JP7371474B2 - 微生物燃料電池デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、微生物燃料電池デバイスに関する。
近年、二次電池の普及により、携帯電話、ノートパソコンやタブレット端末などの携帯型電子機器が広く普及するようになった。特にリチウムイオン二次電池は鉛蓄電池、ニッカド電池、ニッケル水素電池等の電池と比較して大きなエネルギー密度が得られることから、車載用高出力電源としても使用されるようになってきている。また、充電が不要な電源として発電デバイスの研究も活発に行われており、水素を燃料とした定置用の燃料電池や車載用の燃料電池も実用化されるようになってきた。
一方、近年では燃料電池の仕組みを利用した生物燃料電池の開発も進められており、生体触媒の酵素を用いたバイオ燃料電池、微生物を用いた微生物燃料電池などがある。微生物燃料電池は、発電菌と呼ばれる微生物により有機物を分解する際に生じる電子を回収し、電気エネルギーとして利用する発電方法である。
微生物燃料電池の構成には、二槽型と一槽型が知られている(特許文献1、非特許文献1)。負極での微生物による分解反応から生じた電子が外部回路を経由し、正極にて還元反応で消費される点は共通している。二槽型はイオン交換膜などの隔壁で両極を分け、酸素やフェリシアン化カリウムなどの酸化剤を正極で反応させている。一方、一槽型は隔壁が無く、一つの槽内に正極および負極を配置し、大気中の酸素を酸化剤として正極で反応させている。
微生物燃料電池は、例えば、生活廃水などの中の有機物の分解処理と発電を並行して行えるため、消費エネルギーを低減できる水処理方法としても期待されている(非特許文献2)。また、微生物燃料電池は、廃水中や土壌中の有機物で発電出来るため、廃水や土壌における電源としての利用も期待出来る。
微生物燃料電池の電極や回路配線に金属材料を用いることは一般的であるが、廃水等の中の有機物を処理する際には、部材の腐食が進行しやすく、抵抗値の増大によって発電特性が低下する問題があった。これまでに、電極の腐食に対する開発は行われているが、回路配線のような周辺の部材においては未だ開発が進んでいない。たとえば、特許文献2では、導電性カーボンおよび樹脂と非導電性基材とを用いた微生物燃料電池用電極が開示されているが、微生物燃料電池と外部デバイスとを接続する回路配線の腐食の問題は解決されていなかった。また、金属材料を回路配線として使用する場合、腐食によって溶出する金属イオンが微生物の生育に悪影響を与えるおそれがあった。腐食性の低い金属材料の使用も考えられるが、価格や資源の希少性の観点から、実用性に欠ける。
特開2004-342412号公報 WO2016/129678A1
Environmental Science&Technology,2004,38,4040-4046 微生物燃料電池による廃水処理システム最前線、(株)エヌ・ティー・エス
本発明の目的は、発電性能および有機物分解能に優れ、長期的に耐腐食性を示す微生物燃料電池を提供することである。
本発明者らは、前記の諸問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、正極、負極、並びに、正極及び負極と電気的に接続される回路配線を含んでなる微生物燃料電池デバイスであって、
正極及び負極と電気的に接続される回路配線が、非金属材料からなる微生物燃料電池に関する。
また、本発明は、正極及び負極と電気的に接続される回路配線が、非導電性支持体を有する上記微生物燃料電池に関する。
また、本発明は、前記回路配線が、導電性材料と樹脂成分とを含む導電性組成物から形成されてなり、導電性組成物が、導電性材料と樹脂成分との固形分の合計100質量%中、樹脂成分を1~40質量%含む前記微生物燃料電池デバイスに関する。
本発明の微生物燃料電池は、発電性能および有機物分解能に優れ、長期的に耐腐食性を示す。また、金属材料の使用を低減できるため、低コストかつ軽量のデバイスを作製できる。
図1は、本発明の一形態を表す。
以下、詳細に本発明について説明する。
本発明の微生物燃料電池デバイスは、正極、負極、回路配線を含んでなる。回路配線は、非金属導電材料からなることを特徴とする。
<回路配線>
回路配線とは、微生物燃料電池において正極および負極と外部デバイスを電気的に接続し、回路を形成する導電性部材である。回路配線は、正極あるいは負極とは別の導電性部材を接続し、更に外部デバイスに接続してもよいし、正極あるいは負極の支持体をそのまま延長して回路配線を形成し外部デバイスと接続してもよい。回路配線と外部デバイスを接続する方法としては特に限定するものではなく、接着剤あるいは粘着剤による接続の他に、スナップボタン、マグネット、クリップ、ファスナー、面ファスナー等を用いた接続が例示できる。耐久性の観点から、非金属材料を用いて接続することが好ましい。
回路配線を構成する導電性部材としては、非金属材料であれば特に限定するものではない。例えば、カーボンペーパーやカーボンクロス、カーボンフェルト等の導電性炭素部材が挙げられる。また、導電性組成物から形成された塗膜も挙げられ、前記塗膜は、例えば回路配線支持体上に、導電性組成物を塗布、乾燥することにより得ることができる。回路配線支持体としては、導電性炭素部材、あるいは非導電性支持体を使用することができる。
導電性組成物としては、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子や、導電性炭素と溶剤とバインダー樹脂を含むスラリー等が挙げられる。導電性やコストの観点から、非導電性支持体に導電性スラリーを塗布、乾燥したものを用いることが好ましい。
非導電性支持体としては、紙類、布類、不織布、樹脂製フィルム等が挙げられるが、折り曲げ可能な支持体であることが好ましく、不織布、紙、および樹脂製フィルムが好ましい。耐久性の観点から、不織布、樹脂製のフィルムが更に好ましい。
<回路配線用導電性組成物>
回路配線用導電性組成物は、少なくとも導電性炭素と、溶剤と、バインダー樹脂を含む樹脂成分とを含有することが好ましい。また、回路配線用導電性組成物は、必要に応じて分散剤、増粘剤、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、pH調整剤等を配合できる。導電性炭素及び溶剤とバインダー、分散剤の割合は、特に限定されるものではなく、広い範囲内で適宜選択され得る。VOC排出の観点から、水あるいは水性溶剤を用いることが好ましく、それに伴いバインダーおよび分散剤等も水性であることが好ましい。
導電性炭素と樹脂成分の固形分の合計100質量%中、導電性炭素の含有量は、導電性が得られれば特に限定されることはないが、好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは70~95質量%である。
導電性炭素と、樹脂成分の固形分の合計100質量%中、樹脂成分の含有量は、特に限定されることはないが、好ましくは1~40質量%、耐久性の観点からさらに好ましくは20~40質量%である。
また、バインダー樹脂の含有量は、回路配線用導電性組成物全体の固形分の1~40質量%であり、耐久性の観点から好ましくは20~40質量%である。
また、分散剤を含有する場合は、回路配線用導電性組成物全体の固形分の0.01~10質量%であり、好ましくは0.05~8質量%であり、さらに好ましくは0.1~5質量%である。
また、電極形成用組成物の適正粘度は、組成物の塗工方法によるが、一般には、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
<導電性炭素(回路配線用)>
本発明における導電性炭素としては、黒鉛、黒鉛以外の導電性炭素を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性の観点から、少なくとも黒鉛が含有されていることが好ましい。
黒鉛としては、例えば人造黒鉛や天然黒鉛等を使用することが出来る。人造黒鉛は、無定形炭素の熱処理により、不規則な配列の微小黒鉛結晶の配向を人工的に行わせたものであり、一般的には石油コークスや石炭系ピッチコークスを主原料として製造される。天然黒鉛としては、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等を使用することが出来る。また、鱗片状黒鉛を化学処理等した膨張黒鉛(膨張性黒鉛ともいう)や、膨張黒鉛を熱処理して膨張化させた後、微細化やプレスにより得られた膨張化黒鉛等を使用することも出来る。これらの黒鉛の中でも、導電膜に用いる場合は、導電性の観点で天然黒鉛が好ましい。
これら黒鉛の表面は、本発明に用いる導電性組成物の特性を損なわない限りにおいてバインダー樹脂との親和性を増すために、表面処理、例えばエポキシ処理、ウレタン処理、シランカップリング処理、および酸化処理等が施されていてもよい。
