆動する二重軸構造を有した掘削・撹拌軸1に対応する二重駆動機であってもよい。
このように構成した地盤改良装置Kは、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材とを混練して地盤改良を行う主要部である掘削・撹拌具Aを備えている。
〔2.実施例1〕
以下、本発明の実施例1にかかる掘削・撹拌具の構成について図面を参照しながら説明する。図1は本実施例にかかる掘削・撹拌具A1の構成を示す側面図、図2及び図3は掘削・撹拌具A1の立体カム構造を示す側面図である。
本実施例にかかる掘削・撹拌具A1は、図1に示すように、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸1と、掘削・撹拌軸1の下端に設けられ、地盤を掘削する掘削翼2と、掘削・撹拌軸1の外周面又は掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部3の外周面に少なくとも一端を支持した複数の撹拌翼と、を備え、複数の撹拌翼として、掘削・撹拌軸1と一体に回転する駆動撹拌翼4と、掘削・撹拌軸1に対して遊動状態で回転する遊動撹拌翼5と、を有している。
駆動撹拌翼4は、横断面視で長手下端縁40aから長手上端縁40bにかけて傾斜する傾斜面40cを有し、左右端のうち一方から他方にかけて漸次狭窄する帯板状に形成した水平撹拌翼40としている。
水平撹拌翼40は、狭窄縁端部40dを掘削・撹拌軸1の半径方向外方に向けると共に掘削・撹拌軸1の回転方向前方側に長手下端縁40bを配置して傾斜面40cをなし、掘削・撹拌軸1と一体に回転することにより傾斜面40cに沿って掘削・改良土を上方に移動させる撹拌を可能としている。
遊動撹拌翼5は、翼縁端部50aを掘削・撹拌軸1の半径方向外方に向けると共に掘削・撹拌軸1の回転方向(掘削・撹拌軸1の円周の接線方向)に対して帯板面50bをその板面を向けて配置し、ボス部3の外周面に支持した帯板状の共回り防止翼50としている。
共回り防止翼50は、掘削翼2の翼径よりも長い翼径となるように形成しており、翼縁端部50aが周辺地盤に係合固定することを可能としている。
掘削・撹拌軸1には、円筒状のボス部3が掘削・撹拌軸1に対して相対回転可能に遊嵌されている。ボス部3の上下方位置には、フランジ状の上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bとが、掘削・撹拌軸1の外周面から掘削・撹拌軸1の半径方向外方に向けて突出しており、ボス部3の上下動を規制している。
換言すれば、ボス部3は、掘削・撹拌軸1の軸方向の所定位置に設けられた上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bとの間の掘削・撹拌軸1の外周に遊嵌され、ボス部3の周縁端部の掘削・撹拌軸1の軸方向における端面を各ボスストッパーの互いに対向するフランジ面に摺接して支持される。
また、掘削・撹拌具A1は、図2及び図3に示すように、掘削・撹拌軸1又はボス部3のいずれか一方に設けられ、掘削・撹拌軸1の周方向について掘削・撹拌軸1の軸方向に起伏する起伏面60を有するカム部6と、掘削・撹拌軸1又はボス部3のいずれか他方に設けられ、カム部6の起伏面60に対して摺接可能な接触子70を有するカム受部7と、により立体カム構造をなしている。
特に本実施例の立体カム構造は、いわゆる端面カム構造であって、カム部6は掘削・撹拌軸1の外周又はボス部3のいずれか一方に設けられ、起伏面60を有する端面カムとする共に、カム受部7は掘削・撹拌軸1又はボス部3のいずれか他方に設けられ、掘削・撹拌軸1の軸方向の端面に接触子70を有するように構成している。
すなわち、端面カム構造では、駆動回転する掘削・撹拌軸1を原動軸Sとし、掘削・撹拌軸1の軸方向の所定部分に設けたボスストッパー8a、8bにカム部6又はカム受部7を形成することにより同ボスストッパー8a、8bを原動節Mとして構成し、ボスストッパー8a、8bに形成されたカム部6又はカム受部7に対応するように掘削・撹拌軸1に遊嵌したボス部3にカム受部7又はカム部6を形成することにより同ボス部3をボスストッパー8a、8bに接触して動く従動節Fとして構成している。
本実施例では、カム部6は、上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bのうち少なくともいずれか一方に設けられ、上側ボスストッパー8aの下端面81a(下側のフランジ面)又は下側ボスストッパー8bの上端面81b(上側のフランジ面)の少なくともいずれか一方の端面を起伏面60となすことにより、同ボスストッパー8a、8bを端面カムに構成している。
