JP7337660B2 - 不織布の製造方法及び不織布の製造装置 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、不織布の柔らかさや滑らかさを改良する装置として、上下一対の延伸ロールを備えた賦形装置が記載されている。上方の延伸ロールには、凸稜が、ロール幅方向に一定間隔で、かつロール外周面に沿って相互に平行に複数設けられている。隣り合う凸稜との間には凹溝が配されている。下方の延伸ロールには、その外周面に、凹溝と噛み合うように設けられた複数のピンを備えている。これらのピンはロール幅方向に対しては、上方の延伸ロールの凸稜に対して接触しないように、一定間隔で配設され、外周面に沿って一定間隔でほぼ直線的に配設されている。
しかし、凸部同士の接触は、凹凸部材の幅方向の位置ズレによって生じることがある。凹凸部材の幅方向においては凸部間の空間が僅か数ミリメートル単位の狭いものであることが多く、凹凸賦形加工の最中に上記の位置ズレが生じるとその修正が難しい。特に、対向する凹凸部材同士が異なる素材、構造(例えば一方が複数の要素を組み立てた構造)を有するものであると、上記の位置ズレが生じやすくなる。
そのため、賦形加工において、凹凸部材の幅方向の位置をミリメートル単位で高精度に制御することが求められる。
また、図2及び3に示すように、凸部11が支持ロール10の表面10Sの軸方向X1及び周方向Yに等間隔で配され、凹部12が各凸部11の周りを縦横に囲んで支持ロール10の表面10Sに格子状に連続した形態で配されていてもよい。
支持ロール10は、凸部11の間に、表面10Sから裏面に貫通する複数の開孔を有することが好ましい。開孔があることにより、風が支持ロール10を吹き抜けやすく、繊維材料が乱れたり飛散したりすることを抑制することができる。これにより繊維材料のムラを抑えて均質化でき、繊維材料の硬化を抑えた賦形を可能にする。また、風が支持ロール10を吹き抜けることによって、繊維材料を凸部11の頂部から支持ロール10に至るまで押し込みやすく、高さのある凹凸形状をより明確にして効率よく賦形することができる。更に、凸部11の壁面に沿った繊維材料の配向性が、風の吹き抜けによってより顕著になる。これにより嵩高く柔らかな肌触りの不織布を効率よく製造することができる。
「凸部11の壁面が全て支持ロール10の表面10Sに対して垂直である」とは、壁面のどの位置においても支持ロール10の表面10Sに対して垂直であることを言う。例えば、凸部11が角柱のように角のある柱体である場合は、壁面を構成する角に挟まれた各面がいずれも支持ロール10の表面10Sに対して垂直であることを言う。凸部11が円柱のように角が無い柱体である場合は、壁面を構成する曲面のいずれの地点の面においても支持ロール10の表面10Sに対して垂直であることを言う。
「支持ロール10の表面10Sに対して垂直である」とは、支持ロール10の表面10Sを基準にして壁面の立設する方向が垂直であることを言う。例えば図3に示すように、支持ロール10の表面10Sが外側に凸にした円弧状の湾曲面である場合は、支持ロール10の側面視した端面において、壁面の支持ロール10側の根元から頂部側までの外形線と、凸部11の端面の幅中心地点における表面10Sの円弧に対する接線Jとがなす角度θが垂直であることを言う。本発明においては、壁面は、凸部11のどの位置における断面又は側面視した端面についても全て、下記に定義する「垂直」の状態にあることが好ましい。
「垂直」とは、支持ロール10の表面10Sに対して88°以上92°以下であることを言い、好ましくは89°以上、より好ましくは89.5°以上であり、また、好ましくは91°以下、より好ましくは90.5°以下である。
支持ロール10の表面10Sに対する壁面の角度は、株式会社東京精密製MICURAを用いて測定することができる。測定する壁面に直交する方向の凹部12の開孔以外の点5ヶ所から支持ロール10の表面10S(平面又は曲面)の位置を測定し、さらに、壁面の高さ方向の点3ヶ所から壁面の位置を測定し、両者の位置関係から角度を導く。
また、凸部11の高さは、賦形後の形状を安定させる観点から凸部11の最大径の10倍以下であることが好ましく、賦形後の形状をより安定させる観点から凸部11の最大径の9倍以下であることがより好ましく、賦形後の形状を更に安定させる観点から凸部11の最大径の8倍以下であることが更に好ましい。
