JP7215139B2 - バイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物、バイオ燃料電池用アノード、バイオ燃料電池デバイス - Google Patents
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Description
一方、高価な貴金属や酵素を使用しない電極を用いて、燃料となる有機物の直接的な酸化により発電するバイオ燃料電池の検討もされている。例えばアスコルビン酸等を燃料として、アノードの触媒として貴金属を使用せずに、カーボンブラックをカーボンクロスに含浸させたものをアノードとして使用するバイオ燃料電池も報告されている(非特許文献1、特許文献4)。さらに、カーボンブラック、ポリビニルピリジン樹脂を塗布したカーボンフェルトをアノードに用いて、アスコルビン酸にイミダゾール等を併用した溶液を燃料に用いることで、発電特性を改善させる検討例も報告されている(特許文献5)。しかしながら、触媒を使用していないために出力特性はまだまだ不十分である。
すなわち本発明は、少なくとも導電性炭素材料(A)と、窒素含有複素環化合物(B)と、を含んでなる還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物に関する。
本発明のバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物は、バイオ燃料電池アノードの電極形成用として使用できる。バイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物は、少なくとも、導電性炭素材料(A)と、窒素含有複素環化合物(B)と、を含有する。
導電性炭素材料と窒素含有複素環化合物との質量比は、導電性が得られれば特に限定されることはないが、好ましくは5:95~99:1、さらに好ましくは15:85~95:5である。
本発明のバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物は、バインダー樹脂、分散剤、溶剤を含んでいてもよい。
また、バインダー樹脂を含有する場合は、バイオ燃料電池アノード用触媒インキ全体の固形分の0.01~40質量%であり、好ましくは0.1~30質量%であり、さらに好ましくは1~20質量%である。
また、分散剤を含有する場合は、バイオ燃料電池アノード用触媒インキ全体の固形分の0.01~10質量%であり、好ましくは0.05~8質量%であり、さらに好ましくは0.1~5質量%である。
また、溶剤を含有する場合は、バイオ燃料電池アノード用触媒インキ全体の固形分100質量%に対して、1~9900質量%であり、好ましくは5~1900質量%であり、さらに好ましくは25~400質量%である。
また、バイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物の適正粘度は、組成物の塗工方法によるが、一般には、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
次に、導電性炭素材料(A)について説明する。導電性炭素材料のみでは燃料を直接酸化する効率は低いが、窒素含有複素環化合物(B)と組み合わせることで、燃料を効率良く直接酸化することが出来る。本発明で使用される導電性炭素材料とは、バイオ燃料電池として機能する導電性炭素材料であれば特に限定されるものではなく、アノード反応から電子を取り出すことが出来るものであれば良いが、電子伝導性が高いほど、アノード反応が起こりやすく、電流の増加に繋がりやすいため、好ましい。
次に、窒素含有複素環化合物(B)について説明する。窒素含有複素環化合物のみでは燃料を直接酸化することは出来ないが、導電性炭素材料(A)と組み合わせることで、燃料を直接酸化することが出来る。
本発明で使用される窒素含有複素環化合物(B)としては、少なくとも窒素原子を1つ以上含み、さらに酸素原子、硫黄原子、リン原子を含んでも良い、芳香族あるいは脂肪族の環状化合物のことをいう。
そのような窒素含有複素環化合物(B)の具体例としては、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、アザトロピリデン、チアゾール、イミダゾリン、チアジン、トリアゾール、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、プリン、ベンゾトリアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、カルバゾール、アクリジンなどの低分子窒素含有複素環化合物、また、これらの環を含む単量体の重合体を例示できる。
また、窒素含有複素環化合物(B)の好ましい例としては、窒素含有有機顔料が挙げられ、具体的には、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ポルフィリン顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン顔料、ジオキサジン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンズイミダゾロン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、キノリン顔料、インダノン顔料、スピロ顔料、アゾバルビツール酸顔料、チアジンインジゴ顔料、トリアジン顔料、カルバゾール顔料などを挙げることが出来る。
