JP7348186B2 - 樹脂組成物 - Google Patents

樹脂組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP7348186B2
JP7348186B2 JP2020534659A JP2020534659A JP7348186B2 JP 7348186 B2 JP7348186 B2 JP 7348186B2 JP 2020534659 A JP2020534659 A JP 2020534659A JP 2020534659 A JP2020534659 A JP 2020534659A JP 7348186 B2 JP7348186 B2 JP 7348186B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
resin
maleic anhydride
side chain
crosslinking site
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020534659A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2020027109A1 (ja
Inventor
圭介 知野
由浩 森永
裕平 佐々木
隆文 石井
俊之 岩▲崎▼
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Eneos Corp
Original Assignee
Eneos Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Eneos Corp filed Critical Eneos Corp
Publication of JPWO2020027109A1 publication Critical patent/JPWO2020027109A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7348186B2 publication Critical patent/JP7348186B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L23/00Compositions of homopolymers or copolymers of unsaturated aliphatic hydrocarbons having only one carbon-to-carbon double bond; Compositions of derivatives of such polymers
    • C08L23/26Compositions of homopolymers or copolymers of unsaturated aliphatic hydrocarbons having only one carbon-to-carbon double bond; Compositions of derivatives of such polymers modified by chemical after-treatment
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L51/00Compositions of graft polymers in which the grafted component is obtained by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds; Compositions of derivatives of such polymers
    • C08L51/06Compositions of graft polymers in which the grafted component is obtained by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds; Compositions of derivatives of such polymers grafted on to homopolymers or copolymers of aliphatic hydrocarbons containing only one carbon-to-carbon double bond
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L53/00Compositions of block copolymers containing at least one sequence of a polymer obtained by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds; Compositions of derivatives of such polymers
    • C08L53/02Compositions of block copolymers containing at least one sequence of a polymer obtained by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds; Compositions of derivatives of such polymers of vinyl-aromatic monomers and conjugated dienes
    • C08L53/025Compositions of block copolymers containing at least one sequence of a polymer obtained by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds; Compositions of derivatives of such polymers of vinyl-aromatic monomers and conjugated dienes modified
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L91/00Compositions of oils, fats or waxes; Compositions of derivatives thereof
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L2207/00Properties characterising the ingredient of the composition
    • C08L2207/06Properties of polyethylene
    • C08L2207/062HDPE
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L2312/00Crosslinking

