JP7341128B2 - マイクロカプセル - Google Patents

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Description

本発明は、酵母細胞を有効成分として含有するマイクロカプセル、並びにその製造方法及びその利用に関する。
食品のおいしさを考える上で香味は非常に重要な因子である。香味に関与する香料(フレーバー)の物理化学的特性としては、分子量が300以下と低く、また、その分子構造にはアルデヒド・ケトン・エステルのような反応性基を持つものが多い。よって、フレーバーは高揮発性を有し、熱・光・酸素に対して不安定な物質であるといえる。食品加工では、乾燥・濃縮・殺菌といった種々の工程において加熱処理が行われる。これら工程においてフレーバーが揮散又は酸化し、食品の品質劣化や風味の低下が引き起こされる。このため、フレーバーの保持安定化は必要不可欠といえる。
フレーバーの保持安定化手法には、活性炭やゼオライトに吸着して保持する吸着法や、皮膜物質で被覆して内容物を保護するマイクロカプセル化法がある。マイクロカプセルは、液体、固体、気体を内包し、そのまわりを薄い皮膜で均一に覆った微粒子である。医薬品、農薬、香料、食品素材等を内包させたマイクロカプセルが工業的に製品化されている。ある特性をもった物質の外側に薄膜を形成させることでその特性も同時に封じ込めてしまうことが可能で、必要時に内包された物質を取り出すことができる。食品フレーバーについては、マイクロカプセル化技術により、調理・加工時における反応及び揮散の抑制、熱、光及び酸化からの劣化の防止、長期保蔵性の向上、徐放制御などの効果が期待できる。マイクロカプセルの製法には、化学的手法として、界面重合法、液中硬化皮膜法、シクロデキストリンによる分子包接法など、物理的手法として、噴霧乾燥法、噴霧冷却法、気中懸濁皮膜法など、及び菌体法として酵母等の菌体内に液体物質を包括する方法(菌体法)がある。
菌体法に主に用いられる酵母は、古くから食品加工において、糖質の発酵によるアルコール飲料の製造や、パン・味噌・漬物などといった発酵食品を作るのになくてはならない存在である。近年では、生物工学や遺伝子工学の飛躍的な技術進歩により、アミノ酸・ビタミン・核酸など、食品領域のみならず医薬品分野も含め、多種多様の有用物質の製造に利用されている。その一方で、有用物質を抽出した後に発生する酵母細胞の骨格部分については利用手段が少なく、産業廃棄物として大量に廃棄されている。この酵母細胞の骨格部分を主成分として含有する細胞(以下、酵母細胞)の有効活用における新たな技術開発が求められている。
近年、酵母の生体膜構造に着目した包括技術、特にフレーバー包括法が注目されている。酵母マイクロカプセルは、菌体内に香料を内包させた酵母をカプセル化したものである。酵母細胞内にフレーバーを封入することにより、酵母フレーバー粉末が作製される。酵母フレーバー粉末は、酵母細胞を用いない噴霧乾燥粉末と異なり、水溶液中でも粉末の形状を保ち、吸水後すぐにフレーバーが徐放する酵母細胞を用いない噴霧乾燥粉末と差別化でき、酵母フレーバー粉末は、乾燥食品以外での応用も期待できるフレーバー包括方法であると考えられる。
酵母マイクロカプセルの製造方法として、酵母菌体内成分を菌体外に放出させた酵母菌体のカプセル化が報告されている。
特開平8-243378は、自己消化後に酸処理をした酵母菌体をマイクロカプセル化する製造方法である。酸処理により、酵母細胞壁表面と内包する物質の電気的な反発を軽減し、取り込ませ易くする方法である(特開平8-243378の段落0012)。特開2009-268395は、菌体内に香料や香辛料抽出物を内包した酵母マイクロカプセルの表面を油脂で被覆した酵母カプセルに関する。この方法では酵母細胞を、酵素処理後、固形分を酸処理し、酵母菌体内へ香料を封入する。
上述した特開平8-243378及び特開2009-268395の方法では、カプセル化すべき物質を多く内包させるために、酵素処理による分離後に強酸での処理が必要であった。そのため、カプセル化の際、アルカリ溶液などでpH調整が必要であり、アルカリ溶液添加による成分変化が起こり、風味に影響することが懸念されていた。
特表2016-514951は、原形質分離させた酵母等の微生物と、フレーバー又はフレグランス、及び水を一定の割合で含有する均質なペーストを含有する組成物において、フレーバー又はフレグランスは原形質分離させた生物中でカプセル化した原形質分離させた微生物の製造方法である。原形質分離させた微生物との混合物をポリマーの水溶性乳化剤及び任意の炭水化物から構成されるキャリヤーを混和し、加熱した後、押し出し機で溶融塊を押し出し、顆粒に切断しガラス粒子又はガラスビーズを製造する。
また、酵母細胞をフレーバー粉末の基剤として利用した場合、廃棄物を高付加価値商品として販売できる可能性がある。包括されたフレーバーは、オイル条件下では、ほとんどフレーバーは徐放されず、湿潤の細胞では、膨潤し細胞壁上の孔が増加し、フレーバーが徐放され、一方乾燥酵母では、孔が閉鎖され徐放されにくいことが報告されている。しかしながら、包括されたフレーバーの継時的な徐放挙動や、包括されたフレーバーの安定性についてはほとんどわかっていない。
国際公開WO2016/080490には、酵母細胞をプロテアーゼやセルラーゼといった酵素処理や乳化剤添加処理することで、特有の異味(苦味、渋み、えぐ味など)又は異臭を低減することが報告されている。
上述したように、酵母を用いたカプセル化については研究がされていたが、風味が良く、かつ、安定に優れたマイクロカプセルは得られていなかった。
特開平8-243378 特開2009-268395 特表2016-514951 国際公開WO2016/080490 WO2017/014253
本発明者らは、上記問題解決のために鋭意研究に務めた結果、酵母細胞から、内容成分を菌体外に放出させ、内容成分が分離された酵母細胞を用いることにより、安定性、徐放性そして風味に優れたマイクロカプセルが得られることを見出し,本発明を想到した。
本発明は、マイクロカプセルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、本発明の製造方法によって製造された内容成分が分離された酵母細胞及び第2有効成分を含む、マイクロカプセルを提供することを目的とする。
本発明は、本発明のマイクロカプセルを含む、食品又は飲料の風味向上剤を提供することを目的とする。
本発明は、本発明のマイクロカプセル、あるいは、風味向上剤を含む、食品又は飲料を提供することを目的とする。
限定されるわけではないが、本発明は以下の態様を含む
[態様1]
マイクロカプセルの製造方法であって、
酵母細胞を熱水処理し、内容成分が菌体外に放出され、内容成分が分離され残留した酵母細胞を製造する工程、
前記内容成分が分離され残留した酵母細胞を第1有効成分とし、これに第2有効成分を内包させる工程、
を含む、
ただし、内容成分が分離され残留した酵母細胞に酸処理を施さない、
前記製造方法。
[態様2]
前記内容成分が分離され残留した酵母細胞にプロテアーゼ及び/又はセルラーゼ添加処理を施す工程を含む、態様1の方法。
[態様3]
前記内容成分が分離され残留した酵母細胞にプロテアーゼ及び/又はセルラーゼ添加処理を施す工程の前、後、又は同時に乳化剤を添加する工程を含む、態様2に記載の方法。
[態様4]
乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン及びサポニンからなる群より選択される、態様3に記載の方法。
[態様5]
第2有効成分が、香料、香辛料抽出物、香味油、動物性油脂及び植物性油脂からなる群から選択される脂溶性物質である、態様1-4のいずれか1項に記載の方法。
[態様6]
内容成分が分離され残留した酵母細胞が、乾燥された状態のものである、態様1-5のいずれか1項に記載の方法。
[態様7]
内容成分が分離され残留した酵母細胞が、タンパク質成分を45重量%-70重量%の範囲で含有する、態様1-6のいずれか1項に記載の方法。
[態様8]
前記内容成分が分離され残留した酵母細胞に第2有効成分を内包させる工程が、内容成分が分離され残留した酵母細胞、第2有効成分及び水分を混合して攪拌することを含む、態様1-7のいずれか1項に記載の方法。
[態様9]
前記内容成分が分離され残留した酵母細胞に第2有効成分を内包させる工程が、内容成分が分離され残留した酵母細胞、第2有効成分及び水分を混合して攪拌し、得られた分散液を乾燥することを含む、態様1-8のいずれか1項に記載の方法。
[態様10]
内容成分が分離され残留した酵母細胞と第2有効成分の混合割合が、4:1-1:1の範囲である、態様8又は9に記載の方法。
[態様11]
攪拌時間が1時間以上8時間以内である、態様8-10のいずれか1項に記載の方法。
[態様12]
攪拌温度が25℃以上50℃未満である、態様8-11のいずれか1項に記載の方法。
[態様13]
第2有効成分の包括効率が少なくとも40%である、態様1-12のいずれか1項に記載の方法。
[態様14]
態様1-13のいずれか1項に記載の方法により製造された、内容成分が分離され残留した酵母細胞及び第2有効成分を含む、マイクロカプセル。
[態様15]
酸処理を施した、内容成分が分離され残留した酵母細胞を用いて得られたマイクロカプセルと比較して、第2有効成分の徐放性が向上している、態様14に記載のマイクロカプセル。
[態様16]
酸処理を施した、内容成分が分離され残留した酵母細胞を用いて得られたマイクロカプセルと比較して、同等の酸化安定性である、態様15に記載のマイクロカプセル。
[態様17]
第2有効成分を5重量%以上含む、態様14-16のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
[態様18]
第2有効成分が香料、香辛料抽出物、動物性油脂、香味油及び植物性油脂からなる群から選択される脂溶性物質である、態様14-17のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
[態様19]
ペースト状である、態様14-18のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
[態様20]
冷蔵保存され得る、態様14-19のいずれか1項に記載のマイクロカプセル。
[態様21]
態様14-20のいずれか1項に記載のマイクロカプセルを含む、食品又は飲料の風味向上剤。
[態様22]
態様14-20のいずれか1項に記載のマイクロカプセル、あるいは、態様21に記載の風味向上剤を含む、食品又は飲料。
[態様23]
レトルト食品である、態様22に記載の食品。
[態様24]
(1)態様1-13のいずれか1項に記載の方法により製造された、内容成分が分離され残留した酵母細胞及び第2有効成分を含む、マイクロカプセル、及び
(2)植物性タンパク質臭抑制効果を有する物
を含む、植物性タンパク質臭を抑制するための組成物。
[態様25]
(1)態様1-13のいずれか1項に記載の方法により製造された、内容成分が分離され残留した酵母細胞及び第2有効成分を含む、マイクロカプセル、及び
(2)植物性タンパク質臭抑制効果を有する物
を含む、食品又は飲料。
[態様26]
(1)態様1-13のいずれか1項に記載の方法により製造された、内容成分が分離され残留した酵母細胞及び第2有効成分を含む、マイクロカプセル、及び
(2)植物性タンパク質臭抑制効果を有する物
を添加することを含む、植物性タンパク質臭を抑制するための方法。
本発明のマイクロカプセルは、熱水抽出した酵母細胞をカプセル化することで、多量の香料を内包することができるだけでなく、経時的及び喫食時間の経過につれて、香りを放出する徐放性にも優れた酵母マイクロカプセル化を製造することができた。さらに、本発明のマイクロカプセルは、酸処理を施さないため、バニラフレーバーなど、これまで酸化臭が影響するために使用ができなかったフレーバーも内包することができ、加工食品、調味料、レトルト食品のみではなく、乳製品などより多くの飲食品に使用することができる。
