以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
非水電解質電池について充放電を行うと、電極の活物質含有層において、活物質と非水電解質とが反応して、非水電解質に含まれる溶媒及び電解質塩が、分解することがある。この分解により生じた生成物は、活物質の表面上に堆積して、被膜を形成し得る。この被膜は、不動態の役割を果たし、電極における非水電解質の更なる分解を抑制することができる。しかしながら、リチウムイオンが、この被膜を透過する際には、抵抗が生じる。したがって、この被膜が過剰に厚いと、二次電池の内部抵抗が高まる恐れがある。
ここで、活物質含有層には、活物質同士、又は、活物質と集電体とを結着させるために、結着剤が含まれる。この結着剤は、絶縁性が高い物質である。したがって、活物質において結着剤により被覆された部分は、非水電解質との反応性が低いため、この部分には被膜は形成されないと考えられる。
したがって、活物質表面に良好な被膜を形成するためには、活物質含有層において活物質と結着剤との分散状態が重要である。すなわち、活物質含有層において活物質と結着剤との分散状態が良好でない場合、活物質に設けられる被膜の厚さに偏りが生じて、非水電解質電池の寿命特性を低下させ得る。
ところで、活物質含有層は、活物質粒子と結着剤と任意の導電助剤と分散媒とを含むスラリーを、集電体の少なくとも一方の面に塗布し、この塗布膜を乾燥させることにより形成される。その際、スラリーがゲル化して、含有成分が均一に分散した塗布膜を塗工できないことがある。このような塗布膜から得られた活物質含有層を備えた非水電解質電池について、上述した被膜を形成した場合、良好な被膜が形成されないという問題があることを、本発明者らは見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
[第1の実施形態]
第1の実施形態によると、電極が提供される。電極は、集電体と、活物質含有層とを備える。活物質含有層は、集電体の少なくとも一方の主面上に設けられている。活物質含有層は、活物質と結着剤とを含む。活物質は、下記式(1)を満たす。
9≦I2/I1≦12 (1)
式(1)におけるI1は、全反射測定法による活物質含有層の赤外吸収スペクトルにおいて、波数が1155cm-1以上1200cm-1以下の範囲において最も高い強度を示す第1ピークの強度である。I2は、赤外吸収スペクトルにおいて、波数が1390cm-1以上1410cm-1以下の範囲において最も高い強度を示す第2ピークの強度である。
第1の実施形態に記載の活物質含有層の赤外吸収スペクトルにおいて、1170cm-1付近の波数に現れる第1ピークは、活物質の表面に設けられた非水電解質の分解生成物による被膜に含まれる炭素に由来すると考えられる。また、1400cm-1付近の波数に現れる第2ピークは、活物質の表面に設けられた非水電解質の分解生成物による被膜に含まれる有機物に由来すると考えられる。
これらのピーク強度の比I2/I1が、9以上12以下である活物質含有層を含む電極を備えた非水電解質電池は、優れた寿命特性を実現することができる。すなわち、第1実施形態に記載の活物質含有層に含まれる活物質の表面には、非水電解質の分解を抑制可能な良好な被膜が設けられていると考えられる。そして、ピーク強度の比I2/I1が9以上12以下であることは、このような良好な被膜が設けられた活物質及び結着剤が、活物質含有層において良好な分散状態にあることを示していると考えられる。
第2ピークの強度I1と前記第1ピークの強度I2とのピーク強度の比I2/I1は、10以上11.7以下であることが好ましく、11以上11.7以下であることがより好ましい。
第1ピークの強度I1は、0.01以上0.02以下であることが好ましい。第1ピークの強度I1がこの範囲内にあると、活物質表面に良好な被膜が設けられている傾向にある。第1ピークの強度I1は、0.0105以上0.0125以下であることがより好ましい。
第2ピークの強度I2は、0.12以上0.125以下であることが好ましい。第2ピークの強度I2がこの範囲内にあると、活物質表面に良好な被膜が設けられている傾向にある。第2ピークの強度I2は、0.121以上0.124以下であることがより好ましい。
また、第1の実施形態に記載の活物質含有層は、下記式(2)を満たすことが好ましい。
4≦I4/I3≦5 (2)
上記式(2)において、I3は、第3ピークの強度である。第3ピークは、波数が2880cm-1以上2950cm-1以下の範囲において最も高い強度を示す。第3ピークは、結着剤に含まれる水酸基(−OH)に由来すると考えられる。
第3ピークの強度I3は、0.046以上0.05以下であることが好ましい。第3ピークの強度I3がこの範囲内にあると、活物質表面に良好な被膜が設けられている傾向にある。第3ピークの強度I3は、0.047以上0.049以下であることがより好ましい。
上記式(2)において、I4は、第4ピークの強度である。第4ピークは、波数が3000cm-1以上3700cm-1以下の範囲において最も高い強度を示す。第4ピークは、結着剤に含まれる水酸基(−OH)に由来すると考えられる。
第4ピークの強度I4は、0.205以上0.209以下であることが好ましい。第4ピークの強度I4がこの範囲内にあると、活物質表面に良好な被膜が設けられている傾向にある。第4ピークの強度I4は、0.206以上0.208以下であることがより好ましい。
ピーク強度の比I4/I3が4以上5以下である活物質含有層には、適量の結着剤が含まれていると考えられ、活物質の表面には、非水電解質の分解を抑制可能な良好な被膜が設けられていると考えられる。比I4/I3は、4.2以上4.6以下であることがより好ましい。
活物質含有層に係る赤外吸収スペクトルは、例えば、以下に示す全反射測定法(Attenuated Total Reflection;ATR)法により得ることができる。
先ず、非水電解質電池について、25℃の温度下で、0.2Cの電流で、電池電圧が、例えば、1.5Vに達するまで定電流放電を行い、放電状態、すなわち、SOCを0%の状態にする。なお、複数の非水電解質電池が直列接続された状態で放電状態とする場合には、直列に接続された電池数に1.5をかけて得られる電圧を放電終止電圧とする。例えば、5個の非水電解質電池が直列接続されている場合、7.5Vを放電終止電圧とする。
次いで、放電状態の電池を解体して、電極を取り出す。次いで、この電極を、エチルメチルカーボネートなどに浸漬させて洗浄した後、乾燥させる。なお、これらの作業は、アルゴンガスなどの不活性雰囲気下で行う。
次いで、窒素雰囲気下のグローブボックス内で、乾燥後の電極から、試験片を採取する。なお、グローブボックス内の露点は、−50℃とする。試験片は、例えば、一辺が3mmの正方形状とする。次いで、ATR結晶を備えたATRホルダに、この試験片をセットして、活物質含有層とATR結晶とを圧着させる。ATR結晶は、ゲルマニウム(Ge)結晶を用いる。
次いで、このATRホルダを、グローブボックスから取り出して、FT−IR装置の分光器に取り付ける。この際、活物質含有層は、ATR結晶に圧着されているため、大気と接触しない。次いで、活物質含有層の赤外吸収スペクトルの測定を行う。測定に際しては、分光器を窒素ガスでパージし、ATRモードで行い、積算回数は256回とし、赤外光の入射角は45°とする。
次いで、得られた赤外吸収スペクトルについて、バックグラウンドを除去する補正と、赤外吸収スペクトル中のピークの両端が平坦となるように、ベースライン補正を行う。このようにして、活物質含有層に係る赤外吸収スペクトルを得ることができる。
第1の実施形態に係る電極は、正極であってもよく、負極であってもよい。以下、電極の詳細について説明する。
1)集電体
集電体は、例えば、一方の主面と他方の主面とを備えた帯状の箔である。集電体は、アルミニウム箔又はMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiのような元素を含むアルミニウム合金箔から形成されることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素などの元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1%以下であることが好ましい。
また、集電体は、その表面に活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、集電タブとして働くことができる。
2)活物質含有層