Description

本発明は、樹脂組成物に関する。
従来より、樹脂組成物の分野においては、用途に応じた特性を発揮させるために、様々な樹脂が研究されている。例えば、特開2002-60601号公報(特許文献1)においては、(A)水素結合ドナーとして作用する官能基を有する熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)水素結合アクセプターとして作用する官能基を分子中に2個以上有する化合物からなるポリエステル樹脂組成物が開示されている。また、特開2002-146169号公報(特許文献2)においては、(A)水素結合アクセプターとして作用するカルボニル基以外の官能基を有する熱可塑性ポリエステル樹脂と、(B)水素結合ドナーとして作用する官能基を分子中に2個以上有する化合物とからなるポリエステル樹脂組成物が開示されている。また、特開2002-201265号公報(特許文献3)においては、主鎖中に特定の2級アミノ基および/あるいは末端に特定の1級アミノ基を有するとともに、前記2級アミノ基および1級アミノ基以外の水素結合ドナーとして作用する官能基をさらに有する熱可塑性樹脂が開示されている。さらに、特開2000-169527号公報(特許文献4)においては、環状酸無水物基を側鎖に有するプラスチック性ポリマーと、複素環アミン含有化合物とを、該複素環アミン含有化合物が環状酸無水物基と化学的結合しうる温度下に反応させて得られる熱可塑性樹脂が開示されており、その実証例として、実施例6~8において無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成工業株式会社製の商品名「ユーメックス1010」)と3-アミノ-1,2,4-トリアゾールとを反応させた熱可塑性樹脂が開示されている。しかしながら、このような特許文献1~4に記載のような従来の樹脂又はそれを利用した組成物は、圧縮永久歪に対する耐性と流動性の双方を同時に十分に優れたものとすることができず、これらの特性を両立させることができなかった。
特開2002-60601号公報 特開2002-146169号公報 特開2002-201265号公報 特開2000-169527号公報
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、圧縮永久歪に対する耐性及び流動性といった2つの特性をいずれも十分に優れたものとして両立させることが可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、樹脂組成物を、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下である樹脂(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下である樹脂(B)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分を含有するものとし、かつ、前記樹脂(A)及び前記樹脂(B)をいずれも、融点が68℃~134℃でありかつマレイン化率が0.5~2.5質量%である無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤との反応物とすることにより、圧縮永久歪に対する耐性及び流動性といった2つの特性をいずれも十分に優れたものとして両立させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の樹脂組成物は、カカルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下である樹脂(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下である樹脂(B)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分を含有し
前記樹脂(A)及び前記樹脂(B)がいずれも、融点が68℃~134℃でありかつマレイン化率が0.5~2.5質量%である無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤との反応物であり、
前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂が無水マレイン酸で変性されたポリエチレンであり、かつ、
前記架橋剤が、水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有し、かつ、トリアゾール環、イソシアヌレート環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環、トリアジン環及びヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種の含窒素複素環を有する化合物、並びに、ペンタエリスリトールからなる群から選択される少なくとも1種である、ものである。
本発明によれば、圧縮永久歪に対する耐性及び流動性といった2つの特性をいずれも十分に優れたものとして両立させることが可能な樹脂組成物を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、前記樹脂(A)、並びに、前記樹脂(B)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分を含有し、かつ、前記樹脂(A)及び前記樹脂(B)がいずれも、融点が68℃~134℃でありかつマレイン化率が0.5~2.5質量%である無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤との反応物である、ものである。
本発明にかかる樹脂成分は、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下である樹脂(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下である樹脂(B)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂からなる。このような樹脂(A)~(B)において、「側鎖」とは、樹脂の側鎖および末端をいう。また、「カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)」とは、樹脂の主鎖を形成する原子(通常、炭素原子)に、水素結合性架橋部位としてのカルボニル含有基および/または含窒素複素環(より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環)が化学的に安定な結合(共有結合)をしていることを意味する。また、「側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有され」とは、水素結合性架橋部位を有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(a’)」と称する。)と、共有結合性架橋部位を有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(b)」と称する。)の双方の側鎖を含むことによって樹脂の側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方が含有されている場合の他、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖(1つの側鎖中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖:以下、このような側鎖を便宜上、場合により「側鎖(c)」と称する。)を含むことで、樹脂の側鎖に、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方が含有されている場合を含む概念である。
また、このような樹脂成分としては、延伸性が向上するといった観点から、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下である樹脂(B)からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。このような樹脂成分中の前記樹脂(A)~(B)の主鎖(主鎖部分を形成するポリマー(樹脂)の種類)は、前記樹脂(A)~(B)が無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤との反応物であることから、かかる無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の主鎖に由来されたものとなる。なお、このような樹脂(A)~(B)の主鎖部分を形成する熱可塑性樹脂(無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の主鎖)については後述する。
また、このような樹脂(A)~(B)のガラス転移点はいずれも、前述のように25℃以下である。本発明において「ガラス転移点」は、示差走査熱量測定(DSC-Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。なお、測定に際しては、昇温速度を10℃/minとして測定を行う。このような樹脂のガラス転移点を25℃以下とすることで、通常の使用温度域(室温(25℃)以上)で柔軟性を付与することが可能となる。
また、前記樹脂(A)~(B)は、上述のように、側鎖として、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a);水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a’)及び共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b);並びに、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有する側鎖(c);のうちの少なくとも1種を有するものとなる。なお、本発明において、側鎖(c)は、側鎖(a’)としても機能しつつ側鎖(b)としても機能するような側鎖であるとも言える。以下において、各側鎖を説明する。
〈側鎖(a’):水素結合性架橋部位を含有する側鎖〉
このような水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a’)は、水素結合による架橋を形成し得る基(例えば、水酸基、後述の側鎖(a)に含まれる水素結合性架橋部位等)を有し、その基に基づいて水素結合を形成する側鎖であればよく、その構造は特に制限されるものではない。ここにおいて、水素結合性架橋部位は、水素結合により、その樹脂の分子同士を架橋する部位である。なお、水素結合による架橋は、水素のアクセプター(孤立電子対を含む原子を含有する基等)と、水素のドナー(電気陰性度が大きな原子に共有結合した水素原子を備える基等)とがあって初めて形成されることから、樹脂の分子同士の側鎖間において水素のアクセプターと水素のドナーの双方が存在しない場合には、水素結合による架橋が形成されない。そのため、樹脂の分子同士の側鎖間において、水素のアクセプターと水素のドナーの双方が存在することによって初めて、水素結合性架橋部位が系中に存在することとなる。なお、本発明においては、樹脂の分子同士の側鎖間において、水素のアクセプターとして機能し得る部分(例えばカルボニル基等)と、水素のドナーとして機能し得る部分(例えば水酸基等)の双方が存在することをもって、その側鎖の水素のアクセプターとして機能し得る部分とドナーとして機能し得る部分とを、水素結合性架橋部位と判断することができる。
このような側鎖(a’)中の水素結合性架橋部位としては、より強固な水素結合を形成するといった観点から、後述の側鎖(a)がより好ましい。また、同様の観点で、前記側鎖(a’)中の水素結合性架橋部位としては、カルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位であることがより好ましい。
〈側鎖(a):カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖〉
カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)は、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有するものであればよく、他の構成は特に限定されない。このような水素結合性架橋部位としては、カルボニル含有基および含窒素複素環を有するものがより好ましい。
このようなカルボニル含有基は、カルボニル基を含むものであればよく、特に限定されず、その具体例としては、アミド、エステル、イミド、カルボキシ基、カルボニル基、チオエステル基等が挙げられる。なお、本発明においては、樹脂(A)及び(B)はいずれも、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤との反応物であることから、該無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂が有する「無水マレイン酸基」に由来した基(反応させた架橋剤の種類にもよるが、例えば、エステル基、カルボニル基、アミド基、イミド基、カルボキシ基等)を有するものとなる。
また、前記側鎖(a)が含窒素複素環を有する場合、前記含窒素複素環は、直接又は有機基を介して前記側鎖(a)に導入されていればよく、その構成等は特に制限されるものではない。このような含窒素複素環は、複素環内に窒素原子を含むものであれば複素環内に窒素原子以外のヘテロ原子、例えば、イオウ原子、酸素原子、リン原子等を有するものでも用いることができる。なお、このような含窒素複素環は置換基を有していてもよい。ここで、前記側鎖(a)中に含窒素複素環を用いた場合、その複素環構造に起因して架橋を形成する水素結合がより強くなり、樹脂組成物の延伸性、耐衝撃性がより向上するため好ましい。また、このような含窒素複素環としては、水素結合がより強固になり、圧縮永久歪みや機械的強度がより向上するといった観点から、5員環及び/又は6員環であることが好ましい。また、このような含窒素複素環としては、含窒素複素環をベンゼン環と縮合させたもの、含窒素複素環同士を縮合させたものであってもよい。このような含窒素複素環としては、公知のもの(例えば特許第5918878号公報の段落[0054]~[0067]に記載のもの、特開2017-206604号公報の段落[0035]~[0048]に記載のもの等)を適宜利用できる。なお、このような含窒素複素環は置換基を有するものであってもよい。このような含窒素複素環としては、例えば、ピロロリン、ピロリドン、オキシインドール(2-オキシインドール)、インドキシル(3-オキシインドール)、ジオキシインドール、イサチン、インドリル、フタルイミジン、β-イソインジゴ、モノポルフィリン、ジポルフィリン、トリポルフィリン、アザポルフィリン、フタロシアニン、ヘモグロビン、ウロポルフィリン、クロロフィル、フィロエリトリン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン、イミダゾロン、イミダゾリドン、ヒダントイン、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリドン、インダゾール、ピリドインドール、プリン、シンノリン、ピロール、ピロリン、インドール、インドリン、オキシルインドール、カルバゾール、フェノチアジン、インドレニン、イソインドール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール、フェナントロリン、オキサジン、ベンゾオキサジン、フタラジン、プテリジン、ピラジン、フェナジン、テトラジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、アントラニル、ベンゾチアゾール、ベンゾフラザン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、アントラゾリン、ナフチリジン、チアジン、ピリダジン、ピリミジン、キナゾリン、キノキサリン、トリアジン、ヒスチジン、トリアゾリジン、メラミン、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ヒドロキシエチルイソシアヌレートおよびこれらの誘導体等が挙げられる。
