この発明は、地盤改良装置の掘削・撹拌具に関する。
従来、地盤改良装置の掘削・撹拌具は、撹拌翼を回転するための掘削・撹拌軸により分類すると、多重軸型の掘削・撹拌具(以下、単に多重軸型とも言う。)と単軸型の掘削・撹拌具(以下、単に単軸型とも言う。)とに大別される。
多重軸型は、掘削・撹拌軸の下端部で中途部を外方に膨出して弧状に形成した内側と外側からなる撹拌翼を、それぞれ別々に回転駆動する内・外二軸相対回転構造の掘削・撹拌軸に取付け、各撹拌翼をそれぞれ反対方向に相対回転させるいわゆる相対撹拌構造とし、掘削土と改良材との共回りを防止している。(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
他方、単軸型は一本の掘削・撹拌軸に内側と外側の撹拌翼を取付け、内側・外側撹拌翼を同時に一方向に回転させて掘削した掘削土を改良材と共に混練するものであり、掘削土と改良材が撹拌翼の回転に伴って共回りするのを防止すべく内側・外側撹拌翼の何れか一方の翼を単軸で回転させると共に、他方の翼は単軸回転と一体回転しないよう遊動状態となるように構成している。
すなわち、単軸型は、回転しない翼(以下、単に固定翼とも言う。)を掘削孔の内周壁である未掘削地盤に当接係合したことによる回転方向に対する抵抗を利用することにより掘削孔中に固定して不動状態とし、回転する翼(以下、単に回転駆動翼とも言う。)を掘削・撹拌軸と一体回転する駆動状態とすることにより共回りを防止し、掘削土と改良材との撹拌混合を可能としている。
例えば、こうした単軸型の掘削・撹拌具としては、外側撹拌翼を回転駆動翼とし、内側撹拌翼を固定翼とするように未掘削地盤に当接係合した固定翼と接続したもの(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)や、逆に内側撹拌翼を回転駆動翼とし、外側撹拌翼を固定翼としたもの(例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7参照。)が提案されている。
すなわち、単軸型において、掘削孔中において回転駆動翼近傍の掘削土や改良材は共に回転し、固定翼近傍の掘削土や改良材は静止状態で滞留するため、掘削土や改良材が相対的に撹拌している状態を生起し一軸の掘削・撹拌軸にもかかわらず相対的な羽根切り撹拌機能を達成するように構成されている。
特開平7−42146号
特開2005−320830号
特開2009−102872号
特開2014−88758号
特開2006−37432号
特開2008−57322号
特開2011−69093号
このような単軸型の掘削・撹拌具の固定翼は何れも、径方向視で掘削翼の掘削径(以下、改良径とも言う。)以上の大きさを有するように形成したり、改良径以上の大きさを有する部材と連動するように構成したりすることで、掘削孔周壁の未掘削地盤に係合可能としている。
例えば、固定翼とは別の掘削径以上の抵抗翼とボス部を介して固定翼を構成したり、外側撹拌翼の径或いは外側撹拌翼に抵抗板を設けて改良径以上に形成して固定翼を構成するなどして、上述の共回り現象の防止をしている。
また、互い違いに向き合った内外複数の水平撹拌翼を突設して翼による羽根切り回数を上げて撹拌効率を向上しようとするものもある。
ところで、掘削・撹拌具は、掘削孔中で上下万遍なく掘削土と改良材の撹拌を行うために、掘削・撹拌軸を掘削孔の上下方向に対して貫入・引き抜きの昇降操作を行い軸方向の撹拌を行うものである。
しかしながら、不動状態の固定翼或いは固定翼を設けるための部材は上述のごとく改良径以上となるように構成されて掘削孔の周壁である未掘削地盤と係合しているため、昇降操作の際に昇降抵抗が大きくなり、却って地盤改良のための掘削混練作業の施工効率を著しく低下させる欠点があった。
また、掘削・撹拌具は、撹拌翼近傍に存在する掘削土や改良材、改良土等(以下、単に掘削・改良土とも言う。)に対してせん断力を与えることで、上述のごとく撹拌翼と共に回転する掘削・改良土と、撹拌翼と共に回転しない掘削・改良土との間で、掘削・撹拌土の複雑な混練・撹拌を行うものである。
こうした掘削孔中における撹拌翼の掘削・改良土に対するせん断力の分布傾向は、掘削・改良土の性質、各撹拌翼の形状や掘削・撹拌軸に対する配設位置等により掘削・改良土に発生する撹拌影響範囲を決定する「せん断線」として定義できる。
すなわち、「せん断線」とは、掘削孔内の掘削・撹拌具の撹拌翼の間に存在する掘削・改良土を、その流動性や粘着性、付着力により回転駆動翼の回転力の回動影響を直接的に受けて同翼につれ回される掘削・改良土の回転撹拌領域と、回転駆動翼の直接的な影響を受けず静止状態、或いは回転駆動翼の回動影響を間接的に受けて回転が遅延した状態の掘削・撹拌土の静止撹拌領域とに区分する線であり、掘削・撹拌土のせん断破断面を決定する線でもある。
そして、このような「せん断線」の観点から上述のした水平撹拌翼210、310を備える従来の掘削・撹拌具100をみれば、図20に示すように、側面視において掘削・撹拌土の混合撹拌のせん断線が互い違いの水平突起の先端部分を迂回した仮想ジグザグ線S2(図20中、実線で示す。)となりせん断線をその分長くしてせん断抵抗を増加している。
換言すれば、一般的な水平撹拌翼210、310を有する掘削・撹拌具100では、駆動撹拌翼200となる水平撹拌翼210端が径方向視で改良径d端近傍まで突出しているため、「せん断線」は撹拌径端(図20中、破線で示す。)に沿って発生することとなる。
また、回転撹拌領域の掘削・撹拌土の流動性や粘着性も相俟って、駆動撹拌翼200の回動影響範囲を拡大し、外側撹拌翼310近傍に存在する掘削・撹拌土にまでその影響を伝達してしまい、掘削孔中に静止撹拌領域を形成することなく掘削・撹拌土等の共回りの原因となっていた。
よって共回り現象を防止するためには、外側撹拌翼310を不動状態の固定翼300とし、この固定翼300或いは固定翼300を設けるための部材、例えば固定板320を未掘削地盤へ確実に突入させるなど、上述の如く固定翼300を改良径d以上の大きさを有する部材と連動するように構成することで、掘削孔周壁の未掘削地盤に係合可能としてより多くの抵抗力を確保し、掘削・撹拌土の静止撹拌領域を拡大することが必要となっていた。
他方、多重軸型の回転駆動する内・外二軸相対回転構造のそれぞれの軸に対し、中途部を外方に膨出して弧状に形成した内側と外側の撹拌翼を取付け、内側・外側撹拌翼をそれぞれ反対方向に相対回転させるいわゆる相対撹拌翼構造においては、掘削孔中での混合撹拌効率の面では理にかなっているとも思える。
しかしながら、多重軸型の内・外二軸相対回転構造とするためには、駆動モーターに二重反転歯車機構を介して内・外側二重軸の上端部を連動連結しなければならず、改良装置全体が必然的に大型化してしまい、かかる地盤改良装置の製造コストが高価となり、ひいては地盤改良工事の施工費の高騰につながる欠点があった。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、多重軸型のような練り込み撹拌による優れた混練性、貫入・引抜き抵抗の少ない施工性、そして単軸型の特徴である軽量で経済性を兼ね備えた単軸駆動の掘削・撹拌具を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために、本発明にかかる掘削・撹拌具では、(1)地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸と、同掘削・撹拌軸の下端に設け、地盤を掘削する掘削翼と、同掘削・撹拌軸の外周から外方へ膨出させて弧状に形成し、同掘削・撹拌軸の外周面又は同掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して少なくとも一端を支持した複数の撹拌翼と、からなり、上記複数の撹拌翼として、上記掘削・撹拌軸と一体に回転する駆動撹拌翼と、上記掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する遊動撹拌翼と、を有し、しかも、上記撹拌翼のうち、最も外側の外側撹拌翼は遊動撹拌翼とし、外側撹拌翼の撹拌径は掘削翼径以下となるように構成したことに特徴を有する。
また、本発明に係る掘削・撹拌具は、以下の点にも特徴を有する。
(2)駆動撹拌翼と遊動撹拌翼とは、遊動撹拌翼である外側撹拌翼から内側にかけて、所定間隔を隔てて交互に配置されていること。
(3)外側撹拌翼は、側面視での翼形状面の幅を部材幅とし、軸方向視での翼形状面の幅を部材厚とし、部材厚は部材幅以下であること。
(4)外側撹拌翼は、上記掘削・撹拌軸の軸方向に対して捩じり形状又は同軸方向に対して傾斜させた形状となし、地盤改良における貫入・引抜き時の上記掘削・撹拌軸の上下動に伴って土壌抵抗により回転作動するようにしたこと。
請求項1の発明によれば、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸と、同掘削・撹拌軸の下端に設け、地盤を掘削する掘削翼と、同掘削・撹拌軸の外周から外方へ膨出させて弧状に形成し、同掘削・撹拌軸の外周面又は同掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して少なくとも一端を支持した複数の撹拌翼と、からなり、上記複数の撹拌翼として、上記掘削・撹拌軸と一体に回転する駆動撹拌翼と、上記掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する遊動撹拌翼と、を有し、しかも、上記撹拌翼のうち、最も外側の外側撹拌翼は遊動撹拌翼とし、外側撹拌翼の撹拌径は掘削翼径以下となるように構成したため、単軸型でありながらも多重軸型のような練り込み撹拌による優れた混練性、貫入・引抜き抵抗の少ない施工性、そして軽量で経済性を兼ね備えた掘削・撹拌具を提供することができる。
ここで、このように構成した掘削・撹拌具により掘削土と改良材とが混練された改良土は、掘削・撹拌軸や同外側撹拌翼のよる軸方向視での改良断面積に対する断面欠損、内側撹拌翼の回転動作による通過抵抗、撹拌や掘削・撹拌軸の周面摩擦力により、撹拌具内の中心部近傍での通過が抑制されて通過抵抗の少ない外側撹拌翼近傍へと導かれることとなる。
この結果、昇降時には、外側撹拌翼の外周部ほど(掘削孔の内周壁近傍)改良土の軸方向通過領域が形成される。換言すれば、この改良土の軸方向通過領域は、内側撹拌翼の回転動作による影響も小さくなり、上述の如く静止撹拌領域を形成することとなる。
特に本発明では、掘削・撹拌軸の外周から外方へ膨出させて弧状にそれぞれ形成した外側撹拌翼としての遊動撹拌翼と内側撹拌翼としての駆動撹拌翼としたため、図19に示すように、遊動撹拌翼と駆動撹拌翼との間の掘削・撹拌土のせん断線は、駆動撹拌翼の形状に沿って、軸方向又は駆動撹拌翼と略平行とする略直線とし、掘削・撹拌土を回転撹拌領域と静止撹拌領域とに確実に区分して、掘削・撹拌土の共回り現象の発生を防止することができる。
しかも、最も外側の外側撹拌翼は遊動撹拌翼の撹拌径は掘削翼径以下となるように構成したため、通過抵抗の少ない外側撹拌翼近傍へと導かれた静止撹拌領域に存在する改良土(以下、外周部改良土とも言う。)に埋没状態となり、この外周部改良土が同外側撹拌翼の回転方向に対する抵抗を付与して同撹拌翼を静止状態または内側に配設される駆動撹拌翼より回転数を遅延させた状態とし、駆動撹拌翼と遊動撹拌翼とによる効率的な相対回転撹拌をすることができる。
また、掘削・撹拌軸の外周から外方へ膨出させて弧状にそれぞれ形成した外側撹拌翼としての遊動撹拌翼と内側撹拌翼としての駆動撹拌翼とし、外側撹拌翼の撹拌径は掘削翼径以下となるように構成したため、掘削・撹拌具の貫入・引抜きをする昇降に要する上下駆動エネルギーを抑えて上下撹拌効率を向上することができると共に、外側撹拌翼が掘削孔周壁に係合して昇降を妨げることなく掘削混練作業の効率化を図ることができる。
しかも、同昇降時に伴う土砂や改良土の流れは軸方向と略平行方向、すなわち駆動撹拌翼や遊動撹拌翼に沿う方向とすることができ、特に遊動撹拌翼の側面視による部材面においては、改良土の流れと略平行的になることで改良土の付着が防止でき、さらに外周部改良土の流れは外側撹拌翼の回動方向に対し直交する方向とすることを容易として外側撹拌翼に対する外周部改良土の土壌抵抗を助長し、遊動撹拌翼を静止状態や駆動撹拌翼に対して回転遅延状態とし、単軸による遊動撹拌翼と駆動撹拌翼による相対回転撹拌の効率をさらに向上することができる。
また、請求項2の発明によれば、駆動撹拌翼と遊動撹拌翼とは、遊動撹拌翼である外側撹拌翼から内側にかけて、所定間隔を隔てて交互に配置することとしたため、内側と外側のそれぞれの撹拌翼の間にある掘削・撹拌土に対する「せん断線」は駆動撹拌翼である内側撹拌翼の形状に沿って、軸方向又は内側撹拌翼と略平行にして略直線的とすることを容易として共回り現象の発生の防止でき、複数の各撹拌翼を配置しても各撹拌翼が共回りすることなく掘削・撹拌土に対して確実にせん断力を働かせて撹拌効率の向上をすることができる。
また、共回り現象を防止する各撹拌翼の配置構成が可能となるため、複数の各撹拌翼のうち駆動撹拌翼の内側に対して、外側撹拌翼と一体的に回転する撹拌翼を設けることができ、遊動撹拌翼と駆動撹拌翼による相対回転撹拌の効率を飛躍的に向上することができる。
また、請求項3の発明によれば、外側撹拌翼は、側面視での翼形状面の幅を部材幅とし、軸方向視での翼形状面の幅を部材厚とし、部材厚は部材幅以下であることとしたため、外側撹拌翼の軸方向視による改良面積に対する翼面積を小さくすることができ、しかも、貫入・引抜きの昇降操作撹拌時の改良土や掘削土の通過抵抗を少なくすることができ、通過促進効果を上げることで施工スピードの向上を行うことができる。
また、外側撹拌翼を薄板状に形成することができ、改良土の外側撹拌翼内通過時の翼影部、すなわち軸方向視において翼側面の端部から軸方向に沿って流れる改良土が、その粘着性により翼の上下側面側に入り込み軸方向の改良土流下の影響を受けずに滞留する領域部も小さくして、改良土の翼影部への付着をも低減することができ、掘削土と改良材の混練性を良好に確保することができる。
また、請求項4の発明によれば、外側撹拌翼は、上記掘削・撹拌軸の軸方向に対して捩じり形状又は同軸方向に対して傾斜させた形状となし、地盤改良における貫入・引抜き時の上記掘削・撹拌軸の上下動に伴って土壌抵抗により回転作動するようにしたため、外側撹拌翼やこれに連動する他の遊動撹拌翼に一定方向の回転作動を発生させることができ、駆動撹拌翼との相対回転撹拌をさらに向上して、外周部改良土の軸方向への通過を促しつつも掘削土と改良材との練り込み撹拌を堅実に図ることができ、良好な混練り性を確保することができる。
このように単軸型の内側・外側撹拌翼構造にもかかわらず、混合撹拌作業時に外側撹拌翼の回動を抑制して静止状態とし、共回りを防止しながら相対撹拌を達成することができ、装置自体のコストも安価で施工費用も低減することができる効果がある。
