以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態を詳細に説明する。各実施例等に亘り、同一の機能及び形状等を有する構成要素、すなわち部材や構成部品等については、混同の虞がない限り一度説明した後では同一符号を付すことによりその説明を省略する。
図1、図2を用いて、本発明に係る画像形成装置の一例について説明する。図1は本発明に係る画像形成装置の外観斜視図、図2は図1に示した画像形成装置の内部構成の概要を示す模式的な断面図である。
図1、図2に示す画像形成装置1は、電子写真方式で画像形成を行うカラー複写機である。画像形成装置1は、装置本体1Aのほぼ中央部に配設された画像形成部3と、画像形成部3の下部に配設された給紙部2とを有している。画像形成装置1は、画像形成部3の上部に配設された画像読取部4と、画像読取部4の上部に搭載された原稿搬送部としての自動原稿搬送装置(以下、「ADF」と略称する)5とを有している。画像読取部4とADF5とは、画像読取装置6を構成している。ADFは、本発明に係るシート給送装置を備えている。なお、図2に示すADF5では、図の簡明化を図るため、ADF5が備えているシート給送装置としての原稿給紙部35(以下、「DF給紙部」とも称する)の一部の構成の図示を省略している。
図1等において、Yは原稿搬送方向でもあるシート給送方向(以下、「副走査方向」ともいう)を、Xはシート給送方向Yと直交するシート幅方向(以下、「主走査方向」ともいう)を、Zはシート給送方向Y及びシート幅方向Xと直交する上下方向(以下、「鉛直方向」あるいは「高さ方向」ともいう)を、それぞれ示している。
画像形成装置1は、画像読取装置6により読み取られた原稿の画像に係る画像データ、あるいは外部のコンピュータから送信されてくる画像データに基づいて、画像処理や画像形成処理を実行し、読み取った画像をシート状記録媒体としての記録用紙に記録したり、画像ファイルを転送出力したりすることができる。画像形成装置1は、内蔵されている制御部30によって画像読取装置6及びADF5の作動が制御されるほか、画像形成部3、給紙部2等の作動も制御される。
画像形成装置1は、画像送受信可能なファクシミリ機能を含み、外部のパソコンやホストコンピュータなどのコンピュータと送受信可能に接続された画像送受信装置31を有する。画像送受信装置31は、画像読取装置6により読み取られた原稿の画像などを相手先の装置であるファクシミリ、外部のコンピュータに送信する機能を備えている。画像送受信装置31は、制御部30とも送受信可能に接続されている。
画像読取装置6は、ADF5と協働して原稿の自動搬送中に原稿画像を読み取るDFスキャナモード(搬送原稿読取りモード)と、平坦なコンタクトガラス41上に載置された原稿の画像を読み取るフラットベッドスキャナモード(載置原稿読取りモード)とに切替え可能に構成されている。
フラットベッドスキャナモードにおいて、画像読取部4は、フラットベッドコンタクトガラス41上の原稿(例えば原稿シート、厚紙、本等)の画像面に光を照射して、その画像面からの反射光を画像信号に変換することにより原稿画像を読み取ることができる。
DFスキャナモードにおいて、ADF5は、シート載置台すなわちシート載置部材としての原稿テーブル51上に載置積載された原稿シート束から原稿シートを1枚ずつ分離して原稿搬送経路52内に搬入し、原稿搬送経路52を形成するガイドに沿って搬送する。そして、その搬送中、原稿シートが、その搬送方向の上流側部分から順次部分的に画像読取部4の上面側のDFコンタクトガラス42に対面するようになっている。すなわち、画像読取装置6は、ADF5により搬送される原稿シート上の画像を画像読取部4のDFコンタクトガラス42上で順次読取りすることにより、DFスキャナの機能を発揮できるようになっている。
ADF5は、装置本体1Aの上面側の後部(背面側の部分)に図示しないヒンジ等の開閉機構を介して取り付けられている。ADF5は、装置本体1Aに対してフラットベッドコンタクトガラス41上を開放する開位置と、フラットベッドコンタクトガラス41上の原稿を押付け可能な閉位置とを採り得る。
画像形成部3は、電子写真方式の一般的な画像形成手段を有して構成されており、露光装置7と、装置本体1Aに対して着脱可能に構成された複数のプロセスカートリッジ8Y、8M、8C、8Kとを備えている。各プロセスカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの構成は、用いられる現像剤のトナー色が異なる(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)ほかは、同一の構成であるため、プロセスカートリッジ8Yを代表して説明する。尚、画像形成部3は、プロセスカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに限らず、画像形成装置本体に対して固定された装置構成であってもよい。
プロセスカートリッジ8Yは、像担持体としての感光体ドラム9Yと、感光体ドラム9Yの周囲に設置された帯電装置と、現像装置10Yと、クリーニング装置とを備えている。
また、画像形成部3には、プロセスカートリッジ8Y、8M、8C、8Kのほかに、中間転写ベルト11と、2次転写装置12と、定着装置13等とを備えている。
給紙部2は、用紙サイズの異なる記録紙を収納する上下段の給紙カセット21、22と、給紙カセット21、22に収納された記録紙を1枚ずつに分離して給送する各種ローラからなるシート給送手段23とを備えている。また、給紙部2は、シート給送手段23によって1枚ずつに分離された記録紙を、画像形成部3の2次転写位置まで搬送する各種ローラからなるシート搬送手段24を備えている。
画像形成装置1の動作を説明する。まず、プロセスカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの各帯電装置によって、各感光体ドラム9Y、9M、9C、9K表面が一様に帯電される。一方、画像読取装置6において、載置原稿又は搬送原稿の画像が第1読取ユニット45や第2読取ユニット69によって読み取られる。この原稿画像の読み取りによって色別に分解された画像情報に基づいて、露光装置7から各感光体ドラム9Y、9M、9C、9Kに向けてレーザ光が照射される。これにより、各感光体ドラム9Y、9M、9C、9K上には、静電潜像が形成される。
次に、プロセスカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの現像装置10Y、10M、10C、10Kの作動により、感光体ドラム9Y、9M、9C、9K上に色分けしたトナー像(Yトナー像、Mトナー像、Cトナー像、Kトナー像)が形成される。これらトナー像は、中間転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム9Y、9M、9C、9Kに対向して設けられた各1次転写ローラによって、中間転写ベルト11上に重ね合わせ転写されて4色トナー像となる。
