以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
従来、実容量を上げる試みとして、活物質粒子の粒子径を小さくすることで体積エネルギー密度を高めることが行われている。ところが、ニオブチタン複合酸化物は、1000℃以上の高温で焼成する必要があるため、一次粒子が大きく成長する。また、高温で焼成されたニオブチタン複合酸化物粒子のモース硬度は高い。それ故、粒子径を小さくするためには、焼成後に強力な粉砕処理を行う必要がある。しかしながら、粒子に対して強力な粉砕処理を施すと、微粉が発生しやすい。
発生した微粉の比表面積は大きいため、例えば、充放電の際に電解質との副反応を生じてサイクル寿命特性を低下させる一因となる。また、ニオブチタン複合酸化物の一次粒子は、充放電サイクルを繰り返すことによって割れが生じることがあり、これにより電子導電パスが低減する可能性がある。従って、ニオブチタン複合酸化物粒子の割れも、サイクル寿命特性を低下させる一因となりうる。
本発明者らは、ニオブチタン複合酸化物の粉砕時に発生した微粉を含む複数のニオブチタン複合酸化物粒子を、固体電解質を含む被覆層により被覆することにより、微粉等に起因したサイクル特性の劣化を抑制可能であることを見出した。
(第1実施形態)
第1実施形態によると、活物質が提供される。活物質は、複合粒子を含む。複合粒子は、複数のニオブチタン複合酸化物粒子と、複数のニオブチタン複合酸化物粒子の少なくとも一部を被覆する被覆層とを含む。被覆層は固体電解質を含む。活物質についてのレーザー回折散乱法による粒度分布測定により決定されるメジアン径D50は3.0μm~10.0μmの範囲内にあり、D10は0.7μm~5.0μmの範囲内にある。
小さな粒子径を有する微粉を含む粉末は、比表面積が大きい。そのため、微粉が、各々孤立した状態で活物質粉末内に含まれていると、微粉と電解質との副反応が増加する。副反応が増加すると、当該副反応によって過剰な被膜が生成したり、ガスが発生したりするため、サイクル寿命特性が低下する。なお、微粉とは、例えば1μm以下の粒子径を有する粒子を指す。
ニオブチタン複合酸化物を含む上述の複合粒子において、2つ以上の粒子は、固体電解質を含む被覆層により複合されている。言い換えると、被覆層は2つ以上の粒子の少なくとも一部を被覆することにより、2つ以上の粒子は造粒して二次粒子化している。二次粒子化した複合粒子には上記微粉も取り込まれ得るため、活物質全体における、表面が露出した微粉の割合が低下する。加えて、複合化された複合粒子を含む活物質についての粒度分布は、上記のD50及びD10を満たす。
被覆層を有していないニオブチタン複合酸化物粉末の場合、粉末全体に対する微粉の個数が多いため、D50及びD10はより小さな値を示す。これに対して、実施形態に係る活物質では、例えば、ニオブチタン複合酸化物粉末に含まれる微粉は、複合粒子を構成している被覆層内に取り込まれた状態にある。つまり、活物質粉末全体に対して、露出している微粉の個数が減る。それ故、実施形態に係る活物質のD50及びD10は、被覆層を含まないニオブチタン複合酸化物粉末のそれらと比較してより大きな値を示す。具体的には、複合粒子を含む活物質のD50は3.0μm以上であり、且つ、D10は0.7μm以上である。
但し、活物質のD50及びD10が過度に大きい場合、被覆層の体積が大きすぎたり、複合粒子間の間隙の体積が大きすぎたりして、活物質含有層中における活物質の占める体積が減少する。結果として、高い体積エネルギー密度を維持できなくなるおそれがある。そこで、実施形態に係る活物質では、D50の上限値を10.0μmとし、D10の上限値を5.0μmとしている。即ち、実施形態に係る活物質は、粒度分布測定により決定されるD50が3.0μm~10.0μmの範囲内にあり且つD10が0.7μm~5.0μmの範囲内にあるため、高い体積エネルギー密度を維持したまま、微粉が露出していないことに起因したサイクル寿命特性の向上効果を得ることができる。
実施形態に係る活物質を含む活物質含有層内では、比表面積が大きい微粉の粉末の少なくとも一部が被覆層に覆われているため、微粉と電解質との接触面積が減る。その結果、例えば、ニオブチタン複合酸化物粒子の表面上における過剰な被膜生成を抑制することができる。更に、ニオブチタン複合酸化物の一次粒子が、充放電サイクル中に割れを生じた場合であっても、割れた粒子対(即ち、1つの一次粒子が割れた後の粒子対)のそれぞれには、被覆層の一部が接触してこれら粒子対を媒介している確率が高い。そして、被覆層は、イオン伝導性を有する固体電解質を含む。それ故、被覆層が存在しない場合と比較して、被覆層が、割れた粒子対間におけるイオン伝導網を構築し得る。これにより、例えば、電極に含まれる複数のニオブチタン複合酸化物粒子が満遍なく充放電に利用される確率が高まる。その結果、実施形態に係る活物質は優れたサイクル寿命特性を達成することができる。
複合粒子を含む活物質についてのレーザー回折散乱法により得られる粒度分布チャートにおいて、メジアン径D50は、3.0μm~10.0μmの範囲内にある。複合粒子を含む活物質のD50が3.0μm未満であると、副反応が増え、電池容量及びサイクル特性の低下などの劣化を引き起こしやすい。D50が10.0μmを超えると、相対的に大きな活物質粒子の割合が多いため、大きな活物質粒子又は複合粒子の間に存在する小さな活物質粒子の割合が不足して、体積エネルギー密度の低下、抵抗上昇及び入出力特性の低下などを生じる可能性がある。複合粒子を含む活物質のD50は、好ましくは3.5μm~7.0μmの範囲内にある。
活物質に対する上記粒度分布チャートにおいて、10%粒子径(D10)は、0.7μm~5.0μmの範囲内にある。D10が0.7μm未満である場合、例えば、活物質に含まれる1μm未満の微粉の割合が多いことを示す。この場合、サイクル寿命特性に劣る傾向があるため好ましくない。D10が5.0μmを超えると電池容量が低くなる傾向があるため好ましくない。複合粒子を含む活物質のD10は、好ましくは0.9μm~3.5μmの範囲内にある。
実施形態に係る活物質に占める、被覆層の質量の割合は、0.1質量%~10質量%の範囲内にあり、好ましくは1.0質量%~5.0質量%の範囲内にある。当該割合が過度に小さいと、被覆層による副反応抑制の効果が十分に得られない可能性がある。当該割合が過度に大きいと、電極を構成する活物質含有層に占める、被覆層の質量又は体積が大き過ぎて、電池の重量当たり又は体積当たりのエネルギー密度が低下するため好ましくない。活物質に占める被覆層の質量の割合は、後述する誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)分光分析により分析することができる。
被覆層の厚さは、例えば1μm~0.001μmの範囲内にあり、好ましくは0.1μm~0.003μmの範囲内にある。被覆層が過度に薄いと、被覆層による副反応抑制の効果が十分に得られない可能性がある。被覆層が過度に厚いと、電極を構成する活物質含有層に占める、被覆層の質量又は体積が大き過ぎて、電池の重量当たり又は体積当たりのエネルギー密度が低下するため好ましくない。
複合粒子に含まれる複数のニオブチタン複合酸化物粒子は、例えば、互いに粒子径が異なっている。複合粒子に含まれる複数のニオブチタン複合酸化物粒子のうちの少なくとも1つは、例えば1μm以下の粒子径を有する微粉であることが好ましい。これは、上述した通り、比表面積の大きい微粉の表面の少なくとも一部が被覆層に覆われることにより、サイクル寿命特性向上の効果が得られやすいためである。例えば、複合粒子に含まれる複数のニオブチタン複合酸化物粒子のうちの1つが5μm以上の粒子径を有しており、他の1つが1μm以下の粒子径を有していてもよい。複合粒子に取り込まれている微粉の数は2以上であってもよい。
複合粒子は1μm以下の粒子径を有する微粉を含んでいなくてもよい。複合粒子に含まれる複数のニオブチタン複合酸化物粒子のいずれもが1μm超の粒子径を有していたとしても、これら粒子が被覆層により造粒されている限り、サイクル寿命特性の向上効果を得ることができる。
複合粒子に含まれるニオブチタン複合酸化物粒子の粒子径は、後述する走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX:Scanning Electron Microscope - Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)により確認することができる。