本発明にかかる掘削・撹拌具を備えた地盤改良装置を示す側面図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の基本的な構造を示す斜視図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例1を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例2を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例3を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例4を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例5を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例6を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例7を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例8示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例9を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例10を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例10を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例11を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の他の変形例を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具によるせん断線を示す説明図である。
従来の単軸型の掘削・撹拌具の構成及びせん断線を示す説明図である。
この発明の要旨は、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸と、同掘削・撹拌軸の下端に設け、地盤を掘削する掘削翼と、同掘削・撹拌軸の外周から外方へ膨出させて弧状に形成し、同掘削・撹拌軸の外周面又は同掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して少なくとも一端を支持した複数の撹拌翼と、からなり、上記複数の撹拌翼として、上記掘削・撹拌軸と一体に回転する駆動撹拌翼と、上記掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する遊動撹拌翼と、を有し、しかも、上記撹拌翼のうち、最も外側の外側撹拌翼は遊動撹拌翼とし、外側撹拌翼の撹拌径は掘削翼径以下となるように構成したことにある。
以下、この発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明にかかる掘削・撹拌具を搭載した地盤改良装置Kを示し、図3、図4、図5は、本発明の掘削・撹拌具Dを示す。
〔1.地盤改良装置〕
まず、本発明にかかる撹拌具Dを備える地盤改良装置Kの基本的構成について説明する。図1に示すように、地盤改良装置Kは、地盤Gの改良部分の地上面に設置される。
地盤改良装置Kは、自走可能なベースマシン本体Aに上下方向に伸延するリーダBを設け、リーダBに回転駆動部Iを介して垂直な掘削・撹拌軸1の上端が設けられ、さらに、改良材を供給する改良材供給部Cを備えることが基本的構成となっている。
ベースマシン本体Aの後方位置に配設された改良材供給部Cは、改良材供給路Eを介して回転駆動部Iと連通連設しており、改良材を掘削・撹拌軸1の内部を経由して掘削・撹拌軸1の下部から掘削孔内へ吐出されるように構成している。なお、改良材としては、地盤を改良するために使用する材料で、固化材、混和材、添加剤、中和剤、薬剤、化学剤等を使用する。
また、回転駆動部Iは、その上部の所定位置に回転部材が設けられており、一端をベースマシン本体A後部に内蔵した図示しない駆動回転ドラムに連結し、リーダBの最頂部を介して同回転部材の周囲に巻き掛けられ、他端をリーダBの上部に固定した吊り下げワイヤFにより、ベースマシン本体Aからの回転駆動力が伝達するように構成されている。
すなわち、駆動回転ドラムの回転駆動力をリーダBに沿った上下昇降駆動力に変換して地盤改良における貫入・引抜き時の掘削・撹拌軸の上下動を行う。
そして、地盤改良装置Kは、図1及び図2に示すように、地盤Gを掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための主要部として機能する掘削・撹拌具Dを備えている。
〔2.掘削・撹拌具〕
以下、本発明にかかる掘削・撹拌具Dの構成について図面を参照しながら説明する。図3(a)は、本発明にかかる掘削・撹拌具Dの撹拌翼を二段翼とした構成を示す側面図であり、図3(b)は、その軸方向視を示す。また、図4(a)及び図4(b)は掘削・撹拌具Dの撹拌翼を三段翼とした構成を示し、図5(a)、図5(b)は掘削・撹拌具Dの撹拌翼を四段翼とした構成を示す。
すなわち、掘削・撹拌具Dは、図3、図4、図5に示すように、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸1と、同掘削・撹拌軸1の下端に設けた地盤を掘削する掘削翼2と、同掘削・撹拌軸1の外周から外方へ膨出させて弧状に形成し、同掘削・撹拌軸1の外周面又は同掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して少なくとも一端を支持した複数の撹拌翼とを有している。
ここで、本実施形態において撹拌翼の形状である「弧状」とは、角部を有しない略円弧状の他に、一つの角部を有する略三角形弧状、二つの角部を有する略四角形弧状、さらには、角部を三つ以上有する略多角形状等も含まれる。また、角部としてはR状に面取りされているものも含まれる。また、「弧状」の各形状は、側面視において、撹拌翼が掘削・撹拌軸1の外周面又は同掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して支持される部位よりも軸方向上側又は/及び下側に膨出させた形状をも含む。
掘削・撹拌具Dは、複数の撹拌翼として、掘削・撹拌軸1と一体に回転する駆動撹拌翼10と、掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する遊動撹拌翼20と、を有しており、具体的には以下のように掘削・撹拌軸1に対して設けられる。
図3に示す掘削・撹拌具D1は、掘削・撹拌軸1の下端に地盤Gを掘削する略水平の掘削翼2を設けており、更にその上方の掘削・撹拌軸1の外周廻りに下部ボス部22と上部ボス部23とを軸方向で所定間隔を隔てて2つ遊嵌している。
外側撹拌翼21は、その中途部を掘削・撹拌軸1の外周から外方に向けて膨出した弧状に形成されている。外側撹拌翼21は、掘削・撹拌軸1の軸方向に沿う方向で、その上端を上部ボス部23の外周面に対して一体に設け、また、下端を下部ボス部22の外周面に対して一体に設け、各ボス間を跨持した状態で掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ架設されている。2つの外側撹拌翼21は、掘削・撹拌軸1の軸回りに等角度間隔(180°間隔)で設けられている。このように、外側撹拌翼21は、掘削・撹拌軸1に対して遊動状態の遊動撹拌翼20としている。
外側撹拌翼21は、側面視で外側撹拌翼21の弧状の外形をなす帯板状の翼本体部24と翼支持部25とを有している。より具体的には、外側撹拌翼21は、後述する内側撹拌翼11の翼本体部14と共に翼本体部14との間にある掘削・撹拌土の撹拌中心として機能し、掘削・撹拌軸1の軸方向に沿う方向に伸延した帯板状に形成した翼本体部24と、同翼本体部24の両端で掘削・撹拌軸1に対して伸延した翼支持部25と、により構成している。つまり、外側撹拌翼21は、翼本体部24を翼支持部25を介して掘削・撹拌軸1に対し略平行とするように配設されている。
本実施形態における外側撹拌翼21は、側面視において、掘削・撹拌軸1の下部ボス部22及び上部ボス部23の間の部分とともに略四角形弧状(略台形弧状)をなすように形成されており、略台形弧状の上底に相当する辺を翼本体部24とし、翼本体部24両端から掘削・撹拌軸1側に向けて徐々に拡開するように翼支持部25を伸延させ、下部ボス部22及び上部ボス部23それぞれに連結させている。
内側撹拌翼11は、外側撹拌翼21の形状と略相似形として外側撹拌翼21よりも小さく形成しており、外側撹拌翼と同様に側面視で外側撹拌翼21の弧状の外形をなす帯板状の翼本体部14と翼支持部15(本実施形態では2つ)とを有している。
そして、内側撹拌翼11は、上記上部ボス部23と下部ボス部22との間に露出した掘削・撹拌軸1の外周面に対し内側撹拌翼11の上端と下端とを繋げ、掘削・撹拌軸1と一体に設けられている。このように、掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ架設し、掘削・撹拌軸1と一体回転する駆動撹拌翼10としている。
この内側撹拌翼11は、側面視において、その上端縁と下端縁の間の中央部を、最外側の外側撹拌翼21の上端縁と下端縁の間の掘削・撹拌軸1の中央部である軸方向中央部1aに対して重合させる位置に配設されている。すなわち、内側撹拌翼11及び外側撹拌翼21は、掘削・撹拌軸1の軸回りにおいて互いに同位相にある状態で、側面視において、軸方向中央部1aを中心に、内外翼層状として略同心円的配置となるように(略波紋状に)掘削・撹拌軸1に対して配設している。
また、遊動撹拌翼20とした外側撹拌翼21の撹拌径は、図3(a)及び図3(b)に示すように、掘削翼径d以下(改良径以下)となるように構成しており、地盤改良における掘削・撹拌軸1の貫入・引抜き時には、外側撹拌翼21が掘削孔Hの改良径d内に収まることができ、外側撹拌翼21が掘削孔周壁の未掘削地盤Gに係合して掘削・撹拌具Dの昇降を妨げる恐れがなく、掘削混合作業の効率化を図ることができる。
より具体的には、外側撹拌翼21の径方向外周端までの長さが、掘削翼2の径方向外周端の長さ範囲に納まるように外側撹拌翼21を構成し、同外側撹拌翼21を掘削・撹拌軸1に対して配設している。
ここで、「外側撹拌翼21の撹拌径」とは、外側撹拌翼21の最外径であり、外側撹拌翼21に付属部材が付設された構成においては、その付属部材を含む外側撹拌翼21の外径である。なお、外側撹拌翼21に付設する付属部材については後程詳説する。
このように、図3に示す掘削・撹拌具D1は、掘削・撹拌軸1と一体に回転する駆動撹拌翼10である内側撹拌翼11と、駆動撹拌翼10の外側に設けられ、掘削・撹拌軸1の外周に対して外方へ膨出させて弧状に形成し、掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する外側撹拌翼21と、を備え、しかも、外側撹拌翼21の撹拌径を改良径d以下となるように構成したことで以下のような効果がある。
すなわち、掘削・撹拌時には、図19(a)に示すように、撹拌された改良土は、掘削・撹拌軸1周辺の下部ボス部22・上部ボス部23や、外側撹拌翼21、内側撹拌翼11のそれぞれの翼支持部15、25による周面摩擦力や部材断面によって撹拌翼内部中心域の通過が阻害され、通過抵抗の少ない外側撹拌翼21近傍へと導かれた改良土Jである外周部改良土J1により掘削孔Hの外周壁近傍に静止撹拌領域Lを形成する。
特に、各撹拌翼10、20はそれぞれの翼本体部14、24を軸方向に対して略平行となるように軸方向中央部1aを中心に内外翼層状に略同心円的配置で掘削・撹拌軸1に対して設けていることから、掘削・撹拌時における掘削・撹拌土を回転撹拌領域Mと静止撹拌領域Lに区分するせん断線Sが、内側撹拌翼11の翼本体部14と外側撹拌翼21の翼本体部24との間で軸方向又は内側撹拌翼11の形状に沿うように略直線的となる。
このため、静止撹拌領域Lに位置する外側撹拌翼21に比べて、回転撹拌領域Mで回転する内側撹拌翼11に対するせん断抵抗力は小さくなるためせん断線を確実に生起して掘削・撹拌土の共回り現象を防止可能として、静止撹拌領域Lの外周部改良土J1の静止状態を堅実としている。
そして、この静止状態の外周部改良土J1は、改良径d以下の径となるように形成した外側撹拌翼21の回転方向に対する抵抗を付与し、外側撹拌翼21を静止状態または駆動撹拌翼10として常時一定回転する内側撹拌翼11より回転速度を遅延させた状態とすることができ、これら内外二段翼に配置(以下、単に二段翼式とも言う。)した各撹拌翼、すなわち外側撹拌翼21と内側撹拌翼11とにより効果的な相対回転撹拌を実現可能としている。
このような掘削・撹拌具Dは、撹拌翼を図4に示すように、いわゆる内外三段翼に配置(以下、単に三段翼式とも言う。)したり、図5に示すように、いわゆる内外四段翼に配置(以下、単に四段翼式とも言う。)して構成することも可能である。
図4に示す三段翼式の掘削・撹拌具D2は、図3に示した二段翼式の掘削・撹拌具D1のうち、駆動撹拌翼10である内側撹拌翼11の更に内側に掘削・撹拌軸1に対して遊動状態に設けられ、外側撹拌翼21と一体に回転する芯側撹拌翼31を備えている。
掘削翼2の更にその上方の掘削・撹拌軸1の外周廻りには下部ボス部22を遊嵌し、更に下部ボス部22の外周廻りには内側撹拌翼用ボス部12を遊嵌している。更には、下部ボス部22より上方位置の掘削・撹拌軸1の外周廻りには上部ボス部23を遊嵌している。
下部ボス部22は、その上部を上述した軸方向中央部1a位置まで軸方向上方に伸延して形成し、掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌している。
下部ボス部22の中途部の外周廻りには、内側撹拌翼用ボス部12を遊嵌している。また、下部ボス部22の上部、すなわち軸方向中央部1a位置には、芯側撹拌翼31が掘削・撹拌軸1から径方向外方に向って突出している。
芯側撹拌翼31は、側面視板状に形成しており、下部ボス部22上部の外周面から径方向外方に向って掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ突設され、外側撹拌翼21と一体回転する遊動撹拌翼20としている。
また、内側撹拌翼11は、軸方向に沿う方向で、その上端を芯側撹拌翼31と上部ボス部23との間に露出した掘削・撹拌軸1の外周面に設け、その下端を内側撹拌翼用ボス部12の外周面に対して設け、各ボス間を跨持した状態で掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ架設し、掘削・撹拌軸1と一体回転する駆動撹拌翼10としている。
このように径方向に隣り合う外側撹拌翼21、内側撹拌翼11、芯側撹拌翼31は、側面視において、最外側の外側撹拌翼21の上端縁と下端縁と、掘削・撹拌軸1とのそれぞれの連結部の間の掘削・撹拌軸1の軸方向中央部1aに対し、内側撹拌翼11の上端と下端の間の軸線の略中央部、及び芯側撹拌翼31の略中央部のそれぞれが重合すべく、軸方向中央部1aを中心に内外翼層状となるよう略同心円的に掘削・撹拌軸1に対して配置されている。