図1は、酵母細胞(標品2-D)の酵母分散液濃度(固形分濃度)(重量%)とフレーバー包括率(mg/g粉末マイクロカプセル)(左縦軸)及び含水率(右縦軸)の関係を示す。黒丸は包括率、白丸は、含水率を示す。 図2は、マイクロカプセル中のフレーバーと酵母(標品2)の混合割合(フレーバー/酵母)とフレーバーの包括率(mg/粉末マイクロカプセル)(左縦軸)及び包括効率(%)(右縦軸)の関係を示す。四角はフレーバー包括率、菱形は包括効率を示す。図2Aは、酵素や乳化剤で処理せず、噴霧乾燥(スプレードライ)し得た酵母細胞を用いた酵母マイクロカプセル(標品2-S)の結果、図2Bは、酵素や乳化剤で処理せず、加熱乾燥(ドラムドライ)して得た酵母細胞(標品2-D)を用いた酵母マイクロカプセルの結果を示す。 図3は、マイクロカプセル中のフレーバーと酵母の混合割合(フレーバー/酵母)とフレーバーの包括率(mg/粉末マイクロカプセル)(左縦軸)の関係を示す。黒塗りのグラフは、標品1-Dを用いた結果、網掛けのグラフは標品2-Dを用いた結果を示す。 図4は、噴霧乾燥空気入口温度とフレーバー包括率(mg/粉末マイクロカプセル)の関係を示す。丸型は、標品1-Dとd-リモネンの包括率、菱形は標品2-Dとd-リモネンの包括率、四角は、標品1-Dの含水率、三角は標品2-Dの含水率の結果を示す。 図5は、内容成分が抽出された細胞、第2有効成分及び水の混合液の攪拌時間と、フレーバー包括率(mg/粉末マイクロカプセル)の関係を示す。四角は、標品1-Dとd-リモネン、丸型は標品2-Dとd-リモネン、菱形は、標品1-Dとカプロン酸エチル、三角は標品2-Dとカプロン酸エチルの結果を示す。 図6は、内容成分が抽出された細胞(標品1)、第2有効成分及び水の混合液の攪拌温度と、フレーバー包括率(mg/粉末マイクロカプセル)の関係を示す。各温度の右側の黒色グラフがカプロン酸エチル、左側の網掛けグラフがd-リモネンの結果を示す。 図7は、内容成分が抽出された細胞(標品2)、第2有効成分及び水の混合液の攪拌温度と、フレーバー包括率(mg/粉末マイクロカプセル)の関係を示す。 図8は、酵素や乳化剤で処理せず、噴霧乾燥(スプレードライ)し得た酵母細胞(標品2-S)を用いた酵母マイクロカプセルの構造を走査形電子顕微鏡を用いて観察した結果を示す。左から、フレーバーを含まない対照マイクロカプセル、カプロン酸エチルを含むマイクロカプセル、d-リモネンを含むカプセルである。上段及び中段は3000倍、下段は10,000倍の顕微鏡写真である。 図9は、酵素や乳化剤で処理せず、ドラムドライし得た酵母細胞(標品2-D)を用いた酵母マイクロカプセルの構造を走査形電子顕微鏡を用いて観察した結果を示す。左から、フレーバーを含まない対照マイクロカプセル、カプロン酸エチルを含むマイクロカプセル、d-リモネンを含むカプセルである。上段及び中段は3000倍、下段は10,000倍の顕微鏡写真である。 図10は、酵素処理、乳化剤処理を行い噴霧乾燥した酵母細胞(標品1-D)を用いた酵母マイクロカプセルの構造を走査形電子顕微鏡を用いて観察した結果を示す。上段はカプセル化前の酵母細胞(標品1-D)であり、下段がd-リモネンを含むマイクロカプセルである。上段は3000倍、左下段は5000倍、右下段は1500倍の顕微鏡写真である。 図11は、マイクロカプセルの徐放挙動を調べた結果である。横軸は、マイクロカプセルを製造し乾燥条件又は湿潤条件を課してからの時間(分)、縦軸はフレーバー残留率を示す。左は、乾燥条件徐放、右は、湿潤条件(100重量%)徐放である。上段はカプロン酸エチルを含むマイクロカプセルの結果、下段はd-リモネンを含むカプセルの結果である。 図12は、マイクロカプセルの酸化安定性を調べた結果である。横軸は、マイクロカプセルを105℃の酸化条件下に供した保存期間(日)である。縦軸は、リモネン酸化物放出率(mg/粉末マイクロカプセル)(図12A)及び、カルボン放出率(mg/粉末マイクロカプセル)(図12B)である。丸印は、標品2-Dをカプセル化したもの、四角は、標品2-Dを酸処理しカプセル化したもの(比較例1)、そして、▲はデキストリンの噴霧乾燥品の結果である。 図13は、植物性タンパク質のみ(試験区1)、乳酸菌・酵母発酵物を添加(試験区2)、酵母マイクロカプセルを添加(試験区3)、乳酸菌・酵母発酵物及び酵母マイクロカプセルの両者を添加(試験区4)の各試験区について、GC-MS測定を行い、各試験区のヘキサナールにあたるGCピークの総面積を示した図である(上から、試験区1~試験区4)。
1.マイクロカプセルの製造方法
本発明は、一態様において、マイクロカプセルの製造方法に関する。
限定されるわけではないが、本発明の方法は、
酵母細胞を熱水処理し、内容成分が菌体外に放出させ、内容成分が分離され残留した酵母細胞を製造する工程、
前記内容成分が分離され残留した酵母細胞を第1有効成分とし、これに第2有効成分を内包させる工程、
を含む、
ただし、内容成分が分離され残留した酵母細胞に酸処理を施さない。
(酵母細胞)
本発明において、酵母細胞の種類は特に限定されない。一態様において、酵母細胞としては、トルラ酵母、パン酵母、ビール酵母、清酒酵母等の細胞が挙げられる。また、酵母細胞は、圧搾酵母、乾燥酵母、活性乾燥酵母、死滅酵母、殺菌乾燥酵母等の種々の形態であってもよい。また、酵母細胞は、酵母細胞(菌体)と実質的に同じ組成からなる酵母細胞由来物(例えば、酵母細胞の破砕物、粉末)であってもよい。
本発明に用いられる酵母は、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母やキャンディダ(Candida)属に属する酵母であってよく、特に限定されるものではない。例えば、食経験が豊富である観点から、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)であってもよく、研究等で知見が多い観点から、キャンディダア・ユーティリス(Candida utilis)であってもよい。
(熱水処理)
本発明の方法は、酵母細胞を熱水処理し、内容成分が菌体外に放出され、内容成分が分離され残留した酵母細胞を製造する工程を含む。内容成分が菌体外に放出させる機能を有する溶液であれば水以外の高温の溶液も使用可能である。例えば、緩衝液、乳化剤を使用してもよい。
「内容成分」とは、酵母菌体を分解抽出した成分のことである。主成分としてアミノ酸や核酸関連物質、ミネラル、ビタミン類を含み、「調味料」、「微生物培養の培地」、「家畜飼料」、「健康補助食品」などに用いられる。発酵機能や発酵産物(代謝物)をパンやアルコール飲料などに利用してもよい。
本願発明は、内容成分が分離され残留した酵母細胞をマイクロカプセルを構成する第1有効成分として使用する。本明細書において、内容成分が分離され残留した酵母細胞を「酵母細胞」と呼称する場合がある、非限定的に、「内容成分が分離され残留した酵母細胞」の例として、モイステックスSTD(富士食品工業)が挙げられる。モイステックスSTDは、内容成分が分離した後の酵母細胞を酵素処理及び乳化剤で処理したものである。「内容成分が分離され残留した酵母細胞」の他の例として、いわゆる乾燥酵母であり、「DYP-SY-02」(富士食品工業)、KR酵母(興人ライフサイエンス)などが挙げられる。これらの標品では、内容成分が抽出した後、あるいは抽出せずにそのままの酵母細胞を、殺菌後に乾燥させたもので、モイステックスSTDと異なり、酵素処理や乳化剤添加処理などの工程を行っていないものである。
これらの酵母細胞の具体的な製造工程の一例を以下の表1に示す。
Figure 0007341128000001
本発明のマイクロカプセルにおいて、内容成分が分離され残留した酵母細胞は、乾燥された状態であっても、水分を含んだペースト状であってもよい。一態様において、内容成分が分離され残留した酵母細胞は、乾燥された状態のものである。
又、一態様としては酵母に適量の水分を加えたペースト状のものである。酵母に加える水分の量が特に限定されない。非限定的に、酵母の量に対して、約0.1倍以上の水分を添加してペースト状にすることができる。
本発明の一態様において、熱処理を行った後に、あるいは、熱処理に加えて酵素処理及び/又は乳化剤添加処理を行った後に、水洗浄を行う、水洗浄とは、酵母細胞に水を加えて撹拌処理を行って洗浄することをいう。非限定的に、水洗浄後は遠心分離機等により固液分離を行い、内容成分等の除去を行うのが好ましい。水洗浄は、好ましくは2回以上、3回以上行う。水洗浄を繰り返すことにより、異味や異臭の原因となる成分を除去することができ、又、白色に近い色調とすることができる。
一態様において、内容成分が分離され残留した酵母細胞はタンパク質の含量が、好ましくは、70重量%以下、66重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、53重量%以下、51重量%以下である。内容成分が分離され残留した酵母細胞はタンパク質の含量が、好ましくは、45重量%以上、48重量%以上、50重量%以上である。内容成分が分離され残留した酵母細胞はタンパク質の含量が、好ましくは、45重量%以上-70重量%以下、45重量%以上-66重量%以下、48重量%以上-66重量%以下、48重量%以上-55重量%以下、48重量%以上-53重量%以下である。
(第2有効成分)
本発明の製造方法は、内容成分が分離され残留した酵母細胞を第1有効成分とし、これに第2有効成分を内包させる工程を含む。当該工程により、第2有効成分が第1有効成分である内容成分が分離され残留した酵母細胞に内包されたマイクロカプセルが得られる。
第2有効成分の種類は、内容成分が分離され残留した酵母細胞に内包することができるものであれば、特に限定されない。
非限定的に、第2有効成分は、香料、香辛料抽出物、香味油、動物性油脂及び植物性油脂からなる群から選択される脂溶性物質である。本発明のマイクロカプセルは一態様において、食品、飲料等に添加することができる。第2有効成分として、食品、飲料等の風味、香り、食感等の向上に有用な成分が好ましい。
「香料(フレーバー)」には、一態様として、d-リモネン、カルボン、カプロン酸エチル、チリフレーバー、バニラフレーバー、グリルフレーバー、ワサビフレーバー、コーヒーフレーバー、コショウ、ブラックペッパー、マスタード、カレー用スパイス、畜肉フレーバー等が含まれる。
第2有効成分の例として、その他に、具体的には、単純脂質として高級脂肪酸と高級アルコールからなるパルミチン酸メチルエステル等のモノエステル型の鎖式単純ワックス及びコレステロールエステル、シトステロールエステル、エルゴステロールエステル等のステロールエステルや脂溶性ビタミンA、D、E等のエステルに代表される含環式単純ワックス及びシアノ脂質を含む単純ワックス類、ジオール脂質、ジエステル等の複合ワックス類、モノオレイン、モノステアリン等のモノグリセリド及びジグリセリドまたトリオレイン、大豆油、コーン油、米糠油、サフラワー油、綿実油、オリーブ油、ヒマシ油、タラ油、イカ油、イワシ油、豚脂、牛脂、羊脂、馬油、その他、微生物油脂類に代表されるトリグリセリド、キミルアルコール、バチルアルコール等のモノアルキルやジアルキル、モノアルキルモノアシル、モノアルキルジアシル、トリアルキルタイプ等のアルキルグリセロールエーテル脂質類及びモノアルケニル、ジアルケニル、モノアルケニルモノアシル、モノアルケニルジアシル、トリアルケニルタイプ等のアルケニルグリセリルエーテ
ル脂質類及びセラミド類、イソアミルアルコールなどのアルコール類があげられる。また誘導脂質として飽和型と不飽和型で直鎖、モノ枝鎖及びポリ枝鎖の長鎖炭化水素とこれら長鎖炭化水素が酸化されたオクタコサノールなどに代表される長鎖アルコール類、ジヒドロスフィンゴシン、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン等の長鎖アミノアルコール類、シトロネラール、ファルネサールや昆虫フェロモンに多い長鎖アルデヒド類、フィロキノン、ユビキノン等の直鎖ケトン類、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、イソ吉草酸、イソ酪酸、に代表される各種脂肪酸、及び、ヒドロキシ酸、ケト酸、ジカルボン酸等の長鎖酸類とその塩類、ヘミテルペンやリモネン、メントール、シトラール、イオノン等のモノテルペン、ビサボレン、ファルネソール、ネロリドール、シペロン、ヒノキ酸等のセスキテルペン、カンホレン、フィトール、ヒノキオール、スギオール、アビエチン酸、クロロフィル、レチノール、トコフェロール、フィロキノン等のジテルペン及びトリテルペン、テトラテルペンやメナキノン、ユビキノン等のポリテルペン等のテルペノイド類、コレステロール、シトステロール、エルゴステロール、胆汁酸、性ホルモン、副腎脂質ホルモン、心臓毒ゲニン、ステロイドサポゲニン、ソラニジン等のステロイド類、フィトエン、リコピン、カロチン、キサントフィル、シトラウリン、カプサンチン等のカロチノイド類があげられる。また更に、複合脂質として大豆レシチン等のホスファチジルコリンやホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン等のグリセロリン脂質、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン等のグリセロホスホノ脂質、プラズマローゲン等のエーテルグリセロリン脂質、セラミドリン酸、スフィンゴミエリン等のスフィンゴリン脂質、セラミドシリアチン等のスフィンゴホスホノ脂質等のリン脂質類、その他グリセロ糖脂質やスフィンゴ糖脂質などの糖脂質類、サポニン、ソラニン等のステロイド配糖体、脂肪酸糖、リポ多糖等の糖脂質類、リン糖脂質類、硫脂質類、アミノ酸脂質類などがあげられる。
また更に、フェニトロチオンやピラクロファス等の脂溶性液体が挙げられる。グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びポリソルベート類等に代表される乳化剤等を芯物質として挙げることもできる。
非限定的に、本発明の一態様において、「第2有効成分」は、非脂溶性物質が含んでもよい。但し、徐放性の点の観点から、一態様において「第2有効成分」が脂溶性物質のみの場合がある。
(混合割合)
内容成分が分離され残留した酵母細胞と第2有効成分の混合割合は適宜選択可能である。好ましくは、内容成分が分離され残留した酵母細胞と第2有効成分の混合割合が、重量比で、6:1-1:2の範囲、4:1-1:2の範囲、4:1-1:1の範囲、3:1-1:1の範囲、2:1-1:1の範囲、約2:1の割合である。好ましくは、内容成分が分離され残留した酵母細胞の方が、第2有効成分よりも多い割合で混合する。