また、原稿読取動作の開始とほぼ同時に、給紙部2では給紙動作が開始される。即ち、シート給送手段23の1つが選択されて回転され、複数の給紙カセット21、22の1つから記録紙が給送される。給送された記録紙は、シート搬送手段24によって画像形成部3の2次転写装置12に向けて搬送され、この際、2次転写装置12によって中間転写ベルト11上に重ね合わせ転写された4色トナー像が一括して記録紙に2次転写されて4色のカラー画像となる。
この後、4色のカラー画像が形成された記録紙は、ベルト搬送装置によって定着装置13に搬送され、定着装置13によって記録紙に転写された未定着のカラー画像のトナーが溶融されて、4色のカラー画像が記録紙に定着される。この後、4色のカラー画像が定着された記録紙は、排紙ローラ対14によって機外の排紙トレイに排出される。また、記録紙に両面印刷する場合には、定着装置13の左下方に配置された反転装置及び再給送装置を経由して2次転写装置12に再給送して、記録紙の両面に画像を形成するようになっている。
図3~図10を用いて、ADF5の細部構成及び動作について説明する。図3は、図1に示した画像形成装置に備えられたADFの原稿テーブル周りを示す平面図、図4は、図3に示したADFの一例を示す断面図である。図5は、図4に示したADFのUターン搬送経路及び画像読取装置のDFスキャン部の概要を示す模式的な断面図である。図6は、図4に示したADFのDF給紙部の動作を示す図である。図7は、図6に続くADFのDF給紙部の動作を示す図、図8は、図7に続くADFのDF給紙部の動作を示す図である。図9は、図8に続くADFのDF給紙部の動作を示す図、図10は、図9に続くADFのDF給紙部の動作を示す図である。
図3に示すように、シート載置部材としての原稿テーブル51には、原稿テーブル51に載置しセットされた2点鎖線で示す原稿シート束SA又は原稿シートSをシート幅方向Xで位置決めする左右一対の可動のサイドガイド板54が装着されている。これらサイドガイド板54は、原稿テーブル51と原稿シート束SA又は原稿シートSの幅方向の中心を一致させるように相対的に接近又は離間可能に構成されている。なお、サイドガイド板54は、前述したものに限らず、原稿テーブル51の一方の縁部側に原稿シート束SA又は原稿シートSの一方の縁部を当接させて他方の縁部側のみを移動可能に配置したものでもよい。
ADF5は、図2及び図3に示すように、少なくともその上方を開閉可能としたカバー55によって覆われている。カバー55は、原稿シート束SAの先端がそのカバー55内の下方に入るように原稿テーブル51の給紙側の端部付近の上方に給紙口55aを形成している。また、カバー55は、給紙口55aよりも内部に原稿テーブル51の先端部分が収納されるように、原稿テーブル51の先端部分の上方を覆っている。また、ADF5は、給紙口55aから排出口56までの原稿搬送経路52の搬送通路を形成する主要なガイド部分を、カバー55等に形成されたリブ等によって形成している。
図4に示すように、原稿搬送経路52は、図2に示した給紙口55aよりもシート給送方向Y下流側近傍に配置されたピックアップローラ58と、ピックアップローラ58と対向して配置された対向ガイド板59と、互いに対向して配置された給紙ローラ52a及び分離板60と、ピックアップローラ58と給紙ローラ52aとの間に配設されたセットフィラー57及びシャッタ61とを有するDF給紙部35によって形成されている。
DF給紙部35には、上記したシート載置部材としての原稿テーブル51が含まれる。
ピックアップローラ58は、原稿テーブル51よりシート給送方向Yの下流側で、原稿シートSを給送する回転部材である。また、ピックアップローラ58は、上下方向Zに昇降可能であり、対向ガイド板59上の原稿シート束SAから原稿シートSを1枚ずつシート給送方向Yにピックアップ給送するピックアップ部材でもある。ピックアップローラ58は、原稿シート束SAの最上面の原稿シートSに接触して原稿シートSを繰り出す位置と、この位置から離間した方向に昇降移動可能に構成されている。
対向ガイド板59は、ピックアップローラ58に対向し原稿シート束SA(図5等参照)をガイドする対向ガイド部材である。また、対向ガイド板59は、位置が固定された対向ガイド部材である。
図4において、シート載置部80は、原稿シート束SA(図5等参照)が載置される、原稿テーブル51を有する部位である。図4に示すように、シート載置部材としての原稿テーブル51は、シート給送方向Yにおいて、シート載置部80の全域にわたって設けられている。
ピックアップローラ58と対向ガイド板59とは、それぞれシート挟持部材であって、原稿シート束SAの下流側を挟持するシート挟持手段を構成している。
ピックアップローラ58と対向ガイド板59とで原稿シート束SAを挟持したときに、原稿シート束SAが載置されている原稿テーブル51が移動するように構成されている。この詳細は、後述する動作で説明する。
給紙ローラ52a及び分離板60は、ピックアップローラ58によりピックアップ給送されてきた原稿シートを1枚ずつに分離する分離手段ないし分離ユニットである。
なお、分離手段の給紙ローラ52aは、これに限らず、給紙ベルト方式のものでもよいし、分離板60はこれに限らず、給紙ローラ、給紙ベルトとは逆方向に回転する分離ローラ方式のものでもよい。
セットフィラー57は、シート給送方向Yを基準として給紙口55a側の上流端にセットフィラー軸57aを有している。セットフィラー57は、原稿シート束SAの載置によりセットフィラー軸57aを支点として所定の角度範囲内で回動、すなわち揺動するよう構成されている。ットフィラー57を有している。セットフィラー57は、ユーザ操作による原稿シート束のセット時に、原稿シート束SA又は原稿シートSの先端が突き当たることにより、セットフィラー軸57aを中心に図において時計回り方向に回転するシート検知部材である。なお、セットフィラー軸57aは、図の簡明化を図るため図4及び図5にのみ図示し他の図では省略する。
シャッタ61は、原稿シート束SA又は原稿シートSの先端が突き当たることで、原稿シート束SA又は原稿シートSが突き当り位置よりシート給送方向Yの下流に載置されないようにする原稿シート束規制部材、及び原稿シート束SA又は原稿シートSの先端を位置決めする位置決め部材である。
シャッタ61は、シートの先端を規制する規制位置と規制解除位置とに回動可能に設けられている。シャッタ61は、ピックアップローラ58の昇降に連動してシャッタ61の回動を規制する規制位置と回動を規制しない規制解除位置とに回動可能に設けられたシャッタ規制部材(図示せず)によって動きが規制される。このようなシャッタ規制部材としては、例えば本出願人が提案した特開2012-091885号公報の図1~図4等に開示されているシャッタ規制部材(101)を用いることができる。
