JP7314794B2 - 多層フィルムおよびその包装体 - Google Patents

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Description

本発明は、食料品、医薬医療品、工業部品等の包装に用いる多層フィルムおよびそのフィルムを用いてなる包装体に関する。
ポリアミド系樹脂からなるフィルムは、耐衝撃性、強度などの機械的特性、耐熱性、さらには二軸延伸などの成形加工性に優れていることから、様々な用途として用いられている樹脂材料である。一方でポリアミド系樹脂はポリオレフィン樹脂等の汎用プラスチックに比べて酸素等のガスバリア性には優れているが、食品や医薬品包装などの内容物の長期保存が求められるガスバリア性のレベルには不十分であることが知られている。
そこで、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)やメタキシリレンジアジパミド(MXD6ナイロン)をはじめとする高いガスバリア性を有する樹脂と多層化させることによって機械物性、成形加工性、ガスバリア性等を合わせ持たせたフィルムが広く用いられてきている。中でもエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物は、特に酸素ガスバリア性に優れているものの、柔軟性、耐衝撃性などの機械特性が乏しいため機械特性に優れたポリアミド系樹脂との多層化はエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物の酸素ガスバリア性を備え且つ機械特性が補われる観点から有用である。
例えば、機械強度の低いフィルムを食品等の包装フィルムに用いると、市場流通時の搬送、運送等において、他材料との摩擦や衝撃などによりピンホールが発生するという問題が生じる。フィルムのピンホール発生は、ガスバリア性の著しい低下を引き起こし、その結果、内容物を劣化させ商品価値を失ってしまう。そのため、食品包装市場・産業から、フィルムの更なる強靭性の向上、特にピンホールが発生しやすい冷凍環境下から、常温環境下までの広い温度域に対する耐屈曲ピンホール性の改良が強く望まれている。
このような課題に対して、特許文献1には、脂肪族ポリアミドを含有するA層、及び、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物を55~95重量%、軟質重合体を5~45重量%含有するB層、及び、脂肪族ポリアミドを含有するC層がこの順で積層されたポリアミド系多層フィルムが開示されている。特許文献2には、脂肪族ポリアミド系樹脂を主成分としてなる層(A)、及び、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物とスチレン系ブロック共重合体とを99/1~80/20質量%の割合で含有してなる層(B)の少なくとも2層を有する積層フィルムが開示されている。しかしながら、これらの技術だけでは、近年一層強まっている耐屈曲ピンホール性に関する市場要求を満たすことはできず、また透明性の兼備も十分でない。
特開2010-131950号公報 特開2015-020393号公報
上記実情に鑑みて、本発明の課題は、高度な酸素ガスバリア性を有するとともに、冷凍環境下から常温環境下における幅広い温度域における耐屈曲ピンホール性と透明性に優れるフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、脂肪族ポリアミド系樹脂を含む層とエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物を含む層を積層したポリアミド系多層フィルムを特定の組成構成とすることにより上述の課題を解決することを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
第1の本発明は、脂肪族ポリアミド系樹脂(a1)とポリエステル系エラストマー(a2)を含むA層とエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)とスチレン系エラストマー(b2)を含むB層とを有し、A層、B層、A層の順で積層された多層フィルムである。
第1の本発明において、前記ポリエステル系エラストマー(a2)が酸変性物であることが好ましい。
第1の本発明において、前記スチレン系エラストマー(b2)が、スチレンブロックと共役ジエンブロックからなる共重合体、当該共重合体の水素添加物、およびスチレンブロックとイソブチレンブロックからなる共重合体からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
第1の本発明において、前記スチレン系エラストマー(b2)を構成するスチレンモノマー組成比が50質量%未満であることが好ましい。
第1の本発明において、前記A層におけるポリエステル系エラストマー(a2)の分散粒子の水平方向の最大直径が1μm以下であることが好ましく、また、前記B層におけるスチレン系エラストマー(b2)の分散粒子の水平方向の最大直径が2μm以下であることが好ましい。
第1の本発明において、95℃5分間の熱水収縮率が、フィルムの縦方向、横方向とも0.1%以上15%以下であることが好ましい。
第1の本発明において、5℃相対湿度50%、屈曲500回のゲルボフレックス試験条件においてピンホール数が4.0個/481cm未満であることが好ましい。
第2の本発明は、第1の本発明の多層フィルムを用いた包装体である。
本発明によれば、酸素ガスバリア性、透明性、耐屈曲ピンホール性のバランスに優れたポリアミド系樹脂多層フィルムを提供することができ、食品や医薬医療品などの包装用フィルムとして使用した際に、外部からの酸素ガスの侵入を低減することで酸素による内容物の劣化、変質を防止し、内容物を新鮮に保つことができる。更には、冷凍から常温までの温度領域において、良好な耐屈曲ピンポール性を有し得ることから、包装品の保管、流通、陳列、消費者使用開始までの間で、包装品の品質を良好に維持することができる。
図1は、本フィルムの3層構成の場合の断面模式図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
本発明の多層フィルム(以下、「本発明のフィルム」と称することがある)は、脂肪族ポリアミド系樹脂(a1)とポリエステル系エラストマー(a2)とを含むA層と、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)とスチレン系エラストマー(b2)とを含むB層とを少なくとも有し、A層、B層、A層の順で積層されたポリアミド系樹脂多層フィルムである。
<A層>
(脂肪族ポリアミド系樹脂(a1))
本発明に用いる脂肪族ポリアミド系樹脂(a1)としては、下記環状ラクタムの開環重合物が好ましく使用できる。具体的には、アセトラクタム(ポリアミド2)、プロピオラクタム(ポリアミド3)、ブチロラクタム(ポリアミド4)、バレロラクタム(ポリアミド5)、カプロラクタム(ポリアミド6)、エナントラクタム(ポリアミド7)、カプリロラクタム(ポリアミド8)、ペラルゴラクタム(ポリアミド9)、カプリノラクタム(ポリアミド10)、ラウロラクタム(ポリアミド12)等である。
また、下記アミノカルボン酸の重縮合物も好適に使用できる。具体的には、アミノプロピオン酸(ポリアミド3)、アミノブチル酸(ポリアミド4)、アミノバレリアン酸(ポリアミド5)、アミノカプロン酸(ポリアミド6)、アミノエナント酸(ポリアミド7)、アミノカプリル酸(ポリアミド8)、アミノペラルゴン酸(ポリアミド9)、アミノカプリン酸(ポリアミド10)、アミノラウリン酸(ポリアミド12)等である。
