JP2024035186A - 脂質代謝向上剤及びそれを用いた飲食品 - Google Patents

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Abstract

【課題】飲食品に添加された時に、臭みがなく、良好な風味を有する脂質代謝向上剤、及びそれを用いた飲食品を提供する。【解決手段】本発明の脂質代謝向上剤は、粉末油脂を含む脂質代謝向上剤であって、該粉末油脂が、エイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)を7~50質量%含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、脂質代謝向上剤及びそれを用いた飲食品に関する。
オメガ3系多価不飽和脂肪酸である、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)は、魚油等に多く含まれる脂肪酸であり、体内では合成されない必須脂肪酸である。これらの脂肪酸を摂取すると、脂質代謝が向上することが知られており、健康維持のため、日常的に摂取することが推奨されている。
従来、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)をサプリメントとして摂取することが知られていたが、食事とは別に摂取しなくてはならないため、日常的に摂取することが難しかった。
日常的に摂取するために、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)を飲食品に添加して摂取することが望ましいが、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する油脂は、精製しても、独特の臭みがあり、飲食品に添加した場合においても、その臭みから、喫食、喫飲を好まれないといった問題があった。
そのため、飲食品に添加した場合に、臭みがない脂質代謝向上剤が求められていた。
従来、高度不飽和脂肪酸含有油脂を含む粉末油脂が知られている(特許文献1~4)。
国際公開第2016/114404号 特表1995-508417号公報 特開2018-171046号公報 特開2018-196373号公報
しかしながら、高度不飽和脂肪酸のうち、体内では合成されず食物から摂取する必要がある必須脂肪酸には、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の中でもエゴマ油やアマニ油等に含まれるα-リノレン酸や、サラダ油、ゴマ油等に含まれるオメガ6系多価不飽和脂肪酸(リノール酸)があるが、その中でも脂質代謝が向上するとされているエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量に着目した検討はされていない。本出願人による特許文献1の粉末油脂は、高度不飽和脂肪酸が全般として多様な生理活性の可能性があると報告されていたことから、上記のような高度不飽和脂肪酸の全般を対象としたものであるが、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)や脂質代謝の向上に特化した検証はされていない。粉末油脂がいかなる構成、組成であると脂質代謝が向上し得るかという機能の知見も得られていないのが現状である。臭みを抑制するという観点においても、魚油等の油脂自体のうち一成分であるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量と風味との関係について、十分な検討が行われていなかった。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、飲食品に添加された時に、臭みがなく、良好な風味を有する脂質代謝向上剤、及びそれを用いた飲食品を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、エイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)を特定範囲の量で含有する粉末油脂が、適度な摂取量で効果的にヒトの脂質代謝を向上させること、さらに飲食品に添加された時に、臭みがなく良好な風味を有し、飲食品に添加して日常的に摂取しても負担がないことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の脂質代謝向上剤は、粉末油脂を含む脂質代謝向上剤であって、該粉末油脂が、エイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)を7~50質量%含有することを特徴としている。
また、本発明の飲食品は、上記脂質代謝向上剤を配合したものである。
本発明の脂質代謝向上剤とそれを用いた飲食品は、粉末油脂を用いて脂質代謝が向上する。さらに、脂質代謝向上の有効成分であるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)が有する独特の臭みが抑制され、風味が良好である。
