以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同一または類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。なお、各図は実施形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる点があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜設計変更することができる。
[第1の実施形態]
第1の実施形態によると、ニオブ含有酸化物を含む活物質が提供される。ニオブ含有酸化物は、一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25で表される。上記一般式において、M1は、Al及びSiからなる群より選択される1以上である。M2は、Ta, Ti, Fe, Mo, 及びWからなる群より選択される1以上である。一般式における各添字は、0≦a≦18、0<b≦5、0≦c≦0.5、0≦d≦5の範囲内にそれぞれある。
係る活物質は、電池用活物質であり得る。該活物質は、例えば、リチウムイオン電池や非水電解質等の二次電池の電極に用いられる電極活物質であり得る。より具体的には、活物質は、例えば、二次電池の負極に用いられる負極活物質であり得る。
一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25(M1:Al及び/又はSi;M2:Ta, Ti, Fe, Mo, Wのうち1以上;0≦a≦18、0<b≦5、0≦c≦0.5、0≦d≦5)で表されるニオブ含有酸化物は、0V以上2.5V以下(vs.Li/Li+)程度の広い電位範囲でリチウム挿入脱離電位を有することができる。それにより、例えば、係る活物質を負極活物質として用いた場合に平均作動電位を低めても、安定した繰り返し充放電性能を示すことができる二次電池を実現することができる。
上記一般式で表されるニオブ含有酸化物は、化学式PNb9O25で表されるニオブ含有酸化物にカリウム(K)を導入した化合物であり得る。上記M1元素および/又はM2元素を含む場合、つまり一般式において添字cが0より大きい及び/又は添字dが0より大きい場合は、係るニオブ含有酸化物は、PNb9O25にKを導入するとともにPをM1元素で置換および/又はNbをM2元素で置換した置換酸化物であり得る。
また、上記一般式で表されるニオブ含有酸化物は、以下に詳細に説明する理由により、安定した繰り返し充放電性能だけでなく、高いエネルギー密度を示すことができる二次電池を実現することができる。
一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25(元素M1及びM2、並びに添字a乃至dは上述したとおり)で表されるニオブ含有酸化物の一例として、ニオブ含有酸化物KP0.9Si0.1Nb8TiO25の結晶構造の模式図を、図1に示す。
図1に示すように、ニオブ含有酸化物KP0.9Si0.1Nb8TiO25の結晶構造10は、NbO6を代表とする八面体11と、PO4を代表とする四面体12とを含む。結晶構造10は、角共有された八面体11が3×3×∞の酸化レニウム型の構造ブロック15を形成し構成する骨格構造を有する。それぞれの構造ブロック15は、四面体12を介して隣接の4つの構造ブロック15と頂点共有する。また、それぞれの構造ブロック15が含む八面体11は、4つのさらに他の隣接構造ブロックが含む八面体11と辺共有する。このように、当該結晶構造10は、Wadsley-Roth相に属する酸化レニウム型結晶構造を有する。
八面体11が含む金属イオンには、NbのほかTa, Ti, Fe, Mo, 及びWから選ばれる少なくとも1つの金属元素をランダムに配置することができる。つまり八面体11には、NbO6八面体の他、M2O6八面体が含まれ得る。同様に四面体12が含む金属イオンには、Al及びSiから選ばれる少なくとも1つの金属元素をランダムに配置することができる。つまり四面体12には、PO4四面体の他、M1O4四面体が含まれ得る。ニオブ含有酸化物KP0.9Si0.1Nb8TiO25の結晶構造10においては、八面体11の金属イオンとしてNbとTiが8:1の割合でランダムに含まれ、四面体12の金属イオンとしてPとSiが9:1の割合でランダムに含まれる。
ニオブ含有酸化物KP0.9Si0.1Nb8TiO25の結晶構造10の骨格構造を形作る八面体11からなる構造ブロック15は、四面体12を介して頂点共有している群ごとに、三次元的に交互に配置されている。それにより、ニオブ含有酸化物KP0.9Si0.1Nb8TiO25の結晶構造10には、八面体11同士の間に酸化物イオンで囲まれた空隙部分13(Type III)及び四面体12を介して出来た空隙部分16(Type VI)が存在している。
一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25におけるK並びに元素M1及びM2を含まないニオブ含有酸化物PNb9O25は、図1に示す結晶構造10と類似する結晶構造を有している。当該PNb9O25では、PO4の共有結合が強固であるため、Type VIの空隙部分16が広がりにくい。そのことから、Type VIの空隙部分16はリチウム(Li)拡散チャネルとして機能しにくく、結晶内のLi拡散は構造ブロック15の長尺方向に沿ってType IIIの空隙部分13が連なったトンネルにおける1次元方向への拡散にほとんど限定されている。そのため、Kを含まないPNb9O25を電極に用いた電池では充放電速度が遅く、当該酸化物の容量の不可逆性も大きい。
実施形態に係る活物質が含むニオブ含有酸化物の一例であるKP0.9Si0.1Nb8TiO25では、Kの存在により、PO4四面体の共有結合が弱められている。KがPO4周辺の空隙(空隙部分16)に配置されることで、KがPO4周辺の酸化物イオンの配位を引き付ける効果とP-O間の結合距離を広げる効果とが得られる。これらの効果により、PO4四面体の共有結合を有効に弱めることができる。
加えて、Pの一部をAl及び/又はSi(M1)で置換することで、四面体12の結合をさらに弱めることができる。Si-O結合やAl-O結合は、P-O結合に比べイオン結合性が高く、共有結合性が低い。そのため、Al及び/又はSiによるPの置換をKの導入と組み合わせることで、四面体12の結合を複合的に弱めることができる。
結果として、NbO6八面体11で構成される3×3×∞ ReO3型の構造ブロック15の角にて各ブロックをつなぐ四面体12の周囲の空隙部分16をLiイオンがすり抜けやすくなり、ReO3型の構造ブロック15間でLiイオンによる空隙部分13の行き来がしやすくなる。即ち、四面体12で角がつながった構造ブロック15間の2次元方向への拡散が容易になるため、この2次元の拡散面と交差する空隙部分13のトンネル内の1次元方向への拡散と併せて、結晶構造10内でLiイオンが3次元的に拡散できるようになる。
さらには、電極電位を低め、Liイオンを空隙部分13中に多く取り込むと格子歪が生じやすくなる。Kを含まないPNb9O25では、PO4の共有結合が強固であるために結晶格子が硬く、格子歪により破損が生じやすく、電位の低い領域では結晶構造を安定化することが困難であった。上記一般式で表すようにKを含んだニオブ含有酸化物では、前述のようにPO4の結合性が弱められてることで、結晶格子の柔軟性を向上し、格子歪を緩和することができる。