さらに、下記ジカルボン酸とジアミンとの重縮合物も好適に使用できる。具体的には、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)等である。これらは、1成分単独もしくは多成分を組み合わせて共重合しても良い。また、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等いずれの共重合手法を用いても良い。
これらの脂肪族ポリアミド系樹脂の中でも、耐熱性、成形性、吸水性、機械強度のバランスに優れることから、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6,66が好ましく、安価に入手できることからポリアミド6が特に好ましい。
(ポリエステル系エラストマー(a2))
本発明で使用するポリエステル系エラストマー(a2)としては、飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましく、特にポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましい。例えば、ハードセグメントとして芳香族ポリエステル、ソフトセグメントとしてポリアルキレンエーテルグリコールや脂肪族ポリエステルからなるものが好ましい例として挙げられる。特に、ソフトセグメントとしてポリアルキレンエーテルグリコールを使用したポリエステルポリエーテルブロック共重合体が好ましい。
ポリエステルポリエーテルブロック共重合体中のポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量は、生成するブロック共重合体に対して、下限が好ましくは30質量%、より好ましくは40質量%、更に好ましくは50質量%、上限が好ましくは90質量%、より好ましくは85質量%、更に好ましくは80質量%である。ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が上記上限以下であると硬度及び機械強度の点で好ましく、上記下限以上であると柔軟性及び耐衝撃性の点で好ましい。ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量は核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を使用し、その水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。
ポリエステルポリエーテルブロック共重合体としては、(i)炭素原子数2~12の脂肪族ジオール及び/又は脂環族ジオールと、(ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環族ジカルボン酸又はそのアルキルエステル、及び(iii)ポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させたものが好ましい。
上記の炭素原子数2~12の脂肪族及び/又は脂環族ジオールとしては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系エラストマーの原料として一般に用いられるものが使用できる。その具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中では、1,4-ブタンジオール又はエチレングリコールが好ましく、特に1,4-ブタンジオールが好ましい。これらのジオールは2種以上を併用してもよい。
前記の芳香族ジカルボン酸としては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系エラストマーの原料として一般的に用いられているものが使用できる。その具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。これらの中では、テレフタル酸又は2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。これらの芳香族ジカルボン酸は2種以上を併用してもよい。前記の芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとしては、上記の芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルやジエチルエステル等が使用される。中でも、ジメチルテレフタレート及び2,6-ジメチルナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
前記の脂環族ジカルボン酸は、シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、そのアルキルエステルは、ジメチルエステルやジエチルエステル等が好ましい。
また、上記の成分以外に3官能のアルコールやトリカルボン酸又はそのエステルを少量共重合させてもよく、更に、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルも共重合成分として使用できる。
前記のポリアルキレンエーテルグリコールは、数平均分子量の下限が好ましくは400、より好ましくは500、更に好ましくは600、上限が好ましくは6,000、より好ましくは4,000、更に好ましくは3,000のものが使用される。数平均分子量が上記下限以上であると共重合体のブロック性の点で好ましく、上記上限以下であると系内での相分離が起こり難くポリマー物性が発現しやすい。
上記のポリアルキレンエーテルグリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2-プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(1,3-プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。
ポリエステル系エラストマー(a2)の例としては、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレンエーテルグリコールとを組み合わせたポリエーテル・エステル系エラストマー、ポリブチレンテレフタレートとポリカプロラクトンを組み合わせたポリエステル・エステルエラストマー等が挙げられる。これらは単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。
中でも、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレンエーテルグリコール共重合体が、脂肪族ポリアミド系樹脂との相溶性に優れ、また近傍の平均屈折率を示すことから、ポリマーブレンドした際にもフィルムの透明性を阻害することなく、耐屈曲ピンホール性を付与できることから、特に好ましい。
また、ポリエステル系エラストマー(a2)として、上述の飽和ポリエステル系エラストマーを、変性成分として無水マレイン酸、グリシジル酸、アミン、エポキシ、イソシアネート等で変性させた変性ポリエステル系エラストマーが好ましく使用でき、中でも無水マレイン酸等で変性させた酸変性ポリエステル系エラストマーが好ましい。
中でも、不飽和カルボン酸および/またはその無水物で変性させた変性ポリエステル系エラストマーが好ましい。例えば、無水マレイン酸等のα、β-エチレン性不飽和カルボン酸および/またはその無水物でグラフト変性したポリエステル系エラストマーが挙げられる。