以下、図面を参照しながら実施形態に係る活物質が含む複合粒子について説明する。ここでは一例として、複合粒子が微粉を含んでいる場合を説明する。
図1は、実施形態に係る活物質が含む複合粒子の一例を模式的に示す断面図である。図2は、実施形態に係る活物質が含む複合粒子の他の例を模式的に示す断面図である。図3は、実施形態に係る活物質が含む複合粒子の更に他の例を模式的に示す断面図である。活物質は、複合粒子50を含む。複合粒子50は、第1粒子51、第2粒子52及び被覆層53を含む。第1粒子51及び第2粒子52は、いずれもニオブチタン複合酸化物粒子である。第2粒子52は、ここでは1μm以下の粒子径を有する微粉とする。第1粒子51の粒子径は、第2粒子52と比較してより大きい。被覆層53は、第1粒子51の表面の少なくとも一部を被覆すると共に、第2粒子52の表面の少なくとも一部を被覆している。図1では一例として、被覆層53が、単一の第1粒子51の全面を被覆している場合を示している。第2粒子52は、被覆層53により第1粒子51の表面上に固定されている。
第2粒子52の少なくとも一部は、被覆層53内に埋没している。第2粒子52の全体が被覆層53内に埋没していてもよい。露出した第2粒子52を減らす観点から、第2粒子52の全体が被覆層53内に埋没していることが好ましい。
図2に示すように、複合粒子50は、複数の第1粒子51が造粒した状態で、これらが被覆層53によって被覆された二次粒子であってもよい。或いは、複合粒子50は、図3に示すように、各々が被覆層53により被覆された第1粒子51が、造粒して二次粒子としての複合粒子50を形成したものであってもよい。この場合、当該二次粒子中では、或る第1粒子51と、他の第1粒子51との間に被覆層53が存在し得る。第2粒子52は、複数の第1粒子間に存在する被覆層53と共に第1粒子51に対して固定されている。或る第1粒子51と、他の第1粒子51との間に被覆層53が存在していると、充放電サイクルを繰り返して第1粒子51が割れた場合であっても、被覆層53によりイオン伝導パスを確保しやすいため好ましい。
図1~図3を参照しながら説明したように、複合粒子は、一次粒子の形態であってもよく、二次粒子の形態であってもよく、これらの混合物の形態であってもよい。実施形態に係る活物質は、1つ以上の複合粒子を含む粉末でありうる。
複数のニオブチタン複合酸化物粒子は、いずれも単斜晶型ニオブチタン複合酸化物であり得る。活物質が単斜晶型ニオブチタン複合酸化物を含んでいると、優れたエネルギー密度に加えて、高いレート性能も達成することができる。この理由を、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の一種であるNb2TiO7を例に説明する。Nb2TiO7の結晶構造は、リチウムイオンの等価的な挿入空間が大きく且つ構造的に安定であり、さらに、リチウムイオンの拡散が速い2次元的なチャネルを有する領域とそれらを繋ぐ[001]方向の導電経路が存在する。それにより、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物Nb2TiO7の結晶構造では、挿入空間へのリチウムイオンの挿入脱離性が向上すると共に、リチウムイオンの挿入脱離空間が実効的に増加する。これにより、高い容量と高いレート性能とを提供することが可能である。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物は、例えば、一般式LixTi1-yM1yNb2-zM2zO7+δで表される複合酸化物、及び、一般式LixTi1-yM3y+zNb2-zO7-δで表される複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1つである。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、及び、-0.3≦δ≦0.3を満たす。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体的な例として、例えば、Nb2TiO7、Nb2Ti2O9、Nb10Ti2O29、Nb14TiO37及びNb24TiO62を挙げることができる。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物は、Nb及び/又はTiの少なくとも一部が異種元素に置換された置換ニオブチタン複合酸化物であってもよい。置換元素の例は、Na、K、Ca、Co、Ni、Si、P、V、Cr、Mo、Ta、Zr、Mn、Fe、Mg、B、Pb及びAlなどである。置換ニオブチタン複合酸化物は、1種類の置換元素を含んでいてもよく、2種類以上の置換元素を含んでいてもよい。
実施形態に係る活物質は、ニオブチタン複合酸化物以外の他の活物質を含んでいてもよい。他の活物質としては、例えば、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi3O7、0≦y≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi5O12、0≦x≦3)、単斜晶型二酸化チタン(TiO2(B))、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物及び直方晶型(orthorhombic)チタン含有複合酸化物を挙げることができる。
上記直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+aM(I)2-bTi6-cM(II)dO14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M(I)は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。M(II)はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti6O14(0≦a≦6)が挙げられる。
実施形態に係る活物質は、活物質としてニオブチタン複合酸化物のみを含んでいてもよく、上記の通り他の活物質を更に含んでいてもよい。他の活物質を含む場合、ニオブチタン複合酸化物及び他の活物質に対する、ニオブチタン複合酸化物の質量の割合は、例えば50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上である。
被覆層は、固体電解質を含む。被覆層は固体電解質からなっていてもよい。固体電解質について、25℃におけるリチウムイオン伝導率は1×10-10S/cm以上であることが好ましい。固体電解質の25℃におけるリチウムイオン伝導率が1×10-10S/cm以上であることで、固体電解質表面近傍のリチウムイオン濃度が高くなりやすいため、レート性能及び寿命特性を高めることができる。固体電解質の25℃におけるリチウムイオン伝導率は、1×10-6S/cm以上であることがより好ましい。固体電解質のリチウムイオン伝導率の上限値は、一例によれば2×10-2S/cmである。
固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及び窒化物固体電解質、ポリマー固体電解質等が挙げられる。固体電解質は、具体的には、硫化物系のLi2SeP2S5系ガラスセラミックス、ペロブスカイト型構造を有する無機化合物であるリチウムランタンチタン複合酸化物(例えば、Li0.5La0.5TiO3)、LISICON型構造を有する無機化合物(例えば、Li3.6Si0.6P0.4O4)、NASICON型骨格を有する無機化合物、アモルファス状のLIPON(Li2.9PO3.3N0.46)、リチウムカルシウムジルコニウム酸化物(Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO4)3)、及び、ガーネット型構造を有する無機化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。被覆層は、1種類の固体電解質を含んでいてもよく、2種類以上の固体電解質を含んでいてもよい。
NASICON型骨格を有する無機化合物としては、一般式LiM2(PO4)3(Mは、Ti、Ge、Sr、Zr、Sn及びAlから選ばれる一種以上である)で表される無機化合物であることが好ましい。中でも、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3(LATP)は、イオン伝導性が高く、水に対する電気化学的安定性が高いため好ましい。上記において、xは0≦x≦0.5を満たすことが好ましい。