換言すれば、カム部6は、ボスストッパー8a、8bの周縁端部80a、80bをその周廻りに沿って一定周期の波線形に切欠き形成した波線輪郭部であり、その切欠面を起伏面60となすことにより、ボスストッパー8a、8bを端面カムとして機能させる。
カム部6の輪郭をなす波線形は、カム受部7の接触子70が波線形の軌道に沿って摺動可能であれば特に限定されることはなく、例えば、正弦波形、三角波形、のこぎり波形であってもよい。なお、カム部6の波線形をのこぎり波形とする場合には、掘削・撹拌軸の回転方向に沿うように波形の底部から頂部にかけて上方傾斜する傾斜面を連続的に形成した起伏面とする。
また、カム部6の波線形によりなす波高さは、起伏面60の掘削・撹拌軸1の軸方向における起伏の最大高低差であり、ボス部3を掘削・撹拌軸1の軸方向に上下運動させるリフト量Lとなる。
なお、複数のカム部6を形成する場合には、ボス部3が掘削・撹拌軸1に対して自由状態で回転可能であれば、カム部6の輪郭をなす波線形をそれぞれ異なる形状とすることは勿論、それぞれの波線形の位相を掘削・撹拌軸1の周方向にずらして形成することができ、また、それぞれの波線形において異なるリフト量Lをなす起伏面60を形成することもできる。
本実施例では、上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bのそれぞれに、同一のリフト量L1、L2を有する上カム部6aと下カム部6bとを設けている。
具体的には、上下2つのボスストッパー8a、8bにおいて、掘削・撹拌軸1の軸方向で互いに対向する周縁端部80a、80bのうち、一方の周縁端部80aを側面視で波線形に形成した一方のカム部6aとなし、他方の周縁端部80bを一方のカム部6aにおける波線形の位相をそのままに掘削・撹拌軸1の軸方向に平行移動して形成した他方のカム部6bとなすことによって、上側ボスストッパー8aの下端面81aと下側ボスストッパー8bの上端面81bとに起伏面60a、60bを形成している。
すなわち、上カム部6aと下カム部6bとは、掘削・撹拌軸1の周方向について各カム部6a、6bをなす波線形を互いに掘削・撹拌軸1の軸方向で同一の位相を保持するように、上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bとの周縁端部80a、80bにそれぞれ形成されており、ボス部3が各カム部6a、6bの波線形に同期した運動を行うことを可能としている。
また、カム受部7は、カム部6に対応するようにボス部3の周縁端部に設けられており、掘削・撹拌軸1の軸方向におけるボス部3の周端面に接触子70を突出して構成している。
接触子70の形状は、その先端でカム部6の起伏面60に摺動可能であれば限定されることはなく、例えばその先端を、側面視で、平端状、突端状、円端状、又は球端状にすることができる。円端状又は球端状であれば、同円端や球端を、摺動方向に沿って回転可能としたローラー端状にすることもできる。なお、本実施例の接触子70は先端を円端状にしている。
また、接触子70の長さT(掘削・撹拌軸1の軸方向における接触子70の基端から先端までの距離)は、カム部6におけるリフト量L以上となるように形成している。
また、接触子70の数は、カム部6の波線形に沿って滑動可能であれば特に限定されることはない。すなわち、接触子70は、掘削・撹拌軸1の周方向について、カム受部7の接触子70とカム部6の起伏面60との接触点Pの移動軌跡が同一となる位置に、複数形成することができる。
本実施例では、ボス部3の軸方向の上側周縁端部30aと下側周縁端部30bとに、それぞれ上カム受部7aと下カム受部7bを形成している。
具体的には、上カム受部7aと下カム受部7bとは、互いの接触子70a、70bを掘削・撹拌軸1の周方向の所定位置で掘削・撹拌軸1の軸方向に沿って同一直線上に(掘削・撹拌軸1の周方向について同位相で)配置すると共に、同接触子70a、70bをボス部3の上下端面31a、31bからそれぞれ掘削・撹拌軸1の軸方向外方に向けて突出して形成して構成している。
このように上下2つのカム受部7a、7bを周縁端部30a、30bに形成したボス部3が、上下2つのカム部6a、6bを備えた上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bとの間の掘削・撹拌軸1に遊嵌されている。
なお、上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bとの間の距離H(掘削・撹拌軸1の軸方向において、接触子70又は起伏面60を有する場合にはその頂部面を端面とし、上側ボスストッパー8aの下端面81aと下側ボスストッパー8bの上端面81bとの間の距離)は、上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパーとの間でボス部3を自由状態で回転可能とする長さとしている。
