JP7378273B2 - 保護リレー装置 - Google Patents

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本開示は、保護リレー装置に関する。
電力系統に発生した故障を検出するために、保護リレー装置は、電流変成器(CT:Current Transformer)を介して電力系統に流れる電流を取り込む。一般的に、系統故障などで発生する故障電流によりCTの1次電流がある値以上になると、CT鉄心の飽和によって1次電流が2次電流に正しく変換されない状態(例えば、CT飽和状態とも称される。)となる。CT飽和状態では、故障電流が正しく保護リレー装置に入力されないため、保護リレー装置の誤動作、誤不動作等が生じてしまう可能性がある。そのため、保護リレー装置においては、CTの飽和を精度よく検出する必要がある。
特表2006-523942号公報(特許文献1)は、変流器の2次電流補償方法を開示している。この方法では、変流器の飽和による2次電流の歪みにより実際の2次電流値を正確に認識できなくなることで発生する保護用継電システムの誤動作を防止することを検討している。
特表2006-523942号公報
特許文献1では、CT飽和か否かを判定するための臨界値を適切に設定するために、実際の系統状態、および適用されるCTの詳細特性が必要となる。しかし、CTの特性からCT飽和の臨界点を得るための計算は煩雑である。また、CTの詳細特性を入手できない場合も多く、実用的ではないと考えられる。
本開示のある局面における目的は、簡易な構成で精度よくCTが飽和しているか否かを判定することが可能な保護リレー装置を提供することである。
ある実施の形態に従う保護リレー装置は、電流変成器によって検出された電力系統の電流の入力を受ける入力部と、電流を微分して電流の1階微分波形を生成する波形生成部と、1階微分波形の第1ゼロクロス点を検出するゼロクロス検出部と、隣接する第1ゼロクロス点間の間隔を示す第1ゼロクロス間隔に基づいて、電流変成器が飽和したか否かを判定する飽和判定部とを備える。
本開示によると、簡易な構成で精度よくCTが飽和しているか否かを判定することができる。
実施の形態1に従う保護リレー装置が適用される電力系統を示す図である。 実施の形態1に従う保護リレー装置のハードウェア構成の一例を示す図である。 CT非飽和時の波形を示す図である。 CT飽和時の波形を示す図である。 実施の形態1に従う判定方式の一例を示すフローチャートである。 実施の形態1に従う保護リレー装置の機能構成の一例を示すブロック図である。 CT非飽和時であって、変圧器がインラッシュ状態である場合の波形を示す図である。 CT飽和時であって、変圧器がインラッシュ状態である場合の波形を示す図である。 3相の変圧器がインラッシュ状態である場合の波形を示す図である。 実施の形態2に従う判定方式の一例を示すフローチャートである。 実施の形態2に従う保護リレー装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
実施の形態1.
<全体構成>
図1は、実施の形態1に従う保護リレー装置が適用される電力系統を示す図である。図1に示す電力系統では、送電線3の両端に母線2,4が接続されており、母線2および母線4の遠方に3相の交流電源10,11がそれぞれ設けられている。交流電源10,11は、例えば、発電機である。
送電線3には遮断器5および変圧器9が設けられている。また、送電線3の各相には電流変成器(CT:Current Transformer)6が設けられる。CT6は、送電線3の相電流(例えば、A相電流)を検出する。CT6により検出された電流は、保護リレー装置100に入力される。保護リレー装置100は、CT6から取り込んだ2次電流(以下、「CT2次電流」とも称する。)に基づいて、CT6が飽和したか否かを判定する機能を有している。詳細は後述するが、保護リレー装置100は、CT2次電流の1階微分波形のゼロクロス点間の間隔に基づいて、CT6が飽和したか否かを判定する。
母線2には、電圧変成器(VT:Voltage Transformer)8が接続されている。電圧変成器8は、母線2側の送電線3の各相電圧(例えば、A相電圧、B相電圧、C相電圧)を検出する。電圧変成器8により検出された電圧は、保護リレー装置100に入力される。
保護リレー装置100は、電力系統(例えば、送電線3)を保護するためのディジタル形の保護リレーである。保護リレー装置100は、収集した電気量(例えば、電圧および電流)を用いてリレー演算等の電力系統を保護するために必要な演算を実行し、系統事故の発生有無を判定する。そして、保護リレー装置100は、送電線3において事故を検出すると、遮断器5に対してトリップ信号を出力する。保護リレー装置100は、例えば、送電線保護用の電流差動リレー装置、方向リレー装置等で構成される。
図2は、実施の形態1に従う保護リレー装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。図2を参照して、保護リレー装置100は、補助変成器51と、AD(Analog to Digital)変換部52と、演算処理部70とを含む。
補助変成器51は、CT6により検出された電流と、電圧変成器8により検出された電圧とを取り込み、リレー内部回路での信号処理に適した電圧に変換して出力する。AD変換部52は、補助変成器51から出力される電圧を取り込んでディジタルデータに変換する。具体的には、AD変換部52は、アナログフィルタと、サンプルホールド回路と、マルチプレクサと、AD変換器とを含む。