ガーネット型構造を有する無機化合物としては、例えば、Li5+xAyLa3-yM2O12(AはCa,Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、MはNb及びTaからなる群より選ばれる少なくとも1つである)、Li3M2-xZr2O12(MはTa及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1つである)、Li7-3xAlxLa3Zr3O12、及びLi7La3Zr2O12が挙げられる。上記において、xは、例えば0≦x<0.8であり、好ましくは、0≦x≦0.5である。yは、例えば0≦y<2である。ガーネット型構造を有する酸化物は、これら化合物のうちの1種からなっていてもよく、これら化合物の2種以上を混合して含んでいてもよい。これらの中でもLi6.25Al0.25La3Zr3O12及びLi7La3Zr2O12はイオン伝導性が高く、電気化学的に安定なため、放電性能とサイクル寿命性能に優れる。
固体電解質が硫黄元素を含んでいると、硫黄成分が後述する有機電解質に溶解するため好ましくない。固体電解質は硫黄元素を含まないことが好ましい。
好ましい固体電解質は、NASICON型骨格を有するLATP(Li1+xAlxTi2-x(PO4)3)、アモルファス状のLIPON、ガーネット型のリチウムランタンジルコニウム含有酸化物(例えば、Li7La3Zr2O12:LLZ)などの酸化物である。
NASICON型骨格を有するLiM2(PO4)3で表される無機化合物の25℃におけるリチウムイオン伝導率は、例えば1×10-3S/cm~1×10-5S/cmの範囲内にある。LIPON(Li2.9PO3.3N0.46)の25℃におけるリチウムイオン伝導率は、3×10-6S/cmである。ガーネット型のLLZ(Li7La3Zr2O12)の25℃におけるリチウムイオン伝導率は、3×10-4S/cmである。
固体電解質は、これらの中でも、NASICON型骨格を有するLATPであることが好ましい。LATPは、リチウムイオン伝導率が高く、水で分解することがないため、空気中においても安定に存在することができる。
<レーザー回折散乱法による粒度分布測定>
実施形態に係る活物質に対してレーザー回折散乱法による粒度分布測定を行って、粒度分布チャートを得る方法を説明する。
実施形態に係る活物質が二次電池に組み込まれている場合には、以下の手順で測定を行う。測定対象の活物質粉末自体を入手できる場合は、これをレーザー回折散乱法に供する。
まず、二次電池内から電極を取り出す。この際、電極内の活物質からリチウムイオンが完全に離脱した状態に近い状態にする。例えば、活物質が負極に含まれている場合、電池を完全に放電した状態にする。例えば、電池を25℃環境において0.1C電流で定格終止電圧又は電池電圧が1.0Vに到達するまで放電させることを複数回繰り返し、放電時の電流値が定格容量の1/100以下となるようにすることで、電池を放電状態にすることができる。
次に、アルゴンを充填したグローブボックスなどのドライ雰囲気中で電池を分解して電極を取り出す。取り出した電極を、適切な溶媒で洗浄して減圧乾燥に供する。溶媒としては、例えば、エチルメチルカーボネートなどを用いる。洗浄乾燥後の電極について、その表面にリチウム塩などの白色析出物がないことを確認する。このようにして電極試料を得る。
得られた電極試料から、活物質含有層などの活物質が含まれている部分を剥離する。例えば、超音波を照射することにより活物質が含まれている部分を剥離することができる。具体例として、例えば、ガラスビーカー中に入れたエチルメチルカーボネートに電極を入れ、超音波洗浄機中で振動させることで、集電体から活物質を含む活物質含有層を剥離させることができる。次に、剥離した部分を大気中で短時間加熱して(例えば、500℃で1時間程度)、バインダ成分やカーボンなど不要な成分を焼失させる。こうして、分析対象の活物質粉末を得ることができる。
分離した活物質粒子を純水に分散させて、超音波処理を施して、粒度分布測定用サンプルとしての分散液を得る。この分散液について、レーザー回折式分布測定装置を用いて構成粒子の粒度分布測定を実施する。測定装置としては、例えばマイクロトラック・ベル株式会社製 マイクロトラックMT3100IIを使用することができる。上記分散溶媒を得る際の超音波処理は、レーザー回折式分布測定装置に付随する試料供給システムにより実施する。超音波処理は、40kHz、30Wの出力で、180秒に亘って実施する。
<走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)>
実施形態に係る活物質が含まれる電極の断面についてSEM-EDXを実施して元素マッピング画像を得ることにより、複合粒子に含まれる複数のニオブチタン複合酸化物粒子の粒子径を測定することができる。活物質粉末自体に対してSEM-EDX観察を実施する場合には、電極断面の代わりに当該活物質粉末を直接観察してもよい。
まず、上記レーザー回折散乱法の項で説明したように電極材料を準備する。電極試料を厚さ方向に沿って切断して、電極断面を露出させる。切断に際しては、例えば、アルゴンイオンミリングなどのミリング処理を行う。
得られた電極断面を、SEM-EDXを用いて5000倍の観察倍率で観察する。この観察により、実施形態に係る複合粒子が存在するか否かを確認することができる。複合粒子に含まれるニオブチタン複合酸化物粒子の粒子径を測定する場合、当該粒子の最小外接円の直径を、当該粒子の粒子径とみなす。
<ICP発光分光法>
活物質に占める被覆層の質量の割合は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法を用いて分析することができる。このとき、各元素の存在比(モル比)は、使用する分析装置の感度に依存する。従って、測定されるモル比が、実際のモル比から測定装置の誤差分だけ数値がずれることがある。しかしながら、分析装置の誤差範囲で数値が逸脱したとしても、実施形態に係る活物質の性能を十分に発揮することができる。
電池に組み込まれている活物質を分析する場合には、まず、レーザー回折散乱法の項で説明した手順で活物質粉末を準備する。この粉末を酸で溶解することで、活物質を含む液体サンプルを作成できる。このとき、酸としては塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸などを使用できる。この液体サンプルをICP分析に供することで、活物質中の組成を知ることができる。即ち、活物質全体に含まれるニオブチタン複合酸化物と、被覆層との質量比を分析することができる。
<活物質の製造方法>
実施形態に係る活物質は、例えば、以下の方法により製造することができる。
まず、以下の方法で、固相合成によりニオブチタン複合酸化物粉末を製造する。ニオブチタン複合酸化物のための出発原料として、Li、Ti又はNbを含む酸化物又は塩を用意し、これらを混合する。出発原料として用いる塩は、炭酸塩及び硝酸塩のような、比較的低温で分解して酸化物を生じる塩であることが好ましい。またこれら出発原料の粒子径は0.1μm~10μmの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、0.1μm~5μmの範囲内にある。これは、0.1μmより小さいと混合時に大気中に舞いやすく組成ずれを起こしやすく、10μmよりも大きいと未反応生成物が生じるためである。
出発原料を混合する際は、Nb源及びTi源が目的組成となるようなモル比で混合する。混合した原料を、500℃~1000℃の範囲内の温度で2時間~5時間程度に亘り仮焼成に供する。仮焼成後の粉末をボールミルにより1時間に亘り粉砕を行った後、本焼成に供する。本焼成は、1000℃~1450℃の温度で、2回以上の焼成に分けて、延べ10時間~40時間に亘って行う。
続いて、本焼成後に、得られた粉末を粉砕工程に供する。なお、本焼成後に得られた粉末に対して、粉砕工程に供する前に、アニール処理を実施してもよい。アニール処理は、350℃~800℃の温度で1時間~5時間に亘り熱処理することにより行う。アニール処理を行うことにより、ニオブチタン複合酸化物の酸素欠損を修復することができるため、高容量と優れたサイクル寿命性能を達成することができる。
粉砕は、ジェットミル、ハンマーミル、ボールミル、インパクトミル及びロールミルなどで行うことができる。粉砕後に得られるニオブチタン複合酸化物粉末の粒子径、回収率及びコストの観点から、粉砕はボールミルで行うことが好ましい。
