本発明は、トイレ内において壁面に沿って設置されるトイレ用キャビネットにおいて、キャビネットの構成部材の形状を工夫すること等により被水防止構造を実現し、キャビネット内に収納された電気部品に水がかかることを抑制しようとするものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1から図3に示すように、本実施形態に係るトイレ用キャビネット(以下、単に「キャビネット」という。)2は、トイレ装置3とともに、トイレ(トイレットルーム)4に設置されるトイレシステム1を構成している。つまり、トイレシステム1は、キャビネット2と、トイレ装置3とを備え、トイレ4に対して設けられる。
トイレ4は、水平状の床面5aをなす床5と、床5上においてトイレ空間を形成する側壁6および後壁7を有する。側壁6および後壁7は、それぞれ鉛直状の壁面6a,7aをなす。床5上に、トイレ装置3が設置されている。トイレ4においては、後壁7に対向する側(図2において左側)の壁(前壁)に、トイレ4の出入口が設けられている。
トイレ装置3は、トイレ4内において、後壁7の近傍の(直前方の)位置に、前後方向をトイレ空間の前後方向(図2において左右方向)に沿わせるように設置されている。トイレ装置3は、使用者の排泄物を受けるボウル部を有する便器本体3aと、便器本体3aに対して設けられた便座3bおよび便蓋3cと、各種機能を有する機能部3dとを有し、腰掛式の水洗大便器を構成している。
機能部3dは、所定のケーシング内に各種装置を内蔵した構成を有し、便器本体3aの後上側に設けられており、便座3bおよび便蓋3cを回動可能に支持している。機能部3dは、制御部や各種センサ等を含み、例えば、便座3bを暖める暖房便座機能や、便座3bに着座した使用者の局部を洗浄する局部洗浄機能などを有する。なお、トイレ装置3は、例えば、便器本体3aを後壁7に支持させた、いわゆる壁掛け式の大便器を構成するものであってもよい。
キャビネット2について説明する。キャビネット2は、トイレ4内において側壁6の壁面6aに沿って設置されている。すなわち、本実施形態では、キャビネット2は、トイレ4内において、トイレ装置3の右方(図2において上方)に位置する側壁6に対して設けられている。
キャビネット2においては、図2および図3に示すように、トイレ4内における上下方向(鉛直方向)を上下方向とし、トイレ装置3の前後方向に対応する方向(図2における左右方向)を左右方向とし、平面視で左右方向に直交する方向(図2における上下方向)を前後方向とする。また、キャビネット2において、図2に示すように、前後方向について、側壁6側を後側、その反対側を前側とし、左右方向について、後壁7側を右側、その反対側を左側とする。
キャビネット2は、平面視で左右方向を長手方向とした矩形状をなす水平状のカウンター面2aを有する。カウンター面2aは、キャビネット2の平面視において前後方向および左右方向の全体にわたって形成されている。カウンター面2aは、一体の水平状の上板部11により形成されている。つまり、上板部11の上側の板面である上面11aが、カウンター面2aとなっている。
キャビネット2において、カウンター面2a上の左側の部分には、手洗部12が設けられている。手洗部12は、水を吐出する吐水口13aを有する手洗水栓13と、手洗水栓13から吐出される水を受ける手洗鉢としてボウル部14aを有する手洗器14とを備える。ボウル部14aの底部には、排水口14bが開口している。
手洗水栓13は、例えば、使用者の手などを検知する検知センサによる検知結果に基づいて吐水と止水の切替えを行う自動水栓である。ただし、手洗水栓13は、吐水と止水の切替え用のレバー等の操作部を有する手動式の水栓であってもよい。手洗部12により、トイレ4内での手洗いが可能となる。
キャビネット2は、その左側の部分をなす縦長の箱状の部分であって床面5a上に設置された床面設置部15と、床面設置部15の上部の右側に設けられた横長の箱状の部分であって床面5aに対して浮いた状態で設けられたフローティング部16とを有する。キャビネット2は、床面設置部15およびフローティング部16により、正面視で横倒しの略「L」字状をなすように構成されている。
キャビネット2は、左側から右側にかけて、第1のキャビネット部である手洗器下キャビネット部21と、第2のキャビネット部である紙巻器用キャビネット部22と、第3のキャビネット部であるサイドキャビネット部23と、第4のキャビネット部である電気部品収納部24とを有する。キャビネット2においては、手洗器下キャビネット部21が床面設置部15をなす部分となり、紙巻器用キャビネット部22、サイドキャビネット部23、および電気部品収納部24により、フローティング部16が構成されている。
キャビネット2において、床面5aからのカウンター面2aの高さは、例えば、60~80cm程度である。また、フローティング部16の床面5aからの高さ、つまりフローティング部16の下側の床面5a上のスペースの上下方向の寸法は、例えば、20~40cm程度である。ただし、これらの寸法は、特に限定されるものではない。
