JP7320254B2 - 面状発熱体 - Google Patents

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Description

本発明は、面状発熱体に関する。
従来、面状発熱体用に、銅箔やステンレス等の金属箔上に、ポリイミド等の耐熱性樹脂層を形成した材料が提案されている。例えば、特許文献1には、線状あるいはシ-ト状の金属からなる発熱体が、熱融着性ポリイミドと高耐熱性ポリイミドとが接合された熱融着性多層ポリイミドフィルムの間に、加熱圧着して発熱体の金属を除く空間を熱融着性多層ポリイミドフィルムによって充填して接合されてなる面状のポリイミドヒ-ターが提案されている。しかしながら、特許文献1で提案されたポリイミドヒーター(面状発熱体)は、加熱圧着方式により熱融着性ポリイミドに金属の発熱体を結合していることから、十分な金属とポリイミドの密着力が得難いとともに、密着力のばらつきが大きくなりやすく、生産プロセスが複雑となり、生産コストが増大するというか課題があった。
特開2004-355882号公報
本発明の目的は、生産プロセスの複雑化を招くことなく、密着力が大きく、かつ密着力のばらつきが低減される金属箔-ポリイミド積層体を備える面状発熱体を提供することにある。
本発明者らは、金属箔上に、特定の構造を有するポリイミド膜をキャスティング法により形成することにより、生産プロセスの複雑化を招くことなく、密着性や耐熱性に優れた金属箔-ポリイミド積層体を得られることを見出し、本発明を完成した。また、本発明の金属箔-ポリイミド積層体は、密着力が大きく、密着力のばらつきを低減することができる。
すなわち、本発明によれば、以下に示す面状発熱体が提供される。
[1]本実施形態の面状発熱体は、厚さ10~100μmの金属箔上に、キャスティング法で厚さ1~50μmのポリイミド系樹脂層が形成されている。前記ポリイミド系樹脂層は、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミド系樹脂である。前記ジアミン化合物は、少なくともパラフェニレンジアミン及び2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルである。前記テトラカルボン酸二無水物は、少なくともピロメリット酸二無水物及び3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。前記金属箔の剥離強度は、1kN/m以上である。
[2]前記金属箔は、ステンレス箔である。
[3]前記ポリイミド系樹脂の合成に用いられるジアミン化合物は、パラフェニレンジアミン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル及び式(1)で示されるジアミン化合物である。
Figure 0007320254000001
上記の式(1)において、X、Y及びZは、それぞれ直接結合、-O-、-SO-、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-COO-、-CONH-のいずれかの結合を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、nは0又は1である。
[4]前記金属箔の剥離強度の保持率は、260℃で168時間の熱処理を施した後において40%以上である
] 一実施形態による面状発熱体の製造方法は、
厚さ10~100μmの金属箔を用意する工程と、
前記金属箔の少なくとも一方の面上に、ポリイミド系樹脂による樹脂を塗布するキャスティング法によってポリイミド系樹脂層を形成する工程と、
を含む。
以下、本発明の金属箔-ポリイミド積層体の一実施形態について、詳細に説明する。
一実施形態による金属箔-ポリイミド積層体(以下、「積層体」という。)は、金属箔及びポリイミド系樹脂層を備える。具体的には、積層体は、厚さ10~100μmの金属箔上に、厚さ1~50μmのポリイミド系樹脂層がキャスティング法により形成されたものである。このうち、ポリイミド系樹脂層は、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミドである。ジアミン化合物は、少なくともパラフェニレンジアミン及び2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルが用いられる。テトラカルボン酸二無水物は、少なくともピロメリット酸二無水物及び3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が用いられる。一実施形態による積層体において、金属箔の剥離強度は、1kN/m以上である。
本実施形態の積層体に用いられる金属箔は、厚さが10~100μmの範囲のものであり、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、ニクロム箔等をはじめとする任意の金属箔を用いることができる。そして、耐熱性、耐久性、機械的強度、電気特性等の観点から、金属箔はステンレス箔を用いるのが好ましい。
一実施形態による積層体の金属箔としてステンレス箔を用いる場合、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系やそれらの複合系等の任意のステンレスの箔が使用できる。これらのステンレスは、その合金組成によりSUS410、SUS440,SUS430、SUS304、SUS316等に名称で呼ばれている。これらのうち、機械的強度、耐熱性、加工性等の観点からSUS304箔を用いることがより好ましい。