活物質含有層は、集電体の少なくとも一方の面に設けられている。活物質含有層は、集電体の両面に設けられていることが好ましい。
活物質含有層は、活物質と、結着剤と、任意の導電剤とを含んでいる。
活物質含有層において、活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、十分な集電性能を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
2−1)活物質
活物質としては、リチウムチタン複合酸化物、ニオブチタン複合酸化物、及びナトリウム含有ニオブチタン複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つのチタン含有酸化物を含むことが好ましい。
ナトリウム含有ニオブチタン複合酸化物は、例えば、一般式Li2+vNa2-yM1xTi6-y-zNbyM2zO14+δで表される直方晶型(orthorhombic)Na含有ニオブチタン複合酸化物を含む。
上記一般式において、添字vは、直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の充電状態に応じて、0≦v<4の範囲内で変化する。
上記一般式において、M1は、Cs、K、Sr、Ba及びCaからなる群より選択される少なくとも1種である。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Csを含むことにより、より優れたサイクル特性を実現できる。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Kを含むことにより、より優れたサイクル特性を実現できる。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Srを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Baを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Caを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。M1は、Sr又はBaのうち少なくとも1種を含むことがより好ましい。
上記一般式において、添字xは0≦x<2の範囲内の値をとる。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、添字xが2以上になるようにM1を含むと、単相の結晶相を得にくく、さらに固体内のリチウム拡散性が低下して入出力特性が低くなる。添字xは、0.05以上0.2以下の範囲内の値をとることが好ましい。添字xがこの範囲内にある直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、より優れたレート特性を示すことができる。
上記一般式において、添字yは0<y<2の範囲内の値をとる。添字yの値が0よりも大きいと、より高い可逆容量を実現することができる。一方、添字yの値が2以上の場合、単相の結晶相を得にくく、さらに固体内のリチウム拡散性が低下して入出力特性が低くなる。好ましくは0.1≦y≦0.8である。添字yの値が0.1よりも小さい場合、高SOC(State of Charge)での抵抗低減効果を得ることができない。一方、添字yの値が0.8よりも大きい場合、可逆な充放電容量が小さくなり、さらに入出力特性も低下する。添字yは、0.1以上1以下の範囲内の値をとることが好ましい。添字yの値がこの範囲内にある直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、より優れたレート特性を示すことができる。
M2は、Zr、Sn、V、Ta、Mo、W、Fe、Co、Mn及びAlからなる群より選択される少なくとも1種である。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Zrを含むことにより、より優れたサイクル特性を実現できる。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Snを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。V及びTaは、Nbと同様の物理的及び化学的性質を示すことができる。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Moを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Wを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Feを含むことにより、より優れたサイクル特性を実現できる。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Coを含むことにより、より優れたサイクル特性を実現できる。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Mnを含むことにより、より優れたサイクル特性を実現できる。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、Alを含むことにより、より優れたレート特性を実現できる。M2は、Al、Zr、Sn及びVからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。他の好ましい態様では、M2は、Sn、V、Ta、Mo、W、Fe、Co及びMnからなる群より選択される少なくとも1種である。
上記一般式において、添字zは、0≦z<3の範囲内の値をとる。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、添字zの値が3以上になるようにM2を含むと、単相の結晶相を得にくく、さらに固体内のリチウム拡散性が低下して入出力特性が低くなる。添字zは、0.1〜0.3の範囲内の値をとることが好ましい。添字zの値がこの範囲内にある直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、より優れたレート特性を示すことができる。
添字δは、−0.5≦δ≦0.5の範囲内の値をとる。添字δの値が−0.5よりも小さいと、充放電サイクル特性が低下する。一方、添字δの値が0.5よりも大きいと、単相の結晶相を得にくく、不純物が生成しやすい。添字δは、−0.1≦δ≦0.1の範囲内の値をとることが好ましい。添字δの値がこの範囲内にある直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、より優れたレート特性及びより優れたサイクル特性を示すことができる。
直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子は、一次粒子でもよいし、又は一次粒子の凝集体としての二次粒子でもよい。或いは、直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子は、一次粒子と、二次粒子との混合物でもよい。さらに、直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子は、表面に炭素が付着していてもよい。炭素は、一次粒子の表面に付着していてもよいし、二次粒子の表面に付着していてもよい。或いは、直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子は、表面に炭素が付着した一次粒子が凝集してなる二次粒子を含んでいてもよい。このような二次粒子は、一次粒子間に炭素が存在しているため、優れた導電性を示すことができる。このような二次粒子を含む態様は、電極活物質含有層がより低い抵抗を示すことができるので、好ましい。
直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子の平均一次粒子径は、0.5μm以上3μm以下であることが好ましく、0.9μm以上2μm以下であることがより好ましい。直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子の平均二次粒子径は、5μm以上20μm以下であることが好ましく、8μm以上12μm以下であることがより好ましい。これらの好ましい粒子径は、炭素を含まない粒子の粒子径である。炭素を含む粒子については、平均一次粒子径は、0.8μm以上3μm以下であることが好ましく、1μm以上2μm以下であることがより好ましい。平均二次粒子径は、5μm以上25μm以下であることが好ましく、8μm以上15μm以下であることがより好ましい。
