JP7357639B2 - ダイヤフラム弁 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体製造、化学工場、食品などの各種産業分野における各種流体を移送するときに用いられるダイヤフラム弁に関する。
従来、半導体製造などでは、流体の流量や圧力の制御において高精度の安定性を実現するために、特許文献1~特許文献3に開示されているような2枚のダイヤフラムを備えたダイヤフラム弁が使用されることが多い。
このようなダイヤフラム弁の一例である図10に示される流体制御弁300は、基本的構造として、入口流路301と出口流路302を有する弁本体303と、弁部304と第1のダイヤフラム部305及び第2のダイヤフラム部306を有する弁体307とを備える。弁本体303に形成されたチャンバは、第1のダイヤフラム部305及び第2のダイヤフラム部306によって、第1のダイヤフラム部305の外側の第1の加圧室308と、第1のダイヤフラム部305と第2のダイヤフラム部306の間に位置し且つ入口流路301と連通する第1の弁室310と、第1のダイヤフラム部305と第2のダイヤフラム部306との間に位置し、第1の弁室310と連通路312及び弁座312aを介して連通し且つ出口流路302と連通する第2の弁室311と、第2のダイヤフラム部306の外側の第2の加圧室309とに区分されており、第1の加圧室308の内部に設けられたバネ313によってバネ受け314を介して第1のダイヤフラム部305に常時内向きの一定圧力が加えられると共に、第2の加圧室309の外側から第2の加圧室309に供給される圧縮空気などを利用して第2のダイヤフラム部306に常時内向きの一定圧力が加えられるように構成されている。また、第2のダイヤフラム部306の受圧面積は第1のダイヤフラム部305の受圧面積よりも大きく設けられている。
このような流体制御弁300では、第2の加圧室309に圧縮空気が供給されていない状態では、第1の加圧室308のバネ313による圧力で第1のダイヤフラム部305を介して弁部304を弁座312aに押し付けて流体の流通を遮断し、第2の加圧室309に圧縮空気を供給することによって、バネ313による圧力に抗して弁部304を弁座312aから離間させ、流体の流量又は圧力を予め定められた値に設定する。流量又は圧力が一旦定められると、第1のダイヤフラム部305及び第2のダイヤフラム部306には常時内向きの一定圧力が加えられることとなり、一次側(上流側)の流体圧力の変動は、常時内向きの一定圧力を加えられた第1のダイヤフラム部305及び第2のダイヤフラム部306に対する背圧変動すなわち外向きの圧力の変動として現れ、第1の加圧室308及び第2の加圧室309による一定の内向きの設定圧力と一次側の外向きの変動圧力とが釣り合いを保とうとして、弁体307を移動させる。この弁体307の移動の結果、弁部304が弁座312aに対して移動し、弁部304と弁座312aとの間の開口量が変化して、流量又は圧力の変動が抑制される。
また、上述したように2枚のダイヤフラム部を有する流体制御弁300では、流体が接する領域(接液領域)がダイヤフラム部305,306によって区画されるため、流体の清浄度を維持し続けることができる。このため、流体の清浄度が要求される分野で利用されることが多い。
特開平6-295209号公報 特開2004-38571号公報 特開2007-24070号公報
図10に示されているような流体制御弁では、第1のダイヤフラム部305及び第2のダイヤフラム部306と弁部304とが連動して動くようにするために、第1のダイヤフラム部305及び第2のダイヤフラム部306から延びる軸部が弁部304と接続されていることが一般的である。しかしながら、弁部304は弁座から延びて第1の弁室310と第2の弁室311とを連通させる連通路よりも大きくなるため、組み立ての都合上、第1のダイヤフラム部305及び第2のダイヤフラム部306のうちの一方の軸部と弁部304とを一体的に形成する一方、他方の軸部と弁部304とを螺合によって接続していることが多い。このため、軸部と弁部304とを螺合させる作業が必要となる。
また、図10に示されている流体制御弁のように、バネを用いる場合、バネの力が適切に第1のダイヤフラム部305に伝わるように、バネ受けの外周面は第1の加圧室308の周壁に沿って移動するようになっていることが一般的である。この場合、摺動による摩擦を軽減するためにバネ受けの外周面にグリスなどの潤滑剤が塗布される。バネ受けがガイドによって案内される場合も、ガイドにグリスなどの潤滑剤が塗布されるのは同様である。さらに、第1の加圧室308をシリンダ室として内部にピストンを配置して、圧縮空気などの作動流体の圧力によってピストンを移動させ、ピストンと第1のダイヤフラム部305とを連動させるようにすることがある。このような場合も、ピストンの外周面とシリンダ室の周面との摺動による摩擦を軽減するためにピストンの外周面にグリスなどの潤滑剤が塗布される。加えて、シールが必要な箇所に用いられるOリングなどのシール部材にもグリスが塗布される。
ところが、手作業による流体制御弁の組み立て時に、作業者は、上述の第1のダイヤフラム部305又は第2のダイヤフラム部306の軸部と弁部304とを螺合させるために、第1のダイヤフラム部305、第2のダイヤフラム部306及び弁部304などを把持して作業をせざるを得ない。このため、グリスのような潤滑剤が作業者の手に付着して、流体に接触するために清浄性が求められる第1のダイヤフラム部305又は第2のダイヤフラム部306や弁部304などの接液領域を汚染させる原因となる可能性がある。また、グリスなどの潤滑剤を使用しなくても、バネを使用する場合には、組み立ての際にバネの材料である金属に触れることになる。このため、手に付着した金属粒子で、第1のダイヤフラム部305又は第2のダイヤフラム部306や弁部304などの接液領域を汚染させる可能性もある。
よって、本発明の目的は、従来技術に存する問題を解消して、ダイヤフラム弁の組み立て時に潤滑剤や金属に触れることを回避させて、潤滑剤や金属粒子による接液領域の汚染を抑制することにある。
