以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本実施形態に係るレンズユニット1の、光軸Aに沿った断面図である。ここでは、物体(Ob)側は図中上側、像(Im)側は図中下側であり、撮像素子100は図中最下部に位置する。レンズL1~L7の各々は、鏡筒10に対して直接あるいは間接的に固定される。図1においては、各レンズ、絞り20、あるいは各レンズと鏡筒10の間を固定するための構成が主に記載されており、実際には撮像素子100と鏡筒10の位置関係を固定するための構造も設けられているが、その記載は省略されている。
撮像素子100は2次元CMOSイメージセンサであり、各画素は光軸Aと垂直な面内で2次元に配列されており、実際には撮像素子100はカバーガラス(図示せず)で覆われている。図1において、第1レンズL1から第7レンズL7を備えるレンズユニット1が構成される。レンズユニット1は、撮像対象の可視光の画像を所望の視野、所望の形態で撮像素子100上(像面)に結像させるように構成される。
図1において、最も物体側(図中上側)に設けられた第1レンズL1は、魚眼レンズであり、主にこれによって、撮像装置の視野等が定まる。これよりも撮像素子100側(像側)に、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5、第6レンズL6、第7レンズL7が順次配置されている。各レンズは、光軸Aの周りで略対称な形状を具備する。また、光束を制限するための絞り20が第4レンズL4と第5レンズL5の間に設けられている。また、不要な光を除去するための遮光板も第2レンズL2と第3レンズL3の間に適宜設けられるが、その記載は図1では省略されている。
また、図2(a)は、鏡筒10のみの光軸Aに沿った断面図、図2(b)は、鏡筒10を図1における斜め上側(物体側)からみた斜視図である。この鏡筒10の物体側(図中上側)に、内周面が略円筒形状の空洞部である第1収容部10Aが設けられ、第1収容部10Aの像側の底面は第1レンズL1と当接する第1載置部11である。また、第1載置部11よりも像側(図中下側)には、第1収容部10Aと同軸とされ、第1収容部10Aより小径とされた略円筒形状の空洞部である第2収容部10Bが設けられ、第2収容部10Bの像側の底面は接合レンズL60(後述する像側レンズ)と当接する第2載置部(載置面)12である。第1収容部10A、第2収容部10Bの中心軸は共通とされ、光軸Aと等しい。また、図2(a)に示されるように、実際には第2収容部10Bの内周面は物体側から像側に向かって徐々に小さくされる。
図1において、各レンズにおける物体側、像側のレンズ面(画像を形成する光が通過する面)は、レンズユニット1が所望の結像特性をもたらすように、適宜曲面(凸曲面、凹曲面)加工されている。以下では、各レンズにおける物体側のレンズ面を第1表面R1、像側のレンズ面を第2表面R2と呼称する。また、レンズ面の形状(凸曲面又は凹曲面)としては、第1表面R1の形状については物体側からみた形状、第2表面R2の形状については像側からみた形状を、それぞれ意味するものとする。
一般的に、このような小型の撮像装置におけるレンズを構成する材料としては、ガラスと樹脂材料の2種類がある。前者は機械的強度が高いが高価であり、後者は機械的強度は低いが安価である。また、ガラスの熱膨張係数は樹脂材料より小さいため、高温時における熱膨張に起因する形状や位置の微細な変化が結像特性(焦点位置の変化等)に与える影響が大きくなるレンズは、ガラス製のレンズとすることが好ましい。このため、レンズユニット1を高性能かつ安価とするためには、ガラス製のものが好ましいレンズのみガラス製とし、他のレンズを樹脂材料製とすることが好ましい。
この観点において、本実施の形態では、最も物体側に配置された第1レンズL1は撮像装置1の最表面に位置するために、傷が付きにくいガラス製とされる。また、絞り20と隣接するレンズ(第4レンズL4及び第5レンズL5)は、温度変化に起因する焦点距離の変化が顕著に表れるため、いずれか一方(本実施の形態では第5レンズL5)がガラス製とされる。他のレンズとしては、安価な樹脂材料製のものが用いられる。
第1レンズL1は、その物体側のレンズ面L1R1が凸曲面、その像側のレンズ面L1R2が凹曲面とされた負レンズである。第1レンズL1の上面側では、レンズ面L1R1がほぼ全体を占めている。第1レンズL1の下面側(像側)において、レンズ面L2R2の外側には、光軸Aと垂直な平面で構成された第1レンズ第1下面L1Aが設けられる。第1レンズ第1下面L1Aの更に外側には、第1レンズ第1下面L1Aと平行かつ第1下面L1Aよりも物体側(図中上側)に位置する第1レンズ第2下面L1Bが設けられる。また、第1レンズL1の最外周部は、光軸Aを中心軸とする円筒形状の第1レンズ外周面L1Cを構成する。これらの面のうち、光学的に使用されるのは、レンズ面L1R1、L1R2であり、他の面は、第1レンズL1を鏡筒10に対して固定するために用いられる。
図1において、鏡筒10の上端側は、第1レンズL1の物体側への移動を規制するように光軸A(中心)側に向かって屈曲した第1レンズ係止部13となっている。また、第1レンズ第1下面L1Aは、鏡筒10の第1載置面11と当接する。このため、第1レンズL1の鏡筒10に対する光軸A方向における位置関係は、物体側(図中上側)では第1レンズ係止部13によって定まり、像側(図中下側)では第1載置面11により定まる。この際、第1レンズ第1下面L1Aよりも外側においては、第1レンズ第2下面L1Bと第1載置面11との隙間に、光軸A方向と垂直な方向で圧縮されて弾性変形したリング状のOリング30が配されることにより、鏡筒10内部における防水機能が得られる。なお、上記のような第1レンズ係止部13の形状は、第1レンズl1を鏡筒10に固定するために加工した後の形状であり、固定前における鏡筒10の上端部側の形状は、図2(a)に示されるように、上側から第1レンズL1を図1に示されるように鏡筒10内に挿入可能な形状とされる。
また、第1レンズ外周面L1Cは、鏡筒10における第1収容部10Aの内周面と当接する。これによって、第1レンズL1と鏡筒10の光軸Aと垂直な方向における位置関係が定まる。すなわち、上記の構成により、第1レンズL1は鏡筒10に対して固定される。
