JP7334896B2 - 耐熱軽量高強度焼結体製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献1では、Alは焼結助剤として用いられているに過ぎず本願発明と異なる。
この範囲は、図5に示すTi-Al-N系三元状態図の網掛け部となる。
なお、Oを不可避的不純物元素として、上限を3wt%として可能な限り低くするように制御ないし調整することが好ましい。
同様に、P,S,Si,Mn,Sn,Zn,Fe,Ni,Co,Cu,Mo,W,または,Hfは含有元素として許容されるが、これらも上限を各3wt%、合計10wt%として制御ないし調整することが好ましい。
加熱とは、所定の昇温工程が含まれていてもよいものとする。加熱して焼結体をえる手段は特に限定されないが、ホットプレス、放電プラズマ焼結、HIP(熱間等方加圧)を挙げることができる。
焼結体は合金と言い換えることもできる。
Al1に対し、TiNが0.01を下回ると所期の添加効果がえられず、1.5を超えると窒化物量が増えすぎて靭性が低下し実用材料として適当でなくなる。同様に、Tiとしての合計添加量が0.3に満たないと低融点層が生じて高温における機械的特性が不足し、6.0を超えると目的とするTi-Al系化合物に対してTi(α)量が増加し所期の特性が得られにくくなる。
圧力の目安は、反応温度領域では5MPa~20MPa、反応温度を超えてからは30MPa~100MPaの例を挙げることができる。
加えて、融点を若干下回る温度にて、Al粉とTi粉との接触界面でAl-Ti合金が形成され、これが強固な殻となりその後の効率的な反応が進みにくいという側面がある。場合により、殻の中に空隙が残存してしまうこともある。いずれにせよ、Al融点付近以上の焼結ないし合金形成に関しては、ミクロな組成の不均一性が解消されにくく、機械的特性が期待されるほど発揮されない。
具体的には、本願発明者らは、TiN粉末を混和して加熱すると、Alの溶融とほぼ同時にTiNが反応して融点上昇を導き、型からの漏れ出しが事実上生じず、また、Al融点以上の高温域における安定した加圧焼結および拡散処理が可能となることを発見した。
また、AlとTiNとの混合原料に、Ti粉末が存在していても、TiN粉末の存在下では、同様の原理で反応が好適に進行することも確認した。
これらの知見をもとに、以下、本発明の実施例を説明する。
平均粒径約100μmのAl粉末1に対し、平均粒径約0.8μmのTiN粉末を0.67の重量割合で混合した後、黒鉛型を使用した放電プラズマ焼結(SPS)を行ない、組織観察、硬さ試験、抗折試験を行なって特性を確認した。
<SPSの条件>
・加圧条件:初期加圧10MPa,800℃到達時以降50MPa
・加熱条件:RT~600℃[30℃/分]→600℃~800℃[10℃/分]→800℃×30分保持→800℃~1050℃[10℃/分]→1050℃~1100℃[2.5℃/分]→1100℃×60分保持→その後冷却
光学顕微鏡写真を図1に示した。写真から明らかなように、十分均質であるまではいえず、空隙も見られる。これは、原料粉末の粒子サイズの差が大きく、また、拡散処理温度が低めだったためと考えられた。また、Al自体の粒径が大きい影響とも考えられた。
なお、細かく観察したところ、AlをベースとするFCC(面心立方格子構造)相、Al3Ti相、および、Al2Ti相がマトリックスを構成し、Ti(Al)N複合窒化物が析出する形となっていた。
微小硬さ分布は757HV0.5~946HV0.5であり、平均値は836HV0.5であった。この値は実用鉄合金の最高硬さ(粉末ハイスの熱処理最高硬さ)に匹敵するレベルであり、高硬度素材であることが確認できた。
次に、比抗折強度測定をおこなった。
まず、抗折試験をおこない、その結果を表1に示す。
従って、比抗折強度は次のとおりである。
常温:97MPa/(Mg/m3)、
1000℃:86MPa/(Mg/m3)
この値は、実用特性として、軽量でありながら鉄合金の最高硬さに匹敵し、耐熱強度も備えているといえる。従って、軽量耐熱耐摩耗材として広い用途に有望な素材であることが確認できた。
平均粒径約75μmのAl粉末1に対し、平均粒径約0.8μm粒径のTiN粉末を0.65、平均粒径約40μmのTi粉末を1.8の重量割合として混合し、更に、平均粒径約5μmのCrN粉末を0.03加えてよく混合した後、黒鉛型を使用した放電プラズマ焼結(SPS)を行ない、組織観察、硬さ試験、抗折試験を行って特性を確認した。
<SPSの条件>
・加圧条件:初期加圧10MPa,800℃到達時以降50MPa
・加熱条件:RT~600℃[30℃/分]→600℃~800℃[10℃/分]→800℃×30分保持→800℃~1150℃[10℃/分]→1150~1200℃[2.5℃/分]→1200℃×60分保持→その後冷却
光学顕微鏡写真を図2に示した。写真から明らかなように、50μm径程度以下の未固溶TiN粒子が若干確認されるものの、大部分はTiAl(微量のCrを含む)とTi3Alを主体とするマトリックスであり、これに、個々には識別できない微細(1μmオーダー)なTi2AlNが析出した状態となっていた。全体として橙色を帯びた比較的均質な組織が形成されているといえる。