上記目的に鑑み、本発明は、入口流路に連通する第1の弁室と出口流路に連通させる第2の弁室と該第1の弁室と該第2の弁室とを連通する連通路とが形成されている弁本体と、前記連通路に形成されている弁座と、前記第1の弁室に面するように前記弁本体に取り付けられ且つ前記弁座に接離する弁体部を支持する第1のダイヤフラムと、前記第2の弁室に面するように前記弁本体に取り付けられる第2のダイヤフラムとを含む弁機構と、前記弁本体との間に前記第1のダイヤフラムの外周部を挟持するように前記弁本体に取り付けられ、前記弁体部を前記弁座部に向かって押し付けるように前記第1のダイヤフラムを加圧する加圧ユニットと、前記弁本体との間に前記第2のダイヤフラムの外周部を挟持するように前記弁本体に取り付けられるボンネットとを備え、前記加圧ユニットが、内部に第1の加圧室を形成するように組み立てられる第1のユニット筐体及び第2のユニット筐体と、前記第1の加圧室内で前記第1の弁室へ接近及び離反する方向に移動する可動体と、該可動体から延び且つ前記加圧ユニットの外部へ突出するステムとを含み、前記第1のユニット筐体が第1の係合部をさらに備えると共に、前記第2のユニット筐体が第2の係合部をさらに備え、前記可動体を前記第1の加圧室内に保持した状態で前記第1のユニット筐体と前記第2のユニット筐体とが前記第1の係合部と前記第2の係合部とを互いに係止させることによって連結されて一体化された一つのユニットとして構成されており、前記ステムの先端部に前記弁体部が連結され、第1の加圧手段で前記可動体を加圧して前記弁座に押し付ける方向の力を前記ステムを介して前記弁体部に常時付与すると共に、第2の加圧手段で前記第2のダイヤフラムを加圧して前記弁座から離反させる方向の力を第2のダイヤフラムから前記弁体部に付与することによって、前記弁機構が流体の流通を制御するダイヤフラム弁を提供する。
上記ダイヤフラム弁では、弁本体の第1の弁室側すなわち一次側(上流側)に取り付けられた加圧ユニットの第1の加圧室内の可動体が第1の加圧手段で加圧されて、ステムを介して可動体と連結される弁体部に弁座に押し付ける方向の力を常時付与する一方、第2のダイヤフラムが第2の加圧手段で加圧されて、弁座から離反させる方向の力を第2のダイヤフラムから弁体部に付与している。したがって、第2の加圧手段による第2のダイヤフラムへの加圧力を変化させることで、第1の加圧手段によって付与される弁体部を弁座に押し付ける力に抗して弁体部を弁座から引き離し、開度を調整することができる。さらに、加圧ユニットは、ステムを介して本体部と連結されている可動体が加圧ユニット内の第1の加圧室に保持された状態で、第1のユニット筐体と第2のユニット筐体とを互いと連結することによって、一体化された一つのユニットとして扱えるように構成されている。したがって、予め別な工程で加圧ユニットを組み立てておけば、弁機構や弁本体に組み付ける際には、加圧ユニットから延びるステムと第1のダイヤフラムとの連結と、弁本体への加圧ユニットの取り付けを行えばよく、加圧ユニット内の部品等には触れる必要がなくなる。すなわち、可動体と第1の加圧室の周壁との摺動による摩擦を軽減するために、グリスなどの潤滑剤が使用されたり、加圧ユニット内に金属部品が使用されたりしても、組み立ての際に作業者が潤滑剤や金属などに直接的に触れることがなくなり、作業者の手に付着した潤滑剤や金属粒子による流体の汚染を抑制することができる。
上記ダイヤフラム弁では、前記第2のダイヤフラムが、前記第1のダイヤフラムの前記弁体部と接離可能な押圧部を有し、前記第2の加圧手段で前記弁座に接近させる方向の力を前記第2のダイヤフラムに付与することによって、前記押圧部が前記弁体部に当接し、前記第1の加圧手段で前記弁体部に付与される力に抗して前記弁体部を前記弁座から離間させるようになっていることが好ましい。弁機構がこのように構成されていれば、第2のダイヤフラムと弁体部とを連結させることなく、弁体部を弁座に対して接離させることが可能となる。したがって、第2のダイヤフラムと弁体部とを接液領域で螺合させる必要がなくなり、螺合部が接液領域に配置されることによる流体の汚染を防ぐことが可能となる。また、第2のダイヤフラムと弁体部とを螺合させる際に摩擦で発生する材料の粒子が接液領域を汚染することも防止することができる。
一つの実施形態として、前記第1のユニット筐体が、貫通孔を有した筒状本体を備え、前記貫通孔が、前記第1のダイヤフラムに面する小径部と、該小径部よりも大きく肩部を形成するように前記小径部と接続されている大径部とを含み、前記貫通孔の大径部側端部を前記第2のユニット筐体で塞ぐように前記第1のユニット筐体と前記第2のユニット筐体とを連結することによって、前記第1の加圧室を形成し、前記貫通孔の前記小径部は、前記ステムの通過を許容する一方、前記第1の加圧室内に配置された前記可動体の少なくとも一部より小さく、前記可動体の少なくとも一部が前記肩部に干渉して前記第1の加圧室内に保持されるように構成されているようにしてもよい。このような構成により、第1のユニット筐体と第2のユニット筐体とを連結させたときに可動体を第1の加圧室内に保持することが可能となる。また、前記第1のユニット筐体が前記筒状本体の周壁から外方に突出して延び且つ前記弁本体と前記第2のユニット筐体との間に配置される鍔部をさらに備えるようになっていてもよい。
上記ダイヤフラム弁において、前記第1のユニット筐体の前記第1の係合部と前記第2のユニット筐体の前記第2の係合部とがバヨネット構造であることが好ましい。このような構成により、第1のユニット筐体と第2のユニット筐体とを連結させるためにボルトなどの締結具を使用する必要がなくなり、金属粒子による汚染を抑制することができる。
一つの実施形態として、前記可動体が前記第1の加圧室内で移動するバネ受け部材であり、前記ステムを介して前記弁体部を前記弁座に押し付けるように前記バネ受け部材を付勢する付勢バネが前記第1の加圧手段として前記第1の加圧室内に設けられているようにしてもよい。
また、別の実施形態として、前記第1の加圧室がシリンダ室であり、前記可動体が前記シリンダ室の内周面に沿って移動するように前記シリンダ室に収容されたピストンであり、前記シリンダ室に第1の加圧手段としての作動流体が供給されるようにしてもよい。この場合、さらに、前記シリンダ室内にさらに付勢バネが設けられており、前記付勢バネによって前記ピストンを前記弁本体へ付勢しているようにしてもよい。
さらに、上記ダイヤフラム弁では、第2の加圧手段が、前記ボンネットに設けられた第2の加圧室に供給されて前記第2のダイヤフラムを加圧する作動流体、前記ボンネットに設けられた第2の加圧室に配置された付勢バネ、又はその組み合わせであってもよい。
前記弁体部と前記ステムとは圧入嵌合によって連結されていることが好ましい。
本発明のダイヤフラム弁によれば、加圧ユニットは、ステムを介して本体部と連結されている可動体が加圧ユニット内の第1の加圧室に保持された状態で、第1のユニット筐体と第2のユニット筐体とを互いと連結することによって、一体化された一つのユニットとして扱えるように構成されているので、予め別な工程で加圧ユニットを組み立てておけば、弁機構や弁本体に組み付ける際には、加圧ユニットから延びるステムと第1のダイヤフラムとの連結と、弁本体への加圧ユニットの取り付けを行えばよく、加圧ユニット内の部品等には触れる必要がなくなる。したがって、可動体と第1の加圧室の周壁との摺動による摩擦を軽減するために、グリスなどの潤滑剤が使用されたり、加圧ユニット内に金属部品が使用されたりしても、組み立ての際に作業者が潤滑剤や金属などに直接的に触れることがなくなり、作業者の手に付着した潤滑剤や金属粒子による弁機構などの接液領域の汚染を抑制し、流体の汚染を防ぐことが可能となる。
