JP7367751B2 - ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
また、複雑な構造の部品では、別々に成形した部品同士を後から組み合わせる工法が採られることが多い。たとえば、一方の部品にフック形状を設け、それを他方の部品の穴を通して引っ掛けて固定する方法や、外側に凸部を設けた筒状部品を、内側に凹部を設けた他方の筒状部品の中に圧入し、凸部と凹部の噛み合わせにより固定する方法などがある。
しかしながら、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、靱性が高くないため、薄肉成形品を組み合わせる際、製品形状によっては割れが生じる場合がある。そのため、製品形状・厚み設計の自由度に制限があった。加えて、熱がかかった状態で荷重がかかるような構造体も多くなっており、それに耐えうるために荷重たわみ温度の高い(1.8MPaにおける荷重たわみ温度が60℃以上である)材料が求められている。
[1] 固有粘度(IV)が1.0~1.3dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)85~99.5質量部、ポリエステルエラストマー(B)0~13質量部、及び平均粒子径が5μm以下であるタルク(C)0.05~2質量部((A)、(B)及び(C)成分の合計が100質量部である)を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、ポリエステルエラストマー(B)を含有する場合は、該ポリエステルエラストマー(B)を構成するハードセグメント/ソフトセグメントの質量比が85/15~50/50であることを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[2] 前記固有粘度(IV)が1.0~1.3dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)を86~96質量部含有し、前記ポリエステルエラストマー(B)を3~13質量部含有する[1]に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[3] 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形して得られる成形品の130℃、3時間熱処理後の1.8MPaにおける荷重たわみ温度が60℃以上であることを特徴とする[1]または[2]に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[4] 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形して得られる厚さ4mmの成形品の引張破断伸度が50%以上であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の各成分の含有量(配合量)は、特に但し書きをしない限り、固有粘度(IV)が1.0~1.3dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、ポリエステルエラストマー(B)、及び平均粒子径が5μm以下であるタルク(C)の合計を100質量部としたときの量で表している。本明細書では以降、「固有粘度(IV)が1.0~1.3dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)」を「ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)」と、「平均粒子径が5μm以下であるタルク(C)」を「タルク(C)」と、略して記載する。本発明においては、各成分の配合量(配合比率)がそのまま、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の含有量(含有比率)となる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジカルボン酸と、1、4-ブタンジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジオールとを重縮合反応させるなどの一般的な重合方法によって得ることができる重合体である。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、ブチレンテレフタレートの繰返し単位が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端カルボキシル基量(酸価)は、40eq/ton以下であることが好ましく、より好ましくは30eq/ton以下であり、さらに好ましくは25eq/ton以下である。
本発明で使用するポリエステルエラストマー(B)とは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族および/または脂環族のグリコールを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステルおよび脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントが結合したポリエステルエラストマーであることが好ましい。
また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペートなどが挙げられる。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、平均粒子径が5μm以下であるタルク(C)を含有する。
タルクはポリエステル樹脂に対して結晶核剤効果を有し、少量の添加でポリエステル樹脂の耐熱性を向上させることができる。ただし粒子径が大きいと、樹脂組成物中の欠点となり、引張伸度が低下する問題がある。そのため、本発明に用いられるタルク(C)の平均子径は5μm以下である。タルク(C)の平均粒子径(重量(体積)累積粒度分布の50%径)は、レーザー回折法により測定される。タルク(C)の平均粒子径は、好ましくは3μm以下である。タルク(C)の平均粒子径の下限は、凝集(分散不良)抑制、取り扱い性(フィードのしやすさ等)の点から、0.05μmである。
本発明におけるタルク(C)は、表面処理していなくても、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、特性を低下させることなく十分に分散させることが可能であるが、さらに分散性を高めたい場合、表面処理を施してもよい。
その他、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、必要に応じて、本発明としての特性を損なわない範囲において、公知の各種添加剤を含有させることができる。公知の添加剤としては、例えば顔料などの着色剤、離型剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、変性剤、帯電防止剤、難燃剤、染料などが挙げられる。
離型剤としては、長鎖脂肪酸またはそのエステルや金属塩、アマイド系化合物、ポリエチレンワックス、シリコン、ポリエチレンオキシドなどが挙げられる。長鎖脂肪酸としては、特に炭素数12以上が好ましく、例えばステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などが挙げられ、部分的もしくは全カルボン酸が、モノグリコールやポリグリコールによりエステル化されていてもよく、または金属塩を形成していても良い。アマイド系化合物としては、エチレンビステレフタルアミド、メチレンビスステアリルアミドなどが挙げられる。これら離型剤は、単独であるいは混合物として用いても良い。