なお、凸部11についての「最大径」とは、支持ロール10の表面10Sの軸方向X1及び周方向Yにおける、凸部11の最大の長さを言う。
頂部を粗面化する方法としては、サンドブラスト加工等、この種の支持ロール10に対して施す種々の方法を用いることができる。
被遊挿部23は支持ロール10の凸部11が遊挿される空間部分である。そのため、押し込み体20は、被遊挿部23と押し込み部22とで幅方向X2に凹凸面を有する凹凸部材である。上記の「遊挿」とは、遊びを持たせて挿入されることを意味する。押し込み体20のユニット21の被遊挿部23に対しては、支持ロール10の凸部11が隙間を残しながら挿入される。押し込み体20のユニット21の押し込み部22は、支持ロール10の凹部12に対して隙間を残しながら挿入される。
これに対し、本実施形態の不織布の製造装置は、上記のような位置制御を凹凸賦形の最中に移動機構によって自動的に、しかもユニット21単位で実行できる。特に、支持ロール10及び押し込み体20の幅が長くなればなるほど、凸部11及び押し込み部22の位置制御の効果が高くなる。例えば、部材の幅2~4m(2000mm~4000mm)に亘って凸部11及び押し込み部22をクリアランス1mm程度で遊挿させる位置制御が、本実施形態では可能となる。
例えば、繊維材料が繊維ウェブの場合、まず、支持ロール10上に繊維ウェブを載置して回転させながら押し込み体20を押し付けて、前述の遊挿を行って繊維ウェブを凹凸賦形する。凹凸賦形した繊維ウェブは支持ロール10の凹凸形状に沿わされる。次いで、前記加熱工程により、支持ロールの凹凸形状に沿わされた繊維ウェブの繊維同士を融着する。これにより、支持ロール10によって、繊維ウェブの凹凸形状が安定的に保持された状態でそのまま不織布化され、凹凸賦形された不織布をより効率的に製造することができる。
また、例えば、繊維材料が不織布(原料不織布)の場合、まず、支持ロール10上に不織布を載置して回転させながら、該不織布に対し賦形直前に加熱処理を行う。これによって不織布の融着している繊維同士の融着力を緩和することができる。繊維融着力を弱めた後、支持ロール10上に不織布を載置しさらに回転させながら押し込み体20を押し付けて、前述の遊挿を行って不織布を凹凸賦形する。これにより、不織布(原料不織布)に対する加熱と凹凸賦形とを支持ロール10上で連続的に行って、凹凸賦形された不織布をより効率的に製造することができる。
しかし、本実施形態の不織布の製造装置1及び製造方法は、前述の移動機構の作用によって、押し込み体20のユニット21の幅方向X2の位置を、押し込み部22と凸部11とが強く接触しないよう自動的に移動できる。これにより、前述の遊挿を好適に実行でき、繊維材料の凹凸賦形を良好に連続的に行うことができる。
特に、支持ロール10を加熱しながら何らかの原因で運転を一時停止しなければならない状況において、連続生産への復帰を早めることができ、凹凸賦形された不織布の効率的な連続生産にとってより効果的である。それは、加熱工程を伴う凹凸賦形における従来の問題を本実施形態の不織布の製造装置及び製造方法が解決し得ることによる。
すなわち、凹凸賦形を一旦停止する場合、加熱装置はその性質上一時停止が難しく、回転が止まった支持ロール10の一部が熱風に晒されることとなる。この場合、支持ロール10内で熱膨張の程度が異なる部分が生じ、凸部10と押し込み部22との間の位置関係のズレの程度も異なる。このような状況では、従来の賦形装置では支持ロール10の熱膨張の寸法の差異が一定以内に収まるまで支持ロール10と押し込み体20との間における前述の遊挿を外さざるを得ない。この場合、従来は適切な運転再開までに時間がかかり、製造上のロスが生じる。
これに対し、本実施形態の不織布の製造装置及び製造方法は、前述の移動機構の作用により押し込み体10のユニット21の位置制御により、位置ズレに対応して、運転再開までの時間を短縮することができる。これにより、凹凸賦形された不織布の連続生産効率を高めることができる。
なお、上記の「下流側」とは、製造装置における機械流れ方向(MD)において、ある地点よりも後側の位置を意味する。製造方法について言えば、機械流れ方向(MD)においてある工程よりも後側を意味する。また、「平滑ロール」とは、対向する支持ロール10の凸部11及び凹部12との間で遊挿を可能にするような凹凸が無く、凸部11に対して均一に押圧を可能にする程度にロール周面が平坦であることを意味する。