また、用いる黒鉛の平均粒径は、2~100μmが好ましく、特に、20~50μmが好ましい。
黒鉛の平均粒径が2μm未満では、黒鉛粒子のアスペクト比が低下し、黒鉛粒子間の接触が、点接触になりやすくなるため、導電ネットワークを十分に形成できないことがある。一方で、黒鉛の平均粒径が100μmを超えると、黒鉛粒子間の空隙が大きくなり、導電ネットワーク中の黒鉛以外の導電性炭素間で形成する導電パスの割合が多くなり、導電性の低下を引き起こすことがある。
本発明でいう平均粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
市販の黒鉛としては、例えば、薄片状黒鉛として、日本黒鉛工業社製のCMX、UP-5、UP-10、UP-20、UP-35N、CSSP、CSPE、CSP、CP、CB-150、CB-100、ACP、ACP-1000、ACB-50、ACB-100、ACB-150、SP-10、SP-20、J-SP、SP-270、HOP、GR-60、LEP、F#1、F#2、F#3、中越黒鉛社製のCX-3000、FBF、BF、CBR、SSC-3000、SSC-600、SSC-3、SSC、CX-600、CPF-8、CPF-3、CPB-6S、CPB、96E、96L、96L-3、90L-3、CPC、S-87、K-3、CF-80、CF-48、CF-32、CP-150、CP-100、CP、HF-80、HF-48、HF-32、SC-120、SC-80、SC-60、SC-32、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50、西村黒鉛社製の10099M、PB-99等が挙げられる。球状天然黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のCGC-20、CGC-50、CGB-20、CGB-50が挙げられる。土状黒鉛としては、日本黒鉛工業社製の青P、AP、AOP、P#1、中越黒鉛社製のAPR、S-3、AP-6、300Fが挙げられる。人造黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のPAG-60、PAG-80、PAG-120、PAG-5、HAG-10W、HAG-150、中越黒鉛社製のRA-3000、RA-15、RA-44、GX-600、G-6S、G-3、G-150、G-100、G-48、G-30、G-50、SECカーボン社製のSGP-100、SGP-50、SGP-25、SGP-15、SGP-5、SGP-1、SGO-100、SGO-50、SGO-25、SGO-15、SGO-5、SGO-1、SGX-100、SGX-50、SGX-25、SGX-15、SGX-5、SGX-1が挙げられる。
また、本発明中の導電性組成物に占める黒鉛の含有率は、特に、導電性炭素100質量%中、40~99質量%であることが好ましく、70~98質量がより好ましい。
黒鉛の含有率が、導電性炭素100質量%中40質量%以上であると、過剰量の黒鉛以外の導電性炭素による黒鉛粒子の配向性の低下および導電ネットワークの大部分を黒鉛以外の導電性炭素が占めることで、特異的な高い導電性が発現しなくなるといった問題を防げるため好ましい。一方で、黒鉛の含有率が導電性炭素100質量%中99質量%以下であると、平面方向に加え、垂直方向の導電性も良好になるため、導電膜にした際に良好な導電性が得られ、好ましい。
黒鉛含有率が、導電性炭素100質量%中、70~98質量%である場合、黒鉛粒子による平面方向の高い導電性に加え、適切な量の黒鉛以外の導電性炭素によって、黒鉛由来の平面方向の導電性を阻害せずに垂直方向の導電ネットワークが強化され、非常に高い導電性を発現できる。
黒鉛以外の導電性炭素としては、特に限定されるものではないが、粒径および比表面積の観点からカーボンブラックが好ましい。それ以外にも、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー、カーボンフェルト)、グラフェン系炭素材料(グラフェン、グラフェンナノプレートレット)、多孔質炭素、ナノポーラスカーボン、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することが出来る。
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m2/g以上、1500m2/g以下、好ましくは50m2/g以上、1500m2/g以下、更に好ましくは100m2/g以上、
1500m2/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m2/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m2/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005~1μmが好ましく、特に、0.01~0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡などで測定された粒子径を平均したものである。
市販のカーボンブラックとしては、例えば、東海カーボン社製のトーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500、デグサ社製のプリンテックスL、コロンビヤン社製のRaven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、500
0ULTRA、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA、PUERBLACK100、115、205、三菱化学社製の#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B、キャボット社製のMONARCH1400、1300、900、VulcanXC-72R、BlackPearls2000、TIMCAL社製のEnsaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP-Li等のファーネスブラック)、ライオン社製のEC-300J、EC-600JD等のケッチェンブラック、デンカ社製のデンカブラック、デンカブラックHS-100、FX-35等のアセチレンブラックが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー、カーボンフェルト、カーボンクロス、カーボンペーパー)としては、石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることが出来る。
カーボンナノチューブは、グラフェンシートが環を巻いたナノスケールのチューブ状の構造を有しており、グラフェンシートの積層数によって、単層、多層に区別される。カーボンナノチューブは、原料や合成方法によって繊維径や長さ、結晶性、集合状態を制御することで、材料の比表面積、導電性等の諸物性を制御することが可能となる。単層カーボンナノチューブは、グラフェンシートが一層でナノメートル領域の直径を有するチューブを形成する。多層カーボンナノチューブは、グラフェンシートが多層である。そのため、多層カーボンナノチューブの直径は、典型的な単層カーボンナノチューブの0.7-2.0nmに対して、30nmと大きい値を示す。グラフェン系炭素材料と同様、合成コストや取り扱いを考慮すると、単層カーボンナノチューブよりも多層カーボンナノチューブの方が好ましい場合がある
市販の炭素繊維としては、昭和電工社製のVGCF、VGCF-H、VGCF-X等の気相法炭素繊維、名城ナノカーボン社製のEC1.0,EC1.5,EC2.0,EC1.5-P等の単層カーボンナノチューブ、CNano社製のFloTube9000、FloTube9100、FloTube9110、FloTube9200、Nanocyl社製のNC7000、Knano社製の100T等が挙げられる。
カーボンフェルトとは、多数の炭素繊維を不規則に絡ませてフェルト状にしたものである。市販のカーボンフェルトとしては、日本カーボン社製のCARBORONフェルト、大阪ガスケミカル社製のドナカーボ・フェルト、クレハ社製のクレカフェルト、SGLCARBON社製のSIGRATHERM GFA、KFA、旭産業社製のF―350、F―700等が挙げられる。
カーボンクロスとは、炭素繊維を束ねたものを規則的に編み込んで網目構造とし、布状に形成したものである。
カーボンペーパーとは、結着材と混合したカーボンファイバーを紙状に形成したものである。