第2レンズL2は、その物体側のレンズ面L2R1が凸曲面、その像側のレンズ面L2R2が凹曲面とされた負レンズである。第2レンズL2の物体側(図中上側)において、レンズ面L2R1の外側には、光軸Aと垂直でありレンズ面L2R1よりも像側(図中下側)に位置する平面である第2レンズ第1上面L2Aが設けられる。また、第2レンズL2の像側(図中下側)において、レンズ面L2R2よりも外側には、光軸Aと平行な面及び垂直な面で構成された段差部(係合構造)L2Bが設けられる。第2レンズL2の最外周を構成する面である第2レンズ外周面L2Cは、第2収容部10Bの内周面と当接する。第2レンズ外周面L2Cは、その光軸A周りの内径が像側に向かって徐々に小さくなるような略円錐面形状に形成されている。これにより、第2レンズL2と鏡筒10の光軸Aと垂直な方向における位置関係は定まる。
また、第1載置部11よりも内側(光軸Aに近い側)かつレンズ面L1R2及びレンズ面L2R1よりも外側の領域において、第2レンズ第1上面L2Aと第1レンズ第2下面L1Bの間には、弾性体で構成され、かつ光軸A方向で薄い弾性部材40が配されている。すなわち、第1レンズL1と第2レンズL2は光軸Aに沿った方向では直接接さず、これらの間には弾性部材40が設けられている。
第3レンズL3は、その物体側のレンズ面L3R1が凹曲面、その像側のレンズ面L3R2が凸曲面とされた正レンズである。第3レンズL3の物体側(図中上側)において、レンズ面L3R1の外側には、第2レンズL2における段差部L2Bと係合するように形成された段差部(係合構造)L3Aが設けられる。また、第3レンズL3の像側(図中下側)において、レンズ面L3R2よりも外側には、光軸Aと平行な面及び垂直な面で構成された段差部(係合構造)L3Bが設けられる。また、第3レンズL3の最外周を構成する略円筒形状の面である第3レンズ外周面L3Cは、第2収容部10Bの内周面とは非接触とされる。
第4レンズL4は、その物体側の面L4R1が凹曲面、その像側の面L4R2が凸曲面とされた正レンズである。第4レンズL4の物体側(図中上側)において、レンズ面L4R1の外側には、第3レンズL3における段差部L3Bと係合するように形成された段差部(係合構造)L4Aが設けられる。また、第4レンズL4の像側(図中下側)において、レンズ面L4R2よりも外側には、後述するレンズホルダ51(第5レンズ体L50)と光軸A方向で当接する第4レンズ下面L4Bが設けられる。また、第4レンズL4の最外周を構成する略円筒形状の面である第4レンズ外周面L4Cは、第2収容部10Bの内周面とは非接触とされる。すなわち、第3レンズL3、第4レンズL4は鏡筒10とは非接触とされる。
前記の通り、第5レンズ(ガラスレンズ)L5はガラス製であり、その物体側の面L5R1が凸曲面、その像側の面L5R2が凸曲面とされた正レンズである。ただし、第5レンズL5は、他のレンズとは異なり、樹脂材料製のレンズホルダ51に圧入固定されて一体化された第5レンズ体(ガラスレンズ体)L50とされた状態で鏡筒10に収容される。すなわち、第5レンズL5は、第5レンズ体L50となった状態で、樹脂材料製である第3レンズL3、第4レンズL4と同様にレンズとして扱われる。
第5レンズ体L50の物体側(図中上側)において、第5レンズL5の外側のレンズホルダ51には、第4レンズL4における第4レンズ下面L4Bと当接するように物体側に突出する物体側凸部(凸部)L50Aが設けられる。また、第5レンズ体L50の像側(図中下側)において、第5レンズL5よりも外側のレンズホルダ51には、像側に向けて突出し、第6レンズL6と当接する像側第1凸部(図1においては図示されず)が設けられる。実際には物体側凸部L50A、像側第1凸部は、それぞれ周方向で複数形成され、これらの構成については後述する。物体側凸部L50Aによって第5レンズ体L50と第4レンズL4の光軸A方向における位置関係が、像側第1凸部によって第5レンズ体L50と第6レンズL6の光軸A方向における位置関係が、それぞれ定まる。
また、第5レンズ体L50の最外周を構成する面である第5レンズ体外周面L50Cは、第2収容部10Bの内周面と当接する。これにより、第5レンズ体L50(第5レンズL5)と鏡筒10の光軸Aと垂直な方向における位置関係は定まる。
第6レンズL6は、その物体側の面L6R1が凹曲面、その像側の面L6R2が凹曲面とされた負レンズである。第7レンズL7は、外径が第6レンズL6よりも小さく、その物体側の面L7R1が凸曲面、その像側の面L7R2が凸曲面とされた正レンズである。また、第6レンズL6、第7レンズL7は対向するレンズ面が嵌合して接合されることにより、最も像側にある接合レンズ(像側レンズ)L60を構成するように設定される。つまり、実質的に最も像側のレンズとなる像側レンズは、第6レンズL6の像側のレンズ面L6R2と第7レンズL7の物体側のレンズ面L7R1とが嵌合して接合された接合レンズL60となる。
接合レンズL60(第6レンズL6)の物体側(図中上側)において、レンズ面L6R1の外側においては、第5レンズ体L50における像側第1凸部と当接する平面である接合レンズ上面L6Aが設けられる。また、接合レンズL60(第6レンズL6)の像側(図中下側)において、レンズ面L7R2よりも外側には、光軸Aと垂直な平面である接合レンズ下面L6Bが設けられる。接合レンズ下面L6Bは、第2載置部(載置面)12と当接する。また、接合レンズ下面L6Bにおける第2載置部12よりも内側には、物体側に向けて凹形状とされた段差部(係合構造)L6Cが設けられる。これに対応して、第7レンズL7には物体側に凸形状とされた段差部(係合構造)L7Aが設けられ、段差部L6Cと段差部L7Aとが係合する。すなわち、接合レンズL60においては、第6レンズL6のレンズ面L6R2、段差部L6Cと第7レンズL7のレンズ面L7R1、段差部L7Aがそれぞれ嵌合した状態で固定され固定されることによって、第6レンズL6、第7レンズL7の光軸A方向及びこれと垂直な方向における位置関係が定まる。
また、接合レンズL60(第6レンズL6)の最外周を構成する面である第6レンズ外周面L6Dは第2収容部10Bの内周面と当接する。第6レンズ外周面L6Dは、その光軸A周りの内径が像側に向かって徐々に小さくなるような略円錐面形状に形成されている。このため、接合レンズL60の光軸Aに沿った方向における位置は、像側では鏡筒10(第2載置部12)によって制限される。