また、キャビネット2は、その背面側を、側壁6の壁面6aに接触ないし略接触させるとともに、右側端を、後壁7の壁面7aに接触ないし略接触させた状態で設けられている。すなわち、第1の壁面としての側壁6の壁面6aは、第2の壁面としての後壁7の壁面7aとともに、トイレ4において直角状の隅部をなし、キャビネット2は、右後側の角部を、壁面6aと壁面7aによる隅部に合わせるように設けられている。キャビネット2は、例えば、トイレ4の前後方向(図2における左右方向)について、側壁6の略全体にわたる範囲に設けられている。
手洗器下キャビネット部21は、手洗部12の下側に位置するキャビネット部である。手洗器下キャビネット部21は、上下方向を長手方向とする矩形板状の部分である左右の側面部31,32および前面部33を有し、これらの面部と、カウンター面2aをなす上板部11の左端の部分とにより、床面5a上に設置された中空箱状の部分を構成している。
手洗器下キャビネット部21の左右の側面部31,32は、前後方向について、上板部11の前後方向の寸法(幅寸法)と略同じ寸法を有する。手洗器下キャビネット部21の左側の側面部31により、キャビネット2の左側の側端面が形成されている。
手洗器下キャビネット部21の内部には、手洗部12からの排水を受ける排水管が設けられている。排水管は、その一端側を、手洗器14の排水口14bに接続させ、他端側を、側壁6側あるいは床5側から、建築物側に設けられた所定の排水設備に接続させている。また、手洗器下キャビネット部21の内部には、例えば、手洗水栓13に温水を供給するための電気温水器等が収納される。
紙巻器用キャビネット部22は、トイレットペーパ26を保持する紙巻器25を設置したキャビネット部である。紙巻器用キャビネット部22は、矩形板状の面部として、側壁6の壁面6aに沿う背面部35と、水平状の底面部36と、左右の側面部37,38とを有し、これらの面部と、上板部11の左右方向の中間部の左寄りの部分とにより、手前側(正面側)を開放させた箱状の空間を形成し、この空間内に紙巻器25を設置している。
紙巻器用キャビネット部22の左右の側面部37,38は、前後方向について、上板部11の幅寸法と略同じ寸法を有する。紙巻器用キャビネット部22は、左側の側面部37を、手洗器下キャビネット部21の右側の側面部32の上部の右側に重ねている。左右の側面部37,38の下端部間に、底面部36が架設されている。
紙巻器25は、横並びに2つのトイレットペーパ26を保持するように、2つの保持部を有する。紙巻器25の保持部は、ロール状のトイレットペーパ26を、その軸方向を左右方向とした向きで交換可能に保持するように構成されている。紙巻器25は、上板部11に対して、下側の板面である下面11bに固定された状態で設けられている。なお、紙巻器25は、例えば、1つの保持部を有する構成のものであってもよい。
紙巻器用キャビネット部22の下側には、照明部40が設けられている(図3参照)。照明部40は、箱状のキャビネット部41内に、照明装置42を設置している。
キャビネット部41は、左右の側面部と、水平状の底面部と、前面部とを有し、これらの面部と、紙巻器用キャビネット部22の底面部36とにより、照明装置42の収納空間として扁平な箱状の空間を形成している。キャビネット部41は、前面部を、紙巻器用キャビネット部22の前側の開口端面に対して奥側(後側)に位置させている。また、キャビネット部41は、左右方向について、紙巻器用キャビネット部22の左右方向の寸法の略全体にわたる範囲で設けられている。
照明装置42は、例えばLED等の光源と、光源の動作を制御する制御基板等の制御部とを含む制御基板付きLEDユニットとして構成されている。照明部40は、照明装置42により、主にフローティング部16の下側の空間を照らし、トイレ4内において間接照明となる。
サイドキャビネット部23は、紙巻器用キャビネット部22の右側に設けられた収納部である。サイドキャビネット部23は、矩形板状の面部として、左右の側面部と、背面部と、水平状の底面部とを有し、これらの面部と、上板部11の左右方向の中間部の右寄りの部分とにより、正面側を開放させた箱状の空間を形成するとともに、この空間を前側から塞ぐ開閉扉44を有する。
サイドキャビネット部23の左右の側面部は、前後方向について、上板部11の幅寸法と略同じ寸法を有し、上下方向について、紙巻器用キャビネット部22の左右の側面部37,38と略同じ寸法を有する。サイドキャビネット部23は、左側の側面部を、紙巻器用キャビネット部22の右側の側面部38の右側に重ねている。サイドキャビネット部23の底面部は、紙巻器用キャビネット部22の底面部36と略同じ高さ位置に設けられている。