ヒトを対象としたpre test-post test designsにおいて、実施例の粉末油脂を添加したパンを12週間摂取する食事介入(n-3 PUFA摂取量:1.6g/day)を行ったのち、post testを実施した。被験者から採取した血液の赤血球膜におけるn-6/n-3比率(n=10)を測定した結果を示す。 上記pre test-post test designsにおいて、ヒューマンカロリーメーターを用いた呼気分析からエネルギー代謝を測定した。post testにおける、食後及び睡眠時間を含む13時間のエネルギー代謝(エネルギー消費量、脂肪燃焼量)の経時変化(n=3)を示す。 上記pre test-post test designsにおいて、ヒューマンカロリーメーターを用いた呼気分析からエネルギー代謝を測定した。post testにおける、食後及び睡眠時間を含む13時間のエネルギー代謝(糖質燃焼量)の経時変化(n=5)を示す。
以下に、本発明の具体的な実施形態について説明する。
(粉末油脂)
本発明の脂質代謝向上剤は、エイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する粉末油脂を含む。粉末油脂中のエイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量は、7~50質量%であり、9~40質量%が好ましく、10~20質量%がより好ましい。
粉末油脂中のエイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量を上記範囲内とすることで、脂質代謝向上効果を発揮する。さらに本発明の脂質代謝向上剤を飲食品に添加した時に、飲食品に独特の臭みがなく、風味が良好であるため、日常的に摂取することができ、使用者への負担なく脂質代謝向上効果を得ることができる。
本発明において、粉末油脂に配合する油脂は、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)をそのまま用いてもよく、それらを含有する油脂を用いてもよい。
エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する油脂としては、魚油、藻類油等が挙げられる。
また、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する油脂の原料油を冷却によって析出させ固体部を除去分別することや、リパーゼ等でトリグリセリド中のエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)以外の構成脂肪酸のエステル結合を選択的に加水分解し、除去することにより、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量を増加させたものを使用することもできる。
エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する油脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明に用いられる粉末油脂は、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量が7~50質量%であれば、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する油脂以外の油脂を含んでいてもよい。
エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する油脂以外の油脂としては、特に限定されないが、例えば、ヤシ油、パーム核油、パーム油、菜種油、大豆油、綿実油、コーン油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、シア脂、サル脂、マンゴー油、イリッペ脂、カカオ脂、エゴマ油、アマニ油等の植物性油脂や、豚脂、牛脂、乳脂等の動物性油脂、それらの分別油、加工油(硬化及びエステル交換反応のうち1つ以上の処理がなされたもの)等が挙げられる。
油脂におけるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2-2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」)で測定する。なお、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の含有量は、上記試験法のとおりガスクロマトグラフィーで測定した油脂全量(油脂の構成脂肪酸全体の質量)を基準とする。
本発明に用いられる粉末油脂における油脂の配合量は、粉末油脂の長期的な保存安定性確保の観点から、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
本発明に用いられる粉末油脂は、糖質を含むことが好ましい。
上記糖質としては、特に限定されないが、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等の二糖類、マルトトリオース等の三糖類、マルトペンタオース等の四糖類、オリゴ糖、デキストリン、デンプン等の多糖類、増粘多糖類、糖アルコール等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、二糖類、三糖類、多糖類が好ましく、分散性が良好な粉末油脂を得ることができる点から、デキストリンがより好ましい。
