以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の吸収性物品は一般に、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる方向に相当する長手方向とこれに直交する幅方向とを有する縦長の形状をしている。吸収性物品は、着用者の股間部に配される股下部並びにその前後に延在する腹側部及び背側部を有する。股下部は、吸収性物品の着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部を有しており、該排泄部対向部は通常、吸収性物品の長手方向の中央部又はその近傍に位置している。
吸収性物品は一般に、着用者の肌対向面側に位置する表面シートと、非肌対向面側に位置する裏面シートと、両シート間に介在配置された吸収体とを備える。肌対向面とは、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、非肌対向面は、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌から遠い側である。
表面シート及び裏面シートとしては、それぞれ、この種の吸収性物品に従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シートとしては、各種の不織布や開孔フィルム等を用いることができる。裏面シートとしては、例えば液難透過性のフィルムやスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド積層不織布などが挙げられる。液難透過性のフィルムに、複数の微細孔を設け、該フィルムに水蒸気透過性を付与してもよい。吸収性物品の肌触り等を一層良好にする目的で、裏面シートの外面に不織布等の風合いの良好なシートを積層してもよい。
吸収体は吸収性コアを備えている。吸収性コアは例えばパルプを始めとするセルロース等の親水性繊維の積繊体、該親水性繊維と吸収性ポリマーとの混合積繊体、吸収性ポリマーの堆積体、2枚の吸収性シート間に吸収性ポリマーが担持された積層構造体などから構成される。吸収性コアは、少なくともその肌対向面が液透過性のコアラップシートで覆われていてもよく、あるいは肌対向面及び非肌対向面を含む表面の全域がコアラップシートで覆われていてもよい。コアラップシートとしては、例えば親水性繊維からなる薄葉紙や、液透過性を有する不織布などを用いることができ、本発明の複合伸縮シートを用いてもよい。
上述の表面シート、裏面シート及び吸収体に加え、吸収性物品の具体的な用途に応じ、肌対向面側の長手方向に沿う両側部に、長手方向に沿って延びる防漏カフが配される場合がある。防漏カフは一般に、基端部と自由端とを備えている。防漏カフは、吸収性物品の肌対向面側に基端部を有し、肌対向面側から起立している。防漏カフは、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成されている。防漏カフの自由端又はその近傍には、糸ゴム等からなる弾性部材を伸長状態で配してもよく、本発明の複合伸縮シートを用いてもよい。吸収性物品の着用状態においてこの弾性部材が収縮することによって、防漏カフが着用者の身体に向けて起立するようになり、表面シート上に排泄された液が、表面シート上を伝い吸収性物品の幅方向外方へ漏れ出すことが効果的に阻止される。
以上の構成を有する吸収性物品としては、例えば展開型の使い捨ておむつ、パンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等が挙げられるが、これらに限られない。
図1及び図2には、本発明の吸収性物品に好適に用いられる複合伸縮シートの第1実施形態が示されている。複合伸縮シートは、上述した使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の構成素材として、例えば表面シート、裏面シート、吸収体を形成するシート、防漏カフを形成するシート、或いはおむつの外面を形成する外装体として用いることができる。図1及び図2には、本実施形態に係る複合伸縮シート10が弛緩した状態、すなわち複合伸縮シート10Aに外力が加わっていない自然状態が示されている。複合伸縮シート10は、弾性部材13の延びる方向と同じ方向の伸縮方向Xと、これと直交する直交方向Yとを有している。また複合伸縮シート10は、第1シート11及び第2シート12の2枚のシートを具備している。2枚のシート11,12は同一の材質のものでもよく、あるいは異なる材質のものでもよい。
更に複合伸縮シート10は、両シート11,12間に挟持固定された弾性部材13を具備している。弾性部材13はシート状(非開孔フィルム、開孔フィルムや繊維集合体)、帯状、糸状の形状を有していてもよく、好ましくは複数本の糸状又は帯状の形状をしている。各弾性部材13は、伸縮方向Xに沿って延びており、且つ直交方向Yに間隔を置いて配されている。直交方向Yにおいて隣り合う弾性部材13間の距離は同じでもよく、又は異なっていてもよい。本実施形態では、直交方向Yにおいて隣り合う弾性部材13間の距離は同じとなっている。また、弾性部材13の太さもそれぞれ異なっていてもよいし、シート11,12に接合される際のそれぞれの伸長率(自然長に対する伸長歪み)が異なっていてもよい。
複合伸縮シート10は、弾性部材13の延びる方向に沿って伸縮可能になっている。即ち、弾性部材13の延びる方向と複合伸縮シート10の伸縮方向とは一致している。一方、直交方向Yに関しては、複合伸縮シート10は実質的に非伸縮である。複合伸縮シート10の伸縮性は、弾性部材13の伸縮性に起因して発現する。特に伸縮方向Xが機械の流れ方向であることが、糸状又は帯状の弾性部材13を組み込む際に容易であるため好ましい。
複合伸縮シート10は、図1(a)及び図1(b)に示すように、一方の面及び他方の面がそれぞれ凹凸形状となっており、その表裏の形状が相補形状になっている。一方の面を形成する第1シート11は、直交方向Yに延びる筋状の第1凸部1aと、同じく直交方向Yに延びる筋状の第1凹部1bとを複数有している。第1凸部1a及び第1凹部1bは、伸縮方向Xに沿って交互に配置されている。伸縮方向Xに沿ってみたとき、第1凸部1aは等ピッチで形成されている。同様に第1凹部1bも等ピッチで形成されている。第1凸部1aのピッチと、第1凹部1bのピッチとは同じになっている。第1凸部1aのピッチとは、伸縮方向Xにおいて隣り合う第1凸部1aの頂部間の距離である。第1凹部1bのピッチとは、伸縮方向Xにおいて隣り合う第1凹部1bの底部間の距離である。
図1(a)及び図1(b)に示すように、他方の面を形成する第2シート12は、第1シート11と同様に、直交方向Yに延びる筋状の第2凸部2aと、同じく直交方向Yに延びる筋状の第2凹部2bとを複数有している。第2凸部2a及び第2凹部2bは、伸縮方向Xに沿って交互に配置されている。伸縮方向Xに沿ってみたとき、第2凸部2aは、等ピッチで形成されており、第1凸部1aのピッチと同じピッチで形成されている。同様に第2凹部2bも等ピッチで形成されており、第1凹部1bのピッチと同じピッチで形成されている。
図1(b)に示すように、複合伸縮シート10は、一方の面を形成する凹凸形状の第1シート11と、他方の面を形成する凹凸形状の第2シート12の凹凸の位相が一致するように、第1シート11の第1凸部1aの位置に、第2シート12の第2凸部2aが位置している。更に、第1シート11の第1凹部1bの位置に、第2シート12の第2凹部2bが位置している。本実施形態では、第1凸部1a及び第2凸部2aが同じ方向に隆起している。このように第1シート11と第2シート12とが重ね合わされて接合部14で接合されている。複合伸縮シート10は、一方の面及び他方の面の凹凸形状が一致した形状となっていることで、どちらの面を用いても同様の良好なクッション性を呈するようになる。
図1(a)及び図2に示すように、接合部14は、各弾性部材13の直交方向Yの両側に配され、且つ、各弾性部材13の伸縮方向Xに沿って一定の間隔を置いて規則的に配されている。このように接合部14は、複合伸縮シート10において、伸縮方向X及び直交方向Yにそれぞれ、一定の間隔を置いて規則的に配されている。接合部14が各弾性部材13の両側に配されていると、複合伸縮シート10の伸縮時に弾性部材13どうしが接触し難く、複合伸縮シート10の伸縮性が向上すると共に、複合伸縮シート10の見栄えが良い。
複合伸縮シート10では、図1(a)及び図2に示すように、弾性部材13の両側に配された接合部14,14の間隔が、弾性部材13の直径よりも広いため、弾性部材13が、接合部14,14によって挟持固定されていない。弾性部材13は、図2に示すように、伸縮方向Xの両端部3aに配された接合領域19のみにおいて、第1シート11及び第2シート12に固定されている。そのため、第1シート11及び第2シート12と弾性部材13との摩擦抵抗が低く、複合伸縮シート10の伸縮性が向上する。接合領域19は、弾性部材13の両端部3aそれぞれに位置しており、直交方向Yに沿って直線状に延びている。弾性部材13の伸縮方向Xの両端部のみが第1シート11及び第2シート12に固定されているとは、接合領域19にて弾性部材13の端部が接合領域19内にある場合のみならず、図2で示される接合領域19を伸縮方向Xのシート外側に越えて弾性部材13の端部が位置する場合も含む意味である。
図1(c)に示すとおり、複合伸縮シート10をその直交方向Yに沿って見たとき、第1シート11においては、弾性部材13ごとに、弾性部材13が配されている部分における第1凸部1aの頂部が、弾性部材13を挟んで直交方向Yに隣り合う第1凸部1a,1aどうしの頂部に比べて、突出してしている。このように第1凸部1aは、弾性部材13が配された位置において頂部の高さが相対的に高い第1大凸部1kと、第1大凸部1kに隣接し且つ頂部の高さが相対的に低い第1小凸部1tとからなる。第1小凸部1tと第1大凸部1kは後述する加工によって形成される。したがって複合伸縮シート10においては、その直交方向Yの略全域にわたって、第1小凸部1tと第1大凸部1kとが交互に配され、第1凸部1aが直交方向Yに沿って直線状に延びている。
そして、図1(c)に示すとおり、第2シート12においては、弾性部材13が配されている部分における第2凸部2aの頂部に比べて、弾性部材13を挟んで直交方向Yに隣り合う第2凸部2a,2aどうしの頂部が、第1シート11側に突出してしている。このように第2凸部2aは、弾性部材13が配された位置において頂部の高さが相対的に低い第2小凸部2tと、第2小凸部2tに隣接し且つ頂部の高さが相対的に高い第2大凸部2kとからなる。したがって複合伸縮シート10においては、その直交方向Yの略全域にわたって、第2小凸部2tと第2大凸部2kとが交互に配され、第2凸部2aが直交方向Yに沿って直線状に延びている。複合伸縮シート10では、直交方向Yに沿ってみたとき、第2大凸部2kの直交方向Yに沿う長さは第1小凸部1tの長さと略同じである。
更に、図1(c)に示すとおり、第1シート11においては、弾性部材13ごとに、弾性部材13が配されている部分における第1凹部1bの底部に比べて、該弾性部材13を挟んで直交方向Yに隣り合う第1凹部1b,1bどうしの底部が凹陥している。このように第1凹部1bは、弾性部材13が配された位置において底部の深さが相対的に浅い第1小凹部1sと、第1小凹部1sに隣接し且つ底部の深さが相対的に深い第1大凹部1dとからなる。第1大凹部1dは第1小凹部1sを除いた部分となる。したがって複合伸縮シート10においては、その直交方向Yの略全域にわたって、第1小凹部1sと第1大凹部1dとが交互に配され、第1凹部1bが直交方向Yに沿って直線状に延びている。複合伸縮シート10では、直交方向Yに沿ってみたとき、第1大凹部1dの直交方向Yに沿う長さは第1小凸部1tの長さと略同じである。