このとおり、結晶構造10中のリチウムイオンの拡散が容易な3次元的なチャネルを有することよって、リチウムホストとなる空隙へのリチウムイオンの挿入脱離性が向上すると共に、PO4の結合を弱めることでリチウムイオンの挿入脱離空間が実効的に増加する。このような複合酸化物を含むことにより、第1の実施形態に係る活物質は、高い容量と低い負極電位においても優れた充放電安定性を示すことができる二次電池を提供することが可能となる。
ニオブ含有酸化物に導入されたKは、四面体12と隣接する空隙部分16のみならず、八面体11から構成される構造ブロック15内のType IIIの空隙部分13にも位置し得る。ニオブ含有酸化物を電極活物質として含んだ二次電池の充電または放電に伴って結晶構造10へのリチウムイオンが脱離しても、KはType IIIの空隙部分13及びType VIの空隙部分16の中に留まる。このように、これらの空隙の一部にKが固定化されることで、構造ブロック15の骨格をより安定に維持できる。また、Li挿入サイトとして働くことのできるType IIIの空隙部分13及びType VIの空隙部分16の一部にKがこのように固定化されることで、不可逆的に挿入されるLiを少なくできる。これらのことからも、優れた繰り返し充放電性能が得られる。
図1に示す結晶構造10は、International Tables for Crystallography(非特許文献2)、具体的には、当該資料のVol.A: Space-group symmetry(第2オンライン版(2016);ISBN: 978-0-470-97423-0、 doi: 10.1107/97809553602060000114)に記載の空間群I 4-またはそれに類する対称性(I 4/m, I 4)を持つ。第1の実施形態に係る活物質が含むニオブ含有酸化物は、空間群I4-, I4/m, 及びI4からなる群より選択される1以上の対称性に属する結晶系を有する(I4-はInternational Tables for CrystallographyのNo.82、I4/mは同No.87、及びI4は同No.79)。
さらに、本実施形態に係る活物質が含む、一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25(M1はAl及び/又はSi、0≦a≦18、0<b≦5、0≦c≦0.5、0≦d≦5)で表されるニオブ酸化物は、Ta, Ti, Fe, Mo, 及びWから選ばれる少なくとも1つの元素(M2)を含むことができる。以下に説明するように、これら元素M2を含む場合に、係る活物質はさらに高い容量を示すことができる二次電池を実現することができる。上記元素M2を含まないPNb9O25では電子伝導性が著しく低いため、電子移動が律速になることが原因で、速やかに充放電を行うことが困難であった。ニオブ複合酸化物が、NbサイトにTa, Ti, Fe, Mo, 及びWのうち少なくとも1つの元素を含む場合に、結晶中のフェルミ準位を変化させることができる。これにより、良好な電子伝導性を付与することができる。
第1の実施形態に係る活物質が負極活物質として用いられる場合、上記一般式で表される複合酸化物は、完全放電状態では、リチウムを理論上含んでいない。しかしながら、実際には、上記一般式で表される複合酸化物には、放電状態でも、リチウムが残留していることがある。第1の実施形態に係る活物質は、リチウムが残留していても、低い負極電位において高い容量と優れた充放電安定性とを示すことができる二次電池を実現できるものである。
一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25(M1=Al及びSiのうち1以上、M2=Ta, Ti, Fe, Mo, Wのうち1以上、0≦a≦18、0<b≦5、0≦c≦0.5、0≦d≦5)で表されるニオブ酸化物は化学式あたり、最大で9個の5価のカチオンを有する。5価のカチオンは最大で3価まで還元されるため、理論上、ニオブ含有酸化物LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25には、単位結晶構造中に最大18個のリチウムイオンを挿入することが可能である。そのため、該一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25において添字aは、充放電状態に依存して、0以上18以下の範囲にある値をとることができる。
また、一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25で表されるニオブ含有酸化物は、-0.3以上0.3以下の範囲内に在る添字δをさらに加えた一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25+δ(M1及びM2はそれぞれ上述のとおり;0≦a≦18、0<b≦5、0≦c≦0.5、0≦d≦5及び-0.3≦δ≦0.3)で表すことができる。添字δは、ニオブ含有酸化物LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25におけるNbを含めた構成元素の価数の変化、及びそれに起因する式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25からの化学量論比のずれを示している。添字δは、ニオブ含有酸化物の還元状態によって変動し得る。一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25+δで表され添字δが-0.3未満であるニオブ含有酸化物は、構成元素であるNb及び/又は他の還元可能な元素が過剰に還元されている状態にある。このようなニオブ含有酸化物は、電池に用いた場合に電極容量が著しく低くなり、高い容量を示す電池を実現することができない。一方、δ=+0.3までは、表面の吸着酸素や水分の影響を受けることで起こる測定誤差範囲内と考えられる。
次に、第1の実施形態に係る活物質についての形態、粒子径及び比表面積を説明する。
<形態>
第1の実施形態に係る活物質の形態は、特に限定されない。例えば、第1の実施形態に係る活物質は、一次粒子の形態をとることもできるし、一次粒子が凝集してなる二次粒子の形態をとることもできる。
係る活物質は、上述したニオブ含有酸化物の粒子や粉末からなる材料であり得る。該ニオブ含有酸化物が活物質の50質量%以上100質量%以下を占めることが望ましい。
<粒子径>
第1の実施形態に係る活物質の平均粒子径は、特に制限されず、所望の電池性能に応じて変化させることができる。
<BET比表面積>
第1の実施形態に係る活物質のBET比表面積は、特に制限されない。しかしながら、BET比表面積は、5m2/g以上、200m2/g未満であることが好ましい。
比表面積が5m2/g以上であれば、二次電池に用いた際の活物質と電解質との接触面積を確保することができる。それにより、良好な放電レート性能が得られやすく、また充電時間を短縮できる。一方、比表面積が200m2/g未満であれば、活物質と電解液との間の反応性が高くなり過ぎず、寿命性能を向上させることができる。また、後述する電極の製造に用いる、活物質を含むスラリーの塗工性を良好なものにすることができる。
ここで、比表面積の測定は、粉体粒子表面に吸着占有面積が既知である分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法を用いる。最も良く利用されるのが不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法である。このBET法は、単分子層吸着理論であるLangmuir理論を多分子層吸着に拡張した、比表面積の計算方法として最も有名な理論であるBET理論に基づく方法である。これにより求められた比表面積のことを、BET比表面積と称する。