開閉扉44は、サイドキャビネット部23の内部空間に対して開閉可能に設けられており、開閉扉44の上端部の左右中央には、開閉用の取手部44aが設けられている。開閉扉44は、サイドキャビネット部23の左右の側面部に対して移動可能に連結されており、取手部44aをつまんで手前側に引くことで、下側に向けて開くことができるように設けられている。
サイドキャビネット部23の内部空間は、トイレ用品等の収納空間として用いられる。なお、開閉扉44の開閉構造は、本実施形態の下開き扉構造に限らず、例えば、左右にスライド可能なスライド扉構造等であってもよい。また、開閉扉44は、サイドキャビネット部23の内部空間に対して設けられた引出しの前面部をなす引出し扉であってもよい。
電気部品収納部24は、電気部品を収納したキャビネット部である。電気部品収納部24は、図1から図4に示すように、矩形板状の面部として、左側面部51および右側面部52と、前面部53とを有し、これらの面部と、上板部11の右端の部分とにより、奥側(背面側)と下側を開放させた箱状の空間を形成している。なお、図4は、前面部53を取り外した状態の電気部品収納部24の正面視を示している。
電気部品収納部24の左側面部51および右側面部52は、前後方向について、上板部11の幅寸法と略同じ寸法を有し、上下方向について、サイドキャビネット部23の左右の側面部と略同じ寸法を有する。電気部品収納部24は、左側面部51を、サイドキャビネット部23の右側の側面部の右側に重ねている。電気部品収納部24の右側面部52により、キャビネット2の右側の側端面が形成されている。つまり、電気部品収納部24の右側面部52の右側の板面である外側面52aが、後壁7の壁面7aに対する対向面となる。
図4から図8に示すように、右側面部52は、外側面52aの反対側の面として、左側の板面である内側面52bを有する。また、右側面部52は、前側の端面である前側面52cと、後側の端面である後側面52dと、下側の端面である水平状の下端面52eと、上側の端面である水平状の上端面52fを有する。右側面部52の外側面52a、内側面52b、前側面52c、および後側面52dは、いずれも鉛直状の面である。後側面52dが、側壁6の壁面6aに対する対向面となる。
電気部品収納部24において、前面部53は、左側面部51および右側面部52に対して、各側面部に設けられた面ファスナ54により、着脱可能に設けられている。面ファスナ54は、左側面部51および右側面部52の内側面51b,52bに対して取付金具55を介して前側に向けて設けられている。
取付金具55は、「L」字状の横断面形状を有する屈曲板状の部材であり、「L」字状の一側の辺をなす一側の面部55aを、内側面51b,52bに沿わせた状態で、一側の面部55aを貫通するネジ56により、左側面部51または右側面部52に上下2箇所で固定されている。取付金具55は、他側の面部55bを、鉛直状として前側に向けており、その他側の面部55bの前側に、面ファスナ54が貼設されている。
面ファスナ54は、左側面部51および右側面部52それぞれにおいて上下2箇所、計4箇所に設けられている。前面部53の裏面側には、4箇所の面ファスナ54に対応する部位に、面ファスナ54と係合する面ファスナが設けられており、面ファスナ同士の係合作用によって前面部53が取り付けられる。なお、前面部53の着脱構造としては、面ファスナに限らず、例えばマグネットを用いた構造等、他の着脱構造が用いられてもよい。
以上のような構成において、上板部11は、一体の板状部分として、キャビネット2が有する各キャビネット部の上面部を形成している。すなわち、上板部11は、左右方向の領域部分として、左側から右側にかけて、手洗器下キャビネット部21の上面部をなす第1面部11cと、紙巻器用キャビネット部22の上面部をなす第2面部11dと、サイドキャビネット部23の上面部をなす第3面部11eと、電気部品収納部24の上面部をなす第4面部11fとを有する。
また、上板部11は、前側の端面である前端面11gと、後側の端面である後端面11hとを有する。前端面11gおよび後端面11hは、いずれもカウンター面2aとともに直角をなす鉛直状の面である。後端面11hは、右側面部52の後側面52dと略同一鉛直面上に位置しており、側壁6の壁面6aに対する対向面となる。
また、キャビネット2が有する各キャビネット部の各面部は、例えば木製の板状部材を基材として構成されている。
上板部11の第4面部11fの右側の縁部、つまり上板部11の右縁端部であるカウンター右端部11jには、カウンターキャップ58が取り付けられている。カウンターキャップ58は、カウンター右端部11jに対して設けられた化粧部材であり、上板部11と後壁7の壁面7aとの間の隙間を埋める介装部材である。カウンターキャップ58は、例えば、ポリプロピレン(PP)等の樹脂材料やゴム等の弾性材料により形成されている。