デキストリンは、デンプンを化学的又は酵素的方法により低分子化したデンプン部分加水分解物であり、市販品等を使用できる。デンプンの原料としては、例えば、コーン、キャッサバ、米、馬鈴薯、甘藷、小麦等が挙げられる。デキストリンとして具体的には、水あめ、粉あめ、マルトデキストリン、サイクロデキストリン、焙焼デキストリン、分岐サイクロデキストリン、難消化性デキストリン等が挙げられる。デキストリンのDEは、特に限定されないが、5~40が挙げられ、乾燥粉末化前の乳化液の粘度が高くなり過ぎず、良好な粉末油脂を得ることができる点から、10~35が好ましい。DE(Dextrose Equivalent)とは、デキストリンの構成単位であるグルコース残基の鎖長の指標となるものであり、デキストリン中の還元糖の含有量(%)を示す値である。値が大きいほどデキストリンの鎖長は短くなる。DE値はウィルシュテッターシューデル法により測定することができる。
デンプンとしては、例えば、馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、甘藷デンプン、タピオカデンプン、緑豆デンプン、サゴデンプン、コーン、ワキシーコーン、馬鈴薯、タピオカ等を原料とし、これをエーテル化処理したカルボキシメチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプンや、エステル化処理したリン酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、酢酸デンプン、湿熱処理デンプン、酸処理デンプン、架橋処理デンプン、α化処理デンプン等が挙げられる。
増粘多糖類としては、例えば、プルラン、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、ジェランガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、寒天、LMペクチン、HMペクチン等が挙げられる。
本発明に用いられる粉末油脂における糖質の配合量は、特に限定されないが、配合量が多くなれば油脂の賦形力も高くなり喫食、喫飲時にエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)由来の魚臭さや青臭さを低減することができる。
糖質に対するエイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)の質量比は、喫食、喫飲時のEPA、DHA由来の魚臭さや青臭さの低減という観点から、0.1~2.0が好ましく、0.1~1.0がより好ましい。
本発明に用いられる粉末油脂は、上記成分の他に、タンパク質及び乳化剤の少なくともいずれかを好ましく配合することができる。
タンパク質は、油滴の分散性を高め、乳化安定剤として機能する。本発明に用いられる粉末油脂は製造時の水中油型乳化物の油滴を維持したまま粗粒化するが、タンパク質により細かい油滴が分散した構造を保持する。またタンパク質及び糖質は、粉末化基材として機能し、乾燥後の粉末油脂は、油脂が粉末化基材で覆われた(カプセル化した)形状となっている。乳化剤は、油滴の分散性や安定性をより高めることができる。
上記タンパク質としては、特に限定されないが、例えば、乳タンパク質、大豆タンパク質、えんどうタンパク質、そら豆タンパク質、米タンパク質、小麦タンパク質、コラーゲン、ゼラチン等が挙げられる。また、これらのようなタンパク質の分解物を用いることができ、本発明においては上記タンパク質の分解物もタンパク質と表記する。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
タンパク質としては、乳タンパク質を好ましく使用できる。乳タンパク質は、牛乳等の乳由来タンパク質であり、乳由来のタンパク質は、およそ80質量%がカゼインであり、残りの20質量%は乳清タンパク質が占めている。乳タンパク質としては、特に限定されないが、例えば、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、酸カゼイン、レンネットカゼイン、それらの分解物である乳ペプチド等が挙げられる。これらの中でも、カゼイン由来の乳タンパク質が好ましく、カゼイン由来の乳タンパク質としては、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、酸カゼイン、カゼイン加水分解物(乳ペプチド)が好ましい。
本発明に用いられる粉末油脂における上記タンパク質の配合量は、特に限定されないが、例えば、カゼイン由来の乳タンパク質を使用する場合、乾燥粉末化前の乳化液の粘度が高くなり過ぎず、良好な粉末油脂を得ることができる点から、粉末油脂の全量に対して30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましく、1.5~6質量%が特に好ましく、2.5~6質量%が最も好ましい。
上記乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル(ジアセチル酒石酸モノグリセライド、コハク酸モノグリセライド、クエン酸モノグリセライド、乳酸モノグリセライド等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル)、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