一実施形態による積層体は、上述の金属箔にキャスティング法により、ポリイミド系樹脂層が形成されたものでる。ここで、積層体に用いられるポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物から合成される。ジアミン化合物は、少なくともパラフェニレンジアミン及び2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルの2種類のジアミン化合物である。テトラカルボン酸二無水物は、少なくともピロメリット酸二無水物及び3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
一実施形態による積層体において、ポリイミド系樹脂の合成に用いられるジアミン化合物は、上記に限らず、パラフェニレンジアミン及び2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル以外のジアミン化合物も合わせて用いてもよい。この場合、適用可能な他のジアミン化合物は、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェニル)スルホン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェニル)スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エ-テル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エ-テル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エ-テル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス〔4-(4-アミノ-6-トリフルオロメチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3-ビス〔4-(4-アミノ-6-フルオロメチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル〕ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニルなどが挙げられる。そして、金属箔との良好な密着性、耐熱性、機械的強度等の観点から、パラフェニレンジアミンおよび2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルに加えて、式(1)に示すジアミン化合物を用いることが好ましい。
Figure 0007320254000002
式(1)において、X、Y及びZは、それぞれ直接結合、-O-、-SO-、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-COO-、-CONH-のいずれかの結合を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、nは0又は1である。
そして、パラフェニレンジアミン及び2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルと合わせて式(2)で示されるジアミン化合物を用いることがより好ましい。
Figure 0007320254000003
一実施形態による積層体において、ポリイミド系樹脂の合成に使用されるジアミン化合物の比率は、パラフェニレンジアミンのモル比率をA、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルのモル比率をB、それ以外のジアミン化合物のモル比率をCとした場合、A:B:C=30~70:10~60:0~30(ただし、A+B+C=100)であることが好ましい。A:B:Cのモル比率を30~70:10~60:0~30(ただし、A+B+C=100)とすることにより、耐熱性、機械強度が良好であり、金属箔に近い熱膨張係数を示し、更には1kN/m以上の強固な金属箔の密着力を与えるポリイミド系樹脂を得ることができる。
一実施形態による積層体において、ポリイミド系樹脂の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物及び3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が必須成分として用いられる。この場合、例えば、3,4,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル)ジフタル酸二無水物、1,4-ヒドロキノンジベンゾエ-ト-3, 3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物などのように、ピロメリット酸二無水物及び3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物も併用することができる。
一実施形態の積層体において、ポリイミド系樹脂の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物の比率は、ピロメリット酸二無水物のモル比率をD、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のモル比率をE、それ以外のテトラカルボン酸二無水物のモル比率をFとした場合、D:E:F=10~50:20~80:0~20(ただし、D+E+F=100)である。D:E:Fのモル比率を10~50:20~80:0~20(ただし、D+E+F=100)とすることにより、耐熱性、機械強度が良好であり、金属箔に近い熱膨張係数を示し、更には1kN/m以上の強固な金属箔の密着力を与えるポリイミド系樹脂を得ることができる。