本発明によるダイヤフラム弁の第1の実施形態の全体構成を示す縦断面図である。 図1に示されているダイヤフラム弁の組立分解図である。 図1に示されているダイヤフラム弁の加圧ユニットを示す斜視図である。 図3に示されている加圧ユニットの第1のユニット筐体を下方から見た斜視図である。 図3に示されている加圧ユニットの第2のユニット筐体を上方から見た斜視図である。 図1に示されているダイヤフラム弁の加圧ユニットのステムと第1のダイヤフラムの弁体部との接続部を示す拡大断面図である。 本発明によるダイヤフラム弁の第2の実施形態を示す縦断面図である。 本発明によるダイヤフラム弁の第3の実施形態を示す縦断面図である。 本発明によるダイヤフラム弁の第4の実施形態を示す縦断面図である。 流体制御弁として使用される従来技術のダイヤフラム弁の構造を示す縦断面図である。
以下、図面を参照して、本発明によるダイヤフラム弁の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るダイヤフラム弁10の全体構成を示している。図1を参照すると、ダイヤフラム弁10は、弁本体11と、弁本体11内に設けられる弁機構12と、弁本体11の上部に取り付けられるボンネット13と、弁本体11の下部に取り付けられる加圧ユニット14とを備え、弁機構12によってダイヤフラム弁10の開閉を行うようになっている。
弁本体11は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記載する。)から作製されている。弁本体11の下部中央には、平面円形状の下側凹部15と、下側凹部15の中央上方に位置し且つ下側凹部15よりも小径である第1の弁室16とが連続して形成されており、第1の弁室16に連通して入口流路17が設けられている。また、弁本体11の底面には、下側凹部15を取り囲むように環状段差部18が形成されている。一方、弁本体11の上部中央には、平面円形状の上側凹部19と、上側凹部19の中央下方に位置し且つ上側凹部19よりも小径である第2の弁室20が連続して形成されており、第2の弁室20に連通して出口側流路21が設けられている。さらに、弁本体11には、第1の弁室16と第2の弁室20とを連通させる連通路22が形成されており、第1の弁室16への連通路22の開口の周囲に弁座23が形成されている。
弁機構12は、第1のダイヤフラム24と第2のダイヤフラム25とによって構成されている。第1のダイヤフラム24は、PTFEから作製されており、弁体部24aと、弁体部24aの外周に外方へ向かって延設された膜部24bと、膜部24bの外周縁に設けられ上下方向に延びる筒状の垂直支持部24cと、垂直支持部24cの上端から水平方向に延びる環状の水平支持部24dとを含んでいる。第1のダイヤフラム24は、弁体部24aを第1の弁室16内に配置した状態で下側凹部15の内周面に沿って垂直支持部24cを挿入して弁本体11の環状段差部18に水平支持部24dを受容させることによって、弁本体11の下部に取り付けられて、第1の弁室16と外部とを区画すると共に第1の弁室16内に配置される弁体部24aを支持する。また、第2のダイヤフラム25は、PTFEから作製されており、押圧部25aと、押圧部25aの外周に外方へ向かって延設された膜部25bと、膜部25bの外周縁に設けられ上下方向に延びる筒状支持部25cとを含んでいる。押圧部25aの少なくとも一部は、連通路22に挿通可能な大きさとなっている。第2のダイヤフラム25は、押圧部25aを第2の弁室20内に配置した状態で上側凹部19の周壁に沿って筒状支持部25cを挿入することによって、弁本体11の上部に取り付けられて、第2の弁室20と外部とを区画すると共に第2の弁室20内に配置される押圧部25aを支持する。なお、第1のダイヤフラム24の弁体部24aと第2のダイヤフラム25の押圧部25aとは、互いと接離可能となっており、連結されていない。接液領域に連結のための螺合部を設けると、組み立ての際に、螺合のために互いを回転させる必要が生じ、摩擦による粒子の発生を招くが、ダイヤフラム弁10のように接液領域に螺合部を設けていなければ、螺合部での発生した粒子による流体の汚染を防止することができる。
ボンネット13は、PTFEから作製されており、ボンネット13には、弁本体11へ向かって突出して延びる突出部26と、突出部26の底部に設けられ下方に開口する円筒状の窪み部27と、窪み部27と連通する作動流体供給口28とが形成されている。また、突出部26の外周面には、環状受容溝26aが形成されており、環状受容溝26a内にOリング29が装着される。ボンネット13は、弁本体11の上部に取り付けられる。弁本体11にボンネット13を取り付けるとき、突出部26が弁本体11の上側凹部19に挿入されて、弁本体11の上側凹部19に取り付けられた第2のダイヤフラム25の筒状支持部25cを上側凹部19の内周面とボンネット13の突出部26の外周面との間に挟持する。図2に示されているようにボルトなどの締結具30を用いて弁本体11とボンネット13とをさらに固定することで、第2のダイヤフラム25がダイヤフラム弁10に固定される。また、このように第2のダイヤフラム25をボンネット13と弁本体11との間に挟持する状態で、ボンネット13を第2の弁室20側に取り付けることによって、ボンネット13の突出部26の底部に設けられた窪み部27が第2のダイヤフラム25で第2の弁室20と区画されると共に、第2のダイヤフラム25と突出部26との間がOリング29によって封止され、第2の加圧室31を形成する。このように形成された第2の加圧室31に作動流体供給口28から第2の加圧手段としての作動流体を供給して第2の加圧室31の圧力を変動させることによって、第2のダイヤフラム25の膜部25bに支持される押圧部25aを第2の弁室20内で上下動させて連通路22に挿通させ、弁体部24aに対して接離させることが可能となる。