直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子が一次粒子と二次粒子との混合物である場合、平均粒子径は3μm以上10μm以下であることが好ましく、4μm以上7μm以下であることがより好ましい。
なお、活物質含有層に含まれる粒子の平均一次粒子径が小さいほど、活物質含有層における細孔直径を小さくすることができる。二次粒子についても同様であり、活物質含有層に含まれる粒子の平均二次粒子径が小さいほど、活物質含有層における細孔直径を小さくできる。また、一次粒子及び/又は二次粒子の粒度分布を調整することにより、活物質含有層の空隙率を調整することができる。例えば、1μm程度の平均粒子径を有する粒子と10μm程度の平均粒子径を有する粒子を活物質含有層に含ませることにより、大きい方の粒子径を有する粒子が形成する空隙を、小さい方の粒子径を有する粒子が埋めることができる。これにより、活物質含有層の空隙率を低減することができる。上記観点から、活物質含有層に含まれる直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、一次粒子と二次粒子との混合物であることが好ましい。このような好ましい態様の電極では、活物質含有層が小さな一次粒子と大きな二次粒子とを含むので、活物質含有層がより小さな空隙率を有することができると共に、さらに直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粒子同士のより高い接触性を実現することができる。
リチウムチタン複合酸化物は、例えば、ラムスデライト構造を有するリチウムチタン複合酸化物(例えばLi2+yTi3O7、0≦y≦3)、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物(例えば、Li4+xTi5O12、0≦x≦3)、及び直方晶型チタン含有複合酸化物を含む。
直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+aM(I)2-bTi6-cM(II)dO14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M(I)は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。M(II)はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、−0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti6O14(0≦a≦6)が挙げられる。
ニオブチタン複合酸化物は、例えば、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物を含む。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LixTi1-yM1yNb2-zM2zO7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z≦2、−0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、Ti1-yM3y+zNb2-zO7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦y<1、0≦z≦2、−0.3≦δ≦0.3である。
負極活物質は、単斜晶型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、及びホランダイト型チタン複合酸化物を含んでいてもよい。
次に、直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の合成方法について説明する。
直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を合成する際、原料の混合比を、各元素が目的組成物の化学量論量で含まれる比とすると、単相の直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物だけでなく、TiO2などの不純物も合成され得る。これは、リチウム及びナトリウムが、熱処理により気化して損失するためであると考えられる。特にリチウムは、その損失による電池特性への影響が大きい。
そこで、従来、原料として混合するリチウムなどの量を化学量論比よりも多くすることが行われている。しかしながら、このような方法では、熱処理を行っても合成に寄与しないリチウムが残留する可能性がある。合成に寄与しなかった余剰のリチウムは、目的組成物の結晶相に取り込まれず、不純物として粒子表面に存在する可能性がある。余剰のリチウムが不純物として粒子表面に存在していると、このリチウムによって粒子表面での電解質分解反応が生じ、電極と電解質との界面抵抗が大きくなる恐れがある。
なお、原料の混合比を目的組成物の化学量論比よりも多くする場合を述べたが、原料の混合比は目的組成物の化学量論比と同一であってもよい。この場合にも、熱処理後に、目的組成物の結晶相に取り込まれていないリチウムが存在し得るため、このようなリチウムが除去されることにより寿命特性が向上する。
直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物は、例えば固相法で合成することができる。或いは、ゾルゲル法又は水熱法など湿式の合成方法により合成することもできる。湿式合成によると、固相法よりも微粒子を容易に得ることができる。
以下、固相法による直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の合成方法の一例を説明する。
まず、目的組成に合わせて、Ti源、Li源、Na源、Nb源、金属元素M1源及び金属元素M2源のうち必要な原料を準備する。これら原料は、例えば、酸化物又は化合物塩であり得る。上記の塩は、炭酸塩及び硝酸塩のような、比較的低温で分解して酸化物を生じる塩であることが好ましい。
次に、準備した原料を、適切な化学量論比で混合して混合物を得る。例えば、組成式Li2Na1.7Ti5.7Nb0.3O14で表される直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を合成する場合、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、水酸化ニオブNb(V)(OH)5とを、混合物におけるLi:Na:Ti:Nbのモル比が2:1.7:5.7:0.3となるように混合する。但し、Li及びNaは、上述したように熱処理により損失する可能性があるため、目的組成の化学量論比よりも多く混合してもよい。特に、Liは、熱処理中に損失することが懸念されるため、目的組成の化学量論比よりも多く混合してもよい。
原料の混合の際、これら原料を十分に粉砕した後に混合することが好ましい。十分に粉砕した原料を混合することで、原料同士が反応しやすくなり、不純物の生成を抑制できる。
次に、先の混合により得られた混合物を、大気雰囲気において、800℃以上1000℃以下の温度で、1時間以上24時間以下の時間に亘って熱処理を行う。800℃未満では十分に結晶化しない可能性がある。1000℃を超えると、粒成長が進み過ぎ、粗大粒子となる可能性があるため好ましくない。また、熱処理時間が1時間未満であると、十分に結晶化しない可能性がある。熱処理時間を24時間より長くすると、粒成長が進み過ぎ、粗大粒子となる可能性があるため好ましくない。
この熱処理は、850℃以上950℃以下の温度で、2時間以上5時間以下の時間に亘って行うことが好ましい。こうして、直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を得ることができる。また、得られた直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を回収後、アニール処理を行ってもよい。
例えば、組成式Li2Na1.7Ti5.7Nb0.3O14で表される直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の場合は、先のように原料を混合して得られた混合物を、大気雰囲気において、900℃で3時間に亘り熱処理することによって得ることができる。
