JP6318059B2 - 複合伸縮シートの製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、2枚のシート基材と、該シート基材間に配された弾性部材とを具備する複合伸縮シートの製造方法及び製造装置に関する。
2枚の不織布間に、糸ゴムを伸長状態で挟持固定した伸縮シートが知られている。このシートは、その弛緩状態において不規則な皺が生じるものなので、外観の点で改良の余地がある。そこで、この伸縮シートを一対の歯溝ロール間に供給して延伸加工を行い、該伸縮シートに凹凸賦形を行う伸縮凹凸シートの製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、一枚のシートを一対の歯溝ロール間に供給して凹凸賦形を行い、凹凸賦形を行ったシートの非凹凸領域上に伸長状態の糸ゴムを配した後、該シートを折り返して重ね合わせた伸縮凹凸シートの製造方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
特開2013−132308号公報 特開2013−81715号公報
しかし、特許文献1に記載の製造法により製造された伸縮凹凸シートは、これをその弾性限度内で最大に伸長させた状態では皺が消失してしまい、そのことに起因して肌触りが低下することがある。また、特許文献1には、糸ゴムの位置決めに関する課題について何ら記載されておらず、延伸加工時の伸縮シートのネックインによる糸ゴムの位置決め問題について、何ら考慮されていない。
また、特許文献2に記載の製造法は、歯溝ロールが、専ら1枚のフィルムに凹凸賦形を行うために用いられており、2枚の不織布間にホットメルト接着剤によって糸ゴムを伸長状態で挟持固定した伸縮シートを凹凸賦形の対象とはしていない。したがって、特許文献2には、ホットメルト接着剤の滲出の問題、及び延伸加工時の伸縮シートのネックインによる糸ゴムの位置決め問題について、何ら考慮されていない。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る複合伸縮シートの製造方法及び製造装置を提供することにある。
本発明は、2枚のシート基材と、該シート基材間に挟持固定され、かつ一方向に延びる複数本の弾性部材とを具備する複合伸縮シートの製造方法であって、複数本の前記弾性部材を、一方向に延びるように、かつ伸長状態下に、前記基材シート間に挟持固定して、複合シート材を製造し、次いで、軸方向に延びる突条部及び溝部を周方向に沿って交互に有し、かつ互いに噛み合う一対の歯溝ロール間に、前記複合シート材を、前記弾性部材が前記歯溝と直交するように供給して、複合伸縮シートを製造する工程を有し、前記歯溝ロールとして、その少なくとも一方の歯溝ロールが、該歯溝ロールの周方向の全域に延びる周方向条溝を、該歯溝ロールの軸方向に沿って複数条有するものを用い、前記複合シート材における前記弾性部材が、前記歯溝ロールの前記周方向条溝内を通過するように、該複合シート材を、加熱した状態の前記一方の歯溝ロールに抱きかけながら一対の前記歯溝ロール間に供給する、伸縮複合シートの製造方法を提供するものである。
また本発明は、2枚のシート基材と、該シート基材間に配され、かつ一方向に延びる複数本の弾性部材とを具備する複合伸縮シートの製造装置であって、軸方向に延びる突条部及び溝部を周方向に沿って交互に有し、かつ互いに噛み合う一対の歯溝ロールと、該歯溝ロールの上流側に配されたテンションロールとを具備し、前記歯溝ロールは、その少なくとも一方の歯溝ロールが、加熱可能となっており、該歯溝ロールの周方向の全域に延びる周方向条溝を、該歯溝ロールの軸方向に沿って複数条有し、前記周方向条溝は、該条溝内に前記突条部よりも高さの低い第2突条部を有し、該第2突条部は、前記歯溝ロールの軸方向に延びるように配置されており、前記テンションロールは、前記一対の歯溝ロールどうしの間の中間位置よりも前記一方の歯溝ロール寄りに、該テンションロールの外周の一部が位置するように配されている、複合伸縮シートの製造装置を提供するものである。
本発明の製造方法及び製造装置によれば、一対の歯溝ロール間に複合伸縮シートの前駆体としての複合シート材が挿入される際及び挿入されている時に、ホットメルト接着剤の滲出が効果的に防止されると共に、弾性部材の位置が安定化するので、弛緩状態において良好な外観を呈し、かつ良好な肌触りの皺を有し、しかも伸長弾性限度内で最大に伸長させた状態でも皺が消失しない複合伸縮シートを効率的に製造できる。
図1は、本発明の一実施形態である複合伸縮シートの製造装置を用いて製造される複合伸縮シートを示す斜視図である。 図2は、図1に示す複合伸縮シートの要部を拡大して示す斜視図である。 図3は、図2におけるIII−III線断面図である。 図4は、図2におけるIV−IV線断面図である。 図5は、図2におけるV−V線断面図である。 図6は、本発明の一実施形態である複合伸縮シートの製造装置を示す模式図である。 図7(a)は、図6に示す装置における第2歯溝ロールを示す正面図であり、図7(b)は斜視図である。 図8は、図6に示す装置に、延伸の対象となるシートを供給する状態を示す模式図である。 図9は、図6に示す装置を用いてシートを延伸する状態を示す模式図である。 図10は、図6に示す装置を用いてシートを延伸する別の状態を示す模式図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1ないし図5には、本発明の好ましい一実施形態である複合伸縮シートの製造装置及び一実施態様である複合伸縮シートの製造方法で製造される複合伸縮シート10(以下、「本実施形態の複合伸縮シート10」とも言う。)が示されている。これらの図は、複合伸縮シートの弛緩状態、すなわち外力が加わっていない自然状態のものである。本実施形態の複合伸縮シート10は、長手方向X及びこれと直交する幅方向Yを有している。また複合伸縮シート10は、第1シート基材11及び第2シート基材12の2枚のシート基材を具備している。2枚のシート基材11,12は同一の材質のものでもよく、あるいは異なる材質のものでもよい。
更に本実施形態の複合伸縮シート10は、両シート基材11,12間に挟持固定された複数本の弾性部材13を具備している。弾性部材13は糸状又は帯状の一方向に長い形状をしている。弾性部材13は、長手方向Xに延びるように、幅方向Yに間隔を置いて配されている。幅方向Yにおいて隣り合う弾性部材13どうしの間の距離は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