被覆層の形成に使用する固体電解質の作製方法は特に限定されないが、例えば、ゾルゲル法又は熱固溶法を採用することができる。被覆層を粒子表面状に均一に形成する観点から、固体電解質を含む溶液が得られるゾルゲル法が好ましい。
ゾルゲル法などで得られた溶液を、粉砕により得られた粉末の粒子表面上に塗布(コート)し、乾燥させることで被覆層を形成することができる。粒子表面上への溶液の塗布は、具体的には、スプレードライ法、転動流動装置を用いた吹き付け法、含浸法、エバポレータなどを利用した真空含浸法などで実施することができる。また、スパッタ法により被覆層を形成してもよい。
例えば、ゾルゲル法で得られる溶液(ゾルゲル液)の濃度を調整することにより、被覆層形成後の活物質について得られる粒度分布チャートにおけるD50を3.0μm~10.0μmの範囲内とし、且つ、D10を0.7μm~5.0μmの範囲内に調整することができる。溶液中の固形分量が一定であっても、溶液の濃度を高くすることで、複合粒子の粒子径は大きくなりやすい。即ち、活物質のD10及びD50は大きくなりやすい。ゾルゲル液の濃度が高いほど表面張力が大きくなるため、大きな粒子ができやすくなると考えられる。他方、溶液を希釈して濃度を低くすることで、複合粒子の粒子径は小さくなりやすい。即ち、活物質のD10及びD50は小さくなりやすい。
ゾルゲル液の濃度が高すぎると粒度分布が広くなりやすく、また薄すぎると焼成の際に水が蒸発するまでに時間がかかるため、ゾルゲル液の固形分濃度は1%~60%の範囲内にあることが望ましい。
或いは、固相合成後に得られたニオブチタン複合酸化物粉末の粉砕条件を調整することにより、被覆層形成後の活物質について得られる粒度分布チャートにおけるD50及びD10を調整することができる。
例えば、被覆層形成前のニオブチタン複合酸化物粉末についてのレーザー回折散乱法により得られる粒度分布チャートにおいて、D50を1.0μm~4.0μmの範囲内とすること、及び/又は、D10を0.2μm~3.0μmの範囲内とすることにより、被覆層形成後の複合粒子を含む活物質についての粒度分布チャートにおけるD50を3.0μm~10.0μmの範囲内とし、且つ、D10を0.7μm~5.0μmの範囲内とすることができる。また、被覆層形成前のニオブチタン複合酸化物粉末についての粒度分布チャートにおけるD90を4μm~12μmの範囲内とすると、被覆層形成後に得られる活物質が良好なサイクル寿命特性を示すため好ましい。
第1実施形態によると、活物質が提供される。活物質は、複合粒子を含む。複合粒子は、複数のニオブチタン複合酸化物粒子と、複数のニオブチタン複合酸化物粒子の少なくとも一部を被覆する被覆層とを含む。被覆層は固体電解質を含む。活物質についてのレーザー回折散乱法による粒度分布測定により決定されるメジアン径D50は3.0μm~10.0μmの範囲内にあり、D10は0.7μm~5.0μmの範囲内にある。この活物質は、優れた体積エネルギー密度及びサイクル寿命特性を実現できる。
(第2実施形態)
第2実施形態によると、電極が提供される。
第2実施形態に係る電極は、第1実施形態に係る活物質を含む。実施形態に係る電極は、負極であってもよく、正極であってもよい。実施形態に係る電極は、例えば電池用電極、二次電池用電極又はリチウム二次電池用電極である。電極は、第1実施形態に係る活物質を、負極活物質として含む負極であり得る。
第2実施形態に係る電極は、集電体と、第1実施形態に係る活物質を含む活物質含有層とを含むことができる。活物質含有層は、集電体の片面又は両面に形成され得る。活物質含有層は、活物質と、任意に導電剤及び結着剤とを含むことができる。
活物質含有層は、第1実施形態に係る活物質を単独で含んでもよく、第1実施形態に係る活物質を2種以上含んでもよい。さらに、第1実施形態に係る活物質を1種又は2種以上と、更に1種又は2種以上の他の活物質とを混合した混合物を含んでもよい。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
活物質含有層中の活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、電極の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、電極を二次電池の負極として用いる場合は、活物質、導電剤及び結着剤を、それぞれ、80質量%以上95質量%以下、3質量%以上18質量%以下及び2質量%以上7質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤が3質量%未満であると、負極活物質層の集電性能が低下し、二次電池の大電流特性が低下する恐れがある。また、結着剤が2質量%未満であると、負極活物質層と負極集電体の結着性が低下し、サイクル特性が低下する恐れがある。一方、高容量化の観点から、導電剤及び結着剤は各々10質量%以下であることが好ましい。
集電体は、活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。例えば、活物質が負極活物質として用いられる場合は、集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
また、集電体は、その表面に活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、集電タブとして働くことができる。
電極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、実施形態に係る活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、電極を作製する。
或いは、電極は、次の方法により作製してもよい。まず、活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、電極を得ることができる。
第2実施形態に係る電極は、第1実施形態に係る活物質を含んでいる。それ故、この電極は、優れた体積エネルギー密度及びサイクル寿命特性を達成することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態によると、負極と、正極と、電解質とを含む二次電池が提供される。この二次電池は、負極として、第2実施形態に係る電極を含む。つまり、第3実施形態に係る二次電池は、第1実施形態に係る活物質を含む電極を、負極として含む。
実施形態に係る二次電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。負極、正極及びセパレータは、電極群を構成することができる。電解質は、電極群に保持され得る。
二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
更に、二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
二次電池は、例えばリチウムイオン二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池であり得る。
以下、負極、正極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
(1)負極
負極は、第2実施形態で説明した電極でありうる。負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極集電体及び負極活物質含有層は、それぞれ、第2実施形態に係る電極が含むことのできる集電体及び活物質含有層であり得る。負極活物質含有層は、第1実施形態に係る活物質を負極活物質として含む。
負極の詳細のうち、第1実施形態及び第2実施形態において説明したのと重複する部分は省略する。
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)、即ち電極密度は、1.8g/cm3以上3.5g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.5g/cm3以上2.9g/cm3以下であることがより好ましい。
負極は、例えば、第2実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
(2)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y<1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