なお、別工程で、ボンネット13の突出部26の環状受容溝26aにOリング29を予め装着し、グリスなどの潤滑剤を塗布しておけば、ボンネット13を弁本体11に取り付けるときに、作業者がOリング29や潤滑剤に触れる必要がなくなる。これにより、作業者の手に付着したOリング29の材料の粒子や潤滑剤で第1の弁室16や第2の弁室20などのような対象流体が流通する接液領域を汚染することを抑制することができる。また、第2の弁室20内の流体が外部に漏出することを防止するために、第2のダイヤフラム25の筒状支持部25cの外周面と上側凹部19の内周面との間はシール部材(図示せず)などで封止されていることが好ましい。例えば、弁本体11の上側凹部19の内周面に断面台形状の環状溝(図示せず)を設けると共に、第2のダイヤフラム25の筒状支持部25cの外周面に環状溝よりも僅かに大きい断面半円形状の環状突起(図示せず)を設けるようにしてもよい。この場合、環状突起を環状溝に係合させた状態で第2のダイヤフラム25を弁本体11の上側凹部19に取り付けた後に、弁本体11の上側凹部19にボンネット13の突出部26を挿入して弁本体11の上部にボンネット13を取り付けることにより、環状突起を変形させて環状溝に密着嵌合させ、第2のダイヤフラム25の筒状支持部25cの外周面と弁本体11の上側凹部19の内周面との間を封止することができる。このような環状突起と環状溝で第2のダイヤフラム25の筒状支持部25cの外周面と弁本体11の上側凹部19の内周面との間を封止することで、Oリングの使用数を削減することが可能になる。また、組み立ての際にOリングに触れたりグリスのような潤滑剤をOリングに塗布する作業が不要になって、Oリングの材料の粒子や潤滑剤で接液領域を汚染することを抑制することができる。
加圧ユニット14は、弁本体11の下部に取り付けられ、弁本体11の第1の弁室16側に取り付けられた第1のダイヤフラム24の弁体部24aを弁座23へ向かって押し付けるように第1のダイヤフラム24を加圧するために使用されるものであり、複数の部品を組み立てて、図3に示されているように、一つのユニットとして一体化された状態で扱うことができるようになっている。加圧ユニット14は、内部に第1の加圧室34を形成するように組み立てられる第1のユニット筐体35及び第2のユニット筐体36と、第1の加圧室34内で第1の弁室16へ接近及び離反する方向に移動する可動体37と、加圧ユニット14から外部へ突出するように可動体37から延びるステム38とを含んでおり、第1の弁室16内に配置された第1のダイヤフラム24の弁体部24aがステム38の先端部に連結される。また、加圧ユニット14では、可動体37が第1の加圧手段で第1の弁室16へ向けて加圧されるようになっている。加圧ユニット14は、このように第1の加圧手段で可動体37を加圧することによって、ステム38を介して可動体37と連動する弁体部24aに、弁座23に押し付ける方向の力を常時付与している。
図1に示されている実施形態では、第1のユニット筐体35が筒状本体35aを備えており、筒状本体35aには、貫通孔39が形成されている。貫通孔39は、第1のダイヤフラム24に面する側に形成された小径部39aと、小径部39aよりも大きく肩部を形成するように小径部39aと接続されて形成された大径部39bとを含んでおり、小径部39aと反対側の大径部39bの端部を第2のユニット筐体36で塞ぐように第1のユニット筐体35に概略平板形状の第2のユニット筐体36と連結することによって第1の加圧室34を形成するようになっている。第2のユニット筐体36には、第1のユニット筐体35の貫通孔39内に開口するように呼吸口40が設けられており、第1の加圧室34内の空気の出入りが可能となっている。第1の加圧室34内に配置される可動体37は、小径部39aより僅かに小さく小径部39aの周壁に沿って移動する縮小部37aと、大径部39bより僅かに小さく且つ小径部39aよりも大きく大径部39bの周壁に沿って移動する拡大部37bとを含んでおり、縮小部37aと拡大部37bとの間に段差部が形成されている。可動体37の拡大部37bが第1のユニット筐体35の貫通孔39の小径部39aよりも大きいため、第1の加圧室34内に可動体37を配置した状態で、第1のユニット筐体35と第2のユニット筐体36とが連結されると、段差部が肩部に干渉して、可動体37は第1の加圧室34内に保持されるようになる。第1の実施形態では、可動体37はバネ受け部材として形成されており、拡大部37bの底面には、第2のユニット筐体36と可動体37との間に第1の加圧手段として配置された付勢バネ41の少なくとも一端部を受容する環状バネ溝42が形成されており、付勢バネ41によって可動体37を第1の弁室16へ向けて常時付勢している。この結果、第1の加圧室34内で付勢バネ41によって可動体37が第1の弁室16へ向けて付勢されて第1の加圧室34内で周壁に沿って移動しようとするのに伴って、可動体37のステム38の先端に連結された第1のダイヤフラム24の弁体部24aが弁座23に押し付けられる方向の力を常時付与される。
なお、ダイヤフラム弁10を開くときには、作動流体供給口28を通して第2の加圧室31内に作動流体を供給して第2の加圧室31内の圧力を増加させることによって、第2のダイヤフラム25に支持される押圧部25aを下降させて弁体部24aに当接させ、弁座23から離反させる方向の力を弁体部24aに付与する。こうして、加圧ユニット14によって弁体部24aに常時付与される弁座23に押し付ける方向の力に抗して、弁体部24aが弁座23から離間し、第1の弁室16から第2の弁室20へ流体が流通するようになる。また、第2の加圧室31内の圧力を調整して、弁座23と弁体部24aとの隙間を変化させることによって、流量の調整を行うことが可能となる。
また、図示されている第1の実施形態では、第1のユニット筐体35は、第2のユニット筐体36の外形と同じ外形となるように筒状本体35aの周壁の上端部より下側から外方に突出して延びる鍔部35bをさらに備えている。鍔部35bは、加圧ユニット14を弁本体11の下方に取り付けるときに、第2のユニット筐体36と弁本体11との間に配置されて、弁本体11の下側凹部15に取り付けられた第1のダイヤフラム24の外縁部に位置する水平支持部24dを弁本体11の環状段差部18との間に挟持する。また、鍔部35bは、筒状本体35aの周壁の上端部より下側に設けられており、筒状本体35aは、鍔部35bよりも上方に突出した突出部35cを有している。突出部35cは、加圧ユニット14を弁本体11に取り付けるときに、弁本体11の下側凹部15に挿入されて、弁本体11の下側凹部15に取り付けられた第1のダイヤフラム24の垂直支持部24cを下側凹部15の外周面と第1のユニット筐体35の突出部35cの外周面との間に挟持する。このような状態で、第1のユニット筐体35の鍔部35bと第2のユニット筐体36とを貫通して延びる取付穴43に図2に示されているようにボルトなどの締結具44を通して加圧ユニット14を弁本体11に固定することによって、第1のダイヤフラム24がダイヤフラム弁10に固定される。