セットフィラー57とシャッタ61とは互いに干渉しないように対向ガイド板59のシート幅方向Xにずらせて配設されている。セットフィラー57とシャッタ61とは、対向ガイド板59等とも干渉しないように配置されている。
DF給紙部35の構成では、シャッタ61が無く、給紙ローラ52aの配置位置まで原稿シートを挿入可能な構成のものや、セットフィラー57ではなく原稿シートに非接触なセンサが配置される構成のものでもよい。
原稿テーブル51は、シート幅方向Xに沿う軸70の回りに揺動可能に構成されている。軸70を支点として、原稿シート束SAの上流側が鉛直上方向に湾曲するよう原稿テーブル51を揺動させる駆動部材の一例としての駆動モータ71を備えている。駆動モータ71は、正逆両方向に回動可能なモータからなり、駆動伝達手段の一例としてギアを介して軸70に連結されている。
駆動モータ71は、所定のタイミングで駆動される。すなわち、ピックアップローラ58と対向ガイド板59とで原稿シート束SAの下流側が挟持されたときに、原稿シート束SAの上流側が鉛直上方向に湾曲するよう原稿テーブル51を揺動させるべく駆動モータ71が駆動される。
原稿テーブル51は、ADF5の筐体フレームに支持された軸70と一体的に構成されていてもよいし、軸70と別体で構成されていてもよい。
原稿テーブル51の回転支点である軸70は、図4、図5に示すように、隣合う対向ガイド板59のシート給送方向Yの上流端部近傍にあることが好ましい。また、軸70は、原稿テーブル51のシート給送方向Yの下流端部に複数設けられているようなものでもよい。
ADF5では、原稿テーブル51に載置された原稿シート束SAから最上位の原稿シートSを1枚ずつ分離して反転搬送するよう構成されている。すなわち、図5に示すように、原稿搬送経路52のDF給紙部35の下流では、U字形状の原稿搬送経路52内に1枚に分離され搬入された原稿シートSを反転させ、DFコンタクトガラス42に沿ってその上面の所定の読取動作位置Pd1(特定作業位置)を通過するように搬送する。
図2の画像読取装置6に示す第1読取ユニット45は、一体型光学走査ユニット47と、ガイドロッド46によってシート給送方向(副走査方向)Yに移動自在に案内されるハウジング48と、一体型光学走査ユニット47をDFコンタクトガラス42又はフラットベッドコンタクトガラス41の下面に押し付ける圧縮ばね49とを有する。そして、第1読取ユニット45は、上記構成部品を有することで移動可能に構成されている。
第1読取ユニット45は、図5に示す読取位置47(Pb)と、図5に示す読取位置47(Pa)との間、読取位置47(Pa)から画像読取部4の装置右側面位置まで移動して走査可能である。
第1読取ユニット45は、図2に実線で示すように、一体型光学走査ユニット47がDFコンタクトガラス42の下面に位置して搬送される原稿シートの一方の画像を読み取るDFスキャナモードの時に図5に示す読取位置47(Pb)に移動可能である。また第1読取ユニット45は、図2に破線で示すように、一体型光学走査ユニット47がフラットベッドコンタクトガラス41の下面に位置して載置された原稿シートの画像を読み取るフラットベッドスキャナモードの時に図5に示す読取位置47(Pa)に移動可能である。
図2及び図5に示すように、ADF5には、DFコンタクトガラス42の上面に位置して搬送される両面原稿シートの他方の画像を読み取る第2読取ユニット69が配置されている。
図4、図5に示すように、原稿搬送経路52は、原稿シートSの搬送のための複数の搬送ローラ52b、52c、52dを有しており、それらより下流側に排紙ローラ対52e、52fを有している。なお、これら搬送及び排紙用のローラ群の配置数や配置場所は、原稿搬送経路52の経路設定条件や、原稿シートSの最小サイズの原稿搬送方向であるシート給送方向Yにおける長さ等に応じて任意に設定可能である。
画像読取り後の原稿シートSは、排紙ローラ対52e、52fにより排出部としての排紙トレイ53に排出され回収される。
上記分離ユニット、複数の搬送ローラ52b、52c、52d及び排紙ローラ対52e、52fは、原稿搬送経路52上に配置された複数のセンサやそれらの検知情報を基に搬送制御を実行するコントローラと共に、第1搬送部50を構成している。これにより、第1搬送部50は、原稿シートSを原稿テーブル51上から搬入するとともに、原稿シートSが読取動作位置Pd1を通過するように折返し搬送し、原稿テーブル51外の排紙領域である排紙トレイ53上のスタック領域内に排紙する。上記コントローラは、図2に示した制御部30と機能分担してもよい。
上記した複数のセンサとは、例えば公知の給紙適正位置センサ、突当センサ、原稿幅センサ、読取入口センサ、レジストセンサ、排出センサ等であり、それらのセンサが原稿シートSの搬送方向上流側から下流側に順に配置される。勿論、通常の原稿シートSは、PPC(プレーンペーパコピー:普通紙)その他の湾曲の容易なシートで、画像記録面を形成し得るものである。
原稿テーブル51に載置された原稿シート束SAから最上位の原稿シートSから順に分離・搬送・排紙する場合、上記したUターン搬送パスで行う。Uターン搬送パスの利点としては、折り返すように反転させる搬送をすることにより原稿シートのページ面順を狂わせることなく排紙スタックでき、かつシート幅方向Xの機械サイズを小さく収めることができる。不利な点としては、湾曲剛性が高い原稿、例えば葉書や名刺などの厚紙全般を搬送することが困難である。
次に、図6~図10を用いて、図4に示したDF給紙部35の動作について説明する。図6~図10に示す一例を始めとして後述する例では、説明の簡明化を図る上から原稿テーブル51に載置される原稿シート束SAがシート給送方向Yのサイズが同じの複数(図では3枚)の原稿シートSからなる場合について説明する。具体的には、原稿シート束SAの最上面に位置する原稿シートSを最上位の原稿シートS1とし、この最上位の原稿シートS1の下面(裏面)に接触して載置される原稿シートSを次の原稿シートS2とし、この次の原稿シートS2の下面(裏面)及び原稿テーブル51の上面に接触して載置される原稿シートSを最下位の原稿シートS3(次次の原稿シートS3ともいう)として説明する。
図6に示すように、原稿セット時におけるイニシャル状態では、原稿テーブル51は原稿シート束SAを載置する略水平状態にあり、ピックアップローラ58は対向ガイド板59の上方に離間している。この状態では、対向ガイド板59の上方に離間しているピックアップローラ58と、対向ガイド板59の対向ガイド面との間に空間が設けられている。この空間があることで給紙口55a(図2参照)を介して原稿シート束SAの先端が図6の規制位置状態にあるシャッタ61に突き当たるまで原稿シート束SAを挿入することができる。同時に、挿入された原稿シート束SAによってセットフィラー57が図において時計回りに回転し、セットフィラー57の近傍に設けられた突当センサ(図示せず)によって原稿シート束SAが挿入、載置されたことが検知される。