これら各種添加剤は、前記(A)、(B)及び(C)の合計を100質量部とした時、合計で5質量部まで含有させることができる。ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中、前記(A)、(B)及び(C)の合計で、95質量%以上占めることが好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を製造する製造法としては、上記配合組成にて任意の配合順列で配合した後、タンブラー或いはヘンシェルミキサーなどで混合し、溶融混練される。溶融混練方法は、当業者に周知のいずれかの方法が可能であり、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどが使用できるが、なかでも二軸押出機を使用することが好ましい。また、加工時の揮発成分、樹脂が分解して生じる低分子成分を除去するため、押出機先端のダイヘッドに近いベント口から真空ポンプによる吸引を行うことが望ましい。
0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。(単位:dl/g)
(2)ポリエステルエラストマーの還元粘度
0.05gのサンプルを25mlの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比))に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。(単位:dl/g)
ポリブチレンテレフタレート樹脂(ポリエステルエラストマー)0.5gをベンジルアルコール25mlに溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより測定した。指示薬は、フェノールフタレイン溶液を用いた。(単位:eq/ton)
(4)ポリエステルエラストマーの硬度(表面硬度)
JIS K7215(-1986)に準じて測定した。試験片は、シリンダー温度240℃、金型温度50℃にて作製した射出成形品(長さ100mm、幅100mm、厚み2mm)を3枚重ねたものを使用し、測定圧5000g、タイプDの圧子を用いたデュロメーターにより測定し、測定開始5秒後の値をD硬度(ショアD硬度)とした。
ISO-75に準じて、HDTテスター(東洋精機社製、3M-2)を用いて、測定した。試験片は、シリンダー温度250℃、金型温度50℃の条件で、ISOダンベル試験片(厚さ4mm)を射出成形したのち、切削し、ギアオーブンにて空気雰囲気下、130℃で3時間熱処理したものを用いた。(射出成形時にポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の結晶化が十分に進まなかった場合、荷重たわみ温度が(組成から想定される値に対し)低く出る場合がある。上記熱処理により、十分に結晶化させることができるため、想定値と測定値の乖離を極めて小さくすることができる。)
(6)引張破断伸度(厚み4mm)
ISO-527に準じて、オートグラフ(島津製作所社製、AG-IS)を用いて、ロードセル20kN、つかみ具間距離115mm、標線間距離50mm、引張速度5mm/minにて試験した。試験片は、シリンダー温度250℃、金型温度50℃の条件で、ISOダンベル試験片(厚さ4mm)を射出成形した。
(7)引張破断伸度(厚み0.3mm)(薄肉試験片における評価)
オートグラフ(島津製作所社製、AG-IS)を用いて、ロードセル1kN、つかみ具間距離90mm、標線間距離50mm、引張速度50mm/minにて試験した。試験片は、長さ125mm×幅13mm×厚み0.3mmの短冊試験片をシリンダー温度250℃、金型温度50℃の条件で射出成形した。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A);
(A-1)ポリブチレンテレフタレート樹脂: 固有粘度1.23dl/g、酸価23eq/ton
(A-2)ポリブチレンテレフタレート樹脂: 固有粘度1.1dl/g、酸価16eq/ton
(A-3)ポリブチレンテレフタレート樹脂: 固有粘度0.92dl/g、酸価12eq/ton
(A-4)ポリブチレンテレフタレート樹脂: 固有粘度0.83dl/g、酸価10eq/ton
(B-1)テレフタル酸(TPA)//1,4-ブタンジオール(BD)/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量1000)=100//93/7(モル%)のポリエステルエラストマー(ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比=75/25): 融点210℃、還元粘度1.5dl/g、酸価50eq/ton
(B-2)テレフタル酸(TPA)//1,4-ブタンジオール(BD)/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量1000)=100//84/16(モル%)のポリエステルエラストマー(ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比=57/43): 融点198℃、還元粘度1.9dl/g、酸価35eq/ton
(B-3)テレフタル酸(TPA)//1,4-ブタンジオール(BD)/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量1000)=100//72/28(モル%)のポリエステルエラストマー(ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比=40/60): 融点169℃、還元粘度2.2dl/g、酸価41eq/ton
(B-4)テレフタル酸(TPA)//1,4-ブタンジオール(BD)/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量2000)=100//75/25(モル%)のポリエステルエラストマー(ハードセグメント/ソフトセグメントの質量比=30/70): 融点177℃、還元粘度2.5dl/g、酸価28eq/ton
(C-1)タルク(平均粒子径:2.5μm):ミクロエースSG-95(日本タルク社製)
(C-2)タルク(平均粒子径:4.0μm):ミクロエースP-6(日本タルク社製)
(C-3)タルク(平均粒子径:12.0μm):タルカンPK-C(林化成社製)
酸化防止剤: Irganox1010(BASF社製)
離型剤: リコルブWE40(クラリアントジャパン社製)
表1に示した通りに配合し、シリンダー温度250℃に設定した同方向二軸押出機で溶融混練を行い、得られたストランドを水冷し、ペレット化した。得られた各ペレットを130℃で4時間乾燥し、上述の各評価試験に用いた。結果を表1に記す。
比較例1~9は、本発明における規定の範囲を満足していないことにより、荷重たわみ温度、引張破断伸度のいずれか、もしくは両方が低い値となった。
Claims (3)
- 固有粘度(IV)が1.0~1.3dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)86~96質量部、ポリエステルエラストマー(B)3~13質量部、及び平均粒子径が5μm以下であるタルク(C)0.05~2質量部((A)、(B)及び(C)成分の合計が100質量部である)を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、ポリエステルエラストマー(B)を含有する場合は、該ポリエステルエラストマー(B)を構成するハードセグメント/ソフトセグメントの質量比が85/15~50/50であることを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形して得られる成形品の130℃、3時間熱処理後の1.8MPaにおける荷重たわみ温度が60℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- 前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形して得られる厚さ4mmの成形品の引張破断伸度が50%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
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