なお、第1の弁室16内の流体が外部に漏出することを防止するために、第1のダイヤフラム24の垂直支持部24cの外周面と下側凹部15の内周面との間はシール部材などで封止されていることが好ましい。例えば、弁本体11の下側凹部15の内周面に断面台形状の環状溝(図示せず)を設けると共に、第1のダイヤフラム24の垂直支持部24cの外周面に環状溝よりも僅かに大きい断面半円形状の環状突起(図示せず)を設けるようにしてもよい。この場合、環状突起を環状溝に係合させた状態で第1のダイヤフラム24を弁本体11の下側凹部15に取り付けた後に、弁本体11の下側凹部15に加圧ユニット14の第1のユニット筐体35の突出部35cを挿入して弁本体11の下部に加圧ユニット14を取り付けることにより、環状突起を変形させて環状溝に密着嵌合させ、第1のダイヤフラム24の垂直支持部24cの外周面と弁本体11の下側凹部15の内周面との間を封止することができる。このような環状突起と環状溝で第1のダイヤフラム24の垂直支持部24cの外周面と弁本体11の下側凹部15の内周面との間を封止することで、Oリングの使用数を削減することが可能になる。また、組み立ての際にOリングに触れたりグリスのような潤滑剤をOリングに塗布する作業が不要になって、Oリングの材料の粒子や潤滑剤で接液領域を汚染することを抑制することができる。
第1のユニット筐体35と第2のユニット筐体36との連結は、加圧ユニット14を一つのユニットとして一体化された状態で扱うことができるようになれば、ボルトなどの締結具を用いた方法や、締結具を用いない方法など、適宜の方法で行うことができる。しかしながら、部品点数を増加させないことや作業を簡素化させるために、第1のユニット筐体35に設けられた第1の係合部と第2のユニット筐体36に設けられた第2の係合部とを互いに係止させて、締結具を用いずに第1のユニット筐体35と第2のユニット筐体36とを連結させるようにすることが好ましい。
図1に示されている実施形態では、バヨネット構造を利用して第1のユニット筐体35と第2のユニット筐体36とが連結されている。以下、図示されている実施形態のバヨネット構造を詳細に説明する。図4に示されているように、第1のユニット筐体35の筒状本体35aの下端部には、鍔部35bよりも下方に溝部を形成することによって、溝部よりも外方に突出した形態で周方向に延びる複数のバヨネット爪45(図4では四つのバヨネット爪45)が第1の係合部として設けられている。一方、第2のユニット筐体36には、図5に示されているように、第1のユニット筐体35の筒状本体35aの鍔部35bより下方の部分を受容する受容穴36aが形成されており、受容穴36aの上端部には、受容穴36aの内周面から内方に突出して周方向に延びる複数のバヨネット爪46(図5では四つのバヨネット爪46)が第2の係合部として設けられている。筒状本体35aの複数のバヨネット爪45と受容穴36aの複数のバヨネット爪46とは、筒状本体35aの複数のバヨネット爪45が受容穴36aの複数のバヨネット爪46の間を通過することができ且つ受容穴36aの複数のバヨネット爪46が筒状本体35aの複数のバヨネット爪45の間を通過することができるような長さ及び間隔で設けられている。したがって、筒状本体35a内に可動体37と付勢バネ41と収容した状態で、筒状本体35aの複数のバヨネット爪45を受容穴36aの複数のバヨネット爪46の間に配置して互いを通過させて、鍔部35bより下方の筒状本体35aの部分を受容穴36aに挿入した後に第1のユニット筐体35と第2のユニット筐体36とを互いに対して回動させることによって、筒状本体35aのバヨネット爪45と受容穴36aのバヨネット爪46とが互いに係止されて、可動体37と付勢バネ41とを第1の加圧室34内に保持した状態で、ボルトなどの締結具を用いることなく、第1のユニット筐体35と第2のユニット筐体36とが連結される。これによって、加圧ユニット14を一つのユニットとして一体化された状態で扱うことが可能となる。
このように加圧ユニット14を一つのユニットとして一体化された状態で扱うことが可能となっているので、別工程で、加圧ユニット14を組み立てれば、可動体37の外周面と第1の加圧室34の内周面との間の摩擦を軽減するために、可動体37の外周面にグリスなどの潤滑剤を塗布していたり、付勢バネ41に金属材料を使用したりしていても、作業者がグリスなどの潤滑剤や付勢バネ41に触れることなく、加圧ユニット14を弁本体11に取り付けることが可能となる。したがって、作業者の手に付着した潤滑剤や金属粒子で弁体部24a、第1の弁室16、第2の弁室20などのような接液領域を汚染することを抑制できる。
加圧ユニット14の可動体37の縮小部37aからは、ステム38が第1のユニット筐体35の貫通孔39の小径部39aを通って加圧ユニット14から突出して延びている。ステム38の先端は、弁本体11への加圧ユニット14の取り付けのために加圧ユニット14の第1のユニット筐体35の突出部35cを弁本体11の下側凹部15に挿入するときに、第1のダイヤフラム24の弁体部24aに連結される。ステム38の先端と弁体部24aとの連結方法は、特に限定されるものではない。しかしながら、ステム38と弁体部24aにネジ部を形成することなく、ステム38の先端を弁体部24aに圧入嵌合するのみで連結されるようにすることが好ましい。第1の実施形態では、図6に詳細に示されているように、ステム38の接続端に拡径された係止部47が設けられており、弁体部24aに設けられた相補形状の連結穴48にステム38の接続端(係止部47)を圧入嵌合することによって、ステム38の先端部に弁体部24aが連結される。この場合、ステム38の接続端の収縮変形を容易にするために、係止部47に切欠き部を設けてもよい。ステム38の接続端に雄ネジ部を設けると共に弁体部24aの連結穴48に対応する雌ネジ部を設けて互いを螺合させる場合、螺合のための回転による摩擦でステム38及び弁体部24aの材料の粒子が発生し、この粒子が作業者の手に付着するなどして接液領域の汚染の原因となり得る。しかしながら、第1の実施形態のダイヤフラム弁10のように圧入嵌合によりステム38の接続端の係止部47に弁体部24aが連結されるようになっていれば、粒子の発生による接液領域の汚染を抑制することができる。また、押し込み動作のみでステム38と弁体部24aが連結されるので、組み立て作業が容易となり、組み立て作業時間の短縮につながる。
次に、第1の実施形態のダイヤフラム弁10の組み立て手順について説明する。