<製造方法>
本実施形態に係る活物質は、以下の方法により製造することができる。
まず、出発原料を混合する。ニオブ含有酸化物のための出発原料として、構成元素を含む酸化物又は塩を用いる。出発原料として用いる塩は、炭酸塩及び硝酸塩のような、比較的低温で分解して酸化物を生じる塩であることが好ましい。例えば、Pの出発原料としてはリン酸二水素アンモニウムを用いることができる。
出発原料は、目的組成となるような元素比で混合する。次に、得られた混合物を粉砕し、できるだけ均一な混合物を得る。次いで、得られた混合物を仮焼成する。仮焼成では、混合物試料をリン酸塩の分解温度よりやや高い200℃で2時間加熱したのち、加熱試料を電気炉から取り出して再混合粉砕したのち、650℃で1時間以上2時間以下の焼成を行う。続いて、本焼成を行う。本焼成は、800℃以上1000℃以下の温度範囲で、2回以上に分けて合計10時間以上40時間以下行う。焼成後はリンの蒸散による組成ずれを防ぐため、焼成粉を電気炉から速やかに取り出して冷却する。取り出した粉末をボールミル等の粉砕装置で粉砕する。次に、粉砕により生じた結晶のダメージを補修するため、焼成温度以下の温度でアニール処理を実施する。温度としては500℃以上700℃以下1時間以上5時間以下加熱する。焼成時と同様に、熱処理後は速やかに電気炉から取り出して室温まで冷却する。これにより目的となるニオブ含有酸化物を含む活物質を得ることができる。
なお、上記方法により合成されたニオブ含有酸化物には、電池を充電することによりリチウムイオンが挿入されてもよい。或いは、炭酸リチウムのようなリチウムを含む化合物を出発原料として用いることにより、リチウムを含む複合酸化物としてニオブ含有酸化物が合成されてもよい。
以上に説明した方法は、酸素欠損を抑える処理、及び/又はアニールなどの酸素欠損を修復する処理により、Nb及び/又は5価の構成元素のうち還元されている部分を0(ゼロ)に近づけることができる。更に、PO4の結合を弱めたことによる初期の四面体歪を極力抑えることができる合成手法である。
<測定方法>
以下、複合酸化物の測定方法を説明する。具体的には、粉末X線回折測定、透過電子顕微鏡-電子エネルギー損失分光測定、及び誘導結合プラズマ発光分光測定を説明する。
測定する対象の活物質が電池に含まれている場合は、例えば、次に説明する方法により測定試料を電池から取り出す。
まず、活物質からリチウムイオンが完全に離脱した状態にする。例えば、該活物質が負極において用いられている場合、電池を完全に放電状態にする。完全な放電状態とするためには、負極電位として3.0V(vs.Li/Li+)として定電流-定電圧(CC-CV)モードで、電流値が1/20Cに相当するまで放電を継続する。これにより、活物質の結晶状態を観察することができる。但し、放電状態でも残留したリチウムイオンが存在することもある。次に、アルゴンを充填したグローブボックス中で電池を分解して電極を取り出す。次いで、取り出した電極を適切な溶媒で洗浄する。洗浄用の溶媒としては、例えば、エチルメチルカーボネートなどを用いることができる。
(活物質中の結晶構造の確認方法)
活物質に含まれる化合物の結晶構造は、活物質の粉末X線回折(X‐Ray Diffraction:XRD)測定により、確認することができる。
活物質の粉末X線回折測定は、次のように行う。
まず、対象試料を平均粒子径が5μm程度となるまで粉砕する。平均粒子径はレーザー回折法によって求めることができる。粉砕した試料を、ガラス試料板上に形成された深さ0.2mmのホルダー部分に充填する。このとき、試料が十分にホルダー部分に充填されるように留意する。また、試料の充填不足によりひび割れ、空隙等がないように注意する。次いで、外部から別のガラス板を使い、充分に押し付けて平滑化する。この際、充填量の過不足により、ホルダーの基準面より凹凸が生じることのないように注意する。次いで、試料が充填されたガラス板を粉末X線回折装置に設置し、Cu-Kα線を用いてX線回折(XRD:X-ray Diffraction)パターンを取得する。
なお、試料の粒子形状により粒子の配向が大きくなる場合がある。試料の配向性が高い場合は、試料の充填の仕方によってピークの位置がずれたり、強度比が変化したりする可能性がある。このように配向性が著しく高い試料は、ガラスキャピラリを用いて測定する。具体的には、試料をキャピラリに挿入し、このキャピラリを回転式試料台に載置して測定する。このような測定方法により、配向性による影響を緩和することができる。ガラスキャピラリとしては、例えば、直径1mm~6mmφのリンデマンガラス製キャピラリを用いることができる。
電極材料として電池に含まれている活物質については、以下のように測定することができる。
先ず、先に説明したとおり、電池を完全放電し、電極を取り出して洗浄する。次に、洗浄した電極を、粉末X線回折装置のホルダーの面積とほぼ同じ面積に切断し、測定試料とする。このようにして得られた試料をガラスホルダーに直接貼り付けて測定する。このとき、金属箔などの電極基板に由来するピークの位置を予め測定しておく。また、導電剤や結着剤などの他の成分のピークも予め測定しておく。基板のピークと活物質のピークとが重なる場合、基板から活物質が含まれる層(例えば、後述する活物質含有層)を剥離して測定に供することが望ましい。これは、ピーク強度を定量的に測定する際、重なったピークを分離するためである。例えば、溶媒中で電極に超音波を照射することにより活物質含有層を剥離することができる。もちろん、これらを事前に把握できているのであれば、この操作を省略することができる。
次に、活物質含有層をキャピラリに封入し、回転試料台に載置して測定する。このような方法により、配向性の影響を低減したうえで、活物質のXRDパターンを得ることができる。
粉末X線回折測定の装置としては、例えばRigaku社製SmartLabを用いる。測定条件は以下の通りとする:
X線源:Cuターゲット
出力:45kV、200mA
ソーラスリット:入射及び受光共に5°
ステップ幅(2θ):0.02deg
スキャン速度:20deg/分
半導体検出器:D/teX Ultra 250
試料板ホルダー:平板ガラス試料板ホルダー(厚さ0.5mm)
測定範囲:5°≦2θ≦90°。
その他の装置を使用する場合は、粉末X線回折用標準Si粉末を用いた測定を行って、上記装置によって得られる結果と同等のピーク強度、半値幅及び回折角の測定結果が得られる条件を見つけ、その条件で試料の測定を行う。
XRD測定の条件は、リートベルト解析に適用できるXRDパターンを取得できる条件とする。リートベルト解析用のデータを収集するには、具体的にはステップ幅が回折ピークの最小半値幅の1/3-1/5となるようにし、最強度反射のピーク位置における強度が5000cps以上となるように適宜、測定時間またはX線強度を調整する。
このようにして得られたXRDパターンを、リートベルト法によって解析する。リートベルト法では、あらかじめ推定した結晶構造モデルから回折パターンを計算する。この計算値と実測値とを全てフィッティングすることにより、結晶構造に関するパラメータ(格子定数、原子座標、占有率等)を精密に分析することができる。これにより、測定対象の活物質に含まれる化合物の結晶構造の特徴を調べることができる。また、以上に説明した粉末X線測定によると、ニオブ含有酸化物LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25に加え、類似の構成元素を含む酸化物及びTiO2など他の結晶構造を持つ化合物との多相共存状態についても調べることができる。