グラフェン系炭素材料としては、炭素原子が同一平面上に六角形に配置し、グラファイトを構成する単原子層であるグラフェンが、単層若しくは、多層構造を有している炭素材料であれば良い。単層及び多層グラフェンは、グラファイトを機械的、化学的に剥がしたり、炭化水素系ガスからCVD法でなどにより合成されるが、合成コストや取り扱いを考慮すると、単層グラフェンよりも十数~数十層積層された多層グラフェンが好ましい場合がある。
市販のグラフェン系炭素材料としては、例えば、xGnP-C-750、xGnP-M-5等のXGSciences社製グラフェンナノプレートレット等が挙げられる。
多孔質炭素は、一般的に酢酸マグネシウムなどの鋳型材料と炭素原料を混合して焼成後、鋳型材料を除去することで得られる。鋳型材料の種類、粒径、規則性等を制御することで得られる多孔質炭素の物性を制御することが出来る。
市販の多孔質炭素としては、クノーベルMHグレード、クノーベルP(2)010グレード、クノーベルP(3)010グレード、クノーベルP(4)050グレード等の東洋カーボン社製の多孔質炭素等が挙げられる。
ナノポーラスカーボンは、表面にメソポーラス構造を有し粒径20~50nm程度の球状粒子である。メソポーラス構造に由来する高い表面積、細孔容積により優れた吸着能を有している。
市販のナノポーラスカーボンとしては、Easy-N社製ナノポーラスカーボンが挙げられる。
<溶剤(回路配線用)>
本発明に使用する溶剤としては、特に限定せず使用することができる。必要に応じて、例えば、分散性や支持体への塗工性向上のために、複数の溶剤種を混ぜて使用しても良い。溶剤としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、水等が挙げられる。中でも水や、炭素数が4以下のアルコール系溶剤が好ましい。
<バインダー樹脂(回路配線用)>
本発明におけるバインダー樹脂とは、導電性炭素などの粒子を結着させるために使用されるものであり、それら粒子を溶媒中へ分散させる効果は小さいものである。
バインダー樹脂としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、スチレン-ブタジエンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴム、ポリアニリンやポリアセチレン等の導電性樹脂等、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、パーフルオロカーボン及びテトラフルオロエチレン等のフッ素原子を含む高分子化合物が挙げられる。又、バインダー樹脂はこれらの樹脂に限定されるわけではなく、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良い。これらバインダー樹脂は、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
また、水性液状媒体を使用する場合、一般的に水性エマルションとも呼ばれるバインダーも使用できる。水性エマルションとは、バインダー樹脂が水中で溶解せずに、微粒子の状態で分散されているものである。
使用するエマルションは特に限定されないが、(メタ)アクリル系エマルション、ニトリル系エマルション、ウレタン系エマルション、ジエン系エマルション(SBR(スチレンブタジエンゴム)など)、フッ素系エマルション(PVDF(ポリフッ化ビニリデン)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)など)等が挙げられる。
<分散剤(回路配線用)>
本発明において使用する分散剤は、導電性炭素に対して分散剤として有効に機能し、その凝集を緩和することができる。分散剤は導電性炭素に対して凝集を緩和する効果が得られれば特に限定されないが、回路配線用組成物に含まれる溶媒に適した有機溶剤系分散剤および水系分散剤を使用することが好ましく、2種以上を用いてもよい。また、分散剤は、バインダー樹脂以外の樹脂成分として樹脂型の分散剤を含んでいてもよい。
有機溶剤系分散剤としては、塩基性官能基を有する顔料誘導体、塩基性官能基を有する樹脂が挙げられる。また、酸性官能基を有する顔料誘導体、酸性官能基を有する樹脂が挙げられる。塩基性官能基を有する顔料誘導体の内、好ましい形態として、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、及び塩基性官能基を有するトリアジン誘導体等の各種誘導体が挙げられる。また、酸性官能基を有する顔料誘導体の内、好ましい形態として、酸性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、酸性官能基を有するアクリドン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体等の各種誘導体が挙げられる。
塩基性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、塩基性官能基を有するアクリドン誘導体、又は塩基性官能基を有するトリアジン誘導体の合成方法としては、特に限定されるものではなく、周知の方法を適用することができる。例えば、特開昭54-62227号公報、特開昭56-118462号公報、特開昭56-166266号公報、特開昭60-88185号公報、特開昭63-305173号公報、特開平3-2676号公報、又は特開平11-199796号公報等に記載されている方法を適用することができる。上記公報による開示を参照することにより、本明細書の一部に組み込むものとする。
市販の酸性官能基を有する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。
ビックケミー社製の酸性官能基を有する樹脂としては、Anti-Terra-U、U100、203、204、205、Disperbyk-101、102、106、107、110、111、140、142、170、171、174、180、2001、BYK-P104、P104S、P105、9076、及び220S等が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製の酸性官能基を有する樹脂としては、SOLSPERSE3000、21000、26000、36000、36600、41000、41090、43000、44000、及び53095等が挙げられる。
エフカアディティブズ社製の酸性官能基を有する樹脂としては、EFKA4510、4530、5010、5044、5244、5054、5055、5063、5064、5065、5066、5070、及び5071等が挙げられる。
味の素ファインテクノ社製の酸性官能基を有する樹脂としては、アジスパーPN411、及びアジスパーPA111等が挙げられる。
ELEMENTIS社製の酸性官能基を有する樹脂としては、NuosperseFX-504、600、605、FA620、2008、FA-196、及びFA-601等が挙げられる。
ライオン社製の酸性官能基を有する樹脂としては、ポリティA-550、及びポリティPS-1900等が挙げられる。
楠本化成社製の酸性官能基を有する樹脂としては、ディスパロン2150、KS-860、KS-873SN、1831、1860、PW-36、DA-1200、DA-703-50、DA-7301、DA-325、DA-375、及びDA-234等が挙げられる。
BASFジャパン社製の酸性官能基を有する樹脂としては、JONCRYL67、678、586、611、680、682、683、690、52J、57J、60J、61J、62J、63J、70J、HPD-96J、501J、354J、6610、PDX-6102B、7100、390、711、511、7001、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630、352J、252D、538J7640、7641、631、790、780、及び7610等が挙げられる。
三菱レイヨン社製の酸性官能基を有する樹脂としては、ダイヤナールBR-60、64、73、77、79、83、87、88、90、93、102、106、113、及び116等が挙げられる。
上記の分散剤に限定することなく、さらに市販の有機溶剤系分散剤を使用することも出来、例えば下記のものが挙げられる。
ビックケミー社製の分散剤としては、Disperbyk-103、108、109、112、116、130、161、162、163、164、166、167、168、174、182、183、184、185、2000、2050、2070、2096、2150、BYK-9077等が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製の分散剤としては、SOLSPERSE5000、9000、13240、13650、13940、17000、18000、19000、22000、24000SC、24000GR28000、31845、32000、32500、32600、33500、34750、35100、35200、37500、38500が挙げられる。