この場合、第5レンズ体L50(像側第1凸部L50B)は像側で接合レンズL60に係止されるため、第5レンズ体L50の光軸Aに沿った方向における位置は、像側では接合レンズL60を介して第2載置部12(鏡筒10)によって制限される。
また、前記の構成において、第2レンズL2、第5レンズ体L50(第5レンズL5)、接合レンズL60は、それぞれの外周面が鏡筒10と当接することによって、光軸Aと垂直な方向におけるそれぞれの鏡筒10に対する位置関係が定まる。一方、第3レンズL3と鏡筒10の光軸Aと垂直な方向における位置関係は、段差部L2Bと段差部L3Aとが係合することによって、第2レンズL2を介して間接的に定まる。同様に、第4レンズL5と鏡筒10の光軸Aと垂直な方向における位置関係は、段差部L3Bと段差部L4Aとが係合することによって、第2レンズL2、第3レンズL3を介して間接的に定まる。
すなわち、上記の構成において、第2レンズL2~接合レンズL60(第7レンズL7)のうち、第2レンズL2、第5レンズL5(第5レンズ体L50)、接合レンズL60は、その外周部が鏡筒10における第2収容部10Bの内周面と当接する接触レンズとなる。これらの接触レンズは、これにより、光軸Aと垂直な方向における鏡筒10との間の位置関係が固定される。一方、第3レンズL3、第4レンズL4は、第2収容部10Bの内周面とは直接接触しない非接触レンズとなる。非接触レンズは、上記のような段差部(係合構造)を介してその物体側、像側の接触レンズと直接あるいは間接的に係合することによって接触レンズとの間の光軸Aと垂直な方向における位置関係が固定されることによって、この方向での鏡筒10との間の位置関係が固定される。これにより、第2レンズL2~接合レンズL60(第7レンズL7)の全ての、光軸Aと垂直な方向における鏡筒10との間の位置関係が固定される。
一方、第3レンズL3、第4レンズL4の外周面は第2収容部10Bの内周面とは非接触とされるため、第3レンズL3、第4レンズL4と鏡筒10の熱膨張差に起因して第3レンズL3、第4レンズL4(レンズ系)、鏡筒10に対して力が加わることが抑制される。このため、温度変化が結像特性に与える悪影響が低減される。
図3は、このレンズユニット1の分解斜視図であり、ここでは、図1で記載が省略された遮光板21も記載されている。ここでは、接合レンズL60、第5レンズ体L50、絞り20、第4レンズL4、第3レンズL3、遮光板21、第2レンズL2、弾性部材40、Oリング30、第1レンズL1が図中上側(物体側)から鏡筒10に対して順次装着される。図示されるように、弾性部材40、Oリング30は、環状とされる。
鏡筒10の材料としては、対候性に優れた結晶性プラスチック(ポリエチレン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン)が好ましく用いられる。一方、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第6レンズL6、第7レンズL7は、レンズとしての性能(光透過性や成形性)に優れる非晶性プラスチック(ポリカーボネート等)で構成される。また、レンズホルダ51は第4レンズL4等と同じ非晶性プラスチックで構成されるため、第5レンズ体L50は、全体としては第4レンズL4等と同様のプラスチックレンズとして取り扱うことができる。前記の通り、第1レンズL1、第5レンズL5はガラス製とされる。
図1の構成において、光軸A方向においては、各レンズは、絞り20を挟んで、物体側にある第1レンズ群(第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4)と第2レンズ群(第5レンズL5(第5レンズ体L50)、接合レンズ(像側レンズ)L60(第6レンズL6、第7レンズL7))に大別される。このうち、絞り20が結像特性に与える作用に対しては、絞り20と物体側で隣接する第1レンズ群のうち最も像側にあるレンズ(物体側隣接レンズ)となる第4レンズL4、絞り20と像側で隣接する第2レンズ群のうち最も物体側にあるレンズ(像側隣接レンズ)となる第5レンズL5(第5レンズ体L50)が、大きな影響を与える。
図3は、このレンズユニット1の分解斜視図であり、ここでは、図1で記載が省略された遮光板61も記載されている。ここでは、接合レンズL60、第5レンズ体L50、絞り60、第4レンズL4、第3レンズL3、遮光板61、第2レンズL2、弾性部材30、Oリング20、第1レンズL1が図中上側(物体側)から鏡筒10に対して順次装着される。図示されるように、弾性部材30、Oリング20は、環状に形成される。また、絞り60は、第5レンズ体L50と第4レンズL4の位置関係を前記の通りとした状態で第5レンズ体L50と第4レンズL4の間に配され、遮光板61は、第3レンズL3と第2レンズL2の位置関係を前記の通りとした状態で第3レンズL3と第2レンズL2の間に配される。
ここで、鏡筒10に対する第5レンズL5の位置関係、第5レンズL5と第4レンズL4の位置関係、第5レンズL5と接合レンズL60の位置関係の精度は、結像特性に大きな影響を与える。前記の通り、第5レンズL5はレンズホルダ51に固定され、鏡筒10、第4レンズL4、接合レンズL60に対する位置関係が固定されるのは、実際には第5レンズL5ではなく、レンズホルダ51である。このため、上記のように第5レンズL5の位置を精密に定めるためには、第5レンズL5のレンズホルダ51に対する位置関係を精密に定めることが要求される。以下に、これらの位置関係を特に高精度で定めるための構造について説明する。なお、以下においては図1における各構成要素(特に第5レンズL5、レンズホルダ51)についての説明が行われるが、この場合における光軸A、物体側、像側とは、この構成要素が図1の状態に配置された場合におけるものをそれぞれ意味する。
この位置関係を精密に定めるために、第5レンズL5のレンズホルダ51に対する位置が、第5レンズL5がレンズホルダ51に対して圧入され、互いに当接する(係止される)部分が設けられることによって定まる構造とされる。ただし、この際に、第5レンズL5とレンズホルダ51との間に狭い空隙も形成されるように設定され、この空隙に固化前の接着剤が導入されて固化することによって、両者の間が固定される。このような固定を容易、かつ再現性よく行うことができるような構造が採用される。ここで、前記のように第5レンズL5はガラス製であるのに対して、レンズホルダ51は樹脂材料製であるため成形加工が容易である。このため、このような固定を行わせるための各種の構造は、主にレンズホルダ51側に形成され、第5レンズL5は主に光学的な機能を有する比較的単純な形状とされる。