これらの顔料は、誘導体や金属錯体であっても良く、例えばフタロシアニンの例を示すと、フタロシアニン、ナフタロシアニンや2,9,16,23-テトラ-tert-ブチルフタロシアニンなどのフタロシアニン誘導体、フタロシアニンの金属錯体やフタロシアニン誘導体の金属錯体などのことを示す。また、金属錯体に使用する遷移金属は、銅、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、バナジウム、亜鉛、スズ、アルミニウム、マグネシウムなどから選ばれる一種以上を含有する。
赤色顔料として、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、112、114、122、123、144、146、147、149、151、166、169、170、173、175、176、177、178、179、181、183、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、220、221、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、260、262、263、264、266、267、268、269、270、271、272、273、274、276などを挙げることができる。
次に、バインダー樹脂(C)について説明する。バインダー樹脂を使用することで、導電性炭素材料(A)と窒素含有複素環化合物(B)や、それらと基材を強く結着させることが出来るため、良好な発電特性や耐久性を向上させることが出来る。バインダー樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、EVA系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、及びシリコン系樹脂等からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。ただし、これらの樹脂に限定されるわけではなく、バインダー樹脂は1種単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
このようなバインダー樹脂は、有機溶剤に溶解させて使用する溶剤系樹脂や、水に溶解ないし分散させて使用する水系樹脂を使用することが出来る。
また、バインダー樹脂は、導電性炭素材料と窒素含有複素環化合物とバインダー樹脂を混合したバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物を作製後に、硬化(架橋)反応を受ける、硬化性樹脂とすることもできる。バインダー樹脂は、自己硬化性のものを選択したり後述する硬化剤と組み合わせたりして、バイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物を基材上へ塗工後、硬化(架橋)させることもできる。
ポリウレンタン樹脂の合成方法としては特に限定はされないが例えば、ポリオール化合物(a)とジイソシアネート(b)とを反応させたり、ポリオール化合物(a)とジイソシアネート(b)とカルボキシル基を有するジオール化合物(c)とを反応させてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)を得たり、前記ウレタンプレポリマー(d)にポリアミノ化合物(e)をさらに反応させたり、あるいは前記3つの場合において、必要に応じて反応停止剤を反応させて得られるものなどが挙げられる。
上記ポリオール化合物は、単独で用いても、2種類以上併用してもよい。更に、ポリウ
レタン樹脂の性能が失われない範囲内で、上記ポリオール化合物の一部を低分子ジオール類、例えば前記ポリオール化合物の製造に用いられる各種低分子ジオールに替えることもできる。
ポリオール化合物(a)とジイソシアネート(b)とカルボキシル基を有するジオール化合物(c)とを反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(d)を得る際の条件は、イソシアネート基を過剰にする他にとくに限定はないが、イソシアネート基/水酸基の当量比が1.05/1~3/1の範囲内であることが好ましい。更に好ましくは1.2/1~2/1である。また、反応は通常常温~150℃の間で行なわれ、更に製造時間、副反応の制御の面から好ましくは60~120℃の間で行なわれる。
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、5000~200000の範囲が好ましい。
本発明に用いられるポリアミド樹脂とは、基本的に二塩基酸とジアミンの重縮合、アミノカルボン酸の重縮合、或いはラクタムの開環重合などの各種反応で得られるアミド結合を有する高分子の総称であり、各種の変性ポリアミドをはじめ、一部水素添加された反応物で製造されたもの、他のモノマーが一部共重合された製造物、或いは各種添加剤などの他の物質が混合されたものなどを含む広い概念である。
上記ダイマー酸以外に、適当な柔軟性を有するポリアミド樹脂にするため、二塩基酸として各種のジカルボン酸を用いることができる。
上記ダイマー酸変性ポリアミド樹脂を製造する際の反応物としてのポリアミン類は、例えば、脂肪族、脂環式、芳香族などの各種ジアミン、トリアミン、ポリアミンなどである。
次に水系樹脂について説明する。水系樹脂は、水に溶解させて使用する水溶性樹脂や、水には不溶な樹脂微粒子を水中で分散させて使用する水性樹脂微粒子(一般的には水性エマルションと呼ばれる)が挙げられる。これらの樹脂は、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