エフカアディティブズ社製の分散剤としては、EFKA1500、1501、1502、1503、4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4400、4401、4402、4403、4406、4520、4570、4800、5207等が挙げられる。
味の素ファインテクノ社製の分散剤としては、アジスパーPB711、PB821、PB822等が挙げられる。
アイエスピー・ジャパン社製の分散剤としては、ポリビニルピロリドンPVP K-15、K-30、K-60、K-90、又はK-120等が挙げられる。
川研ファインケミカル社製の分散剤としては、ヒノアクトKF-1000、1300M、1500、1700、T-6000、8000、8000E、又は9100等が挙げられる。
積水化学工業社製の分散剤としては、エスレックBL-1、エスレックBL-1H、エスレックBL-2、エスレックBL-2H、エスレックBL-5、エスレックBL-10、エスレックBL-S、エスレックBX-L、エスレックBM-1、エスレックBM-S、エスレックBH-3、エスレックBX-1、エスレックKS-1、エスレックKS-10、エスレックKS-3等が挙げられる。
クラレ社製の分散剤としては、ポバールPVA102、ポバール103、ポバールPVA105、ポバールPVA203、ポバールPVA403、PVA505、ポバールPVA-624、ポバールPVA-706、モビタールB16H、モビタールB60HH、モビタール30T、モビタール30HH、モビタール60T等が挙げられる。
次に、水系分散剤について説明する。水系分散剤は特に限定されないが、カチオン性分散剤、アニオン性分散剤、ノニオン性分散剤などを使用することが出来る。
上記分散剤の中でも、水溶性を示す高分子系の樹脂が好ましく、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等の多糖類の樹脂を含む高分子化合物が挙げられ、特に、エチレン性不飽和単量体を重合または共重合した水溶性の樹脂が好ましい。また、水溶性であれば、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良い。これら分散剤は、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
本発明で言う水溶性を示す樹脂とは、25℃の水99g中に樹脂1gを入れて撹拌し、25℃で24時間放置した後、分離・析出せずに水中で樹脂が完全に溶解可能なものである。
市販のカチオン性分散剤としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
ビックケミー社製のカチオン性分散剤としては、Disperbyk-108、109、112、116、130、161、162、163、164、166、167、168、180、182、183、184、185、2000、2001、2050、2070、2150、又はBYK-9077が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製のカチオン性分散剤としては、SOLSPERSE9000、13240、13650、13940、17000、18000、19000、20000、24000SC、24000GR、28000、31845、32000、32500、32600、33500、34750、35100、35200、37500、38500、又は39000が挙げられる。
エフカアディティブズ社製のカチオン性分散剤としては、EFKA4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4400、4401、4402、4403、4406、4500、4550、4560、4570、4580、又は4800が挙げられる。
味の素ファインテクノ社製のカチオン性分散剤としては、アジスパーPB711、アジスパーPB821、又はアジスパーPB822が挙げられる。
楠本化成社製のカチオン性分散剤としては、ディスパロン1850、1860、又はDA-1401が挙げられる。
共栄社化学製のカチオン性分散剤としては、フローレンDOPA-15B、フローレンDOPA-17等が挙げられる。
市販のアニオン性分散剤としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。
ビックケミー社製のアニオン性分散剤としては、Anti-Terra-U、U100、203、204、205、Disperbyk-101、102、106、107、110、111、140、142、170、171、174、180、2001、BYK-P104、P104S、P105、9076、及び220S等が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製のアニオン性分散剤としては、SOLSPERSE3000、21000、26000、36000、36600、41000、41090、43000、44000、及び53095等が挙げられる。 エフカアディティブズ社製のアニオン性分散剤としては、EFKA4510、4530、5010、5044、5244、5054、5055、5063、5064、5065、5066、5070、及び5071等が挙げられる。
味の素ファインテクノ社製のアニオン性分散剤としては、アジスパーPN411、及びアジスパーPA111等が挙げられる。
ELEMENTIS社製のアニオン性分散剤としては、NuosperseFX-504、600、605、FA620、2008、FA-196、及びFA-601等が挙げられる。
ライオン社製のアニオン性分散剤としては、ポリティA-550、及びポリティPS-1900等が挙げられる。
楠本化成社製のアニオン性分散剤としては、ディスパロン2150、KS-860、KS-873SN、1831、1860、PW-36、DA-1200、DA-703-50、DA-7301、DA-325、DA-375、及びDA-234等が挙げられる。
BASFジャパン社製のアニオン性分散剤としては、JONCRYL67、678、586、611、680、682、683、690、52J、57J、60J、61J、62J、63J、70J、HPD-96J、501J、354J、6610、PDX-6102B、7100、390、711、511、7001、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630、352J、252D、538J7640、7641、631、790、780、及び7610等が挙げられる。
三菱レイヨン社製のアニオン性分散剤としては、ダイヤナールBR-60、64、73、77、79、83、87、88、90、93、102、106、113、及び116等が挙げられる。
市販のノニオン性分散剤としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。
花王社製のノニオン性分散剤としては、エマルゲン 104P、エマルゲン 106、等のポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる。
ISPジャパン社製のノニオン性分散剤としては、PVP K-15、PVP K-30、PVP K-60、及びPVP K-90等のポリビニルピロリドンが挙げられる。
本発明に用いる分散剤の分子量は特に限定されないが、好ましくは高分子であり、重量平均分子量は1,000~2,000,000が好ましく、さらに好ましくは3,000~1,000,000である。界面活性剤等の分子量が小さい分散剤も使用できるが、導電性材料に対する吸着率が低いため電極形成用組成物の粘度上昇を引き起こしてしまう場合がある。分子量が大きすぎると、粘度上昇を引き起こしてしまう場合がある。重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリスチレン換算分子量を示す。
(導電性組成物の調製方法(回路配線用))
導電性組成物の調製方法は特に限定されるものではなく、例えば、
(1)各成分を同時に分散してもよいし、
(2)導電性炭素とバインダー樹脂を溶媒中に分散後、他の材料を添加してもよいし、
(3)導電性炭素と分散剤を溶媒中に分散後、バインダー樹脂や他の材料を添加してもよいし、
使用する導電性炭素、バインダー樹脂により最適化することができる。
前記組成物を得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントシェーカー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS-5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル、ニーダ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