本実施形態の複合伸縮シート10は、弾性部材13の延びる方向である長手方向Xに沿って伸縮可能になっている。一方、幅方向Yに関しては、複合伸縮シート10は実質的に非伸縮である。複合伸縮シート10の伸縮性は、弾性部材13の伸縮性に起因して発現する。一方、シート基材11,12が伸縮性を有していることは,本発明において必須のものではない。シート基材11,12が伸縮性を有していると、複合伸縮シート10がべたつき感を呈することがあり、そのことに起因して複合伸縮シート10の風合いが低下する場合があるので、シート基材11,12は伸縮性を有さないことが好ましい。尤も、弾性部材13の伸縮性を阻害しないようにする観点から、シート基材11,12は伸長性を有していることが好ましい。
図2に示すとおり、本実施形態の複合伸縮シート10は、弾性部材13の延びる方向と直交する方向、すなわち長手方向Xと直交する幅方向Yに延びる筋状の凸部14と、同じく幅方向Yに延びる筋状の凹部15とを複数有している。複数の凸部14及び凹部15は、長手方向Xに沿って交互に配置されている。長手方向Xに沿ってみたとき、凸部14は等ピッチで形成されている。同様に凹部15も等ピッチで形成されている。また、凸部14のピッチと、凹部15のピッチとは同じになっている。凸部14のピッチとは、長手方向Xにおいて隣り合う凸部14の頂部間の距離である。凹部15のピッチとは、長手方向Xにおいて隣り合う凹部15の底部間の距離である。
本実施形態の複合伸縮シート10は、その表裏の形状が相補形状になっている。したがって、複合伸縮シート10の一方の面における凸部14の位置に、他方の面における凹部15が位置している。また、複合伸縮シート10の一方の面における凹部15の位置に、他方の面における凸部14が位置している。要するに、複合伸縮シート10は、その表裏の形状がいずれも波形である相補形状になっている。複合伸縮シート10がこのような表面形状となっていることで、該シート10は、そのどちらの面を用いても同様の良好な風合いを呈するものとなる。
図2に示すとおり、本実施形態の複合伸縮シート10をその幅方向Yに沿って見たとき、弾性部材13を挟んで隣り合う凸部14どうしが直線状に配置されている。同様に、弾性部材13を挟んで隣り合う凹部15どうしが直線状に配置されている。したがって複合伸縮シート10においては、その幅方向Yの略全域にわたって凸部14が直線状に並んで配置されている。同様に、凹部15も、複合伸縮シート10の幅方向Yの略全域にわたって直線状に並んで配置されている。その結果、複合伸縮シート10においては、その幅方向Yの全域にわたって延びる凸部14及び凹部15が、長手方向Xに沿って交互に規則的に配置された状態になっている。そして、複合伸縮シート10を、その長手方向に沿って伸縮させると、その伸縮の程度に応じて凸部14の高さ及び凹部15の深さが可逆的に増減する。これによって、複合伸縮シート10は、外観の印象が高まるとともに、良好な風合いを呈するようになる。
凸部14の頂部は、図2及び図4に示すとおり、複合伸縮シート10の厚さ方向に関して、弾性部材13を挟んで隣り合う凸部14どうしの間、すなわち弾性部材13が配されている箇所に比べて突出している。一方、凹部15の底部は、図2及び図5に示すとおり、複合伸縮シート10の厚さ方向に関して、弾性部材13を挟んで隣り合う凹部15どうしの間、すなわち弾性部材13が配されている箇所に比べて凹陥している。すなわち、弾性部材13が配されている領域は、凸部14の頂部よりも低く、凹部15の底部よりも高い位置に位置している。これによって、複合伸縮シート10は良好な風合い、及び良好な通気性を呈するようになる。
本実施形態の複合伸縮シート10を構成する部材である第1シート基材11及び第2シート基材12は、複数の高延伸加工領域16及び複数の低延伸加工領域17を有している。高延伸加工領域16及び低延伸加工領域17はいずれも、弾性部材13の延びる方向、すなわち複合伸縮シート10の長手方向Xに沿って延びている。また高延伸加工領域16及び低延伸加工領域17はいずれも、幅方向Yに交互に位置している。
低延伸加工領域17は、高延伸加工領域16よりも相対的に延伸倍率が低くなっている。「相対的に延伸倍率が低くなっている。」とは、低延伸加工領域17が延伸されていない領域であるか、又は高延伸加工領域16よりも低い延伸倍率で延伸されている領域であることを意味している。弛緩状態において外観が良好で、かつ伸縮性の良好な複合伸縮シート10を得る観点からは、低延伸加工領域17は、高延伸加工領域16よりも低い延伸倍率で延伸されていることが好ましい。
延伸倍率とは延伸加工を施す前の第1シート基材11及び第2シート基材12の長さをL1とし、延伸加工後の長さをL2としたとき、L2/L1で定義される値である。延伸倍率の高低は、第1シート基材11及び第2シート基材12を直接観察することでも判断できる。具体的には、第1シート基材11及び第2シート基材12を顕微鏡で拡大観察して、厚みが相対的に小さいか、又は繊維シートであれば見かけ密度が相対的に小さい(繊維の存在密度が相対的に小さい)領域が高延伸加工領域16である。また、厚みが相対的に大きいか、又は繊維シートであれば見かけ密度が相対的に大きい(繊維の存在密度が相対的に大きい)領域が低延伸加工領域17である。
図2に示すとおり、高延伸加工領域16は、凸部14及び凹部15が形成されている領域に位置している。一方、低延伸加工領域17は、弾性部材13を挟んで隣り合う凸部14どうしの間の領域に位置している。すなわち低延伸加工領域17には、弾性部材13が配されている。
図2に示すとおり、複合伸縮シート10をその幅方向Yに沿って見たとき、凸部14の間であって、弾性部材13が配されている低延伸加工領域17に、小凸部14’が形成されている。具体的には、複合伸縮シート10には、幅方向Yに沿って、該幅方向Yに沿う長さW1が相対的に長い凸部14と、凸部14よりも幅方向Yに沿う長さW2が相対的に短い小凸部14’とが直線状に交互に配置されている。幅方向Yに沿って見たとき、各凸部14の長さW1は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。同様に、幅方向Yに沿って見たとき、各小凸部14’の長さW2は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