具体的には、距離Hは、ボス部3の軸方向最大長さh(掘削・撹拌軸1の軸方向において、接触子70又は起伏面60を有する場合にはその頂部面を端面とし、ボス部3の上端面31aから下端面31bまでの間の距離。)以上となるようにしている。
このような構成により、ボス部3を下側ボスストッパー8bと上側ボスストッパー8aとの間の掘削・撹拌軸1に遊嵌した場合には、下側ボスストッパー8bの下カム部6bとボス部3の下カム受部7bの接触子70bが当接した状態となると共に、上側ボスストッパー8aの上カム部6aとボス部3の上カム受部7aとの間に背隙を形成し、ボス部3が回転可能となる。
また、端面カム構造としては、上述したカム部6及びカム受部7が設けられる節を原動節Mと従動節Fとで逆にした逆カム構造としてもよく、図3に示すようにカム部6は従動節Fとしてのボス部3に設けると共に、カム受部7は原動節Mとしてのボスストッパー8a、8bに設けることとしてもよい。
すなわち、カム部6はボス部3の周縁端部30a、30bに設けられ、同ボス部3を起伏面60を有する端面カムとすると共に、カム受部7は掘削・撹拌軸1の外周に一体に設けたボスストッパー8a、8bの周縁端部80a、80bに設けられ、掘削・撹拌軸1の軸方向の周端面81a、81bに接触子70を有するように構成している。
このように構成した端面カム構造を備える掘削・撹拌具A1は、以下のように作動する。まず、遊動撹拌翼5としての共回り防止翼50は、図1に示すように掘削孔内において、翼縁端部50aを周辺地盤に係合固定し、掘削・撹拌軸1の回転方向に対して不動状態としている。換言すれば、共回り防止翼50が支持されるボス部3は、掘削・撹拌軸1の回転方向に対し、遊動撹拌翼5を介して不動状態としている。
このような状態で原動軸Sとしての掘削・撹拌軸1が駆動回転した場合、同掘削・撹拌軸1に支持された駆動撹拌翼4や原動節Mとしての2つのボスストッパー8a、8bは、掘削・撹拌軸1と一体的に回転する。
すなわち、2つのボスストッパー8a、8bがカム部6a、6bと共に回転するに伴い、同カム部6a、6bの波線形における位相が、掘削・撹拌軸1の回転方向に沿って変位する。
この際、カム受部7a、7bの接触子70a、70bとカム部6a、6bの起伏面60a、60bとの接触点Pはカム部6a、6bにおける波線輪郭に沿った波線形の軌跡を描き、接触子70a、70bがカム部6a、6bの起伏面60a、60bに摺動しつつ案内される。
すなわち、従動節Fとしてのボス部3は、接触子70a、70bを介して原動節Mとしてのボスストッパー8a、8bのカム部6a、6bの波線輪郭に追従し、掘削・撹拌軸1の径方向視で起伏面60a、60bの高低差となるリフト量L1、L2に応じて掘削・撹拌軸1の軸方向へ上下する運動を行う。
その結果、遊動撹拌翼5が、掘削・撹拌軸1の駆動回転に伴い掘削・撹拌軸1の軸方向上下に運動するボス部3を介して、掘削・撹拌軸1の軸方向に沿った上下運動をして起振する。
このように掘削・撹拌具A1にかかる立体カム構造は、掘削・撹拌軸1のボス部3に対する相対回転によって遊動撹拌翼5を起伏面60の起伏に応じて振動させることを可能としている。
そして、起振した遊動撹拌翼5が、その振動応力を翼近傍の掘削・改良土に作用させて掘削・改良土を振動させることにより、遊動撹拌翼5の翼表面への土壌付着を抑止する「土壌付着抑制作用」を生起し、掘削・改良土の土塊の形成を防止する効果がある。
さらには、「締まり込み防止作用」を生起して、掘削・撹拌具A1の貫入・引抜き動作に伴う土壌抵抗を低減化することができ、掘削・改良土の土壌通過を促進して施工スピードを大幅に向上する効果がある。
〔3.実施例2〕
次に、本発明にかかる掘削・撹拌具の実施例2について説明する。図4は掘削・撹拌具A2の立体カム構造を示す側面図である。なお、以下において、実施例1にかかる掘削・撹拌具A1と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
本実施例にかかる掘削・撹拌具A2は、掘削・撹拌具A1と略同様の構成を備えているが、端面カム構造を、ボス部3の下側周縁端部30bと下側ボスストッパー8bの上側周縁端部80bにのみ構築している点で構成を異にする。
すなわち、カム部6は、掘削・撹拌軸1に設けた下側ボスストッパー8bの上側周縁端部80bに設けられる下カム部6bであって、下側ボスストッパー8bの上端面81bを起伏面60bとなすことにより、下側ボスストッパー8bを端面カムに構成している。