(第2有効成分を内包させる工程)
前記内容成分が分離され残留した酵母細胞に第2有効成分を内包させる工程は、特に限定されない。一態様において、前記内容成分が分離され残留した酵母細胞に第2有効成分を内包させる工程は、内容成分が分離され残留した酵母細胞、第2有効成分及び水分を混合して攪拌することを含む。
水以外にも、水と同様に内容成分が分離され残留した酵母細胞及び第2有効成分を混合し、分散できる液体であれば本発明に方法に「水分」として利用可能である。例えば、緩衝液、糖液、食塩水、出汁等が挙げられる。
混合物に含まれる内容成分が分離され残留した酵母細胞及び第2有効成分の固形分の濃度は特に限定されない。非限定的に、好ましくは、固形分濃度10%以上、15%以上、20%以上、23%以上、25%以上、30%以上である。本明細書の実施例では固形分濃度約23%以上で、第2有効成分(フレーバー)の包括量(包括率)が最大になった。
本発明において、攪拌時間及び攪拌濃度の条件は、内容成分が分離され残留した酵母細胞、第2有効成分及び水分が十分に混合され、分散液が得られる条件であれば特に限定されない。非限定的に、攪拌時間は、好ましくは、1分以上、10分以上、30分以上、1時間以上、2時間以上、3時間以上である。攪拌時間は好ましくは、10時間以内、8時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内である。攪拌時間は、好ましくは30分以上10時間以内、1時間以上8時間以内、2時間以上6時間以内、3時間以上5時間以内である。一態様において、攪拌時間は約4時間である。
攪拌温度は、常温でよいが酵母細胞にダメージを与えなければ特に限定されず、常温あるいは、一定の温度で攪拌することができる。好ましくは、5℃以上、10℃以上、20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上である。攪拌温度は、好ましくは、60℃未満、50℃未満、45℃未満である。攪拌温度は、好ましくは、20℃以上60℃未満、25℃以上50℃未満、30℃以上45℃未満である。一態様において、攪拌温度は約40℃である。
非限定的に、攪拌は例えば、撹拌機、ホモジナイザーを用いて、好ましくは100rpm-5000rpm、200rpm-1000rpmの速度で行うことができる。
混合・攪拌以外にも内容成分が分離され残留した酵母細胞に第2有効成分が接触される工程であれば特に限定されず、任意の手段により内容成分が分離され残留した酵母細胞に第2有効成分を内包させることができる。
本発明の一態様において、内容成分が分離され残留した酵母細胞に第2有効成分を内包させる工程は、内容成分が分離され残留した酵母細胞、第2有効成分及び水分を混合して攪拌し、得られた分散液を、そのままペーストの状態でマイクロカプセルとして用いてもよい、あるいは、乾燥して用いてもよい。
又、一態様としては酵母に適量の水分を加えたペースト状のものである。酵母に加える水分の量が特に限定されない。非限定的に、酵母の量に対して、約0.1倍以上の水分を添加してペースト状にすることができる。
本発明の一態様において、内容成分が分離され残留した酵母細胞に第2有効成分を内包させる工程は、内容成分が分離され残留した酵母細胞、第2有効成分及び水分を混合して攪拌し、得られた分散液を乾燥することを含む。乾燥により乾燥状態のマイクロカプセルが得られる。乾燥は、例えば、噴霧乾燥、加熱乾燥(例えば、常圧加熱乾燥)、凍結乾燥、真空乾燥等の手段によって行うことが可能であるが特に限定されない。
噴霧乾燥とは、アトマイザーにより分散液(乳化液)を微小な液滴に噴霧し、これを高温の熱風と接触させ、粉末化する方法である。アトマイザー回転数により粒径制御ができ、粘度の高い液状食品や結晶などを含むスラリー液の噴霧に使用される。噴霧乾燥は、例えば、Mini Spray Dryer B290 Buchi等の噴霧乾燥機を用いて行うことができる。
噴霧乾燥機空気入り口の温度は、特に限定されない、非限定的に140℃以上、160℃以上、180℃以上、200℃以上である。非限定的に300℃以下、280℃以下、250℃以下、220℃以下である。一態様において160℃-220℃、約200℃である。噴霧乾燥機空気出口の温度は、非限定的に90℃-140℃、100℃-125℃、105℃-120℃である。
一態様において、内容成分が分離され残留した酵母細胞、第2有効成分及び水分を混合して攪拌し、得られた分散液を、好ましくは、流量5ml/分-15ml/分、流量8ml/分-12ml/分、より好ましくは約10ml/分で、噴霧乾燥機に導入する。
一態様において、噴霧乾燥機のアトマイザー(分散液を微少な液滴に噴霧する装置)の回転数は、好ましくは、10,000rpm-50,000rpm、20,000rpm-40,000rpm、25,000rpm-35,000rpm、約30,000rpmである。
又、加熱乾燥としてはドラムドライヤー(ドラムドライ)やオーブンなどを用いて常法により行うことができる。加熱乾燥は、好ましくは常圧加熱乾燥である。真空乾燥としては連続式真空乾燥装置(CVD)などを用いて行うことができる。凍結乾燥とは、食品等の水分を含んだ物質を氷点下(例えば、マイナス30度程度で急速に凍結し、さらに減圧状態で水分を消化させて乾燥させる乾燥技術である。フリーズドライとも呼称される。例えば、フリーズドライヤー等の装置を用いて行うことができる。
非限定的に、第2有効成分の包括効率は、好ましくは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、80%である。第2有効成分の包括効率は混合に用いた第2有効成分のうち、マイクロカプセルの包括された第2有効成分の割合である。マイクロカプセルに包括された第2有効成分の定量は、定量が可能なガスクロマトグラフィー等の手段、例えば、ガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化型検出器を用いて行うことができる。酵素処理、乳化剤処理を行った酵母マイクロカプセルはそれらの処理を行わない酵母マイクロカプセルと比較しても高い包括効率が得られる。
(酸処理を施さない)
本発明の方法は、内容成分が分離され残留した酵母細胞に酸処理を施さない。「酸処理」とは、内容成分が分離され残留した酵母細胞を含む酸性水溶液を一定時間、加熱及び撹拌する処理である。酸性水溶液としては、塩酸、燐酸、硫酸、乳酸、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸等が含まれるが、特に限定はされない。例えば、特開平8-243378は、酵母のマイクロカプセルの製造方法として以下のような酸性水溶液による処理を必須要件として記載している。
酸性水溶液のpHは2.0以下が適当であり、0-1が好ましく、0-0.5がより好ましい。また、酵母菌残渣は、酸性水溶液に固形分濃度1-10%、好ましくは2-5%となるように懸濁させるとよい。この懸濁液の加熱温度及び時間は系のpHやイオン強度に依存して設定されることが好ましいが、例えば、pHが0-0.5の酸性水溶液により処理される場合には、50℃以上100℃以下、好ましくは85℃以上100℃以下の温度で、5分以上1時間以下、好ましくは10分以上30分以下加熱するとよい。この際、pHが0-0.5の酸性水溶液により1時間以上という長時間の加熱処理を行ったりpHが0以下という過度な酸性水溶液での処理を行えば、酵母の細胞壁の強度がそれに応じて低下し、酸処理した酵母の収率の低下を招く場合がある。上記のような酸性水溶液による処理に際しては、必要に応じて各種有機溶剤、分散剤、防腐剤を添加することも可能である。有機溶剤としては、メタノール、エタノール等の各種アルコール、アセトン、ヘキサン等を、分散剤としては、ショ糖エステル、グリセリンエステル等を、防腐剤としては、安息香酸、ソルビン酸、サリチル酸等を単独で、又は併用して使用することができる。
本発明は、上記に例示されるような酸処理を施さないことを特徴の一つとする。
(酵素処理)
本発明の好ましい一態様において、内容成分が分離され残留した酵母細胞に酵素処理を施す工程を含んでもよい。酵素処理は、酵母エキスが抽出された細胞による第2成分の包括をより容易にするような処理、酵母の第1有効成分としての風味改善効果を向上させる処理、酵母の第1有効成分としての食感改良効果を向上させる処理、酵母の第1有効成分としての酸化安定性を向上させる処理、酵母エキスが抽出された細胞による第2成分の香りを放出する処理、等が含まれる。
酵素は、1種を単独で、又は2種以上を混合して酵母細胞と反応させてもよい。例えば、複数種プロテアーゼを、あるいは複数種のセルラーゼを組み合わせてもよい。本発明の一態様において、酵素処理に用いる酵素は、プロテアーゼ、セルラーゼ、又は、これらの組み合わせである、本発明の一態様において、「酵素処理」は、プロテアーゼ及び/又はセルラーゼ添加処理である。
(i)プロテアーゼ
プロテアーゼとしては、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、金属プロテアーゼ等が挙げられ、例えば、微生物由来のプロテアーゼ、植物由来のパパイン、ブロメライン等、動物由来のトリプシン、ペプシン、カテプシン等が挙げられる。
微生物としては、例えば、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)等のアスペルギルス属菌;リゾパス・ニベウス(Rhizopus niveus)、リゾパス・オリゼ(Rhizopus oryzae)等のリゾパス属菌;バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)等のバチルス属菌等が挙げられる。
プロテアーゼはエンド型プロテアーゼであってもエキソ型プロテアーゼであってもよい。好ましくは、エンド型プロテアーゼである。
理論に拘泥するものではないが、酵母細胞にプロテアーゼを反応させることにより、酵母細胞壁表層のタンパク質を切断するとともに、そのタンパク質に付着している異臭の原因物質である低級アルコール等が除去されることにより、異臭が除去され、酵母細胞が有する風味改善効果が向上すると解される。
(ii)セルラーゼ
セルラーゼとしては、セルロース等のβ-1,4-グルカンのグリコシド結合を加水分解するものであれば特に限定されず、例えば、トリコデルマ・リーゼ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)等のトリコデルマ属菌;アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus acleatus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等のアスペルギルス属菌;クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・ジョスイ(Clostridium josui)等のクロストリジウム属菌;セルロモナス・フィミ(Cellulomonas fimi)等のセルロモナス属菌;アクレモニウム・セルロリティクス(Acremonium celluloriticus)等のアクレモニウム属菌;イルペックス・ラクテウス(Irpex lacteus)等のイルペックス属菌;フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)等のフミコーラ属菌;パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)等のパイロコッカス属菌等の微生物由来のセルラーゼが挙げられる。
(iii)酵素処理の条件
本工程では、内容成分が分離され残留した酵母細胞に酵素を添加して反応させる。
酵素の添加量は、酵素の種類に応じて当業者が適宜決定できる。例えば、プロテアーゼの場合、非限定的に、添加量は、酵母細胞(固形分)1gあたり1-5000ユニットであることが好ましく、10-2000ユニットであることがより好ましく、100-300ユニットであることが更に好ましい。例えば、セルラーゼの場合、酵母細胞(固形分)1gあたり0.1-100ユニットであることが好ましく、0.5-50ユニットであることがより好ましく、1-20ユニットであることが更に好ましい。
酵素の反応温度及び反応時間は、選択した酵素に応じて適宜調整することができる。反応温度としては、例えば、10℃-80℃、25℃-60℃が挙げられる。また、反応時間としては、例えば15分-48時間、30分-48時間、2時間-12時間が挙げられる。
(乳化剤)
本発明の一態様において、内容成分が分離され残留した酵母細胞に酵素処理を施す工程の前、後、又は同時に乳化剤を添加する工程を含む
乳化剤を添加する工程は、酵素を反応させる工程の前に行ってもよく、酵素を反応させる工程の後に行っても、あるいは、酵素を反応させる工程と同時に行っても良い。また、2種類以上の酵素を反応させる場合、ある酵素を反応させた後であって、2種類目の酵素を反応させる前、即ち複数の酵素の反応の間に乳化剤を添加してもよい。