このような含窒素複素環としては、リサイクル性、圧縮永久歪、硬度及び機械的強度(特に引張強度)に優れるといった観点から、それぞれ置換基を有していてもよい、トリアゾール環、イソシアヌレート環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環、トリアジン環及びヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種であることが好ましく、それぞれ置換基を有していてもよい、トリアゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環およびヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
このような含窒素複素環が有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基、アミノ基、イミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシシリル基、チオール基(メルカプト基)等が挙げられる。また、このような置換基としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、ヘキシル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基などのアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子からなる基;シアノ基;アミノ基;イミノ基;芳香族炭化水素基;エステル基;エーテル基;アシル基;チオエーテル基;等も用いることができる。また、これらの置換基の置換位置は特に限定されず、置換基数も限定されない。
また、前記側鎖(a)において、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環の双方が含まれる場合、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環は、互いに独立の側鎖として主鎖に導入されていてもよいが、上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環とが互いに異なる基を介して結合した1つの側鎖として主鎖に導入されていることが好ましい。このような側鎖(a)の構造としては、例えば、特許第5918878号公報の段落[0068]~[0081]に記載されているような構造等としてもよい。
また、このような側鎖(a)は、無水マレイン酸変熱可塑性樹脂と架橋剤との反応により形成される。このような側鎖(a)を形成する際に利用する架橋剤としては、無水マレイン酸基と反応して水素結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(以下、場合により、単に「水素結合性架橋部位を形成する化合物」と称する)を好適に利用できる。このような架橋剤として利用可能な「水素結合性架橋部位を形成する化合物」としては、含窒素複素環を導入し得る化合物を好適に利用できる。このように、前記架橋剤としては、「水素結合性架橋部位を形成する化合物(より好ましくは、含窒素複素環を導入し得る化合物)」を好適に利用できる。このような「水素結合性架橋部位を形成する化合物(より好ましくは、含窒素複素環を導入し得る化合物)」としては、例えば、無水マレイン酸基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基、イミノ基等)を有する化合物が好ましく、水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物がより好ましい。また、このような無水マレイン酸基と反応する置換基を有する化合物(より好ましくは、水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物)は、含窒素複素環を有するものであることが特に好ましい。
〈側鎖(b):共有結合性架橋部位を含有する側鎖〉
本明細書において「共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b)」は、主鎖を形成する樹脂の分子同士を共有結合により架橋する部位(共有結合性架橋部位:例えば、無水マレイン酸基と架橋剤とを反応せしめて形成し得る、アミド、エステル、および、チオエステルからなる群より選択される少なくとも1つの結合等の化学的に安定な結合(共有結合)等によりポリマー同士を架橋する部位)を含有している側鎖であることを意味する。なお、側鎖(b)は共有結合性架橋部位を含有する側鎖であるが、共有結合性部位を有しつつ、更に、水素結合が可能な基を有して、側鎖間において水素結合による架橋を形成するような場合には、後述の側鎖(c)として利用されることとなる(なお、前記樹脂の分子同士の側鎖間に水素結合を形成することが可能な、水素のドナーと、水素のアクセプターの双方が含まれていない場合、例えば、系中に単にエステル基(-COO-)が含まれている側鎖のみが存在するような場合には、エステル基(-COO-)同士では特に水素結合は形成されないため、かかる基は水素結合性架橋部位としては機能しない。他方、例えば、カルボキシ基やトリアゾール環のような、水素結合の水素のドナーとなる部位と、水素のアクセプターとなる部位の双方を有する構造を前記樹脂の分子同士の側鎖にそれぞれ含む場合には、前記樹脂の分子同士の側鎖間で水素結合が形成されるため、水素結合性架橋部位が含有されることとなる。また、例えば、前記樹脂の分子同士の側鎖間に、エステル基と水酸基とが共存して、それらの基により側鎖間で水素結合が形成される場合、その水素結合を形成する部位が水素結合性架橋部位となる。そのため、側鎖(b)が有する構造自体や、側鎖(b)が有する構造と他の側鎖が有する置換基の種類等に応じて、側鎖(c)として利用される場合がある。)。また、ここにいう「共有結合性架橋部位」は、共有結合により樹脂の分子同士を架橋する部位である。
このような共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b)は特に制限されないが、例えば、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と;無水マレイン酸基(官能基)と反応して共有結合性架橋部位を形成し得る化合物(以下、場合により「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」と称する)からなる架橋剤と;を反応させることで形成される、共有結合性架橋部位を含有する側鎖であることが好ましい。このような側鎖(b)の前記共有結合性架橋部位における架橋は、アミド、エステル、および、チオエステルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により形成されてなることが好ましい。
このような架橋剤として利用可能な「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、無水マレイン酸基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基、イミノ基等)を有する化合物が好ましく、水酸基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種を有する化合物がより好ましい。また、このような無水マレイン酸基と反応する置換基を有する化合物(より好ましくは、水酸基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種を有する化合物)は、含窒素複素環を有するものであることが特に好ましい。
また、このような架橋剤として利用可能な「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、例えば、1分子中にアミノ基および/またはイミノ基を2個以上(アミノ基およびイミノ基をともに有する場合はこれらの基を合計して2個以上)有するポリアミン化合物;1分子中に水酸基を2個以上有するポリオール化合物;1分子中にイソシアネート(NCO)基を2個以上有するポリイソシアネート化合物;1分子中にチオール基(メルカプト基)を2個以上有するポリチオール化合物;等が挙げられる。ここにおいて「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」は、かかる化合物が有する置換基の種類や、かかる化合物を利用して反応せしめた場合の反応の進行の程度、等によっては、前記水素結合性架橋部位及び前記共有結合性架橋部位の双方を導入し得る化合物となる(例えば、水酸基を3個以上有する化合物を架橋剤として利用して、共有結合による架橋部位を形成する場合、反応の進行の程度によっては、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の官能基(無水マレイン酸基)に2個の水酸基が反応して、残りの1個の水酸基が水酸基として残るような場合も生じ、その場合には、水素結合性の架橋を形成する部位も併せて導入され得ることとなる。)。そのため、ここに例示する「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」には、「水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物」も含まれ得る。このような観点から、側鎖(b)を形成する場合には、「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」の中から目的の設計に応じて化合物を適宜選択したり、反応の進行の程度を適宜制御する等して、側鎖(b)を形成すればよい。なお、共有結合性架橋部位を形成する化合物が複素環を有している場合には、より効率よく水素結合性架橋部位も同時に製造することが可能になり、後述の側鎖(c)として、前記共有結合性架橋部位を有する側鎖を効率よく形成することが可能となる。そのため、かかる複素環を有しているような化合物の具体例については、側鎖(c)を製造するための好適な化合物として、特に側鎖(c)と併せて説明する。なお、側鎖(c)は、その構造から、側鎖(a)や側鎖(b)等の側鎖の好適な一形態であるとも言える。
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」として利用可能な前記ポリアミン化合物、前記ポリオール化合物、前記ポリイソシアネート化合物、前記ポリチオール化合物としては、公知のもの(例えば特許第5918878号公報の段落[0094]~[0106]に記載のもの等)を適宜利用することができる。
〈側鎖(c):水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖〉
このような側鎖(c)は、1つの側鎖中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖である。このような側鎖(c)に含まれる水素結合性架橋部位は、側鎖(a’)において説明した水素結合性架橋部位と同様のものであり、側鎖(a)中の水素結合性架橋部位と同様のものが好ましい。また、側鎖(c)に含まれる共有結合性架橋部位としては、側鎖(b)中の共有結合性架橋部位と同様のものを利用できる(その好適な架橋も同様のものを利用できる。)。
このような側鎖(c)は、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の官能基(無水マレイン酸基)と反応して水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)とを反応させることで、形成される側鎖であることが好ましい。
このような水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)としては、無水マレイン酸基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基、イミノ基等)を有する化合物が好ましく、水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物がより好ましい。また、このような水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)としては、複素環(特に好ましくは含窒素複素環)を有しかつ共有結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(共有結合を生成する化合物)が好ましく、中でも、複素環含有ポリオール、複素環含有ポリアミン、複素環含有ポリチオール等がより好ましい。なお、このような複素環を含有する、ポリオール、ポリアミンおよびポリチオールは、複素環(特に好ましくは含窒素複素環)を有するものである以外は、前述の「共有結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(共有結合を生成する化合物)」において説明した前記ポリオール化合物、前記ポリアミン化合物および前記ポリチオール化合物と同様のものを適宜利用することができる。また、複素環を含有する、ポリオール、ポリアミンおよびポリチオールとしては公知のもの(例えば、特許5918878号公報の段落[0113]に記載のもの)を適宜利用できる。
(側鎖(b)~(c)中の共有結合性架橋部位として好適な構造について)
側鎖(b)及び/又は(c)に関して、共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(-N=)、エステル結合(-COO-)を含有している場合であって、これらの結合部位が水素結合性架橋部位としても機能する場合、他の水素結合架橋部位と水素結合して架橋がより強固となるといった観点から好ましい。このように、共有結合性架橋部位を有する側鎖中の第三級アミノ結合(-N=)やエステル結合(-COO-)が、他の側鎖との間において、水素結合を形成するような場合、かかる第三級アミノ結合(-N=)、エステル結合(-COO-)を含有している共有結合性架橋部位は、水素結合性架橋部位も備えることとなり、側鎖(c)として機能し得る。
無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂中の官能基である無水マレイン酸基と反応して、前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を含有している共有結合性架橋部位を形成させることが可能な化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成することが可能な化合物:架橋剤のうちの1種)としては、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N-ビス(2-メチル-2-ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)を好適なものとして挙げることができる。
前記側鎖(b)及び/又は側鎖(c)の上記共有結合性架橋部位における架橋としては、例えば、特開2017-206604号公報の段落[0100]~[0109]に記載の構造と同様のものとしてもよい。例えば、前記側鎖(b)及び/又は側鎖(c)の上記共有結合性架橋部位における架橋としては、下記一般式(1)~(3)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ含有しているものを好適に利用できる(なお、以下の構造において、水素結合性架橋部位を含む場合、その構造を有する側鎖は、側鎖(c)として利用されるものである)。
上記一般式(1)~(3)中、E、J、KおよびLはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR’(R’は水素原子または炭素数1~10のアルキル基である。)またはイオウ原子;あるいはこれらの原子または基を含んでもよい有機基であり、Gは酸素原子、イオウ原子または窒素原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1~20の炭化水素基である。また、このような置換基Gとしては、下記一般式(111)~(114)で表される基が好ましい。
以上、側鎖(a’)、側鎖(a)、側鎖(b)、側鎖(c)について説明したが、このような樹脂中の側鎖の各基(構造)等は、NMR、IRスペクトル等の通常用いられる分析手段により確認することができる。