ここでは、まず、参考例となるレンズホルダ151(第5レンズ体L150)について説明する。このレンズホルダ151は、前記のレンズホルダ51と同様に、第5レンズL5と組み合わせて用いられ、上記のように固定時に自動的に両者の位置関係が定まるような構成とされる。以下では、図1、3におけるレンズホルダ51が、このレンズホルダ151に置換されたものとして説明する。図4は、このレンズホルダ151の物体側からみた斜視図である。ここで、レンズホルダ151においては、光軸Aに沿った一方の側(以下の例では物体側)から他方の側(以下の例では像側)に向けて掘下げられた、第5レンズL5を収容するレンズ収容孔151Aが形成される。第5レンズL5は、レンズ収容孔151Aを構成する光軸Aと略平行な内面と当接することによってレンズホルダ151に対する光軸Aと垂直な方向の位置関係が定まり、レンズ収容孔151Aを構成する光軸Aと略垂直な底面(像側の面)と当接することによってレンズホルダ151に対する光軸A方向の位置関係が定まるように、レンズ収容孔151Aに圧入される。一方、これらが当接する箇所は分散した複数の箇所とされ、これら以外の箇所には、第5レンズL5とレンズホルダ151との間に空隙が形成され、この空隙内の接着剤によって、第5レンズL5とレンズホルダ151との間を機械的に固定することができる。
図4においては、第5レンズL5と当接する光軸Aと平行な内面は、当接面151Bである。図4においては、紙面手前側を向く当接面151Bが一つのみ表示されているが、実際には当接面151Bは、光軸Aの周りの周方向において等間隔(位相差120°)で3つ形成されている。また、像側で第5レンズL5と当接する(第5レンズL5を係止する)表面を具備する像側係止部(レンズ係止部)151Cは、周方向において当接面151Bが形成されていない箇所において3つ(図中で表示されるのはそのうち2つ)等間隔で形成されている。このため、第5レンズL5が3つの当接面151B、3つの像側係止部151Cと当接した状態で、第5レンズL5とレンズホルダ151との間の位置関係が適正となるように、当接面151B、像側係止部151Cは形成される。また、像側係止部151Cは、第5レンズL5を係止しつつ、第5レンズL5において光学的に機能するレンズ面L5R2には当接しないように、その光軸A側へ向けての突出量は調整される。
一方、当接面151B、像側係止部151C以外の箇所では、第5レンズL5とレンズホルダ151とは直接当接せず、これらの間には狭い空隙が形成され、この空隙に固化前の接着剤を導入した後に固化させれば、上記の位置関係で第5レンズL5をレンズホルダ151に固定することができる。図4において、レンズ収容孔151Aの周囲において、レンズホルダ151の物体側(図中上側)の表面には、レンズ収容孔151Aと連結するように像側に向けて掘下げられた溝である物体側溝(第1の溝)151Dが周方向に3つ形成されている。物体側溝151Dは、周方向において当接面151Bが設けられていない箇所(像側係止部151Cが設けられた箇所)に形成されるため、物体側溝151D内に固化前の接着剤を投入することによって、前記のような空隙内にこの接着剤を導入することができる。また、前記の通り、第5レンズL5は、レンズ収容孔151Aに物体側から収容(圧入)される。この際、特に第5レンズL5の側面が当接面151Bを摺動する際に、微小な切り屑が発生する場合があり、この切り屑が像側係止部151Cの上に存在すると、第5レンズL5の光軸Aに沿った方向における位置精度に悪影響を及ぼす。このため、図4において、周方向において当接面151Bがある箇所と像側係止部151Cがある箇所は重複しないように設定され、周方向において、隣接する像側係止部151Cの間に当接面151Bが形成されている。
一方、図5は、第5レンズL5がレンズホルダ151に固定された状態(第5レンズ体L150)を物体側(a)、像側(b)からみた斜視図である。図5(b)に示されるように、レンズホルダ151における像側の表面においても、前記の物体側溝151Dと同様に、レンズ収容孔151Aと連結するように物体側に向けて掘下げられた溝である像側溝(第2の溝)151Eが周方向に3つ形成されている。ただし、像側溝151Eは、物体側溝151Dとは異なり、周方向において当接面151Bが設けられた箇所に設けられる。このため、前記のような切り屑を像側溝151E内に収容し、これが他の箇所(像側係止部151C等)に移動することを抑制することができる。また、物体側溝151Dと同様に、この中に固化前の接着剤を投入することもできる、あるいは、接着時において余剰となって前記の空隙から溢れた接着剤を収容することができる。
また、図4、図5(a)において、物体側溝151D内におけるレンズ収容孔151A側には、物体側に向けて突出する爪部151Fが、物体側溝151D毎に設けられている。第5レンズL5が組み込まれた図5(a)の状態において、各爪部151Fを光軸A側に向けて屈曲させ、その先端が第5レンズL5の外周部よりも内側(光軸Aに近い側)となるようなカシメ加工を行うことによって、特に接着剤の固化前の状態において第5レンズL5の固定をより確実に行うことができる。あるいは、屈曲後の爪部151Fと第5レンズL5との間の接着剤によって、第5レンズL5の固定をより強固に行うことができる。当接面151Bと同様に、第5レンズL5を周方向の3点で支持することが好ましいために、爪部151Fも周方向で3箇所に形成される。
爪部151Fは第5レンズL5を物体側で係止し、像側係止部151Cは第5レンズL5を像側で係止するため、爪部151Fと像側係止部151Cは、光軸A方向からみて周方向で重複することが好ましい。また、前記のように、周方向において当接面151Bが設けられた箇所には像側係止部151Cが設けられていない。このため、図4に示されるように、結局、爪部151Fと当接面151Bは光軸Aを挟んで対向するようにそれぞれ3箇所に形成され、一つの爪部151Fは周方向における像側係止部151Cの中央部に位置する。また、図4において、物体側溝151Dが形成される領域は像側係止部151Cが形成される領域と周方向において重複する。このため、爪部151Fは物体側溝151Dの中に形成される。