活物質試料が複数種類の活物質を含んでいる場合は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy;TEM)に電子エネルギー損失分光法(Electron Energy-Loss Spectroscopy;EELS)を組み合わせたTEM‐EELSを用いて行う。対象活物質試料に電子線回折を行い、それぞれの結晶構造から相を同定する。対象とするLiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25に対するEELS測定により、各々の構成元素の価数も調べることができる。
(活物質の組成の確認方法)
活物質の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma;ICP)発光分光法を用いて確認することができる。ICP発光分光法は、以下の手順に従って行う。
洗浄後の電極を乾燥させ、該電極から次のようにして粉末試料を準備する。活物質含有層を集電体から剥がし、乳鉢ですりつぶす。すりつぶした試料を酸で溶解して、液体サンプルを調製する。このとき、酸としては塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素などを使用できる。この液体サンプルをICP発光分光分析に供することで、測定対象の活物質に含まれていた元素の濃度を知ることができる。
第1の実施形態によると、活物質が提供される。この活物質は、一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25で表されるニオブ含有酸化物を含む。ここで、M1は、Al及びSiからなる群より選択される1以上の元素である。M2は、Ta, Ti, Fe, Mo, 及びWからなる群より選択される1以上の元素である。添字aは0≦a≦18の範囲内にあり、添字bは0<b≦5の範囲内にあり、添字cは0≦c≦0.5の範囲内にあり、そして添字dは0≦d≦5の範囲内にある。それにより、第1の実施形態に係る活物質は、低い負極電位において安定性に優れた充放電性能と高いエネルギー密度とを示す二次電池を実現することができる。従って、該活物質を用いることにより、高いエネルギー密度、優れた出力性能、及び優れたサイクル寿命性能を示す二次電池を提供することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態によると、電極が提供される。
第2の実施形態に係る電極は、第1の実施形態に係る活物質を含む。この電極は、第1の実施形態に係る活物質を電池用活物質として含む電池用電極であり得る。電池用電極としての電極は、例えば、第1の実施形態に係る活物質を負極活物質として含む負極であり得る。或いは、電極は、第1の実施形態に係る活物質を正極活物質として含む正極であり得る。
第2の実施形態に係る電極は、集電体と活物質含有層とを含むことができる。活物質含有層は、集電体の片面又は両面に形成され得る。活物質含有層は、活物質と、任意に導電剤及び結着剤とを含むことができる。
活物質含有層は、第1の実施形態に係る活物質を単独で含んでもよく、第1の実施形態に係る活物質を2種類以上含んでもよい。さらに、第1の実施形態に係る活物質を1種又は2種以上と、更に1種又は2種以上の他の活物質とを混合した混合物を含んでもよい。第1の実施形態に係る活物質と他の活物質との総質量に対する第1の実施形態に係る活物質の含有割合が50質量%以上100質量%以下であることが望ましい。
例えば、第1の実施形態に係る活物質を負極活物質として含む場合は、他の活物質の例には、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+xTi3O7、0≦x≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi5O12、0≦x≦3)、単斜晶型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物、直方晶型(orthorhombic)チタン複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタン複合酸化物が挙げられる。
上記直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+eM32-fTi6-gM4hO14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。M4はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦e≦6、0≦f<2、0≦g<6、0≦h<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+eNa2Ti6O14(0≦e≦6)が挙げられる。
上記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LixTi1-yM5yNb2-zM6zO7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M5は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M6は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、LixTi1-yM7y+zNb2-zO7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M7は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x<5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。また、導電剤を用いると共に活物質表面に炭素や導電性材料を被覆することで、活物質含有層の集電性能を向上させることもできる。
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
活物質含有層中の活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、電極の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、電極を二次電池の負極として用いる場合は、活物質(負極活物質)、導電剤及び結着剤を、それぞれ、68質量%以上96質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
活物質表面を炭素や導電性材料で被覆する場合、被覆材量は導電剤量に含めたものとみなすことができる。炭素または導電性材料による被覆量は、0.5質量%以上5質量%以下であることがこのましい。この範囲の被覆量であれば、集電性能と電極密度を高められる。
集電体は、活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。例えば、活物質が負極活物質として用いられる場合は、集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
また、集電体は、その表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、負極集電タブとして働くことができる。
電極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、電極を作製する。
或いは、電極は、次の方法により作製してもよい。まず、活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、電極を得ることができる。