そして、図1(c)に示すとおり、第2シート12においては、第1シート11と同様に、弾性部材13が配されている部分における第2凹部2bの底部に比べて、該弾性部材13を挟んで直交方向Yに隣り合う第2凹部2b,2bどうしの底部が凹陥している。このように第2凹部2bは、弾性部材13が配された位置において底部の深さが相対的に浅い第2小凹部2sと、第2小凹部2sに隣接し且つ底部の深さが相対的に深い第2大凹部2dとからなる。第2大凹部2dは第2小凹部2sを除いた部分となる。したがって複合伸縮シート10においては、その直交方向Yの略全域にわたって、第2小凹部2sと第2大凹部2dとが交互に配され、第2凹部2bが直交方向Yに沿って直線状に延びている。複合伸縮シート10では、直交方向Yに沿ってみたとき、第2大凹部2dの直交方向Yに沿う長さは、第2大凸部2kの直交方向Yに沿う長さと略同じであり、第1大凹部1d及び第1小凸部1tの直交方向Yに沿う長さとも略同じである。
複合伸縮シート10を構成する部材である第1シート11及び第2シート12は、それぞれ、高分子材料からなり、図1(a)及び(b)に示すように、高分子材料の分子配向が相対的に低い低配向領域と、該低配向領域よりも分子配向が相対的に高い高配向領域とを、伸縮方向Xに交互に配置した第1帯状領域16及び第2帯状領域17を有している。「高分子材料の分子配向が相対的に低い」部分は、「高分子材料の分子配向が相対的に高い」部分に比べて、延伸加工の延伸倍率が相対的に低い部分であるか、又は延伸加工が施されていない部分である。「高分子材料の分子配向が相対的に低い」部分であるか、「高分子材料の分子配向が相対的に高い」部分であるかは、後述する複屈折の測定により求められ、複屈折の値が高いほど分子配向が高く、分子が伸縮方向Xにより配向しているものほど分子配向が高いことを意味する。
図1(b)に示すように、第1帯状領域16は、第1低配向領域16tと第1高配向領域16kとを伸縮方向Xに交互に有しており、伸縮方向Xに延びている。第2帯状領域17は、第2低配向領域17tと第2高配向領域17kとを伸縮方向Xに交互に有しており、伸縮方向Xに延びている。第1帯状領域16及び第2帯状領域17は、図1(c)に示すように、直交方向Yに隣接して配されており、直交方向Yに交互に配されている。複合伸縮シート10では、図1(a)及び(c)に示すように、第1シート11の第2帯状領域17と、第2シート12の第2帯状領域17とには、弾性部材13が配されている。その為、第2シート12面側を肌に接触する側としたとき、複合伸縮シート10は、弾性部材13を覆うシート部分である第2小凸部2t部分が肌に触れず、弾性部材13の伸縮時に変形し易くなりソフトな触感を呈するようになる。
第1帯状領域16の高配向領域16kの分子配向が、第2帯状領域17の高配向領域17kの分子配向よりも高くなっている。高配向領域17kの分子配向が高配向領域16kよりも低いため、複合伸縮シート10を伸縮させたときの弾性部材13の破断が防止できる。このような第1帯状領域16及び第2帯状領域17を有することによって、複合伸縮シート10は、良好な肌触りを呈するようになるとともに、適度な硬さを備えた良好なクッション性を呈するようになる。尚、第1帯状領域16の第1低配向領域16tの分子配向と、第2帯状領域17の第2低配向領域17tの分子配向とは、略同じになっている。
複合伸縮シート10では、図1(b)及び図2に示すように、第1帯状領域16の高配向領域16kと、第2帯状領域17の高配向領域17kとは、直交方向Yに隣接しており、かつ交互に配されている。高配向領域16kと高配向領域17kとが隣接していることによって、複合伸縮シート10は、良好なクッション性を呈するようになるとともに、弾性部材13の伸縮時に変形し易くなり良好な伸縮性を呈するようになる。
第1低配向領域16t及び第2低配向領域17tは、図1(c)に示すように、第1シート11における第1凸部1aの頂部及び第1凹部1bの底部に位置し、且つ第2シート12における第2凸部2aの頂部及び第2凹部2bの底部に位置している。複合伸縮シート10では、第1低配向領域16tは、第1シート11においては、第1凸部1aを構成する第1小凸部1tの頂部に位置し、第1凹部1bを構成する第1大凹部1dの底部に位置している。第1低配向領域16tは、第2シート12においては、第2凸部2aを構成する第2大凸部2kの頂部に位置し、第2凹部2bを構成する第2大凹部2dの底部に位置している。
一方、第2低配向領域17tは、図1(c)に示すように、第1シート11においては、第1凸部1aを構成する第1大凸部1kの頂部に位置し、第1凹部1bを構成する第1小凹部1sの底部に位置している。第2低配向領域17tは、第2シート12においては、第2凸部2aを構成する第2小凸部2tの頂部に位置し、第2凹部2bを構成する第2小凹部2sの底部に位置している。したがって、図2に示すように、第1低配向領域16t及び第2低配向領域17tは、第1シート11及び第2シート12それぞれにおいて、直交方向Yに隣接しており、直交方向Yに交互に配されている。第1低配向領域16t及び第2低配向領域17tが直交方向Yに隣接していることによって、複合伸縮シート10では、良好なクッション性を呈するようになる。尚、図1(c)における接合部14は接合部14のない断面と接合部14を有する断面を示すため、図1(c)は接合部14を一部省略して示す。
それに対し、第1高配向領域16k及び第2高配向領域17kは、図1(b)に示すように、第1シート11における第1凸部1aの頂部と第1凹部1bの底部との間に位置し、且つ第2シート12における第2凸部2aの頂部と第2凹部2bの底部との間に位置している。複合伸縮シート10では、第1高配向領域16kは、第1シート11においては、第1凸部1aを構成する第1小凸部1tの頂部と第1凹部1bを構成する第1大凹部1dの底部との間に位置している。そして、第1高配向領域16kは、第2シート12においては、第2凸部2aを構成する第2大凸部2kの頂部と第2凹部2bを構成する第2大凹部2dの底部との間に位置している。
一方、第2高配向領域17kは、第1シート11においては、第1凸部1aを構成する第1大凸部1kの頂部と第1凹部1bを構成する第1小凹部1sの底部との間に位置している。そして、第2高配向領域17kは、第2シート12においては、第2凸部2aを構成する第2小凸部2tの頂部と第2凹部2bを構成する第2小凹部2sの底部との間に位置している。
以上の構成を有する複合伸縮シート10は、図1(b)に示すように、その表裏の形状が一致した形状になっており、その直交方向Yの全域にわたって延びる凸部1a,2a及び凹部1b,2bが、伸縮方向Xに沿って交互に規則的に配置された状態になっている。そして、複合伸縮シート10を、その伸縮方向Xに沿って伸縮させると、その伸縮の程度に応じて第1凸部1a及び第2凸部2aの高さ、並びに第1凹部1b及び第2凹部2bの深さが可逆的に増減する。これによって、複合伸縮シート10は、外観の印象が高まるとともに、良好な風合いを呈するようになる。複合伸縮シート10は、第1低配向領域16tと第1高配向領域16kとを伸縮方向Xに交互に備えた第1帯状領域16を有しているので、伸長性が向上し、肌触りが良く、良好なフィット性を呈するようになる。また、高配向領域16kの分子配向よりも低い高配向領域17kと、第2低配向領域17tとを伸縮方向Xに交互に備えた第2帯状領域17を有しているので、複合伸縮シート10は、適度な硬さを備えた良好なクッション性を呈するようになる。図1(b)に示されるように第1シート11と第2シート12はお互いに添う形状となるが、部分的に第1シート11と第2シート12の間に空間を有していてもよい。
複合伸縮シート10は、図1(c)に示す第1凸部1aの第1小凸部1t及び第2凸部2aの第2大凸部2kそれぞれの頂部の伸縮方向X側の両角部に、該角部に沿って屈曲した構成繊維を有しており、凸の形状が潰れ難くなっている。
次に、本発明の吸収性物品において用いられる複合伸縮シートの第2実施形態について、図3を参照しながら説明する。第2実施形態に係る複合伸縮シート10Bについては、第1実施形態に係る複合伸縮シート10と異なる構成部分について説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない点については、複合伸縮シート10と同様であり、複合伸縮シート10の説明が適宜適用される。
上述した第2実施形態に係る複合伸縮シート10Bにおいては、一方の面及び他方の面がそれぞれ凹凸形状となっており、一方の面を形成する第1シート11の第1凸部1aの位置に、他方の面を形成する第2シート12の第2凸部2aが位置している。更に、第1シート11の第1凹部1bの位置に、第2シート12の第2凹部2bが位置している。第1凸部1a及び第2凸部2aは、弾性部材13を介して、該弾性部材13から離れる方向に突出している。凹凸形状の第1シート11と凹凸形状の第2シート12とで囲まれた空間15が、直交方向Yに沿って直線状に延びるようになり、伸縮方向Xに一定の間隔を置いて規則的に配された状態となる。これによって、複合伸縮シート10Bは、良好な通気性を呈するようになるとともに、圧縮変形し易くなり良好なクッション性を呈するようになる。
複合伸縮シート10Bにおいては、図3に示すように、第1低配向領域16t及び第2低配向領域17tは、第1シート11における第1凸部1aの頂部及び第1凹部1bの底部に位置し、且つ第2シート12における第2凸部2aの頂部及び第2凹部2bの底部に位置している。
複合伸縮シート10Bにおいては、図3に示すように、第1高配向領域16k及び第2高配向領域17kは、第1シート11における第1凸部1aの頂部と第1凹部1bの底部との間に位置し、且つ第2シート12における第2凸部2aの頂部と第2凹部2bの底部との間に位置している。複合伸縮シート10Bによれば、上述した複合伸縮シート10と同様な効果を奏することができる。
以上の各実施形態のうち、第1実施形態に係る複合伸縮シート10は、弛緩状態(フリーテンション)において、凹凸全体の高さh1(図1(b)参照)が、1mm以上であることが好ましく、更に好ましくは3mm以上である。また、15mm以下であることが好ましく、更に好ましくは10mm以下である。例えば使用時を想定した後述する伸び止まり伸度の1/2の伸長状態における凹凸の高さh1は、1mm以上15mm以下であることが好ましく、3mm以上10mm以下であることが更に好ましい。
第2実施形態に係る複合伸縮シート10Bは、弛緩状態において、第1凸部1aの高さh2(図3参照)は1mm以上であることが好ましく、更に好ましくは2mm以上である。また、15mm以下であることが好ましく、更に好ましくは8mm以下である。例えば伸び止まり伸度の1/2の伸長状態における第1凸部1aの高さh2は、1mm以上15mm以下であることが好ましく、2mm以上8mm以下であることが更に好ましい。弛緩状態において、第2凸部2aの高さh3(図3参照)は1mm以上であることが好ましく、更に好ましくは2mm以上である。また、15mm以下であることが好ましく、更に好ましくは8mm以下である。例えば伸び止まり伸度の1/2の伸長状態における第2凸部2aの高さh3は、1mm以上15mm以下であることが好ましく、2mm以上8mm以下であることが更に好ましい。これらは次の方法によって形成することが可能となる。(1)後述するロール間の噛み合わせ量を調整する方法(噛み合わせ量が多くなると凸部の高さの高いものとなるが、噛み合わせ量が高すぎるとシートの弾性が低下して逆に凸部の高さが減少する。)、(2)後述するロール間へシートを送り込む速度と凸ロールの周速との速度差を調整する方法(シートを送り込む速度が速いほど、延伸倍率が低下し、シートの弾性が高くなる。また、シートの延伸後の戻り量が小さくなるため、接合部14間のシート長さが長くなる。その結果、凸部の高さの高いものとなる。)、(3)弾性部材13の挿入張力を調整する方法(挿入張力が高いほど、収縮量が増し、高さが高くなる。)によって達成することができる。このようにすることで、適度な力で潰れ易く、反発力もあるものとなり、クッション性に優れるとともに前記空間15を形成しやすくなる。これらによって延伸倍率や伸び止まり伸度も調整される。
高さh1~高さh3は、次のようにして測定することができる。複合伸縮シートを平板の上に弛緩状態にて置き、その上から荷重0.5cN/cm2となるように平板を載せる。弾性部材13のない部分の断面をマイクロスコープで側面より観察(図1(b)と同方向)し、高さh1~高さh3をそれぞれ測定する。異なるサンプル5点を用いて測定し、その平均値とする。おむつや生理ナプキン等の吸収性物品より複合伸縮シートを採取する場合は、接着部分をコールドスプレーなどを用いて剥がす。この採取手段は本願明細書中の他の測定においても同様に行う。