原稿シート束SAの載置が検知された後、図7に示すように、ピックアップローラ58は原稿シート束SAの接触方向に移動して最上位の原稿シートS1に接触する。ピックアップローラ58は図示しないトルクリミッタを介して駆動されて移動しているため、ピックアップローラ58の最上位の原稿シートS1への押し付け力は、上記トルクリミッタが受けるトルクが空転トルクに達するまで上昇する。この状態で、原稿シート束SAの下流側が対向ガイド板59とピックアップローラ58とで挟持される。
原稿シート束SAの下流側が挟持されたときに、図8に示すように、原稿シート束SAの挟持位置よりシート給送方向Yの上流側の原稿シート束SAを湾曲させるように原稿テーブル51が反時計回りに回転するように、駆動モータ71が駆動される。この際、原稿シート束SAの下流側が挟持された状態において、原稿テーブル51が略水平状態にある載置位置P1から反時計回りに回転して湾曲位置P2を占めるように、駆動モータ71が駆動制御される。原稿テーブル51が湾曲位置P2にある状態において、原稿シート束SAが湾曲することで原稿シートS間の密着状態が解かれ、捌かれる。この詳細は後述の図11及び図12を参照して説明する。
上述したように、原稿テーブル51は、軸70を回転中心として、原稿シート束SAを載置する破線で示す載置位置P1から反時計回りに回転して、上流側の原稿シート束SAを鉛直上方向に湾曲させる実線で示す湾曲位置P2を占めるように、駆動モータ71が駆動制御される。載置位置P1は、原稿シート束SAの初期位置でもある。すなわち、原稿テーブル51は、軸70を回転中心として、載置位置P1と湾曲位置P2との間で移動可能かつ揺動可能に構成されている。
ピックアップローラ58の最上位の原稿シートS1の接触後に、シャッタ61は原稿シート束SAの突き当てを受け止めるストッパ機能が解除されて図9において時計回りに回転可能になる。
次いで、図9に示すように、原稿テーブル51は時計回りに回転して載置位置P1に復帰する。そして、ピックアップローラ58が最上位の原稿シートS1をシート給送方向Yの下流へと搬送するよう回転する。この際、ピックアップローラ58の最上位の原稿シートS1への押し付け力及びピックアップローラ58と最上位の原稿シートS1との摩擦係数によって最上位の原稿シートS1はシート給送方向Yの下流に搬送力を得る。これにより、原稿シートS1はシャッタ61及びセットフィラー57を押しのけるように搬送される。原稿シート束SAのうち、最上位側から理想的には1枚の最上位の原稿シートS1のみがシート給送方向Yの下流に搬送される。
しかしながら、最上位の原稿シートS1は次の原稿Sシート2と接触し、次の原稿シートS2は次々の原稿シートS3(最下位の原稿シート3)が対向ガイド板59の対向ガイド面と接触するように接触が続いている。このことから、実際は最上位側から搬送する場合でも下位の原稿も搬送する重送が発生してしまうことがある。
加えて、図10に示すように、ピックアップローラ58の回転搬送によって、原稿シート束SAの最上位の原稿シートS1、次の原稿シートS2、次々の原稿シートS3が重送されようとした場合に、給紙ローラ52aの回転方向に対して分離板60が最上位の原稿シートS1以外の次の原稿シートS2、次々の原稿シートS3の抵抗となることにより、次の原稿シートS2、次々の原稿シートS3の重送がさらに抑制される。
重送が抑制された原稿シートSは、図4及び図5に示すUターン搬送パスを構成している複数の搬送ローラ52b、52c、52dにより折返し搬送され、排紙ローラ対52e、52fによって排紙トレイ53上のスタック領域内に排紙される。
図4~図10に示したADF5の一例のDF給紙部35では、図4の載置位置P1にある原稿テーブル51が図8に示したように軸70を回転支点として反時計回りに回転して湾曲位置P2を占めたときに、図4の排紙トレイ53の上方に空間ができるため排紙された原稿シートSの取り出し性も改善できる。
重送についてさらに説明する。原稿シートが紙で形成された原稿紙間の密着力が高い原稿は、一般的に重送が発生しやすい傾向にある。例えばコート紙でできた原稿シートは、表面が加工されて平滑度が高く、原稿シート(原稿紙)間が密着しやすく、重送が発生しやすい傾向にある。しかし、DF給紙部35では、コート紙でできた原稿紙間の密着力が高い原稿を搬送する場合にも、図8に示したように、原稿シート束SAを湾曲させて捌くことにより、重送を抑制している。
図11及び図12を用いて、上述した原稿シート束SAの湾曲による原稿シートずれ・捌きについて説明する。同図において、破線が湾曲前の原稿シート、実線が湾曲後の原稿シートをそれぞれ示す。
湾曲される原稿シートは、図8に例示したように、シート挟持手段によって挟持されている位置(シート給送方向Yの下流側の原稿シート束SA)は固定されているのに対して、シート給送方向Yの上流側の原稿シート束SAは開放されている。
図11に示すように、簡易的に原稿シートの厚さ(例えば原稿紙厚)及び原稿シートの材質(例えば原稿紙)による剛性を考慮しないで湾曲する箇所を曲面としてとらえると、曲率中心側に近い原稿シートS3ほど湾曲半径は短く円弧長は短い。曲率中心側に遠い原稿シートS1ほど湾曲半径は長く円弧長は長い。原稿シートの長さは変わらないことから挟持されている位置を基準として湾曲される位置から上流側の原稿シート束SAの各原稿シートS1、S2、S3の隣り合う接触面に原稿シートずれΔLが生じる。これにより、原稿シート間の密着状態が解かれる。
実際には図12に示すように、湾曲される原稿シートの厚さ(例えば原稿紙厚)及び原稿シートの材質(例えば原稿紙)による剛性は無視できない。原稿シートの紙厚及び原稿シートの紙の剛性によって原稿シートは原稿テーブルの湾曲動作に抗い、元の状態を保とうとする。さらに次原稿の紙の重さが加わらない上位の原稿シートS1ほど原稿テーブルの湾曲動作に追従せず湾曲はされにくくなる。しかし原稿シートの上位と下位で差が生じることにより、原稿シートの長さは変わらないことから挟持されている位置を基準として湾曲される位置から上流側の原稿シート束SAの各原稿シートS1、S2、S3の隣り合う接触面に原稿シートずれが生じる。これにより、原稿シート間の密着状態が解かれる。
従って、図4~図10に示したDF給紙部35によれば、原稿シート束が湾曲することで原稿シート間の密着状態が解かれて捌かれ、上位の原稿シート又は下位の原稿シートを給送するときに次の原稿シートが連れ送られることを減少させることができる。従って、DF給紙部35によれば、原稿シート束の原稿シート間の密着力を簡易に低減することができ、重送による原稿シートの給送ミス確率を低減することができる。
図11及び図12で説明した、原稿シート束SAが湾曲することで隣り合う原稿シートSにずれが生じ、原稿シートS間の密着状態が解かれる作用・動作は、後述するADF5のDF給紙部の各例でも同様である。