(回路配線の製造方法)
回路配線の形成方法としては、例えば、導電性支持体や非導電性支持体に前記組成物を直接塗布し乾燥することにより作製する方法や、転写基材などに前記組成物を塗布し乾燥することにより形成された塗膜を前記支持体やセパレーター等に転写する方法が挙げられる。
組成物の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷等の一般的な方法を適用できる。
<微生物燃料電池デバイス用電極>
本発明に用いる微生物燃料電池デバイス用電極は、種々の方法で得ることができる。正極や負極の機能が発揮出来るような構成であれば、従来公知のカーボンペーパー、カーボンフェルト、カーボンクロス、または活性炭シートなどのカーボン材料や、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル、またはチタンなどのシート状およびメッシュ状の金属材料が使用出来るが、特に限定されるものではない。また、電極形成用組成物から電極を作製することも出来る。
<電極形成用組成物>
電極形成用組成物は、少なくとも、導電性材料と溶剤とバインダー樹脂を含有する。また、電極形成用組成物は、必要に応じて分散剤、増粘剤、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、pH調整剤等を配合できる。導電性材料及び溶剤とバインダー樹脂、分散剤の割合は、特に限定されるものではなく、広い範囲内で適宜選択され得る。
導電性材料とバインダー樹脂の固形分の合計100質量%中、導電性材料の含有量は、導電性が得られれば特に限定されることはないが、好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは70~95質量%である。
導電性材料と、バインダー樹脂の固形分の合計100質量%中、バインダー樹脂の含有量は、特に限定されることはないが、好ましくは1~40質量%、さらに好ましくは5~30質量%である。
導電性材料と、バインダー樹脂の固形分の合計は、電極形成用組成物全体の固形分の51質量%以上であり、好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは75質量%以上である。
また、分散剤を含有する場合は、電極形成用組成物全体の固形分の0.01~10質量%であり、好ましくは0.05~8質量%であり、さらに好ましくは0.1~5質量%である。
また、電極形成用組成物の適正粘度は、組成物の塗工方法によるが、一般には、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
<電極形成組成物用導電性材料>
電極形成組成物用導電性材料について説明する。電極形成組成物用導電性材料とは、微生物燃料電池の電極として機能する導電性材料であれば特に限定されるものではないが、正極では酸素還元反応を起こせる導電性材料が必要であり、具体的には貴金属触媒、卑金属酸化物触媒、炭素材料等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種類以上組み合わせて用いても良い。一方、負極では微生物による酸化反応を起こせる導電性材料が必要であり、具体的には炭素材料、金属材料等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種類以上組み合わせて用いても良い。
導電性材料は、比表面積が大きく、電子伝導性が高いほど好ましい。正極では導電性材料の表面で酸素還元反応が起こるため、比表面積が大きいほど、酸素とプロトン、電子との反応場が多くなり、反応活性の向上に繋がるため好ましい。また、電子伝導性が高いほど、電極中における酸素還元反応に必要な電子を前記反応場に供給できるため、電流の増加に繋がりやすく、好ましい。一方、負極では導電性材料の表面で微生物による有機物の酸化反応が起こるため、比表面積が大きいほど、微生物と有機物、電子との反応場が多くなり、反応活性の向上に繋がるため好ましい。また、電子伝導性が高いほど、電極中における反応に必要な電子を前記反応場に供給できるため、電流の増加に繋がりやすく、好ましい。
(貴金属触媒)
貴金属触媒とは、遷移金属元素のうちルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金から選択される元素を一種以上含む触媒である。これら貴金属触媒は単体でも別の元素や化合物に担持されたものでも良い。中でも、触媒担持炭素材料が好例として挙げられる。触媒担持炭素材料とは、触媒が触媒担時体としての炭素材料上に担持してなるものを指し、公知もしくは市販のものがある。
触媒の炭素材料上への担持率は限定的ではない。触媒として白金を用いた場合は、触媒担持炭素材料100質量%に対して、通常1~70質量%程度までの担持が可能である。
触媒担持体としての炭素材料は、無機材料由来の炭素粒子および/または有機材料を熱処理して得られる炭素粒子であれば特に限定されない。
無機材料由来の炭素粒子としては、黒鉛、カーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ミディアムサーマルカーボンブラック)、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、グラフェンナノプレートレット、ナノポーラスカーボン、炭素繊維等が挙げられる。炭素材料は、種類やメーカーによって、粒子径、形状、BET比表面積、細孔容積、細孔径、嵩密度、DBP吸油量、表面酸塩基度、表面親水度、導電性など様々な物性やコストが異なるため、使用する用途や要求性能に合わせて最適な材料を選択される。
熱処理して炭素粒子となる有機材料としては、熱処理後炭素粒子となる材料であれば特に限定されない。具体的な有機材料としては、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアニリン系樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂系樹脂、ポリイミダゾール系樹脂、ポリピロール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、メラミン系樹脂、ピッチ、褐炭、ポリカルボジイミド、バイオマス、タンパク質、フミン酸等やそれらの誘導体などが挙げられる。
これら炭素材料は、一種類または二種類以上で用いられる。
市販の触媒担持炭素材料としては、例えば、田中貴金属工業社製の
TEC10E50E、TEC10E70TPM、TEC10V30E、TEC10V50E、TEC66E50等の白金担持炭素粒子;
TEC66E50、TEC62E58等の白金-ルテニウム合金担持炭素粒子;
を購入することができるが、これらに限定されるものではない。
(卑金属酸化物触媒)
卑金属酸化物触媒としては、ジルコニウム、タンタル、チタン、ニオブ、バナジウム、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、クロム、タングステン、およびモリブデンからなる群より選択された少なくとも1種の遷移金属を含む酸化物あるいはこれら遷移金属元素の炭窒化物を使用することができ、より好ましくはこれら遷移金属元素の炭窒化物や、これら遷移金属元素の炭窒酸化物を使用することができる。
前記卑金属酸化物触媒の組成式は、例えば、M1CpNqOr(ただし、M1は遷移金属元素であり、p、q、rは原子数の比を表し、0≦p≦3、0≦q≦2、0<r≦3である。)、M2aM3bCxNyOz(ただし、M2は、ジルコニウム、タンタル、チタン、
ニオブ、バナジウム、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、クロム、タングステン、およびモリブデンからなる群より選択される1種の金属であり、M3は、前記群より選択されるM2とは異なる少なくとも1種の金属である。a、b、x、y、zは原子数の比を表し、0.5≦a<1、0<b≦0.5、0<x≦3、0<y≦2、0<z≦3、かつa+b=1である。)で表される。また、導電性の観点から、さらにこれら化合物と導電性炭素材料を複合化した触媒を好適に使用することができる。
(炭素材料(電極用))
本発明に用いる炭素材料としては、導電性炭素(回路配線用)で前述したものや活性炭が使用できる。