また、変性ポリエステル系エラストマーの変性率は、0.01~10質量%であることが好ましい。下限は0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。上限は7質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。変性率は、H-NMRにより求めることができる。ポリエステル系エラストマー(a2)がかかる範囲の割合で変性がされていることにより、主成分である脂肪族ポリアミド系樹脂(a1)との相溶性がより向上し、ナノメートルオーダーのレベルで多数のドメインを形成することができる。脂肪族ポリアミド系樹脂(a1)中にポリエステル系エラストマー(a2)がナノメートルオーダーで分散することで、良好な透明性が得られ、耐屈曲ピンホール性を向上させることができる。さらに逐次、または同時二軸延伸を行った場合にも、クレーズやボイドの発生を抑制できることからも好ましい。
A層における脂肪族ポリアミド系樹脂(a1)とポリエステル系エラストマー(a2)との合計量を100質量%とした場合、ポリエステル系エラストマー(a2)の含有量は1~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましく、5~15質量%が更に好ましい。1質量%以上であれば、十分な耐屈曲ピンホール性向上効果を得ることができる。30質量%以下であれば、本フィルムの透明性と機械強度の兼備が可能となる。
二軸延伸された本フィルムのA層において、脂肪族ポリアミド系樹脂(a1)に対してポリエステル系エラストマー(a2)は粒子状に分散し、(a1)/(a2)が海/島状の分散形態を為す。
分散形態は、延伸倍率にもよるが(a2)粒子の水平方向の最大直径が1μm以下であることが好ましく、0.8μm以下がより好ましい。水平方向の最大直径とは、フィルムを垂直に切断し、断面染色TEM法で倍率1万倍で観察した場合に観察される分散粒子の最大直径を意味する。1μm以下の粒子が多数分散することにより、フィルムの透明性と機械強度が共に良好となる。
また、分散粒子のフィルム厚み方向の長さ(短径)に対するフィルム水平方向の長さ(長径)のアスペクト比(長径/短径)は、2以上が好ましく、5以上がより好ましい。上限は特に制限はない。アスペクト比2以上で、粒子が水平方向に薄くなって多数分散することによりフィルム水平方向に全面的にエラストマーが存在することで、フィルム屈曲による応力の集中が発生してもピンホールが発生し難く、特に低温環境下でその効果が顕著に現れる。
(その他成分)
A層は、上記した成分(a1)および成分(a2)を主成分とし、それ以外に、本発明のフィルムの特性を損なわない範囲で、芳香族ポリアミド系樹脂等の他の成分を含んでもよい。
ここで主成分とは、それを含む層を基準(100質量%)として、該成分を50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上含むことをいう。
A層に含まれる芳香族ポリアミド樹脂としては、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ポリアミド4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド5T)、ポリ-2-メチルペンタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド M-5T)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD6)等の半結晶性ポリアミド樹脂や、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ポリアミドPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ポリアミドPACM14)等の非晶性ポリアミド樹脂が好適に使用できる。これらは、1成分単独もしくは複数成分を組み合わせて共重合しても良い。また、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等いずれの共重合手法を用いても良い。
また、本発明のフィルムの物性を損なわない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、滑剤、フィラー、核剤、可塑剤、発泡剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、難燃剤、染料、顔料、安定剤、カップリング剤、耐衝撃改良材等を含有することができる。
<B層>
(エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1))
本発明に使用されるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)(EVOH)は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体をアルカリ触媒等によってケン化することによって得られる共重合体である。エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物中のエチレン含有率は、特に限定されるものではないが、フィルム製膜安定性の観点から、一般に20モル%以上が好ましく、より好ましくは24モル%以上である。一方、エチレン含有率の上限はガスバリア性の観点から、48モル%以下が好ましく、38モル%以下がより好ましく、30モル%以下が更に好ましい。またエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)のケン化度は、96%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましい。本発明のフィルムにおいて、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)中のエチレン含有量、およびケン化度が上記範囲であることにより、製膜性とガスバリア性のバランスに優れたものとなる。そのため、脂肪族ポリアミド系樹脂と共押出や、二軸延伸などの成形加工が可能となる。
また、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)は、必要に応じて種々変性されていても良く、また変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物とエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物との混合物でも良い。変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物としては、例えば、プロピレン、イソブテン等による変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、炭素数3~30のα-オレフィンの少なくとも1種による変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、アクリル酸エステルをグラフト重合して得られる変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、(メタ)アクリル酸エステル-エチレン-酢酸ビニルからなる3元共重合体をケン化して得られる変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物の水酸基をシアノエチル基により変性した変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリエステルをビニルアルコールと解重合反応させてなるポリエステルグラフト物を含有する変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、酢酸ビニル-エチレン-ケイ素含有オレフィン性不飽和単量体の共重合体をケン化して得られる変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ピロリドン環含有単量体-エチレン-酢酸ビニルからなる3元共重合体をケン