次に、熱処理により得られた直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を、例えば、水溶液を使用した湿式ボールミルによる粉砕に供して、活物質粒子表面を洗浄することが好ましい。この洗浄により、活物質粒子表面に付着している余剰のリチウムを洗い流すことができる。水溶液としては、例えば、酸性水溶液を使用する。酸性水溶液は、例えば、塩酸及び硫酸などを含んだ水溶液である。水溶液の代わりに水を用いてもよい。粒子表面の余剰のリチウムによりpHが上昇するため、十分に洗浄するためには、酸性水溶液を使用するのが好ましい。
上記洗浄は、水溶液を使用しない乾式ミルによる粉砕によっても行うことができる。また、上記洗浄は、直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物を水溶液に浸漬することにより、粉砕することなく行うことができる。なお、上記洗浄工程は省略してもよい。
続いて、洗浄後の活物質粒子を再熱処理に供する。再熱処理により、活物質粒子の表面近傍の組成が結晶化され得る。再熱処理の温度は、例えば500℃以上900℃以下であり、好ましくは、600℃以上700℃以下である。再熱処理の温度が500℃未満では、粒子表面の結晶性が乏しい可能性がある。再熱処理の温度が900℃超であると、粒成長する可能性がある。
2−2)結着剤
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体とを結着させるために配合される。
結着剤は、糖類を含む。糖類は、例えば、天然高分子の多糖類である。糖類は、水酸基を含み、水溶性であることが好ましい。糖類としては、例えば、アルギン酸、又は、アルギン酸の誘導体を用いる。
2−3)導電剤
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
3)製造方法
電極は、例えば、以下の方法により作製することができる。
先ず、上述した活物質の粉末と結着剤の粉末と、任意に導電剤の粉末とを混合して、混合粉末を得る。次いで、これらの混合粉末を、N−メチルピロリドン(NMP)や水などの溶媒に懸濁させてスラリーを得る。このとき、スラリーを35℃以上50℃以下の温度で加熱して、混合粉末を懸濁させる。このスラリーのpHは、9以上12以下であることが好ましく、9.5以上11以下であることがより好ましい。スラリーのpHは、pHメータにより測定することができる。なお、非水溶媒を含むスラリーのpHは、水素イオンの活量の指標となり得る。
次いで、このスラリーをアルミニウム箔などの集電体の片面又は両面に塗布し、塗膜を乾燥させる。次いで、塗膜をプレスすることにより、電極を得る。
あるいは、電極は、次の方法により作製してもよい。まず、活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、電極を得ることができる。
従来の方法では、上記スラリーがゲル化することがあった。これは、上述した活物質に含まれる水酸化物などにより、スラリーのpHが、例えば、12以上に高まることに起因すると考えられる。特に、リチウムチタン複合酸化物及びナトリウム含有ニオブチタン複合酸化物は、スラリー中に水酸化リチウム(LiOH)を放出し得るため、pHを高めやすい。pHの高いスラリーにおいては、スチレンブタジエンゴムやポリフッ化ビニリデンなどの結着剤が重合し易く、その結果、スラリーをゲル化させると考えられる。このようなゲル化したスラリーを用いると、集電体上にスラリーを均一に塗布しにくく、活物質と結着剤と導電剤とが良好に分散した活物質含有層を得られにくい。
ここで、第1実施形態に係る電極は、結着剤として糖類を含み得る。糖類を含むスラリーは、スラリーのpHの高まりを抑制することができる。これは、アルギン酸などの糖類は、スラリー中に放出される水酸化リチウム(LiOH)などを捕集することができるためと考えられる。したがって、結着剤として糖類を含む活物質含有層は、スラリーのゲル化が生じにくく、活物質と結着剤と導電剤とが良好に分散した活物質含有層を形成することができる。
更に、糖類は、非水電解質電池内においても、活物質から放出される水酸化リチウムなどを捕集することができる。これにより、糖類は、非水電解質内の電極においてpHが高まるのを抑制することができる。非水電解質電池の電極において、水酸化物イオンなどが存在していると、非水電解質の分解が生じ易い傾向にある。したがって、糖類を含む電極を用いると、非水電解質電池の寿命特性を高めることができる。
次に、活物質含有層について、第2ピークの強度I2と前記第1ピークの強度I1とのピーク強度の比I2/I1を9以上12以下とする方法について説明する。この方法としては、例えば、非水電解質電池をエージングすることが挙げられる。
具体的には、先ず、上述した電極を含む非水電解質電池を準備する。この非水電解質電池の満充電時の電池電圧は、例えば、3.0Vとする。次いで、この電池を第1エージングに供する。具体的には、先ず、電池を所定の電圧に達するまで充電し、充電後の電池を所定の温度の恒温槽に、所定時間静置する。
第1エージングに際して、電池の電圧は、例えば、1.8V以上2.65V以下、すなわち、SOC0%以上60%以下とし、好ましくは、2.4V以上2.6V以下、すなわち、SOC10%以上55%以下とする。また、エージング温度は、例えば、35℃以上95℃以下とし、好ましくは、50℃以上70℃以下とする。また、エージング時間は、例えば、0.5時間以上48時間以下とし、好ましくは、5時間以上24時間以下とする。第1エージングの時間を長くすると、強度比I2/I1が低まる傾向にある。
次いで、電池の一部を開封して、電池内に発生したガスを外部へと放出するガス抜き処理を行う。なお、この処理は省略してもよい。
次いで、ガス抜き処理後の電池を密閉して、第2エージングに供する。具体的には、電池を所定の電圧に達するまで充電し、充電度の電池を所定の温度の恒温槽に、所定時間静置する。
第2エージングに際して、電池の電圧は、第1エージングの電池電圧よりも高くすることが好ましい。第2エージングの電池の電圧は、例えば、2.7V以上3.0V以下、すなわち、SOC70%以上100%以下とし、好ましくは、2.7V以上2.9V以下、すなわち、SOC70%以上95%以下とする。また、第2エージングの温度は、第1エージングの温度よりも高くすることが好ましい。第2エージングの温度は、例えば、40℃以上120℃以下とし、好ましくは、70℃以上100℃以下とする。また、エージング時間は、例えば、0.5時間以上48時間以下とし、好ましくは、5時間以上24時間以下とする。第2エージングの時間を長くすると、強度比I2/I1が高まる傾向にある。
次いで、電池の一部を開封して、電池内に発生したガスを外部へと放出するガス抜き処理を行う。なお、この処理は省略してもよい。
以上の方法により、第2ピークの強度I2と前記第1ピークの強度I1とのピーク強度の比I2/I1を9以上12以下である活物質含有層を含む電極を得ることができる。
ピーク強度の比I2/I1が、9以上12以下である活物質含有層を含む電極を備えた非水電解質電池は、優れた寿命特性を実現することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態によると、負極と、正極と、非水電解質とを含む非水電解質電池が提供される。この非水電解質電池は、負極として、第1の実施形態に係る電極を含む。
第2の実施形態に係る非水電解質電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。負極、正極及びセパレータは、電極群を構成することができる。非水電解質は、電極群に保持され得る。
また、第2の実施形態に係る非水電解質電池は、電極群及び非水電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
さらに、第2の実施形態に係る非水電解質電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
第2の実施形態に係る非水電解質電池は、例えば、リチウムイオン二次電池を含む。
以下、負極、正極、非水電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
1)負極
負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極集電体及び負極活物質含有層は、それぞれ、第1の実施形態に係る電極で説明した集電体及び活物質含有層であり得る。