活性炭としては、具体的にはフェノール系、ヤシガラ系、レーヨン系、アクリル系、石炭-石油系ピッチコークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)等を賦活した活性炭を挙げることができる。同じ質量でもより広い面積の界面を形成することが可能な、比表面積の大きいものが好ましい。具体的には、比表面積が30m/g以上が好ましく、より好ましくは500~5000m/g、さらに好ましくは1000~3000m/gである。
<ヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料(電極用)>
導電性材料は、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料を含むことが好ましい。ヘテロ元素や卑金属元素を含有することにより、酸素還元反応や微生物反応を活性化することができる。
ヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料は、炭素元素を基本骨格とした炭素材料からなり、それらの構成単位間に物理的・化学的な相互作用(結合)を有し、ヘテロ元素(N、B、Pなどの異種元素)及び/又は卑金属元素が含まれる材料である。ここでいう卑金属元素とは、遷移金属元素のうち貴金属元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金)を除く金属元素であり、卑金属元素としては、コバルト、鉄、ニッケル、マンガン、銅、チタン、バナジウム、クロム、亜鉛、およびスズからなる群より選ばれる一種以上を含有することが好ましい。含有するヘテロ元素は窒素(N)が好ましく、含有する卑金属元素としては、コバルト(Co)及び/又は鉄(Fe)が好ましい。
ヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料は、材料を構成する全元素に対する、炭素原子のモル比、窒素原子のモル比および卑金属原子のモル比をそれぞれ、RC、RNおよびRMとした際、炭素原子のモル比RCに対する窒素原子のモル比RNの割合が1~40%、炭素原子のモル比RCに対する卑金属原子のモル比RMの割合が0.01~20%の範囲にあると好ましい。
ヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料は、窒素を吸着種としたBET比表面積(BETN2)が、1~1500m/gであることが好ましく、より好ましくは10~1000m/gである。BET比表面積が上記の範囲にあると、反応が起こる反応場を多くできるため好ましい。
本発明における比表面積とは試料単位質量当たりの表面積のことであり、ガス(N2又はH2O)吸着法によって求めることができる。解析法はBET法を用い、相対圧(P(吸着平衡圧)/P0(飽和蒸気圧)=0.05~0.3)とガス吸着量のプロットより得られる直線の切片と勾配から、単分子吸着量を求めることで、BET比表面積を算出できる。
ヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料は、CuKα線をX線源として得られるX線回折(XRD)図において、回折角(2θ)が24.0~27.0°の位置にピークを有し、該ピークの半値幅が8°以下であることが好ましい。
CuKα線をX線源として得られるヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料のX線回折線図においては、24.0~27.0°付近に炭素の(002)面回折ピークが現れる。炭素の(002)回折ピーク位置は、炭素六角網面の面間距離によって変化し、ピーク位置が高角側であるほど炭素六角網面の距離が近いことから、構造の黒鉛的規則性が高いことが示される。また、上記ピークがシャープである(半値幅が小さい)ほど、結晶子サイズが大きく、結晶構造が発達していることを示すものである。
上記ピークの半値幅が8°以下である場合には、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料の結晶性が高く、電子伝導性が高い。これにより、電極中における反応に必要な電子を前記反応場に供給することができるため、電流の増加に繋がり、好ましい。
また、上記ピークの半値幅が1°以下であることは、さらに好ましい。
ヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料の製造方法は特に限定されないが、単に炭素材料とヘテロ元素を含む化合物を混合したものや、炭素材料と卑金属元素を含む化合物を混合したものや、炭素材料とヘテロ元素や卑金属元素を含む化合物を混合したものよりも炭化させたものが好ましい。製造方法としては、例えば、炭素材料、ヘテロ元素を含む化合物及び卑金属元素を含む化合物を混合し炭化させる方法、炭素材料、ヘテロ元素を含む化合物を混合し炭化させる方法、ヘテロ元素を含む炭素材料と、卑金属元素を含む化合物とを混合し炭化させる方法、フタロシアニンやポルフィリン等の大環状化合物などのヘテロ元素及び卑金属元素を含む化合物を炭化させる方法、炭素材料と、ヘテロ元素及び卑金属元素を含む化合物とを混合し炭化させる方法などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。炭化により、炭素材料表面の炭素骨格内の炭素元素の少なくとも一部がヘテロ元素や卑金属元素が置換するようにドープされる。また、ヘテロ元素を含む化合物ではなく、ヘテロ元素を含むガスによる炭素材料へのドープでも良く、そのような製造方法としては、炭素材料と、卑金属元素を含む化合物とを混合し炭化させた材料に気相法でヘテロ元素をドープする方法、炭素材料に気相法でヘテロ元素をドープする方法など、従来公知のものを使用することが出来るが、それらに限定されるものではない。気相法での反応により、炭素材料表面の炭素骨格内の炭素元素の少なくとも一部がヘテロ元素で置換するようにドープされる。
好ましい製造方法としては、少なくともヘテロ元素を含む炭素材料と、卑金属元素を含む化合物とを混合し、熱処理する方法や、少なくとも炭素材料と、ヘテロ元素及び卑金属元素を含む化合物とを混合し、熱処理する方法が挙げられる。また、前記熱処理により得られた炭素材料を、酸で洗浄、及び乾燥する工程を含む方法が挙げられる。更に、前記酸洗浄により得られた炭素材料を、熱処理する工程を含む方法が挙げられる。
本発明における、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料の構成成分である炭素材料としては、無機炭素材料が好ましく、上述した無機炭素材料と同様のものを使用することが出来、結晶性、粒子径、形状、BET比表面積、細孔容積、細孔径、嵩密度、DBP吸油量、表面酸塩基度、表面親水度、導電性などの様々な物性や、コストが異なるため、使用する用途や要求性能に合わせて最適な材料を選択することができる。
ヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料の構成成分である炭素材料としては、無機炭素材料だけでなく、熱処理後炭素粒子となる有機材料も使用することができる。熱処理後に炭素粒子となる有機材料としては、炭素以外に他の元素を含有していても良い。熱処理後の炭素粒子に窒素やホウ素等のヘテロ元素を含有させるため、予め同ヘテロ元素を含有する有機材料の使用が好ましい場合がある。具体的な有機材料としては、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアニリン系樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂系樹脂、ポリイミダゾール系樹脂、ポリピロール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、メラミン系樹脂、ピッチ、褐炭、ポリカルボジイミド、バイオマス、タンパク質、フミン酸等やそれらの誘導体などが挙げられる。その中でも窒素やホウ素などのヘテロ元素を含有する有機材料である、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアニリン系樹脂等が、窒素元素を含む炭素材料として好ましい。
ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を導入するために使用される原料としては、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素を含有する化合物であれば特に限定されない。例えば、色素、ポリマー等の有機化合物、金属単体、金属酸化物、金属塩等の無機化合物が挙げられる。また、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用して用いても良い。卑金属元素とは、遷移金属元素のうち貴金属元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金)を除く金属元素であり、卑金属元素としては、コバルト、鉄、ニッケル、マンガン、銅、チタン、バナジウム、クロム、亜鉛、スズから選ばれる一種以上を含有することが好ましい。