アナログフィルタは、補助変成器51から出力される電流の波形信号から高周波のノイズ成分を除去する。サンプルホールド回路は、アナログフィルタから出力される電流の波形信号を予め定められたサンプリング周期でサンプリングする。マルチプレクサは、演算処理部70から入力されるタイミング信号に基づいて、サンプルホールド回路から入力される波形信号を時系列で順次切り替えてAD変換器に入力する。AD変換器は、マルチプレクサから入力される波形信号をアナログデータからディジタルデータに変換する。AD変換器は、ディジタル変換した波形信号(すなわち、ディジタルデータ)を演算処理部70へ出力する。
演算処理部70は、CPU(Central Processing Unit)72と、ROM73と、RAM74と、DI(digital input)回路75と、DO(digital output)回路76と、入力インターフェイス(I/F)77とを含む。これらは、バス71で結合される。
CPU72は、予めROM73に格納されたプログラムを読み出して実行することによって、保護リレー装置100の動作を制御する。なお、ROM73には、CPU72によって用いられる各種情報が格納されている。CPU72は、たとえば、マイクロプロセッサである。なお、当該ハードウェアは、CPU以外のFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびその他の演算機能を有する回路などであってもよい。
CPU72は、バス71を介して、AD変換部52からディジタルデータを取り込む。CPU72は、ROM73に格納されているプログラムに従って、取り込んだディジタルデータを用いて演算を実行する。
CPU72は、演算結果に基づいて、DO回路76を介して、外部に信号を出力する。例えば、DO回路76は、遮断器5にトリップ信号を出力する。CPU72は、DI回路75を介して、外部からの信号を受け取る。入力インターフェイス77は、典型的には、各種ボタン等であり、系統運用者からの各種設定操作を受け付ける。
<CT飽和判定方式>
図3は、CT非飽和時の波形を示す図である。図3(a)および(b)の縦軸は電流(図中の「I」に対応)であり、横軸は時間(図中の「t」に対応)である。図3(a)を参照して、波形300はCTが飽和していないとき(すなわち、CT非飽和時)のCT2次電流の波形を示しており、波形301はCT2次電流の1階微分波形を示している。図3(b)を参照して、波形302はCT非飽和時の2階微分波形を示している。図3(b)は、波形301を拡大するように図3(a)の縦軸を変更したものである。
ここで、CT非飽和時のCT2次電流の波形(以下、単に「電流波形」とも称する。)は以下の式(1)で示され、1階微分波形は以下の式(2.1)~(2.3)で示され、2階微分波形は以下の式(3.1)~(3.3)で示される。
I(t)=I×sin(ωt+θ)-I×sin(θ)×exp(-1/Ts×t)・・・(1)
ここで、式(1)の第一項“I×sin(ωt+θ)”はsin成分を表わす定常解であり、第二項“-I×sin(θ)×exp(-1/Ts×t)”は直流成分を表わす過渡解である。説明のため、定常解に対応する第一項をIs(t)、過渡解に対応する第ニ項をIt(t)と定義する。
定常解の1階微分式を式(2.1)に示し、過渡解の1階微分式を式(2.2)に示す。また、当該定常解および過渡解を組み合わせた波形の数式を式(2.3)に示す。
Is(1)(t)=ωI×cоs(ωt+θ)・・・(2.1)
It(1)(t)=-(1/Ts)×sin(θ)×exp(-1/Ts×t)・・・・・・・(2.2)
(1)(t)=Is(1)(t)+It(1)(t)・・・(2.3)
定常解の2階微分式を式(3.1)に示し、過渡解の2階微分式を式(3.2)に示す。また、当該定常解および過渡解を組み合わせた波形の数式を式(3.3)に示す。
Is(2)(t)=-ω×sin(ωt+θ)・・・(3.1)
It(2)(t)=-{1/(Ts)}×sin(θ)×exp(-1/Ts×t)・・・・(3.2)
(2)(t)=Is(2)(t)+It(2)(t)・・・(3.3)
は電流の振幅値、ωは系統の角周波数、θは故障発生時の位相角、Tsは電力系統(具体的には、CTの1次側)の時定数である。式(1)と式(2.1)とを比較すると、電流波形と1階微分波形とは90°位相がずれており、式(2.1)と式(3.1)とを比較すると、1階微分波形と2階微分波形とは90°位相がずれていることがわかる。すなわち、微分するごとに位相が90°シフトする。
なお、サンプリングされたディジタル値の微分演算方式として、簡易的に、隣り合うサンプリング値同士の差分による方式を採用してもよい。この場合、1階微分波形は以下の式(4)で表され、2階微分波形は以下の式(5)で表される。
(1)(t)=I(t)-I(t-T)・・・(4)
(2)(t)=I(1)(t)-I(1)(t-T)・・・(5)
ここで、I(t)は現在時刻でサンプリングされた電流値であり、I(t-T)は現在時刻よりも時間Tだけ前にサンプリングされた電流値であり、I(1)(t)は電流の1階微分値である。I(1)(t-T)は現在時刻よりも時間Tだけ前での電流の1階微分値であり、I(2)(t)は電流の2階微分値である。
図3(a)を参照して、CT非飽和時の1階微分波形を示す波形301の各ゼロクロス点E1,E2,E3の時間間隔(以下、単に「間隔」とも称する。)に着目する。隣り合うゼロクロス点E1,E2間の間隔はT1であり、隣り合うゼロクロス点E2,E3間の間隔もT1である。このことから、間隔T1は系統周期Tsの1/2に相当する。例えば、系統周波数が50Hz(すなわち、系統周期Tsが20ms)である場合、間隔T1は10msである。