凸部14は、小凸部14’よりも幅方向Yの長さが長いことに加えて、図2及び図4に示すとおり、小凸部14’よりも高さが高くなっている。すなわち、凸部14の頂部が、複合伸縮シート10の厚さ方向に関して、小凸部14’に比べて突出している。凸部14の高さh1とは、図2に示すとおり、複合伸縮シート10における凹部15が位置する部位の上面を基準とし、そこから凸部14が位置する部位の上面までの距離をいう。また、小凸部14’の高さh2とは、図2に示すとおり、複合伸縮シート10における後述する小凹部15’が位置する部位の上面を基準とし、そこから小凸部14’が位置する部位の上面までの距離をいう。
一方、図2及び図3に示すとおり、複合伸縮シート10を長手方向Xに沿って見たとき、低延伸加工領域17には、小凸部14’の間に、小凹部15’が形成されている。すなわち、複合伸縮シート10には、幅方向Yに沿って、凹部15と小凹部15’とが直線状に交互に配されている。一つの低延伸加工領域17における小凹部15’の幅方向Yに沿う長さは、小凸部14’の長さW1と同じである。
高延伸加工領域16は、先に説明した凸部14及び凹部15が形成されている領域に位置している。一方、低延伸加工領域17は、小凸部14’及び小凹部15’が形成されている領域に位置している。したがって、高延伸加工領域16における凸部14の頂部が、複合伸縮シート10の厚さ方向に関して、低延伸加工領域17に比べて突出していることになる。これによって、複合伸縮シート10は良好な風合い、良好な通気性を呈するようになる。また、高延伸加工領域16は、その幅が凸部14の幅W1と同様になっている。一方、低延伸加工領域17は、その幅が小凸部14’の幅W2と同様になっている。
図2に示すとおり、低延伸加工領域17には、その延びる方向と同方向に延びるように弾性部材13が配されている。一条の低延伸加工領域17には、一条の弾性部材13が配置されている。しかし弾性部材13の配置の本数はこれに限られず、一条の低延伸加工領域17に複数条の弾性部材が配置されていてもよい。一方、高延伸加工領域16に関しては、該高延伸加工領域16は弾性部材13が非配置となっている。つまり、弾性部材13は低延伸加工領域17にのみ配置されている。弾性部材13は、その全長にわたって連続しており、分断の発生による不連続箇所は存在していない。これに対して、これまで知られている伸縮シート、すなわち2枚のシート基材間に弾性部材を伸長状態で挟持固定した後に歯溝ロールを用いて延伸加工を施したものでは、延伸加工に起因して弾性部材の分断がしばしば発生する。
弾性部材13は、その全長にわたって第1及び第2シート基材11,12と接合されていることが、複合伸縮シート10の外観の向上及び良好な伸縮性の発現の点から好ましい。この場合、弾性部材13は、その全長にわたって連続して第1及び第2シート基材11,12と接合されていてもよく、あるいは連続とみなせる程度に間欠的にその全長にわたって第1及び第2シート基材11,12と接合されていてもよい。弾性部材13と第1及び第2シート基材11,12との接合には一般に接着剤が用いられるが、これ以外の方法で両者を接合してもよい。
図2及び図3に示すとおり、低延伸加工領域17に配されて長手方向Xに沿って延びる弾性部材13は、複合伸縮シート10の縦断面において、波形に蛇行している。弾性部材13を挟持固定している第1及び第2シート基材11,12も同様に波形に蛇行している。
図2及び図5に示すとおり、複合伸縮シート10の凹部15においては、複合伸縮シート10の厚さ方向で見たときに、高延伸加工領域16よりも、低延伸加工領域17の方が高い位置に形成されている。すなわち図5に示すとおり、複合伸縮シート10における凹部15の底部表面(第1シート基材11側の表面)と、小凹部15’の底部表面(第1シート基材11側の表面)との間には段差Dが生じている。
以上のとおりの構成を有する本実施形態の複合伸縮シート10は、これを弾性部材13の延びる方向に沿って最大伸長させた状態においても、凸部14及び凹部15の立体形状が保持されている点において、これまで知られている伸縮シート、すなわち2枚のシート基材間に弾性部材を伸長状態で挟持固定した後に歯溝ロールを用いて延伸加工を施しただけのものと明らかに相違している。これまで知られている伸縮シートは、これを最大伸長させると、その表裏面が平坦な状態になってしまう。本実施形態の複合伸縮シート10が、これを最大伸長させた状態でも凸部14及び凹部15の立体形状が保持されていることは、該複合伸縮シート10の風合い及び通気性の維持や、優れた外観の維持の点から極めて有利である。凸部14及び凹部15の立体形状が最大伸長させた状態でも保持される理由は、複合伸縮シート10に高延伸加工領域16及び低延伸加工領域17が形成されており、かつ低延伸加工領域17に弾性部材13が配されているからである。これまで知られている伸縮シートは、本実施形態の複合伸縮シート10における高延伸加工領域しか有しておらず、該高延伸加工領域に弾性部材が配されているものである。
上述した「最大伸長させた状態」とは、本実施形態の複合伸縮シート10を長手方向Xに沿って引っ張り、低延伸加工領域17が引き伸ばされて塑性変形してしまう直前まで伸長させ、低延伸加工領域17がフラットになっている状態をいう。
本実施形態の複合伸縮シート10は、これを最大伸長させた状態において、凸部14の高さh1が0.5mm以上であることが好ましく、更に好ましくは1.0mm以上であり、一層好ましくは1.5mm以上である。また、3.5mm以下であることが好ましく、更に好ましくは3.0mm以下であり、一層好ましくは2.5mm以下である。例えば最大伸長させた状態における凸部14の高さh1は、0.5mm以上3.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であることが更に好ましく、1.5mm以上2.5mm以下であることが一層好ましい。
一方、複合伸縮シート10の弛緩状態においては、凸部14の高さh1は0.5mm以上であることが好ましく、更に好ましくは1.0mm以上であり、一層好ましくは2.5mm以上である。また、4.0mm以下であることが好ましく、更に好ましくは3.5mm以下であり、一層好ましくは3.0mm以下である。例えば弛緩状態における凸部14の高さh1は、0.5mm以上4.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上3.5mm以下であることが更に好ましく、2.5mm以上3.0mm以下であることが一層好ましい。