第2の実施形態に係る電極は、第1の実施形態に係る活物質を含んでいる。そのため、第2の実施形態に係る電極は、高いエネルギー密度、優れた出力性能、及び優れたサイクル寿命性能を示す二次電池を実現することができる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態によると、負極と、正極と、電解質とを含む二次電池が提供される。この二次電池は、負極、正極、又は負極および正極の両方として、第2の実施形態に係る電極を含む。つまり、第3の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る活物質を電池用活物質として含む電極を、電池用電極として含む。望ましい態様の二次電池は、負極として、第2の実施形態に係る電極を含む。つまり、望ましい態様の二次電池は、第1の実施形態に係る活物質を電池用活物質として含む電極を、負極として含む。以下、望ましい態様を説明する。
第3実施形態に係る二次電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。負極、正極及びセパレータは、電極群を構成することができる。電解質は、電極群に保持され得る。
また、第3の実施形態に係る二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
さらに、第3の実施形態に係る二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
第3の実施形態に係る二次電池は、例えばリチウム二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
以下、負極、正極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
1)負極
負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極集電体及び負極活物質含有層は、それぞれ、第2の実施形態に係る電極が含むことのできる集電体及び活物質含有層であり得る。負極活物質含有層は、第1の実施形態に係る活物質を負極活物質として含む。
負極の詳細のうち、第2の実施形態について説明した詳細と重複する部分は、省略する。
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
負極は、例えば、第2の実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
2)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y≦1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの挿入脱離サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
正極は、例えば、正極活物質を用いて、第2の実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
3)電解質
電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO2F)2;LiFSI)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。
或いは、非水電解質の代わりに、液状水系電解質又はゲル状水系電解質を電解質として用いることができる。液状水系電解質は、溶質として、例えば、上記電解質塩を水系溶媒に溶解することにより調製される。ゲル状水系電解質は、液状水系電解質と上記高分子材料とを複合化することにより調製される。水系溶媒としては、水を含む溶液を用い得る。水を含む溶液とは、純水であってもよく、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は1質量%以下であることが好ましい。
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
6)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のLi挿入脱離電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
次に、第3の実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
図2は、第3の実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図である。図3は、図2に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。
図2及び図3に示す二次電池100は、図2に示す電極群1と、図2及び図3に示す袋状外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
図2に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、図3に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、図3に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
図2に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
第3の実施形態に係る二次電池は、図2及び図3に示す構成の二次電池に限らず、例えば図4及び図5に示す構成の電池であってもよい。
図4は、第3の実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。図5は、図4に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
図4及び図5に示す二次電池100は、図4及び図5に示す電極群1と、図4に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
電極群1は、図5に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分3cを含む。この部分3cは、負極集電タブとして働く。図5に示すように、負極集電タブとして働く部分3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ(部分3c)は、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)と同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)に対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
第3の実施形態に係る二次電池は、第2の実施形態に係る電極を含んでいる。つまり第3の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る活物質を含む電極を含んでいる。そのため、第3の実施形態に係る二次電池は、高いエネルギー密度、優れた出力性能、及び優れたサイクル寿命性能を示すことができる。
[第4の実施形態]
第4の実施形態によると、組電池が提供される。第4の実施形態に係る組電池は、第3の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
