JP7380410B2 - ガイドローラ及び光ファイバ線引装置 - Google Patents
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Description
このガイドローラの表面には複合セラミックス皮膜が形成されており、摩耗しにくくなっている。
最初に本開示の実施態様の内容を列記して説明する。
本開示のガイドローラは、(1)光ファイバの走行方向を変更するアルミ製のガイドローラであって、回転軸と前記光ファイバの走行方向に沿って形成された凹溝とを備え、前記凹溝が、第1側面と該第1側面と対向する第2側面とを有すると共にコーティング層が形成され、前記第1側面と前記第2側面との間の距離が、前記回転軸に向かって漸減し、前記コーティング層が、前記第1側面および前記第2側面に形成されたアルマイト皮膜と、該アルマイト皮膜に被膜された複合セラミックス皮膜とからなり、該コーティング層の厚みが、前記回転軸から遠ざかるにつれて厚くなっている。
このように構成されたガイドローラにおいて、アルマイト処理された第1側面および第2側面に複合セラミック皮膜が被膜されていることにより、アルマイト処理により第1側面および第2側面に形成されたアルマイト皮膜に複合セラミック皮膜が充填されるため、第1側面および第2側面が光ファイバとの擦過により削られていくことを抑制できる。
また、コーティング層の厚みが、回転軸から遠ざかるにつれて厚くなっていることにより、異物が接触しやすい凹溝の上部ではコーティング層が厚くなるため、異物が接触したとしてもガイドローラが破損しにくくなる。
加えて、異物と接触しにくいが光ファイバと当接する凹溝の底部ではコーティング層が薄くなるため、コーティング層が割れにくくなり、光ファイバがコーティング層のクラックとの擦過により傷ついてしまう可能性をより低減することができる。
なお、ここでいう「アルミ製」とは、アルミニウム製であってもよいし、アルミニウム合金製であってもよいことを指す。
このように構成されたガイドローラにおいて、第1側面と第2側面との成す角が、20度以下であることにより、第1側面と第2側面とが平行状態に近づき、凹溝内で光ファイバが揺動しにくくなるため、光ファイバの捩れを抑制することができる。
このように構成されたガイドローラにおいて、第2の成す角が、第1の成す角より大きいことにより、凹溝の開き角が回転軸から遠ざかるにつれて大きくなるため、ガイドローラに光ファイバを掛けやすくすることができることに加え、凹溝を形成しやすくすることができる。
このように構成されたガイドローラにおいて、回転軸から第1頂部までの距離が、回転軸から第2頂部までの距離と異なっていることにより、光ファイバをガイドローラにより掛けやすくすることができる。
このように構成された光ファイバ線引装置において、異物が接触したとしてもガイドローラを損傷しにくくすることと光ファイバがコーティング層との擦過により削られる可能性を低減することとを両立することができる。
以下、図1乃至図4Bに基づいて、本開示の第1実施形態であるガイドローラおよび光ファイバ線引装置を説明する。
なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内ですべての変更が含まれることを意図する。
また、以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は、同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
まず、図1を用いて、本開示の第1実施形態に係る光ファイバ線引装置100の概要を説明する。
図1は、第1実施形態に係る光ファイバ線引装置100の概略図である。
線引炉110は、内側にガラス母材Gが供給される円筒状の炉心管111と、この炉心管111を取り囲む発熱体112と、炉心管111内にパージガスを供給するガス供給部113とを有している。
なお、ガラス母材Gは、母材送りユニットFによってその上部が把持されている。
そして、この母材送りユニットFは、ガラス母材Gの下端部分を線引炉110の炉心管111まで送ることができる。
本実施形態において、冷却ユニット120は、ヘリウムガス等の冷却ガスによりガラスファイバG1の冷却を行っているが、ガラスファイバG1を非接触で冷却できれば、いずれの冷却方式であってもよい。
本実施形態において、外径測定ユニット130は、レーザー光によりガラスファイバG1の外径を測定しているが、ガラスファイバG1の外径を非接触で測定できれば、いかなる測定方式であってもよい。
本実施形態において、被覆ユニット140は、外径が測定されたガラスファイバG1に紫外線硬化型樹脂であるウレタンアクリレート樹脂を塗布し、このウレタンアクリレート樹脂に紫外線を照射することでウレタンアクリレート樹脂を硬化させている。
すなわち、樹脂層G2は、紫外線硬化型樹脂であるウレタンアクリレート樹脂により形成される。
なお、紫外線を照射することで硬化する樹脂を用いれば、樹脂層G2を形成する樹脂はウレタンアクリレート樹脂以外の樹脂であってもよい。
本実施形態において、直下ローラ150Aは、光ファイバG3の走行方向を鉛直方向から水平方向へと変更する。
本実施形態において、検査ユニット160は、気泡検出器、外径測定器あるいはコブ(凹凸)検出器等の検出ユニットであり、樹脂層G2における気泡の有無、樹脂層G2の外径あるいは樹脂層G2におけるコブの有無を光学的(例えば、レーザ光式)に検出し、不良の発生を監視している。