凸部14の高さh1は、次のようにして測定することができる。複合伸縮シート10の弛緩状態においては、20cm×20cm程度の大きさに切り出した複合伸縮シートを、外力をかけない自然状態(弛緩状態)で置いて測定を行う。キーエンス社製のレーザー変位計LK−030を、一方向に一定速度で動かすことができる測定装置に取り付け、該レーザー変位計LK−030を、複合伸縮シート10の高延伸加工領域16のほぼ中央部をX方向に沿って移動させて測定する。移動距離は40mmとする。この40mmの範囲を移動しながら25μm毎に測定を行う。40mmの移動は異なる位置において2回行う。それらの測定結果を平均し、平均値を凸部14の高さとする。
一方、複合伸縮シート10を最大伸長させた状態においては、予め弾性部材13を供給せずに第1及び第2シート基材11,12を重ね合わせて加工成形したシートを、同じ測定装置の台の上に自然状態で置いて、複合伸縮シートと同じように測定を行う。
本実施形態の複合伸縮シート10を構成する第1及び第2シート基材11,12としては、例えば不織布を始めとする各種の繊維シートを用いることができる。あるいは合成樹脂製のフィルムを用いることもできる。更に、繊維シートとフィルムとのラミネートを用いることができる。前記の不織布としては、例えばスパンボンド不織布、サーマルボンド不織布(ポイント・ボンド不織布、ヒートエンボス不織布、エアスルー不織布等)、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、エアレイド不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、湿式不織布などの公知の不織布を特に制限なく用いることができる。各シート基材11,12は、その坪量がそれぞれ独立に10g/m以上であることが好ましく、更に好ましくは12g/m以上、一層好ましくは15g/m以上である。また、100g/m以下であることが好ましく、更に好ましくは50g/m以下、一層好ましくは30g/m以下である。例えば各シート基材11,12は、その坪量がそれぞれ独立に10g/m以上100g/m以下であることが好ましく、12g/m以上50g/m以下であることが更に好ましく、15g/m以上30g/m以下であることが一層好ましい。
各シート基材11,12が不織布である場合、該不織布を構成する繊維は、各種の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンやポリプロピレンやポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレンやポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、アクリル等のアクリロニトリル系樹脂、メタクリル樹脂、ビニリデン系樹脂、天然繊維のコットン、パルプ、ポリ乳酸などの生分解性プラスチック等から構成することができる。あるいは、これらの樹脂の2種以上のブレンド物から繊維を構成したり、これらの樹脂を2種以上組み合わせた複合繊維(芯鞘型繊維やサイド・バイ・サイド型繊維、偏芯したクリンプを有する芯鞘繊維、分割繊維)を用いたりすることもできる。また、繊維に繊維着色剤、静電気防止特性剤、潤滑剤、親水剤など少量の添加物を付与した繊維を用いることもできる。
両シート基材11,12間に挟持固定される弾性部材13は、弾性樹脂から構成することができる。弾性樹脂としては、この種の伸縮シートに用いられてきたものと同様のものを用いることができる。例えばスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ネオプレンゴム等の合成ゴム、天然ゴム、EVAゴム、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)ゴム、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)ゴム、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)ゴム、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等が挙げられる。形状としては、断面が短形、正方形、円形、多角形状等の糸状なしい紐状(平ゴム)のもの、又はマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。
弾性部材13の繊度は、10dtex以上とすることが好ましく、更に好ましくは150dtex以上、一層好ましくは300dtex以上である。また、1600dtex以下とすることが好ましく、更に好ましくは1300dtex以下、一層好ましくは1000dtex以下である。例えば弾性部材13の繊度は、10dtex以上1600dtex以下であることが好ましく、150dtex以上1300dtex以下であることが更に好ましく、300dtex以上1000dtex以下であることが一層好ましい。
弾性部材13を両シート11,12に固定するために用いられる接着剤としては、スチレン系(SIS、SBS、SEBS)、又はポリオレフィン系のホットメルト接着剤等が挙げられる。特に感圧型のSIS系ホットメルト接着剤が弾性部材の抜けや染み出しの観点から好ましい。
次に、本発明の複合伸縮シートの製造方法及び製造装置を、上述した複合伸縮シート10の製造方法及び上述した複合伸縮シート10を製造する製造装置を例に挙げ、図6ないし図10を参照しながら説明する。本実施態様の製造方法は、(i)複合伸縮シート10の前駆体である複合シート材を製造する第1工程と、(ii)複合シート材から複合伸縮シートを製造する第2工程とに大別される。
前記の第1工程においては、複数本の弾性部材を、一方向に延びるように、かつ伸長状態下に、第1及び第2基材シート間に挟持固定して、複合シート材を製造する。第2工程においては、軸方向に延びる突条部及び溝部を周方向に沿って交互に有し、かつ互いに噛み合う一対の歯溝ロール間に、前記複合シート材を、前記弾性部材の伸長状態下で、前記弾性部材が前記歯溝と直交するように供給して、複合伸縮シートを製造する。図6には、これらの工程を行うための装置20が示されている。