すなわち、遊動撹拌翼20であってボス部を介して一体的に回転する外側撹拌翼21と芯側撹拌翼31と、駆動撹拌翼10である内側撹拌翼11とは、遊動撹拌翼20である外側撹拌翼21から軸方向中央部1aに向って内側にかけて、それぞれ撹拌翼の弧状の外形に沿う間隔を隔てて交互に配置されている。
従って、芯側撹拌翼31の配設位置は、側面視において掘削・撹拌軸1に対して外側撹拌翼21の上端縁と下端縁の間の軸線上の軸方向中央部1a位置となる。
そして、これら複数の撹拌翼の配設によって形成される間隔幅は、側面視において略同じ幅としている。
このように構成した三段翼式の掘削・撹拌具D2において、上述の掘削・撹拌時の掘削・撹拌土に対するせん断線は以下のように生起する。
すなわち、掘削・撹拌時には、図19(b)に示すように、撹拌された改良土は、掘削・撹拌軸1周辺の下部ボス部22・上部ボス部23や、外側撹拌翼21、内側撹拌翼11のそれぞれの翼支持部15、25、芯側撹拌翼31による周面摩擦力や部材断面によって撹拌翼内部中心域の通過が阻害され、通過抵抗の少ない外側撹拌翼21近傍へと導かれた外周部改良土J1により掘削孔Hの外周壁近傍に静止撹拌領域Lを形成する。
特に、芯側撹拌翼31、内側撹拌翼11、外側撹拌翼21から軸方向中央部1aに向って内側にかけて、それぞれ撹拌翼の弧状の外形に沿う間隔を隔てて交互に配置することで、外側撹拌翼21と内側撹拌翼11との間の掘削・撹拌土に対するせん断線Sを軸方向又は駆動撹拌翼10となる内側撹拌翼11の形状に沿って略平行にして略直線的とし、掘削・撹拌土を回転撹拌領域Mと静止撹拌領域Lとに区分することを確実としている。
そして、静止撹拌領域Lに存在する静止状態の外周部改良土J1は、改良径d以下の径となるように形成した外側撹拌翼21の回転方向に対する抵抗を付与し、外側撹拌翼21を静止状態または駆動撹拌翼10として常時一定回転する内側撹拌翼11に比して回転速度を遅延させた状態としている。
特に、内側撹拌翼11と芯側撹拌翼31との間の掘削・撹拌土に対するせん断線S1は、駆動撹拌翼10となる内側撹拌翼11の弧状の内形に沿う略平行線として、外側撹拌翼21とボス部を介して連動する芯側撹拌翼31近傍の掘削・撹拌土を略静止状態としつつ、内側撹拌翼11近傍の掘削撹拌土を回転状態として各撹拌翼の層状内部側においても相対撹拌を実現可能としている。
また、図5に示す四段翼式の掘削・撹拌具D3は、図4に示した三段翼式の掘削・撹拌具D2のうち、芯側撹拌翼31を第2の内側撹拌翼41に置換し、更にその第2の内側撹拌翼41の内側に設けられ、掘削・撹拌軸1と一体に回転する芯側撹拌翼32を備えている。
より具体的には、下部ボス部22は、軸方向のうち、その上部を軸方向中央部1aより下方位置とするように上方伸延して形成し、掘削・撹拌軸1の略下半部を覆うように外周廻りに遊嵌している。下部ボス部22中途部の外周廻りに内側撹拌翼用ボス部12を遊嵌している。
更に、掘削・撹拌軸1において、軸方向中央部1aと内側撹拌翼11の上部連設部との間の外周廻りには、第2の内側撹拌翼用上部ボス部43が遊嵌されている。
そして、第2の内側撹拌翼41は、軸方向に沿う方向で、その上端を内側撹拌翼用上部ボス部23aの外周面に設け、その下端を下部ボス部22の外周面に対して設け、各ボス間を跨持した状態で掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ架設し、下部ボス部22を介して外側撹拌翼21と一体回転する遊動撹拌翼20としている。
一方で、芯側撹拌翼31は、第2の内側撹拌翼41の更に内側、すなわち第2の内側撹拌翼用上部ボス部43と下部ボス部22の上部の間に露出した掘削・撹拌軸1の外周面の軸方向中央部1a位置に掘削・撹拌軸1から径方向外方に向って掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ突設し、掘削・撹拌軸1と一体的回転する駆動撹拌翼10としている。
すなわち、それぞれ内外複数の駆動撹拌翼10である内側撹拌翼11と芯側撹拌翼31とは、掘削・撹拌軸1と一体回転するように掘削・撹拌軸1の外周に設けられる。
一方で、それぞれ内外複数の遊動撹拌翼20である外側撹拌翼21と第2の内側撹拌翼41とは、掘削・撹拌軸1の外周廻りに対して遊嵌されたボス部を介して一体回転するように掘削・撹拌軸1に対して遊動状態で設けられる。
これら径方向に隣り合う外側撹拌翼21、内側撹拌翼11、第2の内側撹拌翼41、芯側撹拌翼31は、三段翼式の掘削・撹拌具Dと同様にして、側面視において、最外側の外側撹拌翼21の上端縁と下端縁との間の掘削・撹拌軸1上の軸方向中央部1aに対し、内側撹拌翼11の上端縁と下端縁との間の軸線の略中央部、第2の内側撹拌翼41の上端縁と下端縁との間の軸線の略中央部、及び芯側撹拌翼31の略中央部のそれぞれが重合するように、内外層状となるように中央部1aを中心に略同心円的に配置されている。
すなわち、遊動撹拌翼20であってボス部を介して一体的に回転する外側撹拌翼21と第2の内側撹拌翼41、駆動撹拌翼10であって掘削・撹拌軸1を介して一体的に回転する内側撹拌翼11と芯側撹拌翼31は、外側撹拌翼21から軸方向中央部1aに向って内側にかけて、それぞれ撹拌翼の弧状の外形に沿う間隔を隔てて遊動撹拌翼20と駆動撹拌翼10を交互に配置されている。
具体的には、最も外側には、遊動撹拌翼20としての外側撹拌翼21が位置し、その内側に、駆動撹拌翼10としての内側撹拌翼11が位置し、そのさらに内側に、遊動撹拌翼20としての第2の内側撹拌翼41が位置し、そのさらに内側に、駆動撹拌翼10としての芯側撹拌翼31が位置する。このように、駆動撹拌翼10及び遊動撹拌翼20は、掘削・撹拌軸1の径方向外側から径方向内側にかけて交互に配置させるように設けられている。
このような構成により、複数の撹拌翼を有しているにも関わらず、以下のようの効果がある。
すなわち、通過抵抗の少ない外側撹拌翼21近傍へと導かれて静止撹拌領域Lに存在する外周部改良土J1が外側撹拌翼21の回転方向に対する抵抗を付与し、外側撹拌翼21を静止状態または駆動撹拌翼10として常時一定回転する内側撹拌翼11より回転数を遅延させた状態とし、外側撹拌翼21とボス部を介して配設された遊動撹拌翼20としての第2の内側撹拌翼41が内側で略静止状態となるため、二重の相対回転撹拌を可能として優れた混練性を実現可能としている。
せん断線の観点からみれば、相対回転撹拌時には、三段翼とした場合と同様に、外側撹拌翼21と内側撹拌翼11との間の掘削・撹拌土に対するせん断線Sを軸方向又は駆動撹拌翼10となる内側撹拌翼11の形状に沿って略平行にして略直線的とし、内側撹拌翼11と第2の内側撹拌翼41、第2の内側撹拌翼41と芯側撹拌翼31、のそれぞれの間の掘削・撹拌土に対するそれぞれのせん断線S1は、駆動撹拌翼10となる内側撹拌翼11及び芯側撹拌翼31の形状に沿う略平行線とすることを可能としている。
換言すれば、側面視多層構造とした各撹拌翼同士間の掘削・撹拌土に対して、確実に複数のせん断線を生起させることで、撹拌径外周部近傍の静止撹拌領域Lの外周部改良土J1による回転方向への抵抗力を撹拌径中心部側へも伝達することができ、撹拌径の内側から外側にかけて略静止状態と回転撹拌状態の掘削・撹拌土とを生起させ、共回り現象の発生の防止可能しつつ、相対回転撹拌の効率の向上を可能としている。
このように一軸の掘削・撹拌軸1による内外側撹拌翼構造にもかかわらず、混合撹拌作業時に外側撹拌翼21が静止状態となるため、その外端に未掘削地盤への突入部材等を一切必要とせず、外側撹拌翼21を掘削土中に埋没し回動抑制した静止状態等とし、共回りを防止しながら中心部の内側撹拌翼11等の駆動撹拌翼10の回転に伴い相対回転撹拌と同様な効果を達成することができ、装置自体のコストも安価で施工費用も低減化することができる。
〔変形例1〕
次に、本発明の変形例1にかかる掘削・撹拌具D4について図6を参照しながら説明する。図6(a)及び図6(b)は、掘削・撹拌具D4の側面図を示し、図6(c)は、それぞれの軸方向視を示す。
変形例1にかかる掘削・撹拌具D4の外側撹拌翼21は、図6(a)及び図6(b)に示すように側面視における翼形状面の幅を部材幅W(W1、W2、W3)とし、図6(c)に示すように軸方向視における翼形状面の幅を部材厚T(T1、T2、T3)とし、部材厚Tは部材幅W以下となるように成形している。なお、外側撹拌翼21において、図中、W1及びW3は翼支持部25の部材幅を示し、W2は翼本体部24の部材幅を示す。同様に、T1及びT3は翼支持部25の部材厚を示し、T2は翼本体部24の部材厚を示す。
換言すれば、外側撹拌翼21は、側面視で外側撹拌翼21の弧状の外形をなす帯板状の翼本体部24と翼支持部25とを有し、翼本体部24や翼支持部25は、掘削・撹拌軸1の軸方向視で、掘削・撹拌軸1の径方向に直交する方向、すなわち掘削・撹拌軸1の軸心を中心とする円周に対する接線方向を板厚方向(部材厚T1、T2、T3方向)としている。
このような構成により遊動撹拌翼20である外側撹拌翼21は、回転駆動力を伝達する必要がないため、貫入・引抜き時の軸方向における抵抗に対し部材剛性を考慮すればよく、従って、径方向に直交する方向の部材剛性を小さくすることができる。
このことは、図6(c)に示すように、部材厚と部材幅の大小関係が逆の場合の構成との比較において、外側撹拌翼21の軸方向視による改良面積に対する翼面積を小さくすることができ、しかも、貫入・引抜きの昇降操作撹拌時の改良土や掘削土の通過抵抗を少なくすることを可能とする。さらに、改良土の外側撹拌翼内通過時の翼影部も小さくなり、改良土の翼影部への付着をも低減することができる。
従って、通過促進効果を上げることで施工スピードの向上を可能とし、更には、外側撹拌翼21を薄板状に形成することができると共に外側撹拌翼21への改良土等の付着を低減することができ、掘削土と改良材の混練性を良好に確保することができる。
なお、外側撹拌翼21の薄板状小口面は面取り又は鋭角的な加工を行って撹拌時の改良土等の通過抵抗を抑えることも有効である。また、外側撹拌翼21の幅面(部材幅W)は、共回り防止翼としての必要な抵抗面積を確保するように形成している。
〔変形例2〕
次に、本発明の変形例2にかかる掘削・撹拌具D5について図7を参照しながら説明する。図7(a)は、掘削・撹拌具D5の側面図を示し、図7(b)は、その軸方向視を示す。
変形例2にかかる掘削・撹拌具D5の外側撹拌翼21は、図7(a)に示すように、掘削・撹拌軸1の軸方向に対して捩じり形状又は同軸方向に対して傾斜させた形状となし、地盤改良における貫入・引抜き時の掘削・撹拌軸1の上下動に伴って土壌抵抗により回転作動するように構成している。
換言すれば、外側撹拌翼21は、図7(a)に示すように側面視で前記撹拌翼の弧状の外形をなす帯板状の翼本体部24や翼支持部25を有し、図7(b)に示すように翼本体部24や翼支持部25の板面を上下方向に対して傾斜する傾斜面となし、掘削・撹拌具Dの貫入・引抜き時の上下動に伴って前記傾斜面に受ける土壌抵抗により回転作動するように構成している。
このように外側撹拌翼21が「捩じり形状」や「傾斜させた形状」に形成されていることにより、掘削・撹拌軸1の軸方向上方動作時においては、図6(b)に示すように、軸方向上方視において翼本体部24や翼支持部25の傾斜面のうち上面24a、25aに対して改良土や掘削土の土壌抵抗が作用することで、その上面24a、25aに沿うように外側撹拌翼21を軸方向下側に押下げようとする押圧力と、傾斜面のうち下面24b、25b側方向を回動方向とする押圧力とを生起し、外側撹拌翼21が傾斜面の下面24b、25b側方向に向かって回転する。
一方で、掘削・撹拌軸1の軸方向下方動作時においては、軸方向上方視において翼本体部24や翼支持部25の傾斜面のうち下面24b、25bに対して改良土や掘削土の土壌抵抗が作用することで、その下面24b、25bに沿うように外側撹拌翼21を軸方向上側に押上げようとする押圧力と、傾斜面のうち上面24a、25a側方向を回動方向とする押圧力とを生起し、外側撹拌翼21が傾斜面の上面24a、25a側方向に向かって回転する。
なお、掘削・撹拌具D5の貫入・引抜き時の上下動に伴って回転作動する外側撹拌翼21の回転方向が駆動撹拌翼10の回転方向と同じであっても、外側撹拌翼21やこれに連動する他の遊動撹拌翼20の回転スピードは一定ではないため、駆動撹拌翼10と遊動撹拌翼20による相対回転撹拌は可能である。
このように変形例2にかかる掘削・撹拌具D5の外側撹拌翼21によれば、外側撹拌翼21の内方に位置する掘削土と改良材の二次元的な撹拌や混練を、掘削・撹拌軸1の回転方向に対する翼本体部24や翼支持部25の部材幅Wの全域にわたって幅広く行うことができ、外側撹拌翼21やこれに連動する他の遊動撹拌翼20aに一定方向の回転作動を発生させることを可能としている。
しかも、掘削・撹拌具D5の貫入・引抜き時の上下動に伴って強制的に回転方向を転換し、駆動撹拌翼10との相対回転撹拌をさらに向上して、外周部改良土J1の軸方向上下への通過を促しつつも掘削土と改良材との三次元的な練り込み撹拌を堅実に図ることができ、良好な混練性を確保することを可能としている。
〔変形例3〕
次に、本発明の変形例3にかかる掘削・撹拌具D6及び掘削・撹拌具D7について図8を参照しながら説明する。図8(a)及び図8(b)は、それぞれ掘削・撹拌具D6及び掘削・撹拌具D7の軸方向視を示す。
図8(a)に示すように、掘削・撹拌具D6は、芯側撹拌翼31、内側撹拌翼11、外側撹拌翼21は、例えば、N値、軟弱・硬質地盤、礫等の土質特性や改良径の大きさに対応できるようにそれぞれ各翼共に複数枚配設することもできる。
すなわち、芯側撹拌翼31、内側撹拌翼11、外側撹拌翼21を左右に伸延するのではなく、軸方向視で掘削・撹拌軸1を中心として約120度の角度間隔で放射状に3枚の翼をそれぞれ伸延して構成することで、撹拌効率を向上させている。
また、図8(b)に示す掘削・撹拌具D7のように、内側撹拌翼11の翼支持部15の径方向外方の先端に、掘削・撹拌軸1内部の改良材供給路Eと連通した翼中吐出口50を穿設してもよい。
このように構成することで、撹拌回転時に掘削土中に改良材を均一に散布しつつ、その外側に配置された外側撹拌翼21への改良土の付着低減効果や、せん断抵抗の抑止効果となって共回り現象の防止にも寄与できる。さらに、この翼中吐出口50は撹拌外周部においても改良材と掘削土との混練性を高めることができ、改良土の品質の向上を図ることを可能としている。
〔変形例4〕
次に、本発明の変形例4にかかる掘削・撹拌具D8について図9を参照しながら説明する。図9は、掘削・撹拌具D8の側面図を示す。
掘削・撹拌具D8は、図9に示すように、上方伸延して形成した下部ボス部22と上部ボス部23とを、掘削・撹拌軸1に対する配設位置を上下逆に入れ替えて各撹拌翼を配置して構成してもよい。
すなわち、掘削・撹拌軸1と一体回転する内側撹拌翼11の固定構造が基本構造と異なり上端を上部ボス部23に遊嵌した内側撹拌翼用ボス部12に固定し、下端は掘削・撹拌軸1に固定している。
〔変形例5〕
次に、本発明の変形例5にかかる掘削・撹拌具D9について図10を参照しながら説明する。図10(a)は、掘削・撹拌具D9の側面図を示し、図10(b)はその軸方向視を示す。