負極の詳細のうち、第1の実施形態について説明した詳細と重複する部分は、省略する。
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
2)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、リチウム又はリチウムイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y<1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リン酸鉄リチウム、及びリン酸マンガン鉄リチウムからなる群より選ばれる少なくとも一つのリチウム含有化合物を含むことが更に好ましい。
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
正極は、例えば、正極活物質を用いて、第1の実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
3)非水電解質
非水電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5mol/L以上2.5mol/L以下であることが好ましい。
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
6)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のリチウムイオン吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
次に、第2の実施形態に係る非水電解質電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
図1は、第2の実施形態に係る非水電解質電池の一例を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す非水電解質電池のA部を拡大した断面図である。
図1及び図2に示す非水電解質電池100は、図1に示す袋状外装部材2と、図1及び図2に示す電極群1と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
図1に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、図2に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、図2に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
図1に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
第2の実施形態に係る非水電解質電池は、図1及び図2に示す構成の非水電解質電池に限らず、例えば図3及び図4に示す構成の電池であってもよい。
図3は、第2の実施形態に係る非水電解質電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。図4は、図3に示す非水電解質電池のB部を拡大した断面図である。
図3及び図4に示す非水電解質電池100は、図3及び図4に示す電極群1と、図3に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
電極群1は、図4に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分3cを含む。この部分3cは、負極集電タブとして働く。図4に示すように、負極集電タブとして働く部分3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ(部分3c)は、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)と同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)に対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
第2の実施形態に係る非水電解質電池は、第1の実施形態に係る電極を含んでいる。そのため、第2の実施形態に係る非水電解質電池は、優れた寿命性能を実現することができる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態によると、組電池が提供される。第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る非水電解質電池を複数個具備している。
第3の実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
次に、第3の実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
図5は、第3の実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図5に示す組電池200は、5つの単電池100a〜100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a〜100eのそれぞれは、第2の実施形態に係る非水電解質電池である。
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図5の組電池200は、5直列の組電池である。
図5に示すように、5つの単電池100a〜100eのうち、左端に位置する単電池100aの正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に接続されている。また、5つの単電池100a〜100eうち、右端に位置する単電池100eの負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に接続されている。
第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る非水電解質電池を具備する。したがって、優れた寿命性能を実現することができる。
[第4の実施形態]
第4の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第2の実施形態に係る非水電解質電池を具備していてもよい。
第4の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、非水電解質電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
また、第4の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に非水電解質電池からの電流を出力するため、及び/又は非水電解質電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、第4の実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
図6は、第4の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図7は、図6に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
図6及び図7に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
図6に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
単電池100は、図3及び図4に示す構造を有している。複数の単電池100の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る非水電解質電池である。複数の単電池100は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きになるように揃えて積層されている。複数の単電池100の各々は、図7に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
正極側リード22の一端は、単電池100の積層体において、最下層に位置する単電池100の正極端子7に接続されている。負極側リード23の一端は、単電池100の積層体において、最上層に位置する単電池100の負極端子6に接続されている。