本実施形態において、案内ローラ150Bは、光ファイバG2の走行方向を水平方向から斜め上方へと変更する。
キャプスタン170は、案内ローラ150Bの下流側に設けられ、光ファイバG3に所定の張力を加えている。
スクリーニングユニット180は、キャプスタン170の下流側に設けられている。
ダンサローラ190は、スクリーニングユニット180の下流側に設けられている。
なお、ダンサローラ190の下流側には、ボビンBが設置されている。
次に、光ファイバ線引装置100で用いるガイドローラ150について詳説する。
なお、光ファイバ線引装置100は、ガイドローラ150として、直下ローラ150Aおよび案内ローラ150Bを設けているが、本実施形態において直下ローラ150Aおよび案内ローラ150Bの概形は同様である。
図2は第1実施形態に係るガイドローラを説明するための斜視図であり、図3は図2に示すガイドローラをIII-III線から見た断面図である。
ガイドローラ150の材質がアルミニウム合金であることにより、ガイドローラ150をステンレス鋼で形成する場合に比べてガイドローラ150の質量が小さくなるため、ガイドローラ150の慣性モーメントが下がり、より高速にガイドローラ150を回すことができる。
特に、ガイドローラ150の材質がA7075である場合、A7075が切削性に優れる材料であるため、ガイドローラ150の凹溝154を容易に加工できる。
この貫通孔151に軸が挿入され、この軸を中心にガイドローラ150が回転する。
すなわち、ガイドローラ150の回転軸Cは貫通孔151の中心線と一致している。
そして、ガイドローラ150へ光ファイバG3を掛けやすくするために、図3に示すように、回転軸Cから第1頂部152までの距離L1が、回転軸Cから第2頂部153までの距離L2より短くなっている。
そして、第1側面154aと第2側面154bの間の距離Xは、回転軸Cに向かって漸減している。
また、第1側面154aと第2側面154bとのなす角(すなわち、凹溝154の開き角θ)は、例えば20度となっている。
このように、第1側面154aと第2側面154bとのなす角を20度にすることにより、第1側面154aと第2側面154bとが平行状態に近づき、凹溝154内で光ファイバG3が揺動しにくくなるため、光ファイバG3の捩れを抑制することができる。
次に、図4Aおよび図4Bを用いて、凹溝154の詳細な構造について説明する。
図4Aは図3の要部拡大図であり、図4Bは図4Aの要部拡大図である。
なお、凹溝154の曲率半径rは小さい方が好ましく、光ファイバG3の半径より小さくても良い。
凹溝154の底部におけるコーティング層の厚みtbは例えば20μmであり、凹溝154の底部から2mm遠ざかった位置におけるコーティング層155の厚み(不図示)は例えば50μmとなっている。
すなわち、コーティング層155の厚みは、回転軸Cから遠ざかるにつれて(図4Aでは上方に向かって)厚くなっている。
換言すれば、異物が接触しやすいガイドローラ150の凹溝154の上部ではコーティング層155が厚くなり、異物と接触しにくいが光ファイバG3と当接し得るガイドローラ150の凹溝154の底部ではコーティング層155が薄くなっている。
これにより、異物が接触しやすい凹溝154の上部においてはコーティング層155が十分厚いため、凹溝154に異物が接触したとしてもガイドローラ150が破損しにくくなっている。
さらに、凹溝154の底部においてコーティング層155が割れにくくなるため、光ファイバG3がコーティング層155のクラックとの擦過により傷ついてしまう可能性をより低減することができる。
コーティング層155は、基材であるガイドローラ150上に形成されたアルマイト皮膜155aと、このアルマイト皮膜155a上に形成された複合セラミックス皮膜155bとからなる。
なお、コーティング層の厚みtとは、このアルマイト皮膜155aの厚みと複合セラミックス皮膜155bの厚みとを合わせた厚みとなっている。
したがって、このアルマイト皮膜155aは、基材表面Sを中心としてその上下に形成されるものである。
すなわち、複合セラミックス皮膜155bは、アルマイト皮膜155aに形成された孔Pに充填されると共にアルマイト皮膜155a上に被膜される。
この複合セラミックス皮膜155bは、化学反応を利用して形成されるものであり、高密度、高硬度皮膜、高密着力、低い摩擦係数などの特徴を有し、耐摩耗性や耐食性に優れている。
具体的には、この複合セラミックス皮膜155bは、平均粒径が約2μmの酸化クロム系複合ファインセラミックス材料から構成された皮膜であり、硬質クロムめっきと比較し、微小亀裂を特殊セラミックスで封孔補強した複合機能皮膜である。
そして、この複合セラミックス皮膜155bは、その中に含まれる酸化クロムが約2μmの超微粒子であるため、高硬度を保ちながら高い潤滑効果もあり、摺動部分の発熱を抑える作用も有している。
また、この複合セラミックス皮膜155bは、高硬度に加え、殆どの溶剤に対して高い耐食性を有している。
このような複合セラミック皮膜は、CDC-ZAC(登録商標)コーティングとも呼ばれる。
次に、図5を用いて、本開示の第2実施形態であるガイドローラおよび光ファイバ線引装置を説明する。