乳化剤としては、1-14のHLB値を有するものが好ましい。乳化剤のHLB値は、1-12であることがより好ましく、1-7であることが更に好ましい。
一態様において、乳化剤は、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン及びサポニンからなる群より選択される。また、乳化剤は、1種を単独で、又は2種以上を混合して内容成分が分離され残留した酵母細胞に添加してもよい。
グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンの重合度が1であり、脂肪酸の炭素数が6-18であるモノグリセリン脂肪酸エステル;グリセリンの重合度が2-10であり、脂肪酸の炭素数が6-18であるポリグリセリン脂肪酸エステル;有機酸モノグリセリド等が挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
有機酸モノグリセリドとしては、モノグリセリンカプリル酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸クエン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸酢酸エステル、モノグリセリンステアリン酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸乳酸エステル、モノグリセリンステアリン酸ジアセチル酒石酸エステル、モノグリセリンオレイン酸クエン酸エステル等が挙げられる。
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンの水酸基の1つ以上に炭素数が6-18の脂肪酸がエステル結合したものが挙げられる。より具体的には、例えば、ソルビタンモノラウリン酸エステル、ソルビタンモノパルミチン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル等が挙げられる。
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、プロピレングリコールに炭素数が6-18の脂肪酸がエステル結合したものが挙げられ、モノエステルであってもジエステルであってもよい。プロピレングリコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖の水酸基の1つ以上に炭素数が6-22の脂肪酸がエステル結合したものが挙げられ、たとえば、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ベヘン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等が挙げられる。
レシチンとしては、例えば、大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物;卵黄、牛等の動物;大腸菌等の微生物等から抽出された各種レシチンが挙げられ、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ビスホスアチジン酸、ジホスファチジルグリセリン等のグリセロレシチン;スフィンゴミエリン等のスフィンゴレシチン等が挙げられる。レシチンは、水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン、ヒドロキシレシチン等であってもよい。
サポニンとしては、エンジュサポニン、キラヤサポニン、精製大豆サポニン、ユッカサポニン等が挙げられる。
乳化剤の添加量は、内容成分が分離され残留した酵母細胞(湿潤質量)を基準として、0.01-1質量%であることが好ましく、0.01-0.1質量%であることがより好ましい。なお、本明細書において、湿潤質量とは、液体(分散媒)を含む内容成分が分離され残留した酵母細胞の質量を意味する。
乳化剤による処理の温度及び時間は、選択した乳化剤に応じて適宜調整することができる。温度としては、例えば、50℃-95℃、70℃-95℃が挙げられるが特に限定されない。また、反応時間としては、例えば10分-5時間、20時間-3時間が挙げられるが特に限定されない。
理論に拘泥するものではないが、酵素処理及び/又は乳化剤添加により、酵母細胞に由来する苦味、渋み、えぐ味等の異味の原因物質である疎水性アミノ酸等が、水洗浄の際に洗い流されやすくなり、これらの異味が低減されると考えられる。
2.マイクロカプセル
本発明は、一態様においてマイクロカプセルに関する。
本発明のマイクロカプセルは、本発明の製造方法により製造された、内容成分が分離され残留した酵母細胞及び第2有効成分を含む。本発明のマイクロカプセルにおける、第2有効成分の定義は、「1.マイクロカプセルの製造方法」の項目で説明した通りである。一態様において、第2有効成分は、香料、香辛料抽出物、動物性油脂及び植物性油脂からなる群から選択される脂溶性物質である。
製造されたマイクロカプセルは、冷凍、冷蔵又は常温で保存しても良い。好ましくは、製造されたマイクロカプセルは、冷蔵で保存する。冷凍は-18℃以下であり、冷蔵は-18℃より大きく10℃以下のことであり、常温は10℃以上のことを示す。
乾燥された酵母マイクロカプセルは、常温で長期間保存することが可能であるが、乾燥する工程においてマイクロカプセルを構成する酵母細胞が破壊され、包括状態が欠損する可能性がある。一方、ペースト状のものは酵母細胞が破壊されず、包括された状態をある程度の期間維持することが可能である。ペースト状態のものについては、常温保存、冷蔵保存、冷凍保存のいずれも可能である。ただし、常温保存の場合は、マイクロカプセルを構成する酵母細胞の変敗が進むために乾燥の態様と比較して比較的短期間しか保存ができず、また、冷凍保存の場合は凍結時に酵母細胞が破壊しやすい。冷蔵保存した場合は酵母細胞の破壊が進まず、変敗も比較的抑えられるため、望ましい。
本発明の一態様において、酵母マイクロカプセルは、冷蔵保存され得るペースト状の酵母マイクロカプセルである。「冷蔵保存され得る」とは、冷蔵保存に適した態様であることを意味し、実際に冷蔵保存された態様を含む。非限定的に、冷蔵は-18℃より大きく10℃以下のことを意味する。非限定的に、冷凍は-18℃以下を意味し、常温は10℃以上を意味する。ペースト状の酵母マイクロカプセルは、非限定的に、好ましくは、冷蔵で、1週間以上、2週間以上、1ヶ月以上、2ヶ月以上、又は3ヶ月以上保存可能である。
本発明のマイクロカプセルは、第2有効成分の徐放性に優れている。一態様において、本発明のマイクロカプセルは乾燥条件下(例えば80℃)において、優れた内包性を示し、マイクロカプセルの製造から60分経過後でも約80%以上の第2有効成分の残留率を示す。第2有効成分の種類によってはより高い、例えば90%以上の残留率を示す。一態様において、本発明のマイクロカプセルは、湿潤条件下でも徐放性を示し、例えば、10分後より第2有効成分を緩やかに放出する。
一態様において、本発明のマイクロカプセルは、酸処理を施した、内容成分が分離され残留した酵母細胞を用いて得られたマイクロカプセルと比較して、第2有効成分の徐放性が向上している。「酸処理を施した」の「酸処理」は、「1.マイクロカプセルの製造方法」の「(酸処理を施さない)」の項目で説明した酸処理と同様である。
「第2有効成分の徐放性が向上している」とは、より多くの時間をかけて、及び/又は、より多くの第2有効成分を放出すること意味する。非限定的に、例えば、本発明のマイクロカプセルは、酸処理を施した、内容成分が分離され残留した酵母細胞を用いて得られたマイクロカプセルよりも、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、5倍以上の時間経過後に、第2有効成分を放出する。本発明のマイクロカプセルは、マイクロカプセルの製造から、1時間経過、6時間経過、12時間経過、1日経過、3日経過、5日経過、8日経過、10日経過、15日経過、20日経過するにつれて、徐々に第2有効成分を放出する。一態様において、本発明のマイクロカプセルは、マイクロカプセルの製造から、8日以上、10日経過、15日経過、20日経過してもなお第2有効成分を放出する能力を有している。非限定的に、例えば、本発明のマイクロカプセルは、酸処理を施した、内容成分が分離され残留した酵母細胞を用いて得られたマイクロカプセルよりも、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、5倍以上の量の第2有効成分を放出する。
一態様において、本発明のマイクロカプセルは、優れた酸化安定性を示す。「酸化安定性」とは、酸化条件にさらされても、例えば、時間が経過しても加熱しても、あるいは、酸化剤を添加しても、マイクロカプセルの性質が変化しにくいことを意味する。例えば、一態様において、マイクロカプセルは高温(例えば、100℃以上、例えば105℃)の乾燥下で、7日以上、10日経過、15日経過、20日経過してもなお第2有効成分を放出する能力を保持している。例えば、別の一態様において、本発明のマイクロカプセルは、高温(例えば、100℃以上、例えば105℃)の乾燥下で、7日以上、10日経過、15日経過、20日経過しても変色、腐敗せず保持している。
酵素処理、乳化剤処理を行った酵母マイクロカプセルは、それらの処理を行っていない酵母マイクロカプセルと比較して、包括された第2成分の酸化安定性等が高く、第2有効成分の包括状態がより良好である。
本発明のマイクロカプセルは、一態様において、乾燥状態のマイクロカプセルにおいて、第2有効成分を5重量%以上、好ましくは、10重量%以上、好ましくは15重量%以上、更に好ましくは20重量%以上含む。
マイクロカプセルは一態様において、内容成分が分離され残留した酵母細胞が、単体ではなく集合体を形成している。マイクロカプセルは、一態様において、第2有効成分を包括していない対照と比較して、表面に膜を張っている形状をしている。
3.風味向上剤
本発明は、一態様において、上記マイクロカプセルを含む、食品又は飲料の風味向上剤に関する。
マイクロカプセルは、第1有効成分として内容成分が分離され残留した酵母細胞を含む。内容成分が分離され残留した酵母細胞は、酵母細胞に由来する食品又は飲料の風味向上に有用な成分を含む。そして、さらに第2有効成分としても、香料、香辛料抽出物、動物性油脂及び植物性油脂等の食品又は飲料の風味向上に有用な成分を包括することできる。
風味向上剤は、内容成分が分離され残留した酵母細胞及び第2有効成分を含むマイクロカプセルを含有している限り、これら以外の成分を含有していてもよい。風味向上剤が含有し得る、さらなる成分としては、例えば、調味料、pH調整剤等が挙げられる。
「有効成分として含有する」とは、マイクロカプセルが風味向上効果を奏する程度に含有していれば特に限定されない。一態様において、風味向上剤中、マイクロカプセルを30質量%以上、50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上含有することを意味する。風味向上剤は、食品又は飲料に添加することができる。本発明のマイクロカプセルを含む風味向上剤は、乾燥状態のものであっても、ペースト状(ペースト品)であってもよい。
本発明の風味向上剤を添加しうる食品、飲料の種類は特に限定されない。食品としては、肉料理(例えば、鶏肉、牛肉、豚肉、羊肉、鹿肉、猪肉などを使用した料理、ステーキ類、挽肉料理など)、魚介類料理(海水魚、淡水魚、エビ、イカ、貝類などを使用した料理)、野菜料理(例えば、果菜類、葉菜類、根菜類などを使用した料理)、スープ、シュチューなどを含む、料理の食材に直接添加してもよく、あるいは、ソース、衣、かまぼこ等の練り製品等、料理に付加する物に用いてもよい。肉料理は、例えば、焼き鳥のピックル液、ソーセージ、ハムなどの調味料、焼売、餃子などの調味料などに使用可能である。スイーツ(例えば、クッキー、ケーキ)などの材料に添加することも可能である。飲料としては、水、ジュース、茶(緑茶、紅茶)、コーヒー、ココア、牛乳、酒類、乳飲料等に添加することは可能である。また、マイクロカプセルをサプリメントとして摂取することも可能である。一態様において、本発明の風味向上剤を添加する食品はレトルト食品である。一態様において、本発明は、ペースト状の風味向上剤をレトルト食品への使用を含む。レトルト食品の種類は特に限定されず、カレー、シチュー、ハヤシライス、中華丼、牛丼、等含む。
また、本発明の一態様としては、本発明の風味向上剤を添加する食品は、冷蔵食品又は冷凍食品であっても良いが、特に態様に限定されるものではない。
一態様において、風味向上剤は、食品又は飲料に最終濃度として、好ましくは、0.01重量%-99重量%、好ましくは0.01重量%-10重量%、好ましくは0.03重量%-5重量%、好ましくは0.05重量%-3重量%含まれる。一態様において、マイクロカプセルは、食品又は飲料に最終濃度として、好ましくは、0.01重量%-99重量%、好ましくは0.01重量%-10重量%、好ましくは0.03重量%-5重量%、好ましくは0.05重量%-3重量%含まれる。一態様において、第2有効成分が食品又は飲料に最終濃度として、好ましくは、0.01重量%-99重量%、好ましくは0.01重量%-10重量%、好ましくは0.03重量%-5重量%、好ましくは0.05重量%-3重量%含まれる。