複合伸縮シート10の弛緩状態においては、第1帯状領域16の長さW1(図1(c)参照)は2mm以上であることが好ましく、更に好ましくは3mm以上である。また、20mm以下であることが好ましく、更に好ましくは10mm以下である。例えば弛緩状態における第1帯状領域16の長さW1は、2mm以上20mm以下であることが好ましく、3mm以上10mm以下であることが更に好ましい。複合伸縮シート10の弛緩状態においては、第2帯状領域17の長さW2(図1(c)参照)は0.1mm以上であることが好ましく、更に好ましくは2mm以上である。また、15mm以下であることが好ましく、更に好ましくは8mm以下である。例えば弛緩状態における第2帯状領域17の長さW2は、0.1mm以上15mm以下であることが好ましく、2mm以上8mm以下であることが更に好ましい。
長さW1,W2は、次のようにして測定することができる。複合伸縮シート10を伸び止まり伸度まで伸長させ、伸縮方向Xに弛み無く延びている領域を第2帯状領域17とし、伸縮方向Xに弛みの有る状態で延びている領域を第1帯状領域16として区別し、マークする。複合伸縮シート10を弛緩状態に戻し、平板上に置いて上部から観察し、第2帯状領域17の直交方向Yの幅をW2として、第1帯状領域16の直交方向Yの幅をW1としてそれぞれの幅をマイクロスコープを用いて測定する。異なるサンプルにて5点の測定を行い平均値を求める。
複合伸縮シートにおける伸縮方向Xに隣り合う接合部14,14間に多数の凹凸を設けて良好なクッション性を呈するようにする観点から、複合伸縮シート10の第1シート11及び第2シート12の少なくとも一方は、弛緩状態の複合伸縮シートを図1(b)に示すように断面視して、伸縮方向Xにおいて、第1帯状領域16における低配向領域16tの繰り返しピッチを2倍した値P1に対する隣り合う接合部14,14どうしのピッチP2の比であるP2/P1の値が、0.3以上であることが好ましく、更に好ましくは2以上であり、40以下であることが好ましく、更に好ましくは10以下である。例えば該P2/P1の値は、0.3以上40以下であることが好ましく、2以上10以下であることが更に好ましい。後述する伸び止まり伸度状態において、値P1は0.5mm以上20mm以下が好ましく、ピッチP2は1.5mm以上50mm以下が好ましい。P2/P1の値を整数倍とすると、見た目にもきれいな凹凸が形成される。(P2/P1)が2以上の場合、接合部14の間に多くの第1低配向領域16tと第1高配向領域16kを含む。第1低配向領域16tと第1高配向領域16kの境界に延伸力または熱により屈曲点を形成する場合には接合部14の間に多くの屈曲点を有する。このため、圧縮時に圧縮変形量が大きく小さな圧縮抵抗を有するものとなり、ソフトなクッション性を有するものとなる。また、第2の実施形態においては、図1の(b)のように第1シートが第2シートに添った形状とならず、第1シートと第2シートとの間に空間15を形成しうる。値P1及びピッチP2は、次のようにして測定する。
<低配向領域16tの繰り返しピッチを2倍した値P1の測定方法>
複合伸縮シートに張力が加わらない状態、即ち自然状態において、伸縮方向Xに並ぶ10個の凸部を抽出し該11個の凸部のうちの伸縮方向X両端に位置する凸部頂部に、油性のマジックインキ等を用いて印を付ける。複合伸縮シートを構成する第1シート及び第2シートのうちの一方のシートから、印の付けた両端の凸部を含む長さで且つ50mm幅の矩形状のサンプルを切り出す。後述する伸び止まり伸度になるように測定対象サンプルを伸長させる。そして、印の付けた両端の凸部間の長さを測定する。測定した値を10で除して得られる値を、低配向領域16tの繰り返しピッチとする。測定は異なる部位で3回測定し、その平均値を2倍した値を値P1とする。
<伸縮方向Xに隣り合う接合部14どうしのピッチP2の測定方法>
自然状態の複合伸縮シートから、弾性部材13と伸縮方向Xに並ぶ11個分の接合部14を含んだ測定対象サンプルを矩形状に切り出す。自然状態において、11個の接合部14のうちの伸縮方向X両端に位置する接合部14に、油性のマジックインキ等を用いて印を付ける。次いで、長後述する伸び止まり伸度になるように張力を加えて測定対象サンプルを伸長させる。そして10個分の接合部14間の伸縮方向Xの長さを測定する。測定した値を10で除して得られる値を、伸縮方向Xに隣り合う接合部14どうしの間隔とする。測定は異なる部位で3回測定し、その平均値をピッチP2とする。
複合伸縮シートを伸縮させたときの弾性部材13の破断を防止する観点から、複合伸縮シート10の第1シート11及び第2シート12の少なくとも一方は、第2帯状領域17の高配向領域17kの複屈折R1に対する第1帯状領域16の高配向領域16kの複屈折R2の比(R2/R1)方が、1.05以上であることが好ましく、更に好ましくは1.15以上であり、1.6以下であることが好ましく、更に好ましくは1.5以下である。例えば該比(R2/R1)は、1.05以上1.6以下であることが好ましく、1.15以上1.5以下であることが更に好ましい。第1帯状領域16における高配向領域16kの複屈折R2と低配向領域16tの複屈折との比(高配向領域16kの複屈折R2/低配向領域16tの複屈折)が1.8以上5以下であると延伸により繊維やフィルムが切断せずに柔らかなものになるため好ましい。同様に第2帯状領域17における高配向領域17kの複屈折R1と低配向領域17tの複屈折との比(高配向領域17kの複屈折R1/低配向領域17tの複屈折)が1以上4以下であると延伸により弾性部材13が切断せずに繊維やフィルムが柔らかなものになるため好ましい。複屈折は、次のようにして測定する。
<複屈折R1,R2の測定方法>
(1)サンプルの準備
長さW1,W2の測定と同様にして第1帯状領域16及び第2帯状領域17を区別する。第1帯状領域16において、凸部の頂部又は凹部の底部の複数カ所に、油性のマジックインキ等を用いて印を付ける。第1帯状領域16において、印を付けた部分を含む領域を、低配向領域16tのサンプルとして、自然状態で伸縮方向Xに約0.7mm×直交方向Yに約5mmの矩形状のサンプルを切り出す。同様に第2帯状領域17において、印を付けた部分を含む領域を、低配向領域17tのサンプルとして、伸縮方向Xに約0.7mm×直交方向Yに約5mmの矩形状のサンプルを切り出す。低配向領域が該サンプルのサイズよりも小さい場合には、前記サイズに切り出し、印を付した部分を目安にして測定部位を決定する。同様に、第1帯状領域16及び第2帯状領域17それぞれにおいて、印を付けた部分を除く、凸部の頂部と凹部の底部との中間を含む領域を、高配向領域16k,17kのサンプルとして、自然状態でそれぞれ伸縮方向Xに約0.7mm×直交方向Yに約5mmの矩形状のサンプルを切り出す。
(2)複屈折の測定
伸縮方向に対して平行な方向の屈折率から、垂直方向の屈折率を差し引いた値を複屈折とする。
屈折率の測定には、株式会社溝尻光学工業所製、透過型二光束干渉顕微鏡「TD-2510」を用いる。高配向領域16k,17kのサンプルを、ホウケイ酸ガラスからなる厚み約0.8~1.0mmのスライドガラス(例えば松浪硝子製、「S1112マイクロガラス」屈折率1.524)上に配置し、屈折液で浸漬した後、カバーガラスを配置して測定用サンプルを作製する。カバーガラスには、約0.12~0.17mmの透明プレパラート(例えば松浪硝子製、「No,1マイクロカバーガラス」屈折率1.5255±0.0015)を用いることができる。リファレンスも測定用サンプルと同様にして作製する。前記干渉顕微鏡に偏光板を装着し、測定用サンプルを、伸縮方向Xに対して平行方向及び垂直方向の偏光下で測定する。測定は、測定用サンプルにおける高配向領域16k,17kの部分について行う。対物レンズは、繊維径やサンプルサイズによって選定し、例えば繊維径が20μmである場合には50倍のレンズを使用する。第1シート及び第2シートのシートが繊維シートである場合には、伸縮方向Xに対して±5°以内に並んだ繊維を選定し、且つ繊維どうしが重なっていない部分で測定する。尚、測定はカット面から0.2mm以上内側の部分にて行う。また、第1シート及び第2シートのシートが樹脂フィルムである場合には、干渉光がフィルムを厚み方向に透過するようにして測定する。透過しない場合には、干渉光が透過できる程度の厚みにサンプルをカットし、例えば自然状態で伸縮方向Xに約0.1mm×直交方向Yに約5mmの矩形状のサンプルとする。この場合は、測定はカット断面から面内方向に干渉光が透過するように行う。屈折液としてはCargille社製の標準屈折液を使用する。屈折液の屈折率はアッベ屈折計によって測定する。標準屈折液の屈折率は、干渉光のシフト量が測定波長である546nm以内になるものを選定する。前記干渉顕微鏡により得られるシートの干渉縞像から、以下の文献に記載の算出方法で、高配向領域16k,17kの部分における、伸縮方向Xに対し平行及び垂直方向の屈折率を求め、両者の差である複屈折を算出する。測定は異なる部位で10回測定し、その平均値を、高配向領域17kの複屈折R1及び高配向領域16kの複屈折R2とする。
「芯鞘型複合繊維の高速紡糸における繊維構造形成」第408頁(繊維学会誌、Vol.51、No.9、1995年)
第1シート11及び第2シート12の凹凸形状の賦形性が良好であり、見栄えが良くなる観点から、第1シート11及び第2シート12は、それらのシートとなる前の元のシート11a,12aが繊維シートであることが好ましく、シート11a,12aにおける伸縮方向Xの最大伸度が、50%以上であることが好ましく、更に好ましくは140%以上であり、700%以下であることが好ましく、更に好ましくは500%以下である。例えば該最大伸度は、50%以上700%以下であることが好ましく、140%以上500%以下であることが更に好ましい。該最大伸度は、次のようにして測定することができる。
<最大伸度の測定方法>
本加工前の第1シート11または第2シート12を用い、伸縮方向Xへ200mm、直交方向Yへ50mmの大きさで矩形の試験片を切り出す。引張り試験機(株式会社島津製作所製オートグラフAG-1kNIS)に試験片を装着する。チャック間距離は150mmとする。試験片を試験片の伸縮方向Xへ300mm/分の速度で伸長させ、そのときの荷重を測定する。最大強度点における伸度を最大伸度とする。サンプル数はn5として、その平均値から最大伸度を求める。
使用時の伸度範囲が広くなり、体型の違いによる適用範囲が増す点や激しい動きに追従しやすくする観点から、第1および第2実施形態に係る複合伸縮シート10および10Bにおいて、伸縮方向Xの伸び止まり伸度が、100%以上であることが好ましく、更に好ましくは300%以上であり、600%以下であることが好ましく、更に好ましくは500%以下である。例えば該伸び止まり伸度は、100%以上600%以下であることが好ましく、300%以上500%以下であることが更に好ましい。高い伸び止まり伸度を得るには、第1帯状領域16が、第1シート11及び第2シート12それぞれにおいて、直交方向Yに全幅に渡って連続することが好ましい。該伸び止まり伸度は、次のようにして測定することができる。
<伸び止まり伸度の測定方法>
複合伸縮シート10A、10Bを用い、伸縮方向Xへ150mm、それと直交する直交方向Yへ50mmの大きさで矩形の試験片を切り出す。引張り試験機(株式会社島津製作所製オートグラフAG-1kNIS)に弛緩状態の試験片を装着する。チャック間距離は100mmとする。試験片を試験片の伸縮方向Xへ300mm/分の速度で伸長させ、そのときの荷重を測定する。荷重が500cN/50mmとなったときの試験片のチャック間距離をBとし、元の試験片のチャック間距離をAとしたとき、{(B-A)/A}×100を伸び止まり伸度(%)とする。荷重が500cN/50mmになる前にサンプルが破断する場合は、最大強度点における伸度に0.8倍した値を伸び止まり伸度とする。サンプル数はn5として、その平均値から伸び止まり伸度を求める。