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ341と、負極側コネクタ342と、サーミスタ343と、保護回路344と、配線345及び346と、通電用の外部端子347と、プラス側配線348aと、マイナス側配線348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200において負極端子6及び正極端子7が延出する面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
正極側コネクタ341には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、正極側リード22の他端が挿入されることにより、正極側コネクタ341と正極側リード22とは電気的に接続される。負極側コネクタ342には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、負極側リード23の他端が挿入されることにより、負極側コネクタ342と負極側リード23とは電気的に接続される。
サーミスタ343は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ343は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路344に送信する。
通電用の外部端子347は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子347は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。
保護回路344は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路344は、プラス側配線348aを介して通電用の外部端子347と接続されている。保護回路344は、マイナス側配線348bを介して通電用の外部端子347と接続されている。また、保護回路344は、配線345を介して正極側コネクタ341に電気的に接続されている。保護回路344は、配線346を介して負極側コネクタ342に電気的に接続されている。更に、保護回路344は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
保護回路344は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路344は、サーミスタ343から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路344と外部機器への通電用の外部端子347との電気的な接続を遮断する。
サーミスタ343から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
なお、保護回路344としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子347を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子347を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子347を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子347を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子として用いてもよい。
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
第4の実施形態に係る電池パックは、第2の実施形態に係る非水電解質電池又は第3の実施形態に係る組電池を備えている。したがって、第4の実施形態に係る電池パックは、優れた寿命性能を実現することができる。
[第5の実施形態]
第5の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。
第5の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。第5の実施形態に係る車両は、車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む。
第5の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
第5の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
第5の実施形態に係る車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、電池パックは、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
次に、第5の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図8は、第5の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す断面図である。
図8に示す車両400は、車両本体40と、第4の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図8に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
図8では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
次に、図9を参照しながら、第5の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
図9は、第5の実施形態に係る車両の他の例を概略的に示した図である。図9に示す車両400は、電気自動車である。
図9に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位制御手段である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図9に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
3つの電池パック300a、300b及び300cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
組電池200a〜200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る非水電解質電池である。組電池200a〜200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を集めるために、組電池監視装置301a〜301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a〜200cに含まれる単電池100の電圧、及び温度などに関する情報を収集する。
電池管理装置411と組電池監視装置301a〜301cとの間には、通信バス412が接続されている。通信バス412は、1組の通信線を複数のノード(電池管理装置と1つ以上の組電池監視装置と)で共有するように構成されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置301a〜301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a〜200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との接続を入り切りするための電磁接触器(例えば図9に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a〜200cへの充電が行われるときにオンするプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、電池出力が負荷へ供給されるときにオンするメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチおよびメインスイッチは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフされるリレー回路(図示せず)を備えている。