カウンターキャップ58は、図5から図7に示すように、カウンター右端部11jに沿う長手状の部材であり、カウンター右端部11jに被さった状態で上板部11に取り付けられ、カウンター右端部11jを覆っている。カウンターキャップ58は、カウンター右端部11jの前面の全体を覆う前面部58aと、カウンター右端部11jの上面の全体を覆う上面部58bと、カウンター右端部11jの右端面11kの略全体を覆う側面部58cと、カウンター右端部11jの下面に沿う下面部58dとを有する。
下面部58dは、カウンターキャップ58の長手方向の両端部を除いた中間部に形成されている。カウンターキャップ58は、下面部58dの形成部位において、左側を開放側とした略「コ」字状の横断面形状を有し、かかる略「コ」字状の横断面形状に対して、カウンター右端部11jを嵌め込ませている。
カウンター右端部11jに対するカウンターキャップ58の装着構造として、右側面部52の上縁部の中間部には、下面部58dとの干渉を避けるための凹部52gが形成されている。凹部52gは、右側面部52の上端面52fに対して一段低い水平状の底面52hをなす扁平な凹状の切欠部分であり、カウンターキャップ58が装着されたカウンター右端部11jとともに、左右方向に貫通した開口部を形成している。
また、下面部58dの左側には、下面部58dの前後方向の一部を左側に延出させた態様の係止突片部58eが形成されている。係止突片部58eは、その弾性により、上板部11の下面11bに対して圧接し、上板部11に対してカウンターキャップ58を係止させている。以上のような構成を有するカウンターキャップ58は、カウンター右端部11jを被覆し、側面部58cを、上板部11の右端面11kと、後壁7の壁面7aとの間に介在させる。
電気部品収納部24は、電気部品として、トイレ4内への人の入室を検知する人体検知センサ60を収納している。また、電気部品収納部24内には、人体検知センサ60に電力を供給するための電源装置61が設けられている(図4参照)。
電源装置61は、例えばACアダプタであり、略直方体状の外形の本体部61aを有し、本体部61aを、左側面部51に支持させている。本体部61aは、その長手方向を上下方向とする向きで、左側面部51の下部に、支持金具63を介して支持されている。支持金具63は、正面視で所定の屈曲形状を有する板状部材であり、左側面部51の内側面51bにネジ64により固定されている。
電源装置61の本体部61aは、支持金具63に対して、保持ベルト65が用いられて保持されている。保持ベルト65は、本体部61aの上下中間部の位置で、支持金具63において本体部61aが沿う鉛直状の支持面部63aごと本体部61aに巻き付けられている。
電源装置61の本体部61aからは、出力コード61bおよび入力コード61cが延出している。出力コード61bの他端側は、人体検知センサ60に接続されている。入力コード61cは、プラグ付き電源コードであり、入力コード61cの端部には、差込みプラグが設けられており、差込みプラグは、商用電源のコンセント66の差込み口66aに差し込まれてコンセント66に接続される。コンセント66は、側壁6の壁面6aにおいて、電気部品収納部24の下側に位置している。コンセント66から供給される電力が、入力コード61cから本体部61aを介して出力コード61bにより人体検知センサ60に供給される。
なお、電源装置61と人体検知センサ60との接続関係については、上述のとおり電源装置61が人体検知センサ60に直接的に接続されるような構成であってもよいし、かかる構成のほか、例えば、人体検知センサ60と電源装置61との間に、別のユニットや制御基板、電源基板、中継のための配線等を介在させた構成であってもよい。具体的には、例えば、電源装置61を、制御基板付きLEDユニットとしての照明装置42(図3参照)に接続し、照明装置42と人体検知センサ60とを中継コード等の給電用コードにより接続した構成であってもよい。このような構成においては、電源装置61により照明装置42に対する給電が行われ、人体検知センサ60は、照明装置42からの給電を受けることになる。
人体検知センサ60は、マイクロ波を用いてトイレ4内への人の入室等を検出するマイクロ波センサであり、マイクロ波を送信し、送信したマイクロ波を受けた人体等の対象物から反射したマイクロ波を受信することにより、対象物の動き等を検出する。人体検知センサ60によるトイレ4内への人の入室についての検知情報に基づき、照明部40の照明装置42のON/OFF動作が制御される。
すなわち、照明装置42は、その制御部において人体検知センサ60のセンサ出力を受信し、その受信信号に基づき、LED等の光源の点灯/消灯を切り替える。例えば、人体検知センサ60によりトイレ4内への人の入室が検知されると、照明装置42はON状態となり(点灯し)、人体検知センサ60によりトイレ4内からの退室が検知されると、照明装置42はOFF状態となる(消灯する)。
人体検知センサ60は、右側面部52に対し、右側面部52の前縁部の上下中央部に支持されており、トイレ4の出入口に向けてマイクロ波を発信するように設置されている。本実施形態では、トイレ4内において後側(後壁7側)の側壁6と後壁7による隅部(図2において右上側の隅部)の近傍に位置する人体検知センサ60は、平面視で略対角線状となる斜め前方向をマイクロ波の発信方向とする(図2、矢印C1参照)。