第4の実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
次に、第4の実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
図6は、第4の実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図6に示す組電池200は、5つの単電池100a~100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a~100eのそれぞれは、第3の実施形態に係る二次電池である。
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図6の組電池200は、5直列の組電池である。例を図示しないが、電気的に並列に接続されている複数の単電池を含む組電池では、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとともに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電池が電気的に接続され得る。
5つの単電池100a~100eのうち少なくとも1つの電池の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に電気的に接続されている。また、5つの単電池100a~100eうち少なくとも1つの電池の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に電気的に接続されている。
第4の実施形態に係る組電池は、第3の実施形態に係る二次電池を具備する。従って、高いエネルギー密度、優れた出力性能、及び優れたサイクル寿命性能を示すことができる。
[第5の実施形態]
第5の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第4の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第4の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第3の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
第5の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
また、第5の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、第5の実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
図7は、第5の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図8は、図7に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
図7及び図8に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
図7に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
複数の単電池100の少なくとも1つは、第3の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、図8に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
正極側リード22の一端は、組電池200に接続されている。正極側リード22の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続されている。負極側リード23の一端は、組電池200に接続されている。負極側リード23の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続されている。
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200の一側面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
正極側コネクタ342に、正極側リード22の他端22aが電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード23の他端23aが電気的に接続されている。
サーミスタ345は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路346に送信する。
通電用の外部端子350は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350は、正側端子352と負側端子353とを含む。
保護回路346は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348bを介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
なお、保護回路346としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子350の正側端子352と負側端子353としてそれぞれ用いてもよい。
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
第5の実施形態に係る電池パックは、第3の実施形態に係る二次電池又は第4の実施形態に係る組電池を備えている。従って、高いエネルギー密度、優れた出力性能、及び優れたサイクル寿命性能を示すことができる。
[第6の実施形態]
第6の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第5の実施形態に係る電池パックを搭載している。
第6の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構(Regenerator:再生器)を含んでいてもよい。
第6の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
第6の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
第6の実施形態に係る車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、それぞれの電池パックが含む電池同士は、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。例えば、各電池パックが組電池を含む場合は、組電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、又は電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。或いは、各電池パックが単一の電池を含む場合は、それぞれの電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
次に、第6の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図9は、第6の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図である。