一方、カム受部7は、カム部6に対応するボス部3の下側周縁端部30bに設けられた下カム受部7bであって、掘削・撹拌軸1の軸方向におけるボス部3の下側周端面31bに接触子70bを突出して構成している。
また、上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bの間の距離Hは、下カム部6bのリフト量L2とボス部3の軸方向の最大長さhの総和よりやや長くなるようにしている。
換言すれば、上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bとは、上側ボスストッパー8aの下端面81aとボス部3の上端面31aとの間に、下カム部6bのリフト量L2以上の長さの間隙Vを形成するように、掘削・撹拌軸1の外周に取り付けられる。
このような構成により、掘削・撹拌具A2は、以下のように作動する。すなわち、掘削・撹拌具A2を掘削孔内に定置させた場合、又は掘削・撹拌具A2の引抜き動作をした場合には、ボス部3は、同ボス部3に支持された遊動撹拌翼5の重量や、引抜き動作時に遊動撹拌翼5の上方から負荷される土壌抵抗により、掘削・撹拌軸1の軸方向下方に降下して常に掘削・撹拌軸1の下側ボスストッパー8bに当接した状態となる。
すなわち、ボス部3の下カム受部7bと下側ボスストッパー8bの下カム部6bとが、接触子70bを介して接触した状態となる。
このような状態で掘削・撹拌軸1が回転した場合、ボス部3が、掘削・撹拌軸1の回転方向に対して不動状態を保持したままで、下カム部6bの起伏面60bに接触子70bを介して摺動してカム部6の波線輪郭に沿って案内され、起伏面60bの高低差に応じたリフト量L2で掘削・撹拌軸1の軸方向上下に運動する。
一方で、掘削・撹拌具A2の貫入動作をした場合には、ボス部3は、貫入動作時に遊動撹拌翼5の下方から負荷される土壌抵抗により、掘削・撹拌軸1の軸方向下方にスライド上昇する。
上昇したボス部3は、上側ボスストッパー8aに当接すると共にボス部3の下カム受部7bと下側ボスストッパー8bの下カム部6bを離反させて互いの接触状態を解除する。
その結果、遊動撹拌翼5を、掘削・撹拌具A2の掘削孔内定置時や引抜き動作時に振動状態とし、掘削・撹拌具A2の貫入動作時に振動停止状態とすることができ、周辺地盤の土質特性に応じて貫入・引抜き動作や撹拌動作を行うことができる効果がある。
〔4.実施例3〕
次に、本発明にかかる掘削・撹拌具の実施例3について説明する。図5は掘削・撹拌具A3の立体カム構造を示す側面図である。本実施例にかかる掘削・撹拌具A3は、掘削・撹拌具A1及び掘削・撹拌具A2と略同様の構成を備えているが、端面カム構造を、掘削・撹拌具A2とは上下逆に、ボス部3の上側周縁端部30aと上側ボスストッパー8aの下側周縁端部30bにのみ構築している点で構成を異にする。
すなわち、カム部6は、掘削・撹拌軸1に設けた上側ボスストッパー8aの下側周縁端部30bに設けられる上カム部6aであって、上側ボスストッパー8aの下端面81aを起伏面60aとなすことにより、上側ボスストッパー8aを端面カムに構成している。
一方、カム受部7は、カム部6に対応するボス部3の上側周縁端部30aに設けられた上カム受部7aであって、掘削・撹拌軸1の軸方向におけるボス部3の端面に接触子70を突出して構成している。
このような構成により、掘削・撹拌具A3は、掘削・撹拌具A2とは逆の作動を行う。
すなわち、掘削・撹拌具A2の貫入動作をした場合には、ボス部3が貫入動作時に遊動撹拌翼5の下方から負荷される土壌抵抗により掘削・撹拌軸1の軸方向下方に上昇し、ボス部3の上カム受部7aと上側ボスストッパー8aの上カム部6aとが、接触子70aを介して接触状態となる。
一方で、掘削・撹拌具A3を掘削孔内に定置させた場合又は掘削・撹拌具A3の引抜き動作をした場合には、ボス部3に支持された遊動撹拌翼5の重量や引抜き動作時に遊動撹拌翼5が受ける土壌抵抗による下方応力により、ボス部3が、掘削・撹拌軸1の軸方向下方にスライド降下して、上カム受部7aと上カム部6aとの接触状態を解除する。
その結果、遊動撹拌翼5を、掘削・撹拌具A3の掘削孔内定置時や引抜き動作時に振動停止状態とし、掘削・撹拌具A3の貫入動作時に振動状態とすることができ、掘削・改良土の締まり込みに対応した引抜き動作を可能とする効果がある。
〔5.実施例4〕
次に、本発明にかかる掘削・撹拌具の実施例4について説明する。図6は掘削・撹拌具A4の立体カム構造を示す側面図である。本実施例にかかる掘削・撹拌具A4は、掘削・撹拌具A1と略同様の構成を備えているが、ボス部3と上下2つのボスストッパー8a、8bとの間に、ボス部3が掘削・撹拌軸1の軸方向上方にスライド昇降する余裕空間として、スライド隙間V1を有する点で構成を異にする。