図10に示す掘削・撹拌具D9は、外側撹拌翼21を薄板状に構成し、図10(a)に示すように翼本体部24の径方向外方の先端部分に付属部材60として、回転抵抗を可及的受けるための補強板61を設けて構成している。
補強板61は、外側撹拌翼21の径方向外周面と周辺地盤との縁切り板、摩擦抵抗板、又は改良体の鉛直求心性ガイド板として機能し、外側撹拌翼21の径方向の外周面に改良径以下となるように配設している。
補強板61を配設した外側撹拌翼21の断面形状は、T字型、L字型としてもよく、本変形例においては図10(b)に示すように、掘削孔Hの内周壁をT字の横片面61aでなぞるようにして構成している。
このような構成により、外側撹拌翼21の外周面回りの改良土等からの土壌抵抗を受けやすくし、さらに、補強板61が掘削孔H壁面の摩擦抵抗をも受けることで、外側撹拌翼21、及び外側撹拌翼21に連動する各遊動撹拌翼20を略静止状態にすることを可能としている。
また、補強板61は、撹拌施工時の貫入・引抜き時の掘削孔H壁面のガイド役として、芯ずれ低減効果や改良土Jの回転遠心力による撒き出しを抑制することも可能としている。
なお、上述したとおり、付属部材60である補強板61を配設した外側撹拌翼21の撹拌径は掘削翼径d以下となるように構成している。
〔変形例6〕
次に、本発明の変形例6にかかる掘削・撹拌具D10について図11を参照しながら説明する。図11は、掘削・撹拌具D10の側面図を示す。
図11に示す撹拌具D10は、外側撹拌翼21の上部横片部分に付属部材60として着脱自在翼62を軸方向上方に向けて突設しており、着脱自在翼62の上縁部は水平に形成している。なお、着脱自在翼62の形状は、円弧状や山型、多角形状に形成してもよい。
より具体的には、側面視において外側撹拌翼21の翼支持部25の上縁部と着脱自在翼62の下端縁とを、着脱自在翼62の平板面と翼支持部25の帯板面とが略面一となるように、各撹拌翼21、62の表面2箇所、裏面2箇所の合計4箇所に設けた係合部に係合するジョイント62aを取り付けて配設している。
このように外側撹拌翼21に着脱自在翼62を付設して外側撹拌翼21を構成することにより、外側撹拌翼21の回転抵抗面の面積拡大・縮小を任意に行うことを可能とし、着脱自在翼62を取り付けた場合には通過抵抗の少ない外側撹拌翼21の撹拌外周部近傍へと導かれた外周部改良土J1により、外側撹拌翼21の回転方向面に対する土壌抵抗が増加し、共回り現象をさらに防止可能とする。
なお、補強板61の場合と同様にして、付属部材60である着脱自在翼62を配設した外側撹拌翼21の撹拌径は掘削翼径d以下となるように構成している。
〔変形例7〕
次に、本発明の変形例7にかかる掘削・撹拌具D11について図12を参照しながら説明する。図12は、掘削・撹拌具D11の側面図を示す。
図12に示す掘削・撹拌具D11は、外側撹拌翼21の軸方向上方、すなわち外側撹拌翼21が配設される上部ボス部23より上方位置で露出した掘削・撹拌軸1の外周面に、径方向外方に向けて略平板状の水平撹拌翼70(本変形例では掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ)を突設して構成している。
このように水平撹拌翼70を設けることで、撹拌効果の向上と引抜き時の改良土のほぐし効果を高めて外側撹拌翼21の通過抵抗を低減し、撹拌作用の効率を向上可能としている。
〔変形例8〕
次に、本発明の変形例8にかかる掘削・撹拌具D12について図13を参照しながら説明する。図13は、掘削・撹拌具D12の側面図を示す。
図13に示す掘削・撹拌具D12は、左右の内側撹拌翼11において一方の内側撹拌翼11の翼本体部14の本体下半部14aと、他方の内側撹拌翼11の本体上半部14bとをそれぞれ径方向外方に膨出した形状に形成して構成している。
すなわち、複数の内側撹拌翼11の形状を、掘削・撹拌軸1を中心線として非線対称形状に形成して配置、又は、非対称的に配置し、撹拌回転時における撹拌翼の掘削土中内における通過軌跡(図中、破線で示す。)を複雑化することにより撹拌効果を向上可能としている。
〔変形例9〕
次に、本発明の変形例9にかかる掘削・撹拌具D13について図14を参照しながら説明する。図14は、掘削・撹拌具D13の側面図を示す。
図14に示す掘削・撹拌具D13は、掘削・撹拌軸1を相反回転を可能な内外二重軸構造とし、2つの掘削・撹拌軸1b、1cの下端に、それぞれ2つの掘削翼2a、2bを上下二段に配置している。
この上下二段の掘削翼2は掘削径が異なり、上側に配置される上段掘削翼2aは改良径dと等しく、また、上段掘削翼2aよりも下側に配置される下段掘削翼2bは上段掘削翼2aより掘削翼径を小さくするように形成している。
また、掘削・撹拌軸1は、円筒状の外側軸1bと、外側軸1bの内部に回転可能に挿嵌される内側軸1cとで構成されている。内側軸1cは、外側軸1bより軸方向に下方伸延して下部外周面を露出させた内外二重軸構造としている。
そして、上段掘削翼2aは外側軸1bの下端に、また、下段掘削翼2bは内側軸1cの下端にそれぞれ設け、これら二段の掘削翼2a、2bが常に相反回転しながら地盤Gの掘削を行える構成としている。
このような構成により、一方向回転掘削時に見られる掘削・撹拌軸1の芯ずれ現象を防止でき、掘削・撹拌軸1の求心性の向上に寄与することが出来る。
また、回転駆動部Iによる相反回転する駆動力を、例えば、低回転数で回転トルクの大きい外側軸1bを介して上段掘削翼2aに、高回転数で回転トルクの小さい内側軸1cを介して掘削径の小さい下段掘削翼2bに、それぞれ伝達することで、掘削に必要な回転トルクを有効に分割でき、掘削能力の向上を可能としている。このように、回転駆動部Iの相反回転駆動力の回転方向、回転数、回転トルク等の特性に合わせることができる。
そして、このように構成した掘削・撹拌軸1の外側軸1bの外周に対し、上述の如く各撹拌翼を配設することで掘削土と改良材との混練性を高め、地盤改良の施工速度の向上を図ることができる。
〔変形例10〕
次に、本発明の変形例10にかかる掘削・撹拌具D14、D15、D16及び掘削・撹拌具D17、D18、D19について、それぞれ図15及び図16を参照しながら説明する。図15は、掘削・撹拌具D14、D15、D16において内側撹拌翼を片持撹拌翼として構成した側面図を示し、図16は、掘削・撹拌具D17、D18、D19において外側撹拌翼と内側撹拌翼を片持撹拌翼として構成した側面図を示す。また、図15(a)及び図16(a)、図15(b)及び16(b)、図15(c)及び図16(c)は、それぞれ二段翼式、三段翼式及び四段翼式とした場合の側面図を示す。
図15及び図16に示す掘削・撹拌具D14、D15、D16及び掘削・撹拌具D17、D18、D19は、掘削・撹拌軸1の外周から外方へ膨出させて弧状に形成した外側撹拌翼21や内側撹拌翼11を、同掘削・撹拌軸1の外周面又は同掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して一端を支持した片持撹拌翼を有した構成としている。
片持撹拌翼は、外側撹拌翼21や内側撹拌翼11の弧状形状において、各撹拌翼の上端部又は下端部の一部を切削して短弧状に形成している。より具体的には、各撹拌翼における上下2つの翼支持部のうち、いずれか一方を切除して形成している。
すなわち片持撹拌翼は略弧状において、翼本体部先端を略軸方向に向けて、掘削・撹拌軸1の外周面又は同掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して、上下いずれか一方のみ形成した翼支持部を介して支持されている。
例えば、図15(a)及び図15(b)に示す掘削・撹拌具D14、D15の内側撹拌翼11は、下側の翼支持部15bを切削した短弧状の片持撹拌翼81として、上側の翼支持部15aのみのよって掘削・撹拌軸1に対して支持されている。
また、図15(c)に示す掘削・撹拌具D16は、内側撹拌翼11より内側の第2の内側撹拌翼41を上側の翼支持部15aを切削した短弧状の片持撹拌翼82として、下側の翼支持部15bのみのよって掘削・撹拌軸1に対して支持している。
また、図16(a)〜図16(c)に示す掘削・撹拌具D17、D18、D19は、内側撹拌翼11や第2の内側撹拌翼41を片持撹拌翼81、82とするだけでなく外側撹拌翼21を片持撹拌翼83として形成している。すなわち、外側撹拌翼21は、上側の翼支持部25aを切削した短弧状の片持撹拌翼83として、下側の翼支持部25bのみのよって掘削・撹拌軸1に対して支持することとしてもよい。
このように構成することにより、各撹拌翼を設けるに際しては、掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌されるボス部を省略して、掘削・撹拌具Dの小型化を可能としたり、同掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して両端で支持する必要がなく製造時の負担を軽減可能とする。
〔変形例11〕
次に、本発明の変形例9にかかる掘削・撹拌具D20、D21、D22、D23について図17を参照しながら説明する。図17(a)〜図17(d)は、掘削・撹拌具D20、D21、D22、D23のそれぞれの側面図を示す。
図17に示す掘削・撹拌具D20、D21、D22、D23は、外側撹拌翼21、内側撹拌翼11、芯側撹拌翼31といった各撹拌翼周面に小突形起状の補助翼90を複数設けることで、撹拌効果を向上可能としている。
図17(a)、図17(c)及び図17(d)にそれぞれ示す掘削・撹拌具D20、D22、D23は、外側撹拌翼21の内側、又は内側撹拌翼11の外側に撹拌抵抗のための小突起形状の補助翼90を、径方向で互いに向き合う方向で互い違いに多数突設して構成している。
この補助翼90は、複数の撹拌翼に設けることを要せず、図17(b)に示す掘削・撹拌具D21ように、内側撹拌翼11の径方向内外の周面から複数突設することとしてもよい。
なお、図17(a)、図17(c)及び図17(d)の掘削・撹拌具D20、D22、D23における各撹拌翼の径方向対向周面に互い違いに交互に突設した補助翼90の長さは、改良土の粘着力によって異なるが、粘着力が強い場合は、各撹拌翼同士が対向した際に、各撹拌翼同士の間において複数の各補助翼90がくし歯の如く互いに重なり合わない長さに形成しており、これら複数の撹拌翼同士の間の改良土や掘削土等のせん断線を、軸方向又は駆動撹拌翼10となる内側撹拌翼11の形状と略平行にして略直線的となる配置とすることで、外側撹拌翼21が追随して回転することなく、共回り現象の発生防止を可能としている。
〔他の変形例〕
次に、本発明に係る外側撹拌翼の変形例について図18を参照しながら説明する。図18(a)〜図18(d)は、掘削・撹拌具D24、D25、D26、D27それぞれの側面図を示す。
掘削・撹拌具D24、D25、D26、D27に係る撹拌翼は、上述の如く掘削・撹拌軸1の外周から外方へ膨出させて弧状に形成している。より具体的には、外側撹拌翼21は、側面視において弧状をなすように形成されており、径方向外側端部を翼本体部とし、同外側端部の両端から径方向軸側に向けた伸延部を翼支持部としている。
例えば、図18(a)に示す掘削・撹拌具D24の外側撹拌翼21Aは、側面視において略円弧状(半円弧状)をなすように形成し、径方向外側端部を翼本体部24Aとし、同外側端部の両端から径方向軸側に向けた円弧状の伸延部を翼支持部25Aとしている。
図18(b)に示す掘削・撹拌具D25の外側撹拌翼21Bは、側面視において掘削・撹拌軸1の下部ボス部22及び上部ボス部23の間の部分とともに略三角形弧状をなすように形成し、径方向外側端部である三角形頂点部を翼本体部24Bとし、同外側端部の両端から径方向軸側に向けた直線状の伸延部を翼支持部25Bとしている。
図18(c)に示す掘削・撹拌具D26の外側撹拌翼21Cは、側面視において掘削・撹拌軸1の下部ボス部22及び上部ボス部23の間の部分とともに略六角形弧状をなすように形成し、径方向外側端部である軸方向に伸延した一辺を翼本体部24Cとし、同外側端部の両端から径方向軸側に向けた屈曲状の伸延部を翼支持部25Cとしている。
また、撹拌翼の「弧状」は、側面視において、撹拌翼が掘削・撹拌軸1の外周面又は同掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して支持される部位よりも軸方向上側又は/及び下側に膨出させた形状としてもよい。
例えば、図18(d)に示す掘削・撹拌具D27の外側撹拌翼21Dは、側面視において掘削・撹拌軸1の下部ボス部22及び上部ボス部23の間の部分とともに略六角形弧状となすように形成すると共に、上部ボス部23の外周面に対して支持される部位よりも軸方向上側に膨出させた形状に形成している。外側撹拌翼21Dは、径方向外側端部である軸方向に伸延した一辺を翼本体部24Dとし、同外側端部の両端から径方向軸側に向けた屈曲状の伸延部を翼支持部25Dとしている。
このように、本発明にかかる掘削・撹拌具によれば、単軸型の内側・外側撹拌翼構造にもかかわらず、混合撹拌作業時に外側撹拌翼の回動を抑制して静止状態とし、共回りを防止しながら相対撹拌を達成することができ、装置自体のコストも安価で施工費用も低減することができる。
すなわち、本発明によれば、多重軸型の練り込み撹拌による優れた混練性、貫入・引抜き抵抗の少ない施工性、軽量で経済性を兼ね備えた単軸駆動の掘削・撹拌具を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。また、本発明は上述の実施の形態に限定されることはなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。そして、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
A ベースマシン本体
B リーダ
C 改良材供給部
D 掘削・撹拌具
E 改良材供給路
F 吊下げワイヤ
G 未掘削地盤(地盤)
H 掘削孔
I 回転駆動部
J 改良土
K 地盤改良装置
1 掘削・撹拌軸
2 掘削翼
10 駆動撹拌翼
11 内側撹拌翼
12 内側撹拌翼用ボス部
20 遊動撹拌翼
21 外側撹拌翼
22 下部ボス部
23 上部ボス部
24 翼本体
31 芯側撹拌翼
この発明は、地盤改良装置の掘削・撹拌具に関する。
従来、地盤改良装置の掘削・撹拌具は、撹拌翼を回転するための掘削・撹拌軸により分類すると、多重軸型の掘削・撹拌具(以下、単に多重軸型とも言う。)と単軸型の掘削・撹拌具(以下、単に単軸型とも言う。)とに大別される。
多重軸型は、掘削・撹拌軸の下端部で中途部を外方に膨出して弧状に形成した内側と外側からなる撹拌翼を、それぞれ別々に回転駆動する内・外二軸相対回転構造の掘削・撹拌軸に取付け、各撹拌翼をそれぞれ反対方向に相対回転させるいわゆる相対撹拌構造とし、掘削土と改良材との共回りを防止している。(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
他方、単軸型は一本の掘削・撹拌軸に内側と外側の撹拌翼を取付け、内側・外側撹拌翼を同時に一方向に回転させて掘削した掘削土を改良材と共に混練するものであり、掘削土と改良材が撹拌翼の回転に伴って共回りするのを防止すべく内側・外側撹拌翼の何れか一方の翼を単軸で回転させると共に、他方の翼は単軸回転と一体回転しないよう固定状態となるように構成している。