一実施形態の積層体に用いられるポリイミド系樹脂は、N,N-ジメチルアセトアミド、N、N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の溶剤中において、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物を出発原料とした溶液重合によりポリイミド前駆体であるポリアミド酸として合成される。そして、合成されたポリアミド酸は、金属箔上に当該ポリアミド酸の溶液が所定の厚さになるようにキャスティングされる。その後、溶剤の乾燥およびイミド化を行うことにより、ポリイミド系樹脂が得られる。
一実施形態の積層体に用いられるポリイミド系樹脂は、イミダゾール類、ベンゾトリアゾール、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンヒドラジド、N,N’-ビス{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン等、ポリイミドとの親和性が高く、金属と錯体を形成しやすい添加物を添加してもよい。これらの添加物の添加は、金属箔との密着力を高め、密着力やポリイミド系樹脂の機械強度の熱的な低下を抑制するという観点から好ましい。
以下、一実施形態による積層体の実施例を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、理解を容易にするためのものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例で使用する略号は、以下のものを示している。
PPD:p-フェニレンジアミン
m-TBHG:2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル
TPE-M:1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン
TPE-R:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA:3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
<金属箔の密着力>
積層体を構成する金属箔上に感光性のドライフィルムレジストをラミネートした後、所定のマスクを通して露光し、塩化第二鉄水溶液を用いて金属箔のエッチング加工を行う。エッチング加工の後、ドライフィルムレジストの剥離、水洗、乾燥を行って、1mm×150mmの複数のパターンにエッチング加工した。
次に、エッチング加工を施した積層体のポリイミド面を、両面テープを用いて厚み1mmのステンレス板に固定し、引張試験機(島津製作所株式会社製オートグラフAGS-H)を用いて、1mm幅にエッチング加工した金属箔をポリイミドから90°方向に引きはがして、剥離強度として密着力を測定した。
<ポリイミドの熱膨張係数>
塩化第二鉄水溶液を用いて、積層体の金属箔をエッチング除去してポリイミドフィルムとした。次に、ポリイミドフィルムを3mm×15mmの大きさに切り出して測定用サンプルとし、熱機械分析装置(島津製作所株式会社製TMA-60)を用いて、設定荷重を加えながら、室温から210℃まで10℃/分で昇温した後、210℃で10分間ホールドし、10℃/分の速度で降温させて、200℃から100℃の冷却時の寸法変化からポリイミドの熱膨張係数を求めた。設定荷重は、2.5gである。
(実施例1)
撹拌機と撹拌羽根を備えた1リットルのセパラブルフラスコ中にジアミン化合物であるPPD5.412g(0.05モル)、m-TBHG8.492g(0.04モル)、TPE-M2.923g(0.01モル)を入れ、そこに396gのDMAcを加えて撹拌を行って、ジアミン化合物を溶解及び分散させた。次に、窒素気流中において撹拌を続けながら、テトラカルボン酸二無水物であるPMDA6.544g(0.03モル)及びBPDA20.595g(0.07モル)を加え、さらに室温で6時間撹拌を続けて重合を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。
次に、金属箔として厚さ30μmのステンレス箔(SUS304)を準備し、その上にアプリケータを用いてポリアミド酸の溶液を塗膜し、100℃、130℃、160℃、200℃、280℃、320℃、380℃の各温度で2分間熱処理をすることにより、溶剤の乾燥及びイミド化反応を行って、厚さ25μmのポリイミド膜を形成し、目的とするステンレス箔-ポリイミド積層体(以下、「ステンレス積層体」という。)を作製した。
得られたステンレス積層体は、概ねフラットであり、ステンレス箔の密着力は1.8kN/mであって、面状発熱体として使用するのに好ましい密着力を示した。また、ステンレス箔をエッチング除去後のポリイミド膜の熱膨張係数は、21ppm/Kであった。
(実施例2)
撹拌機と撹拌羽根を備えた1リットルのセパラブルフラスコ中にジアミン化合物であるPPD5.412g(0.05モル)、m-TBHG8.492g(0.04モル)、TPE-R2.923g(0.01モル)を入れ、そこに396gのDMAcを加えて撹拌を行って、ジアミン化合物を溶解及び分散させた。次に、窒素気流中において撹拌を続けながら、テトラカルボン酸二無水物であるPMDA6.544g(0.03モル)及びBPDA20.595g(0.07モル)を加え、さらに室温で6時間撹拌を続けて重合を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。