第1シート11及び第2シート12の凹凸形状の賦形性が良好であり、見栄えが良くなる観点から、図2に示すように平面視して、複合伸縮シート10において、接合部14の伸縮方向Xの長さL3が、接合部14の直交方向Yの長さL4よりも短いことが好ましい。長さL3に対する長さL4の比(L4/L3)は、2以上であることが好ましく、更に好ましくは3以上であり、20以下であることが好ましく、更に好ましくは8以下である。例えば該比(L4/L3)は、2以上20以下であることが好ましく、3以上8以下であることが更に好ましい。長さL3の値は0.2mm以上2mm以下、長さL4の値は0.5以上5mm以下であることが好ましい。接合部14の伸縮方向Xの長さL3は、接合部14における伸縮方向Xの最大長さであり、接合部14の直交方向Yの長さL4は、接合部14における直交方向Yの最大長さである。このようにすることで接合部14によって収縮するのを阻害する量が減るため伸縮時の永久歪みが小さなり、かつ、第1シート11及び第2シート12間の剥離強度の高いものが得られる点で好ましい。接合部14の直交方向Yの長さL4は第1帯状領域16の幅W1よりも大きくてもよいが、小さいことが好ましい。(W1-L4)の値は好ましくは0mm以上、より好ましくは1mm以上、また、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下である。これにより、第1シート11と第2シート12間の接合強度を高める点と蛇行による弾性部材13の切断を防止できる点で好ましい。該長さは、マイクロスコープにて測定することができる。
また、接合部14は弾性部材13が糸状である場合、直交方向Yにおいて弾性部材13間に直交方向Yへ間欠的に1個以上5個以下の接合部14を設けることが好ましい。それぞれの接合部14の外周長さを足した値を大きくすることで、第1シート11と第2シート1間の接合強度を高めることができる。
吸収性物品に使用したときの通気性を向上させる観点から、複合伸縮シート10においては、接合部14と重なる位置に、或いは伸縮方向Xに隣り合う接合部14,14どうしの間に、複合伸縮シートを貫通する開孔が形成されていることが好ましい。
複合伸縮シート10,10Bを伸縮方向Xに伸長し易くする観点から、伸長状態の弾性部材13において、弾性部材13の径が伸縮方向Xに沿って周期的に変化していることが好ましい。このように周期的に径が変化している弾性部材13は、凸ロールによる熱の影響によって弾性部材13が収縮しにくくなる部分ができることによってその部分が相対的に細くなったり、後述する狭圧部分によって相対的に細くなったりすることにより形成される。
複合伸縮シート10,10Bを構成する第1及び第2シート11,12には、高分子材料からなるものを広く使用することができる。高分子材料からなるものとして、例えば不織布を始めとする各種の繊維シートを用いることができる。更に、繊維シートとフィルムとのラミネートを用いることができる。前記の不織布としては、例えばスパンボンド不織布、サーマルボンド不織布(ポイント・ボンド不織布、ヒートエンボス不織布、エアスルー不織布等)、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、エアレイド不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、湿式不織布などの公知の不織布を特に制限なく用いることができる。特にポリエチレンやポリプロピレンを主体としたスパンボンド不織布が接合強度とクッション性の両立がしやすい点で好ましい。各シート11,12は、その坪量がそれぞれ独立に10g/m2以上であることが好ましく、更に好ましくは12g/m2以上、一層好ましくは15g/m2以上である。また、100g/m2以下であることが好ましく、更に好ましくは50g/m2以下、一層好ましくは30g/m2以下である。例えば各シート11,12は、その坪量がそれぞれ独立に10g/m2以上100g/m2以下であることが好ましく、12g/m2以上50g/m2以下であることが更に好ましく、15g/m2以上30g/m2以下であることが一層好ましい。
各シート11,12が不織布である場合、該不織布を構成する繊維は、各種の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンやポリプロピレンやポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレンやポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、アクリル等のアクリロニトリル系樹脂、メタクリル樹脂、ビニリデン系樹脂、天然繊維のコットン、パルプ、ポリ乳酸などの生分解性プラスチック等から構成することができる。あるいは、これらの樹脂の2種以上のブレンド物から繊維を構成したり、これらの樹脂を2種以上組み合わせた複合繊維(芯鞘型繊維やサイド・バイ・サイド型繊維、偏芯したクリンプを有する芯鞘繊維、分割繊維)を用いたりすることもできる。また、繊維に繊維着色剤、静電気防止特性剤、潤滑剤、滑剤、親水剤など少量の添加物を付与した繊維を用いることもできる。
高分子材料からなるものとしては、上述した繊維シート以外に、合成樹脂製の樹脂フィルムを用いることもできる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等の高分子材料からなるフィルムや、透湿性フィルム等が挙げられる。好ましくは炭酸カルシウムを配合したポリエチレン透湿フィルムやポリエーテルポリウレタン透湿フィルムが透湿バックシートとして好ましい。
第1及び第2シート11,12の少なくとも片方には最大伸度が50%以上、好ましくは100%以上、より好ましくは140%以上のシートを用いると加工時に破断されにくく、強度の高いものが得られる点で好ましい。これには未延伸のフィルムを用いたり、不織布の場合には樹脂成分としてポリエチレンを主体とした部分に高密度ポリエチレン(HDPE)や線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を主体としてオレフィン系エラストマー(プロピレン、ブテン、オクテン等を1種以上共重合したエチレン系のα-オレフィンエラストマー)を10~30質量%ブレンドさせることが好ましい。ポリプロピレンを主体とした部分にはアイソタクチックホモポリプロピレンを主体としてエチレン、ブテン、オクテン等を1種以上共重合したプロピレン系エラストマーや低立体規則性のポリプロピレンを10~30質量%ブレンドさせることが好ましい。これらはそれぞれ単独で用いても良いし複合繊維として用いることもできる。
両シート11,12間に挟持固定される弾性部材13は、伸縮方向に50%伸長させたときに、伸度が25%以上戻るものであり、例えば弾性樹脂から構成することができる。弾性樹脂としては、この種の伸縮シートに用いられてきたものと同様のものを用いることができる。例えばスチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ネオプレンゴム等の合成ゴム、天然ゴム、EVAゴム、SIS(スチレン-イソプレン-スチレン)ゴム、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)ゴム、SEPS(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン)ゴム、伸縮性ポリオレフィン(前記エチレン系エラストマー、前記プロピレン系エラストマーなど)、ポリウレタン等が挙げられる。形状としては、フィルム状、ネット状等のシート形状のものや、断面が短形、正方形、円形、多角形状等の糸状なしい紐状(平ゴム)のもの、又はマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を用いることができる。
糸状の弾性部材13の繊度は、10dtex以上とすることが好ましく、更に好ましくは150dtex以上、一層好ましくは300dtex以上である。また、1600dtex以下とすることが好ましく、更に好ましくは1300dtex以下、一層好ましくは1000dtex以下である。例えば弾性部材13の繊度は、10dtex以上1600dtex以下であることが好ましく、150dtex以上1300dtex以下であることが更に好ましく、300dtex以上1000dtex以下であることが一層好ましい。
シート状の弾性部材13としては、例えば特開2008-179128号公報に記載の伸縮シート、特開2004-244791号公報に記載の伸縮性不織布、公表平5-508359号公報に記載の弾性ラミネート、特表2003-524534号に記載の弾性ラミネート等を用いることができる。
本発明の吸収性物品において用いられる複合伸縮シートは、上述の実施形態に係る複合伸縮シート10に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
例えば、上述した第1実施形態の複合伸縮シート10では、図2に示すように、伸縮方向Xに延びる第1帯状領域16内において、第1低配向領域16tの位置又は第1高配向領域16kの位置に対して、接合部14はランダムに配されているが、第1低配向領域16tにのみ接合部14が配されていてもよく、第1高配向領域16kにのみ接合部14が配されていてもよい。
次に、上述した複合伸縮シート10の好適な製造方法を、図4ないし図9を参照しながら説明する。本製造方法は、(1)第1シート11及び第2シート12を、それらのシート11,12の間に弾性部材13を配した状態で接合して複合シート前駆体10Zを製造する第1工程と、(2)複合シート前駆体10Zを凹凸賦形して複合伸縮シート10を製造する第2工程とに大別される。図4及び図5には、これらの工程を行うための製造装置20が示されている。
図4及び図5に示すように、製造装置20は、第1凸ロール21と、第1凸ロール21の凸部21aの頂部に当接する接合ロール25とを備え、それらのロール21,25よりも下流側に、互いに噛み合う第2凸ロール22及び賦形ロール26を備えている。これらのロールは、回転軸に駆動手段(不図示)からの駆動力が伝達されることによって、矢印で示す方向に回転するようになっている。それぞれのロールとして、ギア等を介してそれぞれのロール軸に位相を調整しながら駆動力を伝達できるものを用いることが好ましい。これにより、シート部材や弾性部材13に必要以上に圧力がかからないため、圧縮されずにシートが硬くなったりしないため好ましい。また、前記圧縮により弾性部材13がより切断されやすくなるため、後述する空隙部K1を設けることが有効である。
図4及び図6に示すように、第1凸ロール21は、凹凸ロールであり、その周面に軸方向ADに沿って間欠的に配置された凸部21aと、凹部21bとを有している。第1凸ロール21は、凸部21aが周方向に沿って間欠的に配置された凸部列を周面に有し、該凸部列が軸方向に離間して設けられ、軸方向に隣り合う該凸部列どうしに挟まれた位置に、後述する条溝21dからなる凹部列を更に周面に有している。以下、第1凸ロール21について詳述する。凸部21aは、軸方向ADに沿って、歯たけが相対的に高い高歯たけ部21eと、歯たけが相対的に低い低歯たけ部21cとを交互に有している。高歯たけ部21e及び低歯たけ部21cは、第1凸ロール21の周方向に沿って規則的に配置されている。周方向において隣り合う高歯たけ部21eの間は溝部となっており凹部21bを形成している。同様に、周方向において隣り合う低歯たけ部21cの間も溝部となっており凹部21bを形成している。図6に示すように、高歯たけ部21eは、軸方向ADに沿った長さが、低歯たけ部21cの軸方向ADに沿った長さよりも長くなっている。高歯たけ部21eの該長さは、第1工程において製造される複合シート前駆体10Zの接合部14の長さと略同じになっている。
第1凸ロール21は、図4及び図6に示すように、高歯たけ部21eの歯たけが、低歯たけ部21cの歯たけよりも高いことに起因して、低歯たけ部21cの位置に、ロールの周方向の全域に延びる条溝21dを有するものとなる。第1凸ロール21は、軸方向ADに沿って条溝21dを一定の間隔を置いて配している。条溝21dの軸方向ADに沿った長さは、低歯たけ部21cの軸方向ADに沿った長さと同じになっている。軸方向ADにおいて隣り合う条溝21dのピッチは、第1工程において製造される複合シート前駆体10Zにおける隣り合う弾性部材13のピッチと同じになっている。条溝21dのピッチは異なっていてもよい。条溝21dのピッチは0.5mm~30mmが好ましく、更には3mm~10mmが好ましい。全ての条溝21dに弾性部材13が位置せずに、弾性部材13がない条溝21dがあってもよい。弾性部材13の伸長後の戻り強度は各条溝21dで全て同じでなくてもよく、直交方向Yに部分的に戻り強度の高いものを用いることができる。弾性部材13の戻り強度を高いものとするには、繊度の高い弾性部材や高目付の弾性部材を用いたり、製造装置20に供給する際の挿入倍率を高したり、分子量の高いポリウレタンやハードセグメント成分がソフトセグメント成分よりも多いポリウレタンを用いることで可能である。このようにすることでフィット性に優れ、着用時のズレ落ちやレックギャザーにおける身体とレックギャザー間で生じる隙間を防ぐことができる。