化して得られる変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、アクリルアミド-エチレン-酢酸ビニルからなる3元共重合体をケン化して得られるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、酢酸アリル-エチレン-酢酸ビニルからなる3元共重合体をケン化して得られる変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、酢酸イソプロペニル-エチレン-酢酸ビニルからなる3元共重合体をケン化して得られるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリエーテル成分がエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物の末端に付加している変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリエーテル成分がエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物の枝ポリマーとしてグラフト状に付加している変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、アルキレンオキサイドがエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物に付加した変性エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物などが挙げられる。
(スチレン系エラストマー(b2))
スチレン系エラストマー(b2)は、分子中に少なくとも1個のスチレンブロックと、少なくとも1個の共役ジエンブロックまたはイソブチレンブロックを有していればよく、その構造は特に限定されない。例えば、直鎖状のABA型トリブロック構造、AB型ジブロック構造や、2以上に枝分かれした分岐鎖状または星型のいずれの分子鎖形態を有していてもよい。中でも、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)との海/島相間の密着性や、他層との密着性の観点から、直鎖状のABA型トリブロック構造、AB型ジブロック構造、およびその混合物が好ましく使用できる。
スチレン系エラストマー(b2)は、スチレンブロックと共役ジエンブロックからなる共重合体、当該共重合体の水素添加物、およびスチレンブロックとイソブチレンブロックからなる共重合体からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
スチレンブロックを構成するモノマーの例としては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、t-ブトキシスチレン等のスチレン類;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類などのビニル基含有芳香族化合物;インデン、アセナフチレン等のビニレン基含有芳香族化合物などを挙げることができる。スチレンブロックを構成するモノマー単位は1種のみでもよく、2種類以上であってもよいが、中でもスチレンまたはスチレンから誘導される単位からなっているものが特に好ましい。
また、スチレンブロックは、芳香族環を水素化したものでもよく、一般には、ブロック共重合体を製造した後に、当該共重合体を水素化して得ることができる。芳香族環の水素化率は、本フィルムのガスバリア性向上の観点から、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。芳香族環の水素化方法や反応形態などは特に限定されないが、水素化率を高め、また重合体鎖切断反応の少ない方法が好ましい。
共役ジエンブロックを構成するモノマーの例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,3-オクタジエン、クロロプレン等が挙げられる。また、共役ジエンブロックは、水素化したものでもよく、一般には、ブロック共重合体を製造した後に、当該共重合体を水素添加反応させ得ることができる。
スチレンブロックと共役ジエンブロックとの共重合体および当該共重合体の水素添加物の具体例としては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)などが挙げられる。
イソブチレンブロックを構成するモノマーの例としては、イソブチレンである。スチレンブロックとの共重合体は、直鎖状のABA型トリブロック構造、AB型ジブロック構造、ラジアル型のいずれでもよいが、中でもトリブロック構造がエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)との海/島相間の密着性、柔軟性などの点から好ましい。
スチレンブロックとイソブチレンブロックとの共重合体の具体例としては、スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIB)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)などが挙げられ、熱安定性に優れ好ましい。
スチレン系エラストマー(b2)は、酸無水物基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基及びエポキシ基から選ばれた少なくとも1種の官能基を含有させてなる官能基変性共重合体でもよい。また、変性共重合体と未変性共重合体との混合物を用いることもできる。
スチレン系エラストマー(b2)のスチレンブロック、共役ジエンブロックまたはイソブチレンブロックの共重合組成比率は、各ブロックの数平均分子量などにも依存するが、スチレン系エラストマー(b2)の質量に対して、スチレンブロックの割合が5質量%~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、15~35質量%がさらに好ましい。また、共役ジエンブロックまたはイソブチレンブロックの割合は95~50質量%が好ましく、90~60質量%がより好ましく、85~65質量%がさらに好ましい。
スチレンブロックの割合が5~50質量%の場合には、本フィルムの機械的特性、成形性が良好となり、またエラストマーとして、マトリックス樹脂に柔軟性や耐衝撃性を付与することができる。なお、スチレンブロック、共役ジエンブロックまたはイソブチレンブロックを複数有する場合は、その総和としての割合(質量%)である。
スチレン系エラストマー(b2)が、スチレンブロックと共役ジエンブロックからなる場合、スチレン系エラストマー(b2)の数平均分子量は20,000~500,000であることが好ましく、下限は30,000がより好ましく、上限は400,000がより好ましい。数平均分子量が20,000以上であると本フィルムの耐衝撃性などの機械的特性が良好となる。一方、500,000以下であると、スチレン系エラストマー(b2)の流動性が良好となり、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)と混合した際のフィルムの成形性や加工性が良好となる。さらにはエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)中にスチレン系エラストマー(b2)の微細なドメインを形成させ得ることで、冷凍から常温の幅広い温度領域において耐屈曲ピンホール性を向上させることができる。