以下、実施例1と同様に処理を行い、厚さがそれぞれ30μm及び25μmのステンレス積層体を作製した。得られたステンレス積層体は、概ねフラットであり、ステンレス箔の密着力は1.5kN/mであって、面状発熱体として使用するのに好ましい密着力を示した。また、ステンレス箔をエッチング除去後のポリイミド膜の熱膨張係数は、21ppm/Kであった。
(実施例3)
撹拌機と撹拌羽根を備えた1リットルのセパラブルフラスコ中にジアミン化合物であるPPD6.494g(0.06モル)、m-TBHG6.793g(0.032モル)、TPE-M2.339g(0.008モル)を入れ、そこに378gのDMAcを加えて撹拌を行って、ジアミン化合物を溶解及び分散させた。次に、窒素気流中において撹拌を続けながら、テトラカルボン酸二無水物であるPMDA8.725g(0.04モル)及びBPDA17.653g(0.06モル)を加え、さらに室温で6時間撹拌を続けて重合を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。
以下、実施例1と同様に処理を行い、厚さがそれぞれ30μm及び25μmのステンレス積層体を作製した。得られたステンレス積層体は、概ねフラットであり、ステンレス箔の密着力は1.8kN/mであって、面状発熱体として使用するのに好ましい密着力を示した。また、ステンレス箔をエッチング除去後のポリイミド膜の熱膨張係数は、20ppm/Kであった。
(実施例4)
撹拌機と撹拌羽根を備えた1リットルのセパラブルフラスコ中にジアミン化合物であるPPD6.494g(0.06モル)及びm-TBHG8.492g(0.04モル)を入れ、そこに375gのDMAcを加えて撹拌を行って、ジアミン化合物を溶解及び分散させた。次に、窒素気流中において撹拌を続けながら、テトラカルボン酸二無水物であるPMDA8.725g(0.04モル)、BPDA14.711g(0.05モル)及びBTDA3.222g(0.01モル)を加え、さらに室温で6時間撹拌を続けて重合を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。
以下、実施例1と同様に処理を行い、厚さがそれぞれ30μm及び25μmのステンレス積層体を作製した。得られたステンレス積層体は、概ねフラットであり、ステンレス箔の密着力は1.7kN/mであって、面状発熱体として使用するのに好ましい密着力を示した。また、ステンレス箔をエッチング除去後のポリイミド膜の熱膨張係数は、20ppm/Kであった。
(実施例5)
ポリイミド膜を厚さ12μmになるように塗膜した以外は実施例1と同様に処理を行い、厚さがそれぞれ30μm及び12μmのステンレス積層体を作製した。得られたステンレス積層体は概ねフラットであり、ステンレス箔の密着力は2.0kN/mであって、面状発熱体として使用するのに好ましい密着力を示した。また、ステンレス箔をエッチング除去後のポリイミド膜の熱膨張係数は、16ppm/Kであった。
(実施例6)
厚さ30μmのステンレス箔の代わりに厚さ20μmのステンレス箔を用いた以外は実施例1と同様に処理を行い、厚さがそれぞれ20μm及び25μmのステンレス積層体を作製した。得られたステンレス積層体は概ねフラットであり、ステンレス箔の密着力は1.8kN/mであって、面状発熱体として使用するのに好ましい密着力を示した。また、ステンレス箔をエッチング除去後のポリイミド膜の熱膨張係数は、21ppm/Kであった。
(実施例7)
厚さ30μmのステンレス箔の代わりに厚さ18μmの電解銅箔を用いた以外は実施例1と同様に処理を行い、厚さがそれぞれ18μm、25μmの銅箔-ポリイミド積層体(以下、「銅箔積層体」という。)を作製した。得られた銅箔積層体は概ねフラットであり、銅箔の密着力は1.6kN/mであって、面状発熱体として使用するのに好ましい密着力を示した。また、銅箔をエッチング除去後のポリイミド膜の熱膨張係数は、22ppm/Kであった。
(実施例8)
撹拌機と撹拌羽根を備えた1リットルのセパラブルフラスコ中にジアミン化合物であるPPD5.412g(0.05モル)、m-TBHG8.492g(0.04モル)、TPE-M2.923g(0.01モル)を入れ、そこに396gのDMAcを加えて撹拌を行って、ジアミン化合物を溶解及び分散させた。次に、窒素気流中において撹拌を続けながら、テトラカルボン酸二無水物であるPMDA6.544g(0.03モル)及びBPDA20.595g(0.07モル)を加え、さらに室温で6時間撹拌を続けて重合を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。その後、ポリアミド酸溶液の撹拌を続けながら、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール0.175gを加えて溶解させた。
次に、金属箔として厚さ30μmのステンレス箔(SUS304)を準備し、その上にアプリケータを用いて3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾールを含むポリアミド酸溶液を塗膜し、100℃、130℃、160℃、200℃、280℃、320℃、380℃の各温度で2分間熱処理をすることにより、溶剤の乾燥ならびにイミド化反応を行って、厚さ25μmのポリイミド膜を形成し、目的とするステンレス積層体を作製した。
得られたステンレス積層体は概ねフラットであり、ステンレス箔の密着力は2.1kN/mであって、面状発熱体として使用するのに好ましい密着力を示した。また、ステンレス箔をエッチング除去後のポリイミド膜の熱膨張係数は、21ppm/Kであった。
(実施例9)