乳化剤の配合量は、特に限定されないが、粉末油脂の製造時、保管時、使用時の乳化安定性を保持する点から、油脂の全量に対して0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1.0質量%以上が特に好ましい。また、乳化剤によるえぐみの発生を抑制する点から、油脂の全量に対して20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
本発明に用いられる粉末油脂には、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記の成分以外の他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、特に限定されないが、例えば、油脂の劣化を抑制する酸化防止剤、乳タンパク質を配合した場合に再溶解時の分散性を高めるリン酸塩や、着色料、フレーバー等が挙げられる。
(粉末油脂の製造方法)
本発明に用いられる粉末油脂の製造方法は、特に限定されない。好ましくは、本発明に用いられる粉末油脂は、油脂、水、及び必要に応じて他の成分を配合して水中油型乳化物を調製し、その後水中油型乳化物を乾燥粉末化することによって製造することができる。
水中油型乳化物を乾燥粉末化する方法としては、一般的に知られている噴霧乾燥法、真空凍結乾燥法、真空乾燥法等を用いることができる。これらの中でも、噴霧乾燥法によって得られる噴霧乾燥型粉末油脂が好ましい。
水中油型乳化物は、水相と、油脂を含む油相を混合して調製することができる。例えば、次の乳化工程及び均質化工程によって調製することができる。
乳化工程では、各原材料を乳化機の撹拌槽に投入して撹拌混合する。水とその他の原材料の配合比は、特に限定されないが、例えば、油脂及び配合する場合にはその他の原材料を前記のような配合範囲とし、これらの合計量100質量部に対して水50~200質量部の範囲内にすることができる。各原材料の配合手順は、特に限定されないが、例えば、糖質、タンパク質等を配合する場合にはこれらの水溶性成分を水に室温で分散後、加熱下に攪拌し、あるいは当該水溶性成分を加熱した水に分散、攪拌して完全に溶解させ水相とした後、撹拌槽に設置されたホモミキサー等の攪拌装置で攪拌しながら、加熱溶解させた油相を滴下して乳化することができる。乳化剤を配合する場合には、通常は、油溶性乳化剤は油相に、水溶性乳化剤は水相に配合する。
均質化工程では、乳化工程において得られた乳化液を圧力式ホモジナイザーに供給することによって油滴サイズが微細化される。例えば、市販の圧力式ホモジナイザーを用いて、10~200kgf/cm2程度の圧力をかけて均質化し、油滴サイズを微細化することができる。なお、乾燥粉末化前において加熱殺菌工程を設けてもよい。
次に、噴霧乾燥法によって乾燥粉末化する場合には、均質化した乳化液を高圧ポンプで噴霧乾燥機の入口に供給し、高温熱風を吹き込み、噴霧乾燥機の槽内に上方から噴霧する。噴霧乾燥された粉末は槽内底部に堆積される。噴霧乾燥機としては、例えば、ロータリーアトマイザー方式やノズル方式で噴霧するスプレードライヤーを用いることができる。噴霧乾燥された粉末は、噴霧乾燥機の槽内底部に堆積されるので、該粉末を取り出すことによって、粉末油脂を製造することができる。
上記の通り、本発明に用いられる粉末油脂は水中油型乳化物を乾燥したものであり、水に添加すると元の水中油型乳化物となり、油滴が再分散した状態となる。
本発明に用いられる粉末油脂を水に溶解したときのメディアン径は、特に限定されないが、例えば、0.4~2.2μmである。エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の独特の臭いを抑制し、風味を向上させる観点から、メディアン径は0.5~1.5μmが好ましく、0.5~1.3μmがより好ましく、0.5~1.0μmがさらに好ましい。
ここでメディアン径は、粉末油脂を水に溶解させて、水分散液中の油滴の粒度分布をレーザー回折散乱法によって測定し、粒度分布から算出する。具体的には、島津製作所製SALD-2300湿式レーザー回折装置等の粒度分布測定装置により体積基準として測定する。
(脂質代謝向上剤)
本発明の脂質代謝向上剤によれば、エイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)を7~50質量%含有する粉末油脂が、適度な摂取量で効果的にヒトの脂質代謝を向上させる。オメガ3系多価不飽和脂肪酸は、一日の摂取量の目安が成人で1.6~2.2gとされているが(厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」より)、そのような摂取量で長期間摂取することで脂質代謝が向上すること、また風味の点から長期間摂取に耐えられることが望まれている。本発明の脂質代謝向上剤はこれらのいずれも満足し得る。本発明の脂質代謝向上剤は、バルクの油脂とは異なり、飲食品に添加された時に、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)が有する独特の臭みがなく良好な風味を有し、飲食品に添加して日常的に摂取しても負担がない。