図9に示す車両400は、車両本体40と、第5の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図9に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300が含む電池(例えば、単電池または組電池)は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
図9では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
次に、図10を参照しながら、第6の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
図10は、第6の実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図である。図10に示す車両400は、電気自動車である。
図10に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位の制御装置である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図10に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a~300cは、前述の電池パック300と同様の電池パックであり、組電池200a~200cは、前述の組電池200と同様の組電池である。組電池200a~200cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
組電池200a~200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第3の実施形態に係る二次電池である。組電池200a~200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
電池管理装置411は、組電池監視装置301a~301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a~200cに含まれる単電池100のそれぞれについて電圧及び温度などに関する情報を収集する。これにより、電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を収集する。
電池管理装置411と組電池監視装置301a~301cとは、通信バス412を介して接続されている。通信バス412では、1組の通信線が複数のノード(電池管理装置411と1つ以上の組電池監視装置301a~301cと)で共有されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置301a~301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a~200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との間の電気的な接続の有無を切り替える電磁接触器(例えば図10に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a~200cへの充電が行われるときにオンになるプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、組電池200a~200cからの出力が負荷へ供給されるときにオンになるメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチ及びメインスイッチのそれぞれは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフに切り替わるリレー回路(図示せず)を備えている。スイッチ装置415等の電磁接触器は、電池管理装置411又は車両400全体の動作を制御する車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411又は車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。インバータ44が制御されることにより、インバータ44からの出力電圧が調整される。
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。駆動モータ45の回転によって発生する駆動力は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構(リジェネレータ)を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。変換された直流電流は、車両用電源41に入力される。
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子417に接続されている。接続ラインL1には、負極端子414と負極入力端子417との間に電池管理装置411内の電流検出部(電流検出回路)416が設けられている。
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子418に接続されている。接続ラインL2には、正極端子413と正極入力端子418との間にスイッチ装置415が設けられている。
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置411を含む他の管理装置及び制御装置とともに車両用電源41、スイッチ装置415、及びインバータ44等を協調制御する。車両ECU42等の協調制御によって、車両用電源41からの電力の出力及び車両用電源41の充電等が制御され、車両400全体の管理が行われる。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
第6の実施形態に係る車両は、第5の実施形態に係る電池パックを搭載している。従って、高性能であり、且つ信頼性の高い車両を提供することができる。
[実施例]
以下、実施例に基づいて上記実施形態をさらに詳細に説明する。
<合成方法>
(実施例1-14)
各例について、以下の手順で下記表1における「化学式」の列に示している化合物を合成した。
まず、出発原料として、市販の酸化物試薬であるTiO2、Nb2O5、Fe2O3、MoO3、WO3、Al2O3、SiO4、NH4H2PO4、及びLi2CO3を準備した。これらの粉末を、表に示した「化学式」の列に記載している化合物の構成モル比となるように混合した粉末を乳鉢中に投入した。この乳鉢にエタノールを添加し、1時間に亘り湿式混合を行った。
次に、得られた混合物を電気炉に入れ、200℃の温度で2時間に亘り加熱したのち、650℃の温度で1時間に亘り仮焼成を行った。仮焼成に供した後の粉末を、乳鉢で1時間に亘り粉砕し、再度電気炉に入れて、900℃の温度で12時間に亘る本焼成を2回行った。これにより、本焼成の合計時間は、延べ24時間であった。本焼成後は速やかに室温まで冷却したのち、ボールミル(メノウ製ボール10mm、900rpm)を用いて平均粒子径D50=2μm前後となるまで約2時間粉砕を行った。粉砕した粉末に対し、500℃で1時間アニール処理をすることで、結晶性の修復を行った。
(比較例1)
組成式がTiNb2O7である単斜晶構造の複合酸化物を以下の手順で合成した。出発原料として、市販の酸化物試薬であるNb2O5及びTiO2を使用した。これらの原料粉末を1:1のモル比となるように秤量し、乳鉢で混合した。得られた混合物を電気炉に入れ、1200℃の温度で2時間に亘って焼成した。こうして、比較例1に係る活物質粉末を得た。
(比較例2)