3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール0.175gの代わりに、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンヒドラジド0.175gを用いた以外は実施例8と同様に処理を行い、厚さがそれぞれ、30μm及び25μmのステンレス積層体を作製した。得られたステンレス積層体は概ねフラットであり、ステンレス箔の密着力は2.0kN/mであって、ステンレス箔をエッチング除去後のポリイミド膜の熱膨張係数は、21ppm/Kであった。
(比較例1)
撹拌機と撹拌羽根を備えた1リットルのセパラブルフラスコ中にジアミン化合物であるPPD9.742g(0.09モル)及びTPE-M2.923g(0.01モル)を入れ、そこに358gのDMAcを加えて撹拌を行って、ジアミン化合物を溶解及び分散させた。次に、窒素気流中において撹拌を続けながら、テトラカルボン酸二無水物であるPMDA6.544g(0.03モル)及びBPDA20.595g(0.07モル)を加え、さらに室温で6時間撹拌を続けて重合を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。
以下、実施例1と同様に行い、厚さがそれぞれ30μm及び25μmのステンレス積層体を作製した。得られたステンレス積層体は概ねフラットであり、ステンレス箔をエッチング除去後のポリイミドの熱膨張係数は22ppm/Kであった。しかし、比較例1は、ジアミン化合物として2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TBHG)を使用していない。そのため、ステンレス箔の密着力は、0.8kN/mと低く、面状発熱体として実用に耐えないものであった。
(比較例2)
撹拌機と撹拌羽根を備えた1リットルのセパラブルフラスコ中にジアミン化合物であるPPD5.412g(0.05モル)、m-TBHG8.492g(0.04モル)及びTPE-M2.923g(0.01モル)を入れ、そこに348gのDMAcを加えて撹拌を行って、ジアミン化合物を溶解及び分散させた。次に、窒素気流中において撹拌を続けながら、テトラカルボン酸二無水物であるPMDAを21.812g(0.1モル)加え、さらに室温で6時間撹拌を続けて重合を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。
以下、実施例1と同様に行い、厚さがそれぞれ30μm及び25μmのステンレス積層体を作製した。得られたステンレス積層体は概ねフラットであり、ステンレス箔をエッチング除去後のポリイミドの熱膨張係数は18ppm/Kであった。しかし、比較例2は、テトラカルボン酸二無水物として、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を使用していない。そのため、ステンレス箔の密着力は、0.7kN/mと低く、面状発熱体として実用に耐えないものであった。
<耐熱試験>
実施例8、実施例9、比較例1及び比較例2で得られたステンレス積層体について、密着力を測定するためにステンレス箔をエッチング加工した後、260℃で168時間の熱処理を行った。これによると、比較例1及び比較例2のステンレス積層体は、ステンレス箔の密着力が0.1kN/m未満へと顕著に低下した。これに対し、実施例8及び実施例9のステンレス積層体は、260℃で168時間の熱処理後も、それぞれ1.3kN/m、1.2kN/mと高い密着力が維持された。

Claims (5)

  1. 厚さ10~100μmの金属箔と、
    前記金属箔上に直接形成され、厚さ1~50μmのポリイミド系樹脂層と、を備える金属箔-ポリイミド積層体を備える面状発熱体であって、
    前記ポリイミド系樹脂層は、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミド系樹脂であり、
    前記ジアミン化合物は、少なくともパラフェニレンジアミン及び2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルであり、
    前記テトラカルボン酸二無水物は、少なくともピロメリット酸二無水物及び3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、
    前記金属箔の剥離強度は、1kN/m以上である面状発熱体
  2. 金属箔は、ステンレス箔である請求項1記載の面状発熱体
  3. 前記ポリイミド系樹脂の合成に用いられるジアミン化合物は、パラフェニレンジアミン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル及び式(1)で示されるジアミン化合物である請求項1又は2記載の面状発熱体
    式(1)において、X、Y及びZは、それぞれ直接結合、-O-、-SO-、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-COO-、-CONH-のいずれかの結合を示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、nは0又は1である。
  4. 前記金属箔の剥離強度の保持率は、260℃で168時間の熱処理を施した後において40%以上である請求項1から3のいずれか一項記載の面状発熱体
  5. 請求項1から4のいずれか一項記載の金属箔-ポリイミド積層体を備える面状発熱体の製造方法であって、
    厚さ10~100μmの金属箔を用意する工程と、
    前記金属箔の少なくとも一方の面上に、ポリイミド系樹脂による樹脂を塗布するキャスティング法によってポリイミド系樹脂層を形成する工程と、
    を含む面状発熱体の製造方法
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