水溶性樹脂の分子量は特に限定されないが、好ましくは重量平均分子量が5,000~2,500,000である。重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリエチレンオキサイド換算分子量を示す。
また、本発明に用いる水性樹脂微粒子の粒子構造は、多層構造、いわゆるコアシェル粒子にすることもできる。例えば、コア部、またはシェル部に官能基を有する単量体を主に重合させた樹脂を局在化させたり、コアとシェルによってTgや組成に差を設けたりすることにより、硬化性、乾燥性、成膜性、バインダーの機械強度を向上させることができる。
本発明に用いる水性樹脂微粒子の平均粒子径は、結着性や粒子の安定性の点から、10~500nmであることが好ましく、10~300nmであることがより好ましい。また、1μmを超えるような粗大粒子が多く含有されるようになると粒子の安定性が損なわれるので、1μmを超える粗大粒子は多くとも5%以下であることが好ましい。なお、本発明における平均粒子径とは、体積平均粒子径のことを表し、動的光散乱法により測定できる。
次に、(メタ)アクリル系エマルションについて説明する。(メタ)アクリル系エマルションとは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を10質量部以上含有する乳化重合物であり、好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上含有されているとよい。アクリロイル基を有する単量体は反応性に優れるため、樹脂微粒子を比較的容易に作製することができる。また、(メタ)アクリル系エマルションによるバイオ燃料電池アノードは結着性に優れる。
本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子は、従来既知の乳化重合方法により合成される。
本発明において乳化重合の際に用いられる乳化剤としては、エチレン性不飽和基を有する反応性乳化剤やエチレン性不飽和基を有しない非反応性乳化剤など、従来公知のものを任意に使用することができる。
さらに必要に応じて、緩衝剤として、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどが、また、連鎖移動剤としてのオクチルメルカプタン、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、ステアリルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類が適量使用できる。
次に、溶剤について説明する。バイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物中の材料を均一に混合する場合、溶剤を適宜用いることが出来る。そのような溶剤としては、有機溶剤や水を挙げることが出来る。
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの内から触媒インキ組成物の組成に応じ適当なものが使用できる。また、溶剤は2種以上用いてもよい。
また、水を使用する場合は、例えば、触媒インキ組成物の分散性や基材への塗工性向上のために、水と相溶する液状媒体を使用しても良い。
水と相溶する液状媒体としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用しても良い。
バイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物の調製方法に特に限定されるものではない。調製方法は、
(1)各成分を同時に分散しても良いし、
(2)導電性炭素材料を溶剤中に分散後、他の材料を添加しても良いし、
(3)導電性炭素材料と窒素含有複素環化合物とを溶剤中に分散後、他の材料を添加しても良いし、
(4)導電性炭素材料とバインダー樹脂とを溶剤中に分散後、他の材料を添加しても良いし、
使用する導電性炭素材料、窒素含有複素環化合物、バインダー樹脂、溶剤により選択することができる。
バイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物を得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
バイオ燃料電池アノードは、バイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物を基材に塗布などして塗膜を形成させ作製することが出来る。
本発明のアノードで使用する基材としては、耐腐食性、電気伝導性に優れ、表面積が大きく、反応物及び生成物の拡散に優れるものが良く、材質や形状は特に限定されない。例えばグラファイトペーパー(カーボンペーパー)、グラファイトクロス(カーボンクロス)及びグラファイトフェルト(カーボンフェルト)等のカーボン材料の他、ステンレスメッシュ、銅メッシュや白金メッシュ等の金属材料を用いることができるが、この限りではない。電極に用いる導電性基材には、予め撥水処理しても良い。例えば、PTFEの分散液をカソードに含浸させ、乾燥後400℃前後で加熱することで撥水性が発現する。また、PTFE分散液には導電材を分散させても良い。なお、撥水処理はこれらに限定されるものではない。