また、図4、図5(a)において、レンズホルダ151におけるレンズ収容孔151A、物体側溝151Dの外側には、周方向において等間隔で8つの物体側凸部(凸部)L150Aが形成されている。物体側凸部L150Aは、図1における物体側凸部L50Aと対応し、前記の通り、図1において物体側凸部L150Aは第4レンズL4の第4レンズ下面L4Bと当接するように形成される。物体側凸部L150Aの物体側への突出量によって、第5レンズL5と第4レンズL4の光軸A方向における位置関係(間隔)を調整することができる。実際には、8つの物体側凸部L150Aは複数のグループに分類され、グループ毎にこの突出量が定められる。このうち、所望の突出量のグループが選択され、このグループよりも突出量の大きなグループの物体側凸部L150Aを機械的に除去すれば、選択されたグループの突出量で、第5レンズL5と第4レンズL4の関係を定めることができる。
また、図5(b)において、レンズホルダ151の像側において、レンズ収容孔151A、像側溝151Eの外側には、周方向において等間隔で3つの像側第1凸部L150Bが形成されている。像側第1凸部L150Bは、前記の通り、図1において接合レンズL60の接合レンズ上面L6Aと当接することによって、第5レンズL5と接合レンズL60の光軸A方向における位置関係(間隔)が定まる。また、像側第1凸部L150Bよりも内側(レンズ収容孔151A側)にも、周方向において等間隔で3つの像側第2凸部L150Cが形成されている。像側第2凸部L150Cは、第5レンズL5をレンズホルダ151に物体側から組み込む際に、レンズホルダ151をステージに固定する際の脚部として用いられ、図1のレンズユニット1内においては他の構成要素(特に接合レンズL60)とは当接しないため、製造時においてのみ機能し、レンズユニット1内では機能しない。
上記のように、レンズホルダ151には各種の構造が形成される。レンズホルダ151は樹脂材料で形成されるため、ガラスで形成された第5レンズL5とは異なり、金型を用いた樹脂成型でこのようなレンズホルダ151を容易に製造することができる。
一方、このようなレンズホルダ151を製造するに際して、上記の形状に特有の問題点が発生する。以下に、この点について説明する。図6は、図4における、像側係止部151Cの端部付近に対応する領域P内の構造を単純化して示し、かつ拡大した図である。ここで、像側係止部151Cは、レンズ収容孔内面151A1から光軸A側に向けて突出するように形成され、物体側を向く像側係止部上面151C1、光軸A側で光軸A側を向く端面である像側係止部内周面151C2、周方向における端面となる像側係止部端面151C3を具備する。第5レンズL5は光軸Aと垂直に近い像側係止部上面151C1で係止される。レンズ収容孔内面151A1、像側係止部内周面151C2、像側係止部端面151C3は光軸Aに対して略平行である。これらの面が適正に形成されるように、レンズホルダ151は金型を用いて成形される。
このような形状のレンズホルダ151を金型を用いて成形するためには、複数の金型が組み合わせて用いられる。この場合、金型の境界は、成形される構造の端部であり、かつ面と面とが交わる辺となる部分となるように設定されるのが一般的である。図6の構造においては、このような部分は、像側係止部上面151C1と像側係止部端面151C3とが交わる辺、像側係止部上面151C1と像側係止部内周面151C2とが交わる辺に対応する。このような金型の境界となる部分には、金型の境界に染み込んだ固化前の樹脂材料によって、図6に示されるような、像側係止部端面151C3に沿ったバリBと、像側係止部内周面151C2に沿ったバリBが発生しやすい。このようなバリBが像側係止部上面151C1と第5レンズL5の間に存在すると、第5レンズL5のレンズホルダ151に対する位置関係に悪影響を及ぼす。
ここで、前記の通り第5レンズL5の像側のレンズ面L5R2は凸曲面であり、このうち、光学的に機能する表面と像側係止部上面151C1とは当接しないように設定される。このため、一般的には、像側係止部上面151C1は、製造が容易な円錐面形状とし、このうち光軸Aに近い側は第5レンズL5と当接しないような形状とされる。この場合には、実際には第5レンズL5は像側係止部上面151C1における光軸Aから離れた領域(レンズ収容孔内面151A1に近い領域)で係止される。このため、図6における像側係止部内周面151C2に沿って形成されるバリBが、第5レンズL5のレンズホルダ151に対する位置関係に悪影響を及ぼす可能性は低い。
一方、前記のように像側係止部上面151C1を円錐面形状とした場合においても、像側係止部端面151C3近くにおいて、像側係止部上面151C1のレンズ収容孔内面151A1に近い領域は、第5レンズL5と当接する。このため、図6における像側係止部端面151C3に沿って形成されるバリBは、第5レンズL5のレンズホルダ151に対する位置関係に悪影響を及ぼす。一方、前記のように、像側係止部151Cを3箇所に分断して形成するために、像側係止部端面151C3は必然的に形成される。このため、像側係止部端面151C3に沿って形成されるバリBは形成されないことが望ましいが、前記の通り、金型を複数組み合わせて成形を行う際には、この部分でのバリBが形成されることを抑制することは困難である。
これに対して、図7、図8(a)(b)、図9は、図4、図5(a)(b)、図6にそれぞれ対応させて、本発明の実施の形態に係るレンズユニット1において用いられるレンズホルダ51あるいは第5レンズ体L50を示す図である。なお、図5(a)では爪部151Fが前記のようなカシメ加工される前の状態が示されていたのに対し、図8(a)では爪部51Fがカシメ加工された後の状態が示されている。
このレンズホルダ51においても、前記のレンズホルダ151と同様に、第5レンズL5を収容するレンズ収容孔51Aが形成され、第5レンズL5は、レンズ収容孔51Aを構成する光軸Aと略平行な内面と当接することによってレンズホルダ51に対する光軸Aと垂直な方向の位置関係が定まり、レンズ収容孔51Aを構成する光軸Aと略垂直な底面(像側の面)と当接することによってレンズホルダ51に対する光軸A方向の位置関係が定まるように、レンズ収容孔51Aに圧入される。一方、これらが当接する箇所以外の箇所には、第5レンズL5とレンズホルダ51との間に空隙が形成され、この空隙内の接着剤によって、第5レンズL5とレンズホルダ51との間を機械的に固定することができる。