本発明のマイクロカプセルは、風味向上剤としてだけでなく食感改良効果も同時に実現できる。本発明は、一態様において、上記マイクロカプセルを含む、食品の食感改良剤にも関する。本発明のマイクロカプセルを含む剤は、風味向上剤及び食感改良剤として機能しうる。
本発明のマイクロカプセルは第2有効成分として種々の成分を包括しうる。マイクロカプセルは、食品以外にも芳香剤、脱臭剤、消臭剤、除湿剤等として使用可能である。
4.マイクロカプセル又は風味向上剤を含む、食品又は飲料
本発明は、一態様において、上記マイクロカプセルあるいは上記風味向上剤を含む、食品又は飲料に関する。飲料、食品については、「3.風味向上剤」の項目で説明した通りである。
5.植物性タンパク質臭を抑制するための組成物
本発明は、一態様において、上記(1)マイクロカプセル、及び、(2)植物性タンパク質臭抑制効果を有する物を含む、植物性タンパク質臭を抑制するための組成物に関する。
「マイクロカプセル」については、「1.マイクロカプセルの製造方法」及び「2.マイクロカプセル」の項目で説明した通りである。
「植物性タンパク質臭抑制効果を有する物」は、植物性タンパク質臭に対する抑制効果を有するものであって、酵母マイクロカプセル以外のものであれば特に限定されるものではない。具体的には、例えば、豆乳又は乳清の、乳酸菌および酵母による発酵物(乳酸菌・酵母発酵物)」が挙げられ、非限定的に、例えば、WO2017/014253の例えば、段落[0017]-[0044]に記載されたものを使用することができる。
植物性タンパク質臭抑制効果を有する物の原料の例は、牛乳由来の全乳、乳清または豆乳であり、好ましくは牛乳由来の乳清または豆乳であるが特に限定されない。乳清または豆乳液の発酵に際しては、乳酸菌による発酵と酵母に拠る発酵との順は、適宜とし得るが、好ましい実施態様の一つにおいては、まず乳酸菌による発酵が先に行われる。用いる乳酸菌は、食品製造のために使用できるものであれば特に限定されるものではない。乳酸菌による発酵のための条件は、当業者であれば、用いる乳酸菌に応じ、適宜設計することができる。酵母発酵に用いられる酵母は、食品製造のために用いられるものであれば、特に限定されない。酵母による発酵のための条件は、当業者であれば、用いる酵母に応じ、適宜設計することができる。
植物性タンパク質臭抑制効果を有する物は、種々の形態であり得る。例えば、上記の液状のものを、必要に応じ、濃縮または乾燥等し、ペースト状、固形状、粉末状、顆粒状等とすることができる。
植物性タンパク質臭抑制効果を有する物の例としては、例えば、CN-2(富士食品工業社製)、「京寶」料理用マスキング焼酎(宝酒造社製)、その他の調理酒などが含まれる。
植物性タンパク質、特に大豆タンパク質(それを原料とする加工品を含む。)は独特の酸化臭(「植物タンパク臭」ということもある)を有している。(1)マイクロカプセル及び(2)植物性タンパク質臭抑制効果を有する物を含む組成物は、このような、植物性タンパク質臭を抑制するために用いることができる。「植物性タンパク質臭」とは植物性タンパク質、特に大豆タンパク質(それを原料とする加工品を含む。)に独特の酸化臭のことをいう。
WO2017/014253は、乳酸菌・酵母発酵物が、植物性タンパク質臭を抑制することができることを記載している。しかしながら、例えば、本明細書の実施例20において明らかにされたように、乳酸菌・酵母発酵物のみでは、植物性タンパク質臭は減少するが完全に無くなるわけではない、また、咀嚼時に、植物性タンパク質由来の不快な風味が残る、などの問題がある。本発明の酵母マイクロカプセルは、植物性タンパク質臭の抑制効果と、風味の改善効果が有する。さらに、本発明の酵母マイクロカプセルと乳酸菌・酵母発酵物を併用することにより、植物性タンパク質臭の抑制効果が長時間持続する。
組成物に含まれる酵母マイクロカプセル及び植物性タンパク質臭抑制効果を有する物の量は特に限定されない。そして、組成物の植物性タンパク質に対する使用量も特に限定されない。非限定的に、一態様において、植物性タンパク質に対する酵母マイクロカプセルの量が、0.5重量%以上、0.8重量%以上、1.0重量%以上、1.2重量%以上、1.5重量%以上となるような量で組成物を使用する。使用する酵母マイクロカプセルの量が多すぎると、酵母カプセル由来の風味(好ましくない場合)を感じてしまう場合がある。非限定的に、一態様において、植物性タンパク質に対する酵母マイクロカプセルの量が、5.0重量%以下、3.0重量%以下、2.0重量%以下となるような量で組成物を使用する。
酵母マイクロカプセルと植物性タンパク質臭抑制効果を有する物の割合も特に限定されない。一態様において、酵母マイクロカプセルと植物性タンパク質臭抑制効果を有する物の割合は、2:1~1:4、または1:1~1:3である。一態様において、酵母マイクロカプセルと植物性タンパク質臭抑制効果を有する物の含量の割合は、約1:2である。
本発明の植物性タンパク質臭を抑制するための組成物は、酵母マイクロカプセルと植物性タンパク質臭抑制効果を有する物を併用することにより、好ましくは、植物性タンパク質臭抑制効果を有する物を単独で使用するよりも、より長時間の植物性タンパク質臭抑制効果を得ることができる。理論に縛られるわけではないが、一態様において、植物性タンパク質臭抑制効果を有する物が酵母カプセル内に取り込まれ、酵母カプセルから徐放されることで、長時間の植物性タンパク質臭抑制効果として働く、と考えられる。
6.食品又は飲料
本発明は、一態様において、(1)マイクロカプセル、及び、(2)植物性タンパク質臭抑制効果を有する物を含む、食品又は飲料、に関する。
「マイクロカプセル」については、「1.マイクロカプセルの製造方法」及び「2.マイクロカプセル」の項目で説明した通りである。
「植物性タンパク質臭抑制効果を有する物」については、「5.植物性タンパク質臭を抑制するための組成物」に記載した通りである。
飲料、食品については、「3.風味向上剤」の項目で説明した通りである。食品の例として、植物性タンパク質臭の抑制が好ましいものが含まれる。一態様として、例えば、ハンバーグ、メンチカツ、ミートボール、ミートローフ、ロールキャベツ、ソーセージ等の加工品が含まれる。より好ましくは、大豆タンパク質を原料とした加工品である。
7.植物性タンパク質臭を抑制するための方法
本発明は、(1)マイクロカプセル、及び、(2)植物性タンパク質臭抑制効果を有する物を添加することを含む、植物性タンパク質臭を抑制するための方法、に関する。
「マイクロカプセル」については、「1.マイクロカプセルの製造方法」及び「2.マイクロカプセル」の項目で説明した通りである。
「植物性タンパク質臭」については、「5.植物性タンパク質臭を抑制するための組成物」に記載した通りである。
(1)マイクロカプセルと(2)植物性タンパク質臭抑制効果を有する物を添加する態様は特に限定されない、両者を同時に添加しても、順次添加しても良い。好ましくは同時に添加する。(1)マイクロカプセルと(2)植物性タンパク質臭抑制効果を有する物を単一の組成物として添加しても良いし、別々に添加しても良い。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
本明細書の実施例では、特に言及されない限り、以下の材料及び実験器具を用いた。
[材料]
(1)フレーバー
実施例ではフレーバーとして、以下の構造を有するd-リモネンとカプロン酸エチルを用いた。
Figure 0007341128000002
Figure 0007341128000003
カプロン酸エチルは、エステルの一種であり、主にパイナップルや清酒の香気成分として知られている。d-リモネンは、モノテルペンの一種であり、主にレモンやオレンジなどの柑橘系の香気成分として知られている。リモネンの酸化物の例として、リモネンオキサイドとカルボンがある。
(2)使用した試薬
特に明記しない限り、実施例で使用した試薬は以下の通りである。
d-リモネン(和光純薬工業株式会社、大阪、日本);
カプロン酸エチル(和光純薬工業株式会社、大阪、日本);
シクロヘキサノン(和光純薬工業株式会社、大阪、日本)
ヘキサン(和光純薬工業株式会社、大阪、日本)
[実験器具]
(1)ハロゲン水分計
粉末の含水率測定にはハロゲン水分計(HB43, Mettler Toledo International Inc.,Greifensee,Switzerland)を用いた。測定開始時点の試料の重量を測定し、その後、本体に内蔵されているハロゲン・ヒーティング・モジュールが素早くサンプルを加熱し、水分を蒸発させる。乾燥過程中も継続的にサンプル重量を測定し、測定終了後、水分減少量から含水率を算出するという温度重量原理に基づいて測定した。
(2)ガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化型検出器(GC-FID)
フレーバー包括酵母に包括されたフレーバーの定量は、GC-FID(GC-2014,島津製作所,京都、日本)を用いて行った。実施例では、ガスクロマトグラフィーに接続する検出器として、水素炎イオン化型検出器(Flame-Ionization-Detector;FID)を使用した。カラムには、キャピラリーカラム(ULBON HR-1カラム、30m×φ、0.53mm i.d.×5μmフィルム、信和化工株式会社、京都、日本)及びパックドカラム(PEG20M、信和化工株式会社、京都、日本)を使用した。
(3)撹拌機
撹拌機(Bio ShakerBR-13UM,タイテック株式会社、埼玉、日本)を用いて、フレーバー混合液を温めながら、振とう・攪拌し、フレーバー分散液を得た。この攪拌機で温度と撹拌速度が調節することができる。
(4)噴霧乾燥機
フレーバー分散液は、噴霧乾燥機(Mini Spray Dryer B290 Buchi)を用いて噴霧乾燥させた。
実施例1 内容成分を菌体外に放出させ、内容成分が分離され残留した酵母細胞の作成
本実施例では、酵素処理、乳化剤処理を行った酵母細胞(標品1)及びこれらの処理を行わなかった酵母細胞(標品2)を作成した。
(1)酵素処理、乳化剤処理を行った酵母細胞(標品1)の作成
定法により、培養したパン酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)を熱水抽出によって内容成分を分離させ、残留した酵母細胞を使用した。次に、グリセリン脂肪酸エステルを、酵母細胞(湿潤質量)を基準として0.05質量%添加した。酵母細胞を90℃で30分間処理し滅菌した。続いて、冷却後、pHを7.0に調整した後、エンド型プロテアーゼを酵母細胞に添加し、50℃で6時間反応させた。そして、酵母細胞を80℃で20分間処理し、酵素を失活させた。その後、酵母細胞を冷却、水洗浄し(3回)、噴霧乾燥又はドラムドライにより乾燥させ、粉末の酵母細胞を得た。噴霧乾燥させたものを標品1-S、ドラムドライしたものを標品1-Dとした。
(2)酵素処理、乳化剤処理を行っていない酵母細胞(標品2)の作成
定法により培養したパン酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)を、熱水抽出によって内容成分を分離させ、残留した酵母細胞を使用した。次に、酵素及び乳化剤などは特に加えず、酵母細胞を90℃、30分間処理し滅菌した。その後、酵母細胞を冷却、水洗浄し(3回)、噴霧乾燥又はドラムドライにより乾燥させ、粉末の酵母細胞を得た。噴霧乾燥させたものを標品2-S、ドラムドライしたものを標品2-Dとした。
実施例2 酵母細胞カプセル化
本実施例では酵母細胞をカプセル化し、マイクロカプセルを製造した。さらに、カプセル化のための条件を検討した。
(1)標品1のカプセル化
実施例1で得た標品1-Dと香料の固形分25重量%(固形分中の酵母細胞とフレーバーの重量比が2:1)と水75重量%のフレーバー混合液を調製し、撹拌機(Bio ShakerBr-13UM、タイテック株式会社、埼玉、日本)で振とう・撹拌して(250rpm、4時間、40℃)、フレーバー分散液を作成し、酵母細胞をカプセル化することによりマイクロカプセルを得た。
更に、フレーバー分散液を流量10ml/分で噴霧乾燥機に導入し、アトマイザー回転数30,000rpmで噴霧乾燥を行った。噴霧乾燥機の入り口温度は140-200℃、出口温度は64-108℃、気流量は35m3/hであった。噴霧乾燥粉末を回収し、粉末の酵母マイクロカプセルとした(標品1の粉末酵母マイクロカプセル)。
(2)標品2のカプセル化
実施例1で得た標品2-Dと香料の固形分30重量%(固形分中の酵母細胞とフレーバーの重量比が2:1)と水70重量%のフレーバー混合液を調製し、撹拌機(Bio ShakerBr-13UM、タイテック株式会社、埼玉、日本)で振とう・撹拌して(250rpm、4時間、40℃)、フレーバー分散液を作成し、酵母細胞をカプセル化することによりマイクロカプセルを得た。
更に、フレーバー分散液を流量10ml/分で噴霧乾燥機に導入し、アトマイザー回転数30,000rpmで噴霧乾燥を行った。噴霧乾燥機の入り口温度は200℃、出口温度は110-118℃、気流量は27m3/hであった。噴霧乾燥粉末を回収し、粉末の酵母マイクロカプセルとした(標品2の粉末酵母マイクロカプセル)。