正極活物質の一次粒子径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒子径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒子径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
正極活物質層における正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、正極活物質が80質量%以上95質量%以下、導電剤が3質量%以上18質量%以下、結着剤が2質量%以上7質量%以下の範囲内であることが好ましい。導電剤が3質量%以上であると上述した効果を発揮することができ、18質量%以下であると高温保存下での導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤が2質量%以上であると十分な電極強度が得られ、7質量%以下であると電極の絶縁部を減少させることができる。
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
正極は、例えば、正極活物質を用いて、第2実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
(3)電解質
電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5mol/L以上2.5mol/L以下であることが好ましい。
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。
電解質は、水を含んだ水系電解質であってもよい。
水系電解質は、水系溶媒と電解質塩とを含む。水系電解質は、例えば、液状である。液状水系電解質は、溶質としての電解質塩を水系溶媒に溶解することにより調製される水溶液である。水系溶媒は、例えば、水を50体積%以上含む溶媒である。水系溶媒は、純水であってもよい。
水系電解質は、水系電解液と高分子材料とを複合化したゲル状の水系電解質であってもよい。高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
水系電解質は、溶質となる塩1molに対し、水系溶媒量が1mol以上であることが好ましい。さらに好ましい形態は、溶質となる塩1molに対する水系溶媒量が3.5mol以上である。
水系電解質に水が含まれていることは、GC-MS(ガスクロマトグラフィー-質量分析;Gas Chromatography - Mass Spectrometry)測定により確認できる。また、水系電解質中の塩濃度および水含有量の算出は、例えばICP(誘導結合プラズマ;Inductively Coupled Plasma)発光分析などで測定することができる。水系電解質を規定量はかり取り、含まれる塩濃度を算出することで、モル濃度(mol/L)を算出できる。また水系電解質の比重を測定することで、溶質と溶媒のモル数を算出できる。
水系電解質は、例えば電解質塩を1-12mol/Lの濃度で水系溶媒に溶解することにより調製される。
水系電解質の電気分解を抑制するために、LiOH又はLi2SO4などを添加し、pHを調整することができる。pHは、3-13であることが好ましく、4-12であることがより好ましい。
(4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
セパレータとして、固体電解質粒子を含む固体電解質層を使用することもできる。固体電解質層は、1種類の固体電解質粒子を含んでいても良く、複数種類の固体電解質粒子を含んでいてもよい。固体電解質層は、固体電解質粒子を含む固体電解質複合膜であってもよい。固体電解質複合膜は、例えば、固体電解質粒子を、高分子材料を用いて膜状に成形したものである。固体電解質層は、可塑剤及び電解質塩からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいても良い。固体電解質層が電解質塩を含んでいると、例えば、固体電解質層のアルカリ金属イオン伝導性をより高めることができる。
高分子材料の例は、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアミン系、ポリエチレン系、シリコーン系及びポリスルフィド系を含む。
固体電解質としては、例えば、第1実施形態において示したものを使用することができる。
(5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
(6)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のLi吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
(7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上5V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
次に、第3実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
図4は、第3実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図である。図5は、図4に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。
図4及び図5に示す二次電池100は、図4及び図5に示す袋状外装部材2と、図5に示す電極群1と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
図4に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、図5に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、図5に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
図4に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
第3実施形態に係る二次電池は、図4及び図5に示す構成の二次電池に限らず、例えば図6及び図7に示す構成の電池であってもよい。
図6は、第3実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。図7は、図6に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
図6及び図7に示す二次電池100は、図6及び図7に示す電極群1と、図6に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
電極群1は、図7に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分3cを含む。この部分3cは、負極集電タブとして働く。図7に示すように、負極集電タブとして働く部分3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ(部分3c)は、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)と同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)に対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
第3実施形態に係る二次電池は、第1実施形態に係る活物質を負極活物質として含んでいる。そのため、この二次電池は、優れた体積エネルギー密度及びサイクル寿命特性を達成することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態によると、組電池が提供される。第4実施形態に係る組電池は、第3実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
第4実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
次に、第4実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