微少硬さ分布は420HV0.5~540HV0.5であり、平均値は466HV0.5であった。この値は、焼入れ焼戻しを施した鉄鋼の硬さに相当する。
次に、比抗折強度測定をおこなった。
まず、抗折試験をおこない、その結果を表2に示す。
従って、比抗折強度は次のとおりである。
常温:146MPa/(Mg/m3)、
1000℃:118MPa/(Mg/m3)
図3に、各種耐熱合金における温度と比強度との関係を示した。1000℃における試験材2の比抗折強度は、図示した従来得られているTiAl二元合金の最高値と同等以上であるといえる。
次に、比較例として、Ti-48at%Al合金(二元合金)を説明する。
平均粒径約75μm粒径のAl粉末1に対し、平均粒径約40μmのTi粉末を0.5の重量割合で混合した後、黒鉛型を使用した放電プラズマ焼結(SPS)を行ない、組織観察、硬さ試験をおこなった。
を確認した。焼結条件は実施例2と同じとした。
光学顕微鏡写真を図4に示した。一見うまく焼結されているように見えるが詳細に観察したところ、原料のAl粒がほぼそのままとなっており(Al富化部として残存し)、外殻の化合物領域に覆われた、均質化の不十分なミクロ組織が形成されていることを確認した。
ビッカース硬さ試験を実施した結果、234HV0.5~480HV0.5であり、平均値は285HV0.5であった。実施例1,2と比較すると硬さは低く、局所的な硬化層が存在してばらつきも大きい。すなわち、本発明(実施例)の方が、均質であり、高硬度であるといえる。
図5は、Al-Ti-Nの三元状態図である。本発明の製造方法における原料の組成範囲は、図中の(1)~(5)で示した黒丸印(5箇所)を頂点とする五角形内である。なお、図では実施例と比較例の組成点も記している。
1000℃以下の短時間加圧焼結では原料粒子サイズに起因する不均一性が残存し、合金化と硬化が十分でない部分が存在しうるため、この段階での焼結体は、目標となる耐熱強度を有するに至っていない。しかしながら、中間体として切削加工や塑性加工を行なうには有利な場合もある。従って、中間体を加工してから拡散処理を行なうのが製品の成形に有利な場合がある。もっとも、第一段階(低温側)の焼結後、そのまま冷却せずに第二段階(高温側)の焼結すなわち、拡散加圧焼結に移行してもよい。
Nbは耐酸化性効果が大きいが、多すぎると比重を大きくし、粗大窒化物を作り好ましくないのでAlの重量1に対してNb又はNbNを1.0以下とする。
Zr,Vについては耐酸化性及び熱間強度向上の効果が認められるが、多すぎると比重を大きくし、また粗大窒化物を作り好ましくないのでAlの重量1に対してZr又はZrN、V又はVNとも0.3以下とする。
Bについては微量で組織の安定化効果、熱間強度向上効果が認められるが、多すぎると粗大窒化物を作り好ましくないのでAlの重量1に対してB又はBN0.1以下とする。
Claims (8)
- それぞれ粉末状のAl、TiN、Tiを重量比にてAl:TiN:Ti=1:0.01~1.5:x(ただし、xは0以上でありTiNの比率との和が0.3以上6.0以下となる値)として混合し、
真空または無酸素雰囲気下にてこの混合粉末を加圧しながら1100℃~1350℃で加熱して得ることを特徴とする耐熱軽量高強度焼結体製造方法。 - Al粉末の平均粒径を1μm以上1mm以下、および/または、TiN粉末の平均粒径を50μm以下とすることを特徴とする請求項1に記載の耐熱軽量高強度焼結体製造方法。
- Cr、Nb、V、Zr、Bを特性調整用元素とし、
重量比でAl1に対し、
Cr粉末もしくはCrN粉末を0.5以下、
Nb粉末もしくはNbN粉末を1.0以下、
V粉末もしくはVN粉末を0.3以下、
Zr粉末もしくはZrN粉末を0.3以下、または、
B粉末もしくはBN粉末を0.1以下、
添加した混合粉末を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の耐熱軽量高強度焼結体製造方法。 - 特性調整用元素として添加する粉末の平均粒径を100μm以下とすることを特徴とする請求項3記載の耐熱軽量高強度焼結体製造方法。
- 加熱に際し、
加圧しながら660~1000℃の範囲にて加熱する第一工程を経た後、
1100~1350℃の範囲にて拡散熱処理を施す第二工程を経ることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の耐熱軽量高強度焼結体製造方法。 - 第一工程と第二工程との間に、鍛造、切削その他の整形工程を含ませることを特徴とする請求項5に記載の耐熱軽量高強度焼結体製造方法。
- 加熱温度を1100~1350℃として、圧延、鍛造、押出しその他の熱間加工工程を含ませることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の耐熱軽量高強度焼結体製造方法。
- Alの融点を含み680℃までの反応温度領域における圧力より、前記反応温度を超えた温度領域における圧力を高めた加圧とすることを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の耐熱軽量高強度焼結体製造方法。
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