人体検知センサ60の配置支持構造の一例について説明する。人体検知センサ60は、略直方体状の外形を有し、一側の面部を、マイクロ波の送受信を行う検知側面部60aとしている。人体検知センサ60は、長手方向を上下方向とするとともに、検知側面部60aをマイクロ波の発信方向に向けた姿勢で設置されている。つまり、人体検知センサ60は、平面視において、検知側面部60aをトイレ4の出入口側に向けるように、トイレ4内における前後方向に対して傾斜状に設けられている。人体検知センサ60において、検知側面部60aの反対側である背面側の上部には、電源装置61の出力コード61b等の給電用コードの差込口60cが設けられている(図7参照)。
人体検知センサ60は、右側面部52に対して、支持部材70を介して支持されている。支持部材70は、所定の屈曲形状を有する板状の金具であり、右側面部52の内側面52bに沿う固定面部70aと、固定面部70aの前側から平面視で右前側に向けて傾斜状に屈曲形成された傾斜支持面部70bとを有する。一方、右側面部52の前側の部分における上下中央部には、前側面52cに対して凹状をなす切欠き状のセンサ配置用凹部52jが形成されている。
支持部材70は、固定面部70aを貫通するネジ72により上下2箇所で右側面部52に固定され、傾斜支持面部70bを、センサ配置用凹部52j内に位置させている。傾斜支持面部70bの前側に、人体検知センサ60が支持されている。
人体検知センサ60は、支持部材70の傾斜支持面部70bに対して、保持ベルト73が用いられて固定状態で保持されている。傾斜支持面部70bの上下中間部には、矩形状の開口部71cが形成されており、開口部70cの後側となる固定面部70aの前側の縁端から、保持ベルト73を貫通させる孔部70eを有するとともに人体検知センサ60を後側の側面側から支持するベルト保持用突片部70dが突出形成されている。保持ベルト73は、人体検知センサ60を傾斜支持面部70bに保持するように、人体検知センサ60の上下中間部の位置で、孔部70eを通って、人体検知センサ60が沿う鉛直状の傾斜支持面部70bごと人体検知センサ60に巻き付けられている。
また、支持部材70において、傾斜支持面部70bの下端から、人体検知センサ60を下側から支持する下側支持面部70fが形成されている。下側支持面部70fは、人体検知センサ60の下面に沿うように傾斜支持面部70bに対して直角状をなすように屈曲形成されている。
人体検知センサ60は、支持部材70に支持された状態において、背面側の一部を、センサ配置用凹部52j内に位置させるとともに、正面側(検知側面部60a側)の大部分を、右側面部52の内側面52bから左側(内側)に突出させている(図8参照)。
以上のような構成を備えた本実施形態のキャビネット2においては、例えば、図3に示すように、カウンター面2a上に置かれた花瓶やコップ等の容器75が倒れた場合に容器75からこぼれてカウンター面2aを流れた水76や、手洗部12から飛散した水が、電気部品収納部24内に浸入することが想定される。つまり、トイレ4内に設置されたキャビネット2においては、カウンター面2a上から電気部品収納部24内に水が浸入することが考えられる。
電気部品収納部24内に浸入した水は、電気部品収納部24内に設けられた人体検知センサ60を被水させ、人体検知センサ60の故障等の原因となり得る。特に、マイクロ波センサである人体検知センサ60水が付着することは、人体検知センサ60の検知動作を妨げる要因となりやすい。
そこで、本実施形態に係るキャビネット2は、電気部品収納部24内の人体検知センサ60の被水を防止ないし抑制するための構成として、電気部品収納部24内に浸入した水を問題のない場所へ案内する導水手段を有する。すなわち、キャビネット2は、一側の端面である後端面11hを側壁6の壁面6aに沿わせるとともに水平状のカウンター面2aをなす上板部11と、人体検知センサ60を収納する電気部品収納部24を上板部11とともに形成する側板部である右側面部52とを備え、電気部品収納部24には、壁面6aと上板部11との間から流下する水を所定の場所に導く導水手段が設けられている。
本実施形態においては、人体検知センサ60は、右側面部52に対して、前側の端部に支持されている。すなわち、右側面部52は、側壁6の壁面6a側と反対側である前側の部分に、人体検知センサ60の設置を受けるものであり、人体検知センサ60の設置を受ける部分としてセンサ配置用凹部52jを有する。人体検知センサ60は、右側面部52のセンサ配置用凹部52jに、支持部材70を介して設置されている。
一方で、カウンター面2aから電気部品収納部24内に浸入する水は、主に、上板部11の後端面11hと側壁6の壁面6aとの隙間部77(図5参照)に一旦滞留した後に、電気部品収納部24内に浸入する。カウンター面2aから電気部品収納部24内に浸入する水の大部分は、隙間部77から浸入する。