本発明のバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物を基材に塗布する方法は、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。例示すると、グラビアコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等を挙げることができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機等が使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明のバイオ燃料電池デバイスは、前記バイオ燃料電池アノードと、バイオ燃料電池カソードと、還元性有機物を含む燃料とを含んでなる。必要に応じて、セパレーター、イオン伝導体を含んでいてもよい。
バイオ燃料電池カソードは、酸素還元触媒を用いる以外には、従来公知の方法や前記アノードと同様の材料構成およびプロセスで作製することが出来る。
酵素還元触媒は、バイオ燃料電池カソードに用いられる公知の酵素を使用することができる。
本発明のバイオ燃料電池に用いられる燃料は、電極上で直接酸化可能な1種類以上の還元性有機物を含む。アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、エリソルビン酸、エリソルビン酸誘導体、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド誘導体、ニコチンアミドアデニンジヌクレオリン酸、クエン酸、酒石酸等が例示できる。ここで、誘導体とは、酸エステル、酸アミドなどのアルコールやアミンとの縮合物のほか、アルキル基などの置換基で置換したものを含む。
中でもアスコルビン酸、エリソルビン酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオリン酸、およびそれらの誘導体は好ましく、更にアスコルビン酸は好ましい。
セパレーターとしては、カソードとアノードを電気的に分離できる(短絡の防止)ものであれば、特に限定されず従来公知の材料を用いる事ができる。具体的には、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ガラス繊維、樹脂不織布、ガラス不織布、フェルト、濾紙、和紙等を用いることができる。また、カソードとアノードが十分な距離を保ち接触による短絡が無い構造を取るならば、セパレーターを用いなくてもよい。
本発明におけるイオン伝導体はアノードとカソードの間でイオンの伝導を行うものである。イオン伝導体の形態はイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではない。イオン伝導体としては例えば、リン酸緩衝液などの液体に電解質が溶けている電解液や、固体のポリマー電解質などを使用しても良い。固体のポリマー電解質はセパレーター機能も兼ねる場合もある。
本発明における還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池は前述の様に、発電した電力を用いた電源、電源とセンサーを兼ねる自己発電型センサー、有機物センサーや水分センサー等として機能し、これらは様々な用途での利用が見込まれる。使い方としては、電源として別方式の電池(コイン電池など)、センサーとして本発明の還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池デバイスを利用したり、電源及びセンサーに本発明の還元性有機物を燃料とする燃料電池デバイスを1種類以上利用したり、電源として本発明の還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池デバイス、センサーとして別方式のセンサーを利用したりすることができる。
IoTセンサーとしては、無線機とセンサーを組み合わせ、センシング情報をワイヤレスで外部に送信する使い方ができる。その場合、本発明の還元性有機物を燃料とする燃料電池デバイスを好適に使用することができる。
例えば、無線機の電源及びセンサーとして還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池デバイスを利用したり、無線機の電源に還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池デバイス、センサーとして別の還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池デバイスを利用したり、無線機の電源に還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池デバイス、センサーとして別方式のセンサーを利用したり、無線機及びセンサーの電源に1種以上の還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池デバイス、センサーとして別方式のセンサーを利用したり、無線機の電源に別方式の電池(コイン電池など)、センサーとして還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池デバイスを利用したりすることができる。
上記のIoTセンサーをおむつ用の生体センサーとして利用する場合は、おむつ内に還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池デバイスを仕込み、例えば下記の様な使い方が出来る。排尿センサーの場合、予め燃料を内蔵し尿中の水分をセンシング対象とし、また同時に水分を利用し発電し得られた電力で無線機を作動したり、予め燃料を内蔵し尿中の水分を利用し発電し得られた電力で無線機及び別方式の排尿センサーを作動したり、予め燃料を内蔵し尿中の水分をセンシング対象とし、別方式の電池(コイン電池など)の電力で無線機を作動したりできる。