なお、系統周波数は、予め規定された周波数から微小変動する場合がある。そのため、当該変動を考慮して、周波数演算により系統周波数を定期的に算出してもよい。例えば、CT非飽和時において、波形301,302のゼロクロス点間の間隔は系統周期Tsの1/2である。そのため、当該間隔と、系統周波数が系統周期Tsの逆数であることとを利用して、系統周波数を算出できる。
図3(b)を参照して、CT非飽和時の2階微分波形を示す波形302の各ゼロクロス点F1,F2,F3の間隔に着目する。隣り合うゼロクロス点F1,F2間の間隔はT1であり、隣り合うゼロクロス点F2,F3間の間隔もT1である。このことから、波形301のゼロクロス点間の間隔と、波形302のゼロクロス点間の間隔とは同じである。
このことから、CT非飽和時においては、1階微分波形のゼロクロス点間の間隔と、2階微分波形のゼロクロス点間の間隔とは、間隔T1(すなわち、系統周期Tsの1/2)で一定に保たれていることがわかる。
図4は、CT飽和時の波形を示す図である。図4(a)および(b)の縦軸は電流(図中の「I」に対応)であり、横軸は時間(図中の「t」に対応)である。図4(a)を参照して、波形350はCTが非飽和から飽和に変化した際の電流波形を示している。波形351はCT2次電流の1階微分波形を示している。図4(b)を参照して、波形352はCT2次電流の2階微分波形を示している。図4(b)は、波形351を拡大するように図4(a)の縦軸を変更したものである。
図4(a)を参照して、波形351において、CT飽和が発生した後の各ゼロクロス点G1,G2,G3の間隔に着目する。隣り合うゼロクロス点G1,G2間の間隔はT3であり、隣り合うゼロクロス点G2,G3間の間隔はT3aである。間隔T3は間隔T3aよりもかなり小さく、系統周期Tsの1/2よりもかなり小さい。図4(a)の例では、間隔T3は4.7msであり、間隔T3aは10.2msである。そのため、図3(a)の例とは異なり、ゼロクロス点の間隔が一定値(例えば、系統周期Tsの1/2)ではないことがわかる。
図4(b)を参照して、波形352において、CT飽和が発生した後の各ゼロクロス点H1,H2,H3の間隔に着目する。隣り合うゼロクロス点H1,H2間の間隔はT4であり、ゼロクロス点H2,H3間の間隔はT4aである。間隔T4は間隔T4aよりもかなり小さく、系統周期Tsの1/2よりもかなり小さい。図4(b)の例では、間隔T4は2.2msであり、間隔T4aは9.3msである。そのため、図3(b)の例とは異なり、ゼロクロス点の間隔が一定値(例えば、系統周期Tsの1/2)ではないことがわかる。
このことから、CT飽和時においては、1階微分波形のゼロクロス点間の間隔、および2階微分波形のゼロクロス点間の間隔は、一定に保たれていない。また、1階微分波形のゼロクロス点間の各間隔の中には、Ts/2から大きく逸脱したものが存在する。同様に、2階微分波形のゼロクロス点間の各間隔の中にも、Ts/2から大きく逸脱したものが存在する。
したがって、図3に示すCT非飽和時の波形と、図4に示すCT飽和時の波形とを比較すると、1階微分波形のゼロクロス点の間隔、および、2階微分波形のゼロクロス点の間隔に差異がある。そのため、保護リレー装置100は、1階微分波形のゼロクロス点の間隔、および2階微分波形のゼロクロス点の間隔を用いて、CT飽和の有無を判定する。
図5は、実施の形態1に従う判定方式の一例を示すフローチャートである。典型的には、以下の各ステップは、保護リレー装置100の演算処理部70のCPU72によって実行される。
図5を参照して、保護リレー装置100は、CT6から取り込んだ電流に基づいて、送電線3に流れる電流の異常を検出したか否かを判断する(ステップS10)。典型的には、保護リレー装置100は、電流変化幅リレー要素により電流の異常を検出する。電流変化幅リレー要素は、例えば、現時点の電流の瞬時値と1サイクル前(もしくは、2サイクル前、3サイクル前など)の電流の瞬時値との差が規定の閾値を超えているか否かを判定する。したがって、電流変化幅リレー要素は、電流の振幅の急変または位相の急変を検出できる。なお、保護リレー装置100は、電流変化幅リレー要素に代えて、過電流リレー要素を用いて電流の異常を検出してもよい。
電流の異常を検出しない場合(ステップS10においてNO)、保護リレー装置100は、ステップS10の処理を繰り返す。電流の異常を検出した場合(ステップS10においてYES)、保護リレー装置100は、ステップS12以降の処理を実行する。
ここで、ステップS10の処理は、後述するCT飽和判定を精度よく行なうために実行される。具体的には、図3および図4で説明したように、本実施の形態では、電流の微分波形のゼロクロス点間の間隔を用いてCT飽和の有無が判定される。そのため、微小電流の変動によって微分波形のゼロクロス点が検出されてしまうと、CT飽和の誤判定を引き起こす可能性がある。電流の異常が検出された場合には(ステップS10においてYES)、比較的大きな電流が発生していると想定される。したがって、このような場合に、ゼロクロス点間の間隔を用いたCT飽和判定を実行することで、上記の微小電流に伴うCT飽和の誤判定を防止することができる。
保護リレー装置100は、CT6から取り込んだ電流の1階微分波形のゼロクロス点を検出する(ステップS12)。保護リレー装置100は、当該検出した各ゼロクロス点のタイミングを示す情報(例えば、時刻)をRAM74に格納する。続いて、保護リレー装置100は、CT6から取り込んだ電流の2階微分波形のゼロクロス点を検出する(ステップS14)。保護リレー装置100は、当該検出した各ゼロクロス点のタイミングを示す情報をRAM74に格納する。例えば、ゼロクロス点は、電流のデータの符号が反転したことに基づいて検出される。