次に、図13~図16を用いて、ADF5の別の例におけるDF給紙部35Aの構成及び動作について説明する。図13は、図1に示した画像形成装置に備えられるADFの別の例を示す断面図である。図14は、図13に示したADFのDF給紙部の動作を示す図、図15は、図14に続くADFのDF給紙部の動作を示す図である。図16は、図15に続くADFのDF給紙部の動作を示す図である。
図13~図16に示すDF給紙部35Aは、図4~図10に示したDF給紙部35と比較して、以下の点が相違する。第1に、原稿テーブル51に代えて、軸51cを介して2つに分割された、シート給送方向Yの下流側に設けられた下流側原稿テーブル51bと、シート給送方向Yの上流側に設けられ、原稿シート束SAが載置されるシート載置部材としての上流側原稿テーブル51aとを備えている。
第2に、ピックアップローラ58に代えて、下流側原稿テーブル51bのシート給送方向Yの下流側で、原稿シートSを給送する位置が固定された回転部材としての回転ローラ58Aを備えている。
第3に、シート載置部材としての上流側原稿テーブル51aは、シート給送方向Yにおいて、シート載置部80の上流側の一部を占めるように設けられている。さらに、シャッタ61が除去されている点が相違する。
下流側原稿テーブル51bは、回転ローラ58Aに対向し、原稿シート束SAをガイドする対向ガイド部材であり、また回転ローラ58Aに原稿シート束SAを押し付ける押し付け部材でもある。回転ローラ58Aと下流側原稿テーブル51bとは、それぞれシート挟持部材であって、原稿シート束SAの下流側を挟持するシート挟持手段を構成している。
下流側原稿テーブル51bは、原稿シート束SAを介して回転ローラ58Aと接触する方向及び離間方向に移動可能である。すなわち、下流側原稿テーブル51bは、シート幅方向Xに沿ってシート幅方向Xと平行に設けられた軸51cを中心として揺動可能に構成されている。
このような原稿テーブルの対向面が位置固定の回転ローラに対して接離方向に移動可能な例としては、例えば特許第6239061号公報で開示されているピックアーム(112)が挙げられる。ピックアームの離接(付圧)手段については、特開2005-170651号公報に開示されている例が挙げられる。
回転ローラ58Aと下流側原稿テーブル51bとで原稿シート束SAを挟持したときに、上流側原稿テーブル51aが移動するように構成されている。
上流側原稿テーブル51aは、シート幅方向Xに沿う軸51cの回りに揺動可能に構成されている。上流側原稿テーブル51aは、移動可能かつ揺動可能なシート載置部材である。
軸51cを支点として、原稿シート束SAの上流側が鉛直上方向に湾曲するよう上流側原稿テーブル51aを揺動させる駆動部材の一例としての駆動モータ71を備えている。上記シート挟持手段によって原稿シート束SAの下流側が挟持されたときに、軸51cを支点として、シート束SAの上流側が鉛直上方向に湾曲するよう上流側原稿テーブル51aを揺動させるべく駆動モータ71が駆動される。
軸51cは、シート幅方向Xと平行に上流側原稿テーブル51aの紙面の手前側及び紙面の奥側に延びるように形成されている。
上流側原稿テーブル51aは、ADF5の筐体フレームに支持された軸51cと一体的に構成されていてもよいし、軸51cと別体で構成されていてもよい。
駆動モータ71は、正逆両方向に回動可能なモータからなり、駆動伝達手段の一例としてギアを介して軸51cに連結されている。図16に示すように、上流側原稿テーブル51aは、軸51cを回転中心として、載置位置P1と湾曲位置P2との間で移動可能かつ揺動可能に構成されている。
分離板60の図において右側近傍に設置されている下流側搬送ガイド板64には、下流側原稿テーブル51bの左端部と隣り合うように垂下した段差部64aが形成されていて、シャッタ61と同様の役目を果たす。
動作を説明する。図13に示すDF給紙部35Aの原稿セット時におけるイニシャル状態では、図13、図14に示すように、回転ローラ58Aと、回転ローラ58Aとの対向ガイド面を有する下流側原稿テーブル51bとの間に空間を設けられている。この空間があることで、給紙口55a(図2参照)を介して、図14に示すように、原稿シート束SAの先端を下流側原稿テーブル51bと隣り合う段差部64aに突き当たるまで挿入することができる。同時に挿入された原稿シート束SAによってセットフィラー57が図において時計回りに回転して原稿シート束SAが挿入、載置されたことが検知される。
原稿シート束SAの載置が検知された後、図14~図15に示すように、下流側原稿テーブル51bは軸51cを回転支点として図において時計回りに回転移動することで、回転ローラ58Aに対して原稿シート束SAの最上位の原稿シートS1が接触する。この際、回転ローラ58Aは図示しないトルクリミッタを介して駆動されているため、回転ローラ58Aへの最上位の原稿シートS1への押し付け力は上記トルクリミッタが受けるトルクが空転トルクに達するまで上昇する。この状態で、原稿シート束SAの下流側が下流側原稿テーブル51bと回転ローラ58Aとで挟持される。
回転ローラ58Aに対する原稿シート束SAの接触後に、下流側原稿テーブル51bは隣り合う下流側搬送ガイド板64と略平行となる。これにより、下流側原稿テーブル51bは原稿シート束SAの突き当てとなっていた段差部64aを乗り越えるので、回転ローラ58Aにより原稿シート束SAの最上位の原稿シートS1、次の原稿シートS2、次々の原稿シートS3を順次上記分離ユニットに給送することができる状態になる。
原稿シート束SAの下流側が挟持されたときに、図16に実線で示すように、原稿シート束SAの挟持位置よりシート給送方向Yの上流側の原稿シート束SAを湾曲させるように上流側原稿テーブル51aが反時計回りに回転するように、駆動モータ71が駆動される。この際、上流側原稿テーブル51aは載置位置P1から反時計回りに回転して、上流側の原稿シート束SAを鉛直上方向に湾曲させる湾曲位置P2を占めるように、駆動モータ71が駆動制御される。上流側原稿テーブル51aが湾曲位置P2にある状態において、原稿シート束SAが湾曲することで原稿シートS間の密着状態が解かれ、捌かれる。
次いで、図16において破線で示すように、上流側原稿テーブル51aは時計回りに回転して載置位置P1に復帰する。そして、回転ローラ58Aが最上位の原稿シートS1をシート給送方向Yの下流へと搬送するよう回転すると、回転ローラ58Aの最上位の原稿シートS1への押し付け力及び回転ローラ58Aと最上位の原稿シートS1との摩擦係数によって最上位の原稿シートS1はシート給送方向Yの下流に搬送力を得る。これにより、原稿シートS1はセットフィラー57を押しのけるように搬送される。以降の動作は、図4等に示したDF給紙部35の動作と同様に行われる。
図8、図12等を参照して既に説明したのと同様に、図13~図16に示したADF5のDF給紙部35Aによれば、原稿シート束が湾曲することで原稿シート間の密着状態が解かれ、上位の原稿シート又は下位の原稿シートを給送するときに次の原稿シートが連れ送られる(重送)ことを減少させることができる。従って、DF給紙部35Aによれば、原稿シート束の原稿シート間の密着力を簡易に低減することができ、重送による原稿シートの給送ミス確率を低減することができる。