まず、支持ロール10が繊維材料を支持ロール10の内部方向に吸引する。吸引した状態で、支持ロール10と押し込み体20との間における前述の遊挿を行って繊維材料を凹凸賦形する。
次いで、前記吸引によって繊維材料を支持ロール10の凹凸形状に沿わせた状態で、他の繊維材料を前記繊維材料の上に供給し、前記繊維材料と前記他の繊維材料とを積層状態で前記支持ロールと平滑ロールとの間に挟んで搬送する。同時に、前記平滑ロールを加熱して、前記繊維材料と前記他の繊維材料とを融着する。これにより、良好な凹凸形状を有する2層構造の積層不織布を製造することができる。
図1に示す押し込み体20は、ロール形状を有し、ロール周方向に回転自在にされている。押し込み体20は、回動軸31を有する。回動軸31の外周面に、複数のユニット21が幅方向(回動軸31の軸方向)X2に配されている。各ユニット21は、前述のとおり、押し込み部22と被遊挿部23とを押し込み体20の幅方向X2に沿って交互に有する。
押し込み部22及び被遊挿部23の幅方向X2(回動軸31の軸方向)及び回動軸31の周方向における配置は、支持ロール10における凸部11と凹部12との配置パターンに応じて、また、必要とする凹凸形状に応じて適宜設定され得る。
本発明に用いられる市販の移動機構の具体例として、ボールブッシュはST70B(商品名、THK株式会社製)、無給油ブッシュはSPB-709080(商品名、オイレス工業株式会社製)、スタンダードスプラインはMZ70(商品名、株式会社丸善精機製)、ボールスプラインはSLS70(商品名、THK株式会社製)、等が挙げられる。
押し込み体20Aは、回動軸31と、回動軸31の外周面に幅方向(回動軸31の軸方向)X2に複数配されたユニット21Aとを有する。各ユニット21Aは、格子状に配された押し込み部22Aと、押し込み部22に囲まれた被遊挿部23Aとを有する。被遊挿部23Aは桝目状に配されている。図示例ではユニット数を4個としたが、ユニット数は4個に限定されない。各ユニット21Aには、幅方向X2に移動可能な上記した移動機構が配されている。
押し込み体20Bは、回動軸31の外周面に、薄板状のリングロール複数枚を幅方向X2に積層させたものである。前記リングロールは所定の枚数に区分されて、幅方向(回動軸31の軸方向)X2に、複数のユニット21Bが配されている。各ユニット21Bは、前記リングロールからなる押し込み部22Bと押し込み部22B間の溝状の被遊挿部23Bとを幅方向X2に等間隔で交互に有する。ユニット21Bの個数は適宜設定し得る。ユニット21Bにおいて、押し込み部22Bは、支持ロール10の凹部12に対応して、ロール軸方向に等間隔に配されている。これにより、押し込み部22Bは、図1~3に示す支持ロール10の軸方向X1における凸部11,11間の凹部12に遊挿可能に配される。またユニット21Bにおいて、被遊挿部23Bは、支持ロール10の凸部11が遊挿可能に配される。
この観点から、移動機構を備えてユニット21Bを複数有することがより好ましい。これにより、長幅な支持ロール10側に累積誤差があっても、押し込み体20Bは、リングロールからなるユニット21B毎に位置制御が可能になり、凸部11と押し込み部22Bとの接触(干渉)を好適に回避できる。また、リングロールが薄板状であるので、ユニット21B単位の熱膨張が支持ロール11のよりも小さくなりやすく極僅かである。そのため、長幅の支持ロール10が熱膨張しても、ユニット21B毎にリングロールの位置修正の制御が行われ、凸部11と押し込み部22Bとの接触(干渉)を好適に回避できる。
各ユニット21Dは、押し込み体20Dの幅方向X2に歯溝を切った凹凸ロールであり、歯の部分が押し込み部22Dであり、溝の部分が被遊挿部23Dである。押し込み部22Dは周方向に凸条に配され、被遊挿部23Dは周方向に凹条に配される。また、押し込み部22Dは、支持ロール10Dの軸方向の凸部11、11間の凹部12(図1参照)に遊挿可能となるように配される。被遊挿部23Dは支持ロール10Dの凸部11(図1参照)が遊挿可能となるように配される。