そこで、導水手段は、右側面部52の壁面6a側(後側)の部分に上下方向に延びるように形成された所定の導水用形状部として設けられている。本実施形態では、導水用形状部として、右側面部52の後縁部に、切欠き状の部分である導水用切欠部80が設けられている。
導水用切欠部80は、右側面部52の後縁部の上部において、上下方向に沿うように形成されている。導水用切欠部80は、鉛直状の縦面部81と、縦面部81の下側において縦面部81と右側面部52の後側面52dとをつなぐ湾曲状の下湾曲面部82とを有し、これらの面部により、側面視で縦長の略「L」字状の屈曲面を形成している。つまり、導水用切欠部80は、側面視において後側および上側を開放させた凹部として形成されている。
導水用切欠部80は、左右方向(右側面部52の板面に対して垂直な方向)について一定の形状をなすように形成されている。つまり、縦面部81および下湾曲面部82は、左右方向に沿う面として形成されている。
縦面部81は、上下方向に沿う面であり、前後方向について、右側面部52の後側面52dに対して前側に位置しており、側壁6の壁面6aに対し、後側面52dよりも大きな間隔を隔てて対向している。右側面部52において、導水用切欠部80の形成部位は、導水用切欠部80の非形成部位に対して、後側面52dに対する縦面部81の段差寸法D1だけ、右側面部52の前後方向の寸法を短くしている(図5参照)。段差寸法D1は、例えば、5~15mm程度である。
下湾曲面部82は、縦面部81の下端と後側面52dの上端とを滑らかにつなぐ後下がりの曲面である。下湾曲面部82は、例えば、側面視において1/4円弧状をなす曲面部である。なお、導水用切欠部80は、下湾曲面部82の代わりに、縦面部81とともに直角状をなす水平状の横面部や、後下がりの傾斜平面をなす傾斜面部等を有するものであってもよい。
導水用切欠部80は、その延伸方向である上下方向について、例えば、右側面部52の全体の寸法の1/3~2/3の範囲にわたって形成される。導水用切欠部80は、上下方向について、導水用切欠部80の下端の位置を、人体検知センサ60の上端の位置以下の高さに位置させるように形成されている。つまり、導水用切欠部80の下側は、少なくとも人体検知センサ60の上端位置と同じ高さ位置まで形成されている。
本実施形態では、導水用切欠部80は、上下方向について、その下端部を除いた略全体を、人体検知センサ60よりも上側に位置させる範囲で形成されている。図5に示すように、導水用切欠部80の下端の高さ位置E1は、人体検知センサ60の上端の高さ位置E2よりも寸法ΔEだけ下側に(低い位置に)位置している。
ここで、導水用切欠部80の下端の高さ位置E1は、下湾曲面部82の下端の高さ位置であり、後側面52dの上端の高さ位置と同じ高さとなっている。また、人体検知センサ60の上端の高さ位置E2は、右側面部52に対する人体検知センサ60の取付状態において水平状の面部となる上面部60bの高さ位置に対応している。
導水用切欠部80の下端の高さ位置E1は、人体検知センサ60の上端の高さ位置E2と同じ高さであってもよい。この場合、導水用切欠部80は、上下方向の全体を、人体検知センサ60の上端の高さ位置E2以上の高さの部位に位置させることになる。このように、導水用切欠部80の下端の高さ位置E1は、人体検知センサ60の上端の高さ位置E2を含みそれより低い高さであることが好ましい。
また、導水用切欠部80の上側は、上板部11の下面11bの位置と略同じ高さ位置まで形成されている。本実施形態では、右側面部52の上端面52fは、上板部11の下面11bに対して接触または略接触しており、上端面52fと下面11bとは互いに同じ高さまたは略同じ高さに位置している。そして、導水用切欠部80は、右側面部52の上端面52fの高さ位置から下端の高さ位置E1まで連続的に形成されている。
このように、導水用切欠部80は、上側については、右側面部52の上端面52fの高さ位置、つまり上板部11の下面11bの高さ位置から、下側については、人体検知センサ60の上端の高さ位置E2よりもわずかに(寸法ΔEだけ)下側の高さ位置までの範囲で形成されている。
ここで、上板部11と右側面部52との位置関係について、右側面部52の上端面52fが上板部11の下面11bよりも上方に位置する構成を想定する。このような構成においても、導水用切欠部80の上側は、少なくとも上板部11の下面11bの位置と同じ高さ位置まで形成されていることが好ましい。この場合、例えば、導水用切欠部80が、その上端を、右側面部52の上端面52fよりも低い位置、かつ上板部11の下面11bよりも高い位置に位置させる構成であってもよい。
以上説明した本実施形態に係るキャビネット2によれば、簡単な構造により、電気部品収納部24の内部に収納した人体検知センサ60に水がかかることを抑制することができる。すなわち、電気部品収納部24内に浸入する水を、導水手段としての導水用切欠部80によって、人体検知センサ60から離れた場所へ誘導することが可能となるので、人体検知センサ60が被水することを抑制または防止することが可能となる。