すなわち、上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bの間の距離H1は、下側ボスストッパー8bの下カム部6bのリフト量L2と、ボス部3の軸方向の最大長さhと、スライド隙間V1と、の総和と略同じとなるようしている。
換言すれば、上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bとは、上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bとの間で、両ボスストッパー8a、8bに対してボス部3が非接触状態となることを可能とするスライド隙間V1を形成するように、掘削・撹拌軸1の外周に取り付けられている。
このような構成により、ボス部3の掘削・撹拌軸1の軸方向へのスライド距離をスライド隙間V1の分だけ稼ぎ、遊動撹拌翼5を振動状態又は振動停止状態とするタイミングにタイムラグを発生させることができる。
具体的には、掘削・撹拌具A4を貫入動作状態から定置状態に転じた直後において、ボス部3は、遊動撹拌翼5の重量により掘削・撹拌軸1の軸方向下方にスライド降下して上カム受部7aと上カム部6aとの接触状態を解除し、下カム受部7bを下カム部6bに接触させるが、スライド距離がスライド隙間V1の分だけ長いためスライド降下途中においてカム受部7とカム部6との接触解除状態を保持することとなる。
一方で、掘削・撹拌具A4の引抜き動作状態から貫入動作状態に転じた直後において、ボス部3は、掘削・撹拌軸1の軸方向上方にスライド上昇して下カム受部7bと下カム部6bとの接触状態を解除し、上カム受部7aを上カム部6aに接触させるが、スライド上昇中においてはカム受部7とカム部6との接触解除状態を保持することとなる。
すなわち、ボス部3の掘削・撹拌軸1の軸方向に沿ったスライド昇降途中で、ボス部3のカム受部7a、7bをカム部6a、6bに対して非接触状態とし、遊動撹拌翼5を振動停止状態にすることができる効果がある。
〔6.実施例5〕
次に、本発明にかかる掘削・撹拌具の実施例5について説明する。図7及び図8は掘削・撹拌具A5の立体カム構造を示す側面図である。本実施例にかかる掘削・撹拌具A5は、掘削・撹拌具A1と略同様の構成を備えているが、立体カム構造を、溝カム構造としている点で構成を異にする。
すなわち、本実施例にかかる溝カム構造は、図7及び図8に示すようにカム部9は掘削・撹拌軸1の外周又はボス部3の内周のいずれか一方に設けられ、起伏面91を有するカム溝90を有すると共に、カム受部10はボス部3の内周又は掘削・撹拌軸1の外周のいずれか他方に設けられ、カム溝90に摺接可能な接触子100としての突起101を有するように構成している。
換言すれば、溝カム構造では、図7(a)に示すように駆動回転する掘削・撹拌軸1を原動軸Sとし、掘削・撹拌軸1において軸方向所定位置の外周壁11をカム部9又はカム受部10として形成することにより同外周壁11を原動節Mとして構成し、同外周壁11に形成したカム部9又はカム受部10に対応するように掘削・撹拌軸1に遊嵌したボス部3の軸方向所定位置の内周壁32にカム受部10又はカム部9を形成することにより同ボス部3を掘削・撹拌軸1の外周壁11に接触して動く従動節Fとして構成している。
カム部9は、図7(b)に示すように掘削・撹拌軸1の軸方向所定位置の外周壁11に対し、溝方向を掘削・撹拌軸1の径方向内方とし、且つ図7(a)に示すように掘削・撹拌軸1の周廻りに沿って一定周期の波線形としたカム溝90を形成することにより構成している。
カム溝90は、上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bとの間の掘削・撹拌軸1の軸方向略中央部を通る波線形の溝であり、カム溝90中の掘削・撹拌軸1の軸方向の上下端面を起伏面91a、91bとしている。
また、カム溝90の溝幅は、接触子100としての突起101が遊嵌されてカム溝90中を滑動できるように形成している。
カム受部10は、接触子100として突出方向を掘削・撹拌軸1の径方向内方としボス部3の内周壁32の中央位置で突起101を突出して形成することにより構成している。
突起101は、図7(a)及び図7(b)に示すようにボス部3の内周壁32において、ボス部3に支持される遊動撹拌翼5の基端中央部を通るように掘削・撹拌軸1の径方向に伸延する仮想中心線C上に配置されている。
また、突起101の形状、すなわち接触子100の形状は、上述のごとくカム部9の起伏面60a、60bに摺接可能であれば限定されることはないが、起伏面60a、60bに対して点接触又は線接触する摺動端面を有した形状が、摺動摩擦抵抗を低減化する上で好ましい。本実施例の突起101は、円柱状としており、その外周面でカム溝90の起伏面60a、60bに線接触するようにしている。