加圧ユニット14は別の工程で予め組み立てておく。加圧ユニット14の組み立ては、第1のユニット筐体35の筒状本体35aの貫通孔39の小径部39aに可動体37の縮小部37aを挿入し且つ貫通孔39の大径部39bに可動体37の拡大部37bを挿入すると共に可動体37の拡大部37bの環状バネ溝42内に付勢バネ41の端部を挿入した状態で、第1のユニット筐体35の鍔部35bより下側の部分を第2のユニット筐体36の受容穴36a内に挿入する。このとき、筒状本体35aの複数のバヨネット爪45を受容穴36aの複数のバヨネット爪46の間に配置して互いを通過させて、鍔部35bより下方の筒状本体35aの部分を受容穴36aに挿入した後に第1のユニット筐体35と第2のユニット筐体36とを互いに対して回動させることによって、筒状本体35aのバヨネット爪45と受容穴36aのバヨネット爪46とが互いに係止されて、第1のユニット筐体35と第2のユニット筐体36とが連結される。これによって、図3に示されているように、加圧ユニット14を一つのユニットとして一体化された状態で扱うことが可能となる。第1の加圧室34内に配置された可動体37の拡大部37bは第1のユニット筐体35の貫通孔39の小径部39aよりも大きいので、可動体37は第1の加圧室34内に保持される。必要に応じて、加圧ユニット14の外側を洗浄して粒子等を除去するようにしてもよい。
また、ボンネット13の突出部26の環状受容溝26aにはOリング29を予め装着しておく。
次に、塵埃が少ない清浄環境下で、第1のダイヤフラム24、第2のダイヤフラム25、ボンネット13及び加圧ユニット14を弁本体11に取り付けてダイヤフラム弁10を組み立てる。詳細には、弁体部24aが第1の弁室16内に位置し且つ第1の弁室が区画されるように第1のダイヤフラム24を配置し、弁本体11の下側凹部15に第1のダイヤフラム24の垂直支持部24cを挿入すると共に弁本体11の環状段差部18に水平支持部24dを受容させることによって、弁本体11の下部に第1のダイヤフラム24を取り付ける。また、押圧部25aが第2の弁室20内に位置し且つ第2の弁室20が区画されるように第2のダイヤフラム25を配置し、弁本体11の上側凹部19に第2のダイヤフラム25の筒状支持部25cを挿入することによって、弁本体11の上部に第2のダイヤフラム25を取り付ける。
次に、加圧ユニット14から突出して延びるステム38の係止部47を弁本体11の下部に取り付けられた第1のダイヤフラム24の弁体部24aの連結穴48に圧入嵌合してステム38と弁体部24aとを連結させた上で、第1のユニット筐体35と第2のユニット筐体36とを貫通して設けられた取付穴43に通したボルト等の締結具44で加圧ユニットを弁本体11に固定する。このとき、加圧ユニット14の第1のユニット筐体部35の鍔部35bより上方の部分である突出部35cが弁本体11の下側凹部15に挿入される。これにより、突出部35cの外周面と下側凹部15の内周面との間で第1のダイヤフラム24の垂直支持部24cが挟持されると共に、弁本体11と加圧ユニット14の第2のユニット筐体36との間に挟持される鍔部35bと弁本体11の環状段差部18との間で第1のダイヤフラム24の水平支持部24dが挟持される。また、弁本体11の上部には、ボルトなどの締結具30によってボンネット13が固定される。このとき、ボンネット13の突出部26が弁本体11の上側凹部19に挿入されて、弁本体11の上側凹部19の内周面とボンネット13の突出部26の外周面との間で第2のダイヤフラム25の筒状支持部25cを挟持する。以上のようにして、ダイヤフラム弁10が組み立てられる。
このように、ダイヤフラム弁10では、潤滑剤を塗布した可動体37や付勢バネ41のように汚染の原因となり得る部品が一つのユニットとして取り扱うことができる加圧ユニット14内に収容されたり、Oリングがボンネット13の突出部26の環状受容溝26aに予め装着されたりしていると共に、押し込む動作のみで弁本体11にボンネット13及び加圧ユニット14を取り付けることができる。したがって、汚染の原因となりやすい潤滑剤が塗布された部品に触れることなく組み立てを行うことができる。この結果、接液領域の汚染を抑制することが可能となる。
また、従来技術のように、第1のダイヤフラム24の弁体部24aと第2のダイヤフラム25とを連結していないので、第1のダイヤフラム24の弁体部24aと第2のダイヤフラム25とを連結させるための螺合部などを設ける必要がなく、粒子などの発生源となり得る螺合部が接液領域に配置されない。したがって、粒子の発生による流体の汚染を抑制することができる。
次に、第1の実施形態のダイヤフラム弁10を定圧弁として使用するときの動作について説明する。ダイヤフラム弁10では、弁体部24aは、第1の加圧室34内の付勢バネ41による可動体37への付勢力でステム38を介して上方に押し上げられ、弁座23に押し付けられている。この状態から、作動流体供給口28を通して第2の加圧室31内に作動流体を供給すると、第2の加圧室31内の圧力が上昇して第2のダイヤフラム25の押圧部25aが下方に押し下げられ、連通路22を通って弁体部24aに当接する。さらに、付勢バネ41の付勢力に抗して弁体部24aが押圧部25aにより下方に押圧されると、弁体部24aが弁座23から離間し、弁体部24aと弁座23との隙間と連通路22を通して第1の弁室16から第2の弁室20へ流体が通過するようになる。流量は、第2の加圧室31内に供給される作動流体を調整して弁体部24aと弁座23との隙間を変更することによって任意の値に設定することができる。弁体部24aは、付勢バネ41によって可動体37及びステム38を介して弁体部24aに付与される力と、第2のダイヤフラム25の下面を流体圧力により押し上げる力と第2のダイヤフラム25の上面を第2の加圧室31内の作動流体の圧力で押し下げる力との合力で押圧部25aにより弁体部24aに付与される力とが釣り合う位置で静止していることになる。厳密には、弁体部24aの下面と第1のダイヤフラム24の膜部24bが第1の弁室16内の流体から圧力を受けているが、それらの受圧面積はほぼ同等となるようになっており、力はほぼ相殺されている。
この状態で、上流側の流体圧力が増加すると、瞬間的に第2の弁室20の圧力も増加する。すると、第2のダイヤフラム25の上面が第2の加圧室31内の作動流体から受ける力より、第2のダイヤフラム25の下面が流体から受ける力の方が大きくなり、第2のダイヤフラム25は上方へと移動する。これに伴って、押圧部25aも上方へ移動すると共に第1のダイヤフラム24に支持されて付勢バネ41によって弁座23へ向けて加圧される弁体部24aも上方へ移動するため、弁座23と弁体部24aとの間の開口面積が減少し、第2の弁室20内の圧力を減少させる。最終的に、付勢バネ41によって可動体37及びステム38を介して弁体部24aに付与される力と、第2のダイヤフラム25の下面を流体圧力により押し上げる力と第2のダイヤフラム25の上面を第2の加圧室31内の作動流体の圧力で押し下げる力との合力で押圧部25aにより弁体部24aに付与される力とが釣り合う位置で、弁体部24aが静止する。このとき第2の加圧室31内の作動流体による圧力が大きく変わらなければ、第2のダイヤフラム25の上面が受ける力は不変であるため、第2のダイヤフラム25の下面が受ける力は略不変となる。したがって、第2のダイヤフラム25の下面の流体圧力、すなわち、第2の弁室20内の流体圧力は、上流側の圧力が増加する前とほぼ同じ圧力となる。