このため、図7において、このレンズホルダ51においても、前記のレンズホルダ151と同様に、3つの当接面51B、3つの像側係止部51Cが設けられている。周方向において当接面51Bが形成されていない領域に像側係止部51Cが設けられている点についても同様である。また、図7において、周方向において当接面51Bがある領域には爪部51Fも同様に設けられている。また、このレンズホルダ51においても、物体側に物体側溝(第1の溝)51Dが、像側に像側溝(第2の溝)51Eが形成されている。ただし、特に物体側溝51Dの構成は、前記のレンズホルダ151における物体側溝151Dとは異なる。この点については後述する。また、前記のレンズホルダ151と同様に、物体側(図7、図8(a))においては物体側凸部L50Aが、像側(図8(b)においては像側第1凸部L50B、像側第2凸部L50Cが、それぞれ形成されている。ただし、前記のレンズホルダ151においては物体側凸部L150A、像側第1凸部L150Bは周方向で8個、3個形成されていたのに対し、このレンズホルダ51においては物体側凸部L50A、像側第1凸部L50Bは周方向で16個、4個形成されている。像側第2凸部L50Cについては、前記のレンズホルダ151における像側第2凸部L150Cと同様である。
ここで用いられる像側係止部51Cの形状は、前記の像側係止部151Cの形状とは異なる。以下に、この点について説明する。図9に示されるように、図7に示された領域Pにおいて、像側係止部51Cは、レンズ収容孔内面51A1から光軸A側に向けて突出するように形成され、物体側を向き第5レンズL5を係止する像側係止部上面51C1、光軸A側で光軸A側を向く像側係止部内周面51C2、周方向における端面となる像側係止部端面51C3が設けられる。ただし、前記のレンズホルダ151とは異なり、このレンズホルダ51における像側係止部51Cには、像側からみた高さが像側係止部上面51C1よりも低く像側係止部上面51C1と略平行な像側係止部端部上面51C4と、像側係止部上面51C1及び像側係止部端部上面51C4につながり像側係止部端面51C3と略平行な像側係止部端部上側端面51C5とが形成されるような段部が形成される。
このような段部が設けられた像側係止部51Cを前記の場合と同様に金型を用いた成形加工によって形成する場合には、金型の境界を、像側係止部端面51C3と像側係止部端部上面51C4とが交わる辺とすることができる。この場合には、図9に示されるように、この辺に沿ってバリBが形成される。しかしながら、このバリBは、像側係止部上面51C1よりも低い(より像側にある)ため、このバリBが第5レンズL5と当接する可能性は低い。一方、前記の通り、像側係止部内周面51C2に沿って形成されるバリBが第5レンズL5のレンズホルダ51に対する位置関係に悪影響を及ぼす可能性は低い。このため、このレンズホルダ51を用いた場合には、バリBが発生した場合であっても第5レンズL5とレンズホルダ51の間の位置関係を高精度で維持することができる。
また、図10は、図9の構造の2つの変形例となる像側係止部の構造を、図9に対応させて示す図である。図10(a)に示された像側係止部251C(レンズホルダ251)においては、周方向における端部側に上記と同様の段部が形成されていることに加え、像側係止部内周面51C2と像側係止部上面51C1との間にも、上記と同様の段部が形成されている。すなわち、このレンズホルダ251における像側係止部251Cには、端部側における前記のような像側係止部端部上面51C4と像側係止部端部上側端面51C5とが形成されるような段部に加え、内側(光軸A側)において、像側からみた高さが像側係止部上面51C1よりも低く像側係止部上面51C1と略平行な像側係止部内側上面51C6と、像側係止部上面51C1及び像側係止部内側上面51C6につながり像側係止部内周面51C2と略平行な像側係止部外側内周面51C7とが形成されるような段部が形成される。
この場合においては、図9の場合と同様に、像側係止部端面51C3と像側係止部端部上面51C4とが交わる辺に沿ってバリBが形成されると共に、像側係止部内周面51C2と像側係止部内側上面51C6とが交わる辺に沿ってバリBが形成される。どちらのバリBも、像側係止部上面51C1よりも低い位置に形成されるため、これらのバリBが第5レンズL5と当接する可能性は低い。
一方、図10(b)に示された像側係止部351C(レンズホルダ351)においては、図9における段部の代わりに、端部に向かうに従って像側係止部上面51C1よりも像側に下降する傾斜面51C8が形成されている。この場合においても、傾斜面51C8と像側係止部端面51C3とが交わる辺に沿ってバリBが形成されるが、このバリBは像側係止部上面51C1よりも低い位置に形成されるため、このバリBが第5レンズL5と当接する可能性は低い。
このように、像側係止部における周方向の端部、あるいはこれに加えて内側の端部に上記のような段部や傾斜面を形成することによって、第5レンズL5のレンズホルダに対する位置関係を高精度で維持することができる。
また、上記のレンズホルダ51においては、第5レンズL5の固定を確実に行わせるための構造が形成されている。これについて以下に説明する。図11、図12は、それぞれ第5レンズL5がレンズホルダ51に対して固定された第5レンズ体L50の上面図(物体側からみた図)、下面図(像側からみた図)であり、図13、図14は、それぞれそのX-X方向の断面図、Y-Y方向の断面図である。ここで、第5レンズL5を固定するための接着剤の記載は図11、図12では省略されている。また、図13、図14は、第5レンズ体L50の光軸Aに沿った異なる2つの方向の断面図となっている。
前記のレンズホルダ151における場合と同様に、このレンズホルダ51においても、第5レンズL5を3点で支持するために当接面51Bが周方向における3箇所に形成されている。同様に、爪部51Fも3箇所に形成され、両者が光軸Aを挟んで対向するように配置されている点についても同様である。また、周方向において像側係止部51Cは当接面51Bが形成されていない領域に形成されているため、爪部51Fが周方向における像側係止部51Cの中央部に形成されている点についても同様である。
ただし、前記のレンズホルダ151においては物体側溝151Dは周方向において3つ形成されていたのに対し、このレンズホルダ51においては、物体側溝51Dは、爪部51Fがある箇所と当接面51Bがある箇所で分断されるように、6つ形成されている。