また、突起101の数は、カム溝90に遊嵌されてカム溝90の波線形に沿って滑動できれば特に限定されることはない。すなわち、カム受部10は、ボス部3の内周壁32において、掘削・撹拌軸の周方向についてカム溝90内の起伏面91に沿って滑動変異する軌跡を同一とする複数位置に、突起101を形成することができ、本実施例では2つの突起101を形成している。
このようなカム受部10を内周壁32に形成したボス部3が、上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bとの間の掘削・撹拌軸1に遊嵌されている。
すなわち、ボス部3は、カム受部10の突起101を上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bとの間の掘削・撹拌軸1のカム部9のカム溝90に遊嵌すると共に、上側ボスストッパー8aと下側ボスストッパー8bとの間の掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌している。
このような構成により、ボス部3の内周壁32に形成したカム受部10の突起101がその外周面で掘削・撹拌軸1の外周壁11に形成したカム溝90の起伏面91に接触することを可能とし、突起101がカム溝90に確実に案内されることを可能としている。
換言すれば、掘削・撹拌具A5の立体カム構造は、突起101がカム溝90内の起伏面91から離れることがなく、従動節Fの掘削・撹拌軸1の軸方向の動きがカム部9により拘束された、確動カム構造としている。
また、溝カム構造としては、実施例1と同様に、カム部9及びカム受部10が設けられる節を原動節Mと従動節Fとで逆にした逆カム構造としてもよく、図8に示すようにカム部9は従動節Fとしてのボス部3に設けると共に、カム受部10は原動節Mとしての掘削・撹拌軸1の外周壁11に設けることもできる。
すなわち、カム部9はボス部3の内周壁32に設けられ、起伏面91を有するカム溝90を有すると共に、カム受部10は掘削・撹拌軸1の外周壁11に設けられ、接触子100としてカム溝90に摺接可能な突起101を有するように構成している。
このように構成した溝カム構造を備える掘削・撹拌具A5は、A1と同様に、以下のように作動する。すなわち、原動軸Sとしての掘削・撹拌軸1が駆動回転するに伴い、同掘削・撹拌軸1に支持された駆動撹拌翼4や原動節Mとしての外周壁11のカム部9が掘削・撹拌軸1と一体的に回転する。
このカム溝90の回転に伴いカム溝90の波線形によりなす位相は、掘削・撹拌軸1の回転方向に沿って移動変位する。
すなわち、カム溝90内に遊嵌された接触子100として突起101がその外周面でカム溝90の起伏面91に摺動しながら波線形軌道を描くように案内され、同突起101を有したボス部3が掘削・撹拌軸1の径方向視で起伏面91の高低差に応じたリフト量Lで掘削・撹拌軸1の軸方向に上下する運動を行う。
その結果、遊動撹拌翼5が、掘削・撹拌軸1の駆動回転に伴い掘削・撹拌軸1の軸方向上下に運動するボス部3を介して、掘削・撹拌軸1の軸方向に沿って上下運動をして起振することとなり、その振動応力を翼近傍の掘削・改良土に作用させて掘削・改良土を振動させることにより、遊動撹拌翼5の翼表面への土壌付着を抑止し、掘削・改良土の土塊の形成を防止する効果がある。
特に掘削・撹拌具A5は、立体カム構造として確動カム構造を採用しているため、掘削・撹拌軸1を高速回転させた場合であっても、遊動撹拌翼5の高精度の起振動を可能とする効果がある。
〔7.実施例6〕
次に、本発明にかかる掘削・撹拌具の実施例6について説明する。図9は掘削・撹拌具A6の構成を示す側面図である。本実施例にかかる掘削・撹拌具A6は、掘削・撹拌具A2及掘削・撹拌具A3と略同様の構成を備えているが、遊動撹拌翼の形状及び配置構成を異にする。
すなわち、複数の撹拌翼のうち周方向の最も外側の撹拌翼は遊動撹拌翼5とし、少なくとも2以上のボス部3に跨持され掘削・撹拌軸1から外方へ膨出させて弧状に形成した弧状撹拌翼51としている。
弧状撹拌翼51は、側面視で翼の弧状外形をなす帯板状の翼本体部51aと、翼本体部51aから屈曲部を経て少なくとも2以上のボス部3a、3bに向けて伸延し、同ボス部3a、3bと連結する少なくとも2以上の翼支持部51b、51b’と、を有している。
翼本体部51aは、掘削・改良土の静止撹拌域に配置されて土壌抵抗受け部として機能すると共に周辺地盤に係合する係合端部として機能する。