すなわち、単軸型は、回転しない翼(以下、単に固定翼とも言う。)を掘削孔の内周壁である未掘削地盤に係合したことによる回転方向に対する抵抗を利用することにより掘削孔中に固定して不動状態とし、回転する翼(以下、単に回転駆動翼とも言う。)を掘削・撹拌軸と一体回転する駆動状態とすることにより共回りを防止し、掘削土と改良材との撹拌混合を可能としている。ここで、未掘削地盤とは、掘削翼、撹拌翼の回転撹拌が作用しない自然状態の地盤のことを言う。
例えば、こうした単軸型の掘削・撹拌具としては、外側撹拌翼を回転駆動翼とし、内側撹拌翼を固定翼とするように未掘削地盤に係合した固定翼と接続したもの(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)や、逆に内側撹拌翼を回転駆動翼とし、外側撹拌翼を固定翼としたもの(例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7参照。)が提案されている。
すなわち、単軸型において、掘削孔中において回転駆動翼近傍の掘削土や改良材は共に回転し、固定翼近傍の掘削土や改良材は静止状態で滞留するため、掘削土や改良材が相対的に撹拌している状態を生起し一軸の掘削・撹拌軸にもかかわらず相対的な羽根切り撹拌機能を達成するように構成されている。
特開平7−42146号
特開2005−320830号
特開2009−102872号
特開2014−88758号
特開2006−37432号
特開2008−57322号
特開2011−69093号
このような単軸型の掘削・撹拌具の固定翼は何れも掘削孔周壁の未掘削地盤に係合可能としている。
例えば、固定翼とは別の抵抗翼とボス部を介して固定翼を構成したり、外側撹拌翼の径或いは外側撹拌翼に抵抗板を設けて固定翼を構成するなどして、上述の共回り現象の防止をしている。
また、互い違いに向き合った内外複数の水平撹拌翼を突設して翼による羽根切り回数を上げて撹拌効率を向上しようとするものもある。
ところで、掘削・撹拌具は、掘削孔中で上下万遍なく掘削土と改良材の撹拌を行うために、掘削・撹拌軸を掘削孔の上下方向に対して貫入・引き抜きの昇降操作を行い軸方向の撹拌を行うものである。
しかしながら、不動状態の固定翼或いは固定翼を設けるための部材は掘削孔の周壁である未掘削地盤と係合しているため、昇降操作の際に昇降抵抗が大きくなり、却って地盤改良のための掘削混練作業の施工効率を著しく低下させる欠点があった。
また、掘削・撹拌具は、撹拌翼近傍に存在する掘削土や改良材、改良土等(以下、単に掘削・改良土とも言う。)に対してせん断力を与えることで、上述のごとく撹拌翼と共に回転する掘削・改良土と、撹拌翼と共に回転しない掘削・改良土との間で、掘削・撹拌土の複雑な混練・撹拌を行うものである。
こうした掘削孔中における撹拌翼の掘削・改良土に対するせん断力の分布傾向は、掘削・改良土の性質、各撹拌翼の形状や掘削・撹拌軸に対する配設位置等により掘削・改良土に発生する撹拌影響範囲を決定する「せん断線」として定義できる。
すなわち、「せん断線」とは、掘削孔内の掘削・撹拌具の撹拌翼の間に存在する掘削・改良土を、その流動性や粘着性、付着力により回転駆動翼の回転力の回動影響を直接的に受けて同翼につれ回される掘削・改良土の回転撹拌領域と、回転駆動翼の直接的な影響を受けず静止状態、或いは回転駆動翼の回動影響を間接的に受けて回転が遅延した状態の掘削・撹拌土の静止撹拌領域とに区分する線であり、掘削・撹拌土のせん断破断面を決定する線でもある。
そして、このような「せん断線」の観点から上述した水平撹拌翼210、310を備える従来の掘削・撹拌具100をみれば、図20に示すように、側面視において掘削・撹拌土の混合撹拌のせん断線が互い違いの水平突起の先端部分を迂回した仮想ジグザグ線S2(図20中、実線で示す。)となりせん断線をその分長くしてせん断抵抗を増加している。
換言すれば、一般的な水平撹拌翼210、310を有する掘削・撹拌具100では、駆動撹拌翼200となる水平撹拌翼210端が径方向視で撹拌径d端近傍まで突出しているため、「せん断線」は撹拌径端(図20中、破線で示す。)に沿って発生することとなる。
また、回転撹拌領域の掘削・撹拌土の流動性や粘着性も相俟って、駆動撹拌翼200の回動影響範囲を拡大し、外側撹拌翼310近傍に存在する掘削・撹拌土にまでその影響を伝達してしまい、掘削孔中に静止撹拌領域を形成することなく掘削・撹拌土等の共回りの原因となっていた。
よって共回り現象を防止するためには、外側撹拌翼310を不動状態の固定翼300とし、この固定翼300或いは固定翼300を設けるための部材、例えば固定板320を未掘削地盤へ確実に突入させるなど、上述の如く固定翼300を掘削孔周壁の未掘削地盤に係合してより多くの抵抗力を確保し、掘削・撹拌土の静止撹拌領域を拡大することが必要となっていた。
他方、多重軸型の回転駆動する内・外二軸相対回転構造のそれぞれの軸に対し、中途部を外方に膨出して弧状に形成した内側と外側の撹拌翼を取付け、内側・外側撹拌翼をそれぞれ反対方向に相対回転させるいわゆる相対撹拌翼構造においては、掘削孔中での混合撹拌効率の面では理にかなっているとも思える。
しかしながら、多重軸型の内・外二軸相対回転構造とするためには、駆動モーターに二重反転歯車機構を介して内・外側二重軸の上端部を連動連結しなければならず、改良装置全体が必然的に大型化してしまい、かかる地盤改良装置の製造コストが高価となり、ひいては地盤改良工事の施工費の高騰につながる欠点があった。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、多重軸型のような練り込み撹拌による優れた混練性、貫入・引抜き抵抗の少ない施工性、そして単軸型の特徴である軽量で経済性を兼ね備えた単軸駆動の掘削・撹拌具を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために、本発明にかかる掘削・撹拌具では、(1)地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸と、同掘削・撹拌軸の下端に設け、地盤を掘削する掘削翼と、同掘削・撹拌軸の外周から外方へ膨出させて弧状に形成し、同掘削・撹拌軸の外周面又は同掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して少なくとも一端を支持した複数の撹拌翼と、からなり、上記複数の撹拌翼として、上記掘削・撹拌軸と一体に回転する駆動撹拌翼と、上記掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する遊動撹拌翼と、を有し、しかも、上記撹拌翼のうち、最も外側の外側撹拌翼を遊動撹拌翼としたことに特徴を有する。
また、本発明に係る掘削・撹拌具は、以下の点にも特徴を有する。
(2)駆動撹拌翼と遊動撹拌翼とは、遊動撹拌翼である外側撹拌翼から内側にかけて、所定間隔を隔てて交互に配置されていること。
(3)外側撹拌翼は、側面視での翼形状面の幅を部材幅とし、軸方向視での翼形状面の幅を部材厚とし、部材厚は部材幅以下であること。
(4)外側撹拌翼は、上記掘削・撹拌軸の軸方向に対して捩じり形状又は同軸方向に対して傾斜させた形状となし、地盤改良における貫入・引抜き時の上記掘削・撹拌軸の上下動に伴って土壌抵抗により回転作動するようにしたこと。
請求項1の発明によれば、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸と、同掘削・撹拌軸の下端に設け、地盤を掘削する掘削翼と、同掘削・撹拌軸の外周から外方へ膨出させて弧状に形成し、同掘削・撹拌軸の外周面又は同掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して少なくとも一端を支持した複数の撹拌翼と、からなり、上記複数の撹拌翼として、上記掘削・撹拌軸と一体に回転する駆動撹拌翼と、上記掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する遊動撹拌翼と、を有し、しかも、上記撹拌翼のうち、最も外側の外側撹拌翼を遊動撹拌翼としたため、単軸型でありながらも多重軸型のような練り込み撹拌による優れた混練性、貫入・引抜き抵抗の少ない施工性、そして軽量で経済性を兼ね備えた掘削・撹拌具を提供することができる。
ここで、このように構成した掘削・撹拌具により掘削土と改良材とが混練された改良土は、掘削・撹拌軸や同外側撹拌翼のよる軸方向視での改良断面積に対する断面欠損、内側撹拌翼の回転動作による通過抵抗、撹拌や掘削・撹拌軸の周面摩擦力により、撹拌具内の中心部近傍での通過が抑制されて通過抵抗の少ない外側撹拌翼近傍へと導かれることとなる。
この結果、昇降時には、外側撹拌翼の外周部ほど(掘削孔の内周壁近傍)改良土の軸方向通過領域が形成される。換言すれば、この改良土の軸方向通過領域は、内側撹拌翼の回転動作による影響も小さくなり、上述の如く静止撹拌領域を形成することとなる。
特に本発明では、掘削・撹拌軸の外周から外方へ膨出させて弧状にそれぞれ形成した外側撹拌翼としての遊動撹拌翼と内側撹拌翼としての駆動撹拌翼としたため、図19に示すように、遊動撹拌翼と駆動撹拌翼との間の掘削・撹拌土のせん断線は、駆動撹拌翼の形状に沿って、軸方向又は駆動撹拌翼と略平行とする略直線とし、掘削・撹拌土を回転撹拌領域と静止撹拌領域とに確実に区分して、掘削・撹拌土の共回り現象の発生を防止することができる。
しかも、最も外側の外側撹拌翼を遊動撹拌翼としたため、通過抵抗の少ない外側撹拌翼近傍へと導かれた静止撹拌領域に存在する改良土(以下、外周部改良土とも言う。)に埋没状態となり、この外周部改良土が同外側撹拌翼の回転方向に対する抵抗を付与して同撹拌翼を静止状態または内側に配設される駆動撹拌翼より回転数を遅延させた状態とし、駆動撹拌翼と遊動撹拌翼とによる効率的な相対回転撹拌をすることができる。
また、掘削・撹拌具の貫入・引抜きをする昇降に要する上下駆動エネルギーを抑えて上下撹拌効率を向上することができると共に、外側撹拌翼が掘削孔周壁に係合して昇降を妨げることなく掘削混練作業の効率化を図ることができる。
しかも、同昇降時に伴う土砂や改良土の流れは軸方向と略平行方向、すなわち駆動撹拌翼や遊動撹拌翼に沿う方向とすることができ、特に遊動撹拌翼の側面視による部材面においては、改良土の流れと略平行的になることで改良土の付着が防止でき、さらに外周部改良土の流れは外側撹拌翼の回動方向に対し直交する方向とすることを容易として外側撹拌翼に対する外周部改良土の土壌抵抗を助長し、遊動撹拌翼を静止状態や駆動撹拌翼に対して回転遅延状態とし、単軸による遊動撹拌翼と駆動撹拌翼による相対回転撹拌の効率をさらに向上することができる。
また、請求項2の発明によれば、駆動撹拌翼と遊動撹拌翼とは、遊動撹拌翼である外側撹拌翼から内側にかけて、所定間隔を隔てて交互に配置することとしたため、内側と外側のそれぞれの撹拌翼の間にある掘削・撹拌土に対する「せん断線」は駆動撹拌翼である内側撹拌翼の形状に沿って、軸方向又は内側撹拌翼と略平行にして略直線的とすることを容易として共回り現象の発生の防止でき、複数の各撹拌翼を配置しても各撹拌翼が共回りすることなく掘削・撹拌土に対して確実にせん断力を働かせて撹拌効率の向上をすることができる。
また、共回り現象を防止する各撹拌翼の配置構成が可能となるため、複数の各撹拌翼のうち駆動撹拌翼の内側に対して、外側撹拌翼と一体的に回転する撹拌翼を設けることができ、遊動撹拌翼と駆動撹拌翼による相対回転撹拌の効率を飛躍的に向上することができる。
また、請求項3の発明によれば、外側撹拌翼は、側面視での翼形状面の幅を部材幅とし、軸方向視での翼形状面の幅を部材厚とし、部材厚は部材幅以下であることとしたため、外側撹拌翼の軸方向視による改良面積に対する翼面積を小さくすることができ、しかも、貫入・引抜きの昇降操作撹拌時の改良土や掘削土の通過抵抗を少なくすることができ、通過促進効果を上げることで施工スピードの向上を行うことができる。
また、外側撹拌翼を薄板状に形成することができ、改良土の外側撹拌翼内通過時の翼影部、すなわち軸方向視において翼側面の端部から軸方向に沿って流れる改良土が、その粘着性により翼の上下側面側に入り込み軸方向の改良土流下の影響を受けずに滞留する領域部も小さくして、改良土の翼影部への付着をも低減することができ、掘削土と改良材の混練性を良好に確保することができる。
また、請求項4の発明によれば、外側撹拌翼は、上記掘削・撹拌軸の軸方向に対して捩じり形状又は同軸方向に対して傾斜させた形状となし、地盤改良における貫入・引抜き時の上記掘削・撹拌軸の上下動に伴って土壌抵抗により回転作動するようにしたため、外側撹拌翼やこれに連動する他の遊動撹拌翼に一定方向の回転作動を発生させることができ、駆動撹拌翼との相対回転撹拌をさらに向上して、外周部改良土の軸方向への通過を促しつつも掘削土と改良材との練り込み撹拌を堅実に図ることができ、良好な混練り性を確保することができる。
このように単軸型の内側・外側撹拌翼構造にもかかわらず、混合撹拌作業時に外側撹拌翼の回動を抑制して静止状態とし、共回りを防止しながら相対撹拌を達成することができ、装置自体のコストも安価で施工費用も低減することができる効果がある。
本発明にかかる掘削・撹拌具を備えた地盤改良装置を示す側面図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の基本的な構造を示す斜視図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例1を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例2を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例3を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例4を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例5を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例6を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例7を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例8示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例9を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例10を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例10を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の変形例11を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具の他の変形例を示す説明図である。