図13においては、図中左側に当接面51B、像側溝51Eが設けられ、図中右側に爪部51Fが設けられる。この場合において、前記の通り、図中の左側で第5レンズL5は当接面51Bと当接する一方、図中の右側では下側において像側係止部51Cと当接するが、第5レンズL5の右側面とレンズホルダ51との間には空隙が形成されている。このため、この空隙内に固化前の接着剤を注入してから固化させた接着剤層Sを形成することによって、第5レンズL5とレンズホルダ51の間を固定することができる。同様に、図中左側においても、第5レンズL5の物体側、像側にそれぞれ接着剤層Sを形成することができる。このうち、物体側の接着剤層Sが物体側凸部L50Aよりも突出しないように形成すれば、接着剤層Sによって第4レンズL4と第5レンズL5の位置関係に悪影響が発生しない。このためには、図14に示されるように、物体側溝51Dが有効である。同様に、像側の接着剤層Sが像側第1凸部L50Bよりも突出しないように形成すれば、接着剤層Sによって第5レンズL5と接合レンズL60の位置関係に悪影響が発生しない。このためには、図13に示されるように、像側溝51Eが有効である。
ここで、前記の通り、物体側溝51Dは、爪部51Fを挟んで分断されるように形成されている。前記の通り、爪部51Fは当接面51Bとは光軸Aを挟んで対向しており、両社は離間しているため、固化前の接着剤を図13における図中右側の空隙内に流し込むことが容易となる。
また、実際に第5レンズL5をレンズホルダに固定してから物体側溝に固化前の接着剤を導入する際の状況の上面図を、図15に模式的に示す。図15(a)は前記のレンズホルダ151を用いた場合、図15(b)はレンズホルダ51を用いた場合をそれぞれ示す。
図15(a)において、前記の通り、物体側溝151Dに固化前の接着剤が投入されるが、実際には、全ての物体側溝151Dに同時に接着剤を投入することは困難であり、ここでは、図中右上の物体側溝151Dに接着剤(固化前)S0が投入された状況が示されている。この場合、第5レンズL5がレンズホルダ151に対して軽圧入された状況である場合には、接着剤S0の表面張力によって、図中の矢印に示されるように、第5レンズL5がこの物体側溝151D側にに引き寄せられるという状況が発生し、これによって第5レンズL5の光軸Aと垂直な方向におけるレンズホルダ151に対する位置関係が悪影響を受ける場合がある。この状況は、3つの物体側溝151Dに同時に接着剤を投入しない限り、解消されない。
一方、図15(b)においては、まず、単体の物体側溝51Dが小さくなるため、この内部の接着剤S0の量を制限することができ、このような力を軽減することができる。更に、この場合には、中心(光軸A)を挟んで対向する物体側溝51Dにも接着剤S0を投入すれば、この力を相殺することができる。このため、図15(b)の場合には、図15(a)の場合と比べて、組立時における第5レンズL5の光軸Aと垂直な方向におけるレンズホルダ51に対する位置関係の精度を高めることができる。
前記の通り、爪部51F、当接面51B、像側係止部51Cは、周方向においてそれぞれ3つずつ形成される。前記のように物体側溝51Dを爪部51Fの両側で分断して設けるためには、図15(b)に示されるように物体側溝51Dを6つ形成することが特に好ましい。この際、物体側溝51Dが周方向において正確に等間隔で設けられる必要はなく、等間隔でない場合でも、物体側溝51Dを6つ形成した場合には、図15(b)と同様の状況を再現することができる。
なお、上記の例においては、第5レンズl5はレンズホルダ51におけるレンズ収容孔51Aに対して物体側から組み込まれるものとし、このため、第5レンズL5を光軸Aに沿った方向で係止する像側係止部51Cが像側に設けられた。しかしながら、これらの構成を光軸A方向で逆転させてもよい。すなわち、ガラスレンズがレンズ収容孔に対して像側から物体側に向けて装着される構成とされていてもよい。また、上記の例では、第4レンズL4(物体側隣接レンズ)が樹脂材料製、第5レンズL5(像側隣接レンズ)がガラス製とされたが、逆に、物体側隣接レンズをガラス製、像側隣接レンズを樹脂材料製としてもよい。この場合、物体側隣接レンズ側において上記と同様のレンズホルダを用いることができる。
また、レンズ収容孔内における当接面やレンズ係止部以外の構造は、ガラスレンズの形態に応じて適宜設定が可能である。ガラスレンズ体と光軸方向で隣接するレンズとの間の光軸方向に沿った位置関係を定めるための構造である物体側、像側における凸部の構成も、ガラスレンズ体やこれと隣接するレンズの形状等に応じて、適宜設定が可能である。
(本形態の主な特徴)
本実施形態の特徴を簡単に纏めると次の通りである。
(1)このレンズユニット1は、光軸A方向に配された複数のレンズ(L1~L7)と、複数のレンズを光軸Aからみた外側で保持する鏡筒10と、を備え、レンズのうちの一つはガラス製であるガラスレンズL5であり、ガラスレンズL5は、光軸Aからみた外側を樹脂材料製のレンズホルダ51に支持され、レンズホルダ51が鏡筒10の内部に固定されることによって鏡筒10に対して固定され、レンズホルダ51は、光軸A方向の物体(Ob)側からガラスレンズL5を収容するレンズ収容孔51Aと、レンズ収容孔51Aにおける物体(Ob)側と反対の像(Im)側においてガラスレンズL5を像(Im)側で係止するようにレンズ収容孔51Aの内面から光軸A側に向けて突出し、光軸Aの周りの周方向で分離して複数設けられたレンズ係止部51Cと、を具備し、レンズホルダ51に固定されたガラスレンズL5と、レンズ係止部51Cの物体(Ob)側の周方向における端部との間に、光軸A方向に沿って空隙が形成されるように、レンズ係止部51Cにおける当該端部側の物体(Ob)側の表面(像側係止部端部上面51C4)が当該表面と当該端部と反対側で隣接する表面(像側係止部上面51C1)よりも像(Im)側に位置するような段差が周方向におけるレンズ係止部51Cの前記端部側に形成されている。