保護リレー装置100は、1階微分波形のゼロクロス点間の間隔(以下、「間隔Tx1」とも称する。)が範囲R1内にあるか否かを判断する(ステップS16)。ここで、図3および図4に示すように、CT非飽和の場合には1階微分波形のゼロクロス点間の間隔は、電力系統の系統周期Tsの1/2(すなわち、半サイクル)であり、CT飽和の場合には当該間隔は、系統周期Tsの1/2から大きく逸脱している。そのため、間隔Tx1に適用される範囲R1は、系統周期Tsの1/2から正負の許容誤差までの範囲に設定される。例えば、許容誤差がTsの10%(すなわち、Ts/10)の場合、範囲R1は、(Ts/2-Ts/10)~(Ts/2+Ts/10)である。
間隔Tx1が範囲R1に含まれない場合(ステップS16においてNO)、保護リレー装置100は、CT6が飽和していると判定する(ステップS18)。この場合、保護リレー装置100は、例えば、外部故障の際にCT飽和によって生じる差電流を検出しても、誤動作しないように動作特性(例えば、動作領域、動作タイマ等)を変更する。
間隔Tx1が範囲R1に含まれる場合(ステップS16においてYES)、保護リレー装置100は、2階微分波形のゼロクロス点間の間隔(以下、「間隔Tx2」とも称する。)が範囲R1内にあるか否かを判断する(ステップS20)。図3および図4に示すように、CT非飽和の場合には2階微分波形のゼロクロス点間の間隔は、系統周期Tsの1/2であり、CT飽和の場合には当該間隔は、系統周期Tsの1/2から大きく逸脱している。そのため、間隔Tx1と同様に間隔Tx2にも範囲R1が適用される。
間隔Tx2が範囲R1に含まれない場合(ステップS20においてNO)、保護リレー装置100は、CT6が飽和していると判定する(ステップS18)。間隔Tx2が範囲R1に含まれる場合(ステップS20においてYES)、保護リレー装置100は、CT6が飽和していないと判定する(ステップS24)。この場合には、電流の異常が電力系統の故障によるものと推定される。そのため、例えば、電力系統の故障が保護対象の内部で発生している場合には、保護リレー装置100は動作して、トリップ信号を遮断器5に出力する。
図5のフローチャートでは、保護リレー装置100は、間隔Tx1および間隔Tx2の少なくとも一方が範囲R1外である場合にCT飽和が発生したと判定し、間隔Tx1および間隔Tx2が範囲R1内である場合にCT飽和が発生していないと判定する。そのため、保護リレー装置100は、間隔Tx1および間隔Tx2の両方を用いることでより精度よくCT飽和の判定を行なうことができる。
ただし、保護リレー装置100は、間隔Tx1または間隔Tx2のみを用いてCT飽和の有無を判定してもよい。例えば、保護リレー装置100は、間隔Tx1が範囲R1内にある場合にCT飽和が発生していないと判定し、間隔Tx1が範囲R1外である場合にCT飽和が発生したと判定してもよい。同様に、保護リレー装置100は、間隔Tx2が範囲R1内にある場合にCT飽和が発生していないと判定し、間隔Tx2が範囲R1外である場合にCT飽和が発生したと判定してもよい。
(変形例)
上記のCT飽和判定方式では、1階微分波形のゼロクロス点間の間隔と、2階微分波形のゼロクロス点間の間隔とに着目してCT飽和の有無を判定する方式について説明した。変形例では、1階微分波形のゼロクロス点と、2階微分波形のゼロクロス点との間隔に着目してCT飽和の有無を判定する方式について説明する。
ゼロクロス点間の間隔を利用してCT飽和を判定するためには、最低でも2つのゼロクロス点を検出する必要がある。ただし、判定の信頼性を考慮すると、実用的には3つ以上のゼロクロス点を検出することが好ましい。以下では、3つのゼロクロス点を検出して、隣り合うゼロクロス点間の各間隔を用いてCT飽和の有無を判定する場合を想定する。
図3を参照して、1階微分波形のゼロクロス点間の間隔を用いてCT飽和の有無を判定する場合、ゼロクロス点E1,E2との間隔と、ゼロクロス点E2,E3との間隔とが範囲R1内であるか否かを判定する必要がある。そのため、1つ目のゼロクロス点E1を検出してから、1サイクル(すなわち、系統周期Ts)後の3つ目のゼロクロス点E3を検出するまでは、CTが非飽和であるとの判定を確定できない。2階微分波形のゼロクロス点間の間隔を用いてCT飽和の有無を判定する場合も同様に、1つ目のゼロクロス点F1を検出してから、1サイクル後の3つ目のゼロクロス点F3を検出するまでは、CTが非飽和であるとの判定を確定できない。
ここで、1階微分波形のゼロクロス点と、2階微分波形のゼロクロス点との間隔に着目する。具体的には、図3(b)を参照して、波形301のゼロクロス点E1~E3と、波形302のゼロクロス点F1~F3との間隔に着目する。隣り合うゼロクロス点E1,F1間の間隔はT2であり、隣り合うゼロクロス点F1,E2間の間隔もT2である。このことから、間隔T2は、間隔T1の1/2であり、すなわち、系統周期Tsの1/4に相当する。例えば、系統周期Tsが20msである場合、間隔T2は5msである。このように、CT非飽和時においては、1階微分波形のゼロクロス点と、2階微分波形のゼロクロス点とは、間隔T2で一定に保たれている。
図4(b)を参照して、波形351のゼロクロス点G1~G3と、波形352のゼロクロス点H1~H3との間隔に着目する。隣り合うゼロクロス点G1,H1間の間隔はT5であり、隣り合うゼロクロス点H1,G2間の間隔はT5aである。間隔T5aは間隔T5よりもかなり小さく、系統周期Tsの1/4よりもかなり小さい。図4(b)の例では、間隔T5は4.1msであり、間隔T5aは0.8msである。そのため、図3(b)の例とは異なり、ゼロクロス点の間隔が一定値(例えば、系統周期Tsの1/4)ではないことがわかる。