吸収性物品においては、肌触りの良いものとする観点から、表面シートに適用することが好ましい。表面シートとして配すると、肌との接触面積が低減され、肌のべたつき感やムレ感が抑制されドライ感に優れたものとなり好ましい。なお、吸収性物品としては、例えば、おむつ、生理用ナプキン、尿とりパッド、パンティライナー等、体に装着して体液を吸収する機能を備える種々のものを含む。
10,10D 支持ロール
10S 支持ロールの表面
11 凸部
12 凹部
20,20A,20B,20D 押し込み体
21,21A,21B,21D ユニット
22,22A,22B,22D 押し込み部
23,23A,23B,23D 被遊挿部
25 凹条部
31 回動軸
32 凸条部
Claims (14)
- 支持ロールと押し込み体との間に繊維材料を供給して凹凸賦形する不織布の製造方法であって、
前記支持ロールの表面には、凸部と凹部とが該支持ロールの軸方向に沿って交互に配され、
前記押し込み体は、前記凸部が遊挿される被遊挿部と、前記凹部に遊挿される押し込み部とが前記支持ロールの軸方向と平行な該押し込み体の幅方向に沿って交互に配されたユニットと、該ユニットの前記幅方向への移動を可能にする移動機構とを有し、
前記移動機構によって前記ユニットの前記幅方向の位置を制御して前記遊挿を行い、前記繊維材料への凹凸賦形を実施する、不織布の製造方法。 - 前記押し込み体は、前記ユニットを複数有し、前記ユニット毎に前記移動機構を備える、請求項1記載の不織布の製造方法。
- 前記支持ロールが加熱される加熱工程を有する、請求項1又は2記載の不織布の製造方法。
- 前記繊維材料は繊維ウェブであり、
前記遊挿を行って前記繊維ウェブを凹凸賦形した後、前記加熱工程により、前記支持ロールの凹凸形状に沿わされた前記繊維ウェブの繊維同士を融着する、請求項3記載の不織布の製造方法。 - 前記繊維材料は不織布であり、
前記加熱工程により、前記支持ロール上に配された前記不織布の繊維融着力を弱めた後、前記遊挿を行って前記不織布を凹凸賦形する、請求項3記載の不織布の製造方法。 - 前記加熱工程が、前記繊維材料を支持した前記支持ロールに向けて熱風を吹き付ける工程である、請求項3~5のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
- 前記支持ロールは前記繊維材料を該支持ロールの内部方向に吸引し、
前記遊挿を行って前記繊維材料を凹凸賦形し、
前記吸引によって前記繊維材料を前記支持ロールの凹凸形状に沿わせた状態で、他の繊維材料を前記繊維材料の上に供給し、
前記繊維材料と前記他の繊維材料とを積層状態で前記支持ロールと平滑ロールとの間に挟んで搬送するとともに、前記平滑ロールを加熱して、前記繊維材料と前記他の繊維材料とを融着する、請求項1~6のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。 - 前記移動機構にスプラインを用いる、請求項1~7のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
- 支持ロールと押し込み体との間に繊維材料を供給して凹凸賦形する不織布の製造装置であって、
前記支持ロールの表面には、凸部と凹部とが該支持ロールの軸方向に沿って交互に配され、
前記押し込み体は、前記凸部が遊挿される被遊挿部と、前記凹部に遊挿される押し込み部とが前記支持ロールの軸方向と平行な該押し込み体の幅方向に沿って交互に配されたユニットと、該ユニットの前記幅方向への移動を可能にする移動機構とを有し、
前記移動機構によって前記ユニットの前記幅方向の位置を制御して前記遊挿を行い、前記繊維材料への凹凸賦形を実施する、不織布の製造装置。 - 前記押し込み体は、前記ユニットを複数有し、前記ユニット毎に前記移動機構を備える、請求項9記載の不織布の製造装置。
- 前記支持ロールを加熱する加熱装置を有する、請求項9又は10記載の不織布の製造装置。
- 前記加熱装置が、前記繊維材料を支持した前記支持ロールに向けて熱風を吹き付けるものである、請求項11記載の不織布の製造装置。
- 前記押し込み体よりも下流側に、前記支持ロールの外周面と接する平滑ロールを有し、該平滑ロールが加熱機構を備える、請求項9~12のいずれか1項に記載の不織布の製造装置。
- 前記移動機構がスプラインである、請求項9~13のいずれか1項に記載の不織布の製造装置。
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