この構成においては、ガラスレンズL5のレンズホルダ51に対する光軸A方向に沿った位置関係は、ガラスレンズl5とレンズ係止部51Cとが当接することによって定まる。一方、樹脂材料製のレンズホルダ51においては、特にレンズ係止部51の周方向における端部にバリBが発生しやすくなり、このバリBがガラスレンズL5とレンズ係止部51Cとの間に存在した場合には、前記の位置関係に悪影響が及ぶところ、このようにレンズ係止部51Cの周方向における端部にこのような段差を形成することによって、このバリBがガラスレンズL5と当接することが抑制される。このため、ガラスレンズL5のレンズホルダ51に対する光軸A方向に沿った位置関係を高精度に維持することができる。
(2)また、レンズホルダ251に固定されたガラスレンズL5と、レンズ係止部251Cの物体(Ob)側の光軸A側の端部との間に、光軸A方向に沿って空隙が形成されるように、レンズ係止部251Cにおける当該端部側の物体(Ob)側の表面(像側係止部内側上面51C6)が当該表面と当該端部と反対側で隣接する表面(像側係止部上面51C1)よりも像(Im)側に位置するような段差が光軸Aからみた径方向におけるレンズ係止部251Cの光軸A側の端部側に形成されている。
この構成においては、レンズ係止部251Cの周方向の端部に形成された段差に加え、レンズ係止部251Cの光軸A側の端部にも同様の段差が形成される。これによって、レンズ係止部251Cの光軸A側の端部にバリBが発生した場合でも、このバリBがガラスレンズL5と当接することが抑制され、ガラスレンズL5のレンズホルダ251に対する光軸A方向に沿った位置関係を更に高精度に維持することができる。
(3)本発明に係るレンズユニットは、光軸A方向に配された複数のレンズ(L1~L7)と、複数のレンズを光軸Aからみた外側で保持する鏡筒10と、を備え、前記レンズのうちの一つはガラス製であるガラスレンズL5であり、ガラスレンズL5は、光軸Aからみた外側を樹脂材料製のレンズホルダ351に支持され、レンズホルダ351が鏡筒10の内部に固定されることによって鏡筒10に対して固定され、レンズホルダ351は、光軸A方向の(Ob)側からガラスレンズL5を収容するレンズ収容孔51Aと、レンズ収容孔51Aにおける物体(Ob)側と反対の像(Im)側において、ガラスレンズl5を像(Im)側で係止するようにレンズ収容孔51Aの内面から光軸A側に向けて突出し、光軸Aの周りの周方向で分離して複数設けられたレンズ係止部351Cと、を具備し、レンズホルダ351に固定されたガラスレンズL5と、レンズ係止部351Cの物体(Ob)側の周方向における端部との間に、光軸A方向に沿って空隙が形成されるように、レンズ係止部351Cにおける当該端部側に、当該端部側に向けて物体(Ob)側から像(Im)側に向かうように傾斜した傾斜面51C8が形成されている。
この構成においては、前記のようなレンズ係止部51Cの周方向における端部における段差の代わりに、このような傾斜面51C8が形成される。これによって、同様に、この端部に形成されたバリBがガラスレンズL5と当接することが抑制され、ガラスレンズL5のレンズホルダ351に対する光軸A方向に沿った位置関係を高精度に維持することができる。
(4)レンズホルダ51における物体(Ob)側には、物体(Ob)側に向けて突出し、かつガラスレンズL5と物体(b)側で隣接する第4レンズL4と当接する複数の物体側凸部L50Aが形成され、物体(Ob)側において、光軸A方向において物体側凸部L50Aよりも突出しない接着剤層Sによって、ガラスレンズL5とレンズホルダ51との間が接合されている。
この構成においては、この物体側凸部L50Aによって、ガラスレンズL5と、物体(Ob)側にあるレンズL4との間の光軸A方向の位置関係を定めることができる。また、接着剤層Sをこのような高さに設定すれば、ガラスレンズL5の固定を確実に行わせることができる一方で、接着剤層Sがこの位置関係に悪影響を及ぼすことも抑制される。
(5)レンズホルダ51における物体(Ob)側には、物体(Ob)側に向けて突出すると共に、固定されたガラスレンズL5の光軸Aの周りの外周面よりも光軸A側に向けて突出するように形成された爪部51Fが、周方向において3箇所に離間して形成され、レンズホルダ51における物体(Ob)側の表面が局所的に像(Im)側に向けて掘下げられた物体側溝(第1の溝)51Dが、周方向において爪部51Fの両側においてレンズ収容孔51Aと連結するように、それぞれ形成されている。
この構成においては、接着剤S0を硬化させる前の段階においても、爪部51Fを用いてガラスレンズL5をレンズホルダ51に対して仮固定することができる。また、固化前の接着剤S0を物体側溝(第1の溝)51Dに投入することによって、ガラスレンズL5とレンズ収容孔51Aの内面の間、ガラスレンズL5と爪部51Fの間の空隙に接着剤S0を導入し、ガラスレンズL5の固定をより確実に行うことができると共に、前記のように接着剤層Sの高さを物体側凸部L50Aよりも低くすることが容易となる。
(6)レンズホルダ51において、物体側溝(第1の溝)51Dは、周方向において6つ形成されている。
この構成により、固化前の接着剤Sを、光軸Aを挟んで対向する2つの物体側溝(第1の溝)51Dに投入することができるため、接着剤S0の硬化前におけるガラスレンズL5のレンズホルダ51に対する位置精度をより高めることができる。
(7)レンズホルダ51は、周方向においてレンズ係止部51Cが形成されていない箇所における内面に形成され、ガラスレンズL5の光軸Aの周りの外周面と当接する当接面51Bを複数具備する。
この構成においては、ガラスレンズL5の光軸Aと垂直な方向におけるレンズホルダ51との間の位置関係を、この当接面51Bによって正確に定めることができる。
(8)レンズホルダ51における像(Im)側の表面が局所的に物体(Ob)側に向けて掘下げられた像側溝(第2の溝)51Eが、周方向において当接面51Bが形成された領域と重複し、かつレンズ収容孔51Aと連結するように形成されている。
この構成においては、ガラスレンズL5をレンズ収容孔51Aに圧入する際に当接面51Bから切り屑が発生した場合でも、この切り屑が像側溝(第2の溝)51Eに収容され、レンズ係止部51Cに付着することが抑制される。また、物体側溝(第1の溝)51Dと同様に、像側溝(第2の溝)51Eに固化前の接着剤S0を投入してガラスレンズL5を固定することもできる。
なお、レンズ系における上記のようなガラスレンズ(ガラスレンズ体)、あるいはこれと隣接する他のレンズ以外のレンズの数、構成は任意である。
本発明を、実施形態及びその変形例をもとに説明したが、この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。