本発明にかかる掘削・撹拌具によるせん断線を示す説明図である。
従来の単軸型の掘削・撹拌具の構成及びせん断線を示す説明図である。
この発明の要旨は、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸と、同掘削・撹拌軸の下端に設け、地盤を掘削する掘削翼と、同掘削・撹拌軸の外周から外方へ膨出させて弧状に形成し、同掘削・撹拌軸の外周面又は同掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して少なくとも一端を支持した複数の撹拌翼と、からなり、上記複数の撹拌翼として、上記掘削・撹拌軸と一体に回転する駆動撹拌翼と、上記掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する遊動撹拌翼と、を有し、しかも、上記撹拌翼のうち、最も外側の外側撹拌翼を遊動撹拌翼としたことにある。
以下、この発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明にかかる掘削・撹拌具を搭載した地盤改良装置Kを示し、図3、図4、図5は、本発明の掘削・撹拌具Dを示す。
〔1.地盤改良装置〕
まず、本発明にかかる撹拌具Dを備える地盤改良装置Kの基本的構成について説明する。図1に示すように、地盤改良装置Kは、地盤Gの改良部分の地上面に設置される。
地盤改良装置Kは、自走可能なベースマシン本体Aに上下方向に伸延するリーダBを設け、リーダBに回転駆動部Iを介して垂直な掘削・撹拌軸1の上端が設けられ、さらに、改良材を供給する改良材供給部Cを備えることが基本的構成となっている。
ベースマシン本体Aの後方位置に配設された改良材供給部Cは、改良材供給路Eを介して回転駆動部Iと連通連設しており、改良材を掘削・撹拌軸1の内部を経由して掘削・撹拌軸1の下部から掘削孔内へ吐出されるように構成している。なお、改良材としては、地盤を改良するために使用する材料で、固化材、混和材、添加剤、中和剤、薬剤、化学剤等を使用する。
また、回転駆動部Iは、その上部の所定位置に回転部材が設けられており、一端をベースマシン本体A後部に内蔵した図示しない駆動回転ドラムに連結し、リーダBの最頂部を介して同回転部材の周囲に巻き掛けられ、他端をリーダBの上部に固定した吊り下げワイヤFにより、ベースマシン本体Aからの回転駆動力が伝達するように構成されている。
すなわち、駆動回転ドラムの回転駆動力をリーダBに沿った上下昇降駆動力に変換して地盤改良における貫入・引抜き時の掘削・撹拌軸の上下動を行う。
そして、地盤改良装置Kは、図1及び図2に示すように、地盤Gを掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための主要部として機能する掘削・撹拌具Dを備えている。
〔2.掘削・撹拌具〕
以下、本発明にかかる掘削・撹拌具Dの構成について図面を参照しながら説明する。図3(a)は、本発明にかかる掘削・撹拌具Dの撹拌翼を二段翼とした構成を示す側面図であり、図3(b)は、その軸方向視を示す。また、図4(a)及び図4(b)は掘削・撹拌具Dの撹拌翼を三段翼とした構成を示し、図5(a)、図5(b)は掘削・撹拌具Dの撹拌翼を四段翼とした構成を示す。
すなわち、掘削・撹拌具Dは、図3、図4、図5に示すように、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸1と、同掘削・撹拌軸1の下端に設けた地盤を掘削する掘削翼2と、同掘削・撹拌軸1の外周から外方へ膨出させて弧状に形成し、同掘削・撹拌軸1の外周面又は同掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して少なくとも一端を支持した複数の撹拌翼とを有している。
ここで、本実施形態において撹拌翼の形状である「弧状」とは、角部を有しない略円弧状の他に、一つの角部を有する略三角形弧状、二つの角部を有する略四角形弧状、さらには、角部を三つ以上有する略多角形状等も含まれる。また、角部としてはR状に面取りされているものも含まれる。また、「弧状」の各形状は、側面視において、撹拌翼が掘削・撹拌軸1の外周面又は同掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して支持される部位よりも軸方向上側又は/及び下側に膨出させた形状をも含む。
掘削・撹拌具Dは、複数の撹拌翼として、掘削・撹拌軸1と一体に回転する駆動撹拌翼10と、掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する遊動撹拌翼20と、を有しており、具体的には以下のように掘削・撹拌軸1に対して設けられる。
図3に示す掘削・撹拌具D1は、掘削・撹拌軸1の下端に地盤Gを掘削する略水平の掘削翼2を設けており、更にその上方の掘削・撹拌軸1の外周廻りに下部ボス部22と上部ボス部23とを軸方向で所定間隔を隔てて2つ遊嵌している。
外側撹拌翼21は、その中途部を掘削・撹拌軸1の外周から外方に向けて膨出した弧状に形成されている。外側撹拌翼21は、掘削・撹拌軸1の軸方向に沿う方向で、その上端を上部ボス部23の外周面に対して一体に設け、また、下端を下部ボス部22の外周面に対して一体に設け、各ボス間を跨持した状態で掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ架設されている。2つの外側撹拌翼21は、掘削・撹拌軸1の軸回りに等角度間隔(180°間隔)で設けられている。このように、外側撹拌翼21は、掘削・撹拌軸1に対して遊動状態の遊動撹拌翼20としている。
外側撹拌翼21は、側面視で外側撹拌翼21の弧状の外形をなす帯板状の翼本体部24と翼支持部25とを有している。より具体的には、外側撹拌翼21は、後述する内側撹拌翼11の翼本体部14と共に翼本体部14との間にある掘削・撹拌土の撹拌中心として機能し、掘削・撹拌軸1の軸方向に沿う方向に伸延した帯板状に形成した翼本体部24と、同翼本体部24の両端で掘削・撹拌軸1に対して伸延した翼支持部25と、により構成している。つまり、外側撹拌翼21は、翼本体部24を翼支持部25を介して掘削・撹拌軸1に対し略平行とするように配設されている。
本実施形態における外側撹拌翼21は、側面視において、掘削・撹拌軸1の下部ボス部22及び上部ボス部23の間の部分とともに略四角形弧状(略台形弧状)をなすように形成されており、略台形弧状の上底に相当する辺を翼本体部24とし、翼本体部24両端から掘削・撹拌軸1側に向けて徐々に拡開するように翼支持部25を伸延させ、下部ボス部22及び上部ボス部23それぞれに連結させている。
内側撹拌翼11は、外側撹拌翼21の形状と略相似形として外側撹拌翼21よりも小さく形成しており、外側撹拌翼と同様に側面視で外側撹拌翼21の弧状の外形をなす帯板状の翼本体部14と翼支持部15(本実施形態では2つ)とを有している。
そして、内側撹拌翼11は、上記上部ボス部23と下部ボス部22との間に露出した掘削・撹拌軸1の外周面に対し内側撹拌翼11の上端と下端とを繋げ、掘削・撹拌軸1と一体に設けられている。このように、掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ架設し、掘削・撹拌軸1と一体回転する駆動撹拌翼10としている。
この内側撹拌翼11は、側面視において、その上端縁と下端縁の間の中央部を、最外側の外側撹拌翼21の上端縁と下端縁の間の掘削・撹拌軸1の中央部である軸方向中央部1aに対して重合させる位置に配設されている。すなわち、内側撹拌翼11及び外側撹拌翼21は、掘削・撹拌軸1の軸回りにおいて互いに同位相にある状態で、側面視において、軸方向中央部1aを中心に、内外翼層状として略同心円的配置となるように(略波紋状に)掘削・撹拌軸1に対して配設している。
なお、本実施形態において遊動撹拌翼20とした外側撹拌翼21の撹拌径dは、図3(a)及び図3(b)に示すように、掘削翼径以下となるように構成している。
より具体的には、外側撹拌翼21の径方向外周端までの長さが、掘削翼2の径方向外周端の長さ範囲に納まるように外側撹拌翼21を構成し、同外側撹拌翼21を掘削・撹拌軸1に対して配設している。
ここで、「外側撹拌翼21の撹拌径」とは、外側撹拌翼21の最外径であり、外側撹拌翼21に付属部材が付設された構成においては、その付属部材を含む外側撹拌翼21の外径である。なお、外側撹拌翼21に付設する付属部材については後程詳説する。
このように、図3に示す掘削・撹拌具D1は、掘削・撹拌軸1と一体に回転する駆動撹拌翼10である内側撹拌翼11と、駆動撹拌翼10の外側に設けられ、掘削・撹拌軸1の外周に対して外方へ膨出させて弧状に形成し、掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する外側撹拌翼21としたことで以下のような効果がある。
すなわち、掘削・撹拌時には、図19(a)に示すように、撹拌された改良土は、掘削・撹拌軸1周辺の下部ボス部22・上部ボス部23や、外側撹拌翼21、内側撹拌翼11のそれぞれの翼支持部15、25による周面摩擦力や部材断面によって撹拌翼内部中心域の通過が阻害され、通過抵抗の少ない外側撹拌翼21近傍へと導かれた改良土Jである外周部改良土J1により掘削孔Hの外周壁近傍に静止撹拌領域Lを形成する。
特に、各撹拌翼10、20はそれぞれの翼本体部14、24を軸方向に対して略平行となるように軸方向中央部1aを中心に内外翼層状に略同心円的配置で掘削・撹拌軸1に対して設けていることから、掘削・撹拌時における掘削・撹拌土を回転撹拌領域Mと静止撹拌領域Lに区分するせん断線Sが、内側撹拌翼11の翼本体部14と外側撹拌翼21の翼本体部24との間で軸方向又は内側撹拌翼11の形状に沿うように略直線的となる。
このため、静止撹拌領域Lに位置する外側撹拌翼21に比べて、回転撹拌領域Mで回転する内側撹拌翼11に対するせん断抵抗力は小さくなるためせん断線を確実に生起して掘削・撹拌土の共回り現象を防止可能として、静止撹拌領域Lの外周部改良土J1の静止状態を堅実としている。
そして、この静止状態の外周部改良土J1は、遊動撹拌翼20である外側撹拌翼21の回転方向に対する抵抗を付与し、外側撹拌翼21を静止状態または駆動撹拌翼10として常時一定回転する内側撹拌翼11より回転速度を遅延させた状態とすることができ、これら内外二段翼に配置(以下、単に二段翼式とも言う。)した各撹拌翼、すなわち外側撹拌翼21と内側撹拌翼11とにより効果的な相対回転撹拌を実現可能としている。
このような掘削・撹拌具Dは、撹拌翼を図4に示すように、いわゆる内外三段翼に配置(以下、単に三段翼式とも言う。)したり、図5に示すように、いわゆる内外四段翼に配置(以下、単に四段翼式とも言う。)して構成することも可能である。
図4に示す三段翼式の掘削・撹拌具D2は、図3に示した二段翼式の掘削・撹拌具D1のうち、駆動撹拌翼10である内側撹拌翼11の更に内側に掘削・撹拌軸1に対して遊動状態に設けられ、外側撹拌翼21と一体に回転する芯側撹拌翼31を備えている。
掘削翼2の更にその上方の掘削・撹拌軸1の外周廻りには下部ボス部22を遊嵌し、更に下部ボス部22の外周廻りには内側撹拌翼用ボス部12を遊嵌している。更には、下部ボス部22より上方位置の掘削・撹拌軸1の外周廻りには上部ボス部23を遊嵌している。
下部ボス部22は、その上部を上述した軸方向中央部1a位置まで軸方向上方に伸延して形成し、掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌している。
下部ボス部22の中途部の外周廻りには、内側撹拌翼用ボス部12を遊嵌している。また、下部ボス部22の上部、すなわち軸方向中央部1a位置には、芯側撹拌翼31が掘削・撹拌軸1から径方向外方に向って突出している。
芯側撹拌翼31は、側面視板状に形成しており、下部ボス部22上部の外周面から径方向外方に向って掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ突設され、外側撹拌翼21と一体回転する遊動撹拌翼20としている。
また、内側撹拌翼11は、軸方向に沿う方向で、その上端を芯側撹拌翼31と上部ボス部23との間に露出した掘削・撹拌軸1の外周面に設け、その下端を内側撹拌翼用ボス部12の外周面に対して設け、各ボス間を跨持した状態で掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ架設し、掘削・撹拌軸1と一体回転する駆動撹拌翼10としている。
このように径方向に隣り合う外側撹拌翼21、内側撹拌翼11、芯側撹拌翼31は、側面視において、最外側の外側撹拌翼21の上端縁と下端縁と、掘削・撹拌軸1とのそれぞれの連結部の間の掘削・撹拌軸1の軸方向中央部1aに対し、内側撹拌翼11の上端と下端の間の軸線の略中央部、及び芯側撹拌翼31の略中央部のそれぞれが重合すべく、軸方向中央部1aを中心に内外翼層状となるよう略同心円的に掘削・撹拌軸1に対して配置されている。
すなわち、遊動撹拌翼20であってボス部を介して一体的に回転する外側撹拌翼21と芯側撹拌翼31と、駆動撹拌翼10である内側撹拌翼11とは、遊動撹拌翼20である外側撹拌翼21から軸方向中央部1aに向って内側にかけて、それぞれ撹拌翼の弧状の外形に沿う間隔を隔てて交互に配置されている。
従って、芯側撹拌翼31の配設位置は、側面視において掘削・撹拌軸1に対して外側撹拌翼21の上端縁と下端縁の間の軸線上の軸方向中央部1a位置となる。
そして、これら複数の撹拌翼の配設によって形成される間隔幅は、側面視において略同じ幅としている。
このように構成した三段翼式の掘削・撹拌具D2において、上述の掘削・撹拌時の掘削・撹拌土に対するせん断線は以下のように生起する。
すなわち、掘削・撹拌時には、図19(b)に示すように、撹拌された改良土は、掘削・撹拌軸1周辺の下部ボス部22・上部ボス部23や、外側撹拌翼21、内側撹拌翼11のそれぞれの翼支持部15、25、芯側撹拌翼31による周面摩擦力や部材断面によって撹拌翼内部中心域の通過が阻害され、通過抵抗の少ない外側撹拌翼21近傍へと導かれた外周部改良土J1により掘削孔Hの外周壁近傍に静止撹拌領域Lを形成する。
特に、芯側撹拌翼31、内側撹拌翼11、外側撹拌翼21から軸方向中央部1aに向って内側にかけて、それぞれ撹拌翼の弧状の外形に沿う間隔を隔てて交互に配置することで、外側撹拌翼21と内側撹拌翼11との間の掘削・撹拌土に対するせん断線Sを軸方向又は駆動撹拌翼10となる内側撹拌翼11の形状に沿って略平行にして略直線的とし、掘削・撹拌土を回転撹拌領域Mと静止撹拌領域Lとに区分することを確実としている。
そして、静止撹拌領域Lに存在する静止状態の外周部改良土J1は、遊動撹拌翼20である外側撹拌翼21の回転方向に対する抵抗を付与し、外側撹拌翼21を静止状態または駆動撹拌翼10として常時一定回転する内側撹拌翼11に比して回転速度を遅延させた状態としている。