スチレン系エラストマー(b2)が、スチレンブロックと共役ジエンブロックからなる場合、スチレンブロックの数平均分子量は1,000~300,000であることが好ましく、2,000~200,000であることがより好ましい。1,000以上の場合には、本フィルムの耐衝撃性などの機械物性が良好となる。一方、300,000以下であれば、スチレン系エラストマー(b2)の溶融粘度が高くなり過ぎることなく、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)との混合も容易となり、得られた高分子組成物の成形性や加工性も良好となる。また共役ジエンブロックの数平均分子量は10,000~250,000であることが好ましい。10,000以上の場合には、B層の主成分であるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)に対して、耐屈曲ピンホール性、耐衝撃性などを付与することができ、一方、250,000以下であると、流動性が良好となり、成形性や加工性が良好である。
スチレン系エラストマー(b2)が、スチレンブロックとイソブチレンブロックからなる場合、スチレン系エラストマー(b2)の数平均分子量は20,000~150,000であることが好ましく、下限は30,000がより好ましく、上限は100,000がより好ましい。数平均分子量が20,000以上であると本フィルムの耐衝撃性などの機械的特性が良好となる。一方、150,000以下であると、スチレン系エラストマー(b2)の流動性が良好となり、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)と混合した際のフィルムの成形性や加工性が良好となる。さらにはエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)中にスチレン系エラストマー(b2)の微細なドメインを形成させ得ることで、冷凍から常温の幅広い温度領域において耐屈曲ピンホール性を向上させることができる。
スチレン系エラストマー(b2)が、スチレンブロックとイソブチレンブロックからなる場合、スチレンブロックの数平均分子量は1,000~100,000であることが好ましく、2,000~80,000であることがより好ましい。1,000以上の場合には、本フィルムの耐衝撃性などの機械物性が良好となる。一方、100,000以下であれば、スチレン系エラストマー(b2)の溶融粘度が高くなり過ぎることなく、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)との混合も容易となり、得られた高分子組成物の成形性や加工性も良好となる。またイソブチレンブロックの数平均分子量は、10,000~140,000であることが好ましい。10,000以上の場合には、B層の主成分であるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)に対して、耐屈曲ピンホール性、耐衝撃性などを付与することができ、一方、140,000以下であると、溶融粘度が高くなり過ぎることなく、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)との混合も容易となり、得られた高分子組成物の成形性や加工性も良好となる。
B層におけるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)とスチレン系エラストマー(b2)との合計量を100質量%とした場合、スチレン系エラストマー(b2)の含有量は1~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましく、5~15質量%が更に好ましい。1質量%以上であれば、十分な耐屈曲ピンホール性向上効果を得ることができる。30質量%以下であれば、本フィルムの酸素ガスバリア性や機械強度を十分に維持することが可能となる。
本フィルムのB層において、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)に対してスチレン系エラストマー(b2)は粒子状に分散し、(b1)/(b2)が海/島状の分散形態を為す。
分散形態は、(b2)粒子の水平方向の最大直径が2μm以下であることが好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下が更に好ましい。最大直径とは、フィルムを垂直に切断し、断面染色TEM法で倍率1万倍で観察した場合に観察される分散粒子の最大直径を意味する。最大直径2μm以下で分散していることにより、柔軟性や耐衝撃性の乏しいエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)を主成分とするB層の柔軟性や耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性等の機械強度を大幅に向上させ、また透明性も兼ね備えることができる。
また、延伸フィルムを作製した場合でも、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)中のスチレン系エラストマー(b2)は強く延伸がかかることはなく、分散粒子のフィルム厚み方向の長さ(短径)に対するフィルム水平方向の長さ(長径)のアスペクト比(長径/短径)は、好ましくは1~3である。
本フィルムは、A層の脂肪族ポリアミド系樹脂(a1)におけるポリエステル系エラストマー(a2)の分散と、B層のエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)におけるスチレン系エラストマー(b2)の分散が相まって、透明性を有した状態で柔軟性を向上させると共に、屈曲による局所的な応力集中に対する耐屈曲ピンホール性を増大させ、低温下の過酷な環境においても良好な所物性を発現させ得るものである。
(その他成分)
B層は、上記した成分(b1)および成分(b2)を主成分とし、それ以外に、本発明のフィルムの特性を損なわない範囲で、汎用樹脂、添加剤などの他の成分を含んでいてもよい。
主成分の定義、添加剤などは、A層と同様である。
<層構成>
本フィルムは、脂肪族ポリアミド系樹脂(a1)とポリエステル系エラストマー(a2)を含むA層とエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)とスチレン系エラストマー(b2)を含有するB層の少なくとも2層を有し、A層、B層、A層の順で積層されていればよく、他の層を有しても良い。例えば、ポリエステル系エラストマーを含まない脂肪族ポリアミド系樹脂層(C層)を配することも可能である。
本発明のフィルムの層構成は、具体的には、A層/B層/A層等の3層構成、A層/B層/C層/A層等の4層構成、A層/C層/B層/C層/A層、C層/A層/B層/A層/C層等の5層構成が好ましく挙げられる。また、ポリエステル系エラストマー(a2)の種類や含有率の異なる複数のA層、及び又はスチレン系エラストマー(b2)の種類や含有率の異なる複数のB層を配設する、A層/B層/B層/B層/A層、A層/A層/B層/A層/A層等の5層構成、C層/A層/B層/B層/B層/A層/C層、C層/A層/A層/B層/A層/A層/C層等の7層構成が好ましく挙げられるが、これら例示されたものに限定されるものではない。
また、各層の間に更に接着層やその他の層を設けたものであってもよい。
また、各層厚は、耐屈曲ピンホール性と酸素ガスバリア性の点から、フィルム総厚に対するA層の厚比は30~90%、B層の厚比は10~70%とすることが好ましい。なお、これらは、A層および/またはB層が複数ある場合は、A層および/またはB層ごとに合計した厚みの総厚に対する比率である。
A層、B層、C層の各層厚は、特に限定されるものではないが、それぞれ1~15μmが好ましい。より好ましくは2~10μm、更に好ましくは3~8μmである。A層、B層、C層がそれぞれ複数ある場合は、1層ごとに異なる層厚であってもよいし、同じ層厚であってもよい。