ここで、図9に示すように、右側面部52において導水用切欠部80が形成されていない構成、つまり後側面52dが右側面部52の上端まで延びている構成を比較例の構成とし、比較例の構成の場合における水の浸入経路について説明する。
図9に示すように、カウンター面2aから電気部品収納部24内に浸入する水は、上板部11の後端面11hと側壁6の壁面6aとの隙間部77およびその近傍に一旦滞留する。隙間部77およびその近傍に滞留した滞留水78は、行き場をなくし、右側面部52の内側面52bや上板部11の下面11bを伝って、人体検知センサ60へ到達する。
隙間部77から浸入した水が人体検知センサ60まで達する水の浸入経路としては、図9に示すように、例えば、隙間部77から右側面部52の内側面52bを下斜め前方に向かって伝う経路(破線矢印F1参照)と、隙間部77から上板部11の下面11bを前方に向かって伝って人体検知センサ60の上方の位置から落下する経路(破線矢印F2参照)とが存在することが確認されている。このように、比較例の構成においては、主に上記の2つの経路によって電気部品収納部24内への浸入水が人体検知センサ60に到達し、人体検知センサ60が被水することになる。
これに対し、本実施形態に係るキャビネット2によれば、右側面部52において導水用切欠部80が形成されていることから、隙間部77およびその近傍に一旦滞留した水は、導水用切欠部80に沿って下方に向けて流れ落ちる(図5、破線矢印G1参照)。つまり、導水用切欠部80は、隙間部77から電気部品収納部24内に浸入する水をそのまま下方に向けて案内するものであり、導水用切欠部80によれば、隙間部77から電気部品収納部24内に浸入する水を、人体検知センサ60から後方に離れた右側面部52の後端部へと導くことができる。これにより、人体検知センサ60が被水することを抑制または防止することが可能となる。
また、本実施形態に係るキャビネット2において、導水手段としての導水用切欠部80は、右側面部52の一部、つまり右側面部52における形状部分として形成されている。具体的には、導水用切欠部80は、例えば、右側面部52をなす矩形板状の木製部品である板材の一部を切除して切り欠くことによって形成することができる。
このような構成によれば、人体検知センサ60の被水を防ぐためにカバー等の被水防止用の部品を別途設ける構成等との比較において、被水防止用の部品やその部品を支持したり固定したりするための構造が不要となるため、簡単な構成により、コスト増を招くことなく、導水手段を実現することが可能となる。また、キャビネット2の製造過程において、施工者による被水防止用の部品の設置忘れの懸念をなくすことができる。
また、本実施形態に係るキャビネット2において、人体検知センサ60は、右側面部52の前側の縁部に支持されており、導水用切欠部80は、右側面部52の後側の縁部に形成されている。このような構成によれば、簡単な構成により、人体検知センサ60が被水することを抑制することができる。
また、本実施形態に係るキャビネット2において、導水用切欠部80は、その下端の高さ位置を、人体検知センサ60の上端の高さ位置以下の高さとしている。このような構成によれば、隙間部77から電気部品収納部24内に浸入する水を、導水用切欠部80によって人体検知センサ60の上端の高さ位置よりも低い位置へと案内することができるので、人体検知センサ60が被水することを確実に抑制することができる。つまり、少なくとも導水用切欠部80の形成部位の範囲では水を導くことができるので、導水用切欠部80の形成部位である右側面部52の後縁部において、導水用切欠部80により少なくとも人体検知センサ60の上端の高さ位置よりも低い位置に水を導くことができ、右側面部52の前部に支持された人体検知センサ60が被水することを確実に抑制することができる。
また、本実施形態に係るキャビネット2において、導水用切欠部80は、その上側について、上板部11の下面11bの高さ位置から形成されている。このような構成によれば、側壁6の壁面6aと上板部11の後端面11hとの間の隙間部77から電気部品収納部24内に浸入する水を、確実に導水用切欠部80によって導くことが可能となる。これにより、人体検知センサ60が被水することを効果的に抑制することができる。
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係るトイレ用キャビネットは、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
右側面部52に設けられる導水用形状部としては、上述した導水用切欠部80のような切欠き形状部に限定されることなく、種々の形状部が適用できる。導水用形状部の変形例について、図10から図12を用いて説明する。
(変形例1)