図13~図16に示したADF5のDF給紙部35Aの一例でも、図13の載置位置にある上流側原稿テーブル51aが図16に示したように軸51cを回転支点として反時計回りに回転して湾曲位置P2を占めたときに、図13の排紙トレイ53の上方に空間ができるため排紙原稿シートの取り出し性も改善できる。
次に、図17~図20を用いて、ADFのさらに別の例のDF給紙部の構成及び動作について説明する。図17は、図1に示した画像形成装置に備えられるADFのさらに別の例を示す断面図である。図18は、図17に示したADFのDF給紙部の動作を示す図、図19は、図18に続くADFのDF給紙部の動作を示す図である。図20は、図19に続くADFのDF給紙部の動作を示す図である。
図17に示すADF5のDF給紙部35Bは、概略的に表現すると、図4に示したDF給紙部35を上下反転した形で原稿テーブル51の最下位の原稿シートから給送する方式である。
図17~図20に示すDF給紙部35Bは、図4~図10に示したDF給紙部35と比較して、以下の点が相違する。
第1に、ピックアップローラ58に代えて、原稿テーブル51より原稿シートSのシート給送方向Yの下流側で、原稿シートSを給送する、位置が固定された回転部材としての回転ローラ58Aを備えている。
第2に、対向ガイド板59に代えて、回転ローラ58Aに原稿シート束SAを押し付ける押し付け部材としての補助押し付け部材62を備えている。補助押し付け部材62は、回転ローラ58Aと原稿シートとの押し付け力を増すために用いており、対向ガイド部材の一例である。
第3に、対向ガイド板59には、回転ローラ58Aを原稿シートに接触させるための図示しない開口部が設けられている。
回転ローラ58Aは、対向ガイド板59に設けられた図示しない開口部を介して原稿シート束SAの最下面に位置する最下位の原稿シートS3に接触可能に構成されている。
補助押し付け部材62は、軸を中心として揺動可能に構成されており、例えば特開2000-143001号公報に開示されている機構などが用いられる。
回転ローラ58Aと補助押し付け部材62とは、それぞれシート挟持部材であって、原稿シート束SAの下流側を挟持するシート挟持手段を構成している。
そして、回転ローラ58Aと補助押し付け部材62とで原稿シート束SAを挟持したときに、原稿シート束SAが載置されている原稿テーブル51が移動するように構成されている。
図17に示すシート載置部材としての原稿テーブル51は、シート給送方向Yにおいて、シート載置部80の全域にわたって設けられている。軸70を支点として、原稿シート束SAの上流側が鉛直上方向に湾曲するよう原稿テーブル51を揺動させる駆動部材の一例としての駆動モータ71を備えている。
回転ローラ58Aと補助押し付け部材62とで原稿シート束SAの下流側が挟持されたときに、駆動モータ71は、軸70を支点として、シート束SAの上流側が鉛直上方向に湾曲するよう原稿テーブル51を揺動させるべく駆動される。
動作を説明する。図18に示すように、原稿セット時におけるイニシャル状態では、原稿シート束SAの先端が同図の規制位置状態にあるシャッタ61に突き当たるまで原稿シート束SAを挿入することができる。同時に、挿入された原稿シート束SAによってセットフィラー57が図において時計回りに回転し、突当センサ(図示せず)によって原稿シート束SAが挿入、載置されたことが検知される。
原稿シート束SAの載置が検知された後、図19に示すように、補助押し付け部材62が図において反時計回りに回転して最上位の原稿シートS1と接触することにより、最下位の原稿シートS3と回転ローラ58Aとの間に押し付け力が生じる。この状態で、原稿シート束SAの下流側が回転ローラ58Aと補助押し付け部材62とで挟持される。
原稿シート束SAの下流側が回転ローラ58Aと補助押し付け部材62とで挟持されたときに、原稿シート束SAの挟持位置よりシート給送方向Yの上流側の原稿シート束SAを湾曲させるように原稿テーブル51が反時計回りに回転するように、駆動モータ71が駆動される。この際、原稿シート束SAの下流側が挟持された状態において、原稿テーブル51は載置位置P1から反時計回りに回転して、上流側の原稿シート束SAを鉛直上方向に湾曲させる実線で示す湾曲位置P2を占めるように、駆動モータ71が駆動制御される。原稿テーブル51が湾曲位置P2にある状態において、原稿シート束SAが湾曲することで原稿シートS間の密着状態が解かれ、捌かれる。
その後、原稿テーブル51は載置位置P1に復帰される。原稿テーブル51が載置位置P1を占めた状態で、回転ローラ58Aがシート搬送方向Yの下流に最下位の原稿シートS3を搬送する方向に回転されることにより、回転ローラ58Aと最下位の原稿シートS3との間に摩擦力が生じて、シート搬送方向Yの下流に最下位の原稿シートS3が搬送される。
図17に示したADF5のDF給紙部35Bの一例でも、図20の載置位置P1にある原稿テーブル51が軸70を回転支点として反時計回りに回転して湾曲位置P2を占めたときに、図17の排紙トレイ53の上方に空間ができるため排紙原稿シートの取り出し性も改善できる。
図8、図12等を参照して既に説明したのと同様に、図17に示したADF5のDF給紙部35Bによれば、原稿シート束が湾曲することで原稿シート間の密着状態が解かれ、上位の原稿シート又は下位の原稿シートを給送するときに次の原稿シートが連れ送られる(重送)ことを減少させることができる。従って、DF給紙部35Bによれば、原稿シート束の原稿シート間の密着力を簡易に低減することができ、重送による原稿シートの給送ミス確率を低減することができる。
図17に示したような最下位の原稿シートS3から給紙する方法は、最下位の原稿シートS3を搬送する際に残りの原稿シートSが最下位の原稿シートS3上に載置された状態となっている。そのため、シャッタ61は揺動によるシャッタ解除を行わず、対向ガイド板59との間に一定の隙間を常に設けて置くことで、おおよそ上位の原稿シートを遮断して下位の原稿シートを通紙する方式が多い。また原稿シート束SAの荷重が原因で最下位の原稿シートS3に搬送力を与えても搬送できないことがあり、そのため原稿テーブル51又はADF5全体を傾斜させて原稿シート束の重力方向にかかる荷重を低減させる方式が多い。
次に、図21を用いて、DFスキャンを行うためにストレート搬送パスを備えたADFに、図17に示した最下位の原稿シートS3から給紙する方式であるDF給紙部35Bを適用した変形例について説明する。図21は、図17に示したADFの変形例の模式的な断面図である。
図21に示すADF5は、図17に示したDF給紙部35Bの原稿テーブル51に載置された原稿シート束から最下位の原稿シートを1枚ずつ分離して反転を行わない凡そ真っすぐの原稿搬送経路52を備えている。図17に示したDF給紙部35Bは、原稿搬送経路52に対して、同図に示すように全体として傾斜して配置される。そして、原稿搬送経路52内に分離・搬入された原稿シートSを、DFコンタクトガラス42に沿って搬送して、DFコンタクトガラス42を介した一体型光学走査ユニット47、第2読取ユニット69で原稿シートSの画像面を読み取る。