図8は、第4実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図8に示す組電池200は、5つの単電池100a~100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a~100eのそれぞれは、第3実施形態に係る二次電池である。
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図8の組電池200は、5直列の組電池である。例を図示しないが、電気的に並列に接続されている複数の単電池を含む組電池では、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとともに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電池が電気的に接続され得る。
5つの単電池100a-100eのうち少なくとも1つの電池の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に電気的に接続されている。また、5つの単電池100a-100eうち少なくとも1つの電池の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に電気的に接続されている。
第4実施形態に係る組電池は、第3実施形態に係る二次電池を具備する。従って、この組電池は、優れた体積エネルギー密度及びサイクル寿命特性を達成することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第4実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第4実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第3実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
第5実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
また、第5実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、第5実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
図9は、第5実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図10は、図9に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
図9及び図10に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
図9に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
複数の単電池100の少なくとも1つは、第3実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、図10に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
正極側リード22の一端は、組電池200に接続されている。正極側リード22の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続されている。負極側リード23の一端は、組電池200に接続されている。負極側リード23の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続されている。
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200の一側面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
正極側コネクタ342に、正極側リード22の他端22aが電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード23の他端23aが電気的に接続されている。
サーミスタ345は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路346に送信する。
通電用の外部端子350は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350は、正側端子352と負側端子353とを含む。
保護回路346は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348bを介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
なお、保護回路346としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子の正側端子と負側端子としてそれぞれ用いてもよい。
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
第5実施形態に係る電池パックは、第3実施形態に係る二次電池又は第4実施形態に係る組電池を備えている。従って、この電池パックは、優れた体積エネルギー密度及びサイクル寿命特性を達成することができる。
(第6実施形態)
第6実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第5実施形態に係る電池パックを搭載している。
第6実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含んでいてもよい。
第6実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、それぞれの電池パックが含む電池同士は、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。例えば、各電池パックが組電池を含む場合は、組電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、又は電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。或いは、各電池パックが単一の電池を含む場合は、それぞれの電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
次に、第6実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図11は、実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図である。
図11に示す車両400は、車両本体40と、実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図11に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300が含む電池(例えば、単電池または組電池)は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
図11では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
次に、図12を参照しながら、第6実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
図12は、第6実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図である。図12に示す車両400は、電気自動車である。
図12に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位の制御装置である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図12に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a-300cは、前述の電池パック300と同様の電池パックであり、組電池200a-200cは、前述の組電池200と同様の組電池である。組電池200a-200cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