一方、設定された流量となっている状態から、上流側の圧力が減少すると、瞬間的に第2の弁室20の圧力も減少する。すると、第2のダイヤフラム25の上面が第2の加圧室31内の作動流体から受ける力より、第2のダイヤフラム25の下面が流体から受ける力の方が小さくなり、第2のダイヤフラム25は下方へと移動する。これに伴って、押圧部25aも下方へ移動すると共に第1のダイヤフラム24に支持されており押圧部25aに当接する弁体部24aも下方へ移動するため、弁座23と弁体部24aとの間の開口面積が増加し、第2の弁室20内の圧力を増加させる。最終的に、付勢バネ41によって可動体37及びステム38を介して弁体部24aに付与される力と、第2のダイヤフラム25の下面を流体圧力により押し上げる力と第2のダイヤフラム25の上面を第2の加圧室31内の作動流体の圧力で押し下げる力との合力で押圧部25aにより弁体部24aに付与される力とが釣り合う位置で、弁体部24aが静止する。したがって、上流側圧力が増加した場合と同様に、第2の弁室20内の流体圧力は、上流側の圧力が増加する前とほぼ同じ圧力となる。
以上の動作により、ダイヤフラム弁10の上流側の流体圧力が変動しても、第2の弁室20内の流体圧力はほとんど変化しない。そのため、ダイヤフラム弁10の下流側の配管における圧力損失に変化がなければ流量を一定に保つことができる。また、第2の弁室20内の流体圧力は、第2の加圧室31内の作動流体の圧力によって調整できるため、流量も作動流体によって調整することができる。さらに、第2の加圧室31に作動流体を供給しなければ、可動体37が付勢バネ41の付勢力によって押し上げられて、ステム38を介して可動体37と連動する弁体部24aも押し上げられることになる。したがって、弁体部24aが弁座23に当接して流体の流れを遮断することができる。
次に、本発明によるダイヤフラム弁の様々な変形形態を説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態に係るダイヤフラム弁50を示している。図7では、図1に示されている第1の実施形態に係るダイヤフラム弁10の構成要素と共通する構成要素には同じ参照符号を付している。
第2の実施形態のダイヤフラム弁50は、第1の実施形態のダイヤフラム弁10と同様に、弁本体11と、弁本体11内に設けられる弁機構12と、弁本体11の上部に取り付けられるボンネットと13と、弁本体11の下部に取り付けられる加圧ユニット51とを備え、弁機構12によってダイヤフラム弁50の開閉を行うようになっている。第2の実施形態のダイヤフラム弁の弁本体11、弁機構12、ボンネット13の構造は、第1の実施形態のダイヤフラム弁10のものと同じであるので、ここでは説明を省略する。一方、第2の実施形態のダイヤフラム弁50の加圧ユニット51は、第1のユニット筐体52が鍔部を有しておらず、筒状本体52aの突出部52cを除く部分が第2のユニット筐体53の受容穴53a内に受容されており、第1のダイヤフラム24の環状の水平支持部24dが、第1の実施形態のダイヤフラム弁10のように弁本体11と第1のユニット筐体35(詳細にはその鍔部35b)との間に挟持されるのではなく、弁本体11と第2のユニット筐体53との間に挟持される点において、第1の実施形態のダイヤフラム弁10の加圧ユニット14と異なっている。第2のダイヤフラム弁50における第1のユニット筐体52と第2のユニット筐体53との連結のためのバヨネット構造などの他の構造や、ダイヤフラム弁50の組み立て方法や動作などは、第1の実施形態のダイヤフラム弁10のものと実質的に同じであるので、ここでは説明を省略する。
図8は、本発明の第3の実施形態に係るダイヤフラム弁60を示している。図8では、図1に示されている第1の実施形態に係るダイヤフラム弁10の構成要素と共通する構成要素には同じ参照符号を付している。
第3の実施形態のダイヤフラム弁60は、第1の実施形態のダイヤフラム弁10と同様に、弁本体11と、弁本体11内に設けられる弁機構12と、弁本体11の上部に取り付けられるボンネットと13と、弁本体11の下部に取り付けられる加圧ユニット61とを備え、弁機構12によってダイヤフラム弁60の開閉を行うようになっている。第3の実施形態のダイヤフラム弁60の弁本体11、弁機構12、ボンネット13の構造は、第1の実施形態のダイヤフラム弁10のものと同じであるので、ここでは説明を省略する。一方、第3の実施形態のダイヤフラム弁60の加圧ユニット61では、第1の加圧室34がシリンダ室になっていると共に、第1の実施形態のダイヤフラム弁10の加圧ユニット14の可動体37に代えて、ピストン62が第1の加圧室34内に配置されており、第2のユニット筐体36に設けられた作動流体供給口63から第1の加圧室34内に第1の加圧手段としての作動流体を供給することによって弁体部24aを弁座23に押し付ける方向にピストン62を常時付勢するようになっている点において、第1の実施形態のダイヤフラム弁10の加圧ユニット14と異なっている。ピストン62は、可動体37と同様に、縮小部62aと拡大部62bとを含んでいるが、拡大部62bの外周面が第1のユニット筐体35の貫通孔39の大径部39bの内周面と摺動するようになっており、ピストン62の外周面と貫通孔39の大径部39bの内周面との間を封止するシール部材64が設けられている点で可動体37と異なっている。なお、第1のユニット筐体35には、第1の加圧室34においてピストン62を挟んで作動流体供給口63が開口する空間とは反対側の空間に開口するように呼吸口(図示せず)が設けられている。また、図8に示されている実施形態では、弁体部24aを弁座23に押し付ける方向にピストン62を付勢する付勢バネ41が第1の加圧室34内に設けられているが、付勢バネ41は設けなくてもよい。ダイヤフラム弁60における第1のユニット筐体35と第2のユニット筐体36との連結のためのバヨネット構造などの他の構造や、ダイヤフラム弁60の組み立て方法や動作などは、第1の実施形態のダイヤフラム弁のものと実質的に同じであるので、ここでは説明を省略する。