図5は、第2実施形態に係るガイドローラの要部拡大断面図である。
なお、第2実施形態の光ファイバ線引き装置200およびガイドローラ250は、第1実施形態のガイドローラ150における凹溝154の形状を変更したものであり、多くの要素について第1実施形態のガイドローラ150と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する200番台の符号を付すのみとする。
この第2の開き角θ2は例えば30度であり、第1の開き角θ1は例えば20度であり、第2の開き角θ2は第1の開き角θ1より大きくなっている。
同様に、第2側面254bも、回転軸C側の傾斜が急な第1斜面254baと、この第1斜面254baに接続され第1斜面254baよりも傾斜が緩やかな第2斜面254bbとから形成されている。
すなわち、第1側面254aと第2側面254bとは、凹溝254の下部を形成する第1斜面(254aa、254ba)と、凹溝254の上部を形成する第2斜面(254ab、254bb)とをそれぞれ有している。
すなわち、第2実施形態においても、コーティング層の厚みは、回転軸Cから遠ざかるにつれて(図5では上方に向かって)厚くなっている。
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記に限定されるものではない。
すなわち、凹溝の開き角は小さければ小さいほど、凹溝内で光ファイバが揺動しにくくなり、光ファイバの捩れを抑制でき、好ましい。
ガイドローラの取付角度がわずかにずれた場合、光ファイバは凹溝の一方の斜面により強く接触することになり、光ファイバに捩れが残留する。
このような場合でも凹溝の開き角が20度の場合、開き角が30度の場合と比較して、光ファイバに残留する捩れは大きく減少し、15度の場合はさらに減少する。
例えば、第1の開き角θ1は15度~20度のいずれの角度であってもよいし、第2の開き角は30度以上であれば、いずれの角度であってもよい。
110 ・・・ 線引炉
111 ・・・ 炉心管
112 ・・・ 発熱体
113 ・・・ ガス供給部
120 ・・・ 冷却ユニット
130 ・・・ 外径測定ユニット
140 ・・・ 被覆ユニット
150、 250 ・・・ ガイドローラ
150A ・・・ 直下ローラ
150B ・・・ 案内ローラ
151 ・・・ 貫通孔
152 ・・・ 第1頂部
153 ・・・ 第2頂部
154、 254 ・・・ 凹溝
154a、254a ・・・ 第1側面
254aa・・・ 第1斜面
254ab・・・ 第2斜面
154b、254b ・・・ 第2側面
254ba・・・ 第1斜面
254bb・・・ 第2斜面
155 ・・・ コーティング層
155a ・・・ アルマイト皮膜
155b ・・・ 複合セラミックス皮膜
160 ・・・ 検査ユニット
170 ・・・ キャプスタン
180 ・・・ スクリーニングユニット
190 ・・・ ダンサローラ
C ・・・ 回転軸
S ・・・ 基材表面
P ・・・ 孔
G ・・・ ガラス母材
G1 ・・・ ガラスファイバ
G2 ・・・ 樹脂層
G3 ・・・ 光ファイバ
B ・・・ ボビン
F ・・・ 母材送りユニット
L1 ・・・ 回転軸から第1頂部までの距離
L2 ・・・ 回転軸から第2頂部までの距離
X ・・・ 第1側面から第2側面までの距離
θ ・・・ 凹溝の開き角
θ1 ・・・ 第1の開き角(第1の成す角)
θ2 ・・・ 第2の開き角(第2の成す角)
r ・・・ 凹溝底部の曲率半径
t ・・・ コーティング層の厚み
tb ・・・ 凹溝底部のコーティング層の厚み
Claims (5)
- 光ファイバの走行方向を変更するアルミ製のガイドローラであって、
回転軸と前記光ファイバの走行方向に沿って形成された凹溝とを備え、
前記凹溝が、第1側面と該第1側面と対向する第2側面とを有すると共にコーティング層が形成され、
前記第1側面と前記第2側面との間の距離が、前記回転軸に向かって漸減し、
前記コーティング層が、前記第1側面および前記第2側面に形成されたアルマイト皮膜と、該アルマイト皮膜に被膜された複合セラミックス皮膜とからなり、
該コーティング層の厚みが、前記回転軸から遠ざかるにつれて厚くなっているガイドローラ。 - 前記第1側面と前記第2側面との成す角が、20度以下である請求項1に記載のガイドローラ。
- 前記第1側面と前記第2側面とが、前記凹溝の下部を形成する第1斜面と、前記凹溝の上部を形成する第2斜面とをそれぞれ有し、
前記第1側面の第2斜面と前記第2側面の第2斜面との成す角が、前記第1側面の第1斜面と前記第2側面の第1斜面との成す角より大きい請求項1に記載のガイドローラ。 - 前記凹溝との間で前記第1側面を形成する第1頂部と、前記凹溝との間で前記第2側面を形成する第2頂部とをさらに備え、
前記回転軸から前記第1頂部までの距離が、前記回転軸から前記第2頂部までの距離と異なっている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガイドローラ。 - 線引炉の直下に設けられて光ファイバの走行方向を変更する直下ローラとして、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガイドローラを用いた光ファイバ線引装置。
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