弾性部材13を製造装置20に供給する際には軸方向ADにあらかじめ位置決めしておくことが条溝21dに弾性部材13を通す上で好ましい。弾性部材13を位置決めするにはV字状の溝を各条有したロールを用い、1本以上の溝付ロールを用いてS字状に弾性部材13を巻き掛け、段階的に溝の角度を狭く(溝の先端角を小さくする)していく。これにより弾性部材13の位置が軸方向ADに振れないため好ましい。
接合ロール25は、図4及び図6に示すように、フラットロールであり、第1凸ロール21の軸方向ADの全長にわたって延びている。
製造装置20を用い、図4及び図5に示すように、第1シート11の帯状シート11aと、第2シート12の帯状シート12aとを、それらの原反ロール(図示せず)から繰り出す。それと共に、帯状シート11aと帯状シート12aとの間に、一方向に引き揃えられた複数本の弾性部材13を配して積層シート10Jを形成する。供給する第1シート11および第2シート12の速度または張力を制御することによって第1シート11および第2シート12の延伸量を制御することができる。そして積層シート10Jを、第1凸ロール21と接合ロール25との間の当接部分に供給する。第1凸ロール21と接合ロール25は加圧される。供給する際には、積層シート10Jを第1凸ロール21側から供給し、第1凸ロール21の周面に沿わせながら供給することが、予熱効果により接合強度を向上させる観点から好ましい。各弾性部材13は、第1凸ロール21の周方向に延びる条溝21dに対応する位置に供給され、第1凸ロール21の回転方向に沿って伸長される。条溝21dに供給された弾性部材13は、第1凸ロール21の凸部21aを構成する高歯たけ部21eの頂部と接合ロール25とが当接したとしても、切断されることはない。熱融着にって接合する場合は第1凸ロール21または接合ロール25の少なくとも一方は加熱しておく。より高い接合部14の接合強度を得る点ためには、両方のロールを加熱しておくことが好ましい。加熱する温度は構成樹脂の最も融点の低い樹脂に対して、その融点よりも10℃低い温度以上であることが好ましい。これにより、接合部14の接合強度を維持しながら前記ロールに第1シート11、及び第2シート12が貼り付くのを防止できる。
各弾性部材13は、第1凸ロール21の周方向に延びる条溝21dに対応する位置に供給され、第1凸ロール21の回転方向に沿って伸長される。条溝21dに供給された弾性部材13は、第1凸ロール21の凸部21aを構成する高歯たけ部21eの頂部と接合ロール25とが当接したとしても、切断されることはない。
そして、図6(b)に示すように、接合ロール32の表面と、第1凸ロール21の条溝21dの両側に位置する高歯たけ部21e,21eとによって、弾性部材13におけるロール軸方向ADの両側に接合部14を形成して、帯状シート11a及び帯状シート12aを接合し、複合シート前駆体10Zを製造する第1工程を行う。接合部14は、複合シート前駆体10Zにおいて、各弾性部材13の両側に配され、第1凸ロール21の回転方向に沿って一定の間隔を置いて規則的に形成される。
第2工程では、図4及び図7に示すように、第2凸ロール22と賦形ロール26とを用いる。第2凸ロール22は、第1凸ロール21と略同じ構成の凹凸ロールであり、その周面に軸方向ADに延びる凸部22a及び凹部22bを有している。凸部22aは、軸方向ADに沿って、高歯たけ部22eと低歯たけ部22cとを交互に有している。周方向において隣り合う高歯たけ部22eの間は溝部となっており凹部22bを形成している。同様に、周方向において隣り合う低歯たけ部21cの間も溝部となっており凹部21bを形成している。高歯たけ部22eの軸方向ADに沿った長さは、第1凸ロール21の高歯たけ部21eの軸方向ADに沿った長さと一致していることが好ましい。第2凸ロール22の高歯たけ部22eと、第1凸ロール21の高歯たけ部21eとは、軸方向ADに対応した位置に配されている。第1シート11及び第2シート12のネックイン量により該位置は調整されうる。高歯たけ部22eの該長さは、第2工程において製造される複合伸縮シート10の第1帯状領域16の長さW1と略同じになっている。低歯たけ部21cの該長さは、複合伸縮シート10の第2帯状領域17の長さW2と略同じになっている。
第2凸ロール22は、図4及び図7に示すように、低歯たけ部22cの位置に対応して、ロールの周方向の全域に延びる条溝22dを有している。軸方向ADにおいて隣り合う条溝22dのピッチは、第2工程において製造される複合伸縮シート10における隣り合う弾性部材13のピッチと同じになっている。条溝22dの位置は、第1凸ロール21の条溝21dの位置と一致している。条溝22dと、条溝21dとは、軸方向ADに対応した位置に配されている。第1シート11及び第2シート12における弾性部材13の配された部分での凹凸形状の賦形性を良好とする観点から、条溝22dの溝深さ(第2凸ロール22の高歯たけ部22eの頂部高さ-第2凸ロール22の低歯たけ部22cの頂部高さ)は、第2凸ロール22と賦形ロール26との噛み合い深さよりも小さくなっていることが好ましい。前記噛み合い深さは第2凸ロール22の高歯たけ部22eと賦形ロール26の凸部26aとを付き合わせた状態から、噛合い状態にした時の第2凸ロール22と賦形ロール26の軸中心間距離の変位量として規定される。
賦形ロール26は、図4及び図7に示すように、凹凸ロールであるが、第1凸ロール21と同様の形状とすることもできるが、第1凸ロール21と異なり、ロールの周方向の全域に延びる条溝を有していないことが好ましい。賦形ロール26は、第2凸ロール22の軸方向ADの全長にわたって延びている。賦形ロール26は、その周面に軸方向ADに直線状に延びる凸部26a及び凹部26bを有している。凹部26bは第2凸ロール22の凸部22aに噛み合い、凸部26aは第2凸ロール22の凹部22bに噛み合うようになっている。凸部26aの歯たけは、第2凸ロール22の低歯たけ部22cの歯たけよりも大きく、且つ高歯たけ部22eの全歯たけ以下になっている。製造装置20では、凸部26aの歯たけは、高歯たけ部22eの歯たけと同じになっている。低歯たけ部22c部におけるシートの延伸倍率は、1倍でもよいが、好ましくは1.3倍以上、より好ましくは1.8倍以上であることが、高い伸び止まり伸度と適度なクッション性を有する点で好ましい。十分な最大強度を得るため、前記延伸倍率は6倍以下であることが好ましい。高歯たけ部22eにおける延伸倍率は、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上であることが、適度なクッション性を有する点で好ましい。同様に十分な最大強度を得るため、前記延伸倍率は6倍以下であることが好ましい。延伸倍率は特開2016-151076の段落〔0080〕に記載の方法により求めることができる。
次いで、図4及び図5に示すように、接合部14の形成された複合シート前駆体10Zを、搬送方向下流側に配された第2凸ロール22と賦形ロール26との噛み合い部に導入して凹凸賦形された複合伸縮シート10を製造する第2工程を行う。第2工程においては、賦形ロール26の凹部26bに第2凸ロール22の凸部21aを噛み合わせ、賦形ロール26の凸部26aを第2凸ロール22の凹部22bに噛み合わせたときに、図7に示すように、第2凸ロール22の条溝22dに供給された弾性部材13が、賦形ロール26の凸部26aと第2凸ロール22の条溝22dとによってロール回転方向に沿って形成される空隙部K1に通されるようになる。前記第2凸ロール22及び賦形ロール26においても高速延伸加工時のシートの裂けを防止する観点とシートを予熱して延伸時における接合部14と界面での繊維の切断を防ぎ、接合強度を高める観点から、加熱しておくことが好ましい。加熱する温度は構成樹脂の最も融点の低い樹脂に対して、その結晶化温度よりも低い温度であることが、接合部14が硬くならないため好ましい。
第2工程では、第2凸ロール22と賦形ロール26との噛み合い部に導入するときには、複合シート前駆体10Zを第2凸ロール22側から供給し、第2凸ロール22の周面に沿わせながら供給することが、賦形性の観点から好ましい。第2工程では、複合シート前駆体10Zにおける伸長状態の弾性部材13を空隙部K1に通すとともに、複合シート前駆体10Zを第2凸ロール22のロール回転方向に沿って延伸する。
第2工程では、図7に示すように、条溝22d内には、第2凸ロール22の低歯たけ部22cの歯が位置しているが、低歯たけ部22cの歯たけは、高歯たけ部22e及び凸部26aの歯たけよりも低いものである。低歯たけ部22cを設けることにより賦形ロール26の凸部26aと第2凸ロール22の高歯たけ部22eが位相ズレや駆動力の伝達により複合伸縮シート10Aを介して接したとき、凸部26aと低歯たけ部22cとの間に隙間ができ、弾性部材13が圧接されないため弾性部材13の破断を防止することができる。特にシートの低歯たけ部22c部における延伸倍率が1.3倍以上で、かつ、加工速度(第2凸ロール22及び賦形ロール26に供給される前駆体の速度)が50m/分以上の高速加工においても、前記空隙部K1を設けることで弾性部材13が切断されにくくなる。弾性部材13は、弾性部材13aが巻かれたロールの巻き状態から装置20へ供給される際にドロー伸長される延伸と、低歯たけ部22cによる歯溝延伸の2段階の延伸を経ているため、伸長方向に延びやすくなる。
第2工程では、図8に示すように、空隙部K1のロール軸方向ADに隣接する部分において、第2凸ロール22の高歯たけ部22eと賦形ロール26の凹部26bとが噛み合わされ、第2凸ロール22の凹部22bと賦形ロール26の凸部26aとが噛み合わされるようになる。高歯たけ部22e及び凸部26aの歯が噛み合った状態では、複合シート前駆体10Zの延伸の程度が大きく、複合シート前駆体10Zにおける主たる延伸部位が、高歯たけ部22eの先端面と、凸部26aの先端面との間の領域となる。製造される複合伸縮シート10の第1シート11及び第2シート12においては、頂部と底部との間に、高分子材料の分子配向が相対的に高い第1高配向領域16kが形成される。また、高歯たけ部22eの先端面及び凸部26aの先端面は延伸されず、複合伸縮シート10の第1シート11及び第2シート12においては、頂部及び底部にそれぞれ、前記分子配向が相対的に低い第1低配向領域16tが形成される。そして、第2凸ロール22及び賦形ロール26が回転することによって、第1シート11及び第2シート12には、ロール軸方向ADに隣り合う空隙部K1,K1どうしの間の位置に、第1高配向領域16kと第1低配向領域16tとがロール回転方向に沿って交互に形成され、第1高配向領域16k及び第1低配向領域16tを有する第1帯状領域16が形成される。
第2工程では、図9に示すように、空隙部K1において、低歯たけ部22cと凸部26aとが噛み合わされるようになるが、これらの歯が噛み合ったとしても、複合シート前駆体10Zの延伸の程度は小さい。製造される複合伸縮シート10の第1シート11及び第2シート12には、弾性部材13が配された部分においても、頂部と底部との間に、高分子材料の分子配向が相対的に高い第2高配向領域17kが形成される。また、低歯たけ部22cの先端面及び凸部26aの先端面は延伸されにくく、複合伸縮シート10の第1シート11及び第2シート12においては、弾性部材13が配された部分においても、頂部及び底部にそれぞれ、前記分子配向が相対的に低い第2低配向領域17tが形成される。そして、第2凸ロール22及び賦形ロール26が回転することによって、第1シート11及び第2シート12には、空隙部K1に対応する位置に、第2高配向領域17kと第2低配向領域17tとがロール回転方向に沿って交互に形成され、第2高配向領域17k及び第2低配向領域17tを有する第2帯状領域17が形成される。空隙部K1に対応する位置の第2帯状領域17と、空隙部K1のロール軸方向ADに隣接する部分に対応する位置の第1帯状領域16とは隣接して形成される。伸び止まり伸度は、前記低歯たけ部22cと賦形ロール26の凸部26aによる噛合い深さとシートの挿入張力とによる延伸倍率によって調整される。