(3)酵母分散液濃度の検討
実施例2(1)と同様の酵母マイクロカプセル作成において、実施例1で得た酵母細胞(標品2)を用いて、固形分濃度を変化させて酵母分散液濃度の検討を行った。
8時間撹拌、撹拌温度40℃によりカプロン酸エチル酵母分散液を作成した。実施例2(1)と同じ噴霧乾燥条件により噴霧乾燥機を用いて酵母分散液の粉末化を行い粉末のマイクロカプセルを製造した。ガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化型検出器(GC-FID)を用いて、製造されたマイクロカプセルにおける酵母菌体内へのフレーバー包括量を調べた。
具体的には、内部標準500ppmシクロヘキサノンを含有するヘキサンを抽出溶媒として、酵母マイクロカプセルを抽出した。12mlの試験管(NR-10、株式会社マルエム、大阪、日本)に20mgの酵母マイクロカプセルを秤量後、300μlの蒸留水を加え、10分室温でボルテックスミキサーで混ぜた後、1,700μlの抽出溶媒を加え、室温で30分ボルテックスミキサー(Vortex Genius3, IKA(登録商標)-Werke GmbH&CO.KG,Staufen,Germany)を用いて速度6で抽出した。表面フレーバー量は、20mgの酵母マイクロカプセルに1,700μlの抽出溶媒を加え、室温で30分ボルテックスにより表面を洗浄し、定量した。抽出された溶液を遠心分離し(3,000rpm,10分)、1μlのヘキサン層をGC-FIDに注入した(スプリット比=1:10)。GC-FIDのパラメータを以下の表に示す。
Figure 0007341128000004
窒素ガスをキャリアガスとして使用し、全流量は13.9ml/分に設定した。それぞれ注入口温度140℃、カラム温度130℃、検出器温度200℃に設定し、検出信号の収集はクロマトデータシステム(CDS-Lite ver 5.0,有限会社エル・エイソフト、千葉、日本)によって行った。検出ピーク面積を用いて、フレーバーの定量を行った。フレーバー包括率(mg/g粉末マイクロカプセル)の算出は以下の計算式を用いて行った。
Figure 0007341128000005
測定後、加熱前・加熱後サンプルのフレーバー定量を行い、蒸発したフレーバー量を算出後、以下の計算式を用い、正味の水分量を計算し、これを含水率とした。
Figure 0007341128000006
結果を図1に示す。固形分濃度を変化させたところ、カプロン酸エチル(フレーバー)の包括率は固形分濃度23%まで顕著に増加した。一方、23%以上では包括率は向上するものの、増加率が抑えられた。以降の実施例では、特に明記しない限り、固形分濃度を30重量%(酵母20重量%、カプロン酸エチル10重量%)とした。
(4)フレーバーと酵母の混合割合の検討
実施例2(1)と同様の酵母マイクロカプセル作成において、実施例1で得た未処理の酵母細胞(標品2)を用いて、混合するカプロン酸エチル(フレーバー)と酵母細胞の比を変化させた場合のカプロン酸エチルの包括率を検討した。フレーバーの包括率の算出は、実施例2(3)と同様に行った。
表3 フレーバーと酵母の混合割合
Figure 0007341128000007
結果を図2に示す。酵母細胞に対するフレーバーの割合が高くなると、包括されたフレーバー量も増加する傾向にある。しかし、フレーバーと酵母細胞の混合割合について1/2値以上ではフレーバー包括率があまり変化せず、結果として包括効率が減っていた。噴霧乾燥処理又はドラムドライ処理し得た酵母細胞(標品2-S、及び標品2-D)を用いたいずれの場合でも、フレーバーの2倍の分量の酵母割合で包括効率が高く、フレーバー包括率も多く、フレーバーと酵母の添加割合については1/2が最も効率よくカプセル化することができる。
さらに、実施例1で得たそれぞれのドラムドライした酵母細胞(標品1-D及び標品2-D)についても、d-リモネンとの混合割合を変化させて攪拌、噴霧乾燥することにより、粉末の酵母マイクロカプセルを作成し、酵母細胞の比を変化させた場合のd-リモネンの包括率を検討した。d-リモネン包括率量の算出は、実施例2(3)と同様に行った。標品1-Dと標品2-Dを用いた場合の包括率量を図3に示す。
図3に示すように、標品1-Dの酵母マイクロカプセル、標品2-Dの酵母マイクロカプセル、いずれの場合も、フレーバーと酵母の添加割合が1/2の方が1/4よりも効率が良いことが改めて示された。さらに、標品1-Dの酵母マイクロカプセルの方が標品2-Dの酵母マイクロカプセルよりも包括効率が高いことが示され、酵素処理、乳化剤処理などの処理が酵母細胞のフレーバーの包括率の向上に寄与していることが示唆された。
(5)噴霧乾燥空気入口温度の検討
実施例2と同様の酵母マイクロカプセル作成において、実施例1で得た酵母細胞(標品1-Dおよび標品2-D)を用いて、乾燥入口空気温度がフレーバー(d-リモネン)包括率及び含水率に及ぼす影響について検討した。
酵母細胞と香料の固形分25重量%(固形分中の酵母細胞とフレーバーの重量比が2:1)と水75重量%のフレーバー混合液を調製し、振とう・撹拌して(250rpm、4時間、40℃)、フレーバー分散液を作成した。その後、実施例2と同様、噴霧乾燥を行い、標品1の粉末酵母マイクロカプセルおよび標品2の粉末酵母マイクロカプセルとした。
フレーバーの包括率の算出は、実施例2(3)と同様に行った。含水率は、ハロゲン水分計(HB43, Mettler Toledo International Inc.,Greifensee,Switzerland)を用いて測定した。1gの湿潤酵母マイクロカプセルを、水分測定用アルミニウム皿(直径100mm,1-5790-01,AS ONE Corporation)に取り、測定に用いた。乾燥温度を160℃に設定した。測定後、加熱前・加熱後サンプルのフレーバー定量を行い、蒸発したフレーバー量を算出後、化4の計算式を用い、正味の水分量を計算し、これを含水率とした。フレーバー包括率および含水率を図4に示す。
乾燥入口空気温度に関わらず、標品1-Dの酵母マイクロカプセルの方が標品2-Dの酵母マイクロカプセルよりも高いフレーバー包括率である。また、乾燥入口空気温度に関わらず、標品1-Dの酵母マイクロカプセルの方が標品2-Dの酵母マイクロカプセルよりも含水率が低い。特に、乾燥入口空気温度が180℃以上となると標品1-Dの酵母マイクロカプセルの含水率が顕著に低下したが、フレーバー包括率はほぼ変わらなかった。特に200℃では、含水率が3%程度まで低下した。
従って、本発明の酵母細胞カプセルは、フレーバーの包括率を維持したまま、含水率を下げることができる。また、標品1-Dの酵母マイクロカプセルは、標品2-Dの酵母マイクロカプセルよりもフレーバー包括率が高い。
以上の実験より噴霧乾燥入口の最適温度は200℃と考えられる。
(6)撹拌時間の検討
実施例2(1)と同様の酵母マイクロカプセル作成において、実施例1で得た酵母細胞(標品1及び標品2)を用いて、フレーバー分散液の撹拌時間がフレーバー(d-リモネン又はカプロン酸エチル)の包括率に及ぼす影響を調べた。フレーバーの包括率の算出は、実施例2(3)と同様に行った。
結果を図5に示す。結果より、d-リモネンおよびカプロン酸エチルを用いた場合、共に0時間から4時間では、包括率は、継時的に増加した。一方、4時間以上になると、ほとんど包括率に変化がなかった。
また、酵母細胞については、標品1-Dを用いた時の方が標品2-Dを用いた時よりも高いフレーバーの包括率を示した。
一方、4時間以上になると、ほとんど包括率に変化がなかった。以降の実施例では、特に明記しない限り攪拌時間は4時間とした。
(7-1)撹拌温度の検討1
実施例2(1)と同様の酵母マイクロカプセル作成において、実施例1で得た標品1-Dを用いて、フレーバー分散液の撹拌温度がフレーバー(d-リモネン又はカプロン酸エチル)の包括率に及ぼす影響を調べた。フレーバーの包括率の算出は、実施例2(3)と同様に行った。
結果を図6に示す。40℃でd-リモネンおよびカプロン酸エチルの包括率は一番高い値を示した。
(7-2)撹拌温度の検討2
実施例2(1)と同様の酵母マイクロカプセル作成において、実施例1で得た酵母細胞(標品2-D)を用いて、フレーバー分散液の撹拌温度がフレーバー(カプロン酸エチル)の包括率に及ぼす影響を調べた。フレーバーの包括率の算出は、実施例2(3)と同様に行った。
結果を図7に示す。40℃でのカプロン酸エチル包括率は一番高かった。以降の実施例では、特に明記しない限り攪拌温度は40℃とした。
実施例3 酵母マイクロカプセルの形状
本実施例において、酵母マイクロカプセルの形状を調べた。
具体的には、フレーバーとしてカプロン酸エチル又はd-リモネンを各々、噴霧乾燥処理又は加熱乾燥(ドラムドライ)処理した標品2に各々カプセル化して、酵母マイクロカプセルを製造した。また、標品1原体と、標品1をカプセル化した酵母カプセルをそれぞれ製造した。得られた各々の物質構造を、走査型電子顕微鏡(JSM-6060、日本電子株式会社、東京、日本)を用いて観察した。具体的には、酵母マイクロカプセルをφ8mm丸形カーボンテープ(日新EM株式会社、東京、日本)を試料台につけ、スパーテルを用いてテープに少量のせた。それを、マグネトロンスパッタ装置(MPS-1S,(株)真空デバイス、茨城、日本)に設置し、Pt-Pd電子を付着させた。試料ホルダに試料台を入れ、電子顕微鏡に取り付け、観察した。
結果を図8、図9及び図10に示す。標品1及び標品2のいずれの菌体もほとんど単体として存在せず、集合体を形成していた。マイクロカプセルは、フレーバーを包括しなかった対照と比べ、表面に膜を張っているように見られた。噴霧乾燥処理し得た標品2をカプセル化した場合と、加熱乾燥処理し得た標品2をカプセル化した場合とでほとんど差は見られなかった。また、標品1原体、標品1カプセル化いずれの菌体もほとんど単体として存在せず、集合体を形成していた。集合体の表面の凹凸ははっきりせず、やや平面状となり一体化している。これは、酵素処理、乳化剤を添加する工程で、余計なタンパクが反応したためと考えられる。
比較例1
特開平8-243378の酸処理した酵母細胞に相当するものとして、酵母細胞をリン酸でpH2.0に30分間放置する処理(以下、酸処理)を行ったものを作成し、以下の試験に供した。以下、比較例1とする。
実施例4 酵母細胞の栄養成分分析
本実施例では、酵母マイクロカプセルのメカニズム解明試験に付随して、標品2-S、標品1-S、及び比較例1の3種類の酵母細胞原体について、栄養成分分析を行った。各成分の含量を以下の方法によって分析した。
水分:常圧加熱乾燥法(105℃、3時間)
粗タンパク質:ケルダール法
脂質:酸分解法
灰分:直接灰化法(550℃、10時間)
炭水化物:全体から上記4成分を差し引いた。
Figure 0007341128000008
粗タンパク質の量は、未処理である標品2-Sより、酵素処理、乳化剤処理を行った標品1-Sの方が少なく、それに加えて酸処理を行った、比較例1がさらに低減していた。このことは、これらの処理が細胞内のタンパク質部分を除去していることが示唆された。理論に縛られるわけではないが、酵素処理、乳化剤を添加する工程で余計なタンパクを除去することで、マイクロカプセルの包括能力がさらに向上する、と考えられる。又、特開平8-243378の酸処理を行うことにより、さらに細胞内のタンパク質成分を除去することができ、カプセルの包括能力が向上することが示唆された。
実施例5 乾燥条件及び湿潤条件下におけるマイクロカプセル徐放挙動
本実施例により、乾燥条件及び湿潤条件下におけるマイクロカプセル徐放挙動を調べた。
実施例1で得た標品2-Sおよび2-Dを用いて、実施例2(2)と同様の標品2-Sおよび2-Dの粉末酵母マイクロカプセルを作成した。80℃の乾燥条件及び100%湿潤条件における酵母マイクロカプセルのフレーバー徐放挙動を観察した。フレーバー徐放量は、酵母粉末中のフレーバー量の変化によって検討した。
結果を図11に示す。図11の縦軸はフレーバー残留率、横軸は時間である。それぞれの酵母でのカプロン酸エチル及びd-リモネン徐放速度は、湿潤条件の方が著しく速かったが、乾燥条件では一定のフレーバーの保持効果があることが示された。湿潤条件下では、噴霧乾燥処理(2-S)に比べて、ドラムドライ処理(2-D)した細胞の酵母マイクロカプセルの徐放が多少速かったものの、ほぼ同等の徐放能であった。
実施例6 酵母マイクロカプセルの酸化安定性及び徐放効果の検証
本実施例では、酵母マイクロカプセルの酸化安定性試験を行った。
実施例1で得た標品2-Dを用いて実施例2(2)と同様の標品2-Dの粉末酵母マイクロカプセルを作成した。フレーバーは、リモネンを使用し、その酸化物であるリモネン酸化物とカルボンの放出を測定することにより、その酸化の早さを測定した。比較例として、比較例1の方法で標品2-Dを塩酸で処理した後、実施例2(2)と同様の方法で酵母マイクロカプセルを作製した。また、対照として、デキストリンを噴霧乾燥したカプセルを作成した。次いで、105℃乾燥条件下での酸化安定性試験により、それぞれの酵母マイクロカプセルの徐放挙動を観察した。