図6に示す製造装置20は、第1工程実施部21と、第2工程実施部22とに大別される。第1工程実施部21は、装置20の機械方向MDの上流側に位置する。第2工程実施部22は、第1工程実施部21よりも装置20の機械方向MDの下流側に位置する。第1工程実施部21は、弾性部材13に接着剤(図示せず)を塗布するための塗布装置23及び一対のニップロール24a,24bを備えている。ニップロール24a,24bは、塗布装置23よりも機械方向MDの下流側に配されている。一方、第2工程実施部22に関しては、該第2工程実施部22は、機械方向MDの上流側から下流側に向かって、テンションロール26、第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32からなる一対の歯溝ロール及び一対のニップロール25a,25bを備えている。このように、テンションロール26は、第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32よりも機械方向MDの上流側に配されている。また、ニップロール25a,25bは、第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32よりも機械方向MDの下流側に配されている。
第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32の少なくとも一方は、加熱可能になっている。具体的には、後述する周方向条溝35を有する第2歯溝ロール32が、加熱可能になっていればよいが、図6に示す製造装置20においては、第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32の何れも、加熱可能になっている。第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32の何れにも、その外周面を加熱可能なヒーター(図示せず)が複数個埋め込まれており、該ヒーターを作動させることにより、該外周面が所望の温度に加熱され、その加熱状態を所定時間維持することができるようになっている。該ヒーターの作動は、図示しない制御手段により制御される。該ヒーターとしては、例えば電熱線を用いたカートリッジヒーターが挙げられるが、各種公知の方法を特に制限なく用いることができる。
第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32の加熱温度は、90℃以上、複合シート材の構成部材であるシート基材11,12及び弾性部材13の融点以下であることが好ましい。具体的に第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32の加熱温度は、歯溝ロール31,32の加工速度にもよるが、90℃以上120℃以下程度であることが好ましい。
第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32の加熱温度は、同温に設定する必要はなく、異なる温度であってもよい。
また、第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32よりも機械方向MDの上流側にはテンションロール26が配されている。テンションロール26は、図6に示すように、一対のニップロール24a,24bと一対の歯溝ロール31,32との間に配されている。そして、テンションロール26は、一対の第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32どうしの間の中間位置MPよりも後述する周方向条溝を有する側の歯溝ロール寄りに、テンションロール26の外周の一部が位置するように配されている。具体的に、図6に示す製造装置20においては、後述する周方向条溝35を有する第2歯溝ロール32寄りに、テンションロール26の外周の一部が位置するように配されている。ここで、中間位置MPとは、第1歯溝ロール31のロール軸中心と第2歯溝ロール32のロール軸中心との間隔を2等分する位置を意味する。このような中間位置MPよりもテンションロール26が一方の歯溝ロール寄りに配されているとは、テンションロール26のロール軸中心が該中間位置MPよりも一方の歯溝ロールのロール軸中心寄りに配されているのみならず、テンションロール26のロール軸中心が該中間位置MPと一致していてもテンションロール26の外周面が一方の歯溝ロール寄りに位置しており、前駆体の複合シート材が該一方の歯溝ロールに抱きかけられる状態も含む意味である。本実施形態では、テンションロール26の直径は、第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32の直径よりも小さいが、これに限られるものではない。
第1工程実施部21においては、第1シート基材11及び第2シート基材12が、それらの原反ロール(図示せず)から繰り出されてニップロール24a,24bの位置で合流する。これとともに一方向に引き揃えられた複数本の弾性部材13が、ニップロール24a,24bに向けて伸長状態で供給される。その間に、各弾性部材13に対して塗布装置23から接着剤(図示せず)が塗布される。接着剤が塗布された各弾性部材13は、互いに離間した状態でニップロール24a,24bの間に供給され、同じくニップロール24a,24bの間に供給される第1及び第2基材シート11,12と合流する。そして弾性部材13は、ニップロール24a,24bの挟圧によって、一方向に延びるように、かつ伸長状態が維持されたまま第1及び第2基材シート11,12間に挟持固定される。これによって複合シート材40が形成される。複合シート材40は、目的とする複合伸縮シート10の前駆体である。
上述の工程によって製造される複合シート材40においては、2枚のシート基材11,12は、弾性部材13が存在する位置において互いに接合されている。また、2枚のシート基材11,12は、弾性部材13が存在しない位置においては非接合の状態になっている。複合シート材40は、目的とする複合伸縮シート10と同様に、伸縮可能なシートである。しかし複合シート材40は、目的とする複合伸縮シート10と異なり、凸部及び凹部を有していない。そこで、この複合シート材に対して、第2工程実施部22において凸部及び凹部の付与を行う。