また、前記樹脂(A)は、前記側鎖(a)を有するガラス転移点が25℃以下の樹脂であり、前記樹脂(B)は、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有しているガラス転移点が25℃以下の樹脂(側鎖として、側鎖(a’)及び側鎖(b)の双方を有する樹脂や、側鎖に側鎖(c)を含む樹脂等)である。そして、本発明にかかる樹脂成分としては、前記樹脂(A)~(B)のうちの1種を単独で利用してもよく、あるいは、それらのうちの2種以上を混合して利用してもよい。
なお、前記樹脂(B)は、側鎖(a’)及び側鎖(b)の双方を有する樹脂であっても、側鎖(c)を有する樹脂であってもよいが、このような樹脂(B)の側鎖に含有される水素結合性架橋部位としては、より強固な水素結合が形成されるといった観点から、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位(より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位)であることが好ましい。また、前記樹脂(B)の側鎖に含有される前記共有結合性架橋部位における架橋は、その架橋部位を含む側鎖間において水素結合等の分子間相互作用を引き起こさせることも可能となるといった観点から、アミド、エステル、および、チオエステルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により形成されてなることが好ましい。
また、本発明にかかる樹脂(A)~(B)はいずれも、融点が68℃~134℃でありかつマレイン化率が0.5~2.5質量%である無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤との反応物である。
このように樹脂(A)~(B)を形成するために用いられる無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂は、融点が68℃~134℃(より好ましくは70℃~130℃、更に好ましくは75℃~128℃)のものである。このような無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の融点が前記下限未満では流動性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると流動性が高くなり過ぎる傾向にある。このような融点としては、示差走査熱量測定(DSC-Differential Scanning Calorimetry)により測定した値を採用する。なお、このような融点の測定に際しては、昇温速度を10℃/minとして測定を行う。
また、このような無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂は、マレイン化率が0.5~2.5質量%(より好ましくは0.6~2.4質量%、更に好ましくは0.7~2.3質量%)のものである。このようなマレイン化率が前記下限未満では圧縮永久歪に対する耐性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると同様に圧縮永久歪に対する耐性が低下する傾向にある。
なお、本発明において「マレイン化率」の値(単位:質量%)は、下記[マレイン化率の測定方法]を採用して求められる値を採用する。
[マレイン化率の測定方法]
先ず、測定対象である無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂400mgを、80mLのテトラヒドロフラン(以下、便宜上、場合により「THF」と略記する)に溶解させて、測定用のTHF溶液を得る。次いで、前記測定用のTHF溶液を、小数点以下3桁以上のファクターが求められている0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液(容積分析用標準溶液:補正つきの0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液:小数点以下3桁以上のファクター(特性値:補正値)が記載されている市販のものを利用してもよい)で滴定する。ここにおいて、終点(中和点)は機器を利用した電位差滴定により求める。また、0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液のファクター(特性値:補正値)は、シュウ酸標準液による滴定で求めてもよいし、ファクターが求められている市販品を利用する場合には、市販品の試薬に記載されているファクター(例えばその試薬の検査成績書に記載されているファクター等)をそのまま利用してもよい。次いで、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂を用いない以外は同様の測定(空試験)を行って滴定し、80mLのTHFに対する0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液の滴下量(ブランク値)も併せて求める。次に、求められた滴定値(滴下量)を利用して、下記「酸価の計算式」に基づいて酸価を算出し、次いで、得られる酸価の値を利用して、下記「マレイン化率の計算式」に基づいてマレイン化率を算出することにより、マレイン化率(単位:質量%)を求める。
<酸価の計算式>
[酸価]=(A-B)×M×C×f/S
(式中、Aは前記測定用の溶液の中和に要した0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液の滴下量(滴定値:mL))を示し、Bはブランク(空試験)での0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液の滴下量(無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂を用いない以外は同様の測定を行って得られる滴定値(ブランク値:mL))を示し、Mは水酸化カリウムの分子量(56.1(定数))を示し、Cは水酸化カリウムのエタノール溶液中の水酸化カリウムの濃度(0.1モル/L(定数))を示し、fは水酸化カリウムのエタノール溶液のファクター(補正値:市販品の試薬に記載されているファクター(例えばその試薬の検査成績書に記載されているファクター等)をそのまま利用してもよい)を示し、Sは、測定に用いる無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の質量(400g(定数))を示す。なお、かかる計算により求められる「酸価」の単位は「mgKOH/g」となる。)
<マレイン化率の計算式>
[マレイン化率]=[酸価]÷M×M÷1000×100÷2
(式中、酸価は上記「酸価の計算式」により求められた値(単位:mgKOH/g)を示し、Mは水酸化カリウムの分子量(56.1(定数))を示し、Mは無水マレイン酸の分子量(98.1(定数))を示す。かかる計算により求められる「マレイン化率」の単位は「質量%」となる。)。
また、このような無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の主鎖(樹脂(A)~(B)の主鎖部分を形成する樹脂)としては、いわゆる熱可塑性樹脂の中から、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の融点が68℃~134℃となるように適宜選択したものを利用できる(なお、本明細書にいう無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂における「熱可塑性樹脂」は、熱可塑性を有し、かつ、融点が68℃以上であるポリマー(融点が68℃~134℃の範囲にあるものが好ましい)をいい、いわゆる「エラストマー」や「ゴム」以外の熱可塑性のポリマーをいう)。このような無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の主鎖(樹脂(A)~(B)の主鎖部分を形成する樹脂)は、特に制限されるものではないが、中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ポリオレフィン系樹脂であることが特に好ましい。
このような無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の主鎖を形成するポリオレフィン系樹脂としては、α-オレフィンの重合体であっても、あるいは、α-オレフィンと、他の共重合可能なモノマーとの共重合体からなる樹脂であってもよい。このようなポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE:高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、リニアポリエチレン(L-LDPE))、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)等を挙げることができる。なお、ここにおいて、高密度ポリエチレンとは、密度が0.94g/m以上のポリエチレンをいい、中密度ポリエチレンとは、密度が0.92g/m以上0.94g/m未満のポリエチレンをいい、低密度ポリエチレンとは、0.91g/m以上0.92g/m未満のポリエチレンをいう。
また、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂の無水マレイン酸の変性物であって、かつ、上述の融点及びマレイン化率の条件を満たすものであればよく、公知の無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の調製方法を採用して、上記条件を満たすように原料の種類やその使用量を適宜調整することで容易に製造することができる。また、このような無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂は、上記条件を満たすものであれば、市販品を適宜利用してもよい。
さらに、このような無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の中でも、無水マレイン酸で変性されたポリオレフィン系樹脂がより好ましく、無水マレイン酸で変性された高密度ポリエチレン、無水マレイン酸で変性されたリニアポリエチレン(L-LDPE)が更に好ましく、無水マレイン酸で変性された高密度ポリエチレンが特に好ましい。
また、前記架橋剤としては、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂中の無水マレイン酸基と反応して、前記樹脂(A)及び(B)のうちのいずれかを形成することが可能なものであればよく、特に制限されず、目的とする設計に応じて、無水マレイン酸基と反応して、各種架橋部位を形成することが可能な化合物(目的とする側鎖を形成することが可能な化合物)を適宜選択して利用すればよい。
このような架橋剤としては、前述の「水素結合性架橋部位を形成する化合物(より好ましくは、含窒素複素環を導入し得る化合物)」や「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」を好適に利用できる。また、このような架橋剤としては、反応が効率よく進行するといった観点から、水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物であることが好ましい。また、このような水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物としては、含窒素複素環(かかる含窒素複素環としては、トリアゾール環、イソシアヌレート環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環、トリアジン環及びヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種がより好ましい)を有するものがより好ましい(なお、ここにいう「含窒素複素環」は前述のものと好適なものも含めて同様のものである)。このような水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有する化合物としては、例えば、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート;2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、アセトグアナミン、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、アミノピリジン(2-、3-、4-)、3-アミノ-5-メチルイソオキサゾール、2-アミノメチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、2-ブチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1,3-ジヒドロー1-フェニル-2H-ベンズイミダゾールー2-チオン、ケリダム酸、コウジ酸、2,5-ジメルカプトー1,3,4-チアジアゾール、1-フェニルー5-メルカプト-1,2,3,4-テトラゾール、1-メチル-5-メルカプト-1,2,3,4-テトラゾール、トリスヒドロキシエチルトリアジン、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ヒドロキシピリジン(2-、3-、4-)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ピペリジンエタノール(2-、3-、4-)、ピペリジンメタノール(2-、3-、4-)、ピリジンエタノール(2-、3-、4-)、ピリジンメタノール(2-、3-、4-)、ベンゾグアナミン、4-メチルー5-(2’-ヒドロキシエチル)チアゾール、1-メチロール-5,5-ジメチルヒダントイン、メラミン、メルカプトピリジン(2-、3-、4-)が挙げられる。このような化合物は、1種を単独で、あるいは、2種以上を混合して利用してもよい。
また、このような架橋剤としては、反応性が高く、工業的に入手しやすいという観点から、水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよい含窒素化合物、水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよい含酸素化合物、及び、水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよい含硫黄化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。なお、このような「水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)」や「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、無水マレイン酸基と反応可能なものであれば、公知の化合物(特開2017-57322号公報や特許第5918878号公報に記載されている化合物)の中から適宜選択して利用することができる。
また、このような架橋剤は、水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール;水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン;水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール;水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール;水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート;水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン;水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート;2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン;ペンタエリスリトール(pentaerythritol);スルファミド;並びに、ポリエーテルポリオール;からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