以上、図示されている実施形態を参照して、本発明によるダイヤフラム弁を説明したが、本発明は、組み立ての際に加圧ユニットを一つのユニットとして扱うことが可能になっていれば、図示されている実施形態に限定されるものではない。例えば、図示されている実施形態では、第1の加圧手段として、作動流体、付勢バネ又はその組み合わせを使用しているが、ソレノイド(電磁石)等を使用することも可能である。また、第2の加圧手段として、作動流体を使用しているが、作動流体に代えて又は作動流体に加えて付勢バネを使用してもよい。さらに、図示されている実施形態では、第1のダイヤフラム24の弁体部24aと第2のダイヤフラム25の押圧体25aとが接離可能となっているが、図9に示されている第4の実施形態のダイヤフラム弁10´のように、弁体部24aと押圧体25aとに螺合部70を設け、弁体部24aと押圧体25aとを連結するようにしてもよい。加えて、上記の説明では、本発明によるダイヤフラム弁の用途として、定圧弁が例示されているが、本発明のダイヤフラム弁の用途は、定圧弁に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載される構成を満たすものであれば、本発明は、サックバック弁、オンオフ弁などにも適用が可能である。
10,10´ ダイヤフラム弁
11 弁本体
12 弁機構
13 ボンネット
14 加圧ユニット
16 第1の弁室
17 入口側流路
20 第2の弁室
21 出口側流路
22 連通路
23 弁座
24 第1のダイヤフラム
25 第2のダイヤフラム
28 作動流体供給口
31 第2の加圧室
34 第1の加圧室
35 第1のユニット筐体
35a 筒状本体
35b 鍔部
36 第2のユニット筐体
36a 受容穴
37 可動体
37a 縮小部
37b 拡大部
38 ステム
39 貫通孔
39a 小径部
39b 大径部
41 付勢バネ
45 バヨネット爪
46 バヨネット爪
47 係止部
48 連結穴
50 ダイヤフラム弁
51 加圧ユニット
52 第1のユニット筐体
52a 筒状本体
53 第2のユニット筐体
60 ダイヤフラム弁
61 加圧ユニット
62 ピストン
63 作動流体供給口

Claims (10)

  1. 入口流路に連通する第1の弁室と出口流路に連通する第2の弁室と該第1の弁室と該第2の弁室とを連通させる連通路とが形成されている弁本体と、
    前記連通路に形成されている弁座と、
    前記第1の弁室に面するように前記弁本体に取り付けられ且つ前記弁座に接離する弁体部を支持する第1のダイヤフラムと、前記第2の弁室に面するように前記弁本体に取り付けられる第2のダイヤフラムとを含む弁機構と、
    前記弁本体との間に前記第1のダイヤフラムの外周部を挟持するように前記弁本体に取り付けられ、前記弁体部を前記弁座へ向かって押し付けるように前記第1のダイヤフラムを加圧する加圧ユニットと、
    前記弁本体との間に前記第2のダイヤフラムの外周部を挟持するように前記弁本体に取り付けられるボンネットと、
    を備え、前記加圧ユニットが、内部に第1の加圧室を形成するように組み立てられる第1のユニット筐体及び第2のユニット筐体と、前記第1の加圧室内で前記第1の弁室へ接近及び離反する方向に移動する可動体と、該可動体から延び且つ前記加圧ユニットの外部へ突出するステムとを含み、前記第1のユニット筐体が第1の係合部をさらに備えると共に、前記第2のユニット筐体が第2の係合部をさらに備え、前記可動体を前記第1の加圧室内に保持した状態で前記第1のユニット筐体と前記第2のユニット筐体とが前記第1の係合部と前記第2の係合部とを互いに係止させることによって連結されて一体化された一つのユニットとして構成されており、前記ステムの先端部に前記弁体部が連結され、第1の加圧手段で前記可動体を加圧して前記弁座に押し付ける方向の力を前記ステムを介して前記弁体部に常時付与すると共に、第2の加圧手段で前記第2のダイヤフラムを加圧して前記弁座から離反させる方向の力を前記第2のダイヤフラムから前記弁体部に付与することによって、前記弁機構が流体の流通を制御することを特徴とするダイヤフラム弁。
  2. 前記第2のダイヤフラムが、前記第1のダイヤフラムの前記弁体部と接離可能な押圧部を有し、前記第2の加圧手段で前記弁座に接近させる方向の力を前記第2のダイヤフラムに付与することによって、前記押圧部が前記弁体部に当接し、前記第1の加圧手段で前記弁体部に付与される力に抗して前記弁体部を前記弁座から離間させるようになっている、請求項1に記載のダイヤフラム弁。
  3. 前記第1のユニット筐体が、貫通孔を有した筒状本体を備え、前記貫通孔が、前記第1のダイヤフラムに面する小径部と、該小径部よりも大きく肩部を形成するように前記小径部と接続されている大径部とを含み、前記貫通孔の大径部側の端部を前記第2のユニット筐体で塞ぐように前記第1のユニット筐体と前記第2のユニット筐体とを連結することによって、前記第1の加圧室を形成し、前記貫通孔の前記小径部は、前記ステムの通過を許容する一方、前記第1の加圧室内に配置された前記可動体の少なくとも一部より小さく、前記可動体の少なくとも一部が前記肩部に干渉して前記可動体が前記第1の加圧室内に保持されるように構成されている、請求項2に記載のダイヤフラム弁。
  4. 前記第1のユニット筐体が前記筒状本体の周壁から外方に突出して延び且つ前記弁本体と前記第2のユニット筐体との間に挟持される鍔部をさらに備える、請求項3に記載のダイヤフラム弁。
  5. 前記第1のユニット筐体の前記第1の係合部と前記第2のユニット筐体の前記第2の係合部とがバヨネット構造である、請求項1に記載のダイヤフラム弁。
  6. 前記可動体が前記第1の加圧室内で移動するバネ受け部材であり、前記ステムを介して前記弁体部を前記弁座に押し付けるように前記バネ受け部材を付勢する付勢バネが前記第1の加圧手段として前記第1の加圧室内に設けられている、請求項1から請求項5の何れか一項に記載のダイヤフラム弁。
  7. 前記第1の加圧室がシリンダ室であり、前記可動体が前記シリンダ室の内周面に沿って移動するように前記シリンダ室に収容されたピストンであり、前記シリンダ室に第1の加圧手段としての作動流体が供給されるようになっている、請求項1から請求項5の何れか一項に記載のダイヤフラム弁。
  8. 前記シリンダ室内にさらに付勢バネが設けられており、前記付勢バネによって前記ピストンを前記弁本体へ向けて付勢している、請求項7に記載のダイヤフラム弁。
  9. 第2の加圧手段が、前記ボンネットに設けられた第2の加圧室に供給されて前記第2のダイヤフラムを加圧する作動流体、前記ボンネットに設けられた第2の加圧室に配置された付勢バネ、又はその組み合わせである、請求項1から請求項8の何れか一項に記載のダイヤフラム弁。
  10. 前記弁体部と前記ステムとが圧入嵌合によって連結されている、請求項1から請求項9の何れか一項に記載のダイヤフラム弁。
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