このことから、CT飽和時においては、1階微分波形のゼロクロス点と、2階微分波形のゼロクロス点との間隔は、一定に保たれていない。また、1階微分波形のゼロクロス点と2階微分波形のゼロクロス点との各間隔の中には、Ts/4から大きく逸脱したもの(例えば、間隔T5a)が存在する。
したがって、保護リレー装置100は、1階微分波形のゼロクロス点間の間隔、および、1階微分波形のゼロクロス点と2階微分波形のゼロクロス点との間隔を用いてCT飽和の有無を判定できる。具体的には、1階微分波形のゼロクロス点間の間隔が範囲R1内であり、かつ、1階微分波形のゼロクロス点と2階微分波形のゼロクロス点との間隔が範囲R2内である場合に、保護リレー装置100はCTが飽和していないと判定する。
CT非飽和の場合には、1階微分波形のゼロクロス点と2階微分波形のゼロクロス点との間隔は系統周期Tsの1/4であり、CT飽和の場合には当該間隔は、系統周期Tsの1/4から大きく逸脱している。そのため、範囲R2は、系統周期Tsの1/4から正負の許容誤差までの範囲に設定される。例えば、許容誤差がTsの5%(すなわち、Ts/20)の場合、範囲R2は、(Ts/4-Ts/20)~(Ts/4+Ts/20)である。なお、範囲R2は、範囲R1よりも小さい範囲である。
図3の例の場合、ゼロクロス点E1,E2間の間隔が範囲R1内であり、かつ、ゼロクロス点E1,F1間の間隔が範囲R2内であるため、保護リレー装置100はCTが飽和していないと判定する。この場合、ゼロクロス点E1を検出してから、半サイクル後のゼロクロス点E2を検出すれば、CTが非飽和であると判定できる。そのため、1階微分波形のゼロクロス点間の間隔のみを用いて判定するよりも高速な判定が可能となる。
また、1階微分波形のゼロクロス点間の間隔が範囲R1外であり、かつ、1階微分波形のゼロクロス点と2階微分波形のゼロクロス点との間隔が範囲R2外である場合に、保護リレー装置100はCTが飽和していると判定する。
図4の例の場合、ゼロクロス点G1,G2間の間隔が範囲R1外であり、かつ、ゼロクロス点H1,G2間の間隔が範囲R2外であるため、保護リレー装置100はCTが飽和していると判定する。この場合、ゼロクロス点G1,H1,G2を検出すれば、CTが飽和していると判定できる。一方、1階微分波形のゼロクロス点間の間隔のみを用いてCT飽和の有無を判定する場合には、ゼロクロス点G1,G2,G3を検出しなければCTが飽和していると判定できない。そのため、変形例によると高速な判定が可能となる。
<機能構成>
図6は、実施の形態1に従う保護リレー装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。図6を参照して、保護リレー装置100は、主たる機能構成として、入力部152と、異常検出部154と、波形生成部156と、ゼロクロス検出部158と、飽和判定部160とを含む。これらの各機能は、例えば、保護リレー装置100のCPU72がメモリ(例えば、ROM73、RAM74)に格納されたプログラムを実行することによって実現される。なお、これらの機能の一部または全部はハードウェアで実現されるように構成されていてもよい。
入力部152は、CT6により検出された電力系統の電流の入力を受け付ける。なお、入力部152は、VT8により検出された電力系統の電圧の入力を受け付けてもよい。
異常検出部154は、CT6から取り込んだ電流に基づいて、電力系統の電流の異常を検出する。具体的には、異常検出部154は、電流変化幅リレー要素として機能し、現時点の電流の瞬時値と1サイクル前の電流の瞬時値との差が規定の閾値Th1を超えている場合に、電流の異常を検出する。なお、異常検出部154は、過電流リレー要素として機能し、電流の実効値が閾値Th2を超えている場合に、電流の異常を検出してもよい。
波形生成部156は、CT6から取得された電流を微分して当該電流の1階微分波形を生成する。また、波形生成部156は、1階微分波形をさらに微分して当該電流の2階微分波形を生成する。
ゼロクロス検出部158は、1階微分波形および2階微分波形のゼロクロス点を検出する。ゼロクロス検出部158は、例えば、ヒステリシス付きのコンパレータで構成されており、グランドレベル付近に設定された閾値H,Lと比較することで、1階微分波形および2階微分波形のゼロクロス点を検出する。このように、コンパレータの閾値にヒステリシス特性を持たせることにより、ディジタル変換後のノイズによるゼロクロス点の誤検出を防止する。
ここで、1階微分波形のゼロクロス点を「第1ゼロクロス点」と称し、2階微分波形のゼロクロス点を「第2ゼロクロス点」と称する。隣接する第1ゼロクロス点間の間隔を「第1ゼロクロス間隔」と称し、隣接する第2ゼロクロス点間の間隔を「第2ゼロクロス間隔」と称する。隣接する第1および第2ゼロクロス点間の間隔を「第3ゼロクロス間隔」と称する。
図3の場合、第1ゼロクロス点はゼロクロス点E1~E3であり、第1ゼロクロス間隔は間隔T1である。第2ゼロクロス点はゼロクロス点F1~F3であり、第2ゼロクロス間隔は間隔T1である。第3ゼロクロス間隔は間隔T2である。図4の場合、第1ゼロクロス点はゼロクロス点G1~G3であり、第1ゼロクロス間隔は間隔T3,T3aである。第2ゼロクロス点はゼロクロス点H1~H3であり、第2ゼロクロス間隔は間隔T4,T4aである。第3ゼロクロス間隔は間隔T5,T5aである。