このような架橋剤としては、耐圧縮永久歪性の観点からは、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、スルファミド、ペンタエリスリトール、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、ポリエーテルポリオールが好ましく、ペンタエリスリトール、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが更に好ましい。
また、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤との反応物を得るための方法は特に制限されず、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂中の無水マレイン酸基と、架橋剤中の官能基とを反応させて、前記樹脂(A)及び(B)を形成することが可能な方法であればよく(前記樹脂(A)及び(B)において説明した架橋部位を形成させることが可能となるような方法であればよく)、架橋剤の種類等に応じて適宜反応させればよい。例えば、ニーダー等の混練機を利用して、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂を可塑化することが可能で、かつ、添加する架橋剤と無水マレイン酸基とを反応させることが可能となるような温度(例えば100~250℃程度)で、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂を混合(混練)しながら、架橋剤を添加して反応させる方法等を採用してもよい。
また、本発明の樹脂組成物は、前記樹脂成分以外の他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、樹脂組成物に利用することが可能な公知の成分を適宜利用でき、例えば、前記樹脂成分(A)~(B)以外のポリマー、補強剤(充填剤)、水素結合性の補強剤(充填剤)、アミノ基を導入してなる充填剤(以下、単に「アミノ基導入充填剤」という。)、該アミノ基導入充填剤以外のアミノ基含有化合物、金属元素を含む化合物、無水マレイン酸変性ポリマー、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤(軟化剤)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、プロセスオイル(パラフィンオイル、ナフテンオイル、アロマオイル等)、前記プロセスオイル以外の各種オイル、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラー、滑材、加工助剤(加硫する場合のステアリン酸や酸化亜鉛等の加硫促進助剤)等の各種成分が挙げられる。
また、このような他の成分を含有する場合、本発明の樹脂組成物中の前記樹脂成分の含有量は、1~99質量%であることが好ましく、10~99質量%であることがより好ましく、20~99質量%であることが更に好ましい。このような樹脂組成物中の樹脂成分の含有量が前記下限未満では、かかる樹脂成分に基づいて得られる効果が低くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると混合が困難となる傾向にある。
また、本発明の樹脂組成物は、前記他の成分として、化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂を更に含有するものが好ましい。ここにいう「α-オレフィン系樹脂」とは、α-オレフィンの単独重合体、α-オレフィンの共重合体をいい、「α-オレフィン」とは、α位に炭素-炭素二重結合を有するアルケンをいい、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等が挙げられる。このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂としては、例えば、特開2017-57322号公報の段落[0204]~[0214]に記載のものを好適に利用できる。
また、このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体を好適に利用できる。また、このようなα-オレフィン系樹脂としては、中でも、結晶化度が10%以上となるα-オレフィン系樹脂(ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、ポリエチレン、ポリブテン等)を好適に利用できる。このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂の製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなα-オレフィン系樹脂としては、市販品を用いてもよい。なお、このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂を樹脂組成物に含有させる場合、そのα-オレフィン系樹脂の含有量は、前記樹脂成分100質量部に対して、500質量部以下(より好ましくは5~250質量部、最も好ましくは35~200質量部)とすることがより好ましい。このようなα-オレフィン系樹脂の含有量が前記下限未満では効果が低くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると硬度が高くなりすぎて、樹脂組成物に十分に高度な柔軟性を付与することが困難となる傾向にある。
さらに、本発明の樹脂組成物は、該組成物の流動性をより向上させることが可能となり、使用時の作業性がより高いものとなるばかりか、より効率よく樹脂組成物の硬度を調整できるといった観点から、前記他の成分として、プロセスオイルを含有することがより好ましい。このようなプロセスオイルとしては、パラフィンオイル、ナフテンオイル、アロマオイルが挙げられ、中でも、パラフィンオイルがより好ましい。このようなパラフィンオイルとしては特に制限されず、公知のパラフィンオイルを適宜利用することができ、例えば、特開2017-57323号公報の段落[0153]~段落[0157]に記載のものを好適に利用できる。なお、このようなパラフィンオイルとしては、そのオイルに対して、ASTM D3238-85に準拠した相関環分析(n-d-M環分析)を行って、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率(パラフィン部:CP)、ナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率(ナフテン部:CN)、及び、芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率(芳香族部:CA)をそれぞれ求めた場合において、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率(CP)が60%以上であることが好ましい。また、前記パラフィンオイルは、流動性、安全性の観点から、JIS K 2283(2000年発行)に準拠して測定される、40℃における動粘度が10mm/s~700mm/sのものであることが好ましい。さらに、前記パラフィンオイルは、流動性、安全性の観点から、JIS K2256(2013年発行)に準拠したU字管法により測定されるアニリン点が80℃~145℃であることが好ましい。なお、これらの動粘度及びアニリン点の測定方法はそれぞれ特開2017-57323号公報の段落[0153]~段落[0157]に記載されている方法を採用できる。このようなパラフィンオイルとしては、適宜市販のものを利用することができる。
このようなパラフィンオイルを樹脂組成物に含有させる場合、パラフィンオイルの含有量としては、前記樹脂成分100質量部に対して10~10000質量部であることが好ましく、30~1000質量部であることが特に好ましい。このようなパラフィンオイルの含有量が前記下限未満では、パラフィンオイルの含有量が少なすぎて、流動性及び作業性をより高度なものとするといったパラフィンオイルを添加することにより得られる効果が十分なものではなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、パラフィンオイルのブリードが誘発され易くなり、均一な状態の樹脂組成物を得ることが困難となる傾向にある。
また、本発明の樹脂組成物としては、オイル利用時のブリード防止といった観点から、前記他の成分として、化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を含有するものが好ましい。そのため、本発明の樹脂組成物としては、前記パラフィンオイルと前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を組み合わせて含有させることが好ましい。このように、前記パラフィンオイルと前記スチレンブロック共重合体を組み合わせて含有させた場合、スチレンブロック共重合体にオイルを吸収させることが可能となり、オイルのブリード等をより十分に抑制しながら、得られる樹脂組成物の流動性をより高度に向上させることが可能となるとともに、硬度をより効率よく調整することが可能となる。このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体としては、特開2017-57393号公報の段落[0156]~段落[0163]に記載のものを好適に利用できる。なお、「スチレンブロック共重合体」とは、いずれかの部位にスチレンブロック構造を有するポリマーであればよい。
このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体としては、機械的強度、オイル吸収性の観点から、スチレン含有量が10~50質量%(より好ましくは20~40質量%)のスチレンブロック共重合体であることが好ましい。また、このようなスチレンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布の分散度(Mw/Mn)としては、機械的強度、オイル吸収性の観点から、Mwが20万以上70万以下(より好ましくは35万以上55万以下)であることが好ましく、Mnが10万以上60万以下(より好ましくは20万以上50万以下)であることが好ましく、Mw/Mnが5以下(より好ましくは1~3)であることが好ましい。このようなスチレンブロック共重合体のガラス転移点は、エラストマー性の観点(エラストマー性を十分に備えるという観点)から、-80~-30℃(より好ましくは-70~-40℃)であることが好ましい。このような各種特性の測定方法(Mw、Mnなど)は、特開2017-57393号公報の段落[0156]~段落[0163]に記載の方法を採用する。
このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体としては、公知のもの(例えば、SIS、SEPS、SBS、SIBS、SEEPS、SEBSなど)を適宜利用できるが、分子量の高さ、工業的な入手性、経済性の観点から、スチレン‐エチレン‐エチレン‐プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)がより好ましい。このようなスチレンブロック共重合体は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。このようなスチレンブロック共重合体としては、適宜市販のものを利用することができる。
また、本発明の樹脂組成物に前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を含有させる場合、スチレンブロック共重合体の含有量としては、前記樹脂成分100質量部に対して1~3000質量部であることが好ましく、5~1000質量部であることがより好ましい。このような含有比率が前記下限未満ではオイルを添加した場合にオイルがブリードし易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると成形性が低下する傾向にある。
また、本発明の樹脂組成物は、破断物性(破断強度、破断伸び)向上の観点から、前記他の成分として、補強剤(充填剤)を含有することが好ましい。このような補強剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、クレイ(有機化クレイであってもよい)、炭酸カルシウム(表面処理されたものであってもよい)等が好適なものとして挙げられる。また、このような補強剤としては、中でも、クレイがより好ましい。このようなクレイとしては、公知のクレイ(例えば、特許第5918878号公報の段落[0146]~段落[0156]に記載のもの、特開2017-057393号公報の段落[0146]~[0155]に記載のもの等)を適宜利用することができる。また、このようなクレイの中でも、高分散性の観点から、ケイ素及びマグネシウムを主成分とするクレイ、並びに、有機化クレイからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、有機化クレイが特に好ましい。また、本発明の樹脂組成物が補強剤を含有する場合、かかる補強剤の含有量は、前記樹脂成分100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、0.01~10質量部であることがより好ましい。なお、このような補強剤は、用途に応じて1種を単独で利用してもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、本発明の樹脂組成物は、その用途に応じて、前記老化防止剤や酸化防止剤等を含有することが好ましい。なお、このような老化防止剤、酸化防止剤の含有量は、特に制限されないが、前記樹脂成分100質量部に対して、それぞれ20質量部以下(より好ましくは0.01~10質量部)であることが好ましい。このように、目的とする用途や設計に応じて、他の成分を適宜利用することができる。このような他の成分は、上述のものに特に制限されるものではなく、ポリマーを含む組成物において用いられる公知の成分(例えば、特許5918878号公報の段落[0169]~[0174]に記載のもの等)を適宜使用することができる。また、このような他の成分は、用途に応じて1種を単独で利用してもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、このような樹脂組成物を製造するための方法としては特に制限されず、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と前記架橋剤の反応物を、組成物中に含有させることが可能な方法であればよい。このような方法としては、例えば、特開2016-193970号公報の段落[0181]~[0215]に記載の方法において、該公報に記載の「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー」を「前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂」とし、かつ、該公報に記載の「原料化合物」を「前記架橋剤」とする以外は、該公報の同段落に記載されている方法と同様の方法を採用して、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と前記架橋剤とを反応させて、得られる反応物からなる前記樹脂成分を含む樹脂組成物を製造してもよい。
このような樹脂組成物を製造するための方法としては、例えば、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と、前記架橋剤と、必要に応じて他の成分(前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体、パラフィンオイル、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂及び前記添加剤等)とを混合することにより、前記樹脂成分を含有する樹脂組成物を得る方法を好適に採用することができる。このような方法においては、混合時に前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂中の無水マレイン酸基と前記架橋剤中の官能基とを反応させて特定の架橋を形成することにより、樹脂(A)及び樹脂(B)を調製することが好ましい。このような方法において、混合時に前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と前記架橋剤とを反応させることが可能となり、その反応時に、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂が有する無水マレイン酸基を開環させて、前記架橋剤との間で化学結合を形成させることが可能となるため、これにより、その成分の種類に応じて、目的とする「樹脂(A)並びに樹脂(B)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分」を効率よく形成することができる。