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールとから得られるポリエステルポリオール((株)クラレ製「クラレポリオールP-2011」、Mn=2011)455.5部、ジメチロールブタン酸16.5部、イソホロンジイソシアネート105.2部、トルエン140部を仕込み、窒素雰囲気下90℃3時間反応させ、これにトルエン360部を加えてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、イソホロンジアミン19.9部、ジ-n-ブチルアミン0.63部、2-プロパノール294.5部、トルエン335.5部を混合したものに、得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液969.5部を添加し、50℃で3時間続いて70℃2時間反応させ、トルエン126部、2-プロパノール54部で希釈し、Mw=61,000、酸価=10mgKOH/g、ウレタンプレポリマーの両末端に有する遊離のイソシアネート基に対してポリアミノ化合物および反応停止剤中のアミノ基の合計当量は0.98である、ポリウレタン樹脂溶液を得た。この溶液をトルエン/メチルエチルケトン/2-プロパノール(1/1/1)で希釈して固形分20%のバインダー樹脂(C-1)の溶液を得た。
[実施例A1]
グラフェンナノプレートレットxGnP-C-750(XGscience社製)40部、鉄フタロシアニン P-26(山陽色素社製)20部、バインダー樹脂としてエマルション型アクリル樹脂分散溶液(トーヨーケム社製:W-168)40部(固形分50%)、溶剤として水380部、更に増粘剤としてカルボキシメチルセルロース水溶液20部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散して還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物(1)を得た。
表1に示す材料を用いて実施例1と同様の方法で、還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物(2)~(9)を得た。
グラフェンナノプレートレットxGnP-C-750(XGscience社製)70部、バインダー樹脂としてポリフッカビニリデン#1700(クレハ社製)30部、溶剤としてN-メチルピロリドン400部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散して還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物(I)を得た。
鉄フタロシアニン P-26(山陽色素社製)60部、バインダー樹脂としてエマルション型アクリル樹脂分散溶液(トーヨーケム社製:W-168)40部(固形分50%)、溶剤として水380部、更に増粘剤としてカルボキシメチルセルロース20部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散して還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物(II)を得た。
アセチレンブラックHS-100(デンカ社製)60部、バインダー樹脂としてポリ(4-ビニルピリジン)(Mw=160,000、Sigma-Aldrich社製)、溶剤としてN-メチルピロリドン400部、更に増粘剤としてカルボキシメチルセルロース20部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散して還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物(III)を得た。
[実施例B1~B9、比較例B1~B3]
実施例A1~A9、比較例A1~A3の還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物(1)~(9)、(I)~(III)を、ドクターブレードにより、乾燥後の還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池アノード触媒層の目付け量が1.5mg/cm2となるように、導電性基材(カーボンペーパー、東レ社製)上に塗布し、100℃オーブン中で、1時間乾燥し、還元性有機物を燃料とするバイオ燃料アノード(1)~(9)、(I)~(III)を作製した。
作用極に表1に示す前記で作製した還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池用アノード、対極に白金線コイル、参照極にAg/AgCl電極、還元性有機物燃料であるアスコルビン酸が10mMとなるように添加した100mMリン酸緩衝液(pH7.0)を電解液として電気化学セルを作製した。次に、ポテンショ・ガルバノスタットを用いて、室温下で、測定電位-0.1~+0.1Vの範囲でLinear Sweep Voltammetry(LSV)測定を行い、測定電位+0.1Vにおける電流(μA/cm2)を算出した。評価結果を表2に示す。
A-2:アセチレンブラックHS-100(デンカ社製)
A-3:ケッチェンブラックEC-300J(ライオン社製)