飽和判定部160は、上記のゼロクロス間隔を用いて、CT6の飽和の有無を判定する。ある局面では、飽和判定部160は、第1ゼロクロス間隔に基づいて、CT6が飽和したか否かを判定する。具体的には、第1ゼロクロス間隔が範囲R1外である場合に、飽和判定部160はCT6が飽和していると判定する。より詳細には、飽和判定部160は、各第1ゼロクロス間隔のうちのいずれか(例えば、間隔T3)が範囲R1外である場合に、CT6が飽和していると判定する。典型的には、範囲R1は、系統周期Tsの1/2を中心値とする許容誤差範囲である。
また、飽和判定部160は、第1ゼロクロス間隔および第2ゼロクロス間隔に基づいて、CT6が飽和したか否かを判定してもよい。具体的には、第1ゼロクロス間隔が範囲R1外であるとの条件、および第2ゼロクロス間隔が範囲R1外であるとの条件のうちの少なくとも一方を満たす場合に、飽和判定部160はCT6が飽和していると判定する。
他の局面では、飽和判定部160は、第1ゼロクロス間隔および第3ゼロクロス間隔に基づいて、CT6が飽和したか否かを判定する。具体的には、第1ゼロクロス間隔が範囲R1外であって、かつ、第3ゼロクロス間隔が範囲R2(ただし、範囲R2は範囲R1よりも小さい)外である場合に、飽和判定部160は、CT6が飽和していると判定する。典型的には、範囲R2は、系統周期Tsの1/4を中心値とする許容誤差範囲である。
また、異常検出部154により電力系統の電流の異常が検出された場合に、飽和判定部160は、CT6の上記の飽和判定処理を実行してもよい。飽和判定処理は、第1~第3ゼロクロス間隔を用いてCT6が飽和したか否かを判定する処理を含む。
<利点>
実施の形態1によると、CTから取り込んだ電流の微分波形のゼロクロス点間隔を用いることで、簡易に精度よく当該CTが飽和しているか否かを判定できる。そのため、CT飽和に伴う保護リレー装置の誤動作および誤不動作を防止することができる。また、系統事故電流が発生しても十分飽和しないようなCT飽和特性を有する高価なCTを選定する必要もない。
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、電流の微分波形を利用してCT飽和の有無を判定する構成について説明した。ここで、図1に示すように、電力系統に変圧器9が配置されている場合、変圧器9の充電時あるいは変圧器に連携している送電線の再閉路時には励磁突入電流(あるいは、「インラッシュ電流」とも称する)が発生する。そのため、このインラッシュ電流による保護リレー装置100の誤動作も防止する必要がある。
実施の形態2では、CT飽和の有無に加えて、変圧器9におけるインラッシュ電流の発生の有無を判定する方式について説明する。なお、以下の説明では、変圧器9にインラッシュ電流が発生している状態を「インラッシュ状態」とも称する。なお、以下の図7および図8では、説明の容易化のため、単相の変圧器がインラッシュ状態になったときの電流波形について説明する。
図7は、CT非飽和時であって、変圧器がインラッシュ状態である場合の波形を示す図である。図7(a)および(b)の縦軸は電流(図中の「I」に対応)であり、横軸は時間(図中の「t」に対応)である。図7(a)を参照して、波形400はCT非飽和時かつインラッシュ状態におけるCT2次電流の波形を示しており、波形401はCT2次電流の1階微分波形を示している。図7(b)を参照して、波形402はCT2次電流の2階微分波形を示している。図7(b)は、波形401を拡大するように図7(a)の縦軸を変更したものである。
図7(a)を参照して、1階微分波形を示す波形401の各ゼロクロス点J1,J2,J3の間隔に着目する。隣り合うゼロクロス点J1,J2間の間隔はT6であり、隣り合うゼロクロス点J2,J3間の間隔はT6aである。間隔T6と間隔T6aとは、系統周期Ts(例えば、20ms)の1/2に近い値となっている。図7(a)の例では、間隔T6は8.2msであり、間隔T6aは11.8msである。
図7(b)を参照して、2階微分波形を示す波形402の各ゼロクロス点K1,K2,K3の間隔に着目する。隣り合うゼロクロス点K1,K2間の間隔はT7であり、隣り合うゼロクロス点K2,K3間の間隔はT7aであり、隣り合うゼロクロス点K3,K4間の間隔はT7bである。間隔T7bは、系統周期Tsの1/2に近い値となっているが、間隔T7,T7aはTs/2から大きく逸脱している。図7(b)の例では、間隔T7は6.4msであり、間隔T7aは5.6msであり、T7bは8.0msである。
さらに、1階微分波形のゼロクロス点と、2階微分波形のゼロクロス点との間隔に着目する。具体的には、図7(b)を参照して、ゼロクロス点J1~J3と、ゼロクロス点K1~K4との間隔に着目する。隣り合うゼロクロス点K1,J1間の間隔はT8であり、隣り合うゼロクロス点J1,K2間の間隔はT8aであり、隣り合うゼロクロス点K2,J2間の間隔はT8bであり、隣り合うゼロクロス点J2,K3間の間隔はT8cであり、ゼロクロス点K3,J3間の間隔はT8dである。
ここで、図4で説明したように、CTが飽和しておらず、かつインラッシュ状態でもない場合には、1階微分波形のゼロクロス点と2階微分波形のゼロクロス点との間隔はT2(すなわち、Ts/4)で一定に保たれていた。しかし、図7(b)では、1階微分波形のゼロクロス点と2階微分波形のゼロクロス点との間隔は一定に保たれておらず、Ts/4から大きく逸脱したもの(例えば、間隔T8c)が存在する。図7(b)の例では、間隔T8,T8a,T8b,T8c,T8dは、それぞれ3.3ms、4.5ms、3.8ms、1.9ms、6.5msである。