また、前記方法により無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と前記架橋剤とを反応させる場合、前記架橋剤の使用量を、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1~10質量部とすることが好ましく、0.2~5.0質量部とすることが更に好ましい。このような架橋剤の添加量(質量部に基づく量)が前記下限未満では、架橋剤が少なすぎて架橋密度が上がらず所望の物性が発現しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると多すぎてブランチが多くなり(架橋剤が多すぎて架橋に関与しない架橋剤の割合が増えてしまい)架橋密度が下がってしまう傾向にある。
また、このような方法において、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と前記架橋剤とを反応(無水マレイン酸基を開環)させる際の温度条件は特に制限されず、前記架橋剤の種類等に応じて、これらが反応可能な温度に調整すればよく、例えば、軟化させて反応を瞬時に進めるといった観点からは、100~250℃とすることが好ましく、120~230℃とすることがより好ましい。また、このような反応を行うための混合の方法は特に制限されず、ロール、ニーダー等で混合する公知の方法等を適宜採用することができる。更に、他の成分を添加する場合、各成分の添加順序等は特に制限されず、用いる成分の種類に応じて適宜変更すればよい。例えば、前記樹脂組成物を製造する際に、他の成分として、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体、前記パラフィンオイル、前記化学結合性の架橋部位を有さないα-オレフィン系樹脂を添加する場合、以下のような方法を採用してもよい。例えば、先ず、前記スチレンブロック共重合体及び前記パラフィンオイルを100~250℃の温度条件で混合して混合物を得た後、次いで、該混合物に対して、前記温度条件下において、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と前記α-オレフィン系樹脂とを添加し、混合して可塑化し、そこへ、前記温度条件下において架橋剤を添加して混合することにより、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤とを反応させ、これにより、前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤との反応物と、前記スチレンブロック共重合体と、前記パラフィンオイルと、前記α-オレフィン系樹脂とを含む樹脂組成物を得る方法(なお、更に前記補強剤(充填剤)や老化防止剤等の他の成分を含有させる場合、その利用する成分に応じて、該成分をいずれかの段階において適宜添加して混合すればよい)を採用してもよい。なお、これらの他の成分の添加量等は、目的の設計に応じて適宜変更することができる(例えば、上述の好適な含有量の範囲となるようにして、添加量を適宜設定してもよい)。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
先ず、各実施例で利用した無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の樹脂種、略称、特性等を表1に示す。なお、表2~5において、各実施例等で使用した無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂は、便宜上、表1に記載の略称を用いて表記する。また、表1に記載の「マレイン化率」は、前述の[マレイン化率の測定方法]を採用して求めた値である(なお、滴定に際しては、電位差自動滴定装置として京都電子工業株式会社製の商品名「AT-710M」)を利用し、0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液としてメルク株式会社製の商品名「水酸化カリウムエタノール溶液」を利用した。このようにして用いた0.1モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液の補正値(ファクター)は、該溶液の検査成績書から確認したところ、1.00であった)。また、表1に記載の「融点」は、各樹脂をそれぞれ0.01g用いて、示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製の商品名「DSC7000X」)を用い、昇温速度を10℃/minとして測定した値(示差走査熱量測定(DSC)により求めた値)である。
次に、後述の各実施例等で得られた樹脂組成物の特性の評価方法について説明する。
<メルトフローレート(MFR)>
各実施例及び各比較例で得られた樹脂組成物をそれぞれ用いて、JIS K6922-2(2010年発行)に記載のB法に準拠してメルトフローレート(MFR、単位:g/10分)を測定した。すなわち、各実施例及び各比較例で得られた樹脂組成物をそれぞれ用い、メルトフローレート測定装置として株式会社東洋精機製作所製の商品名「Melt Indexer G-01」を用いて、該装置の炉体内に樹脂組成物を3g添加した後、温度を230℃にして5分間保持した後、230℃に維持しつつ5kgに荷重する条件で、前記炉体の下部に接続されている直径1mm、長さ8mmの筒状のオリフィス部材の開口部(直径1mmの開口部)から、単位時間あたりに流出する質量(g)を測定(前記炉体内において温度を230℃にして5分間保持した後に荷重を開始してから、流出する樹脂組成物の質量の測定を開始する)し、10分間に流出する樹脂組成物の質量(g)に換算することにより求めた。
<圧縮永久歪(C-Set)>
各実施例及び各比較例で得られた樹脂組成物をそれぞれ用い、先ず、該樹脂組成物を200℃で10分間熱プレスし、厚みが約2mmとなるようにシートを調製した。このようにして得られたシートを直径29mmの円盤状に打ち抜いて7枚重ね合わせ、高さ(厚み)が12.5±0.5mmになるようにしてサンプルを調製した。このようにして得られたサンプルを用い、専用治具で25%圧縮し、70℃で22時間放置した後の圧縮永久歪(単位:%)をJIS K6262(2013年発行)に準拠して測定した。なお、圧縮装置としては株式会社ダンベル製の商品名「加硫ゴム圧縮永久歪試験器 SCM-1008L」を用いた。
(実施例1~9及び比較例1~9)
実施例1~9及び比較例1~9においてはそれぞれ、下記表2~3に記載の組成となるように各成分の使用量を調整して、後述の「樹脂組成物の製造工程」を採用することにより、樹脂組成物を製造した。なお、下記表2~3中の組成の数値は各実施例等において無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の使用量を100質量部として換算した値(質量部)であり、実施例1~9及び比較例1~9において無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の使用量はいずれも8gとした。
〈樹脂組成物の製造工程〉
先ず、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(クレイトンポリマージャパン株式会社製の商品名「G1651HU」、スチレン含有量33質量%:以下、場合により「SEBS」と称する)を加圧ニーダーに投入して、180℃の条件で混合しながら、前記加圧ニーダー中にパラフィンオイル(SKルブリカンツジャパン株式会社製の商品名「YUBASE8J」)を滴下し、SEBSとパラフィンオイルとを1分間混合した。次いで、前記加圧ニーダー中に、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂(各実施例及び各比較例においてはそれぞれ、表1に示すTP(1)~(18)のうちのいずれかを利用)、エチレン-ブテン共重合体(三井化学株式会社製の商品名「タフマーDF7350」:以下、場合により「EBM」と称する)、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製の商品名「HJ590N」:以下、場合により「HDPE」と称する)および老化防止剤(株式会社アデカ製の商品名「AO-50」)を更に添加し、180℃で2分間混合(混練)して可塑化させて混合物を得た。次いで、前記加圧ニーダー中の前記混合物に有機化クレイ(株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」)を添加して180℃で4分間混合(混練)した後、架橋剤としてトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(日星産業株式会社製の商品名「タナックP」)を添加して180℃で8分間混合(混練)することにより、樹脂組成物を製造した。
このようにして各実施例及び各比較例で得られた樹脂組成物の特性(MFR及びC-Set)の測定値を表2~3にそれぞれ示す。ここにおいて、MFRが300g/10分以上となったものについては、MFRを「過多」と示す。なお、以下の表において、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の「マレイン化率の評価」には、マレイン化率が0.5~2.5質量%の範囲にあるという条件を満たすものを「S」と表記し、他方、マレイン化率が0.5~2.5質量%の範囲にあるという条件を満たさないものを「F」と表記する。また、以下の表において、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の「融点の評価」には、融点が68℃~134℃の範囲にあるという条件を満たすものを「S」と表記し、他方、融点が68℃~134℃の範囲にあるという条件を満たさないものを「F」と表記する。そのため、表中のマレイン化率の評価(マレイン化率の条件)及び融点の評価(融点の条件)が共に「S」となっているものが、本発明にかかる「融点が68℃~134℃でありかつマレイン化率が0.5~2.5質量%である、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂」となる。
(実施例10~11及び比較例10~12)
架橋剤としてトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの代わりにペンタエリスリトール(日本合成化学株式会社製の商品名「ノイライザーP」)を用い、かつ、組成(質量部)が表4に記載の組成となるように各成分の使用量を調整した以外は、上述の実施例1~9及び比較例1~9で採用した「樹脂組成物の製造工程」と同様の工程を採用して、樹脂組成物を製造した(なお、各実施例及び各比較例において、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の使用量はいずれも8gとした)。このようにして各実施例及び各比較例で得られた樹脂組成物の特性(MFR及びC-Set)の測定値を表4にそれぞれ示す(なお、MFRが300g/10分以上となったものについては、MFRを「過多」と示す)。また、「マレイン化率の評価」及び「融点の評価」の項目についての記載内容は前述の通りである。
(実施例12~13及び比較例13~15)
架橋剤としてトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの代わりに2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン(株式会社日本触媒製の商品名「ベンゾグアナミン」)を用い、かつ、組成(質量部)が表5に記載の組成となるように各成分の使用量を調整した以外は、上述の実施例1~9及び比較例1~9で採用した「樹脂組成物の製造工程」と同様の工程を採用して、樹脂組成物を製造した(なお、各実施例及び各比較例において、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂の使用量はいずれも8gとした)。このようにして各実施例及び各比較例で得られた樹脂組成物の特性(MFR及びC-Set)の測定値を表5にそれぞれ示す(なお、MFRが300g/10分以上となったものについては、MFRを「過多」と示す)。また、「マレイン化率の評価」及び「融点の評価」の項目についての記載内容は前述の通りである。
表2~5に示す結果からも明らかなように、融点が68℃~134℃でありかつマレイン化率が0.5~2.5質量%である無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤との反応物を含む樹脂組成物(実施例1~13)はいずれも、圧縮永久歪(C-Set)が43%以下の範囲にあり、かつ、メルトフローレート(MFR)が10~200g/10分の範囲にあった。このように、実施例1~13で得られた樹脂組成物は、圧縮永久歪が43%以下であり、圧縮永久歪に対する耐性が十分に高度な水準のものとなっているばかりか、流動性の指標であるメルトフローレート(MFR)が10~200g/10分の範囲にあり、樹脂組成物としての作業性を十分に確保可能な優れた流動性を有するものとなっており、圧縮永久歪に対する耐性及び流動性といった特性が共に高い水準で両立されたものとなっていた。なお、圧縮永久歪(C-Set)が43%以下の範囲にある場合、その組成物から得られる成形物は、長期間使用しても変形が十分に抑制されたものとなり、形状保持性、復元性の点で優れたものであるといえる。また、メルトフローレート(MFR)が10g/10分未満では、流動性が低すぎて、成形時に射出成型等の成型方法を利用することが困難となり、成型等の作業性が十分に得られないものとなってしまい、他方、MFRが200g/10分を超えると、流動性が高くなりすぎて却って作業性が低下するとともに押し出し成型が十分にできないものとなってしまう。そのため、圧縮永久歪が43%以下で、かつ、メルトフローレート(MFR)が10~200g/10分の範囲にある樹脂組成物は、圧縮永久歪に対する耐性と流動性といった2つの特性が共に優れたものであるといえる。なお、各実施例で得られた樹脂組成物中に含有される無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂及び架橋剤の反応物のガラス転移点はいずれも、主鎖となる樹脂の種類(HDPE又はLLDPE)や前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂のガラス転移点(表1参照)に基づいて、25℃以下であることは明白である。
これに対して、融点が68℃~134℃の範囲にあるという条件(以下、「条件(I)」と称する)及びマレイン化率が0.5~2.5質量%の範囲にあるという条件(以下、「条件(II)」と称する)のうちのいずれか又は双方の条件を満たさない無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤との反応物を含む樹脂組成物(比較例1~15)の場合、組成物の圧縮永久歪を43%以下としつつメルトフローレート(MFR)を10~200g/10分の範囲とすることができなかった。このように、前記条件(I)及び条件(II)のうちのいずれか又は双方を満たさない無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤との反応物を含む樹脂組成物においては、圧縮永久歪に対する耐性及び流動性といった特性を十分に優れたものとすることができず、これらの特性を両立させることができなかった。
以上説明したように、本発明によれば、圧縮永久歪に対する耐性及び流動性といった2つの特性をいずれも十分に優れたものとして両立させることが可能な樹脂組成物を提供することが可能となる。したがって、本発明の樹脂組成物は、例えば、日用品、自動車部品、電化製品、工業部品等の用途に利用する樹脂製品を製造するための材料等として特に有用である。