結果を図12に示す。観察開始当初(1日-10日程度)は、リモネン酸化物の放出について検証したところ、デキストリンを用いた噴霧乾燥品においてはリモネン酸化物を実験開始当初から放出し、短期間で酸化されたことが示されたのに対し、いずれの酵母マイクロカプセルもリモネン酸化物の放出は抑えられており、酵母細胞をリモネンとともに 噴霧乾燥した方が酸化が抑えられている事が示された。また、酸処理を行なった酵母細胞の場合は、酸化物の放出が抑えられているものの、時間経過後にも酸化されていなかったのに対し、本発明の酵母細胞については、酸処理酵母細胞と比較して、酸化物の放出がわずかに多く、また、時間の経過に従い徐々に酸化が進む事が明らかになった。
一方、そのリモネン酸化物の分解物であるカルボンの放出効果についても検証した。デキストリンとともにリモネンを噴霧乾燥したものは、実験開始直後にカルボンを放出し、その後1mg/g付近の値で安定しているのに対し、マイクロカプセルを用いた試験区では始めは低い値であるものの、徐々にカルボンが増加する事が分かる。また、酸処理を行なったもの(比較例1)と比較したところ、酸処理したものと比べて、保存期間が長い時には、本発明の方が高い値を示しており、本発明では徐々にリモネンの酸化が進み、特に10日経過後に標品2-Dから調製した酵母マイクロカプセルは、徐々にカルボンを放出している事が示唆された。本発明の酸未処理の酵母マイクロカプセルは、比較例1の酸処理をした場合よりも酸化誘導期間が短いものの、当初は抑えられているものの、徐々に酸化が進む、というユニークな酸化安定性を示し、フレーバー(リモネン)を包括し安定化している事が明らかになった。
実施例7 ペースト状の酵母細胞マイクロカプセルの調製
実施例1で得た標品1-Dと香辛料(ブラックペッパー抽出物)を固形分重量比が2:1の割合で混合後3倍量の水を添加し、さらに撹拌機(Bio ShakerBr-13UM、タイテック株式会社、埼玉、日本)で撹拌することにより(250rpm)40℃で4時間攪拌することにより、ペースト状態の酵母マイクロカプセルを得た(標品1-P)。
実施例8 リモネンの香りに関する試験
本実施例では、酵母マイクロカプセルのリモネンの香りに関する官能評価試験及び臭気センサーによる測定を行った。官能で「香りが強い=包括量が多い」を示すと同時に、臭気センサーで「数値が高い=臭いが強い」が示される。
リモネン包括酵母マイクロカプセルの3%水溶液を作成し、官能評価及び臭気センサー測定を行った。具体的には、実施例1で得た酵母細胞(標品1-S及び標品2-S):リモネン:水=2:1:7、40℃、1時間撹拌し、フレーバー分散液を作成することで、ペースト状の酵母マイクロカプセルを得た(標品1-P及び標品2-P)。80℃お湯に標品1-Pおよび標品2-Pを3%添加して撹拌し、リモネン香と酵母臭について官能評価を行った。官能評価は、専門のパネラー5名で行った。臭気センサー測定は、官能評価を実施した後、1分間測定したときの最大値を結果とした。結果は、以下の表の通りである。
Figure 0007341128000009
標品1-Pと標品2-Pの双方ともリモネン香及び酵母臭がした。標品1-Pの方がリモネンの香りが強く残っており、臭気センサーでも値が大きく、リモネンの包括量が多かった。
実施例9 チリフレーバー包括酵母マイクロカプセルの包括状態目視確認試験
本実施例は、チリフレーバー包括酵母マイクロカプセルの包括状態目視確認試験である。標品1及び標品2を用いて、チリフレーバー包括酵母マイクロカプセルを製造した。チリフレーバーはチリソースフレーバーOS-64657(コーケンフード&フレーバー社製)を使用した。標品1の酵母マイクロカプセルは、噴霧乾燥した粉末タイプのもの(SD品)と、噴霧乾燥しないペーストタイプ(ペースト品)の2種類を製造した。
包括されるチリフレーバーがそれぞれ0.2%になるように希釈し、状態を目視で確認した。目視で「油浮きが少ない」場合、フレーバーが包括されていることを示す。標品2の酵母マイクロカプセルは、希釈直後から油浮きが見られた。標品1の酵母マイクロカプセル(噴霧乾燥、ペースト)は油浮きがほとんどみられない。
実施例10 チリフレーバー包括酵母マイクロカプセルの蒲鉾への添加によるフレーバー包括状態の官能確認試験
本実施例では、実施例9と同様に作成したチリフレーバー包括酵母マイクロカプセルを蒲鉾へ添加し、フレーバー包括状態の官能確認試験を行った。フレーバーの感じ方の違いで、「先味が弱く、後味に強くフレーバーを感じる」場合、「包括されていてカプセル化状態良好」な状況を示す。蒲鉾への配合は以下の表の通りである。
Figure 0007341128000010
官能評価は、専門のパネラー5名で行った。結果は以下の表の通りである。
Figure 0007341128000011
フレーバーの感じ方の違いで、「先味が弱く、後味に強くフレーバーを感じる」場合、「包括されていてカプセル化状態良好」な状況を示す。対照及び標品2の酵母マイクロカプセルは、喫食直後からチリ風味が感じられた。標品1の酵母マイクロカプセル(噴霧乾燥、ペースト)は、チリ風味の先味が抑えられすり身の風味が感じられ、咀嚼とともに徐々にチリ風味が感じられた。標品2の酵母マイクロカプセルもチリ風味の後味が感じられたが、標品1の酵母マイクロカプセルよりも弱かった。
実施例11 バニラ包括酵母マイクロカプセルのクッキーへの添加による、酸化安定性の官能確認試験
本実施例では、バニラフレーバー包括酵母マイクロカプセル(標品1―Sの酵母マイクロカプセルと標品2―Sの酵母マイクロカプセル)を製造し、クッキーへ添加した場合の、酸化安定性の官能確認試験を行った。酵母マイクロカプセルは、噴霧乾燥したものである。バニラフレーバーは バニラフレーバーMQ-9071(高砂香料工業社製)を使用した。バニラフレーバー包括酵母マイクロカプセル中のバニラフレーバーが0.01%になるように(酵母マイクロカプセルで0.05%添加)クッキーに練りこんで焼成した。
クッキーを45℃で1週間程度保存し、官能評価を行った。官能評価は、専門のパネラー5名で行った。結果は以下の表の通りである。
Figure 0007341128000012
酵母マイクロカプセルは高温焼成処理後、1週間保存してもバニラ風味を感じることから、酸化安定性が良好であることが判明した。標品1―Sの酵母マイクロカプセルの方が標品2―Sの酵母マイクロカプセルよりも、バニラフレーバーがよく残存しており、より高い酸化安定性を示した。
実施例12 ウスターソースへの添加試験
香辛料としてブラックペッパー抽出物を使用して、実施例7の方法で調製した標品1-Pを含有するウスターソースを、うどんへ添加しその呈味性を評価した。
酵母マイクロカプセルは、実施例1で得た標品1を用いて実施例2(1)と同様のフレーバー分散液を作成し、酵母細胞をカプセル化したものである(標品1-P)。フレーバーはブラックペッパー(OLEORESIN BLACK PEPPER:Kalsec社)を使用した。
はじめに、以下の配合割合でウスターソース調製物(カゴメ社製)を作成した。
Figure 0007341128000013
次に、各ウスターソース調製物を75℃で10分間加熱後した。うどんに作成したウスターソース調製物をそれぞれ大さじ1杯(15ml)かけて麺によく絡ませ官能評価を行った。評価は、「風味の強さ」、「辛味の強さ」、「2日後の風味残り」、「風味発現速度」である。官能評価は、専門のパネラー5名で行った。結果は以下の表の通りである。
香辛料無添加の場合は、ウスターソース由来の風味をやや感じられるが、辛味がなく、メリハリがない風味であった。それに香辛料抽出物を添加することにより、まとまりがあり、適度な呈味を有していた。それに対し、標品1-Pの酵母マイクロカプセルを添加すると、さらに風味の強さと辛味の強さが強く感じられた。また、酵母マイクロカプセルを含有させると、2日間保存しても風味、辛味を保持していることから、保存安定性が高いことが示唆された。
又、香辛料抽出物を展開した場合には、喫食後すぐに風味、香りを感じたが(風味発現速度早い)、酵母マイクロカプセル化した香辛料抽出物を加えたものは喫食直後には風味、香りの立ち上がりは弱いものの、しばらくしたのちに徐々に風味、香りを感じ、最終的には香辛料抽出物そのものを加えたものより強い風味、香りを感じた。
実施例13 レトルト処理における添加効果試験
次に、フレーバー包括酵母マイクロカプセルのレトルト加工時の風味の安定性について検証した。フレーバーおよび酵母マイクロカプセルは、実施例12と同様の、ペースト状態のブラックペッパー抽出物を包括化したものを使用した。
はじめに、以下の配合で試験区を作成した。
コントロール:ブラックペッパー抽出物0.05%
試験区:実施例12のペースト状酵母マイクロカプセル 0.5%
レトルトパウチに水を投入後、各試料を上記添加量にて投入した。その後、レトルト加熱を行い殺菌した。レトルト加熱の条件は120℃で20分間とした。
レトルト加熱後、湯煎し温めた状態で、「辛味の強さ」、「辛味の持続」を専門のパネラー5名で官能評価した。レトルト加熱前の状態を5点とし、1~5点の5段階評価を行った。点数が高い程、レトルト前の状態と変化がなかったことを表す。5名の評価の平均値を下表に示した。
(辛みの強さ)
5点:レトルト前と全く変化がない
4点:レトルト前よりほぼ変化がない
3点:レトルト前よりやや強さが抑えられた
2点:レトルト前より強さがない
1点:レトルト前より全く強さがない
(辛みの持続)
5点:レトルト前と全く変化なく辛さが長く残る
4点:レトルト前よりほぼ同様に辛さが持続した
3点:レトルト前より辛さが長く残らない
2点:レトルト前より辛さが短い
1点:すぐに辛さがレトルト前より全く強さがない
結果は以下の表の通りである。
Figure 0007341128000015
酵母マイクロカプセル化した香辛料抽出物(試験区)を添加すると、香辛料抽出物を直接加えたコントロールに比べてレトルト処理による辛味の低下が抑えられた。また、コントロールは、辛さが長く残らず、すぐに消えてしまったが、標品1の酵母マイクロカプセルを添加すると、辛みの出方が遅く、長く残った。長時間風味を感じられたことから、徐々に香りを放出する徐放挙動を示唆された。
実施例14 フレーバー包括酵母マイクロカプセルをカレーソースの添加によるフレーバー包括状態の官能確認試験
本実施例は、フレーバー包括酵母マイクロカプセルをカレーソースに添加したフレーバー包括状態の官能確認試験である。フレーバーおよび酵母マイクロカプセルは、実施例12と同様のものを使用した。
はじめに、以下の配合でカレールーを作成した。
Figure 0007341128000016
次に、下記配合でカレーソースを作成し、レトルト加熱を行い殺菌した。レトルト加熱の条件は120℃で20分間とした。カレーソースの配合割合は以下の表の通りである。
Figure 0007341128000017
レトルト加熱後、専門のパネラー5名で官能評価試験を行った。評価の内容は、「風味の強さ」、「辛味の強さ」、「風味発現速度」である。結果は以下の表の通りである。
Figure 0007341128000018
標品1の酵母マイクロカプセルについて、0.5%添加時では、風味がやや強く感じられ、1%添加時では風味が強く感じられた。また、0.5%添加時、1%添加時の双方とも辛味が強く感じられた。風味発現速度について、酵母マイクロカプセルを含有させると、発現速度が低下し、喫食後、しばらくしたのちに徐々に風味、香りを感じ、最終的には香辛料抽出物そのものを加えたものより強い風味、香りを感じた。また、香辛料抽出物の添加のみでは、ケミカル臭(不自然な味)を感じるが、酵母マイクロカプセルを添加させると、自然な風味が付与されていた。
実施例15 炭焼きフレーバー包括酵母マイクロカプセルの焼き鳥への添加による、風味向上と食感のジューシー感向上試験
本試験において、実施例7と同様の方法で炭焼きフレーバー包括酵母マイクロカプセル(標品1-Dを使用)を製造し、焼き鳥へ添加した場合の、風味と食感を調べた。炭焼きフレーバーとして、NGスモークフレーバーNO50148-A(コーケンフード&フレーバー社製)を使用した。ピックル液(肉、魚等の塩漬け液)の配合は以下の通りである。
ブランク:1%食塩水
対照:1%食塩水+0.5重量% 炭焼きフレーバー
試験区:1%食塩水+5.0重量%炭焼きフレーバー包括ペースト状の酵母マイクロカプセル(標品1-P)
上記ピックル液を袋詰めした鶏肉に対して30%重量分を添加し、1時間タンブリングを行った。その後、一晩つけ置きした後、焼成した(220℃,12分)。その後、官能検査に供した。
結果、コントロールは炭焼きフレーバーをわずかに感じたが、表面に付着しているだけで、肉になじんでいない。口の中にフレーバー特有の尖った不快味が残る。試験区は、炭焼きフレーバー(グリルフレーバー)を感じ、かつ自然であった。肉の中から感じるので肉との一体感がある。本当に炭火直焼きをしたときのように感じられる。また、香気とともに肉汁が感じられ、食感もやわらかくジューシーになった。酵母マイクロカプセルは、風味向上効果だけでなく食感改良効果も同時に実現できる。
実施例16 マスタードオイル(わさび)包括酵母マイクロカプセルの調製とレトルト処理における保存安定試験
わさび由来のマスタードオイルを用いて、実施例7と同様の方法で、ペースト状の酵母マイクロカプセルを調製した。その後、以下の配合で試験区を作成した。
対照:わさび由来のマスタードオイル0.2重量%
試験区:わさび由来のマスタードオイル10重量%を包括したペースト状酵母マイクロカプセル2%
