JP7342735B2 - リン-バナジウム酸化物触媒前駆体の製造方法 - Google Patents
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Description
なお、ここで反応系の温度とは、反応器内の反応液の温度であり、後掲の実施例においても、この温度を反応器内温度(内温)として測定している。
本発明に係るリン酸添加工程では、有機溶媒とバナジウム化合物を含む混合液(以下、「混合液I」と称す場合がある。)にリン酸を添加する。
触媒前駆体の原料として使用するバナジウム化合物としては、五酸化バナジウム、メタバナジウム酸アンモニウム、オキシ三ハロゲン化バナジウム等のバナジウム塩などの5価のバナジウム化合物の1種又は2種以上を用いることができるが、最も一般的な原料は五酸化バナジウムである。五酸化バナジウムは市販品をそのまま、あるいは粉砕して使用される。
本発明で用いる有機溶媒はそれ自体が還元力を有するものが好ましく、還元力を有する有機溶媒としては、酸化を受けやすい官能基を有するものが挙げられる。典型的にはアルコ-ル性水酸基を有する有機溶媒が好適である。このような有機溶媒の中では、ブタノール(ブチルアルコール)、2-プロパノ-ル、2-メチルプロパノ-ル、ヘキサノール等の炭素数3~6の脂肪族アルコ-ルや、ベンジルアルコ-ルが代表的である。前記有機溶媒は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、炭素数3~6の脂肪族アルコ-ルとより還元力の大きなベンジルアルコ-ルを混合して用いるのが好ましい。また、ヒドラジンやシュウ酸等の還元剤を有機溶媒中に存在させることも可能である。
触媒前駆体の調製の際に、助触媒を反応系に添加することが可能である。
助触媒元素としては、鉄、コバルト、亜鉛等が挙げられ、特に鉄が好適である。これらの助触媒の金属は、前駆体を調製する際の混合液I中に化合物で存在させるのが好ましい。この化合物の例として、例えば鉄化合物としては、塩化第一鉄(II)、酢酸第一鉄(II)、シュウ酸第一鉄(II)、リン酸第二鉄(III)等が例示される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
混合液Iには、必要に応じて目的とする触媒前駆体よりなる種晶を存在させてもよい。種晶を用いる場合の種晶の使用量には特に制限はない。
リン酸としては、市販されているものが使用でき、例えば98~100重量%純度の無水リン酸を使用することが望ましいが、本発明においては工業規模で入手が容易で安価な85重量%純度のリン酸であっても充分に使用可能である。
なお、添加するリン酸の温度は常温(20~40℃)でよい。
本発明においては、上記のリン酸添加工程後に、反応系の温度が100℃以上の条件下で反応系に更に有機溶媒を添加する有機溶媒添加工程を行う。
なお、添加する有機溶媒の温度は常温(20~40℃)でよい。
いずれの場合も、リン酸添加工程後、最初に有機溶媒を添加するときの反応系の温度が100℃以上であればよく、2回目以降に有機溶媒を添加するときの反応系の温度は100℃未満であってもよい。
上記のようにして反応を行った後は、反応系を冷却し、反応液から通常の固液分離手段で生成物を分離し、必要に応じてアルコ-ル等の溶媒で洗浄した後、乾燥する。このようにして得られた触媒前駆体は、そのままバインダ-成分あるいは担体成分と混合し、乾燥後、加熱活性化するか、あるいは、前駆体を予め加熱して活性化後、バインダ-成分あるいは担体成分と混合し、乾燥するなどした後、反応器の形態により必要に応じて成形し、触媒として使用される。
反応温度は通常300~500℃、好ましくは350~450℃であるが、本発明によれば、360~385℃程度の比較的低温で効率的に酸化反応を行うことが可能となる。反応圧力は、通常、常圧もしくは0.05~10kg/cm2Gの加圧下で行われる。
変曲点B:リン酸添加完了
変曲点C:1回目イソブチルアルコール添加開始
変曲点D:1回目イソブチルアルコール添加完了
変曲点E:2回目イソブチルアルコール添加開始
変曲点F:2回目イソブチルアルコール添加完了
<触媒前駆体の製造>
(1) 前還流
イソブチルアルコール4130kg、ベンジルアルコール385kg、五酸化バナジウム(V2O5)650kg、シュウ酸第一鉄水和物(Fe(C2O4)・H2O)66.6kg、及び目的触媒前駆体からなる種晶13kgを常温で反応器に仕込み、該反応器に蒸気を流すことにより加熱して還流状態とした。
(1)前還流の還流開始から3時間後、加熱を停止し、リン酸溶液1(水に溶解した濃度89重量%のリン酸を更にイソブチルアルコールで濃度43重量%に希釈したもの)2030kgの添加を開始し(図1、変曲点A)、約5分かけて全量を添加した(図1、変曲点B)。リン酸溶液1添加終了から温度が上昇し還流状態となり、リン酸溶液1添加終了後から約9分で反応器内の温度が100℃以上になった。なお、反応器内の温度が100℃になる少し前から加熱を再開し、100℃以上を維持しながら、常温のイソブチルアルコール1600kgのうちの80重量%(1280kg)を添加した。イソブチルアルコール添加開始時の反応器内の温度は100.5℃であったが(図1、変曲点C)、添加終了後の反応器内の温度は89.5℃であった(図1、変曲点D)。イソブチルアルコールの80重量%の添加が終了してから約19分後(図1、変曲点E)、残り20重量%(320kg)のイソブチルアルコールを加えた。イソブチルアルコールの添加終了(図1、変曲点F)から反応器内温度が上昇し、還流状態となった。