第1工程実施部21によって製造された複合シート材40は、弾性部材13の伸長状態が維持されたままテンションロール26を介して第2工程実施部22に供給される。伸長状態の維持は、テンションロール26の位置と、先に述べたニップロール24a,24bによる複合シート材40のニップと、第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32による複合シート材40のニップと、ニップロール25a,25bによる複合伸縮シート10のニップとによって達成される。ここで、「伸長状態の維持」とは、第2工程実施部22における伸長状態が、第1工程実施部21における伸長状態と同じ状態を維持するものに限られず、弾性部材13が伸長状態であれば、第1工程実施部21における伸長状態との程度の差を有していても構わない。工程における伸長状態は、テンションロール26の位置、ニップロール24a,24bによる複合シート材40の搬送速度、歯溝ロール31,32の加工速度、ニップロール25a,25bによる複合伸縮シート材10の搬送速度によって制御することができる。
第2工程実施部22においては、複合シート材40を、加熱した状態の一方の歯溝ロールに抱きかけながら一対の歯溝ロール間に供給する。具体的には、第2工程実施部22に供給された複合シート材40は、第2歯溝ロール32寄りに配されたテンションロール26の下側を通って加熱した状態の第2歯溝ロール32の周面に抱きかけられながら搬送され、噛み合い状態になっている加熱した第1歯溝ロール31と加熱した第2歯溝ロール32との間に、弾性部材13の伸長状態下に供給される。供給された複合シート材40は、両ロール31,32間を通過するときに、機械方向MDに沿った延伸加工が行われて、凸部及び凹部が形成される。各歯溝ロール31,32は、軸方向に延びる突条部及び溝部を周方向に沿って交互に有し、かつ互いに噛み合う形状になっている。
複合シート材40が第2歯溝ロール32の周面に抱きかけられながら搬送される抱き角は、歯溝ロール31,32の加工速度にもよるが、0°を超えることが好ましく、特に45°以上300°以下であることが更に好ましい。抱き角θは、図6に示すように、複合シート材40が第2歯溝ロール32の周面に接し始める位置における法線n1と、複合シート材40が噛み合い状態になっている第1歯溝ロール31と第2歯溝ロール32との間に供給される位置における法線n2とのなす角(θ)として定義される。
図7(a)及び(b)には、第2工程実施部22に設置されている2つの歯溝ロール31,32のうちの第2歯溝ロール32の要部が示されている。第2歯溝ロール32は、軸方向CDに沿って高歯たけ部33と、高歯たけ部33よりも歯たけが相対的に低い低歯たけ部34とを交互に有している。高歯たけ部33には、歯たけが高い第1の突条部としての第1の歯36が形成されている。一方、低歯たけ部34には、第1の歯36よりも歯たけの低い第2の突条部としての第2の歯37が形成されている。第1の歯36及び第2の歯37は、第2歯溝ロール32の軸方向CDに沿って延びている。また第1の歯36及び第2の歯37は、第2歯溝ロール32の周方向に沿って規則的に形成されている。周方向において隣り合う第1の歯36の間は溝部となっている。同様に、周方向において隣り合う第2の歯37の間も溝部となっている。軸方向CDに沿って見たとき、第1の歯36と第2の歯37とは同一直線上に位置し、すなわち、これらの歯36,37は直線状に並んで配置されている。したがって、周方向において隣り合う歯の間に位置する溝部も、軸方向CDに沿って延びる同一直線上に位置している。
第1の歯36は、その歯幅、すなわち第2歯溝ロール32の軸方向CDに沿った長さが、第2の歯37の歯幅よりも長くなっている。したがって、第1の歯36を含む高歯たけ部33は、その幅が、第2の歯37を含む低歯たけ部34の幅よりも広くなっている。
高歯たけ部33を構成する第1の歯36の歯たけが、低歯たけ部34を構成する第2の歯37の歯たけよりも高いことに起因して、第2歯溝ロール32は、該ロール32の周方向の全域に延びる周方向条溝35を有するものとなる。第2歯溝ロール32は、該第2歯溝ロール32の軸方向CDに沿って周方向条溝35を複数条有している。周方向条溝35の幅、すなわち軸方向CDに沿った長さは、第2の歯37の歯幅及び低歯たけ部34の幅と同じになっている。したがって周方向条溝35内には、第2の突条部としての第2の歯37が位置していることになる。軸方向CDにおいて隣り合う周方向条溝35のピッチPは、第1工程実施部21において製造された複合シート材40における隣り合う弾性部材13のピッチと同じになっている。また、周方向条溝35を挟んで隣り合う第1の歯36どうしは、軸方向CDに沿って見たとき、同一直線上に位置している。
一方、第1歯溝ロール31に関しては、第2歯溝ロール32と異なり、周方向条溝が形成されていない。第1歯溝ロール31は、軸方向CDに沿って、該第1歯溝ロール31の全長にわたって延びている、突条部としての歯を、周方向に間欠的に有している。周方向において隣り合う歯の間は溝部となっている。第1歯溝ロール31に形成されている歯の全歯たけは、第2の歯溝ロール32における第2の歯37の全歯たけよりも大きく、かつ第1の歯36の全歯たけ以下になっている。好ましくは、第1歯溝ロール31に形成されている歯の全歯たけは、第2の歯溝ロール32における第1の歯36の全歯たけと同じになっている。更に、第1の歯溝ロール31における歯のピッチは、第2の歯溝ロール32における第1の歯36のピッチ及び第2の歯37のピッチと同じになっている。
第1工程実施部21において製造された複合シート材40を、第2工程実施部22の一対の歯溝ロール31,32間に通すときには、図8に示すとおり、複合シート材40における弾性部材13が、第2歯溝ロール32の周方向条溝35内を通過するように、該複合シート材を、一対の該歯溝ロール間に供給する。先に述べたとおり、軸方向CDにおける周方向条溝35のピッチPは、複合シート材40における弾性部材13のピッチと同じになっているので、弾性部材13と周方向条溝35との位置合わせをした状態で複合シート材40を両歯溝ロール31,32間に通すことで、各弾性部材13が各周方向条溝35内を通過するようになる。