第2凸ロール22の凸部22aは、軸方向ADに沿って、高歯たけ部22eと低歯たけ部22cとを交互に有しているので、条溝22d内に配された低歯たけ部22cの位置で形成される第2高配向領域17kよりも、高歯たけ部22eの位置で形成される第1高配向領域16kの方が、第1シート11及び第2シート12それぞれを構成する高分子材料の分子配向が相対的に高いものとなる。このようにして、目的とする複合伸縮シート10が製造される。複合伸縮シート10は、製造時の機械方向であるMD方向に伸縮性を有するものである。
また、第2凸ロール22の凸部22aは、軸方向ADに沿って、高歯たけ部22eと低歯たけ部22cとを交互に有しているので、低歯たけ部22cで形成される第2高配向領域17kと、高歯たけ部22eで形成される第1高配向領域16kとが、ロール軸方向ADに連続して延びるように形成できる。
複合伸縮シート10において、弾性部材13の両端部3aを固定する接合領域19を形成するには、第2凸ロール22及び賦形ロール26よりも下流側に、例えば周面にロール軸方向に延びる凸部を備える一対の凸部ロールを配置し、該凸部ロールの凸部どうしの当接部分に導入することによって形成できる。第2凸ロール22及び賦形ロール26とは別に、接合領域19を形成する一対の凸部ロールを設けることによって、第2凸ロール22及び賦形ロール26のロール温度と、前記一対の凸部ロールのロール温度を別々に調整でき、第1シート11と第2シート12との接合強度と、複合伸縮シート10の伸縮強度とを別々に調整することが可能となる。
弾性部材13の両端部3aのみを接合領域19で固定する代わりに、弾性部材13を、MD方向に沿って間隔を置いて配された接合部14,14間に挟むことにより第1シート11及び第2シート12に固定するようにしてもよく、弾性部材13の両端部3aを接合領域19で固定すると共に、弾性部材13を接合部14,14間に挟むことにより第1シート11及び第2シート12に固定するようにしてもよい。弾性部材13を接合部14,14間に挟むことにより固定する場合、第2凸ロール22の条溝22dの両側に位置する高歯たけ部22e,22eどうしの間隔を短くする。そして、図10に示すように、弾性部材13の両側の接合部14,14を該弾性部材13に隣接させて形成し、且つ、該伸縮方向に沿って複数形成するようにすればよい。これにより、弾性部材13が接合部14,14によって挟圧されることで、弾性部材13が複合伸縮シート10から抜けないようにすることができる。挟圧とは、以下の理由により、弾性部材13がシート11,12に固定されることをいう。まず、弾性部材13が伸長後にその長さが戻る際に半径方向に断面積が膨張し、この膨張する力とそれに反発して接合部14間のシートによる弾性部材13をとり囲む力がつり合い、弾性部材13とシートの間に高い摩擦力が生じる。さらに、挟圧と同時に融着することが、弾性部材13が第1シート11または第2シート12からより抜けにくくなるため好ましい。
第1凸ロール21と接合ロール25との接合において、これらロール間の突合せによる接合に追加して、該第1凸ロール21上の下流に複合伸縮シート10を巻き掛けた状態で補助凹凸ロールを設けることが好ましい。補助凹凸ロールとしては、弾性部材13の位置する部分に条溝を有する第2凸ロール22のような形状のものや、回転方向に沿って延びる凸部を弾性部材13の位置する部分以外の位置に軸方向ADに一定の間隔を置いて有しているもの等が挙げられる。第1凸ロール21と補助凹凸ロールの凸部同士が付き合わされることで、第1シート11と第2シート12を追加接合する。下流にて接合される位置は上流の接合位置に一致していても異なっていてもよいが、少なくとも一部が重なるようにすることが好ましい。これにより、上流の接合部の温度が下がらないうちに強力接合できる。また、補助凹凸ロールは複合伸縮シート10Aが補助凹凸ロールに巻き掛けられていないため、第1凸ロール21の温度よりも高くすることができる。さらに別の方法として低歯たけ部21cの位置に一致して(弾性部材13の位置に一致して)、回転方向に沿って延びる凸部を軸方向ADに一定の間隔を置いて有している補助凹凸ロールを加熱しながら、弾性部材13を切断しない程度に複合伸縮シート10Aを介して押し込むことでも可能である。第1凸ロール21にはすべての弾性部材13の位置に低歯たけ部21cを設けておく。このとき前記条溝部の軸方向断面をロール外側に向かって台形状に開く形状とし、これに噛合うように補助凹凸ロールの凸部の軸方向断面を台形状に先端部が細くなるようにすることが好ましい。これにより補助凹凸ロールの凸部側面において、第1シート11と第2シート12が接合される。
また、ロールの軸方向ADに隣り合う前記凸部側面同士の接合部間を狭くすることで、弾性部材13が接合部14,14間で挟圧され弾性部材13を第1シート11と第2シート12の間に固定することができる。さらには低歯たけ部21cの頂部と補助凹凸ロールの凸部頂部で形成される空間断面積を前記台形形状を調整(補助凹凸ロール凸部の台形頂辺の長さを短くすると空間断面積が小さくなる。また、台形の頂辺部の角度を小さくすると空間断面積が小さくなる)することが好ましい。これにより、補助凹凸ロールの凸部が第1凸ロール21の条溝部に押し込まれたときに、弾性部材13は切断されにくく且つ圧縮変形する程度に押込まれる。そして、補助凹凸ロールの凸部頂部において第1シート11または第2シート12と弾性部材13とが融着され、弾性部材13がより抜けにくくなる。
弾性部材13を接合部14,14の位置で固定するときには、図10に示すように、自然状態における弾性部材13の周長よりも、接合部14,14どうしで挟まれた部分における第1シート11及び第2シート12で該弾性部材13の周りを囲む長さが短くなるように、高歯たけ部22e,22eどうしの間隔を短く調整し、接合部14,14どうしの間隔を狭くする。このように接合部14の間隔を狭くすれば、接合部14,14どうしの挟圧により、弾性部材13と第1シート11及び第2シート12との摩擦力が高められ、弾性部材13が固定され易くなる観点から好ましい。尚、接合部14,14どうしの間に挟まれていない部分における、自然状態の弾性部材13の直径を、弾性部材13における接合部14,14どうしの間に挟まれている部分の接合部どうしの間隔よりも大きくしてもよい。これらのように挟持固定したときには、接着剤等で弾性部材13を固定する必要がないため安価に複合伸縮シート10を製造することができ、複合伸縮シート10が柔らかく、良好なクッション性を呈するようになる。弾性部材13の両側に隣接する接合部14,14は、弾性部材13の伸縮方向に沿って間隔を空けて間欠的に設けていてもよく、MD方向に連続して延びる弾性部材13の一部分にのみ設けていてもよい。また、挟圧と同時に、弾性部材13と第1シート11及び/または第2シート12とが、接合時の加熱により、その界面で融着していることが、弾性部材13がシートからより抜けにくくなるため好ましい。
製造装置20を用いる複合伸縮シート10の製造方法では、第1シート11と第2シート12との接合部14は、第1シート11と第2シート12とを圧着又は融着して形成されているが、その代わりに、接着剤により形成されていてもよい。また、圧着又は融着による接合部14に加えて、接着剤による別の接合部を形成してもよい。
接着剤を用いる場合、例えば製造装置20を用いる製造方法においては、帯状シート11aと帯状シート12aとの間に弾性部材13を配した状態のものを、第1凸ロール21と接合ロール25との間の当接部分に供給する前に、接着剤塗布部を用いて、接着剤を、弾性部材13に、或いは帯状シート11a又は帯状シート12aに、MD方向に間隔を置いてコームガン等を用いて間欠的に塗工することが好ましい。これによって第1凸ロール21、接合ロール25、第2凸ロール22、賦形ロール26の接着剤による汚れ付着を防止できる。弾性部材13に接着剤を塗工すると弾性部材13の抜けを防止することができるとともに最小限の接着材量で済むため軟らかい複合伸縮シートが得られる。
前記接着剤塗布部を用いて、接着剤を、弾性部材13に、或いは帯状シート11a又は帯状シート12aに塗工するときには、接着剤による固定部分が複合伸縮シート10において硬くなりにくい観点から、接着剤を、軸方向ADへ間欠的(ストライプ状)に第1凸ロール21の条溝21dの位置に、言い換えれば、第1凸ロール21の凸部21aの低歯たけ部21cの位置に対応させて、さらにMD方向へ間欠的に塗工することが好ましい。
弾性部材13を両シート11,12に固定するために接着剤を用いる場合、接着剤としては、スチレン系(SIS、SBS、SEBS)、又はポリオレフィン系のホットメルト接着剤等が挙げられる。特に感圧型のSIS系ホットメルト接着剤が弾性部材の抜けや染み出しの観点から好ましい。
尚、複合伸縮シート10の接合部14と重なる位置に、或いは伸縮方向Xに隣り合う接合部14,14どうしの間に、複合伸縮シート10を貫通する開孔を形成するときには、第1凸ロール21における接合ロール25との当接部分よりも回転方向下流側に、第1凸ロール21の周面に当接する別の補助ロールを設け、該補助ロールの周面に突起を配置すればよい。該突起は、第1凸ロール21の凸部21aの位置に対応させ、又は回転方向に隣り合う凸部21aどうしの間の位置に対応させて配置することが好ましい。
上述の製造方法は、連続してMD方向に延びる弾性部材13を備える複合伸縮シート10を製造しているが、複合伸縮シート10のMD方向の一部分において弾性部材13が細かく分断されていてもよい。使い捨てパンツおむつの外層に複合伸縮シートを用いる際はおむつの備える吸収体上の弾性部材13を分断することが好ましい。弾性部材13を細かく切断する場合、例えば、製造装置20を用いる製造方法においては、第1凸ロール21の周方向に条溝21dの無い部分を設けるようにすればよい。
第2実施形態に係る複合伸縮シート10Bは、上述した複合伸縮シート10の製造方法で用いる図4に示す製造装置20を用いて、複合伸縮シート10の製造方法と同様にして製造することができる。複合伸縮シート10Bを製造するときには、第2凸ロール22の高歯たけ部22eと賦形ロール26の凸部26aとのピッチよりも、搬送方向に隣り合う接合部14どうしのピッチが大きく形成された複合シート前駆体10Zを用いることによって製造することができる。接合部14どうしのピッチの大きい複合シート前駆体10Zを歯溝延伸することによって、接合部14どうしの間において、第1シート11の第1凸部1aと、第2シート12の第2凸部2aとが、弾性部材13を介して、該弾性部材13から離れる方向に突出するようになる。第1シート11と第2シート12は前記賦形加工により屈曲部を形成されることが好ましく、それぞれのシートの屈曲率が異なるためシート間で空間15を有するようになる。
前記第1帯状領域16における低配向領域16tの繰り返しピッチを2倍した値P1に対する隣り合う接合部14どうしのピッチP2の比(P2/P1)の値を変えるには、第1凸ロール21の21aのMD方向のピッチP2’(頂部におけるピッチ)と第2凸ロール22の凸部22aまたは賦形ロール26の凸部26aのピッチP1’を変えることで可能である。ピッチP1’は凸部のピッチであり、噛合い時の凸部と凸部の噛合い中心直径(P.C.D)におけるロール上のピッチ長さを意味する。
以上のように製造された第1及び第2実施形態に係る複合伸縮シート10,10Bは、特に吸収性物品における防漏カフとなるサイドシートを構成するシート、吸収性物品の外面を形成する外装体を構成するシートとして好適に用いられる。サイドシートを構成するシートとして用いられる場合、製造された複合伸縮シート10,10Bは、その後、例えば従来の、いわゆる縦流れ方式の生理用ナプキンの製造装置に搬送される。そして、液透過性の表面シートの連続体、液難透過性の裏面シートの連続体、及び両シートの連続体間に、搬送方向に複数個の液保持性の吸収体とを備えた吸収性本体の連続体に、その搬送方向の両側部それぞれに沿って、製造された複合伸縮シート10,10Bをサイドシートの連続体としてを配し、その連続体を切断して、生理用ナプキンを製造することができる。