また本フィルムの総厚は、特に限定されるものではないが、例えば加工性、実用性を考慮した場合、下限値は10μm以上であることが好ましく、12μm以上がより好ましい。上限値としては50μm以下であることが好ましく、30μm以下がより好ましい。本フィルムの総厚が上記範囲内であれば、フィルムの剛性は十分であり、耐屈曲ピンホール性、耐衝撃性などの機械特性にも優れ、さらにはガスバリア性にも優れたフィルムとなる。
本フィルムは、機械特性やガスバリア性の観点から、二軸延伸フィルムであることが望ましい。二軸延伸の方法としては、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等、従来公知の延伸方法がいずれも採用できる。
本フィルムは一般にポリエチレン等のポリオレフィン系のシーラントフィルムと積層されて使用することができる。この場合、上記の層構成中の最外層側に位置する層にコロナ処理などの表面処理を施してラミネートすることもできる。また、粘着層、金属箔、紙なども積層可能である。積層には既存のラミネート法を用いることが可能で、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法、押出ラミネート法などが挙げられる。また本フィルムは必要に応じて、コロナ処理の他、印刷、コーティング、蒸着などの表面処理や表面加工を行うこともできる。
本発明のフィルムは、内容物の品質保持や腐敗防止の観点から、更にガスバリア性樹脂層を積層する、あるいは、アルミニウム等の金属や、酸化珪素、アルミナ等の金属酸化物を蒸着加工する、ポリビニルアルコール(PVA)などのガスバリア性コート剤を塗布する等により、さらにガスバリア性や防湿性を向上させることができる。
<製造方法>
本フィルムは、種々の方法で製造可能であるが、例えば、以下の方法により製造することが好ましい。
脂肪族ポリアミド系樹脂(a1)及びエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)は、いずれも吸湿性が大きく、吸湿したものを使用すると原料を熱溶融し押出す際に水蒸気やオリゴマーが発生しフィルム化を阻害する。そのため、原材料の準備において、事前に乾燥して水分含有率を0.1質量%以下とするのが好ましい。また、フィルムの性質に影響を与えない範囲において、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、安定剤、染料、顔料、無機質微粒子などの各種添加剤を適宜用いることが出来る。
そして、各層の原材料をそれぞれ異なる押出機によって溶融押出を行い、共押出法により実質的に無定型で配向していないフィルム(以下「未延伸フィルム」という)を製造する。この未延伸フィルムの製造は、例えば、上記原料を2~8台の押出機により溶融した樹脂をフィードブロック、またはマルチマニホールドのフラットダイ、または環状ダイで合流させてから、多層フィルムとして押出した後、急冷することによりフラット状、または環状の未延伸フィルムとする共押出法を採用することができる。
次に、上記の未延伸フィルムを、フィルムの流れ方向(縦方向、MD方向)、およびこれと直角な方向(横方向、TD方向)において、一方向に通常2.0~5.0倍、好ましくは縦横二軸方向に各々2.5~4.5倍の範囲で延伸する。縦方向、および横方向の二軸延伸方向の延伸倍率が各々2.0倍より小さい場合は、延伸による配向の効果が少なく、フィルムの強度など機械物性が劣り、また二軸延伸方向の延伸倍率が各々5.0倍より大きい場合は、延伸時に積層フィルムが破断し易い。
二軸延伸の方法としては、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等、従来公知の延伸方法がいずれも採用できる。例えば、テンター式逐次二軸延伸方法の場合には、未延伸フィルムを40~100℃の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に2.0~5.0倍に延伸し、続いてテンター式横延伸機によって60~140℃の温度範囲内で横方向に2.0~5.0倍に延伸することにより製造することができる。また、テンター式同時二軸延伸やチューブラー式同時二軸延伸方法の場合は、例えば、60~200℃の温度範囲において、縦横同時に各軸方向に2~5倍に延伸することにより製造することができる。
引き続き、寸法安定性を付与するために得られた二軸延伸フィルムを熱固定する。熱固定温度は、200℃~225℃が好ましく、205~220℃の範囲がさらに好ましい。これにより、常温寸法安定性のよい、任意の熱収縮率を持った延伸フィルムを得ることが出来る。熱処理操作により、充分に熱固定された積層二軸延伸フィルムは、常法により冷却し巻き取ることが出来る。
熱固定温度が上記範囲内にあれば、熱固定が十分に行われ、ラミネート強度が維持される。またフィルムに十分な耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性が得られ、破断やフィルム表面の白化などのトラブルがない優れたフィルムが得られる。
本発明においては、熱固定による結晶化収縮の応力を緩和させるために、熱固定中に幅方向に0~15%、好ましくは3~10%の範囲で弛緩を行うことで、フィルムの収縮に追従した弛緩が十分に行われ、フィルムの幅方向に均一に弛緩するため、幅方向の収縮率が均一になり常温寸法安定性に優れたフィルムが得られる。
本発明においては、上記弛緩の後、さらに140℃~200℃の温度で、2~9%、好ましくは3~7%、更に好ましくは4~7%の範囲で再横延伸を行うことができる。再横延伸温度が上記範囲内にあれば、適度な延伸時の応力が得られ、均一な延伸が可能となるため、幅方向の横収縮率が均一になる。また、延伸後に熱固定がかからず、横収縮率が発現しやすい。また、再横延伸倍率が上記範囲内にあれば、シーラントの固化収縮に追従するのに十分な横収縮率が得られ、シール部分の外観が良好であり、また適度な収縮率が得られ、印刷やラミネートの工程で、シワや柄ズレ等のトラブルの発生を防止できる。上記方法で製膜された延伸フィルムは、常法により冷却し巻きとる。
<フィルム物性>
(酸素ガスバリア性)
本フィルムは、23℃、相対湿度50%の条件下での酸素透過率が2.0cc/m/24h/atm以下であることが好ましく、1.5cc/m/24h/atm以下であることがより好ましく、1.0cc/m/24h/atm以下であることが更に好ましく、より低い値であることが望まれる。酸素透過率が2.0cc/m/24h/atm以下であれば、包装用フィルムとして、内容物の変質を防止し、新鮮に保つのに十分な酸素ガスバリア性を維持することができるため好ましい。
(耐ピンホール性(耐屈曲ピンホール性))
本フィルムは、ゲルボフレックステスターを用い、23℃相対湿度50%下で3000回、5℃相対湿度50%下で500回、5℃相対湿度50%下で3000回、-25℃相対湿度50%下で1000回の各条件で屈曲試験を行い、発生したピンホール数を計測した。各条件で3回試験しその平均値を算出した。ピンホール数は、何れの条件においても4.0個/481cm未満が好ましく、2.0個/481cm未満がより好ましく、1.0個/481cm未満がさらに好ましく、少ないほど好ましく、低温でのピンホール数が少ないことが望ましい。4.0個/481cm未満であれば、食品包装フィルムとして運搬している際の屈曲や、フィルム同士の衝突によるピンホールが発生しにくく、ガスバリア性の低下による内容物の酸化劣化を抑えることができる。
(透明性)
本発明のフィルムは、JIS K7136に基づき測定される全光線透過率、拡散透過率によって計算される全ヘーズの値が20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましく、7.0%以下が特に好ましく、小さい値であるほどが好ましい。全ヘーズの値が係る範囲であれば、本フィルムは透明性に優れ、意匠性や、包装フィルムとして用いた際に内容物の視認性が良好である。