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411、あるいは車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、出力電圧を制御する。
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。この回転は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。直流電流は、車両用電源41に入力される。
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が、電池管理装置411内の電流検出部(図示せず)を介して接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子に接続されている。
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、スイッチ装置415を介して接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子に接続されている。
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して他の装置とともに電池管理装置411を協調制御して、車両全体の管理を行なう。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
第5の実施形態に係る車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、第5の実施形態に係る車両は、優れた寿命性能を実現することができる。
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
<実施例1>
(負極活物質の調製)
先ず、原料として、酸化チタンTiO2と、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸ナトリウムNa2CO3と、水酸化ニオブ(V)Nb(OH)5とを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Na:Ti:Nbのモル比が2.0:1.5:5.5:0.5となるように混合した。なお、混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
次いで、混合した原料を、大気雰囲気中において、1000℃で10時間に亘って熱処理に供して、生成物の粉末を得た。次いで、この生成物の粉末を純水に分散させて、5時間に亘って湿式ボールミル処理に供した。湿式ボールミル処理後の分散液をろ過し、粉末を取り出して、この粉末について熱処理を行った。熱処理の条件は600℃、3時間とした。このようにして、負極活物質の粉末を得た。
得られた負極活物質を、ICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた負極活物質は、式Li2.0Na1.5Ti5.5Nb0.5O14で表される組成を有する直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末であることが確認された。
(負極の作製)
上述した方法により得られた直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物LNTの粉末と、アセチレンブラックの粉末と、アルギン酸の粉末とを混合して、混合粉末を得た。なお、混合粉末における直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物の粉末の割合は、95質量%であり、アセチレンブラックの割合は5質量%であり、アルギン酸の割合は5質量%であった。
次いで、この混合粉末を、N−メチルピロリドン(NMP)に分散させて、混合物を得た。次いで、この混合物を40℃に加熱した。加熱後の混合物を、自転公転ミキサーを用いて攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーのpHを、pHメータを用いて測定したところ、そのpHは10であった。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.3g/cm3である負極活物質含有層とを含む負極中間部材を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、負極タブとした。この負極タブに、負極端子を超音波接合した。
(正極活物質の調製)
先ず、原料として、炭酸リチウムLi2CO3と、炭酸マンガンMnCO3とを準備した。これらの原料を、混合物のLi:Mnのモル比が1.0:2.0となるように混合した。混合に先立ち、原料を十分に粉砕した。
次いで、混合した原料を、大気雰囲気中において、700℃で10時間に亘って熱処理に供して、生成物の粉末を得た。
得られた生成物を、ICP、SEM−EDX及びXRDで分析した。その結果、得られた生成物は、式LiMn2O4で表される組成を有するスピネル型マンガン酸リチウムの粉末であることが確認された。以下、この生成物を正極活物質として用いた。
(正極の作製)
上述した方法により得られたスピネル型マンガン酸リチウム、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、NMPに分散させて、混合物を得た。なお、混合物におけるスピネル型マンガン酸リチウムの割合は、90質量%であり、アセチレンブラックの割合は5質量%であり、PVdFの割合は5質量%であった。
次いで、この混合物を、自転公転ミキサーを用いて更に攪拌し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥後の塗膜をプレスして、集電体と、集電体上に形成され且つ電極密度(集電体含まず)が2.9g/cm3である正極活物質含有層とを含んだ正極を作製した。
なお、スラリーの塗布の際、集電体の一部にスラリー未塗布部を残した。この部分を、正極タブとした。この正極タブに、正極端子を超音波接合した。
(非水電解質の調製)
電解質塩を有機溶媒に溶解させて、液状非水電解質を得た。電解質塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を用いた。非水電解質におけるLiPF6のモル濃度は、1.2mol/Lとした。有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒を用いた。PCとEMCとの体積比は、1:2であった。
(電極群の作製)
厚さが25μmであるポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータを2枚用意した。次いで、先に作製した正極、一枚目のセパレータ、先に作製した負極中間部材及び2枚目のセパレータをこの順序で積層して、積層体を得た。この積層体を、渦巻き状に捲回し、捲回体を得た。次いで、捲回体を90℃の温度の加熱プレス処理に供した。このようにして、幅が30mmであり、厚さが3.0mmである偏平状電極群を作製した。
<電池ユニットの作製>
得られた電極群を、ラミネートフィルムで包んだ。ラミネートフィルムとしては、厚さが40μmであるアルミニウム箔の両面にポリプロピレン層を形成して構成され、全体の膜厚が0.1mmであるものを用いた。この際、ラミネートフィルムの1つの端部において、ポリプロピレン層の互いに対向する2つの部分の間に負極端子の一部を挟んだ。そして、負極端子の他の一部がラミネートフィルムの外に出るようにした。同様に、ラミネートフィルムの1つの端部において、ポリプロピレン層の互いに対向する2つの部分の間に正極端子の一部を挟んだ。そして、正極端子の他の一部がラミネートフィルムの外に出るようにした。
次に、負極端子の一部を挟み込んだ端部をヒートシールした。同様に、正極端子の一部を挟み込んだ端部をヒートシールして、電極群をラミネートフィルム内に密閉した。次いで、このラミネートフィルム内の電極群を、80℃の温度で24時間にわたって真空乾燥に供した。
次いで、ラミネートフィルムの一部を開封し、ラミネートフィルム内に非水電解質を注入した。次いでラミネートフィルムの開口部をヒートシールし、電極群と非水電解質電池をラミネートフィルム内に密閉した。このようにして、満充電時の電圧が3.0Vである電池ユニットを作成した。なお、これらの作業は、アルゴン環境下で行った。