Claims (2)

  1. カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下である樹脂(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下である樹脂(B)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分を含有し
    前記樹脂(A)及び前記樹脂(B)がいずれも、融点が68℃~134℃でありかつマレイン化率が0.5~2.5質量%である無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂と架橋剤との反応物であり、
    前記無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂が無水マレイン酸で変性されたポリエチレンであり、かつ、
    前記架橋剤が、水酸基、アミノ基、イミノ基及びチオール基のうちの少なくとも1種を有し、かつ、トリアゾール環、イソシアヌレート環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環、トリアジン環及びヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種の含窒素複素環を有する化合物、並びに、ペンタエリスリトールからなる群から選択される少なくとも1種である、樹脂組成物。
  2. 前記無水マレイン酸で変性されたポリエチレンが無水マレイン酸で変性された高密度ポリエチレンである、請求項に記載の樹脂組成物。
JP2020534659A 2018-07-30 2019-07-30 樹脂組成物 Active JP7348186B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018142527 2018-07-30
JP2018142527 2018-07-30
PCT/JP2019/029788 WO2020027109A1 (ja) 2018-07-30 2019-07-30 樹脂組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2020027109A1 JPWO2020027109A1 (ja) 2021-08-02
JP7348186B2 true JP7348186B2 (ja) 2023-09-20