(熱水収縮率)
本フィルムは、95℃5分間の熱水収縮率が縦方向、横方向(MD方向、TD方向)ともに0.1%以上15%以下であることが好ましい。下限は0.3%以上がより好ましく、0.5%以上が更に好ましい。上限は10%以下がより好ましく、5%以下が更に好ましい。127℃5分間の熱水収縮率が縦方向、横方向(MD方向、TD方向)ともに1%以上30%以下であることが好ましい。下限は3%以上がより好ましく、5%以上が更に好ましい。上限は25%以下がより好ましく、23%以下が更に好ましい。
熱水収縮率が上記範囲未満の場合は、熱固定温度が高すぎる可能性があり、二軸延伸フィルムの耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性が低下し易い。また、熱水収縮率が上記範囲を超える場合は、熱固定が不十分である可能性があり、印刷、ラミネート、製袋加工などの後加工で施される熱で収縮を起こし、印刷時のずれやラミネート時のしわ、製袋品の歪みの原因となる。
熱水収縮率は高い方が、低温耐ピンポール性には有利であるが、フィルム機械強度や上述の後加工性は不十分となりやすい。本発明では、低い熱水収縮率でも、十分なフィルム機械強度が得られることが得られる効果がある。
(引張破断応力、引張破断伸び)
本フィルムは機械強度に優れるものであり、JIS K7127:1999に基づき測定される試験速度200mm/min、-10℃、23℃条件での引張破断応力が、縦方向、横方向(MD方向、TD方向)とも100~400MPaの範囲であることが好ましく、下限は150MPa以上がより好ましく、200MPa以上が更に好ましい。係る範囲の引張破断応力のフィルムであれば、内容物を包装した際に、フィルムの剛性を維持しつつ、屈曲によるピンホールや破断が生じにくい。
また、JIS K7127:1999に基づき測定される試験速度200mm/min、-10℃、23℃条件での引張破断伸びが、縦方向、横方向(MD方向、TD方向)の何れかが80%以上300%以下が好ましく、下限は100%以上がより好ましく、150%以上が更に好ましい。また、縦方向、横方向(MD方向、TD方向)の両方が係る範囲であるとフィルムが強靭性に優れ、特に好ましい。
(耐衝撃性)
本フィルムは耐衝撃性に優れるものであり、ASTM D3763に基づき測定される-10℃、23℃条件でのハイドロショット高速試験機による破壊エネルギーが0.3J以上であることが好ましく、0.5J以上がより好ましい。係る範囲の破壊エネルギーを有するフィルムであれば、内容物を包装し、例えば輸送の際に生じる衝撃によっても、破断やピンホールが生じにくい。
以下に本発明は実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、得られたフィルムの評価は次の方法により行った。
(1)酸素ガスバリア性
酸素ガスバリア性は、JIS K-7126 B法に準拠して23℃、50%RHでの酸素透過率(単位:cc/m/24h/atm)を測定した。
(2)耐ピンホール性(耐屈曲性)
20cm×28cmの大きさに切断したフィルムを、以下の示す所定の温度、相対湿度50%の条件下に、24時間以上静置して調温湿し、MIL-B-131Cの規格に準拠した理学工業社製ゲルボフレックステスターNo.901型を使用して、次のように屈曲テストを繰り返し、481cm当たりのピンホール数を計測した。フィルムを長さ20cm円周28cmの円筒状にし、当該巻架した円筒状フィルムの一端を上記テスターの円盤状固定ヘッドの外周に、他端を上記テスター円盤状可動ヘッドの外周にそれぞれ固定した。固定ヘッドと可動ヘッドとは17.5cm隔てて対向している。
次いで、上記可動ヘッドを上記固定ヘッドの方向に、平行に対向した両ヘッドの軸に沿って8.8cm接近させる間に440゜回転させ、続いて回転させることなしに6.3cm直進させ、その後、これらの動作を逆に行わせ、上記可動ヘッドを最初の位置に戻すまでの行程を1回とする屈曲テストを、1分あたり40回の速度で、連続して所定の回数行った。その後、屈曲テストしたフィルムの固定ヘッドと可動ヘッドの外周に固定した部分を除いた17.5cmx27.5cmの面積481cm内の部分に生じたピンホール数(単位:個数/481cm)を、サンコー電子研究所製ピンホールテスターTRD型により1kVの電圧を印加して、計測した。
温度、湿度、屈曲試験回数は、次の4条件で行った。(i)23℃相対湿度50%、3000回、(ii)5℃相対湿度50%、500回、(iii)5℃相対湿度50%、3000回、(iv)-25℃相対湿度50%、1000回。
(3)透明性
透明性は、JIS K7136に準拠してヘーズ(単位:%)を測定して評価した。
(4)熱水収縮率
フィルムの両端部および中央の三点から、縦方向120mm×横方向120mmに切り出し、このサンプルの縦横方向(MD方向およびTD方向)にそれぞれ100mm超の基準線を三本引いた。このサンプルを23℃相対湿度50%雰囲気下に24時間静置して基準線を測長した。測長した熱処理前の長さをFとする。このサンプルを95℃の熱水中に5分間浸した後、あるいは、127℃5分間のオートクレーブ試験後に取り出した。更に、23℃相対湿度50%雰囲気下に30分静置した後、前記の基準線を測長し、熱処理後の長さをGとする。以下の式を使用して、縦方向、横方向の三本の熱水収縮率(単位:%)の平均値を算出した。
(式) (F-G)/F×100 (%)
(5)引張破断応力、引張破断伸び
JIS K7127:1999に基づき、試験速度200mm/minでの縦方向、横方向(MD方向、TD方向)への引張破断応力(単位:MPa)、引張破断伸び(単位:%)を-10℃と23℃の条件下で測定した。
(6)耐衝撃性
ASTM D3763に基づき測定されるハイドロショット高速試験機による破壊エネルギー(単位:J)を-10℃と23℃の雰囲気下で測定した。
(7)エラストマーの分散形態
フィルムを垂直に切断し、A層、B層について、断面染色TEM法、倍率1万倍で視野角4×4μmを3箇所ずつそれぞれ観察し、観察された分散粒子の水平方向の最大直径(単位:μm)を計測した。また、分散粒子のフィルム厚み方向の長さ(短径)に対するフィルム水平方向の長さ(長径)のアスペクト比(長径/短径)を計測した。
<使用原料>
(脂肪族ポリアミド系樹脂(N))
N1:ポリアミド6(相対粘度(96%硫酸)3.34)
<エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(V)>
V1:EVOH(エチレン含有量25モル%、ケン化度99%以上)
V2:EVOH(エチレン含有量32モル%、ケン化度99%以上)
<熱可塑性エラストマー(E)>
E1:ポリエステル系エラストマー、イソフタル酸含有ポリブチレンテレフタレート-ポリテトラメチレンエーテルグリコール共重合体(ポリテトラメチレンエーテルグリコール比率44質量%)
E2:ポリエステル系エラストマー、無水マレイン酸変性-ポリブチレンテレフタレート-ポリテトラメチレンエーテルグリコール共重合体(ポリテトラメチレンエーテルグリコール比率76質量%、酸変性比率0.3質量%)
E3:ポリアミド系エラストマー、ポリアミド12-ポリテトラメチレンエーテルグリコール共重合体(ポリテトラメチレンエーテルグリコール比率70質量%)
E4ポリアミド系エラストマー、ポリアミド12-ポリテトラメチレンエーテルグリコール共重合体(ポリテトラメチレンエーテルグリコール比率50質量%)
E5ポリオレフィン系エラストマー、無水マレイン酸変性-エチレン-ブテン1-4-メチルペンテン共重合体
E6:スチレン系エラストマー、SIBS(スチレン含有量20質量%、数平均分子量50000、屈折率1.528)