上記還流状態の反応系に、更にイソブチルアルコールを2040kg添加した。イソブチルアルコールの添加終了から温度が上昇し、還流状態となった。還流状態となってから7時間還流状態を保持した。
上記7時間経過後に反応器を冷却し、室温に到達したところで反応器から反応液を取り出し遠心濾過を行った。得られたウェットケーキを予め懸洗槽に用意したイソブチルアルコールに投入し、30分間懸濁洗浄を行った。懸濁洗浄後、再び遠心濾過し、得られたウェットケーキをコニカル乾燥機で含液率2.5重量%以下になるまで乾燥させ、触媒前駆体を得た。
得られた触媒前駆体をセイシン企業(株)製のシングルトラック型ジェットミルにより、圧力7kGで粉砕した。
得られた触媒前駆体の粉砕粒子の、頻度累積が50%となるD-50平均粒子径(マイクロトラック・ベル(株)製MT-3000EXIIにより測定)は、2.1μmであった。
また、得られた触媒前駆体の比表面積を後述の方法で測定したところ、15.3m2/gであった。
(1) バインダー混合物の製造
脱塩水10kgにリン酸溶液2(水に溶解した濃度85重量%のリン酸)10.54kgと、シュウ酸・2水和物10.743kgを添加し、80℃まで加熱、撹拌しながら溶解させた。次いで、五酸化バナジウム7.75kgを少量ずつ発泡に注意しながら添加し、95~100℃で約2時間反応させた。反応後、反応液を約20℃に冷却した後、水を加えて全量を38.5kgとし、バインダー混合物を得た。
上記バインダー混合物1183gに、上記<触媒前駆体の製造>の(5)触媒前駆体の粉砕で得られた触媒前駆体の粉砕粒子565gを添加してスラリーを形成した。このスラリー1748gをディスク回転型の噴霧乾燥機に導入して乾燥し、乾燥微小粒子650gを得た。
次に、該乾燥微小粒子650gを流動焼成炉にて550℃で2時間、窒素流通下で焼成し、触媒を得た。
実施例1の<触媒前駆体の製造>における(2)リン酸及び有機溶媒の添加工程を以下の通り実施したこと以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。
本実施例2において、(5)触媒前駆体の粉砕で得られた触媒前駆体の粉砕粒子のD-50平均粒子径は2.3μmで、比表面積は12.9m2/gであった。
実施例1の<触媒前駆体の製造>における(2)リン酸及び有機溶媒の添加工程を以下の通り実施したこと以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。
本実施例3において、(5)触媒前駆体の粉砕で得られた触媒前駆体の粉砕粒子のD-50平均粒子径は2.1μmで、比表面積は12.8m2/gであった。
実施例1の<触媒前駆体の製造>における(2)リン酸及び有機溶媒の添加工程を以下の通り実施したこと以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。
本比較例1において、(5)触媒前駆体の粉砕で得られた触媒前駆体の粉砕粒子のD-50平均粒子径は2.0μmで、比表面積は8.7m2/gであった。
実施例1の<触媒前駆体の製造>における(2)リン酸及び有機溶媒の添加工程を以下の通り実施したこと以外は、実施例1と同様にして触媒を製造した。
本比較例2において、(5)触媒前駆体の粉砕で得られた触媒前駆体の粉砕粒子のD-50平均粒子径は2.3μmで、比表面積は7.2m2/gであった。
<触媒前駆体の比表面積>
各実施例及び比較例で得られた触媒前駆体の粉砕粒子について、micromerictics製FlowsorbIIIを用いて測定した。
各実施例及び比較例で得られた触媒を、n-ブタン濃度0.5~2容量%の空気混合ガスを440℃で1000ml/hrの速度で流通下、24時間、活性化処理を行った後、石英製反応管に1ml充填した。この石英製反応管にn-ブタン濃度4容量%の空気混合ガスを、590ml/hrの速度で通過させてそれぞれ表1に示す反応温度にて無水マレイン酸を製造した。反応時間0.5~2時間経過後に、反応管出口ガスをサンプリングして、オンライン接続したガスクロマトグラフによりn-ブタン転化率90重量%における無水マレイン酸収率を求めた。
Claims (6)
- 有機溶媒中でバナジウム化合物とリン酸とを反応させて、無水マレイン酸を製造する際に用いられるリン-バナジウム酸化物触媒の前駆体を製造する方法であって、
有機溶媒とバナジウム化合物を含む混合液にリン酸を加えるリン酸添加工程と、その後、反応系の温度が100℃以上の条件下に、該反応系に更に有機溶媒を加える有機溶媒添加工程を含み、
前記リン酸添加工程における前記リン酸の添加終了後から、前記有機溶媒添加工程に到るまでの間に前記反応系の温度が低下することなく上昇することを特徴とするリン-バナジウム酸化物触媒前駆体の製造方法。 - 前記リン酸添加工程と、前記有機溶媒添加工程との間に、前記反応系を還流する還流工程を含む請求項1に記載のリン-バナジウム酸化物触媒前駆体の製造方法。
- 前記混合液の還流中に、前記リン酸添加工程を開始する請求項1又は2に記載のリン-バナジウム酸化物触媒前駆体の製造方法。
- 前記有機溶媒がイソブチルアルコールを含む請求項1~3のいずれか1項に記載のリン-バナジウム酸化物触媒前駆体の製造方法。
- 前記混合液が更に鉄化合物を含む請求項1~4のいずれか1項に記載のリン-バナジウム酸化物触媒前駆体の製造方法。
- 前記リン-バナジウム酸化物触媒前駆体が、炭素数4の炭化水素を気相酸化して無水マレイン酸を製造する反応に用いられるリン-バナジウム酸化物触媒の前駆体である請求項1~5のいずれか1項に記載のリン-バナジウム酸化物触媒前駆体の製造方法。
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