Family

ID=69230673

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020534659A Active JP7348186B2 (ja) 2018-07-30 2019-07-30 樹脂組成物

Country Status (5)

Country Link
US (1) US11952483B2 (ja)
EP (1) EP3831857A4 (ja)
JP (1) JP7348186B2 (ja)
CN (1) CN112424238B (ja)
WO (1) WO2020027109A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP4174129A1 (en) 2020-06-24 2023-05-03 ENEOS Corporation Rubber composition and crosslinked rubber composition
JP2023103770A (ja) * 2022-01-14 2023-07-27 Eneos株式会社 ポリマー組成物

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008088194A (ja) 2006-09-29 2008-04-17 Yokohama Rubber Co Ltd:The 熱可塑性エラストマー組成物
JP2016194072A (ja) 2016-04-05 2016-11-17 Jxエネルギー株式会社 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法
JP2017057393A (ja) 2015-09-17 2017-03-23 Jxエネルギー株式会社 熱可塑性エラストマー組成物、その製造方法及び積層体

Family Cites Families (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5918878B2 (ja) 1981-09-24 1984-05-01 日本電信電話株式会社 光送信装置
US6512051B2 (en) 1998-01-22 2003-01-28 The Yokohama Rubber Co., Ltd. Elastomer composition
JP4037016B2 (ja) 1998-10-02 2008-01-23 横浜ゴム株式会社 熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、およびそれらの製造方法
JP2002060601A (ja) * 2000-06-08 2002-02-26 Toray Ind Inc ポリエステル樹脂組成物
JP2002146169A (ja) 2000-09-01 2002-05-22 Toray Ind Inc ポリエステル樹脂組成物
JP2002201265A (ja) 2000-12-27 2002-07-19 Toray Ind Inc 熱可塑性樹脂
JP4011057B2 (ja) * 2004-11-02 2007-11-21 横浜ゴム株式会社 熱可塑性エラストマー
JP4163219B2 (ja) * 2006-04-27 2008-10-08 横浜ゴム株式会社 熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性エラストマー組成物
JP2008260887A (ja) 2007-04-13 2008-10-30 Yokohama Rubber Co Ltd:The 熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性エラストマー組成物
JP5918878B1 (ja) 2015-03-31 2016-05-18 Jxエネルギー株式会社 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法
JP2017057323A (ja) 2015-09-17 2017-03-23 Jxエネルギー株式会社 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法
JP2017057322A (ja) 2015-09-17 2017-03-23 Jxエネルギー株式会社 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法
JP2017206588A (ja) 2016-05-16 2017-11-24 Jxtgエネルギー株式会社 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法
JP2017206604A (ja) 2016-05-17 2017-11-24 Jxtgエネルギー株式会社 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法
WO2018235961A1 (ja) * 2017-06-23 2018-12-27 Jxtgエネルギー株式会社 ゴム粒子含有エラストマー組成物及びその製造方法
US20210087367A1 (en) * 2017-08-02 2021-03-25 Jxtg Nippon Oil & Energy Corporation Rubber composition, cross-linked rubber composition, tire, and industrial rubber part

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008088194A (ja) 2006-09-29 2008-04-17 Yokohama Rubber Co Ltd:The 熱可塑性エラストマー組成物
JP2017057393A (ja) 2015-09-17 2017-03-23 Jxエネルギー株式会社 熱可塑性エラストマー組成物、その製造方法及び積層体
JP2016194072A (ja) 2016-04-05 2016-11-17 Jxエネルギー株式会社 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
WO2020027109A1 (ja) 2020-02-06
EP3831857A4 (en) 2022-04-27
JPWO2020027109A1 (ja) 2021-08-02
CN112424238B (zh) 2023-07-25
US11952483B2 (en) 2024-04-09
EP3831857A1 (en) 2021-06-09
CN112424238A (zh) 2021-02-26
US20210371635A1 (en) 2021-12-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN108026377B (zh) 热塑性弹性体组合物及其制造方法
JP5918878B1 (ja) 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法
JP7348186B2 (ja) 樹脂組成物
EP3546526B1 (en) Conductive thermoplastic elastomer composition
JP4040669B2 (ja) 発泡体用組成物および発泡体
JP2017057323A (ja) 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法
JPWO2017188270A1 (ja) 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法、並びに、エラストマー成形体
JP2017057322A (ja) 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法
JP2008291083A (ja) 放熱材用熱可塑性エラストマー組成物
EP3459976A1 (en) Thermoplastic elastomer composition, and production method therefor
JP2008088194A (ja) 熱可塑性エラストマー組成物
WO2021220884A1 (ja) ポリマー組成物
JP2019056033A (ja) ゴム組成物
JP2016003265A (ja) 非空気式タイヤ用熱可塑性エラストマー組成物および非空気式タイヤ
WO2023136162A1 (ja) ポリマー組成物
JP6453803B2 (ja) 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法
JP4957745B2 (ja) 2種以上の架橋基を形成し得るポリマーを含有するブレンドゴム組成物
JP2010202784A (ja) 2種以上の架橋性基を形成し得るゴム組成物
JP2008266417A (ja) 改質アスファルト
JP2019104774A (ja) 樹脂組成物の製造方法
JP7426853B2 (ja) 熱可塑性エラストマー組成物
JP2017222820A (ja) 熱可塑性エラストマー組成物
WO2010101106A1 (ja) 2種以上の架橋性基を形成し得るゴム組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220511

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230329

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230526

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230809

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230907

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7348186

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150