このことから、CT非飽和時においては変圧器がインラッシュ状態であっても、1階微分波形のゼロクロス点間の間隔は概ねTs/2で一定に保たれているが、2階微分波形のゼロクロス点間の間隔は、Ts/2から逸脱するものが多く一定に保たれていない。また、1階微分波形のゼロクロス点と2階微分波形のゼロクロス点との間隔は、Ts/4から逸脱するものが多く一定に保たれていない。
図8は、CT飽和時であって、変圧器がインラッシュ状態である場合の波形を示す図である。図8(a)および(b)の縦軸は電流(図中の「I」に対応)であり、横軸は時間(図中の「t」に対応)である。図8(a)を参照して、波形450はCT飽和時かつインラッシュ状態におけるCT2次電流の波形を示しており、波形451はCT2次電流の1階微分波形を示している。図8(b)を参照して、波形452はCT2次電流の2階微分波形を示している。図8(b)は、波形451を拡大するように図8(a)の縦軸を変更したものである。
図8(a)を参照して、波形451において、CT飽和が発生した後の各ゼロクロス点L1~L4の間隔に着目する。ゼロクロス点L1,L2間の間隔はT9であり、ゼロクロス点L2,L3間の間隔はT9aであり、ゼロクロス点L3,L4間の間隔はT9bである。図8(a)の例では、間隔T9,T9a,T9bは、それぞれ6.0ms,9.8ms,4.2msである。間隔T9aは、系統周期Tsの1/2に近い値となっているが、間隔T9,T9bはTs/2から大きく逸脱している。
図8(b)を参照して、波形452において、CT飽和が発生した後の各ゼロクロス点M1~M5の間隔に着目する。ゼロクロス点M1,M2間の間隔をT10、ゼロクロス点M2,M3間の間隔をT10a、ゼロクロス点M3,M4間の間隔をT10b、ゼロクロス点M4,M5間の間隔をT10cとする。図8(b)の例では、間隔T10,T10a,T10b,T10cは、それぞれ5.8ms,7.5ms,3.2ms,3.5msである。間隔T10~T10cは、Ts/2から大きく逸脱している。同様に、1階微分波形のゼロクロス点と2階微分波形のゼロクロス点との間隔は一定に保たれておらず、Ts/4から大きく逸脱したものが多い。
このことから、CT飽和時においては変圧器がインラッシュ状態である場合、1階微分波形のゼロクロス点間の間隔、2階微分波形のゼロクロス点間の間隔、および、1階微分波形のゼロクロス点と2階微分波形のゼロクロス点との間隔は、一定に保たれていない。具体的には、1階微分波形のゼロクロス点間の各間隔の中には、Ts/2から大きく逸脱したものが存在し、2階微分波形のゼロクロス点間の各間隔の中にも、Ts/2から大きく逸脱したものが存在する。1階微分波形のゼロクロス点と2階微分波形のゼロクロス点との各間隔の中には、Ts/4から大きく逸脱したものが存在する。
したがって、CT非飽和時であってインラッシュ状態である場合の図7に示す波形と、CT飽和時であってインラッシュ状態である場合の図8に示す波形とを比較すると、1階微分波形のゼロクロス点の間隔に差異がある。また、CT非飽和時であってインラッシュ状態ではない場合の図3に示す波形と、図7に示す波形とを比較すると、1階微分波形および2階微分波形のゼロクロス点の間隔に差異がある。そのため、保護リレー装置100は、1階微分波形のゼロクロス点の間隔と、1階微分波形および2階微分波形のゼロクロス点の間隔とを用いて、CT飽和の有無および変圧器におけるインラッシュ状態の有無を判定する。
上述したように、図7および図8では、単相の変圧器がインラッシュ状態になったときの電流波形について説明したが、3相の変圧器でも同様である。
図9は、3相の変圧器がインラッシュ状態である場合の波形を示す図である。図9(a)を参照して、波形500,510,520は、それぞれ、CT非飽和時におけるA相,B相,C相の電流波形を示している。図9(b)を参照して、波形550,560,570は、それぞれ、CT飽和時におけるA相,B相,C相の電流波形を示している。具体的には、図9(b)ではA相に設けられたCTが飽和した場合を想定している。
図9(a)の波形500と図7(a)の波形400とは同様の傾向を示す波形であり、図9(b)の波形550と図8(a)の波形450とは同様の傾向を示す波形である。そのため、3相の変圧器であっても、保護リレー装置100は、1階微分波形のゼロクロス点の間隔と、1階微分波形および2階微分波形のゼロクロス点の間隔とを用いて、CT飽和の有無および変圧器におけるインラッシュ状態の有無を判定できる。
図10は、実施の形態2に従う判定方式の一例を示すフローチャートである。典型的には、以下の各ステップは、保護リレー装置100の演算処理部70のCPU72によって実行される。
図10を参照して、ステップS10~S16の各処理は、図5に示す各処理と同様であるため、その詳細は説明は繰り返さない。1階微分波形のゼロクロス点間の間隔Tx1が範囲R1内である場合(ステップS16においてYES)、保護リレー装置100は、1階微分波形のゼロクロス点と、2階微分波形のゼロクロス点との間隔(以下、「間隔Tx12」とも称する。)が範囲R2内であるか否かを判断する(ステップS50)。
間隔Tx12が範囲R2内である場合(ステップS50においてYES)、保護リレー装置100は、CT6が飽和しておらず、かつ変圧器9がインラッシュ状態ではないと判定する(ステップS52)。この場合には、電流の異常が電力系統の故障によるものと推定される。そのため、例えば、電力系統の故障が保護対象の内部で発生している場合には、保護リレー装置100は動作して、トリップ信号を遮断器5に出力する。一方、間隔Tx12が範囲R2外である場合(ステップS50においてNO)、保護リレー装置100は、CT6は非飽和状態であり、かつ変圧器9がインラッシュ状態であると判定する(ステップS54)。