日本人の食事は「食の欧米化」に伴い変化しており、肉類の摂取量が魚介類の摂取量を上回っている(令和元年国民健康・栄養調査より)。この結果は、国民の摂取する飽和脂肪酸割合が年々増加し、オメガ3系多価不飽和脂肪酸割合が減少している状況を示す。オメガ3系多価不飽和脂肪酸の摂取は、メタボリックシンドロームの発症を予防する。その生理学的な機序としては、オメガ3系多価不飽和脂肪酸が生体内で脂肪酸代謝物へ変換され、アディポサイトカインの増加、ミトコンドリアの活性化を介して脂質代謝能を高めることが考えられている。本発明者は、ヒトを対象とした臨床試験によって、オメガ3系多価不飽和脂肪酸含有食品の長期摂取が脂質代謝能を向上させる作用機序について、血液分析やヒューマンカロリーメーター法を用いて検証し、以上に示したような粉末油脂を長期摂取することによりヒトの脂質代謝能が向上することを見出した。
さらに粉末油脂は、バルクの油脂に比べて、経時や加温に起因した酸化によるDHA・EPA量の減少を抑制し、バルクの油脂に比べて脂質代謝向上効果に有利となる。
さらに本発明の脂質代謝向上剤によれば、エイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)を7~50質量%含有する粉末油脂が、適度な摂取量で効果的にヒトの脂質代謝を向上させると共に、それに加えて糖質代謝をも向上させる効果がある。すなわち、本発明の脂質代謝向上剤は、エネルギー源となる主要な栄養素のうち脂質を体内でグリセリンと脂肪酸に分解する作用に加えて、炭水化物(糖質)を体内でブドウ糖に分解する作用を向上させ、体に必要な様々なエネルギーに変える働きを促進するため、糖質代謝向上剤としても用いることができることが示唆された。
(用途)
本発明の脂質代謝向上剤の用途は、特に限定されず、例えば、飲食品に配合することができる。飲食品として具体的には、例えば、飲料(コーヒー飲料、茶飲料等)、スープ類(コーンポタージュ等)、焼成品(菓子、パン類等)、惣菜類、デザート類(冷菓等)、麺類等が挙げられる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(粉末油脂の作製)
実施例及び比較例では次の手順により粉末油脂を作製した。
粉末油脂の作製に使用した原料油を以下に示す。
(油脂)
・精製魚油-1(EPA・DHA含量 20質量%)
・精製魚油-2(EPA・DHA含量 24質量%)
・精製藻類油-1(EPA・DHA含量 40質量%)
・精製藻類油-2(EPA・DHA含量 68質量%)
油脂を70℃に調温後、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル及びレシチン)及び酸化防止剤を添加し油相を調製した。水を60℃に調温後、糖質、カゼインナトリウムを添加し、水相を調製した。
水相を60℃に維持し、水相をホモミキサーで攪拌しながら油相の全量を添加し、水中油型に乳化させた。これにより、表1の全配合100質量部に対し、50質量部の水を含有する乳化液を得た。
その後、得られた乳化液を、圧力式ホモジナイザーを用いて10~200kgf/cm2の圧力で処理し、均質化した。
この均質化した乳化液を、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥することにより粉末化して粉末油脂を得た(噴霧乾燥条件:入口温度210℃)。なお、表1はスプレードライ後の粉末油脂の配合組成を示している。これらの粉末油脂は、以下の飲食品の原料に用いた。
以下の各官能評価において、パネルは、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テスト、日本電色工業製SE6000等の色差測定装置による色差ΔE=0.8の識別テストを実施し、その
各々のテストで適合と判断された20~50代の男性8名、女性12名を選抜した。
[メディアン径]
実施例及び比較例の粉末油脂を水に溶解させた際の油滴径(メディアン径)について、島津製作所製SALD-2300湿式レーザー回折装置を用いて測定した。
[喫食時の評価(魚臭さ・雑味)]
25℃で一晩調温した実施例及び比較例の粉末油脂を口に含んだ時と、その粉末油脂の原料油を口に含んだ時とを比べて、パネル20名のうち「臭み(魚臭、青臭さなど)が抑えられている」と回答した人数によって、下記の基準で評価した。
評価基準
◎+:20名中16名以上が、臭みが抑えられていると評価した。
◎:20名中13名~15名が、臭みが抑えられていると評価した。
〇:20名中10名~12名が、臭みが抑えられていると評価した。
×:20名中9名以下が、臭みが抑えられていると評価した。
[酸化二次生成物(2-4ヘプタジエナール)分析]
粉末油脂の魚臭と青臭さの有無や程度は、多価不飽和脂肪酸油脂における戻り臭の原因物質の一つである2-4ヘプタジエナールの生成量を下記の方法で特定し、下記の評価基準で評価した。
粉末油脂1gをヘッドスペース分析用バイアル管に分取し、60℃にて25分加温した際に発生する揮発性物質を固相マイクロ抽出法(SPME)にて捕集する。SPMEファイバーにはSUPELCO社製の50/30μm DVB/CAR/PDMS等を用いることができる。
この揮発性物質をGC/MS装置(例えば、商品名「GC 7890A MSD 5975C」、アジレント・テクノロジー社製)の注入口にて240℃で5分間加熱脱着し、揮発性物質をガスクロマトグラフィー用カラム(例えば、商品名「DB-WAX UI」、60m×0.25mm、膜厚0.5μm、アジレント・テクノロジー社製)に供した。
評価基準
◎:2-4ヘプタジエナールが20000ppm未満
〇:2-4ヘプタジエナールが20000ppm以上48000ppm未満
×:2-4ヘプタジエナールが48000ppm以上
(菓子パンの作製)
実施例及び比較例の粉末油脂を使用した菓子パンを、下記の配合と工程により作製した。