翼支持部51bは、基本的には翼本体部51aの両端から屈曲して伸延し、翼本体部51aを支持する部位であるが、翼本体部51aの両端の他に、その中途部にもボス部3の数に応じて延設することができる。
本実施例の翼支持部は、上下2つのボス部3a、3bに対応するように弧状撹拌翼51の両端部として上側翼支持部51bと下側翼支持部51b’とを有し、それぞれ翼本体部51aの両端縁からボス部3a、3bに向けて延設している。
また、弧状撹拌翼51は、弧状撹拌翼51の最大改良径を掘削径以下となるようにしている。具体的には、弧状撹拌翼51は、弧状撹拌翼51の弧状撹拌翼径rを掘削翼2の掘削翼径R以下となるように形成している。
なお、弧状撹拌翼径rとは、弧状撹拌翼本体に付随する翼を含めた弧状撹拌翼51の回転半径を意図しており、例えば弧状撹拌翼51の翼本体部51aや翼支持部51b、51b’の外側に補助翼を備えている場合には弧状撹拌翼51の回転に伴い最外周側に位置する補助翼までの周半径である。
また、複数の撹拌翼として、駆動撹拌翼4と遊動撹拌翼5とが、弧状撹拌翼51から内側にかけて、所定間隔を隔てて交互に配置されている。
すなわち、複数の撹拌翼のうち、遊動撹拌翼5と駆動撹拌翼4とが、遊動撹拌翼5である弧状撹拌翼51から軸方向中央部(弧状撹拌翼が跨持される上下ボス部間における掘削・撹拌軸1の中央部)に向ってそれぞれの撹拌翼の外形に沿う間隔を隔て、掘削・撹拌軸1に対して順番に配設されている。
より具体的には、遊動撹拌翼5と駆動撹拌翼4とは、掘削・撹拌軸1の軸回りにおいて互いに同位相にある状態で、側面視において後述するそれぞれの翼本体部の軸方向中央部を中心に内外翼層状として略同心円的配置となるように略波紋状に掘削・撹拌軸1に対して配設している。
駆動撹拌翼4は、帯板を中途部で屈曲してヘ字形状又は略L字形状をなした片持撹拌翼41である。
片持撹拌翼41は、掘削・撹拌軸1の軸方向に沿う帯板状の翼本体部41aと、翼本体部41aの一端から屈曲部を経て伸延する翼支持部41bと、を有している。
片持撹拌翼41は、翼本体部41a先端を掘削・撹拌軸1の軸方向上方に向けて、且つ2つの上下2つのボス部3a、3bの間で露出する掘削・撹拌軸1の外周面に翼支持部41bを接続することにより、掘削・撹拌軸1の外周廻りに支持されている。
また、掘削・撹拌軸1に遊嵌された上下2つのボス部3a、3bのうち、上側ボス部3aには、最内側に位置する遊動撹拌翼5としての片持撹拌翼52が、その翼本体部52aの先端方向を、駆動撹拌翼4としての片持撹拌翼41の翼本体部41a先端方向と上下逆に翼支持部51bを接続して支持されている。
また、弧状撹拌翼51が跨持される上下2つのボス部3a、3bは、実施例2で説明した端面カム構造と実施例3で説明した端面カム構造と、をそれぞれ有している。
すなわち、掘削・撹拌軸の軸方向の所定位置に遊嵌される上下2つボス部3a、3bのうち、上側ボス部3aは、図5で示したようにその上側周縁端部30aに上カム受部7aを設け、掘削・撹拌軸1の軸方向における上側ボス部3aの端面に接触子70aを突出すると共に、下側ボス部3bは、図4で示したようにその下側周縁端部30bに下カム受部7bを設け、掘削・撹拌軸1の軸方向における下側ボス部3bの端面に接触子70bを突出している。
一方で、上側ボス部3a上方の上側ボスストッパー8aは、図5で示したように下側周縁端部80aに上カム部6aを設けて上側ボスストッパー8aの下端面81aを起伏面60aとなすと共に、下側ボス部3b下方の下側ボスストッパー8bは、図4で示したように上側周縁端部80bに下カム部6bを設けて下側ボスストッパー8bの上端面81bを起伏面60bとなしている。
しかも、上側ボス部3aの上側ボスストッパー8aにおける上カム部6aと、下側ボス部3bの下側ボスストッパー8bにおける下カム部6bとは、波線形の位相をそのままに掘削・撹拌軸1の軸方向に平行移動した波形輪郭をなしている。
なお、上下2つのボス部3a、3bにおける立体カム構造は、上下2つのカム部9をなす波線形が掘削・撹拌軸1の軸方向で同一の位相を保持していれば、上述した溝カム構造であってもよいことは勿論である。
以上のように構成した掘削・撹拌具A6は、以下のように作動する。すなわち、弧状撹拌翼51は、掘削孔内で翼本体部51aを静止撹拌域に配置されて掘削・改良土による回転抵抗力を受け、掘削・撹拌軸1の回転方向に対して不動状態となる。
また、上下2つのボス部3a、3bは、弧状撹拌翼51を介して掘削・撹拌軸1の回転力に対する反力を伝えられて不動状態となるため、上側ボス部3aに支持された内側の片持撹拌翼52も不動状態となる。