E7:スチレン系エラストマー、SIBS(スチレン含有量28質量%、数平均分子量70000、屈折率1.533)
E8:スチレン系エラストマー、SEBS(スチレン含有量20質量%、数平均分子量90000)
E9:スチレン系エラストマー、アミン変性SEBS(スチレン含有量30質量%)
(試験1~8)
上記略号で示す樹脂をφ40mm単軸押出機により配合して温度250℃で押出し、50μm厚の単層無延伸フィルムを作製し、評価結果を表1に示した。
試験2、試験3により、ポリアミド6に対して、屈折率が近く、かつ相溶性に優れたポリエステル系エラストマーを添加することにより、透明性に優れた単層無延伸フィルムを得ることができた。また、試験3から、無水マレイン酸変性ポリエステル系エラストマーは、ポリアミド6との親和性が高く、試験3の断面TEM観察ではエラストマーの最大直径は1μm以下と小さく、ポリアミド6のマトリックス中に緻密なポリエステル系エラストマーのドメインを形成することができ、透明性、耐屈曲ピンホール性に優れたフィルムが得られることがわかった。
(実施例1~2、実施例4~5、比較例1~7)
原材料を表2に示す質量比で配合したA層の樹脂組成物をφ40mm単軸押出機に投入し、またB層の樹脂組成物をφ32mm単軸押出機に投入し、両押出機により溶融させた樹脂を分配ブロックで分割かつ共押出Tダイ内で多層化させ、A層/B層/A層の3層構成の溶融フィルムを押出し、30℃の冷却ロール上で急冷して未延伸多層フィルムを作製した。
次いで、得られた未延伸多層フィルムを55℃条件のロール式縦延伸機にて縦方向に3倍延伸し、更に120℃条件のテンター式横延伸機にて横方向に3.5倍延伸した。引き続き、得られた二軸延伸フィルムを220℃条件で熱固定した後、5%の横弛緩を行った。その後、室温まで冷却し、クリップの把持部に相当する両端部分はトリミングし、トリミング後の製品フィルムをロール状に巻き取り、A層/B層/A層の各層厚が5.5μm/4.0μm/5.5μm、総厚15.0μmの二軸延伸多層フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
(実施例3)
実施例1において、A層とB層の樹脂組成物をそれぞれφ65mm単軸押出機に投入した他は同様にして未延伸多層フィルムを作製した。
次いで、得られた未延伸多層フィルムを60℃の条件のロール式延伸機にて縦方向2.7倍延伸し、次いで、100℃条件のテンター式横延伸機にて横方向に3.4倍延伸した。引き続き、得られた二軸延伸フィルムを215℃条件で熱固定を行った。その後、室温まで冷却し、クリップの把持部に相当する両端部分はトリミングし、トリミング後のフィルムをロール状に巻き取り、A層/B層/A層の各層厚が5.5μm/4.0μm/5.5μm、総厚15.0μmの二軸延伸多層フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
実施例1~5に示す多層フィルムは、透明性、耐屈曲ピンホール性、酸素ガスバリア性、引張特性、耐衝撃性などのバランスに優れていた。
なかでも、実施例3は、耐屈曲ピンホール試験が-25℃相対湿度50%1000回の過酷条件においてもピンホール数が僅か1.0個/481cmであり、酸素ガスバリア性、透明性も兼ね備える大変優れたフィルムであった。
実施例3のA層中のエラストマー分散粒子の水平方向の最大直径は1μm以下、アスペクト比2以上、B層中のエラストマー分散粒子の水平方向の最大直径は2μm以下であった。図1に本発明の3層構成の場合の多層フィルムの断面(A層10、B層20)の模式図を示す。
一方で、比較例1~7に示す多層フィルムは、透明性、耐屈曲ピンホール性、または、引張破断伸びの何れかにおいて劣っていた。具体的には、比較例1は耐ピンホール性が悪く、比較例2は引張特性が悪く、比較例3、5は耐ピンホール性が不十分であり、比較例4は透明性と耐ピンホール性が特に悪く、比較例6~7は透明性が悪く、加えて比較例7は引張特性も悪かった。
(実施例6~8、比較例8)
原材料を表3に示す質量比で配合したA層又はC層の樹脂組成物をφ65mmの押出機に投入し、A層の樹脂組成物をφ50mmの押出機に投入し、B層の樹脂組成物をφ50mmの押出機に投入し、それぞれ溶融させた樹脂組成物を分配ブロックで分配かつ共押出Tダイ内で多層化させ、(A層又はC層)/A層/B層/A層/(A層又はC層)の5層構成の溶融フィルムを押出し、30℃の冷却ロールの上で急冷して未延伸多層フィルムを作成した。
次いで、得られた未延伸多層フィルムを50℃条件のロール式縦延伸機を用いて縦方向に3倍延伸し、更に120℃条件のテンター式横延伸機にて横方向に3.5倍延伸した。引き続き、得られた二軸延伸フィルムを210℃条件で熱固定を行った。その後、室温まで冷却し、クリップに把持部に相当する両端部はトリミングし、トリミング後のフィルムをロール状に巻き取り、(A層又はC層)/A層/B層/A層/(A層又はC層)の各層厚が3.5/2.0/4.0/2.0/3.5μm、総厚15.0μmの二軸延伸多層フィルムを得た。評価結果を表3に示す。
実施例6~8の多層フィルムは、何れも、透明性、低温下の耐屈曲ピンホール性、酸素ガスバリア性、引張強度、耐衝撃性などのバランスに優れていた。また、A層中のエラストマー分散粒子の水平方向の最大直径は1μm以下、アスペクト比2~10、B層中のエラストマー分散粒子の水平方向の最大直径は0.5μm以下、アスペクト比1~2であった。また、ポリアミド系フィルムとして良好な熱水収縮性を示した。
比較例8は、低温耐ピンホール性が不十分であった。
本発明のフィルムは、酸素ガスバリア性、透明性に優れ、かつ、耐屈曲ピンホール性、熱安定性に優れるため、各種包装体用フィルムとして用いた際に、外部からの酸素ガスの侵入を低減し、食品や医薬品等内容物の酸素による変質を防ぎ、新鮮に保つことができるため、主に食品包装用フィルムとして、またその他各種包装用フィルムとして、有用である。
A層:10
B層:20
a1:脂肪族ポリアミド系樹脂
a2:ポリエステル系エラストマー
b1:エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物
b2:スチレン系エラストマー

Claims (7)

  1. 脂肪族ポリアミド系樹脂(a1)とポリエステル系エラストマー(a2)を含むA層とエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(b1)とスチレン系エラストマー(b2)を含むB層とを有し、A層、B層、A層の順で積層された多層フィルムであって、
    前記A層におけるポリエステル系エラストマー(a2)の分散粒子の水平方向の最大直径が1μm以下であり、前記B層におけるスチレン系エラストマー(b2)の分散粒子の水平方向の最大直径が2μm以下である、多層フィルム
  2. 前記ポリエステル系エラストマー(a2)が酸変性物である請求項1に記載の多層フィルム。
  3. 前記スチレン系エラストマー(b2)が、スチレンブロックと共役ジエンブロックからなる共重合体、当該共重合体の水素添加物、およびスチレンブロックとイソブチレンブロックからなる共重合体からなる群から選ばれる1種以上である請求項1または2に記載の多層フィルム。
  4. 前記スチレン系エラストマー(b2)を構成するスチレンモノマー組成比が50質量%未満である請求項1~3の何れかに記載の多層フィルム。
  5. 95℃5分間の熱水収縮率が、フィルムの縦方向、横方向とも0.1%以上15%以下である請求項1~の何れかに記載の多層フィルム。
  6. 5℃相対湿度50%、屈曲500回のゲルボフレックス試験条件においてピンホール数が4.0個/481cm未満である請求項1~の何れかに記載の多層フィルム。
  7. 請求項1~の何れかの多層フィルムを用いた包装体。
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