<エージング処理>
以上の方法により得られた電池ユニットを、第1エージングに供した。具体的には、先ず、電池ユニットの電圧が2.5V(SOC 20%)に達するまで充電した。次いで、充電後の電池ユニットを、60℃の温度環境下で、10時間にわたって静置した。
次に、第1エージング後の電池ユニットのラミネートフィルムの一部を切り開き、内部のガスを放出した。次いで、ラミネートフィルムの開口部をヒートシールし、ラミネートフィルム内に電極群と非水電解質とを密閉した。
次いで、この電池ユニットを、第2エージングに供した。具体的には、電池ユニットの電圧が2.8V(SOC 80%)に達するまで充電した。次いで、充電後の電池ユニットを、80℃の温度環境下で、10時間にわたって静置した。
次に、第2エージング後の電池ユニットのラミネートフィルムの一部を切り開き、内部のガスを放出した。次いで、ラミネートフィルムの開口部をヒートシールし、ラミネートフィルム内に電極群と非水電解質とを密閉した。このようにして、非水電解質電池を得た。非水電解質電池の幅は35mmであり、厚さは3.2mmであり、高さは65mmであった。
<実施例2>
第1エージングの時間を、10時間から20時間に変更したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、非水電解質電池を得た。
<実施例3>
第2エージングの時間を、10時間から20時間に変更したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、非水電解質電池を得た。
<実施例4>
第1エージングの時間を、10時間から20時間に変更したこと、及び、第2エージングの時間を、10時間から20時間に変更したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、非水電解質電池を得た。
<実施例5>
第1エージングの時間を、10時間から30時間に変更したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、非水電解質電池を得た。
<実施例6>
第2エージングの時間を、10時間から30時間に変更したこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、非水電解質電池を得た。
<実施例7>
負極活物質として、直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物LNTの代わりに、スピネル型リチウムチタン複合酸化物LTO(Li4Ti5O12)を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、非水電解質電池を得た。
<実施例8>
負極活物質として、直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物LNTの代わりに、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物NTO(Nb2TiO7)を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、非水電解質電池を得た。
<比較例1>
負極の結着剤として、アルギン酸の代わりに、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、非水電解質電池を得た。
<比較例2>
負極の結着剤として、アルギン酸の代わりに、スチレンブタジエンゴム(SBR)を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、非水電解質電池を得た。
<比較例3>
負極の結着剤として、アルギン酸の代わりに、カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いたこと以外は、実施例1に記載したのと同様の方法で、非水電解質電池を得た。
<評価方法>
(pH測定)
実施例1、7及び8並びに比較例1乃至3に係る負極活物質含有層を形成するためのスラリーについて、pHメータを用いてpHを測定した。その結果を表1に示す。
(赤外吸収スペクトルの測定)
実施例1乃至9及び比較例1乃至3に係る負極活物質含有層について、上述した方法で、赤外吸収スペクトルを測定した。その結果を、表1に示す。
ここで、図10は、実施例及び比較例に係る赤外吸収スペクトルを示すグラフである。図10に示すグラフにおいて、横軸は波数を示し、縦軸は吸光度を示している。図10に示すグラフにおいて、実線は実施例1に係る負極活物質含有層の赤外吸収スペクトルを示し、破線は比較例1に係る負極活物質含有層の赤外吸収スペクトルを示している。図10に示すように、実施例1及び比較例1に係る負極活物質含有層の赤外吸収スペクトルには、ピークP1乃至P4が検出されている。
(サイクル特性評価)
実施例1乃至9並びに比較例1乃至3に係る非水電解質電池について、高温環境下でのサイクル特性を評価した。具体的には、先ず、電池を、60℃の温度下で、0.2Cの定電流値で電池電圧が3.0Vとなるまで充電した。その後、レートが1/20Cとなるまで定電圧充電を行った。次いで、1分間にわたって電池を静置した。次いで、0.2Cの定電流値で電池電圧が1.8Vとなるまで放電した。このような充電、休止及び放電を1サイクルとして、500サイクル実施した。なお、各サイクル間には、1分間のインターバル時間を設けた。
次いで、500サイクル目の放電容量W2を、1サイクル目の放電容量W1で除することにより、高温環境下での500サイクル試験後の容量維持率(W2/W1×100)を算出した。この結果を表1に示す。
下記表1に、実施例1乃至8並びに比較例1乃至3に係るデータをまとめる。
上記表1において、「負極」という見出しの下方の列において、「活物質」と表記した列には、負極活物質の種類を記載している。また、「結着剤」と表記した列には、負極活物質含有層に含まれる結着剤の種類を記載している。また、「スラリーのpH」と表記した列には、負極活物質含有層を形成するためのスラリーのpHを記載している。
また、「第1エージング」及び「第2エージング」という見出しの下方の列の「時間」と表記した列には、それぞれ、第1エージングの時間及び第2エージングの時間を記載している。
また、「ピーク強度」という見出しの下方の列において、「I1」、「I2」、「I3」及び「I4」と表記した列には、それぞれ、第1ピーク、第2ピーク、第3ピーク、及び第4ピークの強度を記載している。また、「I2/I1」と表記した列には、第2ピークの強度I2と第1ピークの強度I1との比を記載している。また、「I4/I3」と表記した列には、第4ピークの強度I4と第3ピークの強度I3との比を記載している。
また、「電池特性」という見出しの下方の列の「容量維持率(%)」と表記した列には、高温環境下での500サイクル試験後の容量維持率を記載している。
表1に示すように、第2ピークの強度I1と第1ピークの強度I2との比I2/I1が、9以上12以下である実施例1乃至8に係る非水電解質電池の容量維持率は、比I2/I1が9よりも低い比較例1及び2に係る非水電解質電池の容量維持率、並びに、比I2/I1が12よりも高い比較例3に係る非水電解質電池の容量維持率よりも高かった。これは、結着剤としてアルギン酸を用いたために、スラリーのpHを抑えることができたため、活物質と結着剤とが良好に分散した負極活物質含有層を設けることができたためと考えられる。
また、実施例1、7及び8の結果から、負極活物質の種類を変更しても、優れた性能を得られることが確認できた。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、電極が提供される。電極は、集電体と、活物質含有層とを備える。活物質含有層は、集電体の少なくとも一方の主面上に設けられている。活物質含有層は、活物質と結着剤とを含む。活物質は、下記式(1)を満たす。
9≦I2/I1≦12 (1)
式(1)におけるI1は、全反射測定法による活物質含有層の赤外吸収スペクトルにおいて、波数が1155cm-1以上1200cm-1以下の範囲において最も高い強度を示す第1ピークの強度である。I2は、赤外吸収スペクトルにおいて、波数が1390cm-1以上1410cm-1以下の範囲において最も高い強度を示す第2ピークの強度である。したがって、実施形態に係る電極は、優れた寿命性能を実現することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。