このような状態で掘削・撹拌軸1の駆動回転した場合、不動状態の弧状撹拌翼51や片持撹拌翼52が、これらの周半径中間に位置する駆動撹拌翼4の片持撹拌翼41との間でせん断力を生起し、遊動撹拌翼5と駆動撹拌翼4とによる相対撹拌を実現する効果がある。
しかも、不動状態の弧状撹拌翼51や片持撹拌翼52が以下のようにして起振動する。掘削・撹拌軸1の回転に伴い、ボスストッパー8a、8bがカム部6a、6bと共に回転し、上下2つのボス部3a、3bの接触子70a、70bがカム部6a、6bの起伏面60a、60bに摺動し、軌跡を同じくしてカム部6a、6bの波線形軌道に沿って案内される。
すなわち、従動節Fとしての2つのボス部3a、3bが同期して、接触子70a、70bを介して原動節Mとしてのボスストッパー8a、8bのカム部6a、6bの波線輪郭に追従することにより、掘削・撹拌軸1の径方向視で起伏面60a、60bの高低差であるリフト量L1、L2に応じて掘削・撹拌軸1の軸方向へ上下する運動を行う。
その結果、弧状撹拌翼51と片持撹拌翼52が、掘削・撹拌軸1の駆動回転に伴い掘削・撹拌軸1の軸方向上下に運動するボス部3a、3bを介して、掘削・撹拌軸1の軸方向に沿って上下運動をして起振することとなる。
起振動した弧状撹拌翼51や片持撹拌翼52は、同振動応力を翼近傍の掘削・改良土へ伝達して各撹拌翼の周方向の最外側と最内側とで「土壌付着抑制作用」と「締まり込み防止作用」とを効果的に生起する。
すなわち、起振動する内外複数の遊動撹拌翼5により、同振動応力を、弧状撹拌翼の弧状形により囲まれた掘削・改良土に対して、最外側の弧状撹拌翼51が外側から内側に向けて作用させると共に、最内側の片持撹拌翼52が内側から外側に向けて作用させる立体的振動を可能とし、「土壌付着抑制作用」と「締まり込み防止作用」とより効果的に生起して、撹拌効率を飛躍的に向上することができる効果がある。
〔8.実施例7〕
次に、本発明にかかる掘削・撹拌具の実施例7について説明する。図10は掘削・撹拌具A8の構成を示す側面図である。本実施例にかかる掘削・撹拌具A7は、掘削・撹拌具A6と略同様の構成を備えているが、遊動撹拌翼の形状を異にする。
すなわち、弧状撹拌翼53は、掘削・撹拌軸1に対して捩じり形状又は同軸方向に対して傾斜させた形状としている。
具体的には、弧状撹拌翼53は、図10に示すように側面視で弧状撹拌翼の弧状の外形をなす帯板状の翼本体部53aや翼支持部53b、53b’を有し、翼本体部53aや翼支持部53bの板面を上下方向に対して傾斜する傾斜面53cとなし、掘削・撹拌具A7の貫入・引抜き動作に伴って傾斜面53cに受ける土壌抵抗により回転作動するように形成している。
このような形状の弧状撹拌翼53を掘削・撹拌軸1に遊嵌した立体カム構造を有する少なくとも2つ以上のボス部3a、3bに跨持することにより、弧状撹拌翼53と駆動撹拌翼4とによる複雑な相対回転撹拌を実現することができ、しかも弧状撹拌翼53を起振動させて「土壌付着抑制作用」、「締まり込み防止作用」を生起して「共回り防止効果」を確実に得ることができる効果がある。
上述してきたように、本実施例にかかる掘削・撹拌具によれば、掘削・撹拌軸と同掘削・撹拌軸に遊嵌したボス部とに端面カム構造や溝カム構造などの立体カム構造を構築することにより、掘削・撹拌軸の回転方向に対して周辺地盤に係合し、或いは掘削・改良土から回転抵抗力を受けて静止状態となった遊動撹拌翼が、掘削・撹拌軸の回転に伴いボス部を介して軸方向に起振動することができる効果がある。
また、起振動した遊動撹拌翼が、その振動応力を翼近傍の掘削・改良土に作用させて掘削・改良土を振動させることにより、遊動撹拌翼の翼表面への土壌付着を抑止する「土壌付着抑制作用」を生起し、掘削・改良土の土塊の形成を防止することができる効果がある。
さらには、同振動応力の掘削・改良土への伝達により、掘削孔内で掘削・撹拌施工に伴い掘削・改良土の密度が大きくなる掘削・改良土の締まり込みを抑止する「締まり込み防止作用」を生起し、掘削・撹拌具の貫入・引抜き動作に伴う土壌抵抗を低減化することができ、掘削・改良土の土壌通過を促進して施工スピードを大幅に向上することができる効果がある。
すなわち、本発明によれば、共回り現象の発生原因となる土壌付着を低減化する機構を比較的簡単にして、製造コストや管理維持コストを安価にすることができ、共回り現象を確実に防止することができる掘削・撹拌具を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。また、本発明は上述の実施の形態に限定されることはなく、本発明にかかる技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。そして、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。