組電池200a-200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第2実施形態に係る二次電池である。組電池200a-200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
電池管理装置411は、組電池監視装置301a-301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a-200cに含まれる単電池100のそれぞれについて電圧及び温度などに関する情報を収集する。これにより、電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を収集する。
電池管理装置411と組電池監視装置301a-301cとは、通信バス412を介して接続されている。通信バス412では、1組の通信線が複数のノード(電池管理装置411と1つ以上の組電池監視装置301a-301cと)で共有されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置301a-301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a-200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との間の電気的な接続の有無を切り替える電磁接触器(例えば図12に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a-200cへの充電が行われるときにオンになるプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、組電池200a-200cからの出力が負荷へ供給されるときにオンになるメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチ及びメインスイッチのそれぞれは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフに切り替わるリレー回路(図示せず)を備えている。スイッチ装置415等の電磁接触器は、電池管理装置411又は車両400全体の動作を制御する車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411又は車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。インバータ44が制御されることにより、インバータ44からの出力電圧が調整される。
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。駆動モータ45の回転によって発生する駆動力は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構(リジェネレータ)を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。変換された直流電流は、車両用電源41に入力される。
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子417に接続されている。接続ラインL1には、負極端子414と負極入力端子417との間に電池管理装置411内の電流検出部(電流検出回路)416が設けられている。
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子418に接続されている。接続ラインL2には、正極端子413と正極入力端子418との間にスイッチ装置415が設けられている。
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置411を含む他の管理装置及び制御装置とともに車両用電源41、スイッチ装置415、及びインバータ44等を協調制御する。車両ECU42等の協調制御によって、車両用電源41からの電力の出力及び車両用電源41の充電等が制御され、車両400全体の管理が行われる。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
第6実施形態に係る車両は、第5実施形態に係る電池パックを具備している。それ故、本実施形態によれば、優れた体積エネルギー密度及びサイクル寿命特性を示すことができる電池パックを搭載した車両を提供することができる。
[実施例]
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下の手順で二次電池を作製した。
<負極活物質の作製>
被覆層形成前のニオブチタン複合酸化物粉末として、D50が2.3μmであり、D10が0.7μmのNb2TiO7(NTO)粉末を固相合成により作製した。
次に、以下に説明にするゾルゲル法でLATPを調製した。クエン酸16.09gを水に溶解し、チタンイソプロポキシド5.95gを加え、4時間還流した。更に水を加えたのち、予め水に溶解させた、クエン酸4.55g、硝酸リチウム1.25g及び2水素リン酸アンモニウム4.55gを加え、室温で5分攪拌した。更に、水に溶解させたクエン酸2.00g及び硝酸アルミニウム9水和物1.93gを加え、室温で30分攪拌した。反応終了後の溶液に対してジエチレングリコール9.95gを加え、アンモニウム水でpH7に調整した。得られた分散液をLATP液と呼ぶ。LATPの組成式はLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3であった。
続いて、下記の通り、含浸法によってニオブチタン複合酸化物粒子の表面上にLATPからなる被覆層を形成した。被覆層形成後に得られる活物質粉末の質量に占めるLATPの質量の割合が1.4質量%となるように、LATP液にニオブチタン複合酸化物粒子を加え、15分間に亘って超音波処理に供した後、得られた分散液を蒸発皿に移した。この蒸発皿を、酸素及びアルゴンガスをそれぞれ1.0L/min(nor)でフローした状態の小型雰囲気炉内において、150℃で3時間保持し、次いで500℃で5時間焼成後、更に800℃で3時間焼成して、Nb2TiO7粒子の表面上にLATPがコートされた複合粒子を含む活物質粉末を得た。
<負極の作製>
負極活物質として先に作製した活物質粉末100重量部と、導電剤としてアセチレンブラック4重量部と、結着剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)2重量部と、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)2重量部と、純水とを混合し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さ12μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、120℃の恒温槽内で乾燥してプレスすることにより、負極を得た。
<正極の作製>
正極活物質として、スピネル型リチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.5Mn1.5O4)粉末100重量部、導電剤として、アセチレンブラック5重量部、結着剤として、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)2重量部をN-メチルピロリドン(NMP)に加えて混合し、スラリーを調製した。厚さ12μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、120℃の恒温槽内で乾燥してプレスすることにより正極を得た。
<電極群の作製>
正極、セパレータ、負極、セパレータをこの順で積層し、積層体を得た。次いで、この積層体を渦巻き状に捲回した。これを80℃で加熱プレスすることにより偏平状電極群を作製した。得られた電極群を、ナイロン層/アルミニウム層/ポリエチレン層の3層構造を有し、厚さが0.1mmであるラミネートフィルムからなるパックに収納し、120℃で16時間、真空中で乾燥した。
<非水電解質の調製及び二次電池の作製>
プロピレンカーボネート(PC)及びジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比率1:2)に、電解質としてLiPF6を1mol/L溶解させることで非水電解質を得た。電解質の調整は、アルゴンボックス内で実施した。