B-1:鉄フタロシアニン(山陽色素社製、分子量568.38)
B-2:銅(II) 5,9,14,18,23,27,32,36-オクタブトキシ-2,3-ナフタロシアニン(Sigma-Aldrich社製、分子量1353.15)
B-3:カルバゾール(東京化成社製、分子量167.21)
B-4:ピグメントレッド255(東京化成社製、分子量288.31)
B-5:フタロシアニン(東京化成社製、分子量514.55)
B-6:5-アミノベンゾイミダゾール(東京化成社製、分子量133.15)
B-7:ポリビニルイミダゾール(丸善石油化学社製、分子量10,000)
B-8:イミダゾール(東京化成社製、68.08)
C-1:ポリウレタン樹脂溶液(合成例(1)、固形分20%)
C-2:アクリル樹脂分散溶液W-168(トーヨーケム社製、固形分50%)
C-3:ポリフッ化ビニリデン#1700(クレハ社製)
C-4:ポリ(4-ビニルピリジン)(Sigma-Aldrich社製)
D-1:カルボキシルメチルセルロース
D-2:ポリビニルピロリドン
NMP:N-メチルピロリドン
TMP:トルエン/メチルエチルケトン/2-プロパノール(1/1/1)
実施例1のグラフェンナノプレートレットxGnP-C-750と鉄フタロシアニン P-26をカソード用炭素触媒に変更した以外は、実施例A-1と同様の方法でバイオ燃料電池カソード用触媒インキを作製し、実施例B-1と同様の方法でバイオ燃料電池用カソードを作製した。
尚、カソード用炭素触媒は、ケッチェンブラックEC-600JD(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)とコバルトフタロシアニン(東京化成社製)を、質量比1/0.5(ケッチェンブラック/コバルトフタロシアニン)となるようにそれぞれ秤量し、乾式混合を行い、混合物を得た後、上記混合物をアルミナ製るつぼに充填し、電気炉にて窒素雰囲気下、700℃で2時間熱処理を行って合成したものを使用した。
[実施例C1~C9、比較例C1~C3]
上記で作製したバイオ燃料電池カソード、バイオ燃料電池アノードと、アスコルビン酸が10mMとなるように添加した100mMリン酸緩衝液(pH7.0)を電解液としてろ紙に浸み込ませたセパレーターをカソードとアノードの間に挟んで還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池を作製し、室温下でLSV測定により出力特性を評価した。出力特性は、LSV測定から算出した比較例1の最大出力に対する各実施例における最大出力の百分率(%)で比較し、以下の基準で評価した。
◎:比較例1に対する最大出力の百分率が300%以上。
〇:比較例1に対する最大出力の百分率が200%以上、300%未満。
○△:比較例1に対する最大出力の百分率が150%以上、200%未満。
△:比較例1に対する最大出力の百分率が100%以上150%未満。
×:比較例1に対する最大出力の百分率が100%未満。
一方、実施例C1~C9の結果から、比較例に対して良好な出力特性を示すバイオ燃料電池として作動することも明らかとなった。本発明の導電性炭素材料と窒素含有複素環化合物を組み合わせたバイオ燃料電池アノード用触媒インキにより、還元性有機物に対して良好な触媒特性を実現出来たことが明らかとなった。
Claims (5)
- 少なくとも導電性炭素材料(A)と、窒素含有複素環化合物(B)と、を含んでなる、還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物であって、
前記窒素含有複素環化合物(B)が、分子量250以上、5000未満であり、
前記バイオ燃料電池に用いられる燃料が、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、エリソルビン酸、エリソルビン酸誘導体、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチド誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上の有機物を含む、バイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物。 - 導電性炭素材料(A)と窒素含有複素環化合物(B)との質量比が5:95~99:1であることを特徴とする請求項1記載のバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物。
- さらに、バインダー樹脂(C)を含んでなる請求項1又は2に記載のバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物。
- 請求項1~3いずれかに記載のバイオ燃料電池アノード用触媒インキ組成物より形成された塗膜を有する還元性有機物を燃料とするバイオ燃料電池アノード。
- 請求項4記載のバイオ燃料電池アノードと、バイオ燃料電池カソードと、還元性有機物を含む燃料とを含んでなるバイオ燃料電池デバイスであって、
前記燃料が、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、エリソルビン酸、エリソルビン酸誘導体、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチド誘導体からなる群より選択される少なくとも1種以上の有機物を含むことを特徴とするバイオ燃料電池デバイス。
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