また、間隔Tx1が範囲R1外である場合(ステップS16においてNO)、保護リレー装置100は、間隔Tx12が範囲R2内であるか否かを判断する(ステップS56)。間隔Tx12が範囲R2外である場合(ステップS56においてNO)、保護リレー装置100は、CT6が飽和していると判定する(ステップS58)。
間隔Tx12が範囲R2内である場合(ステップS56においてYES)、保護リレー装置100は、ステップS12の処理に戻る。ここで、間隔Tx1が範囲R1外であって、かつ間隔Tx12が範囲R2内というケース(すなわち、ステップS16でNOかつステップS56でYES)は通常は起こらないと考えられる。そのため、保護リレー装置100は、ステップS12の処理に戻って再度判定処理を実行する。
<機能構成>
図11は、実施の形態2に従う保護リレー装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。図11を参照して、実施の形態2に従う保護リレー装置100の機能構成は、図6に示す実施の形態1に従う保護リレー装置100の機能構成に、インラッシュ判定部162を追加した構成に相当する。
インラッシュ判定部162は、隣接する第1ゼロクロス点間の間隔である第1ゼロクロス間隔と、隣接する第1および第2ゼロクロス点間の間隔である第3ゼロクロス間隔とに基づいて、変圧器9がインラッシュ状態であるか否かを判定する。
図7の場合、第1ゼロクロス点はゼロクロス点J1~J3であり、第1ゼロクロス間隔は間隔T6,T6aである。第2ゼロクロス点はゼロクロス点K1~K4であり、第2ゼロクロス間隔は間隔T7~T7bである。第3ゼロクロス間隔は間隔T8~T8dである。図8の場合、第1ゼロクロス点はゼロクロス点L1~L4であり、第1ゼロクロス間隔は間隔T9~T9bである。第2ゼロクロス点はゼロクロス点M1~M5であり、第2ゼロクロス間隔は間隔T10~T10cである。第3ゼロクロス間隔は、ゼロクロス点L1,M1間、ゼロクロス点M1,L2間、ゼロクロス点L2,M2間等の間隔である。
第1ゼロクロス間隔が範囲R1内であって、かつ、第3ゼロクロス間隔が範囲R2外である場合に、インラッシュ判定部162は、変圧器9がインラッシュ状態であると判定する。なお、異常検出部154により電力系統の電流の異常が検出された場合に、インラッシュ判定部162は、このような変圧器9のインラッシュ状態の判定処理を実行してもよい。
<利点>
実施の形態2によると、CTから取り込んだ電流の微分波形のゼロクロス点間隔を用いることで、CT飽和の有無に加えて、インラッシュ状態の有無も判定できる。そのため、CT飽和およびインラッシュ電流に伴う保護リレー装置の誤動作および誤不動作を防止できる。
その他の実施の形態.
上述の実施の形態として例示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。また、上述した実施の形態において、他の実施の形態で説明した処理および構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2,4 母線、3 送電線、5 遮断器、8 電圧変成器、9 変圧器、10,11 交流電源、51 補助変成器、52 AD変換部、70 演算処理部、71 バス、72 CPU、73 ROM、74 RAM、75 DI回路、76 DO回路、77 入力インターフェイス、100 保護リレー装置、152 入力部、154 異常検出部、156 波形生成部、158 ゼロクロス検出部、160 飽和判定部、162 インラッシュ判定部。

Claims (4)

  1. 電流変成器によって検出された電力系統の電流の入力を受ける入力部と、
    前記電流を微分して前記電流の1階微分波形を生成する波形生成部と、
    前記1階微分波形の第1ゼロクロス点を検出するゼロクロス検出部と、
    隣接する前記第1ゼロクロス点間の間隔を示す第1ゼロクロス間隔に基づいて、前記電流変成器が飽和したか否かを判定する飽和判定部とを備え、
    前記波形生成部は、前記1階微分波形を微分して前記電流の2階微分波形をさらに生成し、
    前記ゼロクロス検出部は、前記2階微分波形の第2ゼロクロス点をさらに検出し、
    前記第1ゼロクロス間隔が第1範囲外であって、かつ、隣接する前記第1および第2ゼロクロス点間の間隔を示す第3ゼロクロス間隔が前記第1範囲よりも小さい第2範囲外である場合に、前記飽和判定部は、前記電流変成器が飽和していると判定する、保護リレー装置。
  2. 前記第1範囲は、系統周期の1/2を中心値とする許容誤差範囲であり、
    前記第2範囲は、系統周期の1/4を中心値とする許容誤差範囲である、請求項に記載の保護リレー装置。
  3. 前記電力系統には、変圧器が配置されており、
    前記第1ゼロクロス間隔と、前記第3ゼロクロス間隔とに基づいて、前記変圧器がインラッシュ状態であるか否かを判定するインラッシュ判定部をさらに備え、
    前記第1ゼロクロス間隔が前記第1範囲内であって、かつ、前記第3ゼロクロス間隔が前記第2範囲外である場合に、前記インラッシュ判定部は、前記変圧器がインラッシュ状態であると判定する、請求項または請求項に記載の保護リレー装置。
  4. 前記電流の異常を検出する異常検出部をさらに備え、
    前記異常検出部により前記電流の異常が検出された場合に、前記飽和判定部は、前記電流変成器の飽和判定処理を実行する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の保護リレー装置。
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