レトルトパウチに水を投入後、各試料を投入した。その後、レトルト加熱を行い殺菌した。レトルト加熱の条件は110℃で10分間とした。レトルト加熱後、冷却し、35℃で保存し、官能評価した。その結果、コントロールは香り、風味ともにレトルト処理前と比べて大幅に減少しマスタードの香りおよび風味は残っていない。一方、試験区は、マスタードの香り及び風味があきらかに残っていた。また、時間が経過後に更に強い風味が確認された。
実施例17 唐揚げへの添加効果試験
次に、実施例16の方法で調製したマスタードオイル(わさび)を包括した酵母マイクロカプセルを唐揚げに添加した場合の、香り・風味について検証した。
ピックル液の配合は以下のとおりである。
Figure 0007341128000019
上記ピックル液に鶏肉20gを浸漬し、真空度0.08MPa、回転数10rpm条件下、1時間タンブリングを行った。その後、衣付けをし、170℃で4.5分間加熱調理し凍結保存を行った。凍結保存された鶏肉を解凍し、わさびの香りおよび風味を官能評価した結果、コントロールはほとんどわさびの香りおよび風味は残っていない。一方、試験区は、わさびの香り及び風味が明らかに残っていた。また、香気とともに食感もやわらかくなった。酵母マイクロカプセルは、風味向上効果だけでなく食感改良効果も同時に実現できる。
実施例18 香気成分の定量分析
フレーバー包括酵母マイクロカプセルとすることによる香気成分の定量分析を行った。本試験では、香気成分として、マスタードやワサビなどの辛味主成分であるアリルイソチオシアネートを使用した。また、酵母マイクロカプセルは実施例7と同様のマイクロカプセル(標品1-P)を使用した。
はじめに以下の各サンプルを調製した。
対照:マスタードオイル0.2%水溶液
試験区:わさび由来のマスタードオイル10重量%を包括したペースト状酵母マイクロカプセル2%水溶液
[試験方法]
バイアルに、各サンプルを2ml採取し、固相マイクロ抽出(SPME)により50℃で18時間吸着させた。吸着させたSPMEをGC-MSで測定した。コントロールおよび試験区それぞれのサンプル作成直後と、45℃で3日間保存後のサンプルのアリルイソチオシアネート量を測定し、アリルイソチオシアネートの残存率を測定した。
[香気成分:GC-MS法]
装置: VarianCP-3800
カラム:Agillent DB-WAX60m×0.25mm,I.D. 0.25μm
昇温:50℃-240℃, 5℃/min
(結果)
測定結果は以下の通りである。
Figure 0007341128000020
標品1でマスタードオイルを包括しマイクロカプセル化することで、アリルイソチオシアネートの分解を抑制できる。
実施例19 ペースト状の酵母マイクロカプセルの保存安定性
本実施例では、ペースト状の酵母マイクロカプセルの保存安定性を検証した。
[サンプル作製]
実施例12と同様に、実施例1で得た標品1を用いて実施例2(1)と同様のフレーバー分散液を作成し、酵母細胞をカプセル化して、ペースト状の酵母マイクロカプセル(標品1-P)を調製した。フレーバーは、ブラックペッパー(OLEORESIN BLACK PEPPER:Kalsec社)を使用した。
得られたペースト状酵母マイクロカプセルを、冷凍(-20℃)、冷蔵(4℃)、25℃、45℃の条件下で1ヶ月保存した。対照として、製造直後の酵母マイクロカプセルを用いた。
保存後のペースト状酵母マイクロカプセルを含むピックル液を配合した。ピックル液としては2.5%包括ペーストを含有する1%食塩水を使用した。
上記ピックル液を、あらかじめ皮を剥がし袋詰めした鶏肉に対して30重量%分を添加し、1時間タンブリングを行った。さらに、一晩つけ置きした後、焼成し(220℃、12分)、、官能検査に供した。
(結果)
官能検査の結果は以下の表の通りである。製造直後の酵母マイクロカプセルを用いた場合を基準とする。官能評価は、専門のパネラー3名で行った。
Figure 0007341128000021
冷蔵品は、ブラックペッパーの風味を強く感じる。保存後も製造直後の酵母マイクロカプセルを使用した場合とほとんど変化しなかった。25℃で保存した場合は、わずかにブラックペッパーの風味を感じる程度であった。35℃、45℃で保存した場合は、ほとんどブラックペッパーの風味を感じられなかった。
実施例20 酵母マイクロカプセルによる植物性タンパク質臭成分の抑制効果
本実施例では、酵母マイクロカプセルによる植物性タンパク質臭成分の抑制効果
を調べた。
(1)官能評価試験
本実施例では、ブラックペッパー抽出物包括酵母マイクロカプセルの使用による、植物性タンパク質臭の抑制への影響について官能評価試験を行った。
[サンプル作製]
実施例12と同様に、実施例1で得た標品1を用いて実施例2(1)と同様のフレーバー分散液を作成し、酵母細胞をカプセル化して、ペースト状の酵母マイクロカプセル(標品1-P)を調製した。フレーバーは、ブラックペッパー(OLEORESIN BLACK PEPPER:Kalsec社)を使用した。
[試験区の作製]
・試験区1:植物性タンパク質
・試験区2:CN-2(富士食品工業社製)
CN-2は、豆乳を乳酸菌と酵母により発酵した複合発酵調味料である。
・試験区3:標品1-P
・試験区4:CN-2と標品1-Pの併用
植物性タンパク質の原料としては、アペックス350(不二製油社製)を用いた。
[試験方法]
以下の配合で各試験区を作成した。
Figure 0007341128000022
植物性タンパク質に対し、標品1-Pを2重量%添加
植物性タンパク質に対し、CN-2を4重量%添加
全ての原料(各試験区当たり75g)を測り取り、レトルトパウチに投入し、混合した。30分程度放置した(水戻し)後、パウチ毎沸騰水中で、湯煎を10分間行った。その後、常温まで冷却後、冷蔵庫で1昼夜保存した。各試験区の試料を湯煎にて温め、官能評価試験に使用した。
[官能評価試験]
各試験区について、「臭い」、「風味」について専門パネラー3名でブランク(試験区1)と比較し、官能評価を行った。
Figure 0007341128000023
(結果)
試験区2の結果より、試験区1の結果と比較して、植物性タンパク質に発酵液(CN-2)を添加することにより、植物性タンパク質臭が抑えられるが、咀嚼時、植物性タンパク質由来の風味が残ることが示された。
また、試験区3の結果より、植物性タンパク質に本発明のブラックペッパー抽出物包括酵母マイクロカプセル(標品1-P)を添加すると、植物性タンパク質臭が抑えられた。しかしながら、僅かに臭いが残り、経時的に臭いが増すことが明らかになった。植物性タンパク質由来の風味については、感じなかった。
さらに、試験区4の結果より、植物性タンパク質に発酵液と本発明のブラックペッパー抽出物包括酵母マイクロカプセル(標品1-P)を添加すると、植物性タンパク質臭が無くなり、その状態が長時間続いた。更に、植物性タンパク質の風味も感じないことが示された。
フレーバー及び酵母細胞を含む本発明の酵母マイクロカプセルにより、植物性タンパク臭が抑制され、また、植物性タンパク質由来の不快な風味も抑制された。さらに、本発明の酵母マイクロカプセルと発酵液を併用することにより、植物性タンパク臭の抑制効果がより長時間続いた。
(2)GC-MS分析
本実施例では、(1)で調製した各試験区の試料についてGC-MS分析を行った。
冷蔵庫で1日保存した各試験区の試料を、翌日、冷蔵庫から取り出して室温に戻した。各試験区の試料の2mlをバイアルに採取し、固相マイクロ抽出(SPME)により45℃で2時間吸着させた。吸着させたSPMEをGC-MSで測定した。
装置:VarianCP-3800
カラム:Agillent DB-WAX60m×0.25mm,I.D.、0.25μm
昇温:45℃-240℃、5℃/min
GC-MS測定の結果、各試験区のヘキサナールのあたるGCピークの総面積を図13に示す。
本発明のブラックペッパー抽出物包括酵母マイクロカプセル(標品1-P)を加えた試験区3、試験区4では、試験区1と比較し、GC-MSのピークの総面積では、ヘキサナールの量が減少した。
発酵液(CN-2)を添加した試験区2では、ヘキサナールの挙動に変化がなかった。
(3)考察
(1)官能評価試験と(2)GC-MS分析の結果より、以下が考察される。
発酵液(CN-2)を添加すると、植物性タンパク質臭の抑制効果がある(試験区2)。
酵母マイクロカプセル(標品1-P)を添加した試験区3では、植物性タンパク質臭の抑制効果と、風味の改善効果がある。但し、臭いについては、経時的に植物性タンパク質臭が増していった。一方、発酵液(CN-2)と酵母マイクロカプセル(標品1-P)を併用した試験区4は、植物性タンパク質臭の抑制効果が長く続いた。
(2)のGC-MS分析の結果より、酵母マイクロカプセルを添加した試験区3では、試験区1と比較し、植物性タンパク質臭の主成分であるヘキサナールの量が減少している。なお、試験区2の結果から、発酵液(CN-2)の添加では、ヘキサナールの量が減少しない。
試験区3の結果から、酵母マイクロカプセル添加により、カプセル内にあるブラップペッパーが徐放され、臭いと風味が改善されたことが示唆される。更に、試験区4のように、発酵液(CN-2)と酵母マイクロカプセルを併用することで、発酵液がカプセル内に取り込まれ、酵母マイクロカプセルから発酵液が徐放されることで、長時間の植物性タンパク質臭抑制効果として働くことが示唆される。
(4)、酵母マイクロカプセルの添加量の検討
本実施例では、酵母マイクロカプセル(標品1-P)の添加量の検討を行った。
(1)官能評価試験の試験区3の結果から、植物性タンパク質に対して標品1-Pを2%添加したところ、植物性タンパク質臭抑制効果があった。そこで、最適添加量確認のため、標品1-Pの添加量を下げて、再度官能評価試験を実施した。
標品1-Pの添加量を対植物性タンパク質に対して、1.6重量%、1.0重量%、0.8重量%で実施した。結果を以下の表に示す。
表20に示す通り、植物性タンパク質に対して標品1-Pを1.0重量%以上添加すると、不快臭が抑えられた。植物性タンパク質に対して1.0重量%~2.0重量%添加であれば、酵母マイクロカプセル(標品1-P)の風味も感じない。

Claims (11)

  1. マイクロカプセルの製造方法であって、
    酵母細胞を熱水処理し、内容成分が菌体外に放出され、内容成分が分離され残留した酵母細胞を製造する工程、
    前記内容成分が分離され残留した酵母細胞にプロテアーゼ及び/又はセルラーゼ添加処理を施す工程、
    前記内容成分が分離され残留した酵母細胞にプロテアーゼ及び/又はセルラーゼ添加処理を施す工程の前、後、又は同時に乳化剤を添加する工程を含む、
    前記内容成分が分離され残留した酵母細胞を第1有効成分とし、これに第2有効成分を内包させる工程、
    を含む、
    ただし、内容成分が分離され残留した酵母細胞に酸処理を施さない、
    前記製造方法。
  2. 乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン及びサポニンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 第2有効成分が、香料、香辛料抽出物、香味油、動物性油脂及び植物性油脂からなる群から選択される脂溶性物質である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 内容成分が分離され残留した酵母細胞が、乾燥された状態のものである、請求項1-3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 内容成分が分離され残留した酵母細胞が、タンパク質成分を45重量%-70重量%の範囲で含有する、請求項1-4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記内容成分が分離され残留した酵母細胞に第2有効成分を内包させる工程が、内容成分が分離され残留した酵母細胞、第2有効成分及び水分を混合して攪拌することを含む、請求項1-5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記内容成分が分離され残留した酵母細胞に第2有効成分を内包させる工程が、内容成分が分離され残留した酵母細胞、第2有効成分及び水分を混合して攪拌し、得られた分散液を乾燥することを含む、請求項1-6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 内容成分が分離され残留した酵母細胞と第2有効成分の混合割合が、4:1-1:1の範囲である、請求項6又は7に記載の方法。
  9. 攪拌時間が1時間以上8時間以内である、請求項6-8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 攪拌温度が25℃以上50℃未満である、請求項6-9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 第2有効成分の包括効率が少なくとも40%である、請求項1-10のいずれか1項に記載の方法。
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