・配合
強力粉 70質量部
薄力粉 30質量部
塩 0.8質量部
上白糖 32質量部
全卵 5質量部
濃縮乳 5質量部
マーガリン 20質量部
粉末油脂 15質量部
イースト 3質量部
イーストフード 0.1質量部
水 45質量部
・工程
ミキシング 低速1.5分マーガリン投入後低速1.5分 中高速5分(フック使用)
捏上温度 27℃
発 酵 発酵室温27℃ 湿度75% 40分
ベンチタイム 28℃ 20分
成 型 モルダーで延ばしロール型に成型
ホイロ 室温38℃ 湿度80% 40分
焼 成 210℃ 12分から18分
[菓子パンの風味]
実施例及び比較例の粉末油脂を使用した菓子パンを25℃で1日保管後、上記喫食時の評価(魚臭さ・雑味)の評価と同様の基準により、評価した。
(コーヒーの作製)
下記の配合比率で、コーヒー抽出液に砂糖、実施例及び比較例の粉末油脂を入れ、加温溶解した後、加熱した水を注ぎ、完全に溶解してコーヒーを作製した。これを121℃で20分間加熱処理した後、10℃で静置した。
(コーヒーの配合)
コーヒー抽出液※ 6質量部
砂糖 5質量部
粉末油脂 1質量部
水 88質量部
※20質量%濃度になるよう湯にコーヒー粉末(市販品)を溶かし、リン酸水素2ナトリウムでpH6.8に調整した。
[コーヒーの風味]
実施例、比較例の粉末油脂を使用したコーヒーを10℃で1日保管後、上記喫食時の評価(魚臭さ・雑味)の評価と同様の基準により、評価した。
上記評価の結果を表1に示す。
Figure 2024035186000001
[粉末油脂含有食品の長期摂取評価1 脂質代謝の評価]
ヒトを対象とした医学系研究倫理審査委員会の承認を得て、実験を実施した(承認番号:人倫理-2019-11A、人倫理-2020-09A)。10名の若年健康男性を被験者とし、被験者1人が2試行を行うpre test-post test designsで実施した。pre test終了後、エイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する粉末油脂を添加したパン(実施例2)を12週間摂取する食事介入(n-3 PUFA摂取量:1.6g/day)を行ったのち、post testを実施した。各試行では、被験者から採血及び呼気分析を実施した。採取した血液から、赤血球膜脂肪酸組成の測定を実施した。また、ヒューマンカロリーメーター(FHC-20S、富士医科産業株式会社製)を用いた呼気分析からエネルギー代謝を測定した。
pre testと比較しpost testでは、赤血球膜中のDHA・EPAの増加により、n-6/n-3比率は有意に低下した(3.30±0.3 vs. 1.91±0.1, P<0.05)(図1)。また、pre testと比較しpost testにおいて、食後及び睡眠時間を含む13時間の脂肪燃焼量は増加した(351±12 vs. 425±33kcal/13h)(図2)。
以上のことから、実施例の粉末油脂を長期摂取することによりヒトの脂質代謝能が向上することが明らかになった。
[粉末油脂含有食品の長期摂取評価2 糖質代謝の評価]
上記した粉末油脂含有食品の長期摂取評価1と同様の手順で食事介入試験を行い、ヒューマンカロリーメーターを用いた呼気分析からエネルギー代謝を測定した。
その結果、pre testと比較しpost testにおいて、食後及び睡眠時間を含む13時間の糖質燃焼量は増加した(353±19 vs. 389±20kcal/13h)(図3)。
以上のことから、実施例の粉末油脂を長期摂取することによりヒトの糖質代謝能を向上させることが明らかになった。
[加熱処理の有無による粉末油脂中のDHA・EPA量の測定]
実施例4の粉末油脂と、実施例4の粉末油脂に配合したバルクの油脂の各々を加熱し、DHA・EPA量の変化を評価した。
加熱試験は「743rancimat」(Metrohm社製)を用いて実施した。具体的には、粉末油脂3gをガラス管に入れて110℃の温度で加熱し、5時間加熱を行った。その後、ヘキサンで加熱前後の粉末油脂より油分を抽出し、前記した油脂の脂肪酸分析方法(基準油脂分析試験法)に順じて測定を行い、全ピーク面積に対するDHAの面積比とEPA面積比からDHA量とEPA量を算出した。
その結果を表2に示す。粉末油脂(魚油粉末)はバルクの油脂(魚油)に比べて、DHA量とEPA量共に、加熱による減少が著しく抑制された。このことから、脂質代謝向上剤として使用する場合、粉末油脂は経時や加温に起因した酸化によるDHA・EPA量の減少を抑制し、バルクの油脂に比べて脂質代謝向上効果に有利となることが示唆された。
Figure 2024035186000002

Claims (3)

  1. 粉末油脂を含む脂質代謝向上剤であって、該粉末油脂が、エイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)を7~50質量%含有する脂質代謝向上剤。
  2. 前記粉末油脂が、糖質を含有し、糖質に対する前記エイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)の質量比(エイコサペンタエン酸(EPA)及び/又はドコサヘキサエン酸(DHA)/糖質)が、0.1~2.0である、請求項1に記載の脂質代謝向上剤。
  3. 請求項1に記載の脂質代謝向上剤を配合した飲食品。
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