図9及び図10には、両歯溝ロール31,32間に通された複合シート材40が延伸される状態が示されている。図9は、第1歯溝ロール31の歯38と、第2歯溝ロール32の高歯たけ部33の第1の歯36とが噛み合っている状態である。第1歯溝ロール31の歯38及び第2歯溝ロール32の第1の歯36はいずれも全歯たけが高いものなので、これらの歯が噛み合った状態では、複合シート材40の延伸の程度が大きくなる。この場合、複合シート材40における主たる延伸部位は、第1歯溝ロール31の歯38の先歯面と、第2歯溝ロール32の第1の歯36の先歯面との間の領域である。この領域の延伸の程度を大きくすることで、高低差の大きな凸部14及び凹部15を首尾よく形成することができる。しかも、この領域には弾性部材13が配置されていないので、延伸の程度を大きくしても、弾性部材13の分断が生じるおそれはない。図9に示す状態からは、目的とする複合伸縮シート10における凸部14及び凹部15が形成される。すなわち、複合伸縮シート10において、第1歯溝ロール31の歯38と、第2歯溝ロール32の高歯たけ部33の第1の歯36とが噛み合っている領域を通過する部位が、弾性部材13の延びる方向に沿って延びる高延伸加工領域16となる。
図10は、第1歯溝ロール31の歯38と、第2歯溝ロール32の低歯たけ部34の第2の歯37とが噛み合っている状態である。第2歯溝ロール32の第2の歯37は、その全歯たけが、第1歯溝ロール31の歯38の全歯たけよりも低くなっているので、これらの歯が噛み合いの程度は、図9に示す噛み合いの程度よりも低くなっている。その結果、これらの歯が噛み合った状態では、複合シート材40の延伸の程度が、図9に示す状態よりも小さくなる。低歯たけ部34は、複合シート材40の弾性部材13が通過する部位であるところ、この部位を通過する複合シート材40の延伸の程度を小さくすることで、延伸に起因する弾性部材13の分断を効果的に抑制することができ、良好な伸縮性を維持することができる。尤も、複合シート材40の延伸の程度が小さいことで、低歯たけ部34を通過する複合シート材40に形成される凸部及び凹部の高低差は、図9に示す状態よりも小さくなる。図10に示す状態からは、目的とする複合伸縮シート10における小凸部14’及び小凹部15’が形成される。すなわち、複合伸縮シート10において、第1歯溝ロール31の歯38と、第2歯溝ロール32の低歯たけ部34の第2の歯37とが噛み合っている領域を通過する部位が、弾性部材の延びる方向に沿って延びる低延伸加工領域17となる。
本実施態様の製造方法及び本実施形態の製造装置で製造された複合伸縮シート10は、図2に示すように、低延伸加工領域17に弾性部材13が配されているので、弾性部材の延びる方向に複合伸縮シート10を最大伸張させた状態においても、凸部14及び凹部15の立体形状が保持される。すなわち、本実施態様の製造方法にて第2工程を実施することで、最大伸張させた状態においても、凸部14及び凹部15の立体形状が保持される複合伸縮シート10を製造することができる。また、低延伸加工領域17を形成する第1歯溝ロール31と第2歯溝ロール32の歯の噛み合いの程度が、高延伸加工領域16を形成する第1歯溝ロール31と第2歯溝ロール32の歯の噛み合いの程度よりも低くなっているので、凸部14の頂部が、複合伸縮シート10の厚さ方向に関して、低延伸加工領域17に比べて突出することとなる。すなわち、高延伸加工領域16に形成される凸部14の方が、低延伸加工領域17に形成される小凸部14’よりも高さが高くなる。更に、周方向条溝35を挟んで隣り合う第1の歯36どうしが、軸方向CDに沿って見たとき、直線状に並んで配されているので、製造される複合伸縮シート10は、弾性部材13を挟んで隣り合う凸部14どうしが直線状に配置されることになる。
本実施態様の製造方法及び本実施形態の製造装置によれば、複合シート材40を、加熱した状態の一対の歯溝ロール31,32間に供給し、複合シート材40に延伸加工を施して伸縮性を付与する。それゆえ、両歯溝ロール31,32に噛み込まれて複合シート材40上に接着剤が滲み出しても、その接着剤は、加熱した状態の両歯溝ロール31,32の周面と接触して溶融状態となり、両歯溝ロール31,32の歯に付着し難くなる。そのため、付着した接着剤によって歯のグリップ力が変化し難く、複合シート材40に立体賦形を安定的に施すことができ、立体賦形された複合伸縮シート10を安定的に連続生産できる。また、両歯溝ロール31,32に付着した接着剤を清掃する手間を省くことができる。
また、複合シート材40における弾性部材13が低歯たけ部34を通過することには、該複合シート材40を延伸するときに滲み出すおそれのある接着剤の当該滲み出しを効果的に防止できるという利点もある。接着剤の滲み出しを防止することで、複合シート材40の蛇行や歯溝ロール31,32への巻き付きを防止でき、外観の良好な凸部14及び凹部15を首尾よく形成することができる。また、製造装置20の汚染の防止も図れる。
また、本実施態様の製造方法及び本実施形態の製造装置によれば、複合シート材40を、一対の歯溝ロール31,32間に供給する前に、加熱した状態の第2歯溝ロール32の周面に抱きかけながら搬送する。抱きかけながら搬送されている間に複合シート材40が軟化されると、一対の歯溝ロール31,32間で延伸加工を施す際に発生する歯溝ロールの軸方向及び周方向への力が低減され、延伸加工時の複合シート材40のネックインが起こり難くなる。このように複合シート材40のネックインが起こり難くなると、搬送されている複合シート材40における弾性部材13の位置決めが安定し、弾性部材13が低歯たけ部34を安定的に通過し易くなり、立体賦形された複合伸縮シート10が安定的に連続生産できる。また、複合シート材40を加熱した状態の第2歯溝ロール32の周面に抱きかけながら搬送すると、抱きかけながら搬送されている間に複合シート材40が軟化され、一対の歯溝ロール31,32間に供給する前に、伸長状態の弾性部材13が低歯たけ部34に配され易くなり、弾性部材13の位置決めが安定し、立体賦形された複合伸縮シート10が安定的に連続生産できる。この効果は、基材シートとして機械方向への伸縮性が高い材料を用いる場合に特に有効である。