好ましくは錯体もしくは塩であり、その中でも、卑金属元素を分子中に含有することが可能な、窒素を含有した芳香族化合物は、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料中に効率的に窒素元素と卑金属元素を導入しやすいため好ましい。具体的には、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、テトラアザアヌレン系化合物等の大環状化合物が挙げられる。上記芳香族化合物は、電子吸引性官能基や電子供与性官能基を導入されたものであってもよい。特に、フタロシアニン系化合物は、様々な卑金属元素を含んだ化合物が入手可能であり、コスト的にも安価であるため、原料としては特に好ましい。中でも、コバルトフタロシアニン系化合物、ニッケルフタロシアニン系化合物、鉄フタロシアニン系化合物は、安価で高い活性を有するヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料を得ることができるためより好ましい。
<バインダー樹脂(電極用)>
バインダー樹脂は、回路配線用で前述したものが使用できる。
<分散剤(電極用)>
分散剤は回路配線用で前述したものを使用できる。
<溶剤(電極用)>
溶剤は回路配線用で前述したものを使用できる。
増粘剤は特に限定されるものではないが、例えば、界面活性剤などの低分子化合物、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等の多糖類の樹脂を含む高分子化合物が挙げられる。これらは、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
(電極形成用組成物の調製方法)
電極形成用組成物の調製方法は特に限定されるものではなく、例えば、
(1)各成分を同時に分散しても良いし、
(2)導電性材料とバインダー樹脂を溶媒中に分散後、他の材料を添加しても良いし、
(3)導電性材料と分散剤を溶媒中に分散後、バインダー樹脂や他の材料を添加しても良いし、
使用する導電性材料、バインダー樹脂により最適化することができる。
電極形成用組成物を得る際に用いられる装置としては、分散機・混合機(回路配線用)で前述したものが使用できる。
<電極の製造方法>
次に、電極形成用組成物から電極を作製する方法について、説明する。従来公知の方法を使用して作製することが出来、特に限定されないが、例えば、
(1)電極形成用組成物を導電性基材へ塗工することにより作製した電極や、
(2)電極形成用組成物をペレット状に成形した電極や、
(3)電極形成用組成物をペレット状に成形したものを導電性基材で包み込んで作製した電極や、
(4)枠や籠のような形状の導電性基材中へ電極形成用組成物をペレット状に成形したものを封入した電極、
等が挙げられる。
特に、微生物が関与する負極については、例えば、微生物を電極形成用組成物へ混合してから負極を作製しても良いし、あらかじめ上述のように電極を作製しておき、その後に微生物の添加や植種を行っても良い。また、電極を土壌や廃水中へ設置した後に環境中の微生物の吸着により負極として機能させることも出来る。
<導電性基材(電極用)>
導電性基材としては、耐腐食性、電気伝導性に優れ、表面積が大きく、反応物及び生成物の拡散に優れるものが良く、材質や形状は特に限定されない。例えばグラファイトペーパー(カーボンペーパー)、グラファイトクロス(カーボンクロス)及びグラファイトフェルト(カーボンフェルト)等のカーボン材料の他、ステンレスメッシュ、銅メッシュや白金メッシュ等の金属材料を用いることができるが、この限りではない。電極に用いる導電性基材には、予め撥水処理しても良い。例えば、PTFEの分散液を正極に含浸させ、乾燥後400℃前後で加熱することで撥水性が発現する。また、PTFE分散液には導電材を分散させても良い。なお、撥水処理はこれらに限定されるものではない。
また、回路配線と同様に、紙類、布類、樹脂製フィルム等の非導電性支持体に回路配線用導電性組成物やポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を塗布、乾燥したものやそれらを併用したものを用いてもよい。前記組成物の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、回路配線の作製の際に使用するような一般的な方法を適用できる。
<塗工方法(電極用)>
電極形成用組成物を導電性基材に塗布する方法は、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。例示すると、グラビアコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等を挙げることができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機等が使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
(微生物燃料電池デバイス用電極の導電性)
本発明の微生物燃料電池デバイス用電極の体積抵抗率は、5×10Ω・cm未満であることが好ましく、さらに好ましくは5×10Ω・cm未満、さらに好ましくは1×10-1Ω・cm未満である。導電性が良好な電極ほど電池の電力を有効に取り出すことが可能となる。
<微生物燃料電池デバイス>
次に、微生物燃料電池デバイスの構成を説明する。電子供与微生物が保持された負極と、酸素還元触媒材料を含む正極を、電解質を含む電解槽に隔壁を設けず差し込んだ一槽型構成や、固体高分子形燃料電池のように、固体高分子膜を利用して、負極槽と正極槽を隔てた二槽型構成でもよい。更に、面で囲われた電解槽だけでなく、水田や湖沼、河川、海のように囲われていない環境でもよい。例えば、電解液を保持する電解槽内部と酸素を含む大気等の電解槽外部を隔てる液面、側面、底面に正極が設置される形態や、外気を取り入れることができるカセット型の電極を液中に浸漬する等の形態が考えられる。このとき、正極触媒層が電解液と接し、その裏面が酸素を含む大気等と接するように設置される。これにより、電解槽外部から酸素を含む大気等が直接正極へ流入し、電解質に接した正極中の触媒上で反応が生起する。
微生物燃料電池デバイスに用いる電解質は、プロトンなどのイオン伝導性を有し、微生物によって酸化分解される基質を含有する。基質は、電子を供与する微生物が代謝可能な物質であれば、特に限定されるものではない。例えば、糖類やタンパク質、脂質などの有機物の他、アンモニアなどの無機物などが挙げられ、それらを1種類以上含有してもよい。したがって、電解質は前記条件を満たす生活廃水、産業廃水、環境廃水(池、湖沼、河川、海)、土壌、汚泥等を用いることができる。また、微生物と負極との間で電子伝達を担うメディエーターを導入してもよく、メチレンブルーやニュートラルレッドなどが例示できる。
微生物燃料電池デバイスにおける電子を供与する微生物は、前記基質を酸化分解し電子を生成する負極反応を生起するものであれば、単一種でも複数種であってもよい。また、微生物は電解槽内を浮遊あるいは負極上へ固定化することで電解槽内に保持する。微生物種は特に限定されないが、Shewanella属やGeobacter属に属するものが例示できる。
微生物燃料電池デバイスの正極及び負極は、非金属材料からなる回路配線を介して外部デバイスに電気的に接続される。回路配線は、正極及び負極の基材と一体となっていても良い。また、非金属材料からなる回路配線と外部デバイスとの間において、電解質に接触しない部分など腐食のおそれの低い部分では、金属材料を含む配線を接続しても良い。しかし、耐久性の観点から、回路配線の全体が非金属材料からなることが好ましい。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例および比較例における「部」は「質量部」、%は質量%を表す。
<回路配線用導電性組成物の作製>
鱗状黒鉛CB-150(日本黒鉛社製)を18部、ファーネスブラックVULCAN(登録商標)XC72(CABOT社製)を4.5部、バインダーとしてエマルション型アクリル樹脂分散溶液(トーヨーケム社製:W-168)を3部(固形分50%)、分散剤
としてカルボキシメチルセルロース水溶液50部(固形分2%)、溶剤として水49.5部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、回路配線用導電性組成物(1)を得た。また、配合を変えて同様の操作を行い、表1に記載の回路配線用導電性組成物(2)~(7)を得た。回路配線用導電性組成物(8)は導電性材料としてケッチェンブラック EC-600JD(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を用いた以外は回路配線用導電性組成物(2)と同様に作製した。