また、例えばパンツ型使い捨ておむつの外装体を構成するシートとして用いられる場合、製造された複合伸縮シート10,10Bは、その後、従来の、いわゆる横流れ方式のパンツ型使い捨ておむつの製造装置に搬送される。製造された複合伸縮シート10,10Bを2枚用意し、2枚の複合伸縮シート10を、搬送方向と直交する方向に間隔を空けて、一対の外装体の連続体として供給する。そして、別工程で製造された液保持性の吸収体を含む吸収性本体を搬送方向に間欠的に供給して、各吸収性本体を一対の複合伸縮シート10,10Bに架け渡すように配置して接着剤等で固定する。その後、吸収性本体を搬送方向と直交する方向に二つ折りし、一対の複合伸縮シート10,10Bを重ね合わせておむつ連続体を得る。その後、おむつ連続体を、搬送方向に隣り合う吸収性本体どうしの間で、搬送方向と直交する方向に接合すると同時に切断して、パンツ型使い捨ておむつを製造することができる。
本発明の吸収性物品において用いられる複合伸縮シートの製造方法は、上述の実施形態に係る複合伸縮シート10,10Bの製造方法に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
例えば、複合伸縮シート10,10Bを製造する製造装置20は、接合部材として、第1凸ロール21の凸部21aの頂部に当接する接合ロール25を備えているが、接合ロール25の代わりに、特開2018-099793号公報の図3に記載の超音波ホーン45を備えていてもよい。
製造装置20は、互いに噛み合う第2凸ロール22及び賦形ロール26を備えているが、第2凸ロール22及び賦形ロール26の代わりに、特開2008-289659号公報の図6に記載の第1のロール5及び第2のロール6を用いてもよく、国際公開第2010/119535号パンフレットの図6に記載の第1エンボスロール11及び第2エンボスロール12を用いてもよい。特開2008-289659号公報の第1のロール5及び第2のロール6において、第1のロール5はその周面に円柱状の凸部51を有し、第2のロール6はその周面に凸部51の位置に対応する凹部61を有しており、第1のロール5及び第2のロール6は、凸部51が凹部61の内面囲に接触せずに遊挿されるようになっている。また、凸部51を凹部61に遊挿させたときに、軸方向に隣り合う凸部51どうしの間に、弾性部材13を通す空隙部が形成されるようになる。また、国際公開第2010/119535号パンフレットの第1エンボスロール11及び第2エンボスロール12において、第1エンボスロール11は、平滑な表面14より外方に突出する凸部15と該表面14より窪む凹部16とを有し、第2エンボスロール12は平滑な表面17より外方に突出する凸部18と該表面17より窪む凹部19とを有しており、第1エンボスロール11及び第2エンボスロール12は、第1エンボスロール11の凹部16に第2エンボスロール12の凸部18が噛み合い、第2エンボスロール12の凹部19に第1エンボスロール11の凸部15が噛み合うようになっている。また、噛み合わせたときに、軸方向に隣り合う凸部15と凸部18との間に、弾性部材13を通す空隙部が形成されるようになる。
上述した複合伸縮シート10において、第1低配向領域16tにのみ接合部14を配するようにする場合には、第2凸ロール22及び賦形ロール26の噛み合い部分に複合シート前駆体10Zを供給するときに、接合部14が第2凸ロール22の凸部22aを構成する高歯たけ部22eの頂部及び賦形ロール26の凹部26bの底部に位置するように位置合わせし、複合シート前駆体10Zにおけるロール回転方向に隣り合う接合部14どうしの間を延伸させるようにすればよい。また、第1高配向領域16kにのみ接合部14を配するようにする場合には、第2凸ロール22及び賦形ロール26の噛み合い部分に複合シート前駆体10Zを供給するときに、搬送方向に隣り合う接合部14どうしの中間位置が、第2凸ロール22の凸部22aを構成する高歯たけ部22eの頂部及び賦形ロール26の凹部26bの底部に位置するように位置合わせし、複合シート前駆体10Zをロール回転方向に延伸させるようにすればよい。
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
<1>
それぞれ高分子材料からなる第1シートと第2シートとの間に、一方向に延びる弾性部材が挟持された複合伸縮シートを有する吸収性物品であって、
前記複合伸縮シートは、前記高分子材料の分子配向が相対的に低い低配向領域と、該低配向領域よりも分子配向が相対的に高い高配向領域とが前記複合伸縮シートの伸縮方向に沿って交互に配置された第1帯状領域及び第2帯状領域を有し、
前記第1帯状領域及び前記第2帯状領域は、前記複合伸縮シートの伸縮方向と直交する直交方向に隣接しており、
前記第1帯状領域の高配向領域の分子配向が、前記第2帯状領域の高配向領域の分子配向よりも高く、
前記第1シートと前記第2シートとは、前記弾性部材の前記直交方向の両側に、前記伸縮方向に沿って間隔を置いて複数形成された接合部で接合されており、
前記弾性部材は、前記第1シートと前記第2シートとの間に配されており、該弾性部材の伸縮方向の両端部において固定されているか、又は前記接合部間に挟まれることにより固定されているかの少なくとも一方で固定されている、吸収性物品。
<2>
前記第1帯状領域の高配向領域と、前記第2帯状領域の高配向領域とは、前記直交方向に隣接している、前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記複合伸縮シートは、一方の面及び他方の面がそれぞれ凹凸形状となっており、該一方の面を形成する前記第1シートにおける凸部の位置に、該他方の面を形成する前記第2シートにおける凸部が位置し、且つ該第1シートにおける凹部の位置に、該第2シートにおける凹部が位置しており、
前記第1シートにおける凸部及び前記第2シートにおける凸部は、前記弾性部材を介して、該弾性部材から離れる方向に突出している、前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記伸縮方向において、前記第1帯状領域における前記低配向領域の繰り返しピッチを2倍した値をP1とし、前記接合部のピッチをP2としたとき、P1に対するP2の比であるP2/P1値が0.3以上であり、40以下である前記<1>~<3>のいずれかの1つに記載の吸収性物品。
<5>
P2/P1値が、2以上であり、10以下である、前記<1>~<4>のいずれかの1つに記載の吸収性物品。
<6>
前記第1シート及び前記第2シートの少なくとも一方は、該シートにおける前記第2帯状領域の高配向領域の複屈折R1に対する前記第1帯状領域の高配向領域の複屈折R2の比であるR2/R1の値が、1.05以上であり、1.6以下である、前記<1>~<5>のいずれかの1つに記載の吸収性物品。
<7>
R2/R1の値が、1.15以上であり、1.5以下である、前記<6>に記載の吸収性物品。
<8>
前記第1シート及び前記第2シートの前記第2帯状領域に前記弾性部材が配されている、前記<1>~<7>のいずれかの1つに記載の吸収性物品。
<9>
前記複合伸縮シートは、前記接合部と重なる位置に、或いは伸縮方向に隣り合う前記接合部どうしの間に、該複合伸縮シートを貫通する開孔が形成されている、前記<1>~<8>のいずれかの1つに記載の吸収性物品。
<10>
前記弾性部材における前記接合部どうしの間に挟まれていない部分の自然状態の該弾性部材の直径が、該弾性部材における該接合部どうしの間に挟まれている部分の該接合部どうしの間隔よりも大きい、前記<1>~<9>のいずれかの1つに記載の吸収性物品。
<11>
前記第1シート及び前記第2シートは、それらのシートとなる前の元のシートが繊維シートである、前記<1>~<12>のいずれかの1つに記載の吸収性物品。
<12>
前記接合部は、その前記伸縮方向の長さが、その前記直交する方向の長さよりも短い、前記<1>~<11>のいずれかの1つに記載の吸収性物品。
<13>
前記複合伸縮シートは、凸部の頂部の角部に、該角部に沿って屈曲した構成繊維を有している、前記<1>~<12>のいずれかの1つに記載の吸収性物品。
<14>
前記接合部の伸縮方向の長さL3に対する該接合部の直交方向の長さL4の比(L4/L3)は、2以上であり、20以下である、前記<1>~<13>のいずれかの1つに記載の吸収性物品。
<15>
前記接合部の伸縮方向の長さL3に対する該接合部の直交方向の長さL4の比(L4/L3)は、3以上であり、8以下である、前記<1>~<14>のいずれかの1つに記載の吸収性物品。
<16>
前記弾性部材は、伸長状態において、該弾性部の径が伸縮方向に沿って周期的に変化している、前記<1>~<15>のいずれかの1つに記載の記載の吸収性物品。
<17>
前記弾性部材は、伸縮方向に50%伸長させたときに、伸度が25%以上戻るものである、前記<1>~<16>のいずれかの1つに記載の記載の吸収性物品。
<18>
前記弾性部材は、糸状である、前記<1>~<17>のいずれかの1つに記載の吸収性物品。
<19>
前記複合伸縮シートを、前記吸収性物品を構成する表面シート、裏面シート、吸収体を形成するシート、防漏カフを形成するシート及び吸収性物品の外面を形成する外装体のいずれか1又は複数として用いた、前記<1>~<18>のいずれかの1つに記載の吸収性物品。
<20>
複合伸縮シートを製造する方法であって、
それぞれ高分子材料からなる第1シートと第2シートとの間に、弾性部材をその伸長状態下に一方向に延びるように配して積層シートを形成し、
前記積層シートを第1凸ロールと接合部材との間に供給して複合シート前駆体を形成する第1工程を有し、
前記第1凸ロールは、周方向に沿って間欠的に配置された複数の凸部を有する凸部列を周面に有し、複数の前記凸部列が軸方向に離間して設けられ、軸方向に隣り合う該凸部列どうしに挟まれた凹部列を更に周面に有し、
前記接合部材は前記凸部に当接可能な当接面を有し、
前記第1工程では、前記積層シートにおける前記弾性部材を前記凹部列を通過するように供給することで、前記第1シートと前記第2シートとを該弾性部材の両側の位置において接合し、前記複合シート前駆体を形成し、
前記複合シート前駆体を第2凸ロールと賦形ロールとの間に供給して複合伸縮シートを製造する第2工程を有し、
前記第2凸ロールは、周面に軸方向に沿って延びる凹凸形状を有しており、
前記賦形ロールは、前記第2凸ロールの凹凸形状と噛み合う凹凸形状を有し、
前記第2凸ロール及び前記賦形ロールの一方又は両方は、その凹凸形状の凸部が軸方向に沿って間欠に配されており、それにより前記第2凸ロール及び前記賦形ロールは、両者の噛み合い状態において、ロール回転方向に沿って延在する空隙部が形成されるように構成されており、
前記第2工程では、前記第2凸ロールと前記賦形ロールとが噛み合っている状態下に、前記複合シート前駆体における前記弾性部材が前記空隙部を通過するように、両ロール間に該複合シート前駆体を供給することで、該複合シート前駆体を延伸させて凹凸賦形して、複合伸縮シートを製造する、複合伸縮シートの製造方法。
<21>
前記弾性部材は、糸状である、前記<20>に記載の複合伸縮シートの製造方法。
<22>
前記凹部列の幅、及び前記空隙部幅は、前記弾性部材の太さよりも広い、前記<20>又は<21>に記載の複合伸縮シートの製造方法。
<23>
前記空隙部が前記第2凸ロールの回転方向の全周に亘って延びる条溝である、前記<20>~<22>のいずれかの1つに記載の複合伸縮シートの製造方法。
<24>
前記第2凸ロールは、回転方向の全周に亘って延びる条溝を有し、
前記第2凸ロールとして、前記条溝の溝深さが、前記第2凸ロールと前記賦形ロールとの噛み合い深さよりも小さいものを用いる、前記<20>~<23>のいずれかの1つに記載の複合伸縮シートの製造方法。
<25>
第2工程で用いる第2凸ロール及び賦形ロールのうち、該第2凸ロールのみが前記弾性部材を通す条溝を有している、前記<20>~<24>のいずれかの1つに記載の複合伸縮シートの製造方法。
<26>