非特許文献1(Journal of The Electrochemical Society, 149 (4) A391-A400 (2002))に記載されているゾル-ゲル法に基づいてPNb9O25で表されるニオブ含有酸化物を合成した。具体的には、先ず、NbCl5のエタノール溶液およびNH4H2PO4の水溶液を準備した。これらの溶液を、PNb9O25の構成モル比に対しNH4H2PO4の割合が10%過剰となるように混合した。液状の溶液がゲル状の溶液に変化した後、当該溶液を50℃で10時間攪拌して溶媒を蒸発させた。残留した黄色っぽい固形物を、合間に粉砕を行いながら920℃の温度で12時間に亘り焼成した。
(比較例3)
非特許文献1(Journal of The Electrochemical Society, 149 (4) A391-A400 (2002))に記載されている固相法に基づいてVNb9O25で表されるニオブ含有酸化物を合成した。具体的には、先ず、Nb2O5及びV2O5を準備した。これらの粉末をVNb9O25の構成モル比となるように混合し、1100℃で12時間焼成した。焼成後は速やかに室温まで冷却した。
(比較例4及び5)
比較例4及び5については、表1における「化学式」の列に示している組成を目的化合物とした以外は、実施例1-14と同様の方法で合成を行った。
<粉末試料の測定>
実施例1-14及び比較例1-5で各々合成した生成物の粉末について、結晶相の同定、結晶構造の推定及び空間群の決定を、Cu-Kα線を用いた粉末X線回折法により行った。粉末X線回折により、実施例1-14及び比較例2-5で合成された生成物は空間群I4-の対称性に属する結晶構造を有することが分かった。また、生成物の組成をICP法により分析し、表1における「組成」の列に記載の目的物が得られていることを確認した。加えて、TEM-EELS測定を実施して各例に係るNb及び他の構成元素の平均価数を調査した。TEM-EELS測定の結果から、各々の生成物では各構成元素の価数が、表1における「化学式」に示している組成に準じた値をとっていたことを確認した。
なお、粉末X線回折測定、ICP分析、及びTEM-EELSは、第1の実施形態に記載した方法に従って実施した。
下記表1に、実施例1-14及び比較例1-5にて各々合成した生成物の詳細をまとめる。具体的には、合成の際に目的とした組成を「化学式」の列に示し、得られた生成物の測定により確認された組成を「組成:」の列にて一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25における元素M1及びM2の特定、並びに添字の値で示し、空間群I4-の対称性に属する結晶系が確認されたことを「空間群」の列に示す。なお、「組成:」の列における“-”という表記は、該当する元素M1又はM2、或いは添字がないことを意味する。例えば、比較例1で合成したNb2TiO7は上記一般式に当てはめることができないため、添字a乃至dの全てについて“-”と表記している。
<電気化学測定>
(電気化学測定セルの作製)
まず、以下の手順で実施例1-14及び比較例1-5に各々対応した電気化学測定セルを作製した。
各例で得られた生成物粉末を活物質として用い、当該活物質粉末に、導電剤としてアセチレンブラックを混合した。混合比は、活物質100質量部に対してアセチレンブラックを10質量部とした。この混合物をNMP(N-メチル-2-ピロリドン)中に分散した。得られた分散液に、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を混合し、電極スラリーを作製した。PVdFは、活物質100質量部に対して10質量部を用いた。スラリーを、アルミニウム箔から成る集電体の両面にブレードを用いて塗布した。その後、真空下、130℃で12時間に亘り乾燥し、電極を得た。
一方、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比1:1で混合し、混合溶媒を調製した。この混合溶媒中に、六フッ化リン酸リチウムを1Mの濃度で溶解させて非水電解質を調製した。
上記で作製した電極と、対極としての金属リチウム箔と、調製した非水電解質とを用いて、電気化学測定セルを作製した。
(25℃レート性能評価)
作製した各電気化学測定セルを用いて25℃の恒温槽中で充放電試験を行った。リチウムの酸化還元電位を基準として0.05V以上3.0V以下(vs.Li/Li+)の電位範囲で、充放電電流値を0.1C(時間放電率)として行った。これにより、0.1C放電容量を測定した。なお、各電気化学測定セルの内部の温度を一定にするために、充放電試験の前に、セルを25℃恒温槽中に3時間静置した。
更に、25℃の温度で0.1Cで充電を行った後、1Cで放電を行い、1C放電容量を測定した。先に測定した25℃の0.1C放電容量に対する、25℃の1C放電容量の比(1C放電容量[25℃]/0.1C放電容量[25℃]×100%)を算出した。
(45℃繰り返し充放電性能評価)
先の25℃レート測定を行った後、各セルを45℃の恒温槽内に3時間静置した。その後、45℃の温度にて1Cで充放電を50サイクル行った。50サイクル目の充放電の後、電気化学測定セルを25℃の恒温槽に3時間静置したのち、0.1C充放電放電容量を測定した。先に測定した25℃の0.1C放電容量に対する、45℃の50サイクル後の0.1C放電容量の比(0.1C放電容量[50サイクル後]/0.1C放電容量[初回]×100%)を算出した。
以上の電気化学測定の結果を、表2にまとめる。具体的には、電気化学測定セルに用いた各電極の平均作動電位、並びに、各電気化学測定セルについて求められた初回充放電の際の0.1C放電容量、25℃でのレート性能(“1C/0.1C放電容量比”と表記した列)、及び45℃での繰り返し充放電性能(“サイクル容量維持率”と表記した列)を示す。
表2に示すとおり、実施例1-14で合成した粉末を活物質として用いた電気化学測定セルでは、比較例1の粉末を用いた電極と比較して、電極の平均作動電位が低かった。また、実施例1-14に係る電気化学測定セルは、比較例1に係る電気化学測定セルと比較して高いレート性能およびサイクル寿命性能を示した。比較例2-5に係る電気化学測定セルと比較すると、実施例1-14に係る電気化学測定セルは、より優れたレート性能およびサイクル寿命性能を示した。
電気化学測定の結果から、一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25(M1は、Al及び/又はSi;M2は、Ta, Ti, Fe, Mo, 及びWのうち1以上;0≦a≦18、0<b≦5、0≦c≦0.5、0≦d≦5)で表される組成を有するニオブ含有酸化物を含んだ活物質を電極活物質として用いることにより、エネルギー密度が高く、出力性能およびサイクル寿命性能に優れる二次電池が得られることが分かる。
以上説明した1以上の実施形態および実施例によれば、一般式LiaKbP1-cM1cNb9-dM2dO25で表されるニオブ含有酸化物を含む活物質が提供される。一般式において、M1はAl及びSiからなる群より選択される1以上であり、M2はTa, Ti, Fe, Mo, 及びWからなる群より選択される1以上であり、各添字は、0≦a≦18、0<b≦5、0≦c≦0.5、0≦d≦5をそれぞれ満たす。当該活物質を電極活物質として用いることにより、高いエネルギー密度、優れた出力性能、及び優れたサイクル寿命性能を示す二次電池を実現できる電極、高いエネルギー密度、優れた出力性能、及び優れたサイクル寿命性能を示す二次電池および電池パック、並びに、この電池パックを搭載した車両を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。