<回路配線の作製>
基材となる厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの表面にコロナ処理を行い、前記回路配線用導電性組成物(1)をドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥し、導電層の厚さが80μmとなるよう調整し、回路配線(1)を得た。また、同様の操作を行い表1に記載の回路配線(2)~(8)を得た。
<電極用炭素材料>
グラフェンナノプレートレットxGnP-C-750(XGscience社製)と鉄フタロシアニン P-26(山陽色素社製)を、質量比1/0.5(グラフェンナノプレートレット/鉄フタロシアニン)となるようにそれぞれ秤量し、乾式混合を行い、混合物を得た。上記混合物を、アルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、800℃で2時間熱処理を行い、炭素材料(1)を得た。
<電極形成用組成物>
導電性材料として炭素材料(1)14部、バインダー樹脂としてPVDF#7200(ポリフッ化ビニリデン、クレハ社製)6部、溶媒としてNMP(N-メチルピロリドン)80部、をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散して固形分が20質量%となる電極形成用組成物(1)を得た。
導電性材料としてHS-100(アセチレンブラック、デンカ社製)を用いた以外は、電極形成用組成物(1)と同様にして電極形成用組成物(2)を作製した。
<微生物燃料電池デバイス用電極>
[電極(1)]
カーボンフェルト(日本カーボン社製、かさ密度0.08~0.10 g/cm)を、長さ20cm幅10cmの四角形に切り出したものを微生物燃料電池デバイス用電極(1)とした。電極(1)は、電極部および回路配線部を構成する。
[電極(2)]
カーボンフェルト(日本カーボン社製、かさ密度0.08~0.10 g/cm)を、長さ10cm幅10cmの四角形に切り出したものを微生物燃料電池デバイス用電極(2)とした。
[電極(3)]
基材であるカーボンフェルト(日本カーボン社製、かさ密度0.08~0.10 g/cm)を、長さ20cm幅10cmの四角形に切り出し、片端の長さ10cm幅10cmの範囲に、電極形成用組成物(1)を目付け量が3mg/cmとなるようにヘラで塗工した後、150℃雰囲気のオーブンで乾燥
させて微生物燃料電池デバイス用電極(3)を作製した。電極(3)は、電極部および回路配線部を構成する。
[電極(4)]
基材であるカーボンフェルト(日本カーボン社製)を、長さ20cm幅10cmの四角形に切り出し、電極形成用組成物(2)を目付け量が3mg/cmとなるようにヘラで塗工した後、150℃雰囲気のオーブンで乾燥させて微生物燃料電池デバイス用電極(4)を作製した。電極(4)は、電極部および回路配線部を構成する。
[電極(5)]
基材であるカーボンフェルト(日本カーボン社製、かさ密度0.08~0.10 g/cm)を、長さ10cm幅10cmの四角形に切り出し、電極形成用組成物(1)を目付け量が3mg/cmとなるようにヘラで塗工した後、150℃雰囲気のオーブンで乾燥させて微生物燃料電池デバイス用電極(5)を作製した。
[電極(6)]
基材となる厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの表面にコロナ処理を行い、前記回路配線用導電性組成物(1)をドクターブレードを用いて塗布した後、加熱乾燥し、導電層の厚さが80μmとなるよう調整した。長さ20cm幅10cmの四角形に切り出したものを導電性支持体(1)とした。
導電性支持体(1)の片端の長さ10cm幅10cmの範囲に、電極形成用組成物(1)を目付け量が3mg/cmとなるようにアプリケーターで塗工した後、150℃雰囲気のオーブンで乾燥させて微生物燃料電池デバイス用電極(6)を作製した。電極(6)は、電極部および回路配線部を構成する。
[電極(7)]
ニカフィルム FL―300(日本カーボン社製、密度1.49 g/cm3)を長さ20cm、幅10cmの四角形に切り出したものを微生物燃料電池デバイス用電極(7)とした。電極(7)は、電極部および回路配線部を構成する。
[電極(8)]
前記導電性支持体(1)を微生物燃料電池デバイス用電極(8)として用いた。電極(8)は、電極部および回路配線部を構成する。
<微生物燃料電池デバイス>
図1及び表2に示す微生物燃料電池デバイスを作製した。
[実施例1~7、実施例9~16]
500mLの容量を持つ容器内に、電解質である土と、正極および負極とを配置し、微生物燃料電池を作製した。次に、正極及び負極を、回路配線を介して外部抵抗(10kΩ)に接続した。電極1、3、4、7、8を用いた場合は、電極と回路配線が一体となっているため直接外部抵抗へ接続した。電極2、5については、表2に記載の回路配線を貼り合せて用いた。電極6を用いた場合は、電極形成用組成物の塗布部分から延長した導電性支持体を直接外部抵抗へ接続した。
[実施例8]
回路配線としてカーボンフェルト(日本カーボン社製)を用いた以外は、実施例4と同様にして微生物燃料電池デバイスを作製した。
[比較例]
回路配線として銅線を用いた以外は、実施例4と同様にして微生物燃料電池デバイスを作製した。
Figure 0007371474000001
Figure 0007371474000002
作製した微生物燃料電池デバイスを連続運転させ、評価を実施した。以降、1週間置きに蒸発等により減少した水分を補水した。減少した水分量は容器の質量減少分などから算出可能である。
(発電特性評価)
運転開始から3週間後、微生物燃料電池デバイスの電圧をテスターで測定し、発電特性を評価した。下記に判断基準を示し、結果を表2に示す。
◎: 0.5V以上(極めて良好)
〇: 0.4V以上0.5V未満(良好)
〇△: 0.2V以上0.4V%未満(実用上問題なし)
△: 0V以上0.2V未満(不良)
×: 0V未満(極めて不良)
(耐久性評価)
微生物燃料電池デバイスの電圧をテスターで3ヵ月間測定し、3週間後の電圧を100%とした時の3ヵ月後の出力維持率を評価した。下記に判断基準を示し、結果を表2に示す。
◎:出力維持率 90%以上(極めて良好)
〇:出力維持率 75%以上90%未満(良好)
〇△:出力維持率 60%以上75%未満(実用上問題なし)
△:出力維持率 50%以上60%未満(不良)
×:出力維持率 50%未満(極めて不良)
全ての微生物燃料電池デバイスにおいて、発電が確認されたことから、土壌中に存在する微生物が負極に付着し、土壌中の有機物を分解して電子を放出したものと考察される。
本発明の微生物燃料電池デバイスでは、耐久性が良好であることが分かる。比較例では腐食により回路配線の電気抵抗が増大したが、実施例では低い電気抵抗を維持したものと考察される。金属材料を使用しない場合には、回路配線の電気抵抗を3ヶ月後の比較例と同等まで増大させても、出力が50%以上維持されることが分かっている。このことから、比較例においては、腐食により溶出した金属イオンが発電微生物の活動に悪影響を与えた可能性が示唆される。微生物燃料電池は微生物が豊富な環境下で使用されるため、微生物腐食による劣化が促進されやすい。また、廃水浄化に微生物燃料電池を用いる場合、pHの影響も大きく金属配線はより腐食しやすいと考えられる。
また、ヘテロ元素及び/又は卑金属元素がドープされた炭素材料を含む電極を用いた場合、発電特性が良好であることが分かった。
本発明の微生物燃料電池デバイスは耐久性に優れており、特に非導電支持体を有する回路配線はカーボンフェルトなどの炭素材料に比べコストが非常に低いといったメリットもあることから、廃水浄化にとどまらず、電源としての利用可能性も考えられるし、土壌や水質センサー等としての利用可能性も考えられる。
1容器
2正極
3負極
4電解質(土)
5外部抵抗
6回路配線

Claims (2)

  1. 正極、負極、並びに、正極及び負極と電気的に接続される回路配線を含んでなる微生物燃料電池デバイスであって、
    正極及び負極と電気的に接続される回路配線が、非金属材料からなり、且つ、前記回路配線が、導電性材料と樹脂成分とを含む導電性組成物から形成されてなり、導電性組成物が、導電性材料と樹脂成分との固形分の合計100質量%中、樹脂成分を1~40質量%含む、微生物燃料電池デバイス。
  2. 前記回路配線が、非導電性支持体を有する請求項1記載の微生物燃料電池デバイス。
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