特に、内側撹拌翼11と芯側撹拌翼31との間の掘削・撹拌土に対するせん断線S1は、駆動撹拌翼10となる内側撹拌翼11の弧状の内形に沿う略平行線として、外側撹拌翼21とボス部を介して連動する芯側撹拌翼31近傍の掘削・撹拌土を略静止状態としつつ、内側撹拌翼11近傍の掘削撹拌土を回転状態として各撹拌翼の層状内部側においても相対撹拌を実現可能としている。
また、図5に示す四段翼式の掘削・撹拌具D3は、図4に示した三段翼式の掘削・撹拌具D2のうち、芯側撹拌翼31を第2の内側撹拌翼41に置換し、更にその第2の内側撹拌翼41の内側に設けられ、掘削・撹拌軸1と一体に回転する芯側撹拌翼32を備えている。
より具体的には、下部ボス部22は、軸方向のうち、その上部を軸方向中央部1aより下方位置とするように上方伸延して形成し、掘削・撹拌軸1の略下半部を覆うように外周廻りに遊嵌している。下部ボス部22中途部の外周廻りに内側撹拌翼用ボス部12を遊嵌している。
更に、掘削・撹拌軸1において、軸方向中央部1aと内側撹拌翼11の上部連設部との間の外周廻りには、第2の内側撹拌翼用上部ボス部43が遊嵌されている。
そして、第2の内側撹拌翼41は、軸方向に沿う方向で、その上端を内側撹拌翼用上部ボス部23aの外周面に設け、その下端を下部ボス部22の外周面に対して設け、各ボス間を跨持した状態で掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ架設し、下部ボス部22を介して外側撹拌翼21と一体回転する遊動撹拌翼20としている。
一方で、芯側撹拌翼31は、第2の内側撹拌翼41の更に内側、すなわち第2の内側撹拌翼用上部ボス部43と下部ボス部22の上部の間に露出した掘削・撹拌軸1の外周面の軸方向中央部1a位置に掘削・撹拌軸1から径方向外方に向って掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ突設し、掘削・撹拌軸1と一体的回転する駆動撹拌翼10としている。
すなわち、それぞれ内外複数の駆動撹拌翼10である内側撹拌翼11と芯側撹拌翼31とは、掘削・撹拌軸1と一体回転するように掘削・撹拌軸1の外周に設けられる。
一方で、それぞれ内外複数の遊動撹拌翼20である外側撹拌翼21と第2の内側撹拌翼41とは、掘削・撹拌軸1の外周廻りに対して遊嵌されたボス部を介して一体回転するように掘削・撹拌軸1に対して遊動状態で設けられる。
これら径方向に隣り合う外側撹拌翼21、内側撹拌翼11、第2の内側撹拌翼41、芯側撹拌翼31は、三段翼式の掘削・撹拌具Dと同様にして、側面視において、最外側の外側撹拌翼21の上端縁と下端縁との間の掘削・撹拌軸1上の軸方向中央部1aに対し、内側撹拌翼11の上端縁と下端縁との間の軸線の略中央部、第2の内側撹拌翼41の上端縁と下端縁との間の軸線の略中央部、及び芯側撹拌翼31の略中央部のそれぞれが重合するように、内外層状となるように中央部1aを中心に略同心円的に配置されている。
すなわち、遊動撹拌翼20であってボス部を介して一体的に回転する外側撹拌翼21と第2の内側撹拌翼41、駆動撹拌翼10であって掘削・撹拌軸1を介して一体的に回転する内側撹拌翼11と芯側撹拌翼31は、外側撹拌翼21から軸方向中央部1aに向って内側にかけて、それぞれ撹拌翼の弧状の外形に沿う間隔を隔てて遊動撹拌翼20と駆動撹拌翼10を交互に配置されている。
具体的には、最も外側には、遊動撹拌翼20としての外側撹拌翼21が位置し、その内側に、駆動撹拌翼10としての内側撹拌翼11が位置し、そのさらに内側に、遊動撹拌翼20としての第2の内側撹拌翼41が位置し、そのさらに内側に、駆動撹拌翼10としての芯側撹拌翼31が位置する。このように、駆動撹拌翼10及び遊動撹拌翼20は、掘削・撹拌軸1の径方向外側から径方向内側にかけて交互に配置させるように設けられている。
このような構成により、複数の撹拌翼を有しているにも関わらず、以下のようの効果がある。
すなわち、通過抵抗の少ない外側撹拌翼21近傍へと導かれて静止撹拌領域Lに存在する外周部改良土J1が外側撹拌翼21の回転方向に対する抵抗を付与し、外側撹拌翼21を静止状態または駆動撹拌翼10として常時一定回転する内側撹拌翼11より回転数を遅延させた状態とし、外側撹拌翼21とボス部を介して配設された遊動撹拌翼20としての第2の内側撹拌翼41が内側で略静止状態となるため、二重の相対回転撹拌を可能として優れた混練性を実現可能としている。
せん断線の観点からみれば、相対回転撹拌時には、三段翼とした場合と同様に、外側撹拌翼21と内側撹拌翼11との間の掘削・撹拌土に対するせん断線Sを軸方向又は駆動撹拌翼10となる内側撹拌翼11の形状に沿って略平行にして略直線的とし、内側撹拌翼11と第2の内側撹拌翼41、第2の内側撹拌翼41と芯側撹拌翼31、のそれぞれの間の掘削・撹拌土に対するそれぞれのせん断線S1は、駆動撹拌翼10となる内側撹拌翼11及び芯側撹拌翼31の形状に沿う略平行線とすることを可能としている。
換言すれば、側面視多層構造とした各撹拌翼同士間の掘削・撹拌土に対して、確実に複数のせん断線を生起させることで、撹拌径外周部近傍の静止撹拌領域Lの外周部改良土J1による回転方向への抵抗力を撹拌径中心部側へも伝達することができ、撹拌径の内側から外側にかけて略静止状態と回転撹拌状態の掘削・撹拌土とを生起させ、共回り現象の発生の防止可能しつつ、相対回転撹拌の効率の向上を可能としている。
このように一軸の掘削・撹拌軸1による内外側撹拌翼構造にもかかわらず、混合撹拌作業時に外側撹拌翼21が静止状態となるため、その外端に未掘削地盤への突入部材等を一切必要とせず、外側撹拌翼21を掘削土中に埋没し回動抑制した静止状態等とし、共回りを防止しながら中心部の内側撹拌翼11等の駆動撹拌翼10の回転に伴い相対回転撹拌と同様な効果を達成することができ、装置自体のコストも安価で施工費用も低減化することができる。
〔変形例1〕
次に、本発明の変形例1にかかる掘削・撹拌具D4について図6を参照しながら説明する。図6(a)及び図6(b)は、掘削・撹拌具D4の側面図を示し、図6(c)は、それぞれの軸方向視を示す。
変形例1にかかる掘削・撹拌具D4の外側撹拌翼21は、図6(a)及び図6(b)に示すように側面視における翼形状面の幅を部材幅W(W1、W2、W3)とし、図6(c)に示すように軸方向視における翼形状面の幅を部材厚T(T1、T2、T3)とし、部材厚Tは部材幅W以下となるように成形している。なお、外側撹拌翼21において、図中、W1及びW3は翼支持部25の部材幅を示し、W2は翼本体部24の部材幅を示す。同様に、T1及びT3は翼支持部25の部材厚を示し、T2は翼本体部24の部材厚を示す。
換言すれば、外側撹拌翼21は、側面視で外側撹拌翼21の弧状の外形をなす帯板状の翼本体部24と翼支持部25とを有し、翼本体部24や翼支持部25は、掘削・撹拌軸1の軸方向視で、掘削・撹拌軸1の径方向に直交する方向、すなわち掘削・撹拌軸1の軸心を中心とする円周に対する接線方向を板厚方向(部材厚T1、T2、T3方向)としている。
このような構成により遊動撹拌翼20である外側撹拌翼21は、回転駆動力を伝達する必要がないため、貫入・引抜き時の軸方向における抵抗に対し部材剛性を考慮すればよく、従って、径方向に直交する方向の部材剛性を小さくすることができる。
このことは、図6(c)に示すように、部材厚と部材幅の大小関係が逆の場合の構成との比較において、外側撹拌翼21の軸方向視による改良面積に対する翼面積を小さくすることができ、しかも、貫入・引抜きの昇降操作撹拌時の改良土や掘削土の通過抵抗を少なくすることを可能とする。さらに、改良土の外側撹拌翼内通過時の翼影部も小さくなり、改良土の翼影部への付着をも低減することができる。
従って、通過促進効果を上げることで施工スピードの向上を可能とし、更には、外側撹拌翼21を薄板状に形成することができると共に外側撹拌翼21への改良土等の付着を低減することができ、掘削土と改良材の混練性を良好に確保することができる。
なお、外側撹拌翼21の薄板状小口面は面取り又は鋭角的な加工を行って撹拌時の改良土等の通過抵抗を抑えることも有効である。また、外側撹拌翼21の幅面(部材幅W)は、共回り防止翼としての必要な抵抗面積を確保するように形成している。
〔変形例2〕
次に、本発明の変形例2にかかる掘削・撹拌具D5について図7を参照しながら説明する。図7(a)は、掘削・撹拌具D5の側面図を示し、図7(b)は、その軸方向視を示す。
変形例2にかかる掘削・撹拌具D5の外側撹拌翼21は、図7(a)に示すように、掘削・撹拌軸1の軸方向に対して捩じり形状又は同軸方向に対して傾斜させた形状となし、地盤改良における貫入・引抜き時の掘削・撹拌軸1の上下動に伴って土壌抵抗により回転作動するように構成している。
換言すれば、外側撹拌翼21は、図7(a)に示すように側面視で前記撹拌翼の弧状の外形をなす帯板状の翼本体部24や翼支持部25を有し、図7(b)に示すように翼本体部24や翼支持部25の板面を上下方向に対して傾斜する傾斜面となし、掘削・撹拌具Dの貫入・引抜き時の上下動に伴って前記傾斜面に受ける土壌抵抗により回転作動するように構成している。
このように外側撹拌翼21が「捩じり形状」や「傾斜させた形状」に形成されていることにより、掘削・撹拌軸1の軸方向上方動作時においては、図6(b)に示すように、軸方向上方視において翼本体部24や翼支持部25の傾斜面のうち上面24a、25aに対して改良土や掘削土の土壌抵抗が作用することで、その上面24a、25aに沿うように外側撹拌翼21を軸方向下側に押下げようとする押圧力と、傾斜面のうち下面24b、25b側方向を回動方向とする押圧力とを生起し、外側撹拌翼21が傾斜面の下面24b、25b側方向に向かって回転する。
一方で、掘削・撹拌軸1の軸方向下方動作時においては、軸方向上方視において翼本体部24や翼支持部25の傾斜面のうち下面24b、25bに対して改良土や掘削土の土壌抵抗が作用することで、その下面24b、25bに沿うように外側撹拌翼21を軸方向上側に押上げようとする押圧力と、傾斜面のうち上面24a、25a側方向を回動方向とする押圧力とを生起し、外側撹拌翼21が傾斜面の上面24a、25a側方向に向かって回転する。
なお、掘削・撹拌具D5の貫入・引抜き時の上下動に伴って回転作動する外側撹拌翼21の回転方向が駆動撹拌翼10の回転方向と同じであっても、外側撹拌翼21やこれに連動する他の遊動撹拌翼20の回転スピードは一定ではないため、駆動撹拌翼10と遊動撹拌翼20による相対回転撹拌は可能である。
このように変形例2にかかる掘削・撹拌具D5の外側撹拌翼21によれば、外側撹拌翼21の内方に位置する掘削土と改良材の二次元的な撹拌や混練を、掘削・撹拌軸1の回転方向に対する翼本体部24や翼支持部25の部材幅Wの全域にわたって幅広く行うことができ、外側撹拌翼21やこれに連動する他の遊動撹拌翼20aに一定方向の回転作動を発生させることを可能としている。
しかも、掘削・撹拌具D5の貫入・引抜き時の上下動に伴って強制的に回転方向を転換し、駆動撹拌翼10との相対回転撹拌をさらに向上して、外周部改良土J1の軸方向上下への通過を促しつつも掘削土と改良材との三次元的な練り込み撹拌を堅実に図ることができ、良好な混練性を確保することを可能としている。
〔変形例3〕
次に、本発明の変形例3にかかる掘削・撹拌具D6及び掘削・撹拌具D7について図8を参照しながら説明する。図8(a)及び図8(b)は、それぞれ掘削・撹拌具D6及び掘削・撹拌具D7の軸方向視を示す。
図8(a)に示すように、掘削・撹拌具D6は、芯側撹拌翼31、内側撹拌翼11、外側撹拌翼21は、例えば、N値、軟弱・硬質地盤、礫等の土質特性や撹拌径dの大きさに対応できるようにそれぞれ各翼共に複数枚配設することもできる。
すなわち、芯側撹拌翼31、内側撹拌翼11、外側撹拌翼21を左右に伸延するのではなく、軸方向視で掘削・撹拌軸1を中心として約120度の角度間隔で放射状に3枚の翼をそれぞれ伸延して構成することで、撹拌効率を向上させている。
また、図8(b)に示す掘削・撹拌具D7のように、内側撹拌翼11の翼支持部15の径方向外方の先端に、掘削・撹拌軸1内部の改良材供給路Eと連通した翼中吐出口50を穿設してもよい。
このように構成することで、撹拌回転時に掘削土中に改良材を均一に散布しつつ、その外側に配置された外側撹拌翼21への改良土の付着低減効果や、せん断抵抗の抑止効果となって共回り現象の防止にも寄与できる。さらに、この翼中吐出口50は撹拌外周部においても改良材と掘削土との混練性を高めることができ、改良土の品質の向上を図ることを可能としている。
〔変形例4〕
次に、本発明の変形例4にかかる掘削・撹拌具D8について図9を参照しながら説明する。図9は、掘削・撹拌具D8の側面図を示す。
掘削・撹拌具D8は、図9に示すように、上方伸延して形成した下部ボス部22と上部ボス部23とを、掘削・撹拌軸1に対する配設位置を上下逆に入れ替えて各撹拌翼を配置して構成してもよい。
すなわち、掘削・撹拌軸1と一体回転する内側撹拌翼11の固定構造が基本構造と異なり上端を上部ボス部23に遊嵌した内側撹拌翼用ボス部12に固定し、下端は掘削・撹拌軸1に固定している。
〔変形例5〕
次に、本発明の変形例5にかかる掘削・撹拌具D9について図10を参照しながら説明する。図10(a)は、掘削・撹拌具D9の側面図を示し、図10(b)はその軸方向視を示す。
図10に示す掘削・撹拌具D9は、外側撹拌翼21を薄板状に構成し、図10(a)に示すように翼本体部24の径方向外方の先端部分に付属部材60として、回転抵抗を可及的受けるための補強板61を設けて構成している。
補強板61は、外側撹拌翼21の径方向外周面と周辺地盤との縁切り板、摩擦抵抗板、又は改良体の鉛直求心性ガイド板として機能し、外側撹拌翼21の径方向の外周面に撹拌径d以下となるように配設している。
補強板61を配設した外側撹拌翼21の断面形状は、T字型、L字型としてもよく、本変形例においては図10(b)に示すように、掘削孔Hの内周壁をT字の横片面61aでなぞるようにして構成している。
このような構成により、外側撹拌翼21の外周面回りの改良土等からの土壌抵抗を受けやすくし、さらに、補強板61が掘削孔H壁面の摩擦抵抗をも受けることで、外側撹拌翼21、及び外側撹拌翼21に連動する各遊動撹拌翼20を略静止状態にすることを可能としている。
また、補強板61は、撹拌施工時の貫入・引抜き時の掘削孔H壁面のガイド役として、芯ずれ低減効果や改良土Jの回転遠心力による撒き出しを抑制することも可能としている。
〔変形例6〕
次に、本発明の変形例6にかかる掘削・撹拌具D10について図11を参照しながら説明する。図11は、掘削・撹拌具D10の側面図を示す。
図11に示す撹拌具D10は、外側撹拌翼21の上部横片部分に付属部材60として着脱自在翼62を軸方向上方に向けて突設しており、着脱自在翼62の上縁部は水平に形成している。なお、着脱自在翼62の形状は、円弧状や山型、多角形状に形成してもよい。
より具体的には、側面視において外側撹拌翼21の翼支持部25の上縁部と着脱自在翼62の下端縁とを、着脱自在翼62の平板面と翼支持部25の帯板面とが略面一となるように、各撹拌翼21、62の表面2箇所、裏面2箇所の合計4箇所に設けた係合部に係合するジョイント62aを取り付けて配設している。
このように外側撹拌翼21に着脱自在翼62を付設して外側撹拌翼21を構成することにより、外側撹拌翼21の回転抵抗面の面積拡大・縮小を任意に行うことを可能とし、着脱自在翼62を取り付けた場合には通過抵抗の少ない外側撹拌翼21の撹拌外周部近傍へと導かれた外周部改良土J1により、外側撹拌翼21の回転方向面に対する土壌抵抗が増加し、共回り現象をさらに防止可能とする。