原稿搬送経路52は、そのような搬送のための複数の搬送ローラ52b、52cを有しており、それらより下流側に排紙ローラ対52d、52eを有している。なお、これら搬送及び排紙用のローラ群の配置数や配置場所は、原稿搬送経路52の経路設定条件や、原稿シートSの最小サイズの原稿搬送方向の長さ等に応じて任意に設定可能である。
そして、その画像読取り後の原稿シートSは、排紙ローラ対52d、52eにより排紙トレイ53に排出される。原稿テーブル51に載置された原稿シート束から最下位の原稿シートから順に分離・搬送・排紙する図17に示したDF給紙部35Bを適用する場合、ストレート搬送パスで行う。ストレート搬送パスの利点として、ターンすることなく凡そ真っすぐ搬送をすることにより原稿シートのページ面順を狂わせることなく排紙スタックできる、かつ湾曲剛性が高い原稿は搬送することが容易になる。不利な点として、最下位の原稿から給紙する方式となるため、原稿シート束の荷重が原因で最下位の原稿シートS3に搬送力を与えても搬送できないことがある。そのため原稿テーブル51又はADF5全体を傾斜させて原稿シート束の重力方向にかかる荷重を低減させる。ストレート搬送パスは、図5のUターン搬送パスと比較して機械サイズがシート幅方向X及び鉛直方向Zに共に大きくなる傾向が高くなっている。
図22~図24を用いて、図1に示した画像形成装置に備えられるADFの別例の構成及び動作について説明する。図22は図1に示した画像形成装置に備えられるADFの別例の原稿テーブル周りの構成を説明する概略的な平面図、図23は図22のDF給紙部のA-A部分断面図、図24は図22のDF給紙部のB-B部分断面図である。
図22~図24に示すDF給紙部35Cは、図4に示したDF給紙部35と比較して、図23に示すように、シート載置部材としての原稿テーブル中央部51dは、シート給送方向Yにおいて、シート載置部80の中途部を占めるように設けられている点が主に相違する。すなわち、シート載置部材としての原稿テーブル中央部51dは、図4に示す原稿テーブル51のようにシート載置部80の全域にわたって設けられていない。
DF給紙部35Cでは、原稿シート束SAが載置される原稿テーブル中央部51dと、原稿テーブル中央部51dより原稿シートSのシート給送方向Yの下流側で、原稿シートSを給送する回転部材、ピックアップ部材としてのピックアップローラ58と、ピックアップローラ58に対向し原稿シート束SAをガイドする対向ガイド部材としての対向ガイド板59と、を備えている。
図22、図23に示すように、原稿テーブル51の略中央部に設けられた原稿テーブル中央部51dが、シート幅方向Xと平行な軸73の回りに揺動可能に構成されている。軸73は、シート幅方向Xと平行に原稿テーブル51の一部の紙面の手前側及び紙面の奥側に延びるように形成されている。原稿テーブル51の略中央部には、原稿テーブル中央部51dを嵌入させるための開口部51eが形成されている。
原稿テーブル中央部51dは、軸73と一体的に構成されていてもよいし、原稿テーブル51の一部に支持された軸73と別体で構成されていてもよい。
軸73を支点として、シート束SAの上流側の一部が鉛直上方向に湾曲するよう原稿テーブル中央部51dを揺動させる駆動部材の一例としての駆動モータ74を備えている。駆動モータ74は、正逆両方向に回動可能なモータからなり、駆動伝達手段の一例としてギアを介して軸73に連結されている。
原稿テーブル中央部51dは、軸73を回転中心として、原稿シート束SAを載置する載置位置P1から反時計回りに回転して、上流側の原稿シート束SAを鉛直上方向に湾曲させる湾曲位置P2を占めるように、駆動モータ74が駆動制御される。すなわち、原稿テーブル中央部51dは、軸73を回転中心として、載置位置P1と湾曲位置P2との間で移動可能かつ揺動可能に構成されている。
動作を説明する。載置位置P1にある原稿テーブル中央部51dを含む原稿テーブル51の上面に原稿シート束SAが載置され、シャッタ61によって原稿シート束SAの先端が揃えられ、セットフィラー57及び突当センサ(図示せず)によって原稿シート束SAの載置が検知される。この原稿シート束SAの載置が検知された後で、ピックアップローラ58が降下して原稿シート束SAの最上位の原稿シートに接触し、ピックアップローラ58と対向ガイド板59とで原稿シート束SAの下流側が挟持される。
原稿シート束SAの下流側が挟持されたときに、原稿テーブル中央部51dが反時計回りに回転するように、駆動モータ74が駆動される。この際、原稿テーブル中央部51dは載置位置P1から反時計回りに回転して、上流側の原稿シート束SAを鉛直上方向に湾曲させる湾曲位置P2を占めるように、駆動モータ74が駆動制御される。
原稿テーブル中央部51dの上記回転動作によって、原稿テーブル中央部51d上に載置されている原稿シート束SAは、シート給送方向Yの下流及び上流において図23に示すように山形状及び谷形状を形成するように湾曲する。同時に、原稿テーブル中央部51d上の原稿シート束SAは、シート幅方向Xの左右両端部において図24に示すように原稿テーブル中央部51dから山形状に垂れ下がるように湾曲する。このように、原稿テーブル中央部51d上に載置されている原稿シート束SAがシート給送方向Y及びシート幅方向Xにおいて捌き変形を受けることにより、互いに密着状態にある原稿シートS間でずれが生じ、原稿シートS間の密着状態が解かれ、捌かれることとなる。
この後、原稿テーブル中央部51dは載置位置P1に復帰され、ピックアップローラ58が回転し原稿シートSの給送が行われる。
上述したとおり、図22~図24に示したADF5のDF給紙部35Cによれば、原稿シート束をシート給送方向Y及びシート幅方向Xの多方向において湾曲させることができる。これにより、原稿シート間の密着状態が解かれ、上位の原稿シート又は下位の原稿シートを給送するときに次の原稿シートが連れ送られる(重送)ことを減少させることができる。
上述したADF5のDF給紙部35、35A、35Bの説明では、原稿テーブル51又は上流側原稿テーブル51aに配設されているサイドガイド板54の図示及びその説明を省略したが、原稿テーブル51又は上流側原稿テーブル51aと共に揺動する。
上述したADF5のDF給紙部35、35A、35B、35Cは、上述した構成及び動作に限らず、駆動部材としての各駆動モータ71、74が、図4、図17の原稿テーブル51や図13の上流側原稿テーブル51aあるいは図23の原稿テーブル中央部51dを複数回揺動させるようにしてもよい。各駆動モータ71、74によって、図4、図17の原稿テーブル51や図13の上流側原稿テーブル51aあるいは図23の原稿テーブル中央部51dを複数回揺動させてから、ピックアップローラ58や回転ローラ58Aによる原稿シートの給送を開始するようにしてもよい。