前記弾性部材の両側の接合部を該弾性部材に隣接させて形成し、該弾性部材が接合部間によって挟圧されており、且つ、該弾性部材の延びる方向に沿って複数形成する、前記<20>~<25>のいずれかの1つに記載の複合伸縮シートの製造方法。
<27>
前記弾性部材を、該弾性部材が巻かれたロールの巻き状態から、複合伸縮シートの製造方法に用いられる製造装置へ供給される際にドロー伸長される延伸の後、該第2凸ロール及び前記賦形ロールの噛み合いにより歯溝延伸させる、前記<20>~<26>のいずれかの1つに記載の複合伸縮シートの製造方法。
<28>
前記第1凸ロールと前記接合ロールとの間の当接部分に供給する前に、接着剤塗布部を用いて、接着剤を、前記弾性部材に、或いは前記第1シート又は第2シートに、搬送方向に間隔を置いて塗工する、前記<20>~<27>のいずれかの1つに記載の複合伸縮シートの製造方法。
<29>
自然状態における前記弾性部材の周長よりも、前記第1シートと前記第2シートとを接合する接合部どうしで挟まれた部分における該第1シート及び該第2シートで該弾性部材の周りを囲む長さが短くなるように、前記第1ロールにおける軸方向に隣り合う前記凸部列の凸部どうしの間隔を短く調整して、該弾性部材を該接合部間によって挟持固定する、前記<20>~<28>のいずれかの1つに記載の複合伸縮シートの製造方法。
<30>
前記第1凸ロールにおける前記接合ロールとの当接部分よりも回転方向下流側に、該第1凸ロールの周面に当接する別の補助ロールを設け、該補助ロールの周面に配置された突起を該第1凸ロールの周面に当接させて、前記積層シートを貫通する開孔を形成する、前記<20>~<29>のいずれかの1つに記載の複合伸縮シートの製造方法。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
〔実施例1〕
図4に示す製造装置20を用いて図1に示す複合伸縮シートを製造した。第1シート及び第2シートとしては表1に示すアイソタクチックホモポリプロピレン(融点165℃)を84質量%とし低立体規則性のポリプロピレン(融点78℃)を15質量%、脂肪酸アミドを1質量%含むスパンボンド不織布を用い、弾性部材としては表1に示すポリウレタンからなる糸ゴムを用いた。糸ゴムの本装置への供給挿入倍率は2.6倍(糸ゴム原反に巻かれた状態を1倍として2.6倍に伸長)とした。製造条件としては、第1シートにおける高歯たけ部21eでの延伸倍率を2.2倍、低歯たけ部21cでの延伸倍率を2.0倍に調整し、第2シートにおける高歯たけ部22eでの延伸倍率を2.2倍、低歯たけ部22cでの延伸板率を2.0倍に調整した。第1凸ロール21の凸部21aのMD方向のピッチは10mmであり、軸方向ADのピッチは5mmであった。第2凸ロール22の凸部22a及び凹部22bのMD方向のピッチは2mmであり、軸方向ADのピッチは5mmであった。同様に賦形ロール26の凸部26a及び凹部26bのMD方向のピッチは2mmであった。第2凸ロール22の凸部高歯たけ部22eおよび賦形ロール26の凸部26aの先端の曲率半径Rは0.3mmであった。第1凸ロール21の表面温度を165℃に加熱し、接合ロール25の表面温度を155℃に加熱して加圧しヒートシール接合した。第2凸ロール22および賦形ロール26は80℃の表面温度に加熱した。また、第1凸ロール21及び接合ロール25を当接させる前にコームガン式の接着剤塗布部を配置し、接着剤を弾性部材に、第1凸ロール21上の長さにてMD方向に100mm長の未塗布部を設け、間隔を置いてMD方向に30mm長の接合領域19に相当する塗布部を設け、塗布部の接着剤坪量は6g/m2となるように塗工した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、伸び止まり伸度が248%であり、直交方向Yの弾性部材のピッチが弛緩状態において5mmであり、直交方向Yの接合部のピッチが弛緩状態において5mmであり、伸縮方向Xの低配向領域16tのピッチを2倍した値P1が伸び止まり伸度状態において2.8mmであり、伸縮方向Xの接合部のピッチP2が伸び止まり伸度状態において13.9mmであり、直交方向Yの接合部のピッチが5mmであった。尚、接合部を直交方向Yに隣り合う弾性部材の間に配置した。
〔実施例2〕
接着剤を弾性部材に塗工せず、各弾性部材の両側に配される接合部どうしの間隔を狭くして弾性部材を挟圧固定した。そして、延伸板率の製造条件を表1に示す値に変更する以外は実施例1と同様にして複合伸縮シートを製造した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチ、及び接合部のピッチが表1に示す結果であった。
〔実施例3〕
第1シート及び第2シートとしてアイソタクチックホモポリプロピレンからなる表1に示す不織布を使用した以外は実施例1と同様にして複合伸縮シートを製造した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチ、及び接合部のピッチが表1に示す結果であった。
〔比較例1〕
実施例1と同じ、第1シート、第2シート及び弾性部材を用いた。第1シートの全面に接着剤を塗工(ベタ塗工)し、第1シートにおける接着剤の塗工面と第2シートとの間に弾性部材を配置し、固定して比較例1の複合伸縮シートを製造した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチが表1に示す結果であった。
〔比較例2〕
特開2008-142341号公報の図13に記載の製造装置を用いて複合伸縮シートを製造した。第1シート、第2シート及び弾性部材としては、実施例1と同じ、第1シート、第2シート及び弾性部材を用いた。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチ、及び接合部のピッチが表1に示す結果であった。
〔比較例3〕
図4に示す製造装置20の備える第2凸ロール22の代わりに、低歯たけ部22cを有さない賦形ロール26と同様の凹凸ロールを用い、賦形ロール26と噛合い賦形を行った。比較例1の複合伸縮シートを更に延伸加工して複合伸縮シートを製造した。製造条件としては、高歯たけ部での延伸倍率を2.2倍に調整した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチが表1に示す結果であった。
〔比較例4〕
特開2008-142341号公報の図13に記載の製造装置に追加して、図4に示す製造装置20の備える第2凸ロール22の代わりに、低歯たけ部22cを有さない賦形ロール26と同様の凹凸ロールを用い、該ロールと賦形ロール26と噛合い賦形を行い、複合伸縮シートを製造した。尚、第1シート及び第2シートとしては、アイソタクチックホモポリプロピレンからなる表1に示すものを用いた。製造条件としては、延伸倍率を2.2倍に調整した。このような製造条件で製造された複合伸縮シートは、弾性部材のピッチ、及び接合部のピッチが表1に示す結果であった。50m/分以上の加工速度では弾性部材の破断が見られた。
〔評価〕
実施例1ないし3の複合伸縮シート、比較例1ないし4の複合伸縮シートについて、上述した複屈折R1,R2の測定方法により各領域の複屈折を求めた。また、圧縮特性及び伸縮特性を下記方法により測定し、以下の基準で官能評価した。尚、測定箇所は接着剤が間欠的に塗布されたサンプルについては接着剤のない領域とした。
<圧縮特性の測定>
圧縮特性は、KES圧縮試験機(カトーテック株式会社製KES FB-3)を用い、通常モードで50g/cm2までの圧縮特性評価を行い、圧縮のレジリエンスRC値を読み取った。サンプルは弛緩状態から1.4倍に伸長した状態でサンプルの両端を把持した。測定箇所は把持していない中央部とした。測定値としては、3点を測定しその平均値を圧縮回復性とした。このKES圧縮試験機は、圧縮部位が面積2cm2の円形平面を持つ板であり、圧縮速度は0.1mm/s、圧縮最大圧力は50g/cm2で、圧縮最大圧力に到達した時点で圧縮方向を反転させ回復過程に移行するものである。上記RC値は、圧縮時のエネルギーWCに対する回復時のエネルギーWC’の割合(WC’/WC)を%表示したものであり、RC値が大きいほど、圧縮に対する回復性が良く、弾力性があるとされる。圧縮時のエネルギーWCは、不織布の試験体に掛かる初期圧力0.5g/cm2がかかる厚みT0から最大圧力50g/cm2がかかる厚みTmまでの圧力の変位長さ積分値として求められる。回復されるエネルギーWC’は厚みTmから厚みT0までの圧力の変位長さ積分値として求められる。WCは圧縮時の硬さに相当する。また、WC’が高いものは反発性の高いものとなる。
<伸縮特性の測定>
伸縮サイクル特性は伸び止まり伸度と同様に測定し、伸び止まり伸度まで300mm/分の速度で伸長させ、500cN/50mmになった時点で直ちに300mm/分の速度で伸度0%までチャック間を戻したときの荷重を測定した。500cN/50mmに達する前に破断する場合は、最大強度点の伸度に0.8倍した値を伸び止まり伸度として測定した。弛緩状態の複合伸縮シートの長さを基準とした測定を行う場合は、弛緩状態でチャック間にサンプルをセットした。加工前の元の第1シート11、第2シート12の長さを基準とする場合は、加工前にチャック間100mmと同じ長さになるように元のシートにマークしておき、加工後の複合伸縮シートのマーク間をチャックした。これにより、元のシートに対する伸度が求められる。使用時の伸長範囲を想定して、戻り時の荷重が200cN/50mm時の伸度と戻り時の荷重が40cN/50mm時の伸度を測定した。また、荷重が2cN/50mm未満になったときの伸度を残留歪みとして測定した。弾性部材のみについても、弾性部材の量を複合伸縮シートと同じにして、測定した。
〔(サンプルの戻り時の200cN/50mm時長さ-戻り時の40cN/50mm時長さ)/(弾性部材の戻り時の200cN/50mm時長さ-戻り時の40cN/50mm時長さ)〕×100(%)を求めた。この値が高いものほど装着時の伸長適用範囲において、シート11,12に阻害されずに適用範囲が広いものとなる。
<官能評価>
・クッション性の官能評価試験(N=5)
複合伸縮シートを用いて、クッション感の官能評価を行った。具体的には、弛緩した状態から1.4倍に伸長した状態にてテーブル上に置いた実施例及び比較例の試料について、5人のモニター(成人男女)に表面を手のひらで抑える、ひとさし指、中指の2本の指先で抑えることによりクッション感の官能評価を行った。次の5段階評価基準を用いた。該評価基準に基づいて5人のモニターが官能評価し、その点数を平均し四捨五入して実施例及び比較例のそれぞれ評価結果とした。5点:クッション感がよい、4点:どちらかと言えばクッション感がよい、3点:どちらともいえない、2点:どちらかと言えばクッション感が悪い、1点:クッション感が悪い。
・外観の官能評価試験(N=5)
複合伸縮シートを用いて、外観の官能評価を行った。具体的には、弛緩した状態から1.4倍に伸長した状態にてテーブル上に置いた実施例及び比較例の試料について、5人のモニター(成人男女)によって目視による外観の官能評価を行った。次の5段階評価基準を用いた。該評価基準に基づいて5人のモニターが官能評価し、その点数を平均し四捨五入して実施例及び比較例のそれぞれ評価結果とした。5点:外観がよい、4点:どちらかと言えば外観がよい、3点:どちらともいえない、2点:どちらかと言えば外観が悪い、1点:外観が悪い。
・肌触りの官能評価試験(N=5)
複合伸縮シートを用いて、肌触りの官能評価を行った。具体的には、弛緩した状態から1.4倍に伸長した状態にてテーブル上に置いた実施例及び比較例の試料について、5人のモニター(成人男女)に表面を手のひらで撫でる、ひとさし指、中指の2本の指先で撫でることにより肌触りの官能評価を行った。次の5段階評価基準を用いた。該評価基準に基づいて5人のモニターが官能評価し、その点数を平均し四捨五入して実施例及び比較例のそれぞれ評価結果とした。5点:肌触りがよい、4点:どちらかと言えば肌触りがよい、3点:どちらともいえない、2点:どちらかと言えば肌触りが悪い、1点:肌触りが悪い。
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例の複合伸縮シートは、比較例の複合伸縮シートに比べて、伸縮特性が高く、官能評価が良好であることが判る。