〔変形例7〕
次に、本発明の変形例7にかかる掘削・撹拌具D11について図12を参照しながら説明する。図12は、掘削・撹拌具D11の側面図を示す。
図12に示す掘削・撹拌具D11は、外側撹拌翼21の軸方向上方、すなわち外側撹拌翼21が配設される上部ボス部23より上方位置で露出した掘削・撹拌軸1の外周面に、径方向外方に向けて略平板状の水平撹拌翼70(本変形例では掘削・撹拌軸1を介して左右対称に2つ)を突設して構成している。
このように水平撹拌翼70を設けることで、撹拌効果の向上と引抜き時の改良土のほぐし効果を高めて外側撹拌翼21の通過抵抗を低減し、撹拌作用の効率を向上可能としている。
〔変形例8〕
次に、本発明の変形例8にかかる掘削・撹拌具D12について図13を参照しながら説明する。図13は、掘削・撹拌具D12の側面図を示す。
図13に示す掘削・撹拌具D12は、左右の内側撹拌翼11において一方の内側撹拌翼11の翼本体部14の本体下半部14aと、他方の内側撹拌翼11の本体上半部14bとをそれぞれ径方向外方に膨出した形状に形成して構成している。
すなわち、複数の内側撹拌翼11の形状を、掘削・撹拌軸1を中心線として非線対称形状に形成して配置、又は、非対称的に配置し、撹拌回転時における撹拌翼の掘削土中内における通過軌跡(図中、破線で示す。)を複雑化することにより撹拌効果を向上可能としている。
〔変形例9〕
次に、本発明の変形例9にかかる掘削・撹拌具D13について図14を参照しながら説明する。図14は、掘削・撹拌具D13の側面図を示す。
図14に示す掘削・撹拌具D13は、掘削・撹拌軸1を相反回転を可能な内外二重軸構造とし、2つの掘削・撹拌軸1b、1cの下端に、それぞれ2つの掘削翼2a、2bを上下二段に配置している。
この上下二段の掘削翼2は掘削翼径が異なり、上側に配置される上段掘削翼2aは撹拌径dと等しく、また、上段掘削翼2aよりも下側に配置される下段掘削翼2bは上段掘削翼2aより掘削翼径を小さくするように形成している。
また、掘削・撹拌軸1は、円筒状の外側軸1bと、外側軸1bの内部に回転可能に挿嵌される内側軸1cとで構成されている。内側軸1cは、外側軸1bより軸方向に下方伸延して下部外周面を露出させた内外二重軸構造としている。
そして、上段掘削翼2aは外側軸1bの下端に、また、下段掘削翼2bは内側軸1cの下端にそれぞれ設け、これら二段の掘削翼2a、2bが常に相反回転しながら地盤Gの掘削を行える構成としている。
このような構成により、一方向回転掘削時に見られる掘削・撹拌軸1の芯ずれ現象を防止でき、掘削・撹拌軸1の求心性の向上に寄与することが出来る。
また、回転駆動部Iによる相反回転する駆動力を、例えば、低回転数で回転トルクの大きい外側軸1bを介して上段掘削翼2aに、高回転数で回転トルクの小さい内側軸1cを介して掘削翼径の小さい下段掘削翼2bに、それぞれ伝達することで、掘削に必要な回転トルクを有効に分割でき、掘削能力の向上を可能としている。このように、回転駆動部Iの相反回転駆動力の回転方向、回転数、回転トルク等の特性に合わせることができる。
そして、このように構成した掘削・撹拌軸1の外側軸1bの外周に対し、上述の如く各撹拌翼を配設することで掘削土と改良材との混練性を高め、地盤改良の施工速度の向上を図ることができる。
〔変形例10〕
次に、本発明の変形例10にかかる掘削・撹拌具D14、D15、D16及び掘削・撹拌具D17、D18、D19について、それぞれ図15及び図16を参照しながら説明する。図15は、掘削・撹拌具D14、D15、D16において内側撹拌翼を片持撹拌翼として構成した側面図を示し、図16は、掘削・撹拌具D17、D18、D19において外側撹拌翼と内側撹拌翼を片持撹拌翼として構成した側面図を示す。また、図15(a)及び図16(a)、図15(b)及び16(b)、図15(c)及び図16(c)は、それぞれ二段翼式、三段翼式及び四段翼式とした場合の側面図を示す。
図15及び図16に示す掘削・撹拌具D14、D15、D16及び掘削・撹拌具D17、D18、D19は、掘削・撹拌軸1の外周から外方へ膨出させて弧状に形成した外側撹拌翼21や内側撹拌翼11を、同掘削・撹拌軸1の外周面又は同掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して一端を支持した片持撹拌翼を有した構成としている。
片持撹拌翼は、外側撹拌翼21や内側撹拌翼11の弧状形状において、各撹拌翼の上端部又は下端部の一部を切削して短弧状に形成している。より具体的には、各撹拌翼における上下2つの翼支持部のうち、いずれか一方を切除して形成している。
すなわち片持撹拌翼は略弧状において、翼本体部先端を略軸方向に向けて、掘削・撹拌軸1の外周面又は同掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して、上下いずれか一方のみ形成した翼支持部を介して支持されている。
例えば、図15(a)及び図15(b)に示す掘削・撹拌具D14、D15の内側撹拌翼11は、下側の翼支持部15bを切削した短弧状の片持撹拌翼81として、上側の翼支持部15aのみのよって掘削・撹拌軸1に対して支持されている。
また、図15(c)に示す掘削・撹拌具D16は、内側撹拌翼11より内側の第2の内側撹拌翼41を上側の翼支持部15aを切削した短弧状の片持撹拌翼82として、下側の翼支持部15bのみのよって掘削・撹拌軸1に対して支持している。
また、図16(a)〜図16(c)に示す掘削・撹拌具D17、D18、D19は、内側撹拌翼11や第2の内側撹拌翼41を片持撹拌翼81、82とするだけでなく外側撹拌翼21を片持撹拌翼83として形成している。すなわち、外側撹拌翼21は、上側の翼支持部25aを切削した短弧状の片持撹拌翼83として、下側の翼支持部25bのみのよって掘削・撹拌軸1に対して支持することとしてもよい。
このように構成することにより、各撹拌翼を設けるに際しては、掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌されるボス部を省略して、掘削・撹拌具Dの小型化を可能としたり、同掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して両端で支持する必要がなく製造時の負担を軽減可能とする。
〔変形例11〕
次に、本発明の変形例9にかかる掘削・撹拌具D20、D21、D22、D23について図17を参照しながら説明する。図17(a)〜図17(d)は、掘削・撹拌具D20、D21、D22、D23のそれぞれの側面図を示す。
図17に示す掘削・撹拌具D20、D21、D22、D23は、外側撹拌翼21、内側撹拌翼11、芯側撹拌翼31といった各撹拌翼周面に小突形起状の補助翼90を複数設けることで、撹拌効果を向上可能としている。
図17(a)、図17(c)及び図17(d)にそれぞれ示す掘削・撹拌具D20、D22、D23は、外側撹拌翼21の内側、又は内側撹拌翼11の外側に撹拌抵抗のための小突起形状の補助翼90を、径方向で互いに向き合う方向で互い違いに多数突設して構成している。
この補助翼90は、複数の撹拌翼に設けることを要せず、図17(b)に示す掘削・撹拌具D21ように、内側撹拌翼11の径方向内外の周面から複数突設することとしてもよい。
なお、図17(a)、図17(c)及び図17(d)の掘削・撹拌具D20、D22、D23における各撹拌翼の径方向対向周面に互い違いに交互に突設した補助翼90の長さは、改良土の粘着力によって異なるが、粘着力が強い場合は、各撹拌翼同士が対向した際に、各撹拌翼同士の間において複数の各補助翼90がくし歯の如く互いに重なり合わない長さに形成しており、これら複数の撹拌翼同士の間の改良土や掘削土等のせん断線を、軸方向又は駆動撹拌翼10となる内側撹拌翼11の形状と略平行にして略直線的となる配置とすることで、外側撹拌翼21が追随して回転することなく、共回り現象の発生防止を可能としている。
〔他の変形例〕
次に、本発明に係る外側撹拌翼の変形例について図18を参照しながら説明する。図18(a)〜図18(d)は、掘削・撹拌具D24、D25、D26、D27それぞれの側面図を示す。
掘削・撹拌具D24、D25、D26、D27に係る撹拌翼は、上述の如く掘削・撹拌軸1の外周から外方へ膨出させて弧状に形成している。より具体的には、外側撹拌翼21は、側面視において弧状をなすように形成されており、径方向外側端部を翼本体部とし、同外側端部の両端から径方向軸側に向けた伸延部を翼支持部としている。
例えば、図18(a)に示す掘削・撹拌具D24の外側撹拌翼21Aは、側面視において略円弧状(半円弧状)をなすように形成し、径方向外側端部を翼本体部24Aとし、同外側端部の両端から径方向軸側に向けた円弧状の伸延部を翼支持部25Aとしている。
図18(b)に示す掘削・撹拌具D25の外側撹拌翼21Bは、側面視において掘削・撹拌軸1の下部ボス部22及び上部ボス部23の間の部分とともに略三角形弧状をなすように形成し、径方向外側端部である三角形頂点部を翼本体部24Bとし、同外側端部の両端から径方向軸側に向けた直線状の伸延部を翼支持部25Bとしている。
図18(c)に示す掘削・撹拌具D26の外側撹拌翼21Cは、側面視において掘削・撹拌軸1の下部ボス部22及び上部ボス部23の間の部分とともに略六角形弧状をなすように形成し、径方向外側端部である軸方向に伸延した一辺を翼本体部24Cとし、同外側端部の両端から径方向軸側に向けた屈曲状の伸延部を翼支持部25Cとしている。
また、撹拌翼の「弧状」は、側面視において、撹拌翼が掘削・撹拌軸1の外周面又は同掘削・撹拌軸1の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して支持される部位よりも軸方向上側又は/及び下側に膨出させた形状としてもよい。
例えば、図18(d)に示す掘削・撹拌具D27の外側撹拌翼21Dは、側面視において掘削・撹拌軸1の下部ボス部22及び上部ボス部23の間の部分とともに略六角形弧状となすように形成すると共に、上部ボス部23の外周面に対して支持される部位よりも軸方向上側に膨出させた形状に形成している。外側撹拌翼21Dは、径方向外側端部である軸方向に伸延した一辺を翼本体部24Dとし、同外側端部の両端から径方向軸側に向けた屈曲状の伸延部を翼支持部25Dとしている。
このように、本発明にかかる掘削・撹拌具によれば、単軸型の内側・外側撹拌翼構造にもかかわらず、混合撹拌作業時に外側撹拌翼の回動を抑制して静止状態とし、共回りを防止しながら相対撹拌を達成することができ、装置自体のコストも安価で施工費用も低減することができる。
すなわち、本発明によれば、多重軸型の練り込み撹拌による優れた混練性、貫入・引抜き抵抗の少ない施工性、軽量で経済性を兼ね備えた単軸駆動の掘削・撹拌具を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。また、本発明は上述の実施の形態に限定されることはなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。そして、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
A ベースマシン本体
B リーダ
C 改良材供給部
D 掘削・撹拌具
E 改良材供給路
F 吊下げワイヤ
G 未掘削地盤(地盤)
H 掘削孔
I 回転駆動部
J 改良土
K 地盤改良装置
1 掘削・撹拌軸
2 掘削翼
10 駆動撹拌翼
11 内側撹拌翼
12 内側撹拌翼用ボス部
20 遊動撹拌翼
21 外側撹拌翼
22 下部ボス部
23 上部ボス部
24 翼本体
31 芯側撹拌翼
上記従来の課題を解決するために、本発明にかかる掘削・撹拌具では、(1)地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸と、同掘削・撹拌軸の下端に設け、地盤を掘削する掘削翼と、同掘削・撹拌軸の外周から外方へ膨出させて弧状に形成し、同掘削・撹拌軸の外周面又は同掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して少なくとも一端を支持した複数の撹拌翼と、からなり、上記複数の撹拌翼として、上記掘削・撹拌軸と一体に回転する駆動撹拌翼と、上記掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する遊動撹拌翼と、を有し、しかも、上記撹拌翼のうち、最も外側の外側撹拌翼を遊動撹拌翼とし、上記外側撹拌翼は、上記掘削・撹拌軸の軸方向に沿う方向に伸延した翼本体部と、上記翼本体部から上記掘削・撹拌軸に対して伸延した翼支持部と、を有し、上記翼本体部及び上記翼支持部が上下方向に対して傾斜する傾斜面を有するように、上記外側撹拌翼を掘削・撹拌軸の軸方向に対して捩じり形状又は同軸方向に対して傾斜させた形状となし、地盤改良における貫入・引抜き時の上下動に伴って上記傾斜面に受ける土壌抵抗により上記外側撹拌翼を回転作動状態とする一方、上記貫入・引抜きの上下動を伴わない場合は傾斜面に受ける土壌抵抗により上記外側撹拌翼を静置状態又は上記駆動撹拌翼より回転数を遅延させた状態とし上記外側撹拌翼の共回りを防止するように構成したことに特徴を有する。
請求項1の発明によれば、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸と、同掘削・撹拌軸の下端に設け、地盤を掘削する掘削翼と、同掘削・撹拌軸の外周から外方へ膨出させて弧状に形成し、同掘削・撹拌軸の外周面又は同掘削・撹拌軸の外周廻りに遊嵌したボス部の外周面に対して少なくとも一端を支持した複数の撹拌翼と、からなり、上記複数の撹拌翼として、上記掘削・撹拌軸と一体に回転する駆動撹拌翼と、上記掘削・撹拌軸に対して遊動状態で回転する遊動撹拌翼と、を有し、しかも、上記撹拌翼のうち、最も外側の外側撹拌翼を遊動撹拌翼とし、上記外側撹拌翼は、上記掘削・撹拌軸の軸方向に沿う方向に伸延した翼本体部と、上記翼本体部から上記掘削・撹拌軸に対して伸延した翼支持部と、を有し、上記翼本体部及び上記翼支持部が上下方向に対して傾斜する傾斜面を有するように、上記外側撹拌翼を掘削・撹拌軸の軸方向に対して捩じり形状又は同軸方向に対して傾斜させた形状となし、地盤改良における貫入・引抜き時の上下動に伴って上記傾斜面に受ける土壌抵抗により上記外側撹拌翼を回転作動状態とする一方、上記貫入・引抜きの上下動を伴わない場合は傾斜面に受ける土壌抵抗により上記外側撹拌翼を静置状態又は上記駆動撹拌翼より回転数を遅延させた状態とし上記外側撹拌翼の共回りを防止するように構成したため、単軸型でありながらも多重軸型のような練り込み撹拌による優れた混練性、貫入・引抜き抵抗の少ない施工性、そして軽量で経済性を兼ね備えた掘削・撹拌具を提供することができる。しかも、外側撹拌翼やこれに連動する他の遊動撹拌翼に一定方向の回転作動を発生させることができ、駆動撹拌翼との相対回転撹拌をさらに向上して、外周部改良土の軸方向への通過を促しつつも掘削土と改良材との練り込み撹拌を堅実に図ることができ、良好な混練り性を確保することができる。