原稿テーブルは、フラットな状態の方が原稿シートの載置のしやすさの観点からよい。そして原稿シート束の湾曲動作は繰り返すことで、より原稿シート間の密着力を低減することができる。しかしながら、原稿シート束の湾曲動作によって原稿シート間の密着力を低減したとしても、原稿シート自体の重さは無くすことができないため次の原稿シートとの摩擦はなくならない。そのため原稿テーブル51や上流側原稿テーブル51a又は原稿テーブル中央部51dの初期状態は、原稿シート束を置きやすいフラットな状態とし、湾曲動作は繰り返し行うとよい。
上記したように湾曲動作を複数回繰り返すことにより、原稿シート束の原稿シート間の密着力をより低減することができる。
上述したADF5のDF給紙部35、35A、35B、35Cは、上述した構成及び動作に限らず、各駆動モータ71、74によって、原稿シート束SAが湾曲するように図4、図17の原稿テーブル51や図13の上流側原稿テーブル51aあるいは図23の原稿テーブル中央部51dが揺動された状態で、ピックアップローラ58や回転ローラ58Aによる原稿シートSの給送を開始するようにしてもよい。
すなわち、最終的に原稿シートSの給送開始の時には、図4、図17の原稿テーブル51や図13の上流側原稿テーブル51aあるいは図23の原稿テーブル中央部51dが湾曲位置P2を占めた状態にする(図8、図16、図20、図23のような状態)。
これにより、ピックアップローラ58や回転ローラ58Aと原稿シート束の初期接触面とが微小にずれることとなり、ピックアップローラ58や回転ローラ58Aが原稿シート束の初期接触面と異なる接触面で給送を開始するようになる。
このようにすれば、ピックアップローラ58や回転ローラ58Aと原稿シート束との初期接触面より原稿シートの自由落下を良好にすることができ、もしくは湾曲による原稿シート間の摩擦を低減することができる。
上述したADF5のDF給紙部35、35A、35B、35Cは、上述した構成及び動作に限らず、駆動部材としての各駆動モータ71、74は、駆動されるときに、原稿シート束に衝撃が与えられるようにしてもよい。
各駆動モータ71、74が駆動されるときに、図4、図17の原稿テーブル51や図13の上流側原稿テーブル51aあるいは図23の原稿テーブル中央部51dの複数回揺動後において、載置位置P1への復帰時に原稿シート束に衝撃を与える。
原稿シート束への衝撃を与える方法としては、例えば原稿テーブルを湾曲位置から載置位置に戻す際に、載置位置への位置決めに設定される位置決め部材への突き当てを強くして衝撃を与える構成が挙げられる。位置決め部材への突き当てを強くする方法としては、原稿テーブルが載置位置に戻る際の各駆動モータ71、74の駆動速度を加速することが挙げられる。
湾曲動作にさらに衝撃を加えることで、より原稿シートを捌き動かして原稿シート間の密着力を低減することができる。
上述したADF5のDF給紙部35、35A、35B、35Cでは、シート載置部材(図4、図17の原稿テーブル51や図13の上流側原稿テーブル51aあるいは図23の原稿テーブル中央部51d)が載置された原稿シート束を湾曲させる特有の動作を行うことに鑑みて、「シート湾曲部材」と称してもよい。また、シート載置部材(図4、図17の原稿テーブル51や図13の上流側原稿テーブル51aあるいは図23の原稿テーブル中央部51d)は原稿シート束が載置された状態で移動して上記特有の動作を行うことに鑑みて、「移動部材」と称してもよい。
図4に示したDF給紙部35、図13に示したDF給紙部35A、図17に示したDF給紙部35B、図23に示したDF給紙部35Cでは、原稿テーブル51、上流側原稿テーブル51a、又は原稿テーブル中央部51dが湾曲位置P2を占めたときに、原稿シート束SAを鉛直上方向に湾曲させているが、鉛直下方向への湾曲でもよい。
すなわち、本発明ではシート束SAの上流側が少なくとも一方向に湾曲するようシート載置部材(原稿テーブル51、上流側原稿テーブル51a又は原稿テーブル中央部51d)を移動ないし揺動させるものであればよい。
原稿テーブル51、上流側原稿テーブル51a又は原稿テーブル中央部51dが載置位置P1から反時計回りに回転して湾曲位置P2を占めるように、また湾曲位置P2から時計回りに回転して載置位置P1を占めるように鋭角の回転角度で揺動させているが、これに限らず、原稿シート束SAを損傷させない範囲で鈍角で移動ないし揺動させる構成であってもよい。
原稿テーブル51、上流側原稿テーブル51a又は原稿テーブル中央部51dの駆動方式は、駆動源としての駆動モータ71、74及び駆動伝達手段としてのギアを介して回転支点としての各軸70、51c、73に駆動を伝達する方式であったが、これに限らない。すなわち、モータなどの駆動源からベルト連結を介して各軸70、51c、73を回転する方式や、各軸70、51c、73以外のシート載置部材(原稿テーブル51、上流側原稿テーブル51a又は原稿テーブル中央部51d)にカムを接触させモータやソレノイドなどの駆動源からカムを駆動させシート載置部材(原稿テーブル51、上流側原稿テーブル51a又は原稿テーブル中央部51d)を動かす方式などでもよい。
上記した各例のDF給紙部35、35A、35B、35Cの給紙ローラ52aの下流側に隣接して配置した一対の搬送ローラ52b、52cは、ピックアップローラ58又は回転ローラ58Aの駆動タイミングに応じて、給紙した原稿シートの先端を突き当ててスキュー搬送を補正し、補正後の原稿シートを引き出し搬送する先端整合機能を有するようになっている。
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記実施形態や実施例等に記載した技術事項を適宜組み合わせたものであってもよい。
本発明を適用可能な画像形成装置は、上述したカラー複写機に限らず、ADFやシート給送装置を搭載可能な公知の全ての電子写真方式の画像形成装置(例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ或いはこれらの機能を併有する複合機等)や、インクジェット記録装置、孔版印刷機を含む印刷機等の画像形成装置も含まれる。
本発明に係るシートには、上記した原稿シートを含むほか、普通紙、厚紙やコート紙、名刺、プラスチックフィルムなどが挙げられ、搬送可能な被搬送物全般を含む。
本発明に係るシート給送装置は、上述したADFに適用したものに限らず、図2に示した給紙部2のような給紙装置にも適用可能である。また、本発明に係る画像形成装置は、本発明に係るシート給送装置を適用したADF及び給紙装置の何れか一方を備えた画像形成装置、又は本発明に係るシート給送装置を適用したADF及び給紙装置の両方を備えた画像形成装置であってもよい。
本発明の実施の形態に適宜記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。