本実施形態に係る導水用形状部の変形例1について、図10を用いて説明する。なお、図10(b)は、図10(a)におけるL-L断面図である。変形例1では、導水用形状部として、右側面部52の後縁部に、溝状の部分である導水用溝部110が設けられている。
導水用溝部110は、右側面部52の後縁部の上部において、上下方向に沿うように形成されている。導水用溝部110は、幅方向両側の側面部111と、底面部112とを有し、平面断面視で内側面52bに対して凹部をなすように形成されている。側面部111と底面部112は、例えば、平面断面視で直角をなすように形成されている。
導水用溝部110は、右側面部52の上端面52f側を開放させるように形成されている。また、導水用溝部110は、例えば水平状の下端面113を有する。側面部111および底面部112は、鉛直状の面として形成されており、導水用溝部110は、上下方向について一定の横断面形状をなすように形成されている。導水用溝部110の幅寸法H1は、例えば、5~15mm程度である。
(変形例2)
本実施形態に係る導水用形状部の変形例2について、図11を用いて説明する。なお、図11(b)は、図11(a)におけるM-M断面図である。変形例2では、導水用形状部として、右側面部52の後縁部に、突条部分である導水用突条部120が設けられている。
導水用突条部120は、右側面部52の後縁部の上部において、上下方向に沿うように形成されている。導水用突条部120は、幅方向両側の側面部121と、突出側の端面部122とを有し、平面断面視で内側面52bに対して凸部をなすように形成されている。側面部121と端面部122は、例えば、平面断面視で直角をなすように形成されている。
導水用突条部120は、その上端面を右側面部52の上端面52fと面一状とするように形成されている。また、導水用突条部120は、例えば水平状の下端面123を有する。側面部121および端面部122は、鉛直状の面として形成されており、導水用突条部120は、上下方向について一定の横断面形状をなすように形成されている。導水用突条部120の幅寸法J1は、例えば、5~15mm程度である。
(変形例3)
本実施形態に係る導水用形状部の変形例3について、図12を用いて説明する。なお、図12(b)は、図12(a)におけるN-N断面図である。変形例3では、導水用形状部として、右側面部52の後縁部に、切欠き状の凹状部分である導水用凹状部130が設けられている。
導水用凹状部130は、右側面部52の後縁部の上部において、上下方向に沿うように形成されている。導水用凹状部130は、後側を向く面である第1側面部131と、左側を向く面である第2側面部132とを有し、平面断面視で右側面部52の後左側(後内側)の角部(稜線部)を「L」字状に切り欠いた態様で形成されている。第1側面部131と第2側面部132は、例えば、平面断面視で直角をなすように形成されている。
導水用凹状部130は、右側面部52の上端面52f側を開放させるように形成されている。また、導水用凹状部130は、例えば水平状の下端面133を有する。第1側面部131および第2側面部132は、互いに略同じ幅寸法の鉛直状の面として形成されており、導水用凹状部130は、上下方向について一定の横断面形状をなすように形成されている。導水用凹状部130の幅寸法K1は、例えば、5~15mm程度である。
以上のような導水用形状部の変形例1~3において、導水用溝部110、導水用突条部120、および導水用凹状部130は、図に示す例では、上下方向について、右側面部52の上部のみに形成されているが、このような形成態様に限定されるものではない。例えば、変形例1~3の導水用形状部は、右側面部52において上下方向の全体にわたって形成されてもよい。このような構成によれば、隙間部77から電気部品収納部24内に浸入した水を確実に右側面部52の下端まで導くことができる。
また、上述した実施形態では、導水手段として、右側面部52に形成した所定の導水用形状部分が設けられているが、導水手段としては、例えば、右側面部52に対して、樋状の部品等の導水用の部品を設けることで構成したものであってもよい。
また、上述した実施形態では、被水を避ける対象となる電気部品が、人体検知センサ60であるが、これに限定されず、電気部品収納部内に収納される種々の電気部品が対象となる。電気部品としては、例えば、電気部品収納部24内に設けられた電源装置61であってもよく、また、トイレシステム1が備えるセンサや制御装置等であってもよい。つまり、本発明に係る電気部品は、電気を用いる各種の部品、装置、機器等を含む概念である。
また、上述した実施形態では、キャビネット2は、正面視で横倒しの略「L」字状をなすように構成されたものであるが、キャビネット2の構成は特に限定されるものではない。キャビネットとしては、例えば、側壁6に支持されることで全体的に床面5aから浮いた状態で設けられたフローティングタイプのものや、全体的に床面5a上に設置された床面設置タイプのもの等であってもよい。