このようにして、目的とする複合伸縮シート10が製造される。このように製造された複合伸縮シート10は、その優れた外観や、良好な伸縮性及び風合い等を利用して、例えば使い捨ておむつや生理用ナプキン等の各種吸収性物品の構成素材として用いることができる。あるいは、被酸化性金属粉の酸化反応を利用した発熱組成物を有する発熱具における外包材として用いることができる。更に、硬質表面等の清掃対象面の清掃に用いられる乾式又は湿式の清掃用シートの構成素材として用いることができる。また、複合伸縮シート10は、低延伸加工部があることから、弛緩状態においてはきれいな凹凸形状が形成されるので良好な外観が保たれる。一方、最大伸長状態では高延伸加工部の凹凸が維持されて、やはり美しい外観が保たれる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施態様及び前記実施形態に制限されない。例えば上述した製造装置20においては、第2の歯溝ロール32における周方向条溝35に、第1の歯36よりも全歯たけの低い第2の歯37を設けたが、これに代えて周方向条溝35には第2の歯37を設けなくてもよい。この実施形態においては、製造される複合伸縮シート10の低延伸加工領域17は延伸されていない領域となる。
また、上述した製造装置20においては、一対の歯溝ロール31,32のうちの一方の歯溝ロールである第2歯溝ロール32にのみ周方向条溝35が形成されていたが、双方の歯溝ロール31,32に周方向条溝を形成してもよい。この場合、双方の歯溝ロールの周方向条溝に第2の歯を設けなくてもよい。これに代えて、一方の歯溝ロールの周方向条溝に第2の歯を設けるが、他方の歯溝ロールの周方向条溝に第2の歯を設けなくてもよく、あるいは、双方の歯溝ロールの周方向条溝に第2の歯を設けてもよい。双方の歯溝ロール31,32に周方向条溝を形成している場合、歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32の何れも、加熱可能とすることが好ましい。また、双方の歯溝ロール31,32に周方向条溝を形成している場合、テンションロール26は、一対の第1歯溝ロール31及び第2歯溝ロール32どうしの間の中間位置MPよりも何れか一方の歯溝ロール寄りに配されていればよい。
双方の歯溝ロール31,32に周方向条溝を形成する場合には、一方の歯溝ロールにおける周方向条溝と、他方の歯溝ロールにおける周方向条溝との位置が一致するように両歯溝ロールを噛み合わせた状態で、両歯溝ロール間に複合シート材40を供給する。このようにすることで、弾性部材13の分断を一層効果的に防止することができる。
10 複合伸縮シート
11 第1シート基材
12 第2シート基材
13 弾性部材
14 凸部
14’ 小凸部
15 凹部
15’ 小凹部
16 高延伸加工領域
17 低延伸加工領域
20 製造装置
21 第1工程実施部
22 第2工程実施部
23 接着剤の塗布装置
24a,24b ニップロール
25a,25b ニップロール
26 テンションロール
31 第1歯溝ロール
32 第2歯溝ロール
33 高歯たけ部
34 低歯たけ部
35 周方向条溝
36 第1の歯
37 第2の歯
38 第1歯溝ロールの歯
40 複合シート材

Claims (7)

  1. 2枚のシート基材と、該シート基材間に挟持固定され、かつ一方向に延びる複数本の弾性部材とを具備する複合伸縮シートの製造方法であって、
    複数本の前記弾性部材を、一方向に延びるように、かつ伸長状態下に、前記基材シート間に挟持固定して、複合シート材を製造し、次いで、
    軸方向に延びる突条部及び溝部を周方向に沿って交互に有し、かつ互いに噛み合う一対の歯溝ロール間に、前記複合シート材を、前記弾性部材が前記歯溝と直交するように供給して、複合伸縮シートを製造する工程を有し、
    前記歯溝ロールとして、その少なくとも一方の歯溝ロールが、該歯溝ロールの周方向の全域に延びる周方向条溝を、該歯溝ロールの軸方向に沿って複数条有するものを用い、
    前記複合シート材における前記弾性部材が、前記歯溝ロールの前記周方向条溝内を通過するように、該複合シート材を、加熱した状態の前記一方の歯溝ロールに抱きかけながら一対の前記歯溝ロール間に供給する、伸縮複合シートの製造方法。
  2. 両方の前記歯溝ロールが前記周方向条溝を有し、
    一方の前記歯溝ロールにおける前記周方向条溝と、他方の前記歯溝ロールにおける前記周方向条溝との位置が一致するように両歯溝ロールを噛み合わせた状態で、両歯溝ロール間に前記複合シート材を供給する請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記周方向条溝を有する前記歯溝ロールが、該周方向条溝内に、前記突条部よりも高さの低い第2突条部を有し、該第2突条部は、該歯溝ロールの軸方向に延びるように配置されている請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 一対の前記歯溝ロールをそれぞれ加熱し、前記複合シート材を、加熱した状態の一対の該歯溝ロール間に供給する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 2枚のシート基材と、該シート基材間に配され、かつ一方向に延びる複数本の弾性部材とを具備する複合伸縮シートの製造装置であって、
    軸方向に延びる突条部及び溝部を周方向に沿って交互に有し、かつ互いに噛み合う一対の歯溝ロールと、該歯溝ロールの上流側に配されたテンションロールとを具備し、
    前記歯溝ロールは、その少なくとも一方の歯溝ロールが、加熱可能となっており、該歯溝ロールの周方向の全域に延びる周方向条溝を、該歯溝ロールの軸方向に沿って複数条有し、
    前記周方向条溝は、該条溝内に前記突条部よりも高さの低い第2突条部を有し、該第2突条部は、前記歯溝ロールの軸方向に延びるように配置されており、
    前記テンションロールは、前記一対の歯溝ロールどうしの間の中間位置よりも前記一方の歯溝ロール寄りに、該テンションロールの外周の一部が位置するように配されている、複合伸縮シートの製造装置。
  6. 両方の前記歯溝ロールが前記周方向条溝を有し、
    一方の前記歯溝ロールにおける前記周方向条溝と、他方の前記歯溝ロールにおける前記周方向条溝との位置が一致するように、両歯溝ロールを噛み合わせて用いる請求項5に記載の製造装置。
  7. 一対の前記歯溝ロールは、それぞれ加熱可能となっている請求項5又は6に記載の製造装置。
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