電極群を収納したラミネートフィルムパック内に非水電解質を注入した後、パックをヒートシールにより完全密閉した。これにより、非水電解質二次電池を得た。
(実施例2)
被覆層形成前のニオブチタン複合酸化物粉末として、D50が5.8μmであり、D10が2.8μmのNb2TiO7粉末を使用したことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。
(実施例3)
被覆層形成前のニオブチタン複合酸化物粉末として、D50が1.0μmであり、D10が0.2μmのNb2TiO7粉末を使用したことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。
(実施例4)
被覆層形成に使用したLATP液の固形分濃度を2倍に濃縮したことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。
(実施例5)
被覆層形成に使用したLATP液の固形分濃度を2分の1に希釈したことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。
(実施例6)
被覆層形成の際に、LATP液に投入する活物質の量を、活物質の質量に占めるLATPの質量の割合が3.0質量%となるように変更したことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。
(実施例7)
負極活物質を作製する際に、LATPの代わりに、LZCP(Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO4)3をNb2TiO7粒子の表面上にコートしたことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。
(実施例8)
負極活物質を作製する際に、LATPの代わりに、LiTi2(PO4)3をNb2TiO7粒子の表面上にコートしたことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。
(実施例9)
負極活物質を作製する際に、LATPの代わりに、LLTO(Li0.3La0.55TiO3)をNb2TiO7粒子の表面上にコートしたことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。
(実施例10)
被覆層形成の際に、含浸法ではなく、転動流動装置を用いた吹き付け法により被覆層を形成したことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。この時、LATP液の吹き付け温度は100℃とした。
(比較例1)
負極活物質として、被覆層を有していないNb2TiO7粉末を使用したことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。使用したNb2TiO7粉末のD50は2.3μmであり、D10は0.7μmであった。
(比較例2)
被覆層形成前のニオブチタン複合酸化物粉末として、D50が0.1μmであり、D10が0.01μmのNb2TiO7粉末を使用したことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。このNb2TiO7粉末は、固相合成後の粉砕強度を高めることにより得られたものである。
(比較例3)
被覆層形成の際に、含浸法ではなく、転動流動装置を用いた吹き付け法により被覆層を形成したことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。この時、LATP液の吹き付け温度は90℃とした。
(比較例4)
被覆層形成の際に、LATP液に投入する活物質の量を、活物質の質量に占めるLATPの質量の割合が20質量%となるように変更したことを除いて、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。
<レーザー回折散乱法による粒度分布測定>
実施例及び比較例において作製した各二次電池が備える負極に対して、第1実施形態において説明した方法に従ってレーザー回折散乱法による粒度分布測定を行い、各例の負極活物質についての粒度D50及びD10を求めた。この結果を表1に示す。
<SEM-EDXによる観察>
実施例及び比較例として作製した各二次電池の負極について、第1実施形態において説明した方法により負極断面を得て、SEM-EDXを用いて当該断面を観察した。その結果、実施例1~9、及び、比較例2~4に係る活物質は、複数のニオブチタン複合酸化物粒子と、これらの少なくとも一部を被覆する被覆層とを含む複合粒子を含んでいた。
<サイクル寿命特性評価>
各例において作製した電池を、25℃環境下で試験に供した。充放電では、まず、電池を3.7Vまで100mAで充電し、その後2.3Vまで20mAで放電して電池の容量を確認した後、100mAで充放電を100サイクル繰り返した。
100サイクル後の放電容量を初回放電容量で除して、100を乗じることで、100サイクル後容量維持率を算出した。容量維持率は、サイクル寿命特性を評価する指標である。この結果を表1に示す。
<ガス発生量の測定>
100サイクル後に発生したガス量を測定するため、上記サイクル寿命特性評価に供した後の各電池を水に沈めて、増加した体積を測定し、これをガス発生量とみなした。ガス発生量は、サイクル寿命特性を評価する指標である。この結果を表1に示す。
以上の結果を下記表1にまとめる。表1中、「被覆層質量」の列では、活物質全体の質量に対する被覆層の質量を百分率で示している。
表1から以下のことが分かる。
実施例1~5および10に示しているように、被覆層の質量が互いに同量である場合、D50及び/又はD10が大きい方が、初回容量が相対的に劣り、その代わりにサイクル寿命特性が相対的に優れる傾向があった。被覆量の質量が他の実施例よりも多い実施例6では、サイクル寿命特性に優れる傾向があり、初回容量に劣る傾向があった。実施例7~9に示しているように、被覆層に含まれる固体電解質の種類を種々変更しても、優れた体積エネルギー密度及びサイクル寿命特性を達成できた。被覆層がLATPを含む実施例1~6のうち、メジアン径D50が3.5μm~6.0μmの範囲内にある実施例1及び3~5では、初回容量とサイクル寿命特性とがバランス良く優れていた。また、被覆層がLATPを含む実施例1~6のうち、D10が0.9μm~2.5μmの範囲内にある実施例1及び3~5では、初回容量とサイクル寿命特性とがバランス良く優れていた。
比較例1~4は、いずれも、活物質粉末のD50が3.0μm~10.0μmの範囲内に無く、且つ、D10が0.7μm~5.0μmの範囲内に無い例である。被覆層を有さない比較例1に係るNTO粉末は、初回容量こそ優れていたものの、サイクル寿命特性に劣っていた。また、粒子径が過度に小さい比較例2も同様の傾向を有していた。比較例2では、粒子間の空隙が少ないため、電極層に占める活物質粒子の体積の割合が多いが、活物質粒子の比表面積が大きいことからサイクル寿命特性に劣っていたと考えられる。比較例3のように、被覆量が実施例と同等でも、粗大な複合粒子の割合が高い場合、初回容量が著しく低下する。また、比較例4についても、活物質含有層に占める被覆層の体積の割合が多かったと考えられる。
実施例10及び比較例3に示しているように、同じ転動流動コーティング法であっても、吹き付け温度が異なることで、得られる活物質の粒度分布が変化する。即ち、実施例10のように吹き付け温度が高い場合、複数の粒子が、吹き付けられた溶液により結着して大きな塊を形成する前に溶媒が乾燥するため、D50及びD10が小さい活物質が得られる傾向にある。一方、比較例3のように吹き付け温度が低い場合、複数の粒子が或る程度結着した後に溶媒が乾燥するため、D50及びD10が大きな活物質が得られる傾向にある。
以上に述べた少なくとも1つの実施形態及び実施例によると、活物質が提供される。活物質は、複合粒子を含む。複合粒子は、複数のニオブチタン複合酸化物粒子と、複数のニオブチタン複合酸化物粒子の少なくとも一部を被覆する被覆層とを含む。被覆層は固体電解質を含む。活物質についてのレーザー回折散乱法による粒度分布測定により決定されるメジアン径D50は3.0μm~10.0μmの範囲内にあり、D10は0.7μm~5.0μmの範囲内にある。この活物質は、優れた体積